闇夜の爪

マスター:水貴透子

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2014/10/14 07:30
完成日
2014/10/21 20:09

みんなの思い出

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オープニング

それは獲物を狙い、闇夜に紛れてハンターを襲う。
足音を忍ばせ、気づいた時には既に傷を負う。

※※※

「今回の雑魔は正体不明です、はっきりとした外見すらわかっていません」

案内人から告げられた言葉に、ハンター達は眉根をひそめた。

今回、ハンター達が受けた依頼はすでに3回ほどの失敗を出しているもの。
それなりの相手であることは間違いないとわかっていたが、外見すらもわからないとは予想していなかったのだ。

「生き残ったハンター達が口々に言っているのは、赤い閃光が奔った――……とだけ」
「おそらく雑魔の目か何かだと思いますが、気づいた時には傷を負っていた者ばかりなのです」

案内人の言葉を聞き、ハンター達は互いに顔を見合わせる。

「本来ならば現地に赴いたハンター達に話を聞いて――といきたい所なのですが、少しそれは難しいかもしれません」
「……生き残った方は重症で、現在も絶対安静の方ばかりなので」

現地に赴いたハンターの話を聞く事もできない。
雑魔の外見、攻撃方法、それらもわからない。

「無理だと判断した場合は、すぐに引き返してください」
「雑魔を退治に向かえるのは、生きてこそです。逃げは恥ではありません、絶対に無理はなさらぬよう」

心配そうに見送る案内人の視線を受けながら、ハンター達は問題の森に出発したのだった。

リプレイ本文

●任務に向かうハンター達

「厄介な敵みたいね。凄まじく動きが速いのか、はたまた長距離攻撃なのか……前者のような気はするけど、注意を怠らないようにしないとね」
 ため息を吐きながら呟くのは、エリシャ・カンナヴィ(ka0140)。
「一応ここに来るまでに多少は調べて来たが、傷口から察するに獣型のような気がする。絶対とは言えないが、参考程度に聞いてくれると嬉しい」
 ロニ・カルディス(ka0551)は病院などで調べてきた内容をメモしており、それを同じ任務に就いたハンター達に渡す。
「鉤爪状の武器という事も考えられるが、現在の状況では獣型の可能性の方が高いと思う」
「そうですね、どちらにしても分からない事だらけで、相手は難敵。ならば、全力を持って挑むとしましょう」
 ロニの言葉に、アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)は胸の前で手を組み、まるで祈るように答えた。
「今まで失敗続きだった雑魔を、俺達が倒して名をあげるんだ……!」
 ティト・カミロ(ka0975)は恐怖や戸惑いよりも、高揚感の方が強いらしく、愛用のバスタードソードをしっかりと握りしめながら、雑魔退治への意気込みを見せている。
 楽しそうにしているからと言って、油断はしておらず、一人で突っ走るという考えを持っているわけはなさそうだ。
「正体不明の雑魔……是非とも存分に戦ってみたいですが、情報が不足していますね。まぁ、やれるだけやってみましょうか」
 フィル・サリヴァン(ka1155)はほぼ白紙の案内書を見ながら、ため息混じりに呟く。
 情報はハンターにとって、最も大事な物であり、それが欠落しているというだけで、依頼の成功率はガクンと下がる。それは同時にハンター達の生存率にも関わる事で、フィルは少し苦い表情を見せている。
「厄介な相手のようだな? 油断できないと来たか……めんどくせ」
 はぁ、と大きなため息を吐きながら呟いたのは神杜 悠(ka1382)だった。
「俺は戦闘力ねぇし、あてにはするなよ? 援護はして、やるけどさ……」
 神杜は苦笑しながら呟く。
「けれど、解せない事ばかりね。少し整理が必要かしら?」
 結城 藤乃(ka1904)はため息を吐きながら呟く。
「3度も姿を見せぬまま、一方的に攻撃が可能って事は、雑魔が異常に早い、遠距離狙撃、視覚を騙しての不意打ち……の3つが考えられるわね」
 けれど、結城は複雑な表情を見せながら「でも……」と言葉を付け足す。
「異常に早いとしても、複数人のハンターの目を掻い潜るのは難しいわよね。遠距離狙撃に関しても爪状の傷跡と、遮蔽物の多い森の中で猛威を振るうのは難しいと思うわ。それを考えると、視覚を騙して――というやり方は辻褄だけは合うのよね」
「そうですね、けれど決めてかかるのは危険ですし、どちらにしても現地へ赴いてみない事には、はっきりと言えませんね……」
 聖盾(ka2154)は結城に言葉を返し「これ以上の被害を防ぐために、今回でケリをつけたいところですが……」と付け足した。
 色々な不安を胸に抱えたまま、ハンター達の任務が開始し、正体不明の雑魔が闊歩する森へと向かい始めたのだった――……。

