ゲスト
(ka0000)
【魔装】強さの果てに 第1話
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- シリーズ(新規)
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/01/30 19:00
- 完成日
- 2017/02/11 13:30
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●逢着
それは、年が明けたある日の事。
王国北西部のレタニケ領の同名の街で行われたある晩餐会だった。
遥か東方の国より、観戦武官として王国内を巡っている『女将軍』鳴月 牡丹(kz0180)が、領土内にある温泉が気に入り、それなりに滞在する事になった。
領主であるレフェタルニーケフ家としては、これを歓迎しない訳にはいかない。
そんな訳で、豪華とは言えないものの、晩餐会が行われたのだ。
「うん、ノゾミ君。この肉、美味しいね」
「牡丹様。口の中の食べ物を飲み込んでから、話して下さい」
新鮮な鹿の生肉を頬の中に溜め込む牡丹に紡伎 希(kz0174)が呆れながら応える。
希は牡丹の観戦武官を支えるアドバイザーとしてハンターオフィスから派遣された受付嬢だ。
これまでの実績を認められ、受付嬢見習いから、正式な受付嬢として最初の仕事が牡丹の“お守り”というのは、運命的というべきか、それとも、厄介な仕事を押し付けられたというべきか……。
「馬肉もあるし、熊肉もあるし、猪肉もあるし、本当に豊かな土地だね」
「だから、飲み込んで下さい」
「――ごくん。で、ノゾミ君はあまり進まないのかい?」
指摘する通り、希の手はほとんど動いていない。
「牡丹様と一緒にしないで下さい。美味しいのですが、もうお腹が一杯です」
「だから、大きくなれないんだよ!」
そう言って、希の胸に思いっきり触れる牡丹。
それを希はサッと手で払った。
「ふざけていると、後で紫草様から怒られますよ」
その一言で牡丹が頬を膨らませた。
牡丹を西方世界へと派遣させたのは、エトファリカ連邦国八代目征夷大将軍である立花院 紫草(kz0126)だ。
外交問題も、東方の品位を落とすような行動も、注意しなければならない。
「めんどくさいな」
そう言って、次の肉皿へと手を伸ばそうとした時だった。
正装した青年が話しかけてきた。
「ご歓談の所、失礼します」
「うぇ!? あ――い、いいよ。べ、別に、歓談というかいつもの感じだし」
青年の姿を見て一瞬驚いた牡丹が慌てて答える。
「ありがとうございます。僕はライルと申します。ご武勇誉れ高い鳴月様とお会いでき、とても嬉しいです」
スっと牡丹の手を取ろうとしたが――牡丹が肉を持っているので諦め――変わりに丁寧に頭を下げた。
「ライル様は領主様の御子息です」
希がすかさずフォローを入れる。
「そうだったんだね。ボクも嬉しいよ」
その牡丹の言葉に青年がパッと顔を輝かせた。
「こ、光栄です!」
「いやさ、ビックリしたよ。死んだ弟に、そっくりでさ!」
「お……弟……さん……ですか?」
ライルの分かりやすい程の表情の変化。
一方、希がコホンと咳払いした。牡丹の言葉が、この席では、若干、不適切という事を主張したつもりらしい。
「少し滞在すると思うから、よろしくね。そうだ。ボクの事は、『牡丹お姉ちゃん』って呼んでいいからね」
「は……はい……え……牡丹お姉ちゃん?」
遠慮気味な口調だったものの、牡丹は満足そうにうんうんと頷いたのだった。
●襲撃
亜人が集落の一つを壊滅させたのは、牡丹と希らが街を旅立った後の事だった。
知らせはハンターオフィスを通じて希に伝わった。
「領内のある集落が亜人の集団に襲撃されたそうです」
「亜人ねー」
興味がなさそうな牡丹だったが、街の方向に振り返る。
「……規模は?」
その視線は鋭い。
「牡丹様、お立場をお忘れなきよう」
「ボクの質問に答えてよ」
冷たく言い放った希の台詞に苛立つように牡丹は言った。
「……未確認ですが、それなりの数だそうです。ただ、余程の事がない限り、レタニケ領の貴族と私兵が負けるとは思えません」
所詮、亜人は亜人という事だろうか。
王国を揺るがしたとされる茨小鬼は壊滅しているので、ただの亜人の群れだろう。王国北部では珍しい事ではない。
「胸騒ぎがする」
来た道を引き返しだした牡丹に希は大きくため息をついた。
こういう事があるから、そこを何とかするのが、自分の仕事なのだと。
「分かりました。ならば、“観戦武官”として、亜人との戦いを間近で観ていただきたいと思います」
