ゲスト
(ka0000)
【幻洞】謎のノッポモグラだぜ!
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/02/05 07:30
- 完成日
- 2017/02/11 19:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
辺境要塞ノアーラ・クンタウの管理官であるヴェルナーが部族会議へ救援要請をだした。
丁度良くファリフがホープにいたので、そのまま話を回すと彼女は快諾する。
やはり、ヴェルナーへのわだかまりは多少なりとも残ってはいるものの、今回の要請内容は辺境ドワーフに関するものだ。
「辺境ドワーフって、ヨアキムさんやカペラさんのところだよね」
暫く会ってないなとファリフはあの親子の顔を思い出す。
「トリシュヴァーナ、行こう」
ファリフを待っていたトリシュヴァーナへ声をかけると、ゆっくりと立ち上がる。
トリシュヴァーナの背に乗ったファリフは一路、辺境ドワーフへと向かった。
騒々しくて気持ちが良いあのドワーフたちの下へ。
感動の再会の様子を全く見せないのが辺境ドワーフかと思いきや、その原因はチューダともう一体の幻獣であった。
チューダは相変わらずなんだが、似たような大きさの白い鳥はぎゃんぎゃんチューダに怒りを振り回している。
カペラから話を聞けば、白い鳥はテルルという幻獣であり、この地下にいたという。
「ここ、鉱山じゃないの?」
「ああ? この下には遺跡があるんだよ。おめーらが掘り起こしちまったから、その部分が出てきたんじゃねぇか」
「そうなんだ。ボクはファリフ、スコール族の長をやってるんだ」
ドワーフの鉱山については何も知らなかったファリフはテルルの話を素直に聞いている。
「ってぇ、あぁん? トリシュヴァーナじゃねぇか。お前、何してんだ」
「ようやく冷静になったか。ファリフは我の祝福を受けし者。試練に打ち克ったゆえ、守っておる」
呆れ口調のトリシュヴァーナの話を聞いて、テルルは「ほーん、お前がなぁ」とつぶらな瞳でファリフを見つめると、小首を傾げる。
「ま、俺っちの住処を荒らされるのは不本意だ。一緒に戦おうぜ」
ひらひらと、白い手を振ったテルルにファリフとカペラは「よろしくね」と返した。
敵の動きは早く、人類側は来てくれたハンター達とテルルに配置につくようファリフが声をかける。
「人間と戦うなんてなぁ……まぁ、生きてりゃ色々あるか。おめぇら! 命燃やしていくぜぇええええ!」
テルルはそう叫ぶと、カマキリに乗り込み、即座に起動させる。
●
その一方で、今回進行してくる三歪虚の一人、ノッポモグラのモルッキーは相方のセルトポのショベルが第二採掘場へ続く壁を取り壊す瞬間を眺めていた。
「さっすが、セルトポ。すんなりと開いたわん」
そこはかとなくオネェ言葉で相方を誉めるモルッキーはゆっくりと立ち上がる。
振り向けばそこにはトーチカより預かった歪虚多数。
侵攻を今かと待ちわびているようであった。
「そぉーれ、アンタたち。姐さんの為に行くわよー」
人差し指を第二採掘場へと指示したモルッキーはアースワームより一回り大きい乗車用のアースワームに乗って進みだす。
「さぁーて、全国の女子中学生の皆さ~ん! これから、皆さんのイケメン☆モルッキー参りますわよぉ~ん!」
全開ノリ気のモルッキーは人類側の情報に敏感のようであった。
辺境要塞ノアーラ・クンタウの管理官であるヴェルナーが部族会議へ救援要請をだした。
丁度良くファリフがホープにいたので、そのまま話を回すと彼女は快諾する。
やはり、ヴェルナーへのわだかまりは多少なりとも残ってはいるものの、今回の要請内容は辺境ドワーフに関するものだ。
「辺境ドワーフって、ヨアキムさんやカペラさんのところだよね」
暫く会ってないなとファリフはあの親子の顔を思い出す。
「トリシュヴァーナ、行こう」
ファリフを待っていたトリシュヴァーナへ声をかけると、ゆっくりと立ち上がる。
トリシュヴァーナの背に乗ったファリフは一路、辺境ドワーフへと向かった。
騒々しくて気持ちが良いあのドワーフたちの下へ。
感動の再会の様子を全く見せないのが辺境ドワーフかと思いきや、その原因はチューダともう一体の幻獣であった。
チューダは相変わらずなんだが、似たような大きさの白い鳥はぎゃんぎゃんチューダに怒りを振り回している。
カペラから話を聞けば、白い鳥はテルルという幻獣であり、この地下にいたという。
「ここ、鉱山じゃないの?」
「ああ? この下には遺跡があるんだよ。おめーらが掘り起こしちまったから、その部分が出てきたんじゃねぇか」
「そうなんだ。ボクはファリフ、スコール族の長をやってるんだ」
ドワーフの鉱山については何も知らなかったファリフはテルルの話を素直に聞いている。
「ってぇ、あぁん? トリシュヴァーナじゃねぇか。お前、何してんだ」
「ようやく冷静になったか。ファリフは我の祝福を受けし者。試練に打ち克ったゆえ、守っておる」
呆れ口調のトリシュヴァーナの話を聞いて、テルルは「ほーん、お前がなぁ」とつぶらな瞳でファリフを見つめると、小首を傾げる。
「ま、俺っちの住処を荒らされるのは不本意だ。一緒に戦おうぜ」
ひらひらと、白い手を振ったテルルにファリフとカペラは「よろしくね」と返した。
敵の動きは早く、人類側は来てくれたハンター達とテルルに配置につくようファリフが声をかける。
「人間と戦うなんてなぁ……まぁ、生きてりゃ色々あるか。おめぇら! 命燃やしていくぜぇええええ!」
テルルはそう叫ぶと、カマキリに乗り込み、即座に起動させる。
●
その一方で、今回進行してくる三歪虚の一人、ノッポモグラのモルッキーは相方のセルトポのショベルが第二採掘場へ続く壁を取り壊す瞬間を眺めていた。
「さっすが、セルトポ。すんなりと開いたわん」
そこはかとなくオネェ言葉で相方を誉めるモルッキーはゆっくりと立ち上がる。
