ゲスト
(ka0000)
【黒祀】都市防衛崩壊寸前
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/15 22:00
- 完成日
- 2014/10/23 18:54
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
夜闇が包む草原に、少女が二人居た。彼方を眺めながら、片割れが口を開く。
「楽しみだね!」
「いえ、とても不愉快だわ」
「……なんで?」
「フラベル。貴女が愉しそうだからよ」
「にひっ! クラベル、それ、ほんとにっ?」
「嘘よ」
少女達の姿は、鏡写しのように似ていた。ただ、その声色だけが大きく異なる。夫々に沈まぬ太陽と、光を返さぬ新月を想起させる声音。
「面倒くさい仕事だなと思っただけ」
「そうかな。大事なことだよ?」
「どうでもいいことだわ」
クラベルと呼ばれた少女は憂鬱な息を吐き、言う。
「誰も彼も皆、勝手に踊り狂っていればいい。貴女も」
「にひっ」
フラベルと呼ばれた少女は晴れやかに笑い、言う。
「うん、踊ってくるねっ! 一杯一杯殺して、褒めてもらうんだぁ」
●王国西部地方都市
「疲れたぁ」
「先輩一杯どうっすか」
「命の洗濯優先だぜぇ」
槍と盾と皮鎧を装備した兵士達が、疲れてはいても軽い足取りで詰め所へ向かっている。
鎧には大小の傷がつき血の跡もある。体に傷は見えないけれど、それはマテリアルヒーリングで癒した結果だ。
「しっかし1日に2度の襲撃なんていつぶりだ?」
朝には東に現れた雑魔を倒し、夕方には街の西に現れた雑魔を倒した。
どちらも小柄な、つまり弱い雑魔2体だったが、覚醒者とはいえ正直強くない彼等6人は常に全力で戦うしかなかった。
その結果全てのスキルを使い果たし残り覚醒回数も0だ。
「1日2回戦っても手当はいつもと変わらないんだよな」
「愚痴るなよ。普段は戦わなくても手当が出」
男の声をかき消す音量で、本日3回目の半鐘が聞こえてくた。
前の2回より音が大きく間隔が狭い。
北だ、と遠くから声が聞こえた気がした。
街の護りを担う男達が視線を顔を見合わせる。
「食わせてもらってんだから戦うがよ」
「覚醒できないイコール無駄死にだろ。俺等覚醒抜きでヴォイドと戦えねぇぞ」
騒ぐ男達を隊長が咳払して黙らせる。
兵士達は溜息をついて装具の確認を開始した。
「1人ハンター支部へ向かえ。他は私と一緒に雑魔の足止めだ」
そう言い残し、隊長は振り返りもせずに戦場に向った。
●ハンターオフィス本部
「緊急依頼です!」
ハンターが依頼を漁る部屋に、全力疾走直後の職員が駆け込んできた。
「ソサエティ支部がある街が雑魔に襲われています。戦闘可能な方は即」
3Dディスプレイがかつてない速度で投影される。
職員に重なる形で立ち上がり、荒い息をつく顔と形にちょっとだけ違和感がある胸が画面から突き出す。
「敵数不明だと?」
「地形情報は? おい緊急依頼なんだろ早くしろよ」
ハンターが苛立つ。
神霊樹周辺のパルムが右往左往する。中には混乱しきって創作ダンスを披露するキノコもいるが少数派だ。
「とにかく急いでくださぁいっ!」
職員が泣き出す寸前で、ようやく都市の名前がディスプレイに表示されのだった。
●絶望的防衛戦
細い四肢。泥を塗り固めたような肌。背中の翼は薄く飛行能力どころか滑空能力すらない。
口から打ち出される小さな光弾が厄介と言えば厄介とはいえ、まともな防具と武器で身を固めた覚醒者ならさして苦労せず倒せる相手だ。ただし覚醒できない場合は覗く。
「隊長もうもちませんっ」
「応戦しながら下がれ! 戦友を見捨てるな! 1人死ねば次の戦いで2人死ぬ!」
「分かってますよ畜生!」
男達が盾を並べて光弾を防ぐ。重傷者が火事場の馬鹿力で気絶した仲間を引きずり街の門へ向かう。
「ハンターが来るまで持ち堪えるんだ!」
いつ誰が死んでもおかしくなかった。
「楽しみだね!」
「いえ、とても不愉快だわ」
「……なんで?」
「フラベル。貴女が愉しそうだからよ」
「にひっ! クラベル、それ、ほんとにっ?」
「嘘よ」
少女達の姿は、鏡写しのように似ていた。ただ、その声色だけが大きく異なる。夫々に沈まぬ太陽と、光を返さぬ新月を想起させる声音。
「面倒くさい仕事だなと思っただけ」
「そうかな。大事なことだよ?」
「どうでもいいことだわ」
クラベルと呼ばれた少女は憂鬱な息を吐き、言う。
「誰も彼も皆、勝手に踊り狂っていればいい。貴女も」
「にひっ」