希はパルムを引っつかんだ。
ハンター達と合流した牡丹と希に新たな情報が伝わる。
それは、領主と息子、私兵らの軍勢が、亜人との戦いに破れ、壊滅。生死不明という事だった。
亜人らも大きな損害が出た模様だったが、なお、一部が次の集落へと向かっているという事で、ハンター達には追加の依頼が出された。
それは、年が明けたある日の事。
王国北西部のレタニケ領の同名の街で行われたある晩餐会だった。
遥か東方の国より、観戦武官として王国内を巡っている『女将軍』鳴月 牡丹(kz0180)が、領土内にある温泉が気に入り、それなりに滞在する事になった。
領主であるレフェタルニーケフ家としては、これを歓迎しない訳にはいかない。
そんな訳で、豪華とは言えないものの、晩餐会が行われたのだ。
「うん、ノゾミ君。この肉、美味しいね」
「牡丹様。口の中の食べ物を飲み込んでから、話して下さい」
新鮮な鹿の生肉を頬の中に溜め込む牡丹に紡伎 希(kz0174)が呆れながら応える。
希は牡丹の観戦武官を支えるアドバイザーとしてハンターオフィスから派遣された受付嬢だ。
これまでの実績を認められ、受付嬢見習いから、正式な受付嬢として最初の仕事が牡丹の“お守り”というのは、運命的というべきか、それとも、厄介な仕事を押し付けられたというべきか……。
「馬肉もあるし、熊肉もあるし、猪肉もあるし、本当に豊かな土地だね」
「だから、飲み込んで下さい」
「――ごくん。で、ノゾミ君はあまり進まないのかい?」
指摘する通り、希の手はほとんど動いていない。
「牡丹様と一緒にしないで下さい。美味しいのですが、もうお腹が一杯です」
「だから、大きくなれないんだよ!」
そう言って、希の胸に思いっきり触れる牡丹。
それを希はサッと手で払った。
「ふざけていると、後で紫草様から怒られますよ」
その一言で牡丹が頬を膨らませた。
牡丹を西方世界へと派遣させたのは、エトファリカ連邦国八代目征夷大将軍である立花院 紫草(kz0126)だ。
外交問題も、東方の品位を落とすような行動も、注意しなければならない。
「めんどくさいな」
そう言って、次の肉皿へと手を伸ばそうとした時だった。
正装した青年が話しかけてきた。
「ご歓談の所、失礼します」
「うぇ!? あ――い、いいよ。べ、別に、歓談というかいつもの感じだし」
青年の姿を見て一瞬驚いた牡丹が慌てて答える。
「ありがとうございます。僕はライルと申します。ご武勇誉れ高い鳴月様とお会いでき、とても嬉しいです」
スっと牡丹の手を取ろうとしたが――牡丹が肉を持っているので諦め――変わりに丁寧に頭を下げた。
「ライル様は領主様の御子息です」
希がすかさずフォローを入れる。
「そうだったんだね。ボクも嬉しいよ」
その牡丹の言葉に青年がパッと顔を輝かせた。
「こ、光栄です!」
「いやさ、ビックリしたよ。死んだ弟に、そっくりでさ!」
「お……弟……さん……ですか?」
ライルの分かりやすい程の表情の変化。
一方、希がコホンと咳払いした。牡丹の言葉が、この席では、若干、不適切という事を主張したつもりらしい。
「少し滞在すると思うから、よろしくね。そうだ。ボクの事は、『牡丹お姉ちゃん』って呼んでいいからね」
「は……はい……え……牡丹お姉ちゃん?」
遠慮気味な口調だったものの、牡丹は満足そうにうんうんと頷いたのだった。
●襲撃
亜人が集落の一つを壊滅させたのは、牡丹と希らが街を旅立った後の事だった。
知らせはハンターオフィスを通じて希に伝わった。
「領内のある集落が亜人の集団に襲撃されたそうです」
「亜人ねー」
興味がなさそうな牡丹だったが、街の方向に振り返る。
「……規模は?」
その視線は鋭い。
「牡丹様、お立場をお忘れなきよう」
「ボクの質問に答えてよ」
冷たく言い放った希の台詞に苛立つように牡丹は言った。
「……未確認ですが、それなりの数だそうです。ただ、余程の事がない限り、レタニケ領の貴族と私兵が負けるとは思えません」
所詮、亜人は亜人という事だろうか。
王国を揺るがしたとされる茨小鬼は壊滅しているので、ただの亜人の群れだろう。王国北部では珍しい事ではない。
「胸騒ぎがする」
来た道を引き返しだした牡丹に希は大きくため息をついた。
こういう事があるから、そこを何とかするのが、自分の仕事なのだと。
「分かりました。ならば、“観戦武官”として、亜人との戦いを間近で観ていただきたいと思います」
希はパルムを引っつかんだ。
ハンター達と合流した牡丹と希に新たな情報が伝わる。