振り向けばそこにはトーチカより預かった歪虚多数。
侵攻を今かと待ちわびているようであった。
「そぉーれ、アンタたち。姐さんの為に行くわよー」
人差し指を第二採掘場へと指示したモルッキーはアースワームより一回り大きい乗車用のアースワームに乗って進みだす。
「さぁーて、全国の女子中学生の皆さ~ん! これから、皆さんのイケメン☆モルッキー参りますわよぉ~ん!」
全開ノリ気のモルッキーは人類側の情報に敏感のようであった。
リプレイ本文
ドワーフの坑道は入れるようでは入れない。
勝手に掘って金目になりそうなものを断りもなく持っていこうとすれば袋叩きは当然とも言われるとか。
歪虚の侵攻に対しては一大事であり、辺境ドワーフ達は要塞管理者であるヴェルナーへ辺境部族とハンターへの応援要請を出した。
あまり入ることのない坑道にハンター達は興味を示しつつ、カペラたちの方へと向かう。
「広い!」
素直な感想の声をあげる夢路 まよい(ka1328)はぴょんと跳ぶように一歩前に出る。
「影で暗いところがあるから気を付けてね」
気が付いたファリフが声をかけると、「大丈夫♪」とターンをして返事を返すと、少し躓いたようにぐらりと、身体を揺らす。
「っと、平気よ」
まよいはユグディラのトラオムに言えば、まよいが転ばなくて済んだと思ったトラオムは青紫に白が混じった尻尾を安心したように揺らせる。
幼いパートナーたる、まよいが転ばないか少し肝を冷やしていたようだった。
「カペラ、ファリフ、久しぶり!」
元気いっぱいのアルカ・ブラックウェル(ka0790)が手を上げると、カペラが顔を明るくさせてアルカの上げた手のひらへ軽くジャンプしてハイタッチをした。
「ホントね!」
顔を明るくするカペラにアルカは嬉しそうに笑う。
「来てくれてありがとう!」
「幼馴染とバトンタッチで来たんだけど、大変なことになっているっぽいね」
アルカがカペラに言えば、彼女は「いつもの事よ」と肩を竦めるが、カペラの興味はアルカの傍にいるユグディラ。
「フィルレだよ」
アルカの紹介を受けて緩やかに一礼をするユグディラはとても紳士的だ。
「私はカペラよ。宜しくね」
にっこりとカペラが言うと、「こちらこそ」と言いたいようだった。
内心、カペラは「ガーディアンってところかしら」という感想を持ったが、その真相はまたの楽しみにしようと胸に秘める。
土の中の坑道の中にそぐわない白い羽を持ち、飛行帽を被った丸っこい鳥に気づいたヴィルマ・ネーベル(ka2549)はその方向へと向かう。
「そなた、幻獣かえ?」
尋ねられた丸っこい鳥は「おうよ!」と声を返す。
「俺っちはテルルだ! 幻獣が人間と手を組むだなんて、俺っちにとっちゃありえねぇが、長く生きてりゃ、色々とあるもんだな」
一息で言い切ったテルルはふーっと、ため息をついたが、とてつもない早口だ。
「このような事情ならば致し方なかろう。よろしくのぅ」
ひらりと、手を一度振るヴィルマにテルルは「まぁな」と言った。
「どうかしたのか」
ヴィルマの近くにいたトレーネはふいっと、そっぽを向いたが、ヴィルマの傍にちゃんといた。
「ファリフさん、お久しぶり」
「また来てくれてありがとうっ」
シン(ka4968)がファリフに声をかけると、ファリフはにこっと笑う。
「また会えて嬉しいよ」
「戦いの無い時じゃないのはハンターの辛いところだね」
ファリフの言葉に「確かに」とシンは素直に返す。
ハンターだから仕方ない。
そうしているうちに、歪虚の侵攻が始まった。
辺境ドワーフの鉱山の中をこじ開けるように『向こうから』崩れていく。
ヴィルマのユグディラであるトレーネが歪虚が近い距離にいる事を伝えてくれた。
「そうか、わかった」
トレーネの報告にヴィルマは一度頷いた。
「くるぞ! ネフィリア!」
敵の襲来を叫ぶ時音 ざくろ(ka1250)は自身で乗り付けてきたゴーレムへ駆け出していった。
自身のゴーレム「ハンター王」で急行するためだ。
「うん!」
ちらりと、振り返ったネフィリア・レインフォード(ka0444)もざくろと共に走る。
坑道の向こうから、土埃が気流で流れてくると、土が崩れる音が聞こえてきた。
全員に緊張が走ると同時に大きなアースワームに乗った痩せっぽちのシルエットが土埃の向こうから見える。
「はぁ~~い! 全国の女子中学生のみなさ~~ん! お元気ですかーー」
大きなアースワームに乗った痩せっぽちの影が晴れてくると、年齢と性別が限定された挨拶が飛んできた。
背が高い痩せっぽちのモグラ型歪虚であるのはすぐに分かったが、被っているヘルメットには『女子第一』も文字が書いている。
「大変だ。変態だっ」
ざくろがまず叫ぶ。間違ってない。
「アラん、失礼ねぇ。アタシはドロンコ一味のモルッキーよ。ヨロシコ~」
どうやら、ざくろの声が聞こえていたようで、モルッキーはアースワームの上に立って挨拶をする。
「じょしちゅうがくせいって何なのだ? 美味しいのかな??」
食材と勘違いしているネフィリアだが、ざくろの心の中に燃える正義の炎は不埒なモルッキーに注がれている。
「侵攻なんかさせないぞ! ネフィリア、いくよ!」
「とぉ!」
何故か犬の扮装をしているゴーレムより降りた二人は見事にビシィ! と、組体操系のポーズを決め、敵味方から拍手を受ける。
因みに、謎の張り紙はカペラの手によって没収され、ネフィリアのユグディラにサイコロを手渡していた。
「女の子が好きなの?」
首を傾げつつ、尋ねるまよいに気づいたモルッキーは目を丸くするどころか、ハート形になっている。
「アンら~~~、きゃわゆいわ~~~!」
両手を組みしなを作るモルッキーは確実にオネェ疑惑すら出てくる。
「しっかも! 何なのこのきゃわいこちゃん達のパーティーは!」
他のハンター達も美少女、美女ばかりと気づき、モルッキーはハッスルしだした。
「アクベンスかな」
「多分、違うと思う」