フラベルと呼ばれた少女は晴れやかに笑い、言う。
「うん、踊ってくるねっ! 一杯一杯殺して、褒めてもらうんだぁ」
●王国西部地方都市
「疲れたぁ」
「先輩一杯どうっすか」
「命の洗濯優先だぜぇ」
槍と盾と皮鎧を装備した兵士達が、疲れてはいても軽い足取りで詰め所へ向かっている。
鎧には大小の傷がつき血の跡もある。体に傷は見えないけれど、それはマテリアルヒーリングで癒した結果だ。
「しっかし1日に2度の襲撃なんていつぶりだ?」
朝には東に現れた雑魔を倒し、夕方には街の西に現れた雑魔を倒した。
どちらも小柄な、つまり弱い雑魔2体だったが、覚醒者とはいえ正直強くない彼等6人は常に全力で戦うしかなかった。
その結果全てのスキルを使い果たし残り覚醒回数も0だ。
「1日2回戦っても手当はいつもと変わらないんだよな」
「愚痴るなよ。普段は戦わなくても手当が出」
男の声をかき消す音量で、本日3回目の半鐘が聞こえてくた。
前の2回より音が大きく間隔が狭い。
北だ、と遠くから声が聞こえた気がした。
街の護りを担う男達が視線を顔を見合わせる。
「食わせてもらってんだから戦うがよ」
「覚醒できないイコール無駄死にだろ。俺等覚醒抜きでヴォイドと戦えねぇぞ」
騒ぐ男達を隊長が咳払して黙らせる。
兵士達は溜息をついて装具の確認を開始した。
「1人ハンター支部へ向かえ。他は私と一緒に雑魔の足止めだ」
そう言い残し、隊長は振り返りもせずに戦場に向った。
●ハンターオフィス本部
「緊急依頼です!」
ハンターが依頼を漁る部屋に、全力疾走直後の職員が駆け込んできた。
「ソサエティ支部がある街が雑魔に襲われています。戦闘可能な方は即」
3Dディスプレイがかつてない速度で投影される。
職員に重なる形で立ち上がり、荒い息をつく顔と形にちょっとだけ違和感がある胸が画面から突き出す。
「敵数不明だと?」
「地形情報は? おい緊急依頼なんだろ早くしろよ」
ハンターが苛立つ。
神霊樹周辺のパルムが右往左往する。中には混乱しきって創作ダンスを披露するキノコもいるが少数派だ。
「とにかく急いでくださぁいっ!」
職員が泣き出す寸前で、ようやく都市の名前がディスプレイに表示されのだった。
●絶望的防衛戦
細い四肢。泥を塗り固めたような肌。背中の翼は薄く飛行能力どころか滑空能力すらない。
口から打ち出される小さな光弾が厄介と言えば厄介とはいえ、まともな防具と武器で身を固めた覚醒者ならさして苦労せず倒せる相手だ。ただし覚醒できない場合は覗く。
「隊長もうもちませんっ」
「応戦しながら下がれ! 戦友を見捨てるな! 1人死ねば次の戦いで2人死ぬ!」
「分かってますよ畜生!」
男達が盾を並べて光弾を防ぐ。重傷者が火事場の馬鹿力で気絶した仲間を引きずり街の門へ向かう。
「ハンターが来るまで持ち堪えるんだ!」
いつ誰が死んでもおかしくなかった。
リプレイ本文
●緊急事態の諸事情
覚醒者は強い。
それは非覚醒時も変わらず、力も速度も持久力も平均的な常人とは次元が違う。
とはいえ何事にも限度はあるのだ。
「痛、足がつつつっ」
ハンターズソサエティ支部の前で街の兵士が悶絶していた。
一日複数回の戦闘と移動の後に全力疾走で街を突っ切って増援を呼んでいたりしたら、肉離れになっても全くおかしくないのである。
支部からハンター達が現れる。
「君達の行動に敬意を表すよ、後は俺達に任せてくれ」
近衛 惣助(ka0510)が容赦なくふくらはぎに触れると、兵士はふぐぅと妙に艶っぽい声を震え出す。
栂牟礼 千秋(ka0989)が無言で首を振る。ヒールは効くだろうが静養が必要そうだ。今は何より時間が惜しい。この兵士はここに置いていくしかなさそうだった。
ハンター達の乗用馬が戸惑っている。
リアルブルーの通勤ラッシュ級の人並みが街の中心に向かっている。これをかき分けて門に向かうのは、正直かなりきつそうだ。
「騎乗技術を身につけた甲斐があったな」
雪ノ下正太郎(ka0539)が屈んで手を伸ばす。
アリス・ナイトレイ(ka0202)の革靴が触れても1ミリ未満しか手は動かない。アリスを先に馬に乗せた後、正太郎は鐙も使わず鞍にまたがる。
「馬乗りの皆は先に行っててくれ、俺も直ぐに追いつく!」
徒歩のイスカ・ティフィニア(ka2222)が声をかける。正太郎は軽くうなずいて手綱を軽く動かした。
「先に向かう。俺達が渋滞に巻き込まれたら追い抜いてくれ」
正太郎を先頭にハンター達の馬が駆け出し人の流れを遡っていく。
