【王国始動】ファンタジーで最初のと言えば

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/06/17 15:00
完成日
2014/06/25 10:18

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●【王国始動】共通OP(簡易版)
「皆さま、我がグラズヘイム王国へようこそ」
 グラズヘイム王国、王都イルダーナはその王城。
 謁見の間に集められたハンターたちは、正面、二つ並べられた椅子のうち右の椅子の前に立った少女に目を向けた。
 落ち着いた、けれど幼さの残る声。椅子に腰を下ろした少女、もとい王女は胸に手を当て、
「はじめまして、私はシスティーナ・グラハムと申します。よろしくお願いしますね。さて、今回皆さまをお呼び立てしたのは他でもありません……」
 やや目を伏せた王女が、次の瞬間、意を決したように言い放った。
「皆さまに、王国を楽しんでいただきたかったからですっ」
 …………。王女なりに精一杯らしい大音声が、虚しく絨毯に吸い込まれた。
「あれ? 言葉が通じなかったのかな……えっと、オリエンテーションですっ」
 唖然としてハンターたちが見上げるその先で、王女はふにゃっと破顔して続ける。
「皆さまの中にはリアルブルーから転移してこられた方もいるでしょう。クリムゾンウェストの人でもハンターになったばかりの方が多いと思います。そんな皆さまに王国をもっと知ってほしい。そう思ったのです」
 だんだん熱を帯びてくる王女の言葉。
 マイペースというか視野狭窄というか、この周りがついてきてない空気で平然とできるのはある意味まさしく貴族だった。
「見知らぬ地へやって来て不安な方もいると思います。歪虚と戦う、いえ目にするのも初めての方もいると思います。そんな皆さまの支えに私はなりたい! もしかしたら王国には皆さま――特にリアルブルーの方々に疑いの目を向ける人がいるかもしれない、けれどっ」
 王女が息つく間すら惜しむように、言った。
「私は、あなたを歓迎します」
 大国だからこその保守気質。それはそれで何かと面倒があるのだろう、とハンターはぼんやり考えた。
「改めて」
 グラズヘイム王国へようこそ。
 王女のか細く透き通った声が、ハンターたちの耳朶を打った。


●『ファンタジーで最初と言えば』

「ファンタジー世界で冒険者が最初に受ける依頼といえば、やっぱり『ゴブリン退治』でしょ」
 王女との謁見を終えて、係の者に案内されて城内を歩く道すがら── リアルブルー人のハンターと思しき一人がそのような事を口にした。
 最初に受ける依頼は何にしようか。その様な雑談の中に出てきた冗談口の一つである。だが、クリムゾンウェストの人々にその判別はつかなかった。案内係の青年はその会話を耳にすると、すぐに、近くを通りがかった侍女に耳打ちし…… 話を聞き終えた侍女は深々と頭を下げた後、異邦人たちにこう告げた。
「承りました。早速、手配させていただきます」

