ゲスト
(ka0000)
幸福来店バレンタイン商戦!【表通り編】
マスター:紫月紫織

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/02/20 09:00
- 完成日
- 2017/02/27 23:55
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
◆想い人はバレンタインの夢を見るか
バレンタイン、それは想い人への秘めた気持ちをプレゼントという形に乗せて伝える、そんな──概ね商売人たちの商売チャンス形成のために生まれた──イベントである。
立ち並ぶお店は様々、客もまたそれぞれである。
どうぞ、良い贈り物が見つかりますように。
◆小さじいっぱいの幸せを
小瓶には虹色の金平糖。
幸運導くお守りに、災難除けのアミュレット。
誕生石には祈りを込めて、送る指輪に願いを込めて。
大きな瓶には色とりどりの甘い宝石。
ペンダントのトップには鍵を、開くは貴方の心の扉。
どんぐりで作ったお守り、夢を捉える編み飾り。
どうかどうか、ほんのひとさじで構わない。
皆を幸せにしておくれ。
◆シルヴァ・ラヴァフェット
藍色の髪をはためかせ、準備した自分の出店に足りないところはないかと首をかしげることしばし、物足りないなと看板に太陽の飾りを一つ追加する。
昼の出店の一角に、突如として現れた満天の星空。
そう表現する以外に、彼女──シルヴァ・ラヴァフェットの出店を説明するに良い言葉はなかなか見当たらないことだろう。
もともと占い師である彼女にとって、暗色は欠かせない。
濃密な夜空色のディスプレイマットの上には散りばめられた宝石が所狭しと並んでいる。
並べられた手製のアミュレットは、夜空に浮かぶ星のように陽の光を浴びてきらきらとその身を主張していた。
金、銀、宝石、イミテーション、値段はピンからキリまであれど、そのどれにも変わらないのは彼女が一つ一つ思いを込めて作り上げた手製のアクセサリであるということである。
「さてさて、お店の準備はこんなものかしらねぇ」
朝日の中に切り取って置かれたような夜空の出店を見て満足そうに微笑むと、シルヴァは出し忘れていたものに気づいて荷物の中身をひっくり返し、一枚の看板を取り出した。
そっと店の前にそれを立てて、満足そうに頷くとで店の中に入り席に着く。
相性占いアリマス、お一人様も歓迎。
◆開店
「さぁさ! 幸せほしけりゃ寄っといで、幸運ほしけりゃ見ていきな! フォーチュンショップ《メレミア》の特別出店! 本日限りの特別企画、シングルカードオラクルもあるよ! 貴方の運勢に幸あれだ!」
シャッフルしたタロットカードをテーブルの上にぽんとおいて、お店を訪れた人が幸せそうにする夢を見て、彼女はそっとほくそ笑む。
「ねえねえ、フォーチュンショップだって、キラキラしてて綺麗よ」
「お前は本当にこういうの好きだな」
「おやおや、恋人同士かい? よかったら見ておいきよ、安産祈願のお守りもあるよ」
「ねーちゃん、ちょっとそれはまだ早い」
気さくに声をかけるシルヴァに苦笑する彼氏、赤くなる彼女を見るにどちらもまんざらではないらしい、幸せそうな二人組に思わず頬が緩む。
「素朴なお守りなんかもあるんだな……お、占いもあるのか。彼女との相性占いもできんの?」
「もちろんさ! 恋人同士の相性占いはもちろん、友達同士の相性だってバッチリさ、一つ占っていくかい?」
「どうする?」
「面白そう! 私やってみたい」
喜んで身を乗り出す彼女に、シルヴァはそっと山になったタロットを指し示す。
「めくるのは二人のうちどちらか。縦か横、好きな方にめくっておくれ」
「じゃあ、任せた」
「うんっ! それじゃあ……横っ!」
開かれたカードは《恋人》の正位置。