「ハンターです! 門へ援軍に向かってまいすっ!」
淑女も緊急時には大きな声を出す。
アリスは左右への揺れに苦しめられながらも街住民に注意を促し、揺れに耐え、息継ぎをしてまた大声で住民を誘導する。まず間違いなく戦闘よりずっと苛酷だ。周囲を警戒する余裕があっという間に無くなっていく。
「飛ばすぞ、しっかり掴まってろ!」
惣助が宣言する。
彼の馬はいつの間にか避難民がいなくなっていることに気付いて全力疾走を開始する。
閑散とした立派な門を越える。
血塗れの覚醒者4人が見えた。後退しつつ耐えてはいるが、その向こうにいる雑魔8体に圧倒的に押されている。
アリスが正太郎の背中に触れる。
正太郎は静かにうなずき、馬の進路を直線にする。
「門外には私たちが対応するので、貴方は住民の誘導をお願いします!」
アリスが兵士達に指示を出しながら集中し風の流れを変える。雑魔集団から飛来した光弾が、風によって本来の動きを邪魔される。光弾は大きく外れて兵士のつま先の数センチ前に深い穴を開けた。
惣助が馬の速度を落とし猟銃を構える。
銃口の先には羽付き泥人形が8体、奇怪な踊りにも見える動きで前進と講談射撃準備を行っている。
「蝙蝠野郎が、俺達が相手だ!」
撃つ。反動で押してくる銃床を柔軟な上半身で受けながす。
口腔が光っていた雑魔の腹に当たり、雑魔は口から淡い光をこぼしながら数歩後退した。
黒く艶やかな髪が揺れる。千秋は不安定な鞍から危なげなく街道に降り立った。
その位置は雑魔と兵を結ぶ直線状にあって、光の弾が容赦なく降り注いでいた。連続では撃てないらしく4体ずつ交互の攻撃だが数も威力も脅威だ
正太郎が馬を兵士に貸して単身で敵に近づく。いくつかの雑魔が狙いを変えて彼を狙うがほとんどは千秋を狙っていた。
「っ」
至近で見れば雑魔も怖じ気づく眼光と、歯軋りに満たない小さな音が漏れる。
千秋は雑魔への殺意を強靱な理性で制御し、左右には動かず数センチだけ身をかがめた。
威力に反比例して雑な狙いだった。光弾3つのうち2つが彼女の頭上を飛び越える。残る1つが左の腕に直撃し、表面がかすれたドックタグを揺らした。
千秋の眼光は高位の雑魔すら怖じ気づきかねないほど強くなっている。
今銃撃すれば人生最大級の集中力で全弾急所にたたき込めそうだ。
「助かった」
「生きてるよ俺」
男達が泣いている。千秋のヒールで傷口が塞がり出血が止まり、千秋のヒールで骨のひびが消えていく。治療が進めば進むほど涙は多く泣き声も多くなる。
街のために命を危険にさらしていたとはいえ命は惜しい。助かれば安堵して涙も出る。
「後退を続けてください。……街が雑魔の射程に入るようなら出ざるを得ないかもしれませんが」
千秋は銃には手を伸ばさず、動ける程度に癒えた兵士達に指示を出す。
「分かった」
「街と街の連中には被害を出さないよ」
最も重傷だった者が正太郎の馬に乗る。馬と兵士達の足音が遠くなる。
千秋は歯を食いしばって痛みに耐え、ようやく己に対して癒しの力を用いる。回復量を考えればヒールを使うべきだ。しかし仲間の回復を考えると回復量の少ないマテリアルヒールを使わざるを得ない。
「数は力か」
惣助が一瞬顔をしかめる。
しかめているときも銃の狙いは揺るがず、千秋を狙う雑魔に着実に当てていく。
低い命中精度を数で補う雑魔の光弾攻撃が、惣助の銃撃により徐々に乱れて命中率がさらに低下していく。
1発の威力が大きいので千秋のマテリアルヒーリングで癒しきれないことには変わりはないが、千秋が短時間で倒れることは避けられそうだった。
●援護射撃
イグレーヌ・ランスター(ka3299)は一度も速度を落とさず目的地に到着した。
ここは街を守る壁の内側だ。周辺の住民は皆避難しているので、人の波に苦労中の面々より数割増しの速度を出せたのである。
細い階段を駆け上がる。
遠くに伸びる街道、水平辺近くに広がる農地、そして覚醒者と雑魔の戦いが目に入る。
「ここは通さんっ」
正太郎が雑魔集団に食らいつき気炎を吐いている。燃えるオーラが獅子の形をとっていて、正太郎をヒーロー番組から抜け出したライオン超人に見せている。ひょっとすると獅子の霊が降りているのかもしれない。
泥人形雑魔のパンチやキックはバックラーで完全に防ぎ、唸るドリルで泥っ腹に大穴を開ける。
追撃しとどめを刺す絶好のチャンスだった。
「くっ」
しかし兵士の援護を考えると戦えるハンターは3人かそれ以下で雑魔の数は実に8体。
重傷の雑魔は下がってその空間を健在な雑魔2体が埋め、正太郎の隙ともいえぬ隙を狙って光弾を解放しようとした。
