ゲスト
(ka0000)
夢色倶楽部バレンタイン商戦!【裏通り】
マスター:みみずく

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/02/20 12:00
- 完成日
- 2017/03/01 20:16
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ええぇぇぇ! 集団食中毒?」
ママの野太い悲鳴が木霊する。
「そうなんです。どうやら、昨日打ち上げで食べた牡蠣がいけなかったらしく」
黒服が沈痛な面持ちで項垂れる。そしてふと視線を上げると、
「ママ、大変申し上げ辛いのですが、ひげの方が」
そっと耳打ちした。
「あら嫌だ。私としたことが。ちゃんと抜いとかなきゃね」
鏡に向かって科を作る。角刈りに真っ赤な口紅、2m近いため、ピンクの着物も特注である。
「ところでどうするの? 今日は決戦の日なのよ! お客様をお迎えしようにも、キャストがいないんじゃ話になんないじゃない!」
ここは繁華街の裏通りに位置する執事喫茶、ときめきを求める乙女たちが帰りしもう一つの御屋敷、そして、ひそかな恋を楽しむ秘密の花園でもある。
「いい? 老いも若きも、み~んなときめきを求めてるの! ね! しかも、今日は乙女にとってのいわば出陣の日、バレンタインデーなのよ! そんな大事な日に何? 何腹壊して運ばれてんのかって話よ!」
「ママ、落ち着いて!」
「これが落ち着いてられますかっての! ちょっと、どこ? みんなどこに運ばれたの? 話つけてくるわ」
「ママ!」
黒服が袖を掴む。ゆっくりと首を振った。
「今出勤させたら、大惨事です」
重い沈黙が、店内を包む。
「どうすんのよ、もう開店の時間になっちゃうわ」
その時、黒服が妙案を思いついた。
ハンターオフィス、ここに勤務する受付嬢も執事顔負けの個性派揃いである。本日の担当者は目が悪いのかはたまた老眼か、盛んに眼鏡の蔓を掴んでチラシに顔を寄せている。
「ナニナニ……お屋敷の戸を開けると……バトラーとヒットマンがあなたをお出迎え……」
「フットマン!! 一字違いで大違いですよ! 裏社会か!」
激高する黒服をものともせずに、レンズの向こうからじろりとこちらを見ると、
「ああ、殺しの依頼じゃないんですね。それで、ハンターに執事の真似事を頼みたいと」
受付表にさらさらと依頼内容を書き記す。
「真似事じゃないわ、れっきとした接客。そ、れ、に、ちょーっとした色をつけてね、こう……日頃ときめきに飢えた女子たちを癒してほしいっていうかぁ」
ママが指先をくるくると遊ばせる。
「はぁ」
「要はね、うちは確かに執事喫茶だけど、ちょっとだけときめき成分をまぶした接客を掲げているの」
「それはヤク的な?」
「ちっがーう! どうしてあんたうちの店をダークな方へ、ダークな方へ持ってくのよ! うちはね、ただ『お嬢様』って傅くだけじゃなくて、よくあるでしょ、小説なんかで。理想の男子がぁ、壁ドンとかぁ、いきなり口説いてきたりぃ」
ママはくねくねと腰を揺らすが、受付嬢の追及は鋭い。
「……会ったばかりの人を突然口説くんですか? 欲求不満ですね」
「乙女の夢に細かいケチつけんじゃないわよ! とにかくね、うちの店にいる時間は夢の時間なの。普段ときめきの少ない女子の皆さんにね、ちょっとでもドキドキワクワクする時間をあげたいのよ」
受付嬢はしばらく考えて、
「つまり、執事喫茶の形態はしているけれど、内容的にはホストクラブに近しいものがあるということですか」
ハンターたちは執事に変装した挙句、ホストの真似までしなければならないことになる。
「急な話だし、お給料は弾ませてもらうわ! 年齢? うち一応風営法には引っかからないから、よっぽど小さくなきゃ大丈夫よ」
うふっとウインクして、ママは続けた。
「衣装は勿論こちらで用意させてもらうわ。そうねぇ、お客様を呼べるのならサクラもお願いしようかしら。とにかくバレンタインイベント成功のために、よろしく頼むわね」
ママの野太い悲鳴が木霊する。
「そうなんです。どうやら、昨日打ち上げで食べた牡蠣がいけなかったらしく」
黒服が沈痛な面持ちで項垂れる。そしてふと視線を上げると、
「ママ、大変申し上げ辛いのですが、ひげの方が」
そっと耳打ちした。
「あら嫌だ。私としたことが。ちゃんと抜いとかなきゃね」
鏡に向かって科を作る。角刈りに真っ赤な口紅、2m近いため、ピンクの着物も特注である。
「ところでどうするの? 今日は決戦の日なのよ! お客様をお迎えしようにも、キャストがいないんじゃ話になんないじゃない!」
ここは繁華街の裏通りに位置する執事喫茶、ときめきを求める乙女たちが帰りしもう一つの御屋敷、そして、ひそかな恋を楽しむ秘密の花園でもある。