●闇夜の森

 今回、ハンター達は雑魔からの襲撃に反応出来るように班を3つに分けて行動する作戦を立てていた。
 A班・結城、ティト、聖盾。
 B班・ロニ・フィル・神杜。
 C班・エリシャ・アデリシア。
 エリシャとアデリシアが1番前を歩き、A班とB班は5mほど間を空けて歩く。
 これなら例えどこかの班が襲撃を受けても、他の2班が即座に対応出来るというものだ。
(周りを警戒し続けるという事が、こんなに疲れる事だったなんて……)
 アデリシアは『バックラー』を構え、雑魔がどこから襲って来ても良いように常に警戒を強めていた。
 今回の任務に参加したハンター達は、常に警戒する事を強いられるため、精神的な面の疲弊が激しいのではないだろうか。
 しかし、戦闘になった時、実力を発揮できないのは困る事から、1時間ほど捜索をしたら休憩を取るという事も決めていた。気を張り続けていて、肝心の戦闘面に影響した――なんて、洒落にもならないのだから。
「息を潜めながら歩くのも面倒ね、さっさと出てきてくれればいいんだけど……その際、私の予想が当たっている事を祈るわね」
 ごくり、と息を飲みながら、結城が呟く。
「……唯一の情報は、赤い閃光……見逃さないようにしなくちゃ……」
 ティトは周りをキョロキョロと見渡しながら、赤い閃光が見えないかどうかを確認している。
 その時だった。
 ザザザ、と木の上を何かが走るような音が響き、ハンター達の視線が一気にそちらに向く。
「くっ……う……っ!」
 最初に狙われたのは先頭にいたエリシャ。けれど、彼女は何とか一撃目を避けた。
 続いて狙われたのはアデリシアだった。バックラーで防いでいるとはいえ、手に響くほどの衝撃に、彼女は眉をひそめた。
「やっぱり、外見を誤魔化して潜んでいたのね……!」
 結城は小さく舌打ちをした後『瓶牛乳』を赤い閃光に向けて投げつける。
 すると、それは割れて雑魔の姿がじわりと変化していった。
「……トカゲ、いや……カメレオンと言った方が正しい、か?」
 雑魔の正体を見たハンター達は戸惑いながらも、3班合流して、戦闘態勢を取る。
「聖導士が3人もいるんです……! そう簡単にやられはしませんよ!」
 聖盾は『シャドウブリット』を雑魔に向けて放つ。
 しかし、雑魔そのものの素早さも高いらしく、攻撃がまともに当たらない。
「これほどの力を持ちながら、姿を隠して攻撃――……なるほど、今までのハンター達が任務を達成できない理由が分かった気がする」
 ロニは苦笑しながら『メイスファイティング』を使用して、雑魔から攻撃を受けるのも構わず『ストライクブロウ』で攻撃を仕掛けた。
 雑魔はロニの攻撃を受け、地面に叩きつけられる。その隙を逃さぬよう、結城は『デリンジャーYL1』を雑魔に向けて『エイミング』を使用しながら射撃を行う。
「今までのハンター達は、ほぼ一撃で撤退を余儀なくされていたみたいね。けれど、今回は違う。手品もネタがバレたらつまらないものよ」
 木々を足場にして、エリシャは木の上にのぼり、勢いをつけながら『太刀』で攻撃を仕掛ける。
 雑魔は自分が不利な状態に追い込まれている事を感じ取り、身体の色を変えようとするが、真っ先に気づいたアデリシアが『ホーリーライト』で攻撃を仕掛ける。
「させませんよ。あなたは、ここで私達に倒されて頂きます」
 アデリシアは厳しい表情を見せながら、雑魔に向けて言葉を投げかける。
「……くっ、そろそろやけっぱちになってきたのかな」
 神杜に向かおうとした雑魔を、ティトは自分の身体を張って庇う。
「ぐっ……! せめて、壁ぐらいは役にたたないと……ねっ」
 ティトは雑魔に攻撃を仕掛けていたが、雑魔の素早さに『バスタードソード』を叩きこむ事が出来なかった。