 あれよあれよとバタバタしている内に手続きが整えられ── 今更、冗談です、とも言えず、ハンターたちは『ゴブリン退治』の舞台となる王国北部への道中にあった。
 転移門にて依頼地に最も近い町に飛び、そこから馬車で移動する。王国北西の平原地帯からさらに北部亜人地帯へ伸びる道は、石畳で舗装された街道とは異なり、地面を踏み固めただけの簡素なものだった。路上の石も完全には除けられておらず、ハンターたちは長時間、木製の硬い荷台の上でガタゴトと揺られながら、何もない草っ原と痛む尻とに冒険者の『真実』を知る。
「王国と帝国の間には、『大峡谷』と呼ばれる深く長大な裂け目が大地に刻まれています。谷の近くにはゴブリン等の亜人たちが多く棲みつき、土地が痩せていることもあって開発は進んでいません」
 途中、一泊した宿屋の食堂で、案内係の青年──最後までハンターたちを案内するのが役割だ──がハンターたちにそう説明した。
 彼の話を聞きながら、ハンターたちは、くずの様な野菜の入ったスープを匙ですすり、内心で顔をしかめた。……このグラズヘイム王国では基本的に、南部から北部へ行くほどに食事が不味くなる傾向があるという。硬いパンを噛み千切り続けた顎はもうパンパンだ。
 藁を敷いただけの硬いベッドで夜を明かし、痛む節々を伸ばしつつ…… 翌日の昼になってようやく、ハンターたちは任地に到着する。
 辿り着いたのは丘陵地の麓に広がる、とある小さな村だった。草地と荒地が点在する、何もない所だった。何百年も前にはそこそこの大きさの町だったらしいが、今ではすっかり辺境の一村落に零落してしまっている。農業だけでは中々食べていけず、畜産が主な産業だ。
「おおっ、あれがリアルブルーの英雄様たちだべか!?」
 村に入ると、仕事に出ている男たちを除いて、村人たちが総出でハンターたちを出迎えた。このような場所でも、或いは、このような場所だからこそ、異世界から来た救世主の伝説や物語は広く人々に知られていた。歓声を上げる若い娘に、目を輝かせてハンターたちを見つめる子供たち── 実際の所、リアルブルー人が=英雄というわけではなく、明らかに過剰な期待なのだが…… 娯楽の少ない地にあっては、ハンターたちの来訪もお祭りみたいなものなのだろう。
「ゴブリン退治ですか…… 確かに、この辺りは亜人が多い土地では御座いますが、毎日とか、そう度々遭遇するものでもないのですよ。王都からわざわざいらしていただいて恐縮ですが」
 案内された村長の屋敷で、出迎えた村長がハンターたちに申し訳なさそうにそう告げた。出された食事は相変わらず素朴だったが、牛乳と果実類はとても美味で、北部にも美味しいものはあるんだなぁ、とそれだけは救いだった。
 折角、このような遠方まで来てくれた客人をただで追い返すのも忍びなく、村長は必死に頭を巡らせた。そして、何かを思いついたというようにポンと手を打った。
「そうだ。この村の主な産業が牧畜である事は既にお聞き及びのこととは思いますが、時々、ゴブリンどもがその家畜にちょっかいを出すことがあるのです。このだだっ広いエリアに放牧をしているので、とてもじゃないですが手が回らず…… ハンターの皆様方におかれましてはごゆるりと当村に滞在しつつ、もし、ゴブリンが出現しましたら撃退していただく、というのはどうでしょう?」
 実際の所、この村における亜人による家畜の被害はそれほど深刻なものでもないのだろう。害獣に襲われた、くらいの感覚であるに違いない。
 それでも、長老は、異世界から来られたばかりの方は気苦労も多いでしょうから、のんびり骨を休ませる意味でも、と、滞在を勧めてくれる。案内係の青年は苦笑した。今回の依頼の報酬や費用は王城持ちであったから──
「村長──」
 と、そこへ馬でかけてきた一人の中年男が、下馬もせぬまま、屋敷の窓越しに村長を呼んだ。
「村の若いもんが、放牧地の先の荒野で、狩りの最中のゴブリンを見かけて戻って来た。連中の『釣果』次第じゃ、もしかしたらこっちにも来るかもしんねぇ」