「こいつはいいカードを引き当てたね、お互いの気持はまさに相思相愛というにふさわしい。今がちょうど良い頃合いだ、物事をすすめるならば近いうちがいいだろう。直感に頼るってのもありだね、でもあれこれと悩んでいるとチャンスをのがしてしまうかもしれないからそこは要注意だ」
シルヴァの言葉に思わず互いに見つめ合う二人、おそらくそろそろ次のステップを考えていた頃合いなのだろう。
手をつなぎ睦まじく店をあとにする二人を小さく手を降って見送る。
あの二人ならばうまくいく。
占い師としてのカンがそう告げていた。
「……みんな幸せに、なれたらいいね」
バレンタイン、それは想い人への秘めた気持ちをプレゼントという形に乗せて伝える、そんな──概ね商売人たちの商売チャンス形成のために生まれた──イベントである。
立ち並ぶお店は様々、客もまたそれぞれである。
どうぞ、良い贈り物が見つかりますように。
◆小さじいっぱいの幸せを
小瓶には虹色の金平糖。
幸運導くお守りに、災難除けのアミュレット。
誕生石には祈りを込めて、送る指輪に願いを込めて。
大きな瓶には色とりどりの甘い宝石。
ペンダントのトップには鍵を、開くは貴方の心の扉。
どんぐりで作ったお守り、夢を捉える編み飾り。
どうかどうか、ほんのひとさじで構わない。
皆を幸せにしておくれ。
◆シルヴァ・ラヴァフェット
藍色の髪をはためかせ、準備した自分の出店に足りないところはないかと首をかしげることしばし、物足りないなと看板に太陽の飾りを一つ追加する。
昼の出店の一角に、突如として現れた満天の星空。
そう表現する以外に、彼女──シルヴァ・ラヴァフェットの出店を説明するに良い言葉はなかなか見当たらないことだろう。
もともと占い師である彼女にとって、暗色は欠かせない。
濃密な夜空色のディスプレイマットの上には散りばめられた宝石が所狭しと並んでいる。
並べられた手製のアミュレットは、夜空に浮かぶ星のように陽の光を浴びてきらきらとその身を主張していた。
金、銀、宝石、イミテーション、値段はピンからキリまであれど、そのどれにも変わらないのは彼女が一つ一つ思いを込めて作り上げた手製のアクセサリであるということである。
「さてさて、お店の準備はこんなものかしらねぇ」
朝日の中に切り取って置かれたような夜空の出店を見て満足そうに微笑むと、シルヴァは出し忘れていたものに気づいて荷物の中身をひっくり返し、一枚の看板を取り出した。
そっと店の前にそれを立てて、満足そうに頷くとで店の中に入り席に着く。
相性占いアリマス、お一人様も歓迎。
◆開店
「さぁさ! 幸せほしけりゃ寄っといで、幸運ほしけりゃ見ていきな! フォーチュンショップ《メレミア》の特別出店! 本日限りの特別企画、シングルカードオラクルもあるよ! 貴方の運勢に幸あれだ!」
シャッフルしたタロットカードをテーブルの上にぽんとおいて、お店を訪れた人が幸せそうにする夢を見て、彼女はそっとほくそ笑む。
「ねえねえ、フォーチュンショップだって、キラキラしてて綺麗よ」
「お前は本当にこういうの好きだな」
「おやおや、恋人同士かい? よかったら見ておいきよ、安産祈願のお守りもあるよ」
「ねーちゃん、ちょっとそれはまだ早い」
気さくに声をかけるシルヴァに苦笑する彼氏、赤くなる彼女を見るにどちらもまんざらではないらしい、幸せそうな二人組に思わず頬が緩む。
「素朴なお守りなんかもあるんだな……お、占いもあるのか。彼女との相性占いもできんの?」
「もちろんさ! 恋人同士の相性占いはもちろん、友達同士の相性だってバッチリさ、一つ占っていくかい?」
「どうする?」
「面白そう! 私やってみたい」
喜んで身を乗り出す彼女に、シルヴァはそっと山になったタロットを指し示す。
「めくるのは二人のうちどちらか。縦か横、好きな方にめくっておくれ」
「じゃあ、任せた」
「うんっ! それじゃあ……横っ!」