イグレーヌは光り輝く弓を引き絞っている。
彼女の数メートル横では、彼女が撒いた枯れ草が風に流されていた。
「主は賜った」
草から風の動きを読み取り狙いを修正。聖句を言い終え矢から指を離す。
銃弾に比べると一見迫力に欠ける矢が弧を描いて進み、アサルトライフルの射程を超える地点で雑魔の頭を貫通した。
衝撃で雑魔の口が閉じる。放たれれば正太郎の腹に穴を開けていたはずの光弾が口腔で炸裂し、矢によって半壊していた泥人形頭部を爆砕した。
アリスが何か叫んでいる。
正太郎が後退をはじめ、アリスの繰り出した風刃が追撃しようとした雑魔の片足を切り飛ばす。属性による効果増大だが数の差はいかんともしがたくアリスも後退を強いられる。
「土は土に」
イグレーヌの第2矢。風に乗って先頭の雑魔を貫き後続の動きも乱す。
「灰は灰に」
祈りは全ての準備を整えた後の仕上げだ。極限の集中で己と周囲のあらゆる情報を読み取り、マテリアルで精度を増した上で矢を向かわせ雑魔を足止めする。
「塵は塵に」
風向きが変わる。矢がずれて誰もいない街道に虚しく突き立った。
雑魔集団と城壁との距離が縮まり、兵士達が門の前に陣取り死守の構えをとる。
「アレは2度と起こさせはしない、そう誓ったんだ」
従騎士だった頃経験した地獄が目の前の現実に重なる。細身の体のうちにある心が悲鳴をあげる
「雑魔だろうが、歪虚だろうが……全て射殺す」
悲嘆を憎悪で塗りつぶし、信仰で以て純化する。
「光あれ」
最前列の雑魔が首を破壊され、土煙をあげて崩壊していった。
●撃退
「通してくれてありがとうなのっ」
ひらひらふりふり……最上質のレースをオーラで織り上げた、可憐さと武威を両立する戦装束が揺れた。
纏うのは佐藤 絢音(ka0552)。身長と同じ長さの銃を持つ魔法少女っぽいハンターである。
逃げていく都市住民をかわし、薄く開いた門をすり抜け、門を外側から守っていた兵士にひまわりのような笑みを向けた。
「もう」
跪く。桜色の銃床を肩に当てる。
「だいじょうぶなのっ!」
そのまま教本に載っても違和感がない見事な膝射で連射する。
光の錐が泥人形に何本も吸い込まれ、もともと頑丈ではない表面を崩壊させ内部を露出させた。
雑魔の視線が絢音を向く。
体の小ささから絢音が覚醒者の弱点と判断したらしく、3つの光弾がかわしても1つは当たる間隔で飛んできた。
ぱりん、とアニメの効果音っぽい音を立てて障壁が消える。
「あやねのばりあーは気休めではないの」
えへんと胸を張ってリロード。雑魔は怒ったのか混乱したのか、狙いが乱れきった3発を絢音に向ける。2発は上に逸れすぎて門の上に消える。残る1発は門を死守していた兵を襲い、ばりやーに衝突し威力の大部分を削がれ、兵士の盾にさらに9割削がれて兵士の手の平を赤くするだけに終わる。
「遅くなった」
門が軋む。イスカが鍛え抜かれた体を戦場に踏み込ませる。
避難途中の人々に頼られ縋られたため、少し遅くなってしまっていた。
縋られて少し遅れた程度で済んだのにはもちろん理由がある。
スニーカーが石畳を蹴りつける。覚醒者の能力がマテリアルによる強化で凶悪な領域に入り、石畳に蜘蛛の巣状の亀裂を刻む。ランアウトの効果だった。
絢音と惣助の援護射撃のもと正太郎の横まで一気に進み、彼と共に雑魔7、いや今6体になった雑魔隊に白兵戦を仕掛けた。
矢弾や術を浴びた泥人形は傷ついていないところがない有様だ。
日本刀を横に振るうとほぼ抵抗無しで表面と中が裂け首が飛ぶ。
「さて、飛ばすかっ!」
最後に残った移動用マテリアルを消費する。
隊列中央の雑魔を蹴り倒しその背後の雑魔を頭部から腰まで両断すると、雑魔の隊列は消え去り並以下の雑魔5体だけが残った。
隊としての強さが失われ、耐久力も半減していても攻撃能力は健在で、雑魔5体の口に最初と同威力の光玉が生じた。
しかし倍増した風刃により端から切り刻まれていく。
ルナ・クリストファー(ka2140)が瞬きする。
金色の瞳の奥には驚きと爽快感があるが、彼女の目を覗き込む余裕のある者はいない。
ルナのローブが揺れる。風の動きが一点に集中して風刃となり、イスカを迎撃しようとした泥人形の後頭部を頭の半分ごと切り飛ばす。
切断面は茶色一色の鏡のごとき平面で、平面のまま薄れて消えていった。
「退路を封じてください」
ルナは術を連続行使しながら要請する。落ち着き払った声は戦場では非常に目立っていた。
イスカ達前衛が雑魔の背後と側面に移動する。結果的にルナ達後衛の守りが失われたようにも見える。