リプレイ本文

「ここは長閑な所ですね。心が休まります。……異世界に来たという実感は、いまだに薄いですけれど」
 素朴な村の情景を往来に眺めながら。リアルブルー人、セレスタ・レネンティア(ka0874)は呟いた。
「……まぁ、私の故国も周りからはいなk……こほん。自然豊かな国と言われていましたからね」
 その呟きに「まったく」と頷いてみせる柊 真司(ka0705)。セレスタがチラリと彼を見る。……いや、故郷が田舎とかいう部分に同意したわけじゃない。
「……こんな小さな村じゃ、CAMのマテリアル系に代替できそうなものはないな、という話だ」
 真司は元々CAMのパイロットだった。CAMを再び自由に動かせるような技術や代替品を求めて、各地を自由に回れるハンターになった。
「とは言え、来ちまったもんはしょうがない。……それに、こんなに歓迎されたんじゃ、その期待にも応えたいしな」
 そう言って、真司は、村人たちの熱烈な歓迎振りを思い返しながら、デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)と、サンカ・アルフヴァーク(ka0720)の方を見やった。
 奇抜な黒革のマスクに闇色のマント──まるでアメコミの悪役の様な全身黒尽くめの男の周囲には村の男の子たちが集まっていた。
「グハハハハ! 驚くほど何もない村だが、気に入った! 俺様は超世界パーフェクトブラックからやって来た暗黒皇帝・シュヴァルツカイザー! ゴブリンなど俺様の暗黒奥義ギャラクティカバスターを使えば指先一つで一掃も可能だが、使えばこの大地に新たな大峡谷が刻まれてバッテン印になってしまうは必定。故に今回は1%の力で戦ってやろう」
「5%じゃダメなの?」
「ぬぅ?! 残念ながら今はこの世界に着いたばかりで、壊れた蛇口の如く1%か100%の二択なのだ。グハハハハ……ッ!? んがぐっぐ、げぼっ、げほっ」
 一方、サンカの方には、若い女性や女子が多い。この王国辺境部の村にあっては、エルフもまた珍しい存在だ。
「んにゃ、俺はハンターだからな。リゼリオから来たんだぜ?」
 けらけらと楽しそうに笑いながら、リゼリオやエルフの風習について面白おかしく語って聞かせるサンカ。口から生まれたかの如く慣れた調子で話すその様子からは、これまでに幾度となく聞かれ、話してきた内容であることが窺える。……奔放な性格ゆえに故郷を飛び出した『変り種』。それは孤独な旅路の中で身につけた処世術か。
「あれがこの世界のエルフというものですか(←違)」
 呟いたセレスタは、ふと傍らのシレークス(ka0752)を改めてまじまじと見下ろした。異世界に来た実感──目の前の彼女などまさにその象徴ではないか。
「シレークスさんはドワーフなのですね…… なぜハンターに? どうしてこの依頼を?」
「わっ、わたくしはゴブリン退治が肩慣らしに丁度良いっていうか、全ては今宵の酒代稼ぎの為でありやがりますですよ!」
 興味津々なセレスタの質問になぜか慌てるシレークス。そこへ、信心深い村の老婆たちが彼女を探してやって来た。シレークスはドワーフでハンターでもあると同時に、聖職者でもあった。
「ゴブリンは私たちが必ず追い払います。安心して、普段通りの生活をなさってください」
 口調どころか表情や態度まで変えて、シレークスが聖職者らしく祝福する。老婆たちは礼を言い、果実や乳製品の入った籠を寄進して去っていった。
「……村の人が困るので、断固阻止しねーとです」
 キリッとした顔で呟くシレークス。その顔の下半分はもぐもぐと動いている。

 そんなハンターたちの様子を村長の館から見やって── リアルブルー人、守原 有希弥(ka0562)は苦笑しつつ、目の前に座った村長に向き直った。
 その傍らで、クリムゾンウェスト人、プラチナ・ランブランシュ(ka0604)は、ゴブリンが出たと聞いてもどこか呑気な村人たちの様子に、改めて目を丸くした。『護衛侍女』なるものを目指してハンターとなった彼女にとって、依頼を受けたのも、王都から遠く離れたのも、初めての事だった。ゴブリンとは『倒すべき悪しき存在』── だが、当の現場の村人たちは、ゴブリンが出ても常と変わらぬ生活をし、放牧にまで出かけている。
(王都の中にいるばかりでは、知りえないことばかりです)
 軽くカルチャーショックをプラチナが受けている間に、有希弥は村長たちへの情報収集と依頼の細部についての話を終える。
 後、有希弥とプラチナは他のハンターたちと合流すると、村に滞在する間、宿泊する部屋へと案内された。4人用のベッドの並んだ男部屋と女部屋── 有希弥が案内されたのは女部屋だった。
「あの…… うち、男なんですけど……」
 ガクリと膝をつき、落ち込む有希弥。えっ?! とプラチナが目を丸くして。やっぱり世界は広いんだ、とかそんな事を思ってみたり。