開かれたカードは《恋人》の正位置。
「こいつはいいカードを引き当てたね、お互いの気持はまさに相思相愛というにふさわしい。今がちょうど良い頃合いだ、物事をすすめるならば近いうちがいいだろう。直感に頼るってのもありだね、でもあれこれと悩んでいるとチャンスをのがしてしまうかもしれないからそこは要注意だ」
シルヴァの言葉に思わず互いに見つめ合う二人、おそらくそろそろ次のステップを考えていた頃合いなのだろう。
手をつなぎ睦まじく店をあとにする二人を小さく手を降って見送る。
あの二人ならばうまくいく。
占い師としてのカンがそう告げていた。
「……みんな幸せに、なれたらいいね」
リプレイ本文
●表通り1
ザレム・アズール(ka0878)の腕に自らの腕を絡ませて、アシェ-ル(ka2983)は上機嫌だった。
「カップルだらけですからね、この方が空気読んでる感じですよ、ザレムさん!」
彼女の言うとおり、バレンタインのこの時期はどこを見てもカップルだらけ、たしかにそのほうがその場には似つかわしいだろう。
「そうだな、俺でアシェールに釣り合うならいいんだが。しかし、どこを見ても美味しそうなものばかりだな」
「ザレムさん! ザレムさん! 見てください、この飴! 白鳥の形してますよ!」
平静を装いそんなことを言うザレムだが、絡められた腕から伝わる体温と彼女の香り、そして何よりも……柔らかさに内心は決して穏やかではない。
(深い意図は……ないんだよな、でも……そんなくっつかれると、やっぱ意識しちまうっていうかっ)
ぐるぐるとめぐる思考を必死に押さえ込み極力普段通り接するザレム、だがそんな彼女に翻弄される一時もまた楽しい、確かにそう思えた。
「今日はザレムさんのおかげで楽しく過ごせそうです!」
「そう思ってもらえるなら嬉しいよ」
内心では、その言葉はどういう意味なんだろうかと考えながら微笑むザレムであった。
アシェールに連れ回されるままに、可愛い小物を探し、あちこちで新作のスイーツを食べる。
ザレムを連れ回す彼女の足が、とある店の前で止まった。
「どうしたんだいアシェール?」
「ザレムさん、この店、きっと、良い物がありますよ」
何やら確信した様子で、アシェールはザレムを連れてその店へと足を踏み入れた。
●表通り2
愛しの彼女と腕を組んで歩く、七夜・真夕(ka3977)の足取りは軽やかだ。
「ね? ね? あそこなんてどうかしら?」
「ボクはどこでもいい、よ」
こうして一緒に、温もりを感じながら過ごす時間、それだけでも幸せだからと、雪継・紅葉(ka5188)は思う。
目につく店を片っ端から見て回る真夕は、紅葉の同意を得てカフェへと突撃した。
バレンタイン向けに用意されたパフェを頼み席に着く、そう時間も経たずに運ばれてきたパフェはチョコを主体に作られており、生クリームにチョコクッキー、そして板チョコが飾られた二人向けメニューである。
「紅葉、これはバレンタインのお返し」
そういって、真夕はスプーンで掬うとそっと彼女へと差し出す。
「ほら、紅葉。アーン♪」
ぽっ、と紅葉の顔が赤く染まる。
恥ずかしがっていたが、そっと口をつけ……赤らめた顔で笑顔を返す。
幸せだなぁとほっこりしていた真夕、その表情が赤く染まった照れ笑いに変わるのはその直後だった。
パフェに飾られた板チョコを、紅葉が銜えたのである。
交錯する視線。
「真夕……あーん、だよ」
少しして、柔らかい唇の感触を互いに感じるのだった。
●表通り3
ふらりと行き先を見失った足は、表通りを彷徨うように歩いていた。
高瀬 未悠(ka3199)にとって、その指摘はそれだけの動揺を誘うに十分なものだったのだ。
――それは恋である。
そうなのだろうか?
(確かに彼は大切な、憧れで、目標でもある人……でも、それだけじゃなくて好きかもしれないだなんて……どうしたらいいの?)