「いい? 老いも若きも、み~んなときめきを求めてるの! ね! しかも、今日は乙女にとってのいわば出陣の日、バレンタインデーなのよ! そんな大事な日に何? 何腹壊して運ばれてんのかって話よ!」
「ママ、落ち着いて!」
「これが落ち着いてられますかっての! ちょっと、どこ? みんなどこに運ばれたの? 話つけてくるわ」
「ママ!」
黒服が袖を掴む。ゆっくりと首を振った。
「今出勤させたら、大惨事です」
重い沈黙が、店内を包む。
「どうすんのよ、もう開店の時間になっちゃうわ」
その時、黒服が妙案を思いついた。
ハンターオフィス、ここに勤務する受付嬢も執事顔負けの個性派揃いである。本日の担当者は目が悪いのかはたまた老眼か、盛んに眼鏡の蔓を掴んでチラシに顔を寄せている。
「ナニナニ……お屋敷の戸を開けると……バトラーとヒットマンがあなたをお出迎え……」
「フットマン!! 一字違いで大違いですよ! 裏社会か!」
激高する黒服をものともせずに、レンズの向こうからじろりとこちらを見ると、
「ああ、殺しの依頼じゃないんですね。それで、ハンターに執事の真似事を頼みたいと」
受付表にさらさらと依頼内容を書き記す。
「真似事じゃないわ、れっきとした接客。そ、れ、に、ちょーっとした色をつけてね、こう……日頃ときめきに飢えた女子たちを癒してほしいっていうかぁ」
ママが指先をくるくると遊ばせる。
「はぁ」
「要はね、うちは確かに執事喫茶だけど、ちょっとだけときめき成分をまぶした接客を掲げているの」
「それはヤク的な?」
「ちっがーう! どうしてあんたうちの店をダークな方へ、ダークな方へ持ってくのよ! うちはね、ただ『お嬢様』って傅くだけじゃなくて、よくあるでしょ、小説なんかで。理想の男子がぁ、壁ドンとかぁ、いきなり口説いてきたりぃ」
ママはくねくねと腰を揺らすが、受付嬢の追及は鋭い。
「……会ったばかりの人を突然口説くんですか? 欲求不満ですね」
「乙女の夢に細かいケチつけんじゃないわよ! とにかくね、うちの店にいる時間は夢の時間なの。普段ときめきの少ない女子の皆さんにね、ちょっとでもドキドキワクワクする時間をあげたいのよ」
受付嬢はしばらく考えて、
「つまり、執事喫茶の形態はしているけれど、内容的にはホストクラブに近しいものがあるということですか」
ハンターたちは執事に変装した挙句、ホストの真似までしなければならないことになる。
「急な話だし、お給料は弾ませてもらうわ! 年齢? うち一応風営法には引っかからないから、よっぽど小さくなきゃ大丈夫よ」
うふっとウインクして、ママは続けた。
「衣装は勿論こちらで用意させてもらうわ。そうねぇ、お客様を呼べるのならサクラもお願いしようかしら。とにかくバレンタインイベント成功のために、よろしく頼むわね」
リプレイ本文
開店前の従業員控室である。シャーリーン・クリオール(ka0184)は、用意された燕尾服に袖を通しながら、鏡を覗き込んで全身を軽くチェックする。ボディラインに沿ったテールコートが、ぴったりと似合っている。白ネクタイに手をかけて、軽く結び目を持ち上げた。
「シャーリーンさんは執事をされるんですね」
ミュオ(ka1308)が、心持ち目をキラキラさせながら、その様を見つめた。年上のお姉さんに憧れるお年頃なのかもしれない。
「ん、あたしは執事として参加だよ。タカラヅカ的な、男装の麗人ってやつかな」
シャーリーンは肩ほどまでの髪を、撫でつけるか結い上げるかで迷いながら、鏡とにらめっこしている。
「タカラヅカ?」
変声期前の高い声が問い返す。小柄な体に纏った礼装は、アレンジが加えられ、テールコートに半ズボン、短めのリボンタイは、さながら少年執事といったところか。
「うん。リアルブルーに、女子が男装して役を演じる歌劇団があってね」
ハタと気づく。映像で見たタカラヅカは大層作りこんだメイクをしていなかったか。
「化粧、するべきなのか?」
元は軍籍にあった彼女には、あまり馴染まない習慣である。
「いえ! そのままで十分、その、素敵だと、思い、ます」
ミュオが慌てた様子で声をかけた。
「そうか? ありがとう。ミュオ君も、とってもかわいいよ」
にっこり微笑む。
「でも、ハンターオフィスでは、求む、イケメンって言われてきたんですけど」
「イケメン、ねぇ」
戦いに明け暮れる彼らに、イケメンの定義など分かろうはずがない。
横を見ると、ダブルの燕尾服を、着崩すことなくきっちりと着込んだ鞍馬 真(ka5819)の姿があった。袖のカフスボタンを留めながら、とろんとした表情をしている。
ふと、目が合った。
「ん? なんだい」
融けるような笑顔を見せた。想像よりも低めの声が、優しく響く。