「さて! 埴輪の良さを伝える前に、邪魔なゴブリンとやらを撃退しないとだな!」
 日没後── デスドクロとペアを組んだリアルブルー人、アルト・ハーニー(ka0113)は、100tと記されたウォーハンマーを肩に担ぐと、哨戒の為、意気揚々と村を出て放牧地へと歩き出した。
「ハニ…… えェ?」
 その出掛け。聞き慣れぬ異世界の固有名詞に喰いつくサンカ。彼が興味を持ったのは言葉だったが、アルトは埴輪そのものに興味があると理解した。どこからか取り出した埴輪(手作り)を握らせ、興奮を抑えた口調で爛々と語り出す。
「この人を魅了するような眼差し、すべすべの肌…… たまらないと思うのだがな……!」
 これは異界の神か何かか──アルトの熱弁に眉をひくつかせながらサンカは埴輪を見つめ続ける。
「遊んでないで行くのだ、アルト! 弱者の生活を守るのも、絶対王者であり暗黒皇帝である己の使命であるが故!」
 と、そこへ、意外と真面目なデスドクロが現れ、アルトの襟首を掴み上げ。鼻歌混じりに、散歩にでも出かけるような気軽さで、アルトを引きずり去っていく。
 そんな二人を見送りながら……サンカは、どうしたものかと地に佇立したままの埴輪を見下ろした。遅れて合流して来た真司が「なぜ埴輪?!」と二度見する……