目を閉じればまぶたに浮かぶ、いつも笑顔を絶やさないけれど、本心も見せてくれないあの人。
鮮烈な強さに惹かれた、立ち直れなくなりそうな所を励まして、導いてくれた。
幾つもの光景が、思い出されては流れてゆく。
少し落ち着いて、動揺が収まったときに目に入ったのは、黒で覆われたお店だった。
(占い……か、試してみるのも、ありかしら?)
●《メレミア》
「ヤァ、占い屋サンとは面白そうダネ」
「いらっしゃい紳士なお兄さん」
愛想よく話しかけるアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)に、店主のシルヴァは嬉しそうに笑顔を返す。
なんともほのぼのとした空間が出来上がる中、占い有りますの看板に、アルヴィンは少し考えた末に告げる。
「ジャア古い友人との縁を占って貰おうカナ」
「よしきた! 縦か横に捲っておくれよ」
「このカードを引けば良いのカイ? 縦か横か……ジャア、横に捲るネ!」
くるりとめくられたカードは力を意味するカードの正位置。
「良いカードだね、力強さ、打ち崩せぬものを感じるよ。その古い友人との絆はきっと確かなものなのだろう、大切にすることだね」
「オオ、それは素敵ダネ! 良イ結果で嬉シイよ!」
嬉しそうにするアルヴィンの後ろからまた一人来客が現れた。
その姿にシルヴァが小さくつぶやく。
「これはまた……夜空の宝石みたいな子だね」
一瞬シルヴァと合ったエステル・クレティエ(ka3783)の視線は、その隣に居るアルヴィンへと移る。
「アルヴィンさんこんにちは。今日は何かお探しですか?」
「ヤア、エステル嬢。久しブリだね! うん、これカラ探スンだ、兎さんの形の御守とか可愛いと思うんダヨー!」
楽しそうに再会を喜ぶ二人の後からまた新たな来店があった。
腕を組んでやってきたのはアシェールとザレム、そしてまるで一緒にやってきたように当たり前に並んで入ってきたゼクス・シュトゥルムフート(ka5529)であった。
いらっしゃい、と声をかけるシルヴァに反応した二人はカウンターへとやってきて、ゼクスだけが店の奥へと消えていく、鮮やかな自然さであった。
「いらっしゃい。おや、運気の強そうなお嬢ちゃんだ、お兄さんは決意の硬そうな感じだね」
「占い、か……無料なのか?」
「今日だけ特別だよ、やってくかいお二人さん?」
「どうする、アシェール?」
「任せて下さい。運は良い方なんです!」
自信満々に言うアシェールに、占いってそういうもんだっけ? と首を傾げつつ一緒に札を捲る。
「お嬢ちゃんは法皇の逆位置だね、向けられている気持ちがあることの暗示だね。お兄さんは、運命の輪の正位置、判断を誤らなければ良いことがある、とみた」
「むむ……どういうことでしょう?」
「もうちょっと具体的にならないのか?」
「一枚だと具体的にするのは難しいねぇ、まあちょっとした天気予報みたいなもんさ」
(判断を誤らないって、それが一番難しいとおもうんだよなぁ)
ちらりと隣に立つアシェールに視線を向けるザレムだったが、それに彼女は気づかなかった。
可愛らしい袋に詰められた色とりどりの砂糖菓子は、ちょっとした宝石のよう。
それを眺めて、未悠は顔をほころばせる。
食べてしまうのがもったいないなと、そっと袋を抱えた。
親友と彼への贈り物はビロードの箱に詰めてもらった。
「あの、占い……いいですか?」
「もちろんだよ、紫水晶のようなお嬢さん」
差し出された山札を一枚捲る、審判の逆位置だった。
「難しいカードだね、今のままでは良い未来を得るのは難しそうだ。変化が必要だね」
「変化、ですか……状況を動かすのが必要と、そういうことでしょうか?」
ふむ、と結果に耳を傾ける未悠に、シルヴァから小さなキーホルダーが差し出された。
「……これは?」
「お守りさ、サービスだよ。あなたに良い巡りが訪れますように」
「ありがとうございます」
受け取ったどんぐりのお守りをポケットに仕舞う、そんな未悠の口から、ぽつりと言葉が漏れた。
「親友と好きな人の違いは何なのかしら。どちらも大切な人に変わりはないのに……」