泥人形が駆け出した。
風刃が容赦なく雑魔の体を断つ。手や足の先を飛ばされても血は流れず、雑魔は己の四肢の端を砕きながら街に辿り着き破壊を振りまこうと駆ける。
筋の瞳に雑魔が映っても、ルナの顔にも瞳の奥にも予想外という思いは浮かんでいない。
軽い足取りで半歩横へ。直前までルナがいた空間を細長い泥腕が通過する。
ルナは平静なまま詠唱を終え、風をまとったマギスタッフを泥人形に伸ばす。
雑魔の頭から腰にかけて一筋の亀裂が走り、やがて内側からの圧力に負けて爆発する。このとき他の雑魔も限界を超えていた。矢と弾と術と剣で砕かれた泥人形と地面の埃が混じって宙に舞い、前者が消えて覚醒者しかいない街道が見えてくる。
「びくとりー!」
絢音が元気よく跳ねる。
覚醒状態を解除するとふりふりが光になって消え、可愛らしくはあるが普通の範疇に入る服装に戻る。パステルカラーだった魔導銃も元通り。変身中と比べて4、5歳幼く見えるのは気のせいかもしれない。
そんな絢音をじいっと見つめているだいたい同年齢が1人。金色から碧眼に戻ったルナである。
「リアルブルーの文化か……」
踊り子志望としては、一種の華がある服装を見逃すわけにはいかないのだ。
●報告
惣助が軽く手を打ち鳴らす。
はしゃいでいた兵士達が我に返り照れ臭そうな顔をする。
「兵士諸君」
硝煙を漂わせ、厳しい顔で男達をみつめる。
「良くやった。街の中に被害が無かったのは君たちのお陰だ。存分に誇れ」
男達が直立不動からの気合の入った敬礼を行い、惣助が厳かに答礼した。
「なんか匂うんだよね、今回の襲撃がまるで何者かが意図して発生させたようでさ……」
イスカが眉間に皺を寄せ戦場と街を見る。
既に大凡の事情は兵士から聞いている。並みの覚醒者なら覚醒回数を使いこなす回数の雑魔による襲撃に加え、ハンターがいなければ確実に兵士が全滅する数での襲撃。
雑魔の頭で思いつける作戦ではない。
「しかもこっちの防衛戦力まで見抜かれてる可能性も高い。今回感じた事、全部杞憂だったらいいんだけど……ね」
アリスは返事のかわりに溜息に似た息を吐いた。
「知能の高い上級歪虚か堕落者が関わっていないとも限りません。単純に雑魔の増加や活動の活発化が原因だったとしても、それが起こった理由があるはずですし」
悲観も楽観も無い予想が、酷く暗い。
「報告書が必要だな」
惣助がポケットから小さなメモ帳を取り出す。事実と兵士の証言とハンターによる予想を別けて書いて、ふと気付く。
「清書、頼めるか?」
元軍人として軍の流儀は身についてはいるが、歴史と文化の王国の、政府高官に通用する文章については自信が無い。
「私で良ければ」
アリスが淡く微笑んでうなずく。彼女はサルヴァトーレ・ロッソより数年早く跳んで魔術師としての教育を受けている。
裏のない報告書ならなんとかできるはずだ。
「観察……偵察もかな。防衛強化も打診すべきだろうね。ああもう冗談じゃねぇぞ」
イスカは、昔身についてしまった口調が思わず出てしまった。
アリスが驚いて瞬きする。惣助はイスカの提案も出来る限り書き留めて本人に見せ、何度か読み返し1カ所誤字を直してからアリスに渡した。
「取り越し苦労になれば理想だな」
イスカが街を振り返ると、雑魔の全滅を知った住民達の歓声が響いていた。
報告書は兵士達を経由して地元の領主の手に渡った。どの高さまで報告が上がるかは、現時点では不明である。
覚醒者は強い。
それは非覚醒時も変わらず、力も速度も持久力も平均的な常人とは次元が違う。
とはいえ何事にも限度はあるのだ。
「痛、足がつつつっ」
ハンターズソサエティ支部の前で街の兵士が悶絶していた。
一日複数回の戦闘と移動の後に全力疾走で街を突っ切って増援を呼んでいたりしたら、肉離れになっても全くおかしくないのである。
支部からハンター達が現れる。
「君達の行動に敬意を表すよ、後は俺達に任せてくれ」
近衛 惣助(ka0510)が容赦なくふくらはぎに触れると、兵士はふぐぅと妙に艶っぽい声を震え出す。
栂牟礼 千秋(ka0989)が無言で首を振る。ヒールは効くだろうが静養が必要そうだ。今は何より時間が惜しい。この兵士はここに置いていくしかなさそうだった。
ハンター達の乗用馬が戸惑っている。
リアルブルーの通勤ラッシュ級の人並みが街の中心に向かっている。これをかき分けて門に向かうのは、正直かなりきつそうだ。
「騎乗技術を身につけた甲斐があったな」
雪ノ下正太郎(ka0539)が屈んで手を伸ばす。