真顔のファリフの脳裏に浮かぶのは某兎耳帽子の歪虚の目線に黒い線が入っているようだったが、シンが素直に訂正してくれた。
一方、シンはあまりのモルッキーの濃さに本能が軽く警鐘を鳴らしているが、多分、会話ができる歪虚なので警戒は怠らないでおこうとシンは心にとめる。
「ジョシチュウガクセイ? 何じゃそれは」
どこか呆れたような、不思議そうな声音のヴィルマにモルッキーが「説明しよう!」と概要を説明する。
「……モグラって黒焼きにすると薬になるんだって」
ぽつりと呟いたのはアルカだった。
「へー」
もはや、カペラからすれば、この現状は何なのだろうかと遠い目にならざるを得ない。
「何気に高い」
「え!」
さらなる追い打ちになるアルカの言葉にカペラは俄然やる気になる。
「テルル! あれを生け捕りにしましょ!」
「ったぁーく! これだから強欲ドワーフは!」
文句ひとつだけ言ってテルルはひらりとカマキリに乗った。
「こっちもやるわよー!」
キラキラ目を輝かせたカペラも戦闘配置についているがアルカは目を瞬かせる。
「でも、無理じゃないの?」
残念ながら、アルカの疑問を解消してくれる者はいなかった。
ハンター達に概要を伝えていたモルッキーだが、姐さんに言われたことを思い出し、我に返る。
「こんなカワイ子ちゃんばっかりだけど、ここまでよーー! やっておしまい!」
びしぃっと、モルッキーがアースワームとパペットマンへ指示を出した。
土色の歪虚達は素早さはないが一定したリズムで進みだす。
「せんてひっしょー!」
元気よく飛び出したのはネフィリアだ。
覚醒したことと、地を駆けるものを発動したことによって、視覚が弱いアースワームたちはネフィリアの方へと向かいだす。
「どこ向いてるんだい!」
更に明るい声で駆け出したアルカが一方方向に向かいだすアースワームたちを翻弄するようにアースワームの方へと駆け出す。
更にジェットブーツを利用してカペラも撹乱に参加する。
感知するマテリアルが拡散されており、アースワームたちは迷走をしているようだ。
ネフィリアのマテリアルを受けてドリルナックルが高速回転をはじめた。
マテリアルに反応したアースワームたちは近くにいるだろうマテリアル……ネフィリアへと頭ごと突っ込んでくるが、その動きが鈍っている。
アースワームの周囲に淡い霧が一瞬広がっていたのだ。
ネフィリアはそれが自身が連れているユグディラのココのスキルと理解している。振り向くと、ココはネフィリアを支援していることに成功していた。
にぱっと、笑顔になったネリフィアは拳を前に突き出してドリルナックルをアースワームへめり込ませる。
パンチとドリルの相乗効果でアースワームは吹っ飛んでいき、近くにいた同族も巻き込んでいったが、その数は多く、身を乗り出すように同族を踏んでいく。
「くっ! 敵が多い! ネリフィア!」
機導士の特性を生かし、デルタレイを発動していたざくろはネフィリアの立ち位置を危惧している。
アルカもまた、横目でネフィリアがアースワームに囲まれていることに気づいていた。
逃げ道を作らなければ、彼女が危ない。
「急ぐがよい」
ヴィルマの声にアルカはダガーを抜き、身体中にマテリアルを巡らせる。
鋭いアルカの言葉が早いか否か、一気に加速して周囲のアースワームを斬り付けていく。
逃げ道を作る為にアサルトディスタンスを発動している為、アルカはアースワームの身体を押しのけるように斬り付けていった。
「ざくろ!」
アルカの叫びに応え、ざくろがジェットブーツでネフィリアの方へと向かう。
「ネフィリア! 出るよ!」
「わかった!」
さらに道を広げるために、ネフィリアは逃げ道のわきにいるアースワームの胴体めがけてロケットナックルを飛ばす。
更に道が開けて、ハンター達は一度歪虚達から脱する。
ちらりと、ヴィルマがまよいの方を向くと、彼女はシンとファリフの壁によって、エクステンドキャストを展開していた。
発動までに無防備となってしまう為、守備は必須だ。
ふ……と、まよいの瞳がひらかれたことに気づいたヴィルマは「行けるかのぅ」とどこか謳うように呟く。
ヴィルマの声が聞こえたかのようにまよいが自身の前に突き出したのは黒い縄が巻き付けられた深紅の木製の杖。
二人は同時に同じ術を発動させた。
魔術師二人より放たれた二種の電撃。
敵へと駆ける時間は人の瞬きよりも短く、瞬時にその身を貫く。
轟音は山彦の如く、坑道の中に響いた。
雷の音が静まったころ、半数以上のアースワームが倒れていた。
まだ動くアースワームもいたが、電撃の痺れか、動きが鈍っている。
「あらら~~。やるわね~~~」
両手を頬に当てて驚くモルッキーは後続の方へと視線を向けた。
「パペットマン、出番よ~~」
子供のような形のパペットマンはのろのろと動き出して泥をハンター達へと投げはじめてた。
「わわわわわ!」
汚れる事による本能的回避でハンター達は避けてしまう。
パペットマン達は少しずつ進みながらも確実に泥を投げていく。パペットマンの身体は泥でできており、一度絡まれると、離すのが大変だ。
このままでは距離を縮められてしまう。
歪虚に押されるやもしれない空気の中、チェーンウィップが中空を引き裂き、その先端がパペットマンを引き裂いた。
泥を投げるパペットマンの中へ勇敢にも飛び込んだのはアルカだ。無駄な動きがなく、振り捌くチェーンウィップが投げつけられている泥をも跳ねのけている。
アルカの無駄がない鞭捌きはフィルレが彼女の為に奏でる旅人たちの練習曲。
旅人の歩みの如く、緩やかな旋律は単調であるものの、その旋律には無駄がない。
出来得る限りの無駄を省き、パペットマンの泥を回避できるように旋律はアルカへと届けられている。
「勇ましいわねぇ~~ん」
まだまだパペットマンはいるとばかりにモルッキーは更にやれと腕を大きく振って合図をした。
「ヴィルマさん達を頼むね」
「わかった」
ファリフに前衛の守りを頼んだのはシンだ。