 夜中── 2人ずつ分かれて放牧地を巡回していたハンターたちは、牧畜犬が何かに向け吠えかける声を聞いた。
 尋常ならざるその吠え声に、ハンターたちが走り出す。休憩中、自作の弁当を交換し、互いに口に運んだ瞬間、双方、素人ではないな、と目と目で理解し合った有希弥とプラチナもまた立ち上がる。
 最も早く現場に到着したのは、最も近くにいたセレスタ・シレークス組だった。
「やはり、丘の稜線を越えて来ましたか」
 呟くセレスタ。ゴブリンたちは既に牛を殺し、解体作業に入っていた。吠え続ける牧畜犬の側には突き刺さった数本の矢──奇跡的な神回避で今も人を呼び続けている。
「援護します」
 セレスタはシレークスにそう告げると、自動拳銃を両手で構えた。ゴブリンの数は4。3体は短槍を手に前進し、シレークスを囲む構えを見せる。
 残る1体は小弓を構え、シレークスに矢を引き絞り……それを見たセレスタは即座に発砲。銃弾は距離修正分で外れ、気づいた敵が目標をセレスタに切り替えた。放たれた矢は頭部をギリギリ掠め飛び。直後、セレスタが放った応射はまるで離れた所に着弾する。
(……震えている?)
 自らの手の震えに気づいたセレスタは、改めて呼吸を整え狙いを定めた。──発砲。弾は弓持ちの脚に当たり、敵が悲鳴を上げて膝をつく。続けて放った4弾目は、弓を構え直した敵の急所を直撃した。パッ、と血煙を噴き出した敵が大地に大の字に倒れ、放たれた矢が明後日の方向に飛び落ちる。
「まず1体……!」
 だが、シレークスは3体のゴブリンに囲まれ、3方から槍を繰り出されていた。その内、正確に急所を捉えていた一撃をシレークスはどうにか槌で受け逸らし。同時に、残りの2本の槍の間に無理やり身体を割り込ませる。槍の柄が革鎧を擦る音と熱── シレークスは正面の敵に槌を振るって頭部を殴ると、一旦、後ろに跳んで包囲から逃れ出る……
「セレスタさん、シレークスさん! 今、行きます!」
 と、そこへ現れたるは増援、有希弥・プラチナ組。有希弥は敢えて大声で彼我にその存在を知らしめながら、素早く戦場を見回した。
 4体の敵の内、既に1体は倒れていた。だが、敵もまた新手が2体、味方に合流しようと戦場へと駆けていた。今いる連中と比べて体格も武装も一回り良いように見える。戦場へ到達するまで、およそ1分と言ったところか。
「……参ります!」
 プラチナは手にした杖を振ると、小盾を前に掲げながら丘の斜面を駆け下り始める。初めての実戦、初めての命のやり取り──湧き上がる緊張に、プラチナは自分に言い聞かせる。
(大丈夫……! 訓練の通りにやれば良いです……!)
 そう思った瞬間、ピシリと固まるプラチナの表情。……そうだ。あの地獄の様な特訓に比べれば。ゴブリンとの戦闘なんて何ほどのものがあろうか……!
「敵の新手が到着する前に、まずは今いる連中を崩します!」
 有希弥は己の足にマテリアルを集中すると一気に敵中へと迫った。気づいたゴブリンの1体が短槍を振り被り、有希弥へ向け投擲する。前進する速度を緩めずそれをかわした有希弥は、そのまま全身にマテリアルを廻らせつつ、小剣を振り下ろした。頭部を叩かれよろけた敵へ有希弥は追撃の胴を払い…… それをギンッ、とかわした敵が、逆に抜き打った牛刀を有希弥の急所に突き入れる。
「守原様!」
 そこへ駆けつけて来たプラチナがその眼前に盾ごと突っ込み、割って入った。新手の登場に敵が一度、後ろへ下がって距離を取り。プラチナがさらに踏み込んで、敵を追い払うように杖を左右へ振り回す。
 デスドクロ・アルト組が到着したのはそんな折。更なる新手の登場に、ゴブリンたちの間に動揺が走る。
「あれがゴブリンか。本物を見るのは初めてだが…… ま、なんとかなるだろうさ!」
「欲しいから奪う、結構結構! 欲望のままに生きてこそのゴブリンよ!」
 デスドクロは叫ぶとアルケミストデバイスを操作し、『機導砲』を起動した。変換されたマテリアルエネルギーが光となって集中し、闇色のマントをはためかせ(※イメージ)。突き出された両の拳から一条の光となって迸る。
 光条はシレークスに突きかかる1体の脚を直撃し、その半ばを吹き飛ばした。地面を転げ、石を掴んで投げるゴブリン。その一撃に足(小指)を打たれて涙目になりながら。更なる光条でもって敵を貫き、トドメを刺す。
「おおっ、凌ぎ切ったか、流石はハンマーの同志! ならばハンマー同士で同時にいくぞ、と。ダブルハンマーアタックを!」
 叫び、横合いから背後へ飛び込んできたアルトに釣られて、ゴブリンが半身を下げる。瞬間、シレークスはきゅぴ~ん! とその目を光らせ、それまでの守勢が嘘の様に、闘争心を剥き出しに攻勢へと転じた。
「うふふふ、覚悟しやがれです! 血の花を咲かせてやがるのです!」
 アルトと正対する様にゴブリンを挟み込んだシレークスは、一撃目をフェイントにクルリと一回転し、そのまま本命の一撃を敵の胸部へと振り抜いた。アルトもまた同時に敵の背部へ向けて戦槌をフルスイングする。2つの槌頭に挟み打たれた敵は、木の実の如くぐちゃり、と潰れた。派手に体液を振り撒きながら、立ったまま地面へ崩れ落ちる。

 3体が撃ち滅ぼされたのを知り、最後の1体はすぐに戦場を離脱にかかった。
 痛む脚を堪えつつその背に追い打ちをかける有希弥。敵は背を浅く切られながらも、そのまま戦場外へと逃げ出していく。
 有希弥と自身の手足の怪我を『ヒール』と自己回復で治療しつつ、プラチナはその敵の背を唇を噛んで見送った……