アリス・ナイトレイ(ka0202)の革靴が触れても1ミリ未満しか手は動かない。アリスを先に馬に乗せた後、正太郎は鐙も使わず鞍にまたがる。
「馬乗りの皆は先に行っててくれ、俺も直ぐに追いつく!」
徒歩のイスカ・ティフィニア(ka2222)が声をかける。正太郎は軽くうなずいて手綱を軽く動かした。
「先に向かう。俺達が渋滞に巻き込まれたら追い抜いてくれ」
正太郎を先頭にハンター達の馬が駆け出し人の流れを遡っていく。
「ハンターです! 門へ援軍に向かってまいすっ!」
淑女も緊急時には大きな声を出す。
アリスは左右への揺れに苦しめられながらも街住民に注意を促し、揺れに耐え、息継ぎをしてまた大声で住民を誘導する。まず間違いなく戦闘よりずっと苛酷だ。周囲を警戒する余裕があっという間に無くなっていく。
「飛ばすぞ、しっかり掴まってろ!」
惣助が宣言する。
彼の馬はいつの間にか避難民がいなくなっていることに気付いて全力疾走を開始する。
閑散とした立派な門を越える。
血塗れの覚醒者4人が見えた。後退しつつ耐えてはいるが、その向こうにいる雑魔8体に圧倒的に押されている。
アリスが正太郎の背中に触れる。
正太郎は静かにうなずき、馬の進路を直線にする。
「門外には私たちが対応するので、貴方は住民の誘導をお願いします!」
アリスが兵士達に指示を出しながら集中し風の流れを変える。雑魔集団から飛来した光弾が、風によって本来の動きを邪魔される。光弾は大きく外れて兵士のつま先の数センチ前に深い穴を開けた。
惣助が馬の速度を落とし猟銃を構える。
銃口の先には羽付き泥人形が8体、奇怪な踊りにも見える動きで前進と講談射撃準備を行っている。
「蝙蝠野郎が、俺達が相手だ!」
撃つ。反動で押してくる銃床を柔軟な上半身で受けながす。
口腔が光っていた雑魔の腹に当たり、雑魔は口から淡い光をこぼしながら数歩後退した。
黒く艶やかな髪が揺れる。千秋は不安定な鞍から危なげなく街道に降り立った。
その位置は雑魔と兵を結ぶ直線状にあって、光の弾が容赦なく降り注いでいた。連続では撃てないらしく4体ずつ交互の攻撃だが数も威力も脅威だ
正太郎が馬を兵士に貸して単身で敵に近づく。いくつかの雑魔が狙いを変えて彼を狙うがほとんどは千秋を狙っていた。
「っ」
至近で見れば雑魔も怖じ気づく眼光と、歯軋りに満たない小さな音が漏れる。
千秋は雑魔への殺意を強靱な理性で制御し、左右には動かず数センチだけ身をかがめた。
威力に反比例して雑な狙いだった。光弾3つのうち2つが彼女の頭上を飛び越える。残る1つが左の腕に直撃し、表面がかすれたドックタグを揺らした。
千秋の眼光は高位の雑魔すら怖じ気づきかねないほど強くなっている。
今銃撃すれば人生最大級の集中力で全弾急所にたたき込めそうだ。
「助かった」
「生きてるよ俺」
男達が泣いている。千秋のヒールで傷口が塞がり出血が止まり、千秋のヒールで骨のひびが消えていく。治療が進めば進むほど涙は多く泣き声も多くなる。
街のために命を危険にさらしていたとはいえ命は惜しい。助かれば安堵して涙も出る。
「後退を続けてください。……街が雑魔の射程に入るようなら出ざるを得ないかもしれませんが」
千秋は銃には手を伸ばさず、動ける程度に癒えた兵士達に指示を出す。
「分かった」
「街と街の連中には被害を出さないよ」
最も重傷だった者が正太郎の馬に乗る。馬と兵士達の足音が遠くなる。
千秋は歯を食いしばって痛みに耐え、ようやく己に対して癒しの力を用いる。回復量を考えればヒールを使うべきだ。しかし仲間の回復を考えると回復量の少ないマテリアルヒールを使わざるを得ない。
「数は力か」
惣助が一瞬顔をしかめる。
しかめているときも銃の狙いは揺るがず、千秋を狙う雑魔に着実に当てていく。
低い命中精度を数で補う雑魔の光弾攻撃が、惣助の銃撃により徐々に乱れて命中率がさらに低下していく。
1発の威力が大きいので千秋のマテリアルヒーリングで癒しきれないことには変わりはないが、千秋が短時間で倒れることは避けられそうだった。
●援護射撃
イグレーヌ・ランスター(ka3299)は一度も速度を落とさず目的地に到着した。
ここは街を守る壁の内側だ。周辺の住民は皆避難しているので、人の波に苦労中の面々より数割増しの速度を出せたのである。
細い階段を駆け上がる。
遠くに伸びる街道、水平辺近くに広がる農地、そして覚醒者と雑魔の戦いが目に入る。
「ここは通さんっ」