答えを求めてのものではなかったかもしれない、そんなつぶやきにシルヴァが言葉を返す前に、新たな来客が訪れた。
紅色の二人組、真夕と紅葉はまっすぐカウンターへとやってくる。
「私とこの子。見てくれるかな?」
「もちろんさ、つがいのスタールビーみたいなお嬢さんがた」
嬉しそうに笑うシルヴァが差し出したカードを、真夕が捲る。
現れたカードは節制の逆位置。
「ふぅむ、お二人はよほど仲がいいとみた」
「わかる? 最愛のパートナーなのよ!」
嬉しいのか声が少し大きくなる真夕、その隣で紅葉は照れて赤くなっていた。
「その強すぎる愛情に警告が出てるわね」
その言葉に二人して顔を見合わせ、そして大丈夫とばかりに二人微笑んだ。
「そうだ、ねえ。この子の髪色のような紅い宝石のアミュレットとかないかしら?」
「ふむ? それなら一つ良いのがあるわよ」
そう言ってシルヴァが棚から取り出したのはスタールビーをあしらったつがいの蝶のアクセサリだった。
すっかり賑やかになった店内に、また一組の来客が訪れた。
恋人、というよりは友人に近いような、まだ少しぎこちないような、そんな距離感が漂っている。
意中の人であるアルカ・ブラックウェル(ka0790)を連れて店を訪れたラティナ・スランザール(ka3839)、その瞳には確かな決意が宿っている。
「へぇセンス良い細工物が沢山あるんだな」
「ラティナはそういうの好きだよね」
「まあな、ドワーフとしちゃ心惹かれるぜ。アルカ、恋のお守りとかいるか?」
不意のラティナの言葉に、思わずこの前の従兄の言葉を思い出し少々取り乱す。
気分転換のつもりだったというのに、余計意識してしまった。
「占いもやってるみたいだな、ちょうどいいしやってこうぜ」
「え、ラティナ、占うの?!」
「せっかくだしな、なぁ、占い師さん。相性占い頼めるか?」
「もちろんかまわないよ。お相手はお隣のお嬢さんでいいんだよね?」
「ああ、たのむ」
ブラックオニキスとスターサファイア、と小さくつぶやくシルヴァはカードを差し出す。
ラティナの捲ったカードは、吊るされた男の逆位置。
「状況はほぼ決し、今のままではこれ以上の変化は難しい、ということを指してるように思えるね」
「今のままでは、か……」
居心地のいい、幼馴染の関係では。
もとより決めていたことだと、小さくシルヴァに礼を言ったラティナはその場でアルカへと向き直る。
その瞳は真剣そのもので、アルカは思わずその瞳に繋ぎ止められた。
「……メルリーウィ、好きだ」
「え……」
突然のラティナの、誓約の伴った告白に、火がついたように顔が熱くなる。
胸の鼓動が高鳴る、店にいる人達の中には見知った顔もおり、それが更に拍車をかけた。
いま、この場にいる全員がラティナの愛の告白に、そしてそれを向けられたアルカを見守っていた。
「ラティナが、ボクを……? 本当に?」
「冗談で言う訳ないだろ、何度だって言うぞ。メルリーウィ、愛してる。俺は、いつかお前を娶りたい」
更に告げられた言葉に、わたわたしながらもその胸に顔を埋めるアルカ、やっとのことで絞り出した言葉は途切れ途切れのもの。
「えっと……多分……嬉しい、って思う……けど、驚いてるから、返事は今度で、良い?」
「あぁ、待ってる」
二人の様子をどきどきと見守る店内の奥のほう、棚の影で様子を伺っていたゼクスは、その顛末を見て小さく笑う。
「良いねぇ若いってのは。俺も嫁さんと出会った頃を思い出すな。まぁ、そんな事言ってる事を聞かれたら、漏れなく一発殴られそうだが」
カウンター周りは大賑わいとなっていて、ちょっとしたお祝いムードである、そんな光景をゼクスは微笑ましく思いながら、昔のことに思いを馳せていた。
「イイネイイネー、二人の門出ニ乾杯ダヨー!」
告白を見届けたアルヴィンが少々気の早い祝福を振りまく、隣ではエステルが祈りを込めて微笑んでいた。
ラティナさんも、アルカさんも、上手くいってほしいなと、大事な友人たちの幸福を祈る。
真夕さんたちは見ていて恥ずかしくなるぐらいだし、未悠さんの想い人はきっと……。