それは、領主と息子、私兵らの軍勢が、亜人との戦いに破れ、壊滅。生死不明という事だった。
亜人らも大きな損害が出た模様だったが、なお、一部が次の集落へと向かっているという事で、ハンター達には追加の依頼が出された。
リプレイ本文
●会敵
亜人の群れが街道の先に見えた。
まだ距離はあるが、会敵がもう間もなくというのは言うまでもないだろう。
各自が覚醒状態に入ると、イレーヌ(ka1372)が聖書を構えながら、誰にという訳でもなく言った。
「勝てるはずの敵に敗北した……というのが気になるな」
レタニケ領の貴族と私兵が、亜人如きに敗れた。
この事実だけで、油断はできないのは確かだ。
「現実でも、しっかりと守らせてもらうよ」
「ん? まぁ、頼りにするよ。僕も気になる事はあるんだけどね」
横に並んでいた鳴月 牡丹(kz0180)がイレーヌの宣言にそんな風に応えた。
先程から亜人よりも別の何かを探している――そんな雰囲気だ。
「なーんか、キナ臭いんですよねぇ」
可愛げに首を傾げながら人差し指を口に当てるソフィア =リリィホルム(ka2383)。
今回の亜人襲撃には、“何か”ありそうな気がしているのだ。
「真相の究明は後にでもなるかな?」
「はい。まずは敵を排除してからだと思います」
一先ずは仕事を終えてからという事だろう。確認を取ったソフィアに依頼主である紡伎 希(kz0174)が答える。
そんな4人の歩みよりも早く先行するハンター達。
「領主の軍勢が、亜人に壊滅させられるとは」
ルイトガルト・レーデル(ka6356)が目元を細めて剣を構えた。
どうして貴族とその私兵が負けたのかは、予測の範疇を出ないが、警戒するに越した事はない。
「……何かしら予想外の事態があったと考えていいだろうね……」
全員の思いを代弁するように、シェラリンデ(ka3332)も呟く。
「警戒を怠らずにいよう」
「敵の構成にも気をつける必要があるみたいだね」
ルイトガルトとシェラリンデの会話にミュオ(ka1308)が頷いた。
(大事なのは、裏側に隠れた理由にも思考を巡らせる事。でしたっけ、お師匠)
目を凝らして亜人の群れをみるが、指揮官らしき存在は確認できなかった。
亜人の群れはそれなりの規模だ。これで統率が取れているのかどうか、戦いながら観察するしかないだろう。
迫ってくる亜人をミュオと同様にライラ = リューンベリ(ka5507)も見つめていた。
ただ、その心情は哀しみと怒りに満ちている。
(集落が襲撃を受け、貴族の兵は敗走……ですか。その集落は、もう壊滅していますね)
依頼は亜人の撃退あるいは殲滅であり、集落の救助は入っていない。
つまり、そういう事なのだ。
(また、私の様な子を出してしまったのですね……茨小鬼では無いようですが……許す気はありません)
手に力が入る。これ以上の悲劇は防がなければならない。
ライラは蝙蝠の形をした武器を静かに――必殺の念を込めて亜人へと投げつけた。
●強襲
「さて……須らく処刑する」
敵中で派手にバイクを乗り捨てたルイトガルトが刀を振るう。
とりあえず、敵の数が多いのが気になるが、所詮は亜人だ。
「杖や銃持ちも居るな」
視界の中の亜人共はどれも同じような顔をしていて区別はつかないが、持っている武器は統一性が欠けていた。
「なぜ、ゴブリンが銃を――」
持っているのでしょうかと続くはずだったライラの言葉は戦場の喧騒に掻き消える。
銃を積極的に撃とうとせず、振り回すだけで鈍器にでもしているのだろうか。
ライラは振り返ると牡丹に向かって言った。
「牡丹様は、後ろでご覧になっていてください」
「退屈だよ」
つまらなさそうな牡丹の表情。隣に並んでいる希が警戒心むき出しで銃を構えていた。警戒している相手は、牡丹の動きに対してだが。
牡丹は戦いたい様子も見えるが、相手が亜人では本気にはなれないというのもあるかもしれない。
「……敗走してきた兵がいれば、戦闘の状況を聞き出せたのでしょうが……」
残念だが、最初に亜人の襲撃を受けたという集落は絶望的だろう。
せめて、状況が分かる者が居ればと思うが――そういえば、貴族の私兵らが敗走したらしいと伝えたのは誰だったのだろうかとの疑問がライラの頭の中を過ぎった。
「居ないようであれば、仕方ないです」
視界の中に兵の姿は確認できず、呟いたライラにシェラリンデが律儀に返す。
シェラリンデは亜人が放った矢を危なげなく避け、突出してきた亜人に対し、刀を突き出した。
「飛び道具が厄介ですね」
剣や槍を持っている亜人もいるが、やはり、飛び道具を扱う亜人は脅威である。
射程や位置取りを気をつけて一斉に狙われないように気を遣わなければならないからだ。