正太郎が雑魔集団に食らいつき気炎を吐いている。燃えるオーラが獅子の形をとっていて、正太郎をヒーロー番組から抜け出したライオン超人に見せている。ひょっとすると獅子の霊が降りているのかもしれない。
泥人形雑魔のパンチやキックはバックラーで完全に防ぎ、唸るドリルで泥っ腹に大穴を開ける。
追撃しとどめを刺す絶好のチャンスだった。
「くっ」
しかし兵士の援護を考えると戦えるハンターは3人かそれ以下で雑魔の数は実に8体。
重傷の雑魔は下がってその空間を健在な雑魔2体が埋め、正太郎の隙ともいえぬ隙を狙って光弾を解放しようとした。
イグレーヌは光り輝く弓を引き絞っている。
彼女の数メートル横では、彼女が撒いた枯れ草が風に流されていた。
「主は賜った」
草から風の動きを読み取り狙いを修正。聖句を言い終え矢から指を離す。
銃弾に比べると一見迫力に欠ける矢が弧を描いて進み、アサルトライフルの射程を超える地点で雑魔の頭を貫通した。
衝撃で雑魔の口が閉じる。放たれれば正太郎の腹に穴を開けていたはずの光弾が口腔で炸裂し、矢によって半壊していた泥人形頭部を爆砕した。
アリスが何か叫んでいる。
正太郎が後退をはじめ、アリスの繰り出した風刃が追撃しようとした雑魔の片足を切り飛ばす。属性による効果増大だが数の差はいかんともしがたくアリスも後退を強いられる。
「土は土に」
イグレーヌの第2矢。風に乗って先頭の雑魔を貫き後続の動きも乱す。
「灰は灰に」
祈りは全ての準備を整えた後の仕上げだ。極限の集中で己と周囲のあらゆる情報を読み取り、マテリアルで精度を増した上で矢を向かわせ雑魔を足止めする。
「塵は塵に」
風向きが変わる。矢がずれて誰もいない街道に虚しく突き立った。
雑魔集団と城壁との距離が縮まり、兵士達が門の前に陣取り死守の構えをとる。
「アレは2度と起こさせはしない、そう誓ったんだ」
従騎士だった頃経験した地獄が目の前の現実に重なる。細身の体のうちにある心が悲鳴をあげる
「雑魔だろうが、歪虚だろうが……全て射殺す」
悲嘆を憎悪で塗りつぶし、信仰で以て純化する。
「光あれ」
最前列の雑魔が首を破壊され、土煙をあげて崩壊していった。
●撃退
「通してくれてありがとうなのっ」
ひらひらふりふり……最上質のレースをオーラで織り上げた、可憐さと武威を両立する戦装束が揺れた。
纏うのは佐藤 絢音(ka0552)。身長と同じ長さの銃を持つ魔法少女っぽいハンターである。
逃げていく都市住民をかわし、薄く開いた門をすり抜け、門を外側から守っていた兵士にひまわりのような笑みを向けた。
「もう」
跪く。桜色の銃床を肩に当てる。
「だいじょうぶなのっ!」
そのまま教本に載っても違和感がない見事な膝射で連射する。
光の錐が泥人形に何本も吸い込まれ、もともと頑丈ではない表面を崩壊させ内部を露出させた。
雑魔の視線が絢音を向く。
体の小ささから絢音が覚醒者の弱点と判断したらしく、3つの光弾がかわしても1つは当たる間隔で飛んできた。
ぱりん、とアニメの効果音っぽい音を立てて障壁が消える。
「あやねのばりあーは気休めではないの」
えへんと胸を張ってリロード。雑魔は怒ったのか混乱したのか、狙いが乱れきった3発を絢音に向ける。2発は上に逸れすぎて門の上に消える。残る1発は門を死守していた兵を襲い、ばりやーに衝突し威力の大部分を削がれ、兵士の盾にさらに9割削がれて兵士の手の平を赤くするだけに終わる。
「遅くなった」
門が軋む。イスカが鍛え抜かれた体を戦場に踏み込ませる。
避難途中の人々に頼られ縋られたため、少し遅くなってしまっていた。
縋られて少し遅れた程度で済んだのにはもちろん理由がある。
スニーカーが石畳を蹴りつける。覚醒者の能力がマテリアルによる強化で凶悪な領域に入り、石畳に蜘蛛の巣状の亀裂を刻む。ランアウトの効果だった。
絢音と惣助の援護射撃のもと正太郎の横まで一気に進み、彼と共に雑魔7、いや今6体になった雑魔隊に白兵戦を仕掛けた。
矢弾や術を浴びた泥人形は傷ついていないところがない有様だ。
日本刀を横に振るうとほぼ抵抗無しで表面と中が裂け首が飛ぶ。
「さて、飛ばすかっ!」
最後に残った移動用マテリアルを消費する。
隊列中央の雑魔を蹴り倒しその背後の雑魔を頭部から腰まで両断すると、雑魔の隊列は消え去り並以下の雑魔5体だけが残った。
隊としての強さが失われ、耐久力も半減していても攻撃能力は健在で、雑魔5体の口に最初と同威力の光玉が生じた。
しかし倍増した風刃により端から切り刻まれていく。
ルナ・クリストファー(ka2140)が瞬きする。