 けど、彼はすぐに考えを変えて、攻撃がだめなら味方を守る事に専念するようにしていた。
「だ、大丈夫か……? 俺を庇わなくても……」
 神杜は苦しげな表情を見せるティトに言葉を投げかけるが「大丈夫……! 自分に出来る事をする、これって大事だからね!」と痛いはずなのに、笑いながら答えていた。
「このままではじり貧になりそうですね、申し訳ありませんが……足を潰させてもらいます」
 フィルは『ハルバード』を振りかぶり、仲間達の対応に追われている雑魔の足に向けて、それを振り下ろす。
 それと同時に、静かな森の中に耳をつんざくような雑魔の叫び声が響く。
「ちなみに、申し訳ありませんと言いましたが……そういう気持ちはまったくないので」
 足を潰され、地面を転がる雑魔に向けてフィルは冷たく言い放つ。
「こちらも結構ダメージを受けていますので、そろそろ終わらせたいんですよ」
 フィルが呟き、再び『ハルバード』を振り下ろそうとした時、雑魔の爪がフィルを襲う。
「……くっ、今まで多くのハンター達を苦しめていただけありますね、しぶといです」
「大丈夫か!?」
 ロニは雑魔の腕に攻撃を仕掛け、フィルから離す。
「大丈夫ですよ、多少深くやられましたが騒ぐほどの傷ではありません」
 ひょこ、とやられた足を庇いながらフィルは「すみません、油断してしまいました」と呟くと、ロニは緩く首を振る。
「おまえが雑魔の足を潰してくれたおかげで、何とか退治する事が出来そうだ」
 ロニはフィルを後衛へ下がらせた後、再び前衛に戻る。
「大丈夫か?」
 『ダーツ』で雑魔に攻撃を仕掛けていた神杜がフィルに話しかける。
「大きな怪我を負った方、1度下がって下さい。傷を癒しますから」
 聖盾は前衛で戦うハンター達に言葉を投げかけ、フィルに『ヒール』を使用する。
「私はまだ大丈夫。もう少しでやれそうなんだから、このまま行くわ」
 ジャキン、と弾丸を装填しながら、結城は呟き、再び雑魔に向けて射撃を行う。
 フィルが足を潰したおかげで、雑魔の移動速度は10分の1以下にまで落ち、お世辞にも『素早い相手』と呼べるほどではなくなっていた。
「……あら、逃げようっていうの? それはないんじゃない? これだけ傷を負わされて、見逃してあげるほど優しくないわよ、私」
 エリシャは痛む身体を抑えながら、雑魔に攻撃を仕掛ける。
 先頭で戦っている事もあり、エリシャとアデリシアが1番ダメージを受けていると言っても過言ではない。
 雑魔が身体を引きずるほどの傷を負っていなければ、撤退を考えなければならない状況だったのだろうが、ここまで雑魔を追い詰めたのだから、多少無理をする必要が出てくる。
「きみをこのまま逃がせば、余計に被害が増える可能性があるからね。手負いの獣ほど怖いものはないって言うからね」
 後衛に雑魔が来る心配がないと踏んだティトは『バスタードソード』を構え、雑魔に斬りかかる。
「さっきまでは素早過ぎて当たらなかったけど、今のきみだったら当てるのは余裕だからね。他のみんなは今までの戦いで傷ついてる、俺が頑張らなきゃいけないんだ」
 ティトは自分に言い聞かせるように呟き『ヒッティング』を使用して攻撃を行った。
 そんなティトに対して、アデリシアは『プロテクション』を使用して、彼の防御力強化を図った後で『ホーリーライト』で攻撃を行う。
「めんどくせ……いい加減さっさとやられろよ、すげ~疲れてんだからさ」
 神杜はため息を吐き、ティトの攻撃と合わせて『仕込み杖』を振りかざし『スラッシュエッジ』を使用して雑魔に斬りかかる。
 その後、アデリシアの『ホーリーライト』と聖盾の『シャドウブリット』が雑魔を襲い、エリシャとロニ、そして結城の同時攻撃によって雑魔は無事に退治されたのだった。