杖を持っている亜人もいるが魔法を扱う様子がないのは幸いだ。
「すみません……でも、ここから先は通行止め、です」
大鎌で亜人の首を刎ね、ミュオは亜人の突破を防ぐ。
ハンター達を勢いで抜けようとしたのだろうが、そんなに簡単ではない事を身を持って教えなければならない。
亜人の方が数が多かったが、それは戦闘開始すぐに激減していた。これが覚醒者の力というものだ。
(貴族軍が負けた以上、余程のことがあったのは確実……)
ミュオが胸に広がる不安を感じた瞬間、それは的中した。
すぐ脇を流れる川から別の亜人らが姿を現したからだ。
ボートから幾体かが上陸してくる。
「やはり来たか。そう簡単にやらせはしないぞ?」
不敵な笑みでイレーヌが新手の前に立ち塞がった。
亜人は側面から奇襲した形のつもりのようだが、警戒していたハンター達の目を欺く事には至らない。
「これ……は――とにかく、護衛を最優先です」
ソフィアが亜人が突き出した槍を華麗に避けながら、牡丹と希を守るように移動した。
槍の穂先は、とても鋭利だったが、今はそこを気にしている場合ではない。
「僕が向かいますね」
苦戦している様子ではないだろうが、川から現れた亜人の新手に対し前衛に居たミュオがイレーヌとソフィアの援護に回る。
牡丹に護衛は必要ないだろうが、万が一は防がなければならない。
「この亜人達……」
幾度か斬り結びながら、シェラリンデはふと違和感を感じた。
この亜人共の目は――ハンターを恐れていない目だ。それこそが感じた違和感だった。
「処刑の手間が省けるな」
囲まれる前に素早い動きで複数体の亜人を蹴散らすルイトガルトの言葉を聞いて、シェラリンデが思い至ったようだ。
「こっちの亜人はフェイクです」
「そういう事か!」
二人は牡丹達と合流しようとするが、亜人らが死に物狂いでしがみついてくる。
最初に見せた勢いも奇襲がバレないように意識を反らせる為のものだったのだろう。
「上陸した亜人達が最初から指示していたという事ですね」
ライラが疾影士としての能力を存分に活かした動きで投擲武器を投げながら、牡丹との合流を図ろうとする。
が、その動きは、川から上陸した亜人からの反撃で阻止された。
「……炎の属性を持った投石ですか!?」
実際に火がついている訳ではない。炎のマテリアルに包まれた石がライラの足元を直撃すると地面を砕く。直撃していたら、それなりにダメージを受けていただろう。
それは、亜人が持つ真っ赤なスリングから放たれていた。
パチンッ――そんな音と共にイレーヌの魔法が彼女の周囲に広がった。
その光属性の衝撃は、亜人如きであれば地に伏せさせるのに十分なはずであった。
だが、亜人は輝く盾を構えたまま向かって来る。
「光属性の盾、か?」
そんな物をなんで亜人が持っているのかと疑問を抱くイレーヌ。
盾持ちの後ろに居た亜人が放つ矢は、風のような鋭さを持っていた。
「可笑しいと思います」
矢を避けつつ、守勢に回るソフィア。
組み掴んで来た亜人を魔腕で掴むと、機導術の電撃を流し込んだ。
動きが鈍くなったそれを、すかさずミュオが背後から切り捨てる。
「……森からも」
その時、何かの気配を感じた。このタイミングでまだ亜人が襲いかかってくるのかとミュオが警戒する。
落ち葉や枯れ枝を踏みしめて姿を現したは豪華な鎧姿の騎士だった。フルヘルムで顔までは見えない。
亜人では無いが……。
「誰だ?」
「“信用なき相手と取引はしない”商人の鉄則ですよ?」
イレーヌとソフィアは森から現れた人物に声を掛けた。
幾ら何でも怪しすぎる。おまけに、この状況である。
しかし、ハンター達の警戒は無用であった。警戒するハンターを気にした様子はなく、手近に居た亜人を斬りつける騎士。
「加勢します!」
騎士の声は思ったより若い男のようだった。
その動きは――基本の型を忠実に守っているが、どこか経験不足を感じさせる。
「御助力感謝いたします」
ライラが竜尾刀の機構を操作させて鞭とすると、亜人を絡め取った。
「私はライラと申します。お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ライル・レフェタルニーケフです。この一帯を治める領主の、息子です」
絡められた亜人を剣で叩き伏せながら応える騎士。
包囲しようとしていた亜人の一角が崩れる。
「押し戻しましょう」
ミュオが大鎌を頭上で豪快に振り回した。
最初に会敵した亜人らを制圧したシェラリンデとルイトガルトの二人も加わり、戦況は一気にハンター達が有利となる。