金色の瞳の奥には驚きと爽快感があるが、彼女の目を覗き込む余裕のある者はいない。
ルナのローブが揺れる。風の動きが一点に集中して風刃となり、イスカを迎撃しようとした泥人形の後頭部を頭の半分ごと切り飛ばす。
切断面は茶色一色の鏡のごとき平面で、平面のまま薄れて消えていった。
「退路を封じてください」
ルナは術を連続行使しながら要請する。落ち着き払った声は戦場では非常に目立っていた。
イスカ達前衛が雑魔の背後と側面に移動する。結果的にルナ達後衛の守りが失われたようにも見える。
泥人形が駆け出した。
風刃が容赦なく雑魔の体を断つ。手や足の先を飛ばされても血は流れず、雑魔は己の四肢の端を砕きながら街に辿り着き破壊を振りまこうと駆ける。
筋の瞳に雑魔が映っても、ルナの顔にも瞳の奥にも予想外という思いは浮かんでいない。
軽い足取りで半歩横へ。直前までルナがいた空間を細長い泥腕が通過する。
ルナは平静なまま詠唱を終え、風をまとったマギスタッフを泥人形に伸ばす。
雑魔の頭から腰にかけて一筋の亀裂が走り、やがて内側からの圧力に負けて爆発する。このとき他の雑魔も限界を超えていた。矢と弾と術と剣で砕かれた泥人形と地面の埃が混じって宙に舞い、前者が消えて覚醒者しかいない街道が見えてくる。
「びくとりー!」
絢音が元気よく跳ねる。
覚醒状態を解除するとふりふりが光になって消え、可愛らしくはあるが普通の範疇に入る服装に戻る。パステルカラーだった魔導銃も元通り。変身中と比べて4、5歳幼く見えるのは気のせいかもしれない。
そんな絢音をじいっと見つめているだいたい同年齢が1人。金色から碧眼に戻ったルナである。
「リアルブルーの文化か……」
踊り子志望としては、一種の華がある服装を見逃すわけにはいかないのだ。
●報告
惣助が軽く手を打ち鳴らす。
はしゃいでいた兵士達が我に返り照れ臭そうな顔をする。
「兵士諸君」
硝煙を漂わせ、厳しい顔で男達をみつめる。
「良くやった。街の中に被害が無かったのは君たちのお陰だ。存分に誇れ」
男達が直立不動からの気合の入った敬礼を行い、惣助が厳かに答礼した。
「なんか匂うんだよね、今回の襲撃がまるで何者かが意図して発生させたようでさ……」
イスカが眉間に皺を寄せ戦場と街を見る。
既に大凡の事情は兵士から聞いている。並みの覚醒者なら覚醒回数を使いこなす回数の雑魔による襲撃に加え、ハンターがいなければ確実に兵士が全滅する数での襲撃。
雑魔の頭で思いつける作戦ではない。
「しかもこっちの防衛戦力まで見抜かれてる可能性も高い。今回感じた事、全部杞憂だったらいいんだけど……ね」
アリスは返事のかわりに溜息に似た息を吐いた。
「知能の高い上級歪虚か堕落者が関わっていないとも限りません。単純に雑魔の増加や活動の活発化が原因だったとしても、それが起こった理由があるはずですし」
悲観も楽観も無い予想が、酷く暗い。
「報告書が必要だな」
惣助がポケットから小さなメモ帳を取り出す。事実と兵士の証言とハンターによる予想を別けて書いて、ふと気付く。
「清書、頼めるか?」
元軍人として軍の流儀は身についてはいるが、歴史と文化の王国の、政府高官に通用する文章については自信が無い。
「私で良ければ」
アリスが淡く微笑んでうなずく。彼女はサルヴァトーレ・ロッソより数年早く跳んで魔術師としての教育を受けている。
裏のない報告書ならなんとかできるはずだ。
「観察……偵察もかな。防衛強化も打診すべきだろうね。ああもう冗談じゃねぇぞ」
イスカは、昔身についてしまった口調が思わず出てしまった。
アリスが驚いて瞬きする。惣助はイスカの提案も出来る限り書き留めて本人に見せ、何度か読み返し1カ所誤字を直してからアリスに渡した。
「取り越し苦労になれば理想だな」
イスカが街を振り返ると、雑魔の全滅を知った住民達の歓声が響いていた。
報告書は兵士達を経由して地元の領主の手に渡った。どの高さまで報告が上がるかは、現時点では不明である。
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相談卓 近衛 惣助(ka0510) 人間(リアルブルー)|28才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2014/10/15 21:54:43 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/15 17:38:09 |