パペットマンはモルッキーの指示に従い、泥玉をつぶさに投げていく。その数量を視界でとらえたアルカは本能的に腕で頭部を庇って防御する。
泥玉がアルカの身体に当たり、艶やかなゴールデンロッドの髪が汚れていく。
「くっ……」
一度引くべきだと察したアルカの傍を迅雷のような速さで追い越す。
「これ以上、汚さないでくれるかな」
アルカを庇うように前に立ち、まっすぐモルッキーの方を向き、睨みつけるのはシンだ。
「一度後退した方がいいと思います」
シンの意見にアルカは「ありがとう、後はお願い」と言って後退した。
「トラオム!」
「ココ!」
まよいとネフィリアがユグディラの名を呼ぶと、彼らはアルカの方へと駆けていく。
「フィルレ! シンにも練習曲を!」
後退したアルカにユグディラ達がげんきににゃ~れのお祈りをしようとしてると、アルカは自身のパートナーへ叫ぶ。
アルカの気配が消えるのを察したシンは一度身の丈ほどのラージブレードを鞘に納めると一歩前に出る。
構えたのち、シンは一気にラージ・ブレードを抜いた。
全長百六十センチの大剣を薙ぐと、パペットマンの身体を上下に割っていき、剣の勢いのまま、剣を振り下ろす。
立ち止まらず、シンは素早い動きでパペットマンを振り払っていった。
パペットマンの他に電撃のダメージが軽減されたアースワームたちもシンのマテリアルへと身体を向けているが、ネフィリアのユグディラであるココの幻夢術の霧で動きが鈍っている。
「のろまだなっ」
地をかけるものでパペットマンを誘導するように戦場を駆けるネフィリアはタイミングを見計らって大きな魔導装置がつけられているナックルへとマテリアルを込める。
瞬間、横から生き延びていたアースワームがネフィリアへ突っ込もうとするが、見計らったようにヴィルマのアイスボルトがアースワームの身体を地へ杭打つ。
「いっけーーー!」
魔導装置がネフィリアのナックルより放たれ、パペットマンへと飛び込んでいくと、ドミノ倒しのようにパペットマンが倒れていく。
シンの死角に潜り込んだアースワームに気づいたざくろは懐中時計「星読」を掲げる。
ざくろの前に浮かぶ光の三角形の頂点が光り、アースワームを貫いた。
「見つけられないと思ったのかしら?」
まよいが口角を上げてにんまり笑むと、他のパペットマンの隙間を縫ってシンへ近づこうとするパペットマンの胴をウィンドスラッシュで引き裂く。
「んまぁあああああ! 何なのあのイケメン!」
キィイイイっと、悔しそうにモルッキーが叫びだす。
「女の子達の応援が沢山あって、羨ましいわぁ~~~!」
素直に悔しがるモルッキーの言葉はざくろに聞こえていたようであった。
「ざくろは男の子だよ!」
モルッキーへの怒りを露にしたざくろは大きく腕を空に突き上げて振り回している。
ショックを隠し切れないモルッキーは顎が外れて地に落ちんばかりに口を大きく開け、目が飛び出るんじゃないかというほど見開いている。
「ええええ!? 人類にはこんなカワイ子ちゃんな男の子が!? 全く理解不能だわぁ~」
頭で両手を抱え、首を振るモルッキーにヴィルマがため息をつく。
「そなたがよっぽど理解不能じゃ」
「つれないわぁあああ」
冷静なヴィルマのツッコミにモルッキーは身を捩って腰を振り悲しみを表現している。
猛烈に気色悪い。
「やっぱりアクベンスじゃ……」
「わが眷属を吸収した奴はあんな輩ではなかったぞ」
いやそうな顔をするファリフが某歪虚ではないか推測するが、絶対に違う。
「もう、気が付いたら、パペットマンもあんたたちのせいで半分もやられちゃったじゃないの~~」
嫌だわと言いたいようにモルッキーは嘆きだした。
「もう、お前ひとりだ! 観念しろ!」
ざくろが人差し指をモルッキーへびしっと突きつける。
「観念なんかしないわよー。今日のビックビクドッキドキ歪虚ちゃん、出番よー」
モルッキーが乗車していた一回り大きいアースワームにハンター達をやっつけろと指示をすると、先ほどのアースワーム達とは違って動きが素早い。
「随分速いぞ! ネフィリア、アルカ、カペラ、いこう!」
乗車アースワームが猛然と加速スキルを使うハンター達へ向かっていく。
「わわわわわ! ちょっと、速すぎるわよぉおおおおおお!!」
特に風よけの屋根とかもない状態でアースワームに乗っているモルッキーは思った以上の体感スピードに驚いている。
四人が横一列になって加速すると、一気にバラバラになって動き出す。
一番近かったのはざくろだったようで、頭で突こうと猛然と追う。
「ほらほらこっちだよ!」
誘導するざくろはジェットブーツである所まで行くと、アルカへバトンタッチしてざくろは離脱する。
「次はボクだよ!」
アルカもまた、ジェットブーツでアースワームの頭を誘導していた。
「おらよ!」
いつの間にか前進してきたテルルがカマキリに乗って、乗車用アースワームの身体をカマキリの腕で掴む。
「ちょっと、テルル! 暴れてウチの坑道壊さないでよ!」
ざくろとて、ゴーレムで前衛に出てないのに、カマキリが出てきてカペラが肝を冷やす。
「バーロー! 歪虚に繊細なんざ必要ねーよ!」
江戸っ子口調で言葉を返すテルルは残ったパペットマンから泥を受ける。
「てっめーら! なんてことしやがる!」
怒ったテルルがカマキリの片腕の鎌を横に薙いでパペットマン達を一掃した。
「もー、テルルってば。アルカ! こっちよ!」
「カペラ!」
アルカがカペラの声に気づき、カマキリの腕が抱えているアースワームの下を潜ると、丁度、乗車しているモルッキーの近くをすり抜ける距離だった。
「ね、ね! あなた、女の子が好きなの!?」
「あ~~んら、かわいこちゃ~~ん!」
前線に駆け出してきたまよいの声かけにモルッキーは即座に反応する。
「ね、私はどうかしら!」
可愛らしくポーズをとるまよいはとても可愛らしい。
「これから、女子中学生になるのかしら~~~! もう、大人の階段昇っちゃうロマンよね!」