その不利を悟ったのか、簡単にはハンター達を倒せないと判断したのか、川から現れた亜人共が声を上げると一斉に逃げ出した。
瀕死の仲間から武器だけを巻き上げて撤退していく様だけは、ある意味、亜人らしい。
「逃がさないよ」
追い打ちをかけようとしたシェラリンデだったが、亜人が思いもしない行動に出た。
川のボートに乗るかと思いきや、反対岸へと移動したのだ。続くべきかどうか悩んだ一瞬を亜人が見逃さず、ボートに強烈な一撃を入れて壊した。
「亜人にしては、頭が良いね」
「そうみたいだな」
シェラリンデの言葉にルイトガルトが素直に返す。
彼女は瀕死の亜人の息の根を止めていた。一先ずは、依頼目標は達成したと見ていいだろう。
●再会
豪華な鎧に身を包んだ騎士のフルヘルムが外れる。
イケメンではないが、育ちの良い青年だった。
「ライル! 無事で良かったよ!」
嬉しさと安堵が合わさったような表情で牡丹が言った。
「東方の観戦武官である牡丹様に、もしもの事があれば、取り返しがつきませんから」
「いいのいいの。というか、『牡丹お姉ちゃん』って呼んでって言ってるじゃん」
仲の良い姉弟のような雰囲気の中、ルイトガルトが考え事をするような仕草で呟く。
「あぁ、そう言えば東方の武官か。東方は、即疾隊の可愛い子を含めて印象は良い……」
「可愛い?」
呟きが聞こえていたのか、牡丹が返した言葉にルイトガルトは手を振った。
「気にするな。戯言だ」
「怪我した人は居るかな?」
割って入るようにイレーヌが回復魔法を掛けていく。
亜人が持っている武器には驚いたが、皆、大したダメージは負っていない。
「ソフィアも大丈夫か……い? どうした?」
まだ周囲を警戒していたソフィアにも呼び掛けたが、不意に地面に転がっていた亜人の武器を手に取ったからだ。
それとは別の武器もしげしげと見つめる。
「亜人の手掛かりになるかも」
真剣な表情で交互に武器を見定めるソフィア。
物作りに関していえば、それなりに分かっているという自負もある。
「王国内で生産された武器にも見えるかも……それとは、別に、こっちは属性を感じるね。あんまり見ない形だけど……」
「亜人が属性武器を、か? 贅沢なものだな」
ソフィアの鑑定に対してイレーヌは両肩を竦めた。
属性が込められた武具は一般的には珍しいはず。亜人が製造できるとは到底思えない。
話を聞いていたミュオが、地面に転がって動かなくなった亜人を見ながら呟いた。
「ただの亜人じゃないって事でしょうか?」
見た目は普通の亜人のようなのだが……その彼の疑問に対して、答えたのはライルだった。
「その通りです」
「何があったのですか?」
「……僕は、父上や兵らと共に亜人の討伐に向かいました――」
ライルの話によると、最初に会敵した亜人の群れを撃破。敗走する亜人を追撃の際中に奇襲を受けたという。
袋小路のような場所に追い詰めたら、追い詰めた亜人の群れごと、岩や矢の雨。
「――立て直す暇もなく、背後から強力な武器を持った亜人の群れが……隊は散り散りになって、僕も……」
その様子を見ると父である領主の行方は分からないようだ。
「先程も川からの強襲でした。警戒していたので、奇襲にはなりませんでしたが……」
ライラの言葉に一行は頷く。
同一とは言い切れないだろうが、貴族の私兵らを壊滅させた亜人の群れは同じかもしれない。
同族を捨て駒に使うという戦術の内容にも共通点は見られる。
「強力な武具と戦術を使うならば脅威です」
「ボクも同意見だね、ライラ君」
牡丹が無駄なドヤ顔をみせる。
観戦武官としての立場を思い出したようだ。
「そうなると、武具の入手先と戦術を扱う知恵を身につけた亜人の存在が気になります」
考えながらミュオはそう言った。
普通に考えれば、誰かが亜人に肩入れしているというのが妥当な所だろう。しかし、そうだとしたところで、“何の為に”という新しい疑問にたどり着く。
「同族を捨て駒にしている事も、だな」
ルイトガルトの台詞に、何人かも頷いて同意した。
「調査が必要かな。この武器も含めて、ね」
手にしていた武器を地面に降ろすソフィア。
とりあえずは亜人の襲撃に備えなければならないが、並行して調査も続行しなければならないだろう。そうなると人手が欲しい所だ。
「それなら、私の方からもハンターオフィスに働きかけたいと思います」
希がメモを取りながら応える。こういう時の動きをみると、ハンターオフィスの受付嬢っぽい。
今回、集落へと向かっていた亜人は殲滅した。だが、完全に亜人の脅威が取り除けた訳ではない。
(異質なマテリアルを感じるけれど……亜人が残した残滓?)