●戦い終えて

「まったく、満身創痍とはこの事ね」
 戦いを終えた後、エリシャは自分の姿、そして仲間達の姿を見てため息を吐く。
「帰還する前に『ヒール』を使っておこう。特にエリシャとアデリシアは俺達よりもダメージが多いようだから」
 ロニの言葉に「お願いするわ」とエリシャが呟き、アデリシアは「私は自分で回復出来ますから、他の人に使って上げてください」と答える。
「俺達が、雑魔を倒したんだよな? 他の人が苦労した雑魔を、俺達が……と言っても、俺はほとんど役に立てなかったんだけど」
 ティトはしょんぼりしながら呟くと「そんな事はないですよ」とフィルが言葉を返す。
「最初は皆さんを守る盾になり、後からは雑魔を倒す刃になったでしょう。そんな人は『役に立たなかった』とは言いませんよ」
「そ、そうかな? そう言ってもらえると、俺も嬉しいよ」
 フィルの言葉を聞き、ティトは嬉しそうにはにかむ。
「大丈夫か? 怪我してる奴、見せてみろよ。専門じゃないけど、やらないよりマシだろ」
 神杜は仲間達の顔を見ながら話しかける。
「……苦労した奴だけど、全員生きて戻れるっていうのが何よりだな」
 神杜は傷だらけだけど、生きている皆の姿を見ながらホッと胸を撫で下ろしたように呟く。
「とりあえず瓶牛乳を1個だめにしたけど、それ以上の価値はあったわね。今までああいう反応を取られた事がなかったんでしょうけど、すぐに身体の色を変えなかったのが救いだわ」
 結城は戦いを思い返しながら呟き「そうですね」と聖盾も言葉を返す。
「帰還してしたいことは、報告の後にお風呂に入りたいですね。泥だらけ血だらけで、私達、結構……いえ、かなり酷い格好ですもの」
 聖盾の言葉に「あぁ、本当だ……」と結城も肩を竦めながら呟く。
「この血、ちゃんと洗濯で落ちるかしら……」
 結城が呟くと「む、難しそうですね……」とアデリシアが困ったように呟く。

 その後、しばらく休息を取った後、ハンター達は雑魔退治の報告をするために動き始める。
 それは来た時と違って、不安が何もないせいか、心なしかハンター達の足取りも軽いように見えたのは、きっと気のせいではない――……。

END

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MVP一覧

  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィka0140
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音ka0746
  • 勇敢と献身に混在する無謀
    ティト・カミロka0975

重体一覧

参加者一覧

  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィ(ka0140
    エルフ|13才|女性|疾影士
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 勇敢と献身に混在する無謀
    ティト・カミロ(ka0975
    人間(紅)|16才|男性|闘狩人
  • 闇夜を奔る斬撃
    フィル・サリヴァン(ka1155
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 黒の援護士
    神杜 悠(ka1382
    人間(蒼)|25才|男性|疾影士
  • 生者の務め
    結城 藤乃(ka1904
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士
  • うすいほんがよみたくて
    聖盾(ka2154
    エルフ|24才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/10 08:40:12
アイコン 闇夜の爪を狩るモノたち
ロニ・カルディス(ka0551
ドワーフ|20才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/10/14 01:50:21