テンションが上がったモルッキーは唇を突き出してまよいへ投げチューをしている。
「わ! やっぱり変態だ! まよい、逃げて!」
心配するざくろの気持ちは殆どのハンターがよくわかるが、まよいは鈴のような笑い声をあげている。
「あははは、おもしろーい」
「ほら、こっちきて! ちゅーしてあげ……」
刹那、歪虚のモルッキーも本能的に震えるほどの殺気が大斧とラージ・ブレードがモルッキーの両ひげの先端を削いだ。
「近づかないでくれるかな」
「リアルブルーでは、せくはらって言うんだよ」
鋭い眼光のシンとファリフがモルッキーを睨みつける。
その間、アルカは物理的乙女の危機を潜り抜け、アースワームの頭を誘導していく。
「仕上げは頼んだよ!」
「わかってる!」
地上を高速で移動する動物霊の力を借りたネフィリアはトップスピードを維持するよう、乗車用アースワームの追撃を振り払わないようにまっすぐ駆け抜ける。
「え、え?」
モルッキーはようやく、ハンター達の目論見に気づき、おろおろしながら周囲を見ていた。
「もしかして???」
はっと気づいたモルッキーが両手で頬を挟む。
「結ばれているーーー!?」
モルッキーの絶叫通り、乗車用アースワームはハンター達の連係プレーで結ばれており、身動きが取れなくなっていた。
「その通りじゃ」
ヴィルマが言えば、まよいはモルッキーから離れて彼女の隣に駆け戻っている。
「若いどころか、幼い女子を狙うとはとんだ変態モグラじゃな」
呆れた物言いのヴィルマは言葉をつづける。
「我はお呼びでないじゃろうが、そなたのような変態は魔法で粛正せねば気が済まぬ性質でのぅ」
「そんなことないわよぅ! アンタだって可愛いわよ!」
最後の物騒なセリフは聞いてないのか、モルッキーはヴィルマのフォローを叫ぶ。
「可愛いは正義なのはわかるが、心的危害を与えるようなものは許されぬ」
ヴィルマはまよいと目を合わせる。
「とっとと這え」
冷水が如くのヴィルマの声と共にまよいとのライトニングボルトをモルッキーへと放った。
「あああああああ! ぎゃぁあああああああ!」
モルッキーの絶叫が響き、電撃を受けて痙攣のような動きを見せるモルッキーの身体の骨が一瞬見えたような気がする。
更にざくろがホーリーメイスを突きの構えにして駆け出す。
「くらえ! シビレメイス!」
ぷすっと、モルッキーに槍の穂先を刺せば、エレクトリックショックで更にモルッキーは電撃を浴びることになった。
「もぅン、ダメン……」
ぱったりと倒れてしまったモルッキーの姿を見て、ハンター達の勝利が決定される。
「やった!」
ざくろとネフィリアが大喜びで両手足を伸ばし、勝利のポーズとコールを決めていた。
「この歪虚も始末しなきゃね」
モルッキーが乗っていた乗車用アースワームに気を引かれていたところ、ネフィリアが周囲を見回す。
「あれ、親愛のしるしに殴り合おうとしたのに、モルッキーの姿がない!」
周囲を見ても、電撃で倒れていたモルッキーの姿はなかった。
「また来るのかしら?」
首を傾げるまよいにカペラは「次こそ、黒焼きに」と決意する。
勝手に掘って金目になりそうなものを断りもなく持っていこうとすれば袋叩きは当然とも言われるとか。
歪虚の侵攻に対しては一大事であり、辺境ドワーフ達は要塞管理者であるヴェルナーへ辺境部族とハンターへの応援要請を出した。
あまり入ることのない坑道にハンター達は興味を示しつつ、カペラたちの方へと向かう。
「広い!」
素直な感想の声をあげる夢路 まよい(ka1328)はぴょんと跳ぶように一歩前に出る。
「影で暗いところがあるから気を付けてね」
気が付いたファリフが声をかけると、「大丈夫♪」とターンをして返事を返すと、少し躓いたようにぐらりと、身体を揺らす。
「っと、平気よ」
まよいはユグディラのトラオムに言えば、まよいが転ばなくて済んだと思ったトラオムは青紫に白が混じった尻尾を安心したように揺らせる。
幼いパートナーたる、まよいが転ばないか少し肝を冷やしていたようだった。
「カペラ、ファリフ、久しぶり!」
元気いっぱいのアルカ・ブラックウェル(ka0790)が手を上げると、カペラが顔を明るくさせてアルカの上げた手のひらへ軽くジャンプしてハイタッチをした。
「ホントね!」
顔を明るくするカペラにアルカは嬉しそうに笑う。
「来てくれてありがとう!」
「幼馴染とバトンタッチで来たんだけど、大変なことになっているっぽいね」
アルカがカペラに言えば、彼女は「いつもの事よ」と肩を竦めるが、カペラの興味はアルカの傍にいるユグディラ。
「フィルレだよ」
アルカの紹介を受けて緩やかに一礼をするユグディラはとても紳士的だ。
「私はカペラよ。宜しくね」
にっこりとカペラが言うと、「こちらこそ」と言いたいようだった。
内心、カペラは「ガーディアンってところかしら」という感想を持ったが、その真相はまたの楽しみにしようと胸に秘める。
土の中の坑道の中にそぐわない白い羽を持ち、飛行帽を被った丸っこい鳥に気づいたヴィルマ・ネーベル(ka2549)はその方向へと向かう。
「そなた、幻獣かえ?」
尋ねられた丸っこい鳥は「おうよ!」と声を返す。
「俺っちはテルルだ! 幻獣が人間と手を組むだなんて、俺っちにとっちゃありえねぇが、長く生きてりゃ、色々とあるもんだな」
一息で言い切ったテルルはふーっと、ため息をついたが、とてつもない早口だ。
「このような事情ならば致し方なかろう。よろしくのぅ」
ひらりと、手を一度振るヴィルマにテルルは「まぁな」と言った。
「どうかしたのか」
ヴィルマの近くにいたトレーネはふいっと、そっぽを向いたが、ヴィルマの傍にちゃんといた。
「ファリフさん、お久しぶり」
「また来てくれてありがとうっ」
シン(ka4968)がファリフに声をかけると、ファリフはにこっと笑う。
「また会えて嬉しいよ」
「戦いの無い時じゃないのはハンターの辛いところだね」