真剣な表情でシェラリンデが感じた事を心の中で発した。
纏わり付くような違和感の中、情報を整理するように言う。
「引き続き、亜人の討伐。調査に関しては希殿がフォロー。で、いいのかな? ライル殿の今後は?」
「父の行方も気になりますが……一度、街に戻りたいと思います」
場合によっては彼が父の代わりに領主としての役目を果たさなければならないだろう。
ライルの台詞に、牡丹も頷く。
「それで良いと思うよ。ボクとしては暴れ足りないけど」
物騒な発言に希の表情が強ばった。
観戦武官である牡丹が暴れるような事態にならないように希が付いてきているのだ。
ハンター達は牡丹を護衛しつつ、集落へと向かう亜人の群れを殲滅し、同時に強襲を仕掛けてきた亜人らも退けた。
領主の息子であるライルとも合流。今後の対策も含め、一時、レタニケの街へと帰還するのだった。
第2話へと続く――。
●『◆◆◆ドキー』
(僕は……もっと強くないと。彼ら彼女らのように、もっと強く――)
亜人の群れが街道の先に見えた。
まだ距離はあるが、会敵がもう間もなくというのは言うまでもないだろう。
各自が覚醒状態に入ると、イレーヌ(ka1372)が聖書を構えながら、誰にという訳でもなく言った。
「勝てるはずの敵に敗北した……というのが気になるな」
レタニケ領の貴族と私兵が、亜人如きに敗れた。
この事実だけで、油断はできないのは確かだ。
「現実でも、しっかりと守らせてもらうよ」
「ん? まぁ、頼りにするよ。僕も気になる事はあるんだけどね」
横に並んでいた鳴月 牡丹(kz0180)がイレーヌの宣言にそんな風に応えた。
先程から亜人よりも別の何かを探している――そんな雰囲気だ。
「なーんか、キナ臭いんですよねぇ」
可愛げに首を傾げながら人差し指を口に当てるソフィア =リリィホルム(ka2383)。
今回の亜人襲撃には、“何か”ありそうな気がしているのだ。
「真相の究明は後にでもなるかな?」
「はい。まずは敵を排除してからだと思います」
一先ずは仕事を終えてからという事だろう。確認を取ったソフィアに依頼主である紡伎 希(kz0174)が答える。
そんな4人の歩みよりも早く先行するハンター達。
「領主の軍勢が、亜人に壊滅させられるとは」
ルイトガルト・レーデル(ka6356)が目元を細めて剣を構えた。
どうして貴族とその私兵が負けたのかは、予測の範疇を出ないが、警戒するに越した事はない。
「……何かしら予想外の事態があったと考えていいだろうね……」
全員の思いを代弁するように、シェラリンデ(ka3332)も呟く。
「警戒を怠らずにいよう」
「敵の構成にも気をつける必要があるみたいだね」
ルイトガルトとシェラリンデの会話にミュオ(ka1308)が頷いた。
(大事なのは、裏側に隠れた理由にも思考を巡らせる事。でしたっけ、お師匠)
目を凝らして亜人の群れをみるが、指揮官らしき存在は確認できなかった。
亜人の群れはそれなりの規模だ。これで統率が取れているのかどうか、戦いながら観察するしかないだろう。
迫ってくる亜人をミュオと同様にライラ = リューンベリ(ka5507)も見つめていた。
ただ、その心情は哀しみと怒りに満ちている。
(集落が襲撃を受け、貴族の兵は敗走……ですか。その集落は、もう壊滅していますね)
依頼は亜人の撃退あるいは殲滅であり、集落の救助は入っていない。
つまり、そういう事なのだ。
(また、私の様な子を出してしまったのですね……茨小鬼では無いようですが……許す気はありません)
手に力が入る。これ以上の悲劇は防がなければならない。
ライラは蝙蝠の形をした武器を静かに――必殺の念を込めて亜人へと投げつけた。
●強襲
「さて……須らく処刑する」
敵中で派手にバイクを乗り捨てたルイトガルトが刀を振るう。
とりあえず、敵の数が多いのが気になるが、所詮は亜人だ。
「杖や銃持ちも居るな」
視界の中の亜人共はどれも同じような顔をしていて区別はつかないが、持っている武器は統一性が欠けていた。
「なぜ、ゴブリンが銃を――」
持っているのでしょうかと続くはずだったライラの言葉は戦場の喧騒に掻き消える。
銃を積極的に撃とうとせず、振り回すだけで鈍器にでもしているのだろうか。
ライラは振り返ると牡丹に向かって言った。
「牡丹様は、後ろでご覧になっていてください」
「退屈だよ」
つまらなさそうな牡丹の表情。隣に並んでいる希が警戒心むき出しで銃を構えていた。警戒している相手は、牡丹の動きに対してだが。
牡丹は戦いたい様子も見えるが、相手が亜人では本気にはなれないというのもあるかもしれない。
「……敗走してきた兵がいれば、戦闘の状況を聞き出せたのでしょうが……」
残念だが、最初に亜人の襲撃を受けたという集落は絶望的だろう。
せめて、状況が分かる者が居ればと思うが――そういえば、貴族の私兵らが敗走したらしいと伝えたのは誰だったのだろうかとの疑問がライラの頭の中を過ぎった。
「居ないようであれば、仕方ないです」
視界の中に兵の姿は確認できず、呟いたライラにシェラリンデが律儀に返す。
シェラリンデは亜人が放った矢を危なげなく避け、突出してきた亜人に対し、刀を突き出した。
「飛び道具が厄介ですね」
剣や槍を持っている亜人もいるが、やはり、飛び道具を扱う亜人は脅威である。