 一方、接近中の敵の新手──2体のゴブリンソルジャーには、最後に戦場に駆けつけた真司・サンカ組が当たっていた。
「おい。あの二匹もヤって奴等を全滅させようぜ?」
「……了解した。援護は任せろ。思いっきりやれ」
 サンカの提案に真司が了承すると、2人は戦場へ向かう鬼兵の更に後ろに回り込んだ。敵の退路を断ち、味方の中に追い込む構えだ。
 2体の鬼兵はそれに気づくと、足を止めて2人に向き直った。構わず突撃するサンカ。己の長剣にマテリアルの力を込めつつ、ダンッ、と踏み込み、片手面を振り下ろす。
「一丁、かるーく退治といきますか。『チュートリアル』にゃぴったりだろ? リアルブルー出身者諸君!」
 サンカはそうけらけら笑うと、頭を庇った鬼兵の腕に構わず剣を振り下ろし。そのまま流れるような軌跡で今度は横胴へ斜めに斬り下ろす。革鎧の意外な硬さにその目標を手足に変え……直後、その刃が振り下ろされるより早く、突っ込んで来た鬼兵が革鎧の肩口、その表面で刃を滑らせ、受け凌ぐ。
「っ!」
 即座にサンカは剣を引き戻して後ろへ跳び退さったが、横薙ぎに振るわれた敵の剣先がギリギリでサンカの胴を捉えた。革鎧に刻まれる一文字。サンカが体勢を立て直すより早くもう1体が追撃に突っ込んで来る。
「大丈夫か、サンカ!? ……これでも喰らえ!」
 真司は手にしたリボルバーを振り構えると、その鬼兵に狙いを合わせて引き金を引き絞った。踏み込んだ脚の腿部をビシッ! と銃弾が貫通し、ガクリと膝を落とす敵。自分を銃撃した敵を見返したゴブリンは、直後、真司がデバイスを介して変換したマテリアルエネルギーの光に驚愕の表情を浮かべた。直後、照準器代わりにリボルバーの先端から放たれる『機導砲』。その光条が、構えた盾ごと敵の頭部を撃ち貫く。
 相方がやられたもう1体の鬼兵は、眼前のサンカからにじり下がると、そのまま一目散に後退し、夜の闇の奥へと逃げ始めた。


 戦闘終了後── サンカは逃げた鬼兵を追って、可能な限りの追撃を仕掛けたが、やがて夜の荒野に見失った。
 真司はその場で哨戒任務へと移行し、逃げた敵が舞い戻って来ないか、また他の戦力が残っていないか、周辺の警戒に当たる。

 村人の間に入り、手伝いを申し入れるプラチナとセレスタ。有希弥は村長に養蜂の知識を話しつつ、デスドクロが蜂蜜料理に舌鼓を打つ。

 翌日──
「おおっ! ハンマーの同志! おまえにも埴輪の素晴らしさをぜひ知ってもらいたい!」
 村人に埴輪の素晴らしさを説いて回っていたアルトがシレークスにも埴輪を手渡し…… シレークスはそれを半眼で摘み上げるとそっと地面に置き、手にしたハンマーで叩き割った。
「成る程、砕き易くて良い練習台になりやがりますですね」
「あああああっ!?」
 歩み去るシレークスの背後で、埴輪の破片を拾い上げるアルト。彼は埴輪の仇とハンマー仲間の間で苦悶して……
「ふ、これくらいでは負けないのだぞ、と」
 そう呟いた。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 8
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 完璧魔黒暗黒皇帝
    デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013
    人間(蒼)|34才|男性|機導師
  • ヌリエのセンセ―
    アルト・ハーニー(ka0113
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
  • 渾身一撃
    守原 有希弥(ka0562
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • 戦場の侍女
    プラチナ・ランブランシュ(ka0604
    人間(紅)|17才|女性|聖導士
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 大樹の樹皮
    サンカ・アルフヴァーク(ka0720
    エルフ|18才|男性|闘狩人
  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 飛ぶ鳥を落とす
    セレスタ・レネンティア(ka0874
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談スレ~6/17 15:00
サンカ・アルフヴァーク(ka0720
エルフ|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/06/17 14:45:44
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/12 18:21:40