ファリフの言葉に「確かに」とシンは素直に返す。
ハンターだから仕方ない。
そうしているうちに、歪虚の侵攻が始まった。
辺境ドワーフの鉱山の中をこじ開けるように『向こうから』崩れていく。
ヴィルマのユグディラであるトレーネが歪虚が近い距離にいる事を伝えてくれた。
「そうか、わかった」
トレーネの報告にヴィルマは一度頷いた。
「くるぞ! ネフィリア!」
敵の襲来を叫ぶ時音 ざくろ(ka1250)は自身で乗り付けてきたゴーレムへ駆け出していった。
自身のゴーレム「ハンター王」で急行するためだ。
「うん!」
ちらりと、振り返ったネフィリア・レインフォード(ka0444)もざくろと共に走る。
坑道の向こうから、土埃が気流で流れてくると、土が崩れる音が聞こえてきた。
全員に緊張が走ると同時に大きなアースワームに乗った痩せっぽちのシルエットが土埃の向こうから見える。
「はぁ~~い! 全国の女子中学生のみなさ~~ん! お元気ですかーー」
大きなアースワームに乗った痩せっぽちの影が晴れてくると、年齢と性別が限定された挨拶が飛んできた。
背が高い痩せっぽちのモグラ型歪虚であるのはすぐに分かったが、被っているヘルメットには『女子第一』も文字が書いている。
「大変だ。変態だっ」
ざくろがまず叫ぶ。間違ってない。
「アラん、失礼ねぇ。アタシはドロンコ一味のモルッキーよ。ヨロシコ~」
どうやら、ざくろの声が聞こえていたようで、モルッキーはアースワームの上に立って挨拶をする。
「じょしちゅうがくせいって何なのだ? 美味しいのかな??」
食材と勘違いしているネフィリアだが、ざくろの心の中に燃える正義の炎は不埒なモルッキーに注がれている。
「侵攻なんかさせないぞ! ネフィリア、いくよ!」
「とぉ!」
何故か犬の扮装をしているゴーレムより降りた二人は見事にビシィ! と、組体操系のポーズを決め、敵味方から拍手を受ける。
因みに、謎の張り紙はカペラの手によって没収され、ネフィリアのユグディラにサイコロを手渡していた。
「女の子が好きなの?」
首を傾げつつ、尋ねるまよいに気づいたモルッキーは目を丸くするどころか、ハート形になっている。
「アンら~~~、きゃわゆいわ~~~!」
両手を組みしなを作るモルッキーは確実にオネェ疑惑すら出てくる。
「しっかも! 何なのこのきゃわいこちゃん達のパーティーは!」
他のハンター達も美少女、美女ばかりと気づき、モルッキーはハッスルしだした。
「アクベンスかな」
「多分、違うと思う」
真顔のファリフの脳裏に浮かぶのは某兎耳帽子の歪虚の目線に黒い線が入っているようだったが、シンが素直に訂正してくれた。
一方、シンはあまりのモルッキーの濃さに本能が軽く警鐘を鳴らしているが、多分、会話ができる歪虚なので警戒は怠らないでおこうとシンは心にとめる。
「ジョシチュウガクセイ? 何じゃそれは」
どこか呆れたような、不思議そうな声音のヴィルマにモルッキーが「説明しよう!」と概要を説明する。
「……モグラって黒焼きにすると薬になるんだって」
ぽつりと呟いたのはアルカだった。
「へー」
もはや、カペラからすれば、この現状は何なのだろうかと遠い目にならざるを得ない。
「何気に高い」
「え!」
さらなる追い打ちになるアルカの言葉にカペラは俄然やる気になる。
「テルル! あれを生け捕りにしましょ!」
「ったぁーく! これだから強欲ドワーフは!」
文句ひとつだけ言ってテルルはひらりとカマキリに乗った。
「こっちもやるわよー!」
キラキラ目を輝かせたカペラも戦闘配置についているがアルカは目を瞬かせる。
「でも、無理じゃないの?」
残念ながら、アルカの疑問を解消してくれる者はいなかった。
ハンター達に概要を伝えていたモルッキーだが、姐さんに言われたことを思い出し、我に返る。
「こんなカワイ子ちゃんばっかりだけど、ここまでよーー! やっておしまい!」
びしぃっと、モルッキーがアースワームとパペットマンへ指示を出した。
土色の歪虚達は素早さはないが一定したリズムで進みだす。
「せんてひっしょー!」
元気よく飛び出したのはネフィリアだ。
覚醒したことと、地を駆けるものを発動したことによって、視覚が弱いアースワームたちはネフィリアの方へと向かいだす。
「どこ向いてるんだい!」
更に明るい声で駆け出したアルカが一方方向に向かいだすアースワームたちを翻弄するようにアースワームの方へと駆け出す。
更にジェットブーツを利用してカペラも撹乱に参加する。
感知するマテリアルが拡散されており、アースワームたちは迷走をしているようだ。
ネフィリアのマテリアルを受けてドリルナックルが高速回転をはじめた。
マテリアルに反応したアースワームたちは近くにいるだろうマテリアル……ネフィリアへと頭ごと突っ込んでくるが、その動きが鈍っている。
アースワームの周囲に淡い霧が一瞬広がっていたのだ。
ネフィリアはそれが自身が連れているユグディラのココのスキルと理解している。振り向くと、ココはネフィリアを支援していることに成功していた。
にぱっと、笑顔になったネリフィアは拳を前に突き出してドリルナックルをアースワームへめり込ませる。
パンチとドリルの相乗効果でアースワームは吹っ飛んでいき、近くにいた同族も巻き込んでいったが、その数は多く、身を乗り出すように同族を踏んでいく。
「くっ! 敵が多い! ネリフィア!」
機導士の特性を生かし、デルタレイを発動していたざくろはネフィリアの立ち位置を危惧している。
アルカもまた、横目でネフィリアがアースワームに囲まれていることに気づいていた。
逃げ道を作らなければ、彼女が危ない。
「急ぐがよい」
ヴィルマの声にアルカはダガーを抜き、身体中にマテリアルを巡らせる。
鋭いアルカの言葉が早いか否か、一気に加速して周囲のアースワームを斬り付けていく。
逃げ道を作る為にアサルトディスタンスを発動している為、アルカはアースワームの身体を押しのけるように斬り付けていった。