射程や位置取りを気をつけて一斉に狙われないように気を遣わなければならないからだ。
杖を持っている亜人もいるが魔法を扱う様子がないのは幸いだ。
「すみません……でも、ここから先は通行止め、です」
大鎌で亜人の首を刎ね、ミュオは亜人の突破を防ぐ。
ハンター達を勢いで抜けようとしたのだろうが、そんなに簡単ではない事を身を持って教えなければならない。
亜人の方が数が多かったが、それは戦闘開始すぐに激減していた。これが覚醒者の力というものだ。
(貴族軍が負けた以上、余程のことがあったのは確実……)
ミュオが胸に広がる不安を感じた瞬間、それは的中した。
すぐ脇を流れる川から別の亜人らが姿を現したからだ。
ボートから幾体かが上陸してくる。
「やはり来たか。そう簡単にやらせはしないぞ?」
不敵な笑みでイレーヌが新手の前に立ち塞がった。
亜人は側面から奇襲した形のつもりのようだが、警戒していたハンター達の目を欺く事には至らない。
「これ……は――とにかく、護衛を最優先です」
ソフィアが亜人が突き出した槍を華麗に避けながら、牡丹と希を守るように移動した。
槍の穂先は、とても鋭利だったが、今はそこを気にしている場合ではない。
「僕が向かいますね」
苦戦している様子ではないだろうが、川から現れた亜人の新手に対し前衛に居たミュオがイレーヌとソフィアの援護に回る。
牡丹に護衛は必要ないだろうが、万が一は防がなければならない。
「この亜人達……」
幾度か斬り結びながら、シェラリンデはふと違和感を感じた。
この亜人共の目は――ハンターを恐れていない目だ。それこそが感じた違和感だった。
「処刑の手間が省けるな」
囲まれる前に素早い動きで複数体の亜人を蹴散らすルイトガルトの言葉を聞いて、シェラリンデが思い至ったようだ。
「こっちの亜人はフェイクです」
「そういう事か!」
二人は牡丹達と合流しようとするが、亜人らが死に物狂いでしがみついてくる。
最初に見せた勢いも奇襲がバレないように意識を反らせる為のものだったのだろう。
「上陸した亜人達が最初から指示していたという事ですね」
ライラが疾影士としての能力を存分に活かした動きで投擲武器を投げながら、牡丹との合流を図ろうとする。
が、その動きは、川から上陸した亜人からの反撃で阻止された。
「……炎の属性を持った投石ですか!?」
実際に火がついている訳ではない。炎のマテリアルに包まれた石がライラの足元を直撃すると地面を砕く。直撃していたら、それなりにダメージを受けていただろう。
それは、亜人が持つ真っ赤なスリングから放たれていた。
パチンッ――そんな音と共にイレーヌの魔法が彼女の周囲に広がった。
その光属性の衝撃は、亜人如きであれば地に伏せさせるのに十分なはずであった。
だが、亜人は輝く盾を構えたまま向かって来る。
「光属性の盾、か?」
そんな物をなんで亜人が持っているのかと疑問を抱くイレーヌ。
盾持ちの後ろに居た亜人が放つ矢は、風のような鋭さを持っていた。
「可笑しいと思います」
矢を避けつつ、守勢に回るソフィア。
組み掴んで来た亜人を魔腕で掴むと、機導術の電撃を流し込んだ。
動きが鈍くなったそれを、すかさずミュオが背後から切り捨てる。
「……森からも」
その時、何かの気配を感じた。このタイミングでまだ亜人が襲いかかってくるのかとミュオが警戒する。
落ち葉や枯れ枝を踏みしめて姿を現したは豪華な鎧姿の騎士だった。フルヘルムで顔までは見えない。
亜人では無いが……。
「誰だ?」
「“信用なき相手と取引はしない”商人の鉄則ですよ?」
イレーヌとソフィアは森から現れた人物に声を掛けた。
幾ら何でも怪しすぎる。おまけに、この状況である。
しかし、ハンター達の警戒は無用であった。警戒するハンターを気にした様子はなく、手近に居た亜人を斬りつける騎士。
「加勢します!」
騎士の声は思ったより若い男のようだった。
その動きは――基本の型を忠実に守っているが、どこか経験不足を感じさせる。
「御助力感謝いたします」
ライラが竜尾刀の機構を操作させて鞭とすると、亜人を絡め取った。
「私はライラと申します。お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ライル・レフェタルニーケフです。この一帯を治める領主の、息子です」
絡められた亜人を剣で叩き伏せながら応える騎士。
包囲しようとしていた亜人の一角が崩れる。
「押し戻しましょう」
ミュオが大鎌を頭上で豪快に振り回した。
最初に会敵した亜人らを制圧したシェラリンデとルイトガルトの二人も加わり、戦況は一気にハンター達が有利となる。
その不利を悟ったのか、簡単にはハンター達を倒せないと判断したのか、川から現れた亜人共が声を上げると一斉に逃げ出した。
瀕死の仲間から武器だけを巻き上げて撤退していく様だけは、ある意味、亜人らしい。
「逃がさないよ」
追い打ちをかけようとしたシェラリンデだったが、亜人が思いもしない行動に出た。
川のボートに乗るかと思いきや、反対岸へと移動したのだ。続くべきかどうか悩んだ一瞬を亜人が見逃さず、ボートに強烈な一撃を入れて壊した。
「亜人にしては、頭が良いね」
「そうみたいだな」
シェラリンデの言葉にルイトガルトが素直に返す。
彼女は瀕死の亜人の息の根を止めていた。一先ずは、依頼目標は達成したと見ていいだろう。
●再会