「ふふ、エステル嬢、お祈リですカ?」
「ええ……そうです。皆が幸せになれますように、って」
「オオ、優しクテ素敵な祈りデス。幸せヲ祈ッテもらえルっていうのも、きっと幸せですネ。そうダ、エステル嬢も占ッテもらうとイイヨー!」
唐突に話をふるアルヴィンに、ちらりと隣を見る。
カウンターの周りにはまだ皆が残っていて少し恥ずかしい気もしたけれど……。
「そう、ですね。お姉さん、相性占いをお願いできますか?」
「もちろんだよ。山札から一枚捲っておくれ」
促されてエステルが札を捲る前に、アルヴィンはすっとカウンターから離れた。
捲られて現れたのは悪魔の正位置。
「……難しいカードを引いたね」
「あんまり、よろしくないんでしょうか?」
少ししょんぼりした様子で意味を問いかけるエステル。
「そうだね。今のままではあまりよくない、想いを秘めたままにしているのなら、今のままだと秘めたまま終わってしまう、そんな暗示だね」
「そう、ですか……」
「大事なのはこれからさ、占いってのは今のまま何もしなかった場合の可能性を予見する程度の代物だ。これから良い未来を掴むためのアドバイス程度に思ってくれればいいよ」
そう言ってシルヴァはエステルの手にお守りを手渡す。
今でも十分満足はしている、そう思っていたけれど……。
「あの、良かったら私に見合うお護り、選んで貰えませんか? ……恋愛方面の……」
「もちろんさ。人の幸せを祈れる素敵な夜空の宝石に、とびきり似合うのを選ばせてもらうよ!」
やがて一人、二人と店内を去っていくと、先程までの賑やかさが嘘だったように静かな店内が残った。
棚の方からゼクスが顔を現したのはその頃、シルヴァもそれに気づいて視線を向ける。
「お手すきかい、お姉さん?」
「おや、貴方はたしか……いいのかい? お連れさんもう帰っちゃったよ?」
どうやらアシェール達と一緒に入ってきた所をしっかり覚えられていたらしい。
まいったな、と苦笑する。
「いやいや、一人だよ」
「おや、そいつは失礼」
(筋の通った立ち振舞、重心が全然ブレてないし……)
そんな風にさり気なく観察していると、シルヴァの視線が少し厳しくなる、どうやら気づかれてしまったらしい。
「そういう視線は迂闊に人にはしないことさね」
「いやはや失礼、お姉さんがあまりに魅力的だったものでね。つい見惚れてしまったって奴さ」
「そういうことにしとこうか」
小さく苦笑するあたり、悪くは思っていないらしい。
「っととそうだ、折角だから一つ占ってくれないかな。といっても、内容は特に決めて無かったのでね…。とりあえず、これからの事でも頼んでみようかな?」
「あいよ。一枚引いておくれ」
くるりとゼクスが捲ったカードは皇帝の逆位置、それにシルヴァはふーむと唸る。
「今日はなんだか難しいカードを引く人が多いねぇ」
「よくない感じか?」
「そうだね、あんまりよくない。無理はしないこと、ってところかな」
「無理は、か。覚えておくよ」
「うん、それがいい」
そう言ってシルヴァがまた小さなお守りを手渡す。
「それじゃあ、俺もそろそろお暇するよ。ありがとな、お姉さん」
「うん、貴方にも幸運が巡りますように」
ザレムが店から出た頃には夜の帳が下りていた。
空を見上げれば、星が一つ、降り注ぐようにこぼれ落ちた。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
---|
面白かった! | 4人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
【雑談卓】《メレミア》へ行こう ラティナ・スランザール(ka3839) ドワーフ|19才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/02/20 08:25:48 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/02/19 23:40:56 |