「ざくろ!」
アルカの叫びに応え、ざくろがジェットブーツでネフィリアの方へと向かう。
「ネフィリア! 出るよ!」
「わかった!」
さらに道を広げるために、ネフィリアは逃げ道のわきにいるアースワームの胴体めがけてロケットナックルを飛ばす。
更に道が開けて、ハンター達は一度歪虚達から脱する。
ちらりと、ヴィルマがまよいの方を向くと、彼女はシンとファリフの壁によって、エクステンドキャストを展開していた。
発動までに無防備となってしまう為、守備は必須だ。
ふ……と、まよいの瞳がひらかれたことに気づいたヴィルマは「行けるかのぅ」とどこか謳うように呟く。
ヴィルマの声が聞こえたかのようにまよいが自身の前に突き出したのは黒い縄が巻き付けられた深紅の木製の杖。
二人は同時に同じ術を発動させた。
魔術師二人より放たれた二種の電撃。
敵へと駆ける時間は人の瞬きよりも短く、瞬時にその身を貫く。
轟音は山彦の如く、坑道の中に響いた。
雷の音が静まったころ、半数以上のアースワームが倒れていた。
まだ動くアースワームもいたが、電撃の痺れか、動きが鈍っている。
「あらら~~。やるわね~~~」
両手を頬に当てて驚くモルッキーは後続の方へと視線を向けた。
「パペットマン、出番よ~~」
子供のような形のパペットマンはのろのろと動き出して泥をハンター達へと投げはじめてた。
「わわわわわ!」
汚れる事による本能的回避でハンター達は避けてしまう。
パペットマン達は少しずつ進みながらも確実に泥を投げていく。パペットマンの身体は泥でできており、一度絡まれると、離すのが大変だ。
このままでは距離を縮められてしまう。
歪虚に押されるやもしれない空気の中、チェーンウィップが中空を引き裂き、その先端がパペットマンを引き裂いた。
泥を投げるパペットマンの中へ勇敢にも飛び込んだのはアルカだ。無駄な動きがなく、振り捌くチェーンウィップが投げつけられている泥をも跳ねのけている。
アルカの無駄がない鞭捌きはフィルレが彼女の為に奏でる旅人たちの練習曲。
旅人の歩みの如く、緩やかな旋律は単調であるものの、その旋律には無駄がない。
出来得る限りの無駄を省き、パペットマンの泥を回避できるように旋律はアルカへと届けられている。
「勇ましいわねぇ~~ん」
まだまだパペットマンはいるとばかりにモルッキーは更にやれと腕を大きく振って合図をした。
「ヴィルマさん達を頼むね」
「わかった」
ファリフに前衛の守りを頼んだのはシンだ。
パペットマンはモルッキーの指示に従い、泥玉をつぶさに投げていく。その数量を視界でとらえたアルカは本能的に腕で頭部を庇って防御する。
泥玉がアルカの身体に当たり、艶やかなゴールデンロッドの髪が汚れていく。
「くっ……」
一度引くべきだと察したアルカの傍を迅雷のような速さで追い越す。
「これ以上、汚さないでくれるかな」
アルカを庇うように前に立ち、まっすぐモルッキーの方を向き、睨みつけるのはシンだ。
「一度後退した方がいいと思います」
シンの意見にアルカは「ありがとう、後はお願い」と言って後退した。
「トラオム!」
「ココ!」
まよいとネフィリアがユグディラの名を呼ぶと、彼らはアルカの方へと駆けていく。
「フィルレ! シンにも練習曲を!」
後退したアルカにユグディラ達がげんきににゃ~れのお祈りをしようとしてると、アルカは自身のパートナーへ叫ぶ。
アルカの気配が消えるのを察したシンは一度身の丈ほどのラージブレードを鞘に納めると一歩前に出る。
構えたのち、シンは一気にラージ・ブレードを抜いた。
全長百六十センチの大剣を薙ぐと、パペットマンの身体を上下に割っていき、剣の勢いのまま、剣を振り下ろす。
立ち止まらず、シンは素早い動きでパペットマンを振り払っていった。
パペットマンの他に電撃のダメージが軽減されたアースワームたちもシンのマテリアルへと身体を向けているが、ネフィリアのユグディラであるココの幻夢術の霧で動きが鈍っている。
「のろまだなっ」
地をかけるものでパペットマンを誘導するように戦場を駆けるネフィリアはタイミングを見計らって大きな魔導装置がつけられているナックルへとマテリアルを込める。
瞬間、横から生き延びていたアースワームがネフィリアへ突っ込もうとするが、見計らったようにヴィルマのアイスボルトがアースワームの身体を地へ杭打つ。
「いっけーーー!」
魔導装置がネフィリアのナックルより放たれ、パペットマンへと飛び込んでいくと、ドミノ倒しのようにパペットマンが倒れていく。
シンの死角に潜り込んだアースワームに気づいたざくろは懐中時計「星読」を掲げる。
ざくろの前に浮かぶ光の三角形の頂点が光り、アースワームを貫いた。
「見つけられないと思ったのかしら?」
まよいが口角を上げてにんまり笑むと、他のパペットマンの隙間を縫ってシンへ近づこうとするパペットマンの胴をウィンドスラッシュで引き裂く。
「んまぁあああああ! 何なのあのイケメン!」
キィイイイっと、悔しそうにモルッキーが叫びだす。
「女の子達の応援が沢山あって、羨ましいわぁ~~~!」
素直に悔しがるモルッキーの言葉はざくろに聞こえていたようであった。
「ざくろは男の子だよ!」
モルッキーへの怒りを露にしたざくろは大きく腕を空に突き上げて振り回している。
ショックを隠し切れないモルッキーは顎が外れて地に落ちんばかりに口を大きく開け、目が飛び出るんじゃないかというほど見開いている。
「ええええ!? 人類にはこんなカワイ子ちゃんな男の子が!? 全く理解不能だわぁ~」
頭で両手を抱え、首を振るモルッキーにヴィルマがため息をつく。
「そなたがよっぽど理解不能じゃ」
「つれないわぁあああ」
冷静なヴィルマのツッコミにモルッキーは身を捩って腰を振り悲しみを表現している。
猛烈に気色悪い。
「やっぱりアクベンスじゃ……」
「わが眷属を吸収した奴はあんな輩ではなかったぞ」