豪華な鎧に身を包んだ騎士のフルヘルムが外れる。
イケメンではないが、育ちの良い青年だった。
「ライル! 無事で良かったよ!」
嬉しさと安堵が合わさったような表情で牡丹が言った。
「東方の観戦武官である牡丹様に、もしもの事があれば、取り返しがつきませんから」
「いいのいいの。というか、『牡丹お姉ちゃん』って呼んでって言ってるじゃん」
仲の良い姉弟のような雰囲気の中、ルイトガルトが考え事をするような仕草で呟く。
「あぁ、そう言えば東方の武官か。東方は、即疾隊の可愛い子を含めて印象は良い……」
「可愛い?」
呟きが聞こえていたのか、牡丹が返した言葉にルイトガルトは手を振った。
「気にするな。戯言だ」
「怪我した人は居るかな?」
割って入るようにイレーヌが回復魔法を掛けていく。
亜人が持っている武器には驚いたが、皆、大したダメージは負っていない。
「ソフィアも大丈夫か……い? どうした?」
まだ周囲を警戒していたソフィアにも呼び掛けたが、不意に地面に転がっていた亜人の武器を手に取ったからだ。
それとは別の武器もしげしげと見つめる。
「亜人の手掛かりになるかも」
真剣な表情で交互に武器を見定めるソフィア。
物作りに関していえば、それなりに分かっているという自負もある。
「王国内で生産された武器にも見えるかも……それとは、別に、こっちは属性を感じるね。あんまり見ない形だけど……」
「亜人が属性武器を、か? 贅沢なものだな」
ソフィアの鑑定に対してイレーヌは両肩を竦めた。
属性が込められた武具は一般的には珍しいはず。亜人が製造できるとは到底思えない。
話を聞いていたミュオが、地面に転がって動かなくなった亜人を見ながら呟いた。
「ただの亜人じゃないって事でしょうか?」
見た目は普通の亜人のようなのだが……その彼の疑問に対して、答えたのはライルだった。
「その通りです」
「何があったのですか?」
「……僕は、父上や兵らと共に亜人の討伐に向かいました――」
ライルの話によると、最初に会敵した亜人の群れを撃破。敗走する亜人を追撃の際中に奇襲を受けたという。
袋小路のような場所に追い詰めたら、追い詰めた亜人の群れごと、岩や矢の雨。
「――立て直す暇もなく、背後から強力な武器を持った亜人の群れが……隊は散り散りになって、僕も……」
その様子を見ると父である領主の行方は分からないようだ。
「先程も川からの強襲でした。警戒していたので、奇襲にはなりませんでしたが……」
ライラの言葉に一行は頷く。
同一とは言い切れないだろうが、貴族の私兵らを壊滅させた亜人の群れは同じかもしれない。
同族を捨て駒に使うという戦術の内容にも共通点は見られる。
「強力な武具と戦術を使うならば脅威です」
「ボクも同意見だね、ライラ君」
牡丹が無駄なドヤ顔をみせる。
観戦武官としての立場を思い出したようだ。
「そうなると、武具の入手先と戦術を扱う知恵を身につけた亜人の存在が気になります」
考えながらミュオはそう言った。
普通に考えれば、誰かが亜人に肩入れしているというのが妥当な所だろう。しかし、そうだとしたところで、“何の為に”という新しい疑問にたどり着く。
「同族を捨て駒にしている事も、だな」
ルイトガルトの台詞に、何人かも頷いて同意した。
「調査が必要かな。この武器も含めて、ね」
手にしていた武器を地面に降ろすソフィア。
とりあえずは亜人の襲撃に備えなければならないが、並行して調査も続行しなければならないだろう。そうなると人手が欲しい所だ。
「それなら、私の方からもハンターオフィスに働きかけたいと思います」
希がメモを取りながら応える。こういう時の動きをみると、ハンターオフィスの受付嬢っぽい。
今回、集落へと向かっていた亜人は殲滅した。だが、完全に亜人の脅威が取り除けた訳ではない。
(異質なマテリアルを感じるけれど……亜人が残した残滓?)
真剣な表情でシェラリンデが感じた事を心の中で発した。
纏わり付くような違和感の中、情報を整理するように言う。
「引き続き、亜人の討伐。調査に関しては希殿がフォロー。で、いいのかな? ライル殿の今後は?」
「父の行方も気になりますが……一度、街に戻りたいと思います」
場合によっては彼が父の代わりに領主としての役目を果たさなければならないだろう。
ライルの台詞に、牡丹も頷く。
「それで良いと思うよ。ボクとしては暴れ足りないけど」
物騒な発言に希の表情が強ばった。
観戦武官である牡丹が暴れるような事態にならないように希が付いてきているのだ。
ハンター達は牡丹を護衛しつつ、集落へと向かう亜人の群れを殲滅し、同時に強襲を仕掛けてきた亜人らも退けた。
領主の息子であるライルとも合流。今後の対策も含め、一時、レタニケの街へと帰還するのだった。
第2話へと続く――。
●『◆◆◆ドキー』
(僕は……もっと強くないと。彼ら彼女らのように、もっと強く――)
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/25 08:03:26 |
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相談卓 シェラリンデ(ka3332) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/01/30 00:20:01 |