いやそうな顔をするファリフが某歪虚ではないか推測するが、絶対に違う。
「もう、気が付いたら、パペットマンもあんたたちのせいで半分もやられちゃったじゃないの~~」
嫌だわと言いたいようにモルッキーは嘆きだした。
「もう、お前ひとりだ! 観念しろ!」
ざくろが人差し指をモルッキーへびしっと突きつける。
「観念なんかしないわよー。今日のビックビクドッキドキ歪虚ちゃん、出番よー」
モルッキーが乗車していた一回り大きいアースワームにハンター達をやっつけろと指示をすると、先ほどのアースワーム達とは違って動きが素早い。
「随分速いぞ! ネフィリア、アルカ、カペラ、いこう!」
乗車アースワームが猛然と加速スキルを使うハンター達へ向かっていく。
「わわわわわ! ちょっと、速すぎるわよぉおおおおおお!!」
特に風よけの屋根とかもない状態でアースワームに乗っているモルッキーは思った以上の体感スピードに驚いている。
四人が横一列になって加速すると、一気にバラバラになって動き出す。
一番近かったのはざくろだったようで、頭で突こうと猛然と追う。
「ほらほらこっちだよ!」
誘導するざくろはジェットブーツである所まで行くと、アルカへバトンタッチしてざくろは離脱する。
「次はボクだよ!」
アルカもまた、ジェットブーツでアースワームの頭を誘導していた。
「おらよ!」
いつの間にか前進してきたテルルがカマキリに乗って、乗車用アースワームの身体をカマキリの腕で掴む。
「ちょっと、テルル! 暴れてウチの坑道壊さないでよ!」
ざくろとて、ゴーレムで前衛に出てないのに、カマキリが出てきてカペラが肝を冷やす。
「バーロー! 歪虚に繊細なんざ必要ねーよ!」
江戸っ子口調で言葉を返すテルルは残ったパペットマンから泥を受ける。
「てっめーら! なんてことしやがる!」
怒ったテルルがカマキリの片腕の鎌を横に薙いでパペットマン達を一掃した。
「もー、テルルってば。アルカ! こっちよ!」
「カペラ!」
アルカがカペラの声に気づき、カマキリの腕が抱えているアースワームの下を潜ると、丁度、乗車しているモルッキーの近くをすり抜ける距離だった。
「ね、ね! あなた、女の子が好きなの!?」
「あ~~んら、かわいこちゃ~~ん!」
前線に駆け出してきたまよいの声かけにモルッキーは即座に反応する。
「ね、私はどうかしら!」
可愛らしくポーズをとるまよいはとても可愛らしい。
「これから、女子中学生になるのかしら~~~! もう、大人の階段昇っちゃうロマンよね!」
テンションが上がったモルッキーは唇を突き出してまよいへ投げチューをしている。
「わ! やっぱり変態だ! まよい、逃げて!」
心配するざくろの気持ちは殆どのハンターがよくわかるが、まよいは鈴のような笑い声をあげている。
「あははは、おもしろーい」
「ほら、こっちきて! ちゅーしてあげ……」
刹那、歪虚のモルッキーも本能的に震えるほどの殺気が大斧とラージ・ブレードがモルッキーの両ひげの先端を削いだ。
「近づかないでくれるかな」
「リアルブルーでは、せくはらって言うんだよ」
鋭い眼光のシンとファリフがモルッキーを睨みつける。
その間、アルカは物理的乙女の危機を潜り抜け、アースワームの頭を誘導していく。
「仕上げは頼んだよ!」
「わかってる!」
地上を高速で移動する動物霊の力を借りたネフィリアはトップスピードを維持するよう、乗車用アースワームの追撃を振り払わないようにまっすぐ駆け抜ける。
「え、え?」
モルッキーはようやく、ハンター達の目論見に気づき、おろおろしながら周囲を見ていた。
「もしかして???」
はっと気づいたモルッキーが両手で頬を挟む。
「結ばれているーーー!?」
モルッキーの絶叫通り、乗車用アースワームはハンター達の連係プレーで結ばれており、身動きが取れなくなっていた。
「その通りじゃ」
ヴィルマが言えば、まよいはモルッキーから離れて彼女の隣に駆け戻っている。
「若いどころか、幼い女子を狙うとはとんだ変態モグラじゃな」
呆れた物言いのヴィルマは言葉をつづける。
「我はお呼びでないじゃろうが、そなたのような変態は魔法で粛正せねば気が済まぬ性質でのぅ」
「そんなことないわよぅ! アンタだって可愛いわよ!」
最後の物騒なセリフは聞いてないのか、モルッキーはヴィルマのフォローを叫ぶ。
「可愛いは正義なのはわかるが、心的危害を与えるようなものは許されぬ」
ヴィルマはまよいと目を合わせる。
「とっとと這え」
冷水が如くのヴィルマの声と共にまよいとのライトニングボルトをモルッキーへと放った。
「あああああああ! ぎゃぁあああああああ!」
モルッキーの絶叫が響き、電撃を受けて痙攣のような動きを見せるモルッキーの身体の骨が一瞬見えたような気がする。
更にざくろがホーリーメイスを突きの構えにして駆け出す。
「くらえ! シビレメイス!」
ぷすっと、モルッキーに槍の穂先を刺せば、エレクトリックショックで更にモルッキーは電撃を浴びることになった。
「もぅン、ダメン……」
ぱったりと倒れてしまったモルッキーの姿を見て、ハンター達の勝利が決定される。
「やった!」
ざくろとネフィリアが大喜びで両手足を伸ばし、勝利のポーズとコールを決めていた。
「この歪虚も始末しなきゃね」
モルッキーが乗っていた乗車用アースワームに気を引かれていたところ、ネフィリアが周囲を見回す。
「あれ、親愛のしるしに殴り合おうとしたのに、モルッキーの姿がない!」
周囲を見ても、電撃で倒れていたモルッキーの姿はなかった。
「また来るのかしら?」
首を傾げるまよいにカペラは「次こそ、黒焼きに」と決意する。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/02/04 22:28:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/31 07:42:09 |