ミュオは戦慄した。これが、イケメンの威力。すらりとして、絵になる美しさがある。
どうしよう。果たして喜んでもらえるだろうか。だって背は低いし、性格はこんなだし、たまに女の子に間違われるし。
「アラ、いいわね。似合ってるわ」
角刈りの店主、三郎ママの声が響き渡る。着替えを終えたヴィント・アッシェヴェルデン(ka6346)が現れた。アルビノの外見を有した彼は、浮世離れした容貌にテールコートを纏って、颯爽と立っていた。両手に嵌めた絹の白手袋を直しながら、
「執事になりすまして客としてやってきた女性の心を堕とせということだったな。なるほど主旨は理解した。依頼人の要望通り……確実に一夜の夢の中に沈めてみせよう」
響きの良い低音で嘯いた。
「あらぁ、ちょっとドSっぽくて素敵」
ぐふっとにやけると、手元の履歴書を眺めた。
「ヴィントちゃんね。ナニナニ……殺しの業を背負うモノ」
ママの視線が、ヴィントの顔と履歴書の間を行きつ戻りつした。
「彼、モノホンの、ヒットマンです」
傍らの黒服が囁く。二人の脳裏に、受付嬢とのやり取りが蘇った。
「お屋敷の戸を開けると……フットマンならぬヒットマンがお出迎え」
二人の声が揃う。
「……存在が、出オチ!」
狙ったわけでもないのに、出てきただけでネタになる。そんな理不尽があってよいものか。
「出……いや、大丈夫だ。執事として、確実に、客を沈めてみせる」
動揺が、台詞の物騒度合いに表れている。
「分かったわ。今日だけは、ヒットマンの己を捨て、執事セバスチャン(仮)として羽ばたくのよ!」
裏通り。不条理ばかりが行き交う街角。ヴィントはのこのこやってきた己を深く悔いた。
「さて、うまく執事になりきる事が出来るかな」
久瀬 ひふみ(ka6573)が、襟元を直しながら入ってきて、鏡の前で足を止めた。
首にかけた黒いネクタイを、苦心しながら結び始める。
「結んでやろうか」
ご不浄でムダ毛の処理を終えた南護 炎(ka6651)が、見かねて手を貸す。
「ああ、ありが……」
顔を上げたひふみは、言葉を失った。平常心に戻るべく瞬きする。しかし、悲しいかな見える景色は変わらない。
上半身、裸ネクタイ。下半身、真っ赤な丸がドでかく描かれた六尺褌。装備、以上。もはやムダ毛もない。
「なもりいぃぃん!」
ママの血圧は、その時300を超えた。
「俺は今日、熱血オラオラ系半裸執事で行くつもりだ」
彼の履歴書にも、注意書きとして書かれている。
頭のほうはあまり鍛えていないため、少し残念、つまり、
「脳筋です」
黒服の囁きに、
「なぜに、褌」
ママが若干震えながら呟いた。
「リアルブルーの一部地域では、2月14日を褌の日としているとか」
黒服は、割と何でも知っている。
炎を除く全員が、意気揚々とフロアに躍り出る、褌食い込む生尻を見やって思った。執事喫茶の正しい姿など、この中の誰一人として知りはしない。しかし、
『間違いなく、あれではない』
接客に対する皆の不安を、吹き飛ばして余りあるインパクトであった。
黒服が開店の時刻を告げる。いよいよ、待ったなしの本番である。
一夜のときめきを求めて、乙女、また気持ちは乙女の面々が、次々と来店する。
その中に、今夜のパートナーである白樺 伊織(ka6695)の姿を認めて、真はにっこりとほほ笑んだ。
「おかえりなさいませ、姫」
呼び名に少々アレンジを加えて、小さなその手を取った。まっすぐに真を見上げる金の瞳は、柔らかな光を湛えている。瞳に淡いオレンジのワンピースに、レースアップパンプスを揃えた伊織は、事前に顔を合わせたときよりもずっと、大人びて見えた。
「今日はよろしくね、姫」
テーブルに案内しながら、こそっと耳元で囁く。
「ふふ、真さん……よくお似合い、です、よ。本物の王子様、の、ようです……あ、えと、本物の王子にお目通りしたこと、は、ありませんが」
差し出した右手に、左手を重ねて歩きながら、伊織が微笑む。
奥で追加メニューの相談をしていたシャーリーンとママが、並んで出迎える。
「ママさん……皆様お加減、如何でしょうか? チョコ、沢山用意して、きま、した……中は色々、入ってる、ので……話題作りの、一環、あーん、にも、仲良く半分個にも、向いていますので、どうで、しょう」
伊織は持参した籠いっぱいの手作りチョコレートをママに手渡した。
「まぁ! ありがとう、伊織ちゃん! ほら、真ちゃん」
椅子を引いた真を肘でつつく。
「僕にも、頂けるんですか」
と、真が覗き込んだ。
「え、ええ!」
びくっと反応してから、深呼吸して、
「もち、ろん、です」
卓上のおしぼりで手を拭って、緊張しながら包みを開ける。小さな卵型のチョコレート、中には、細かなハートチョコや、星形ラムネ、金平糖や、干しブドウなどが隠されている。
「あーん……」
一瞬、戸惑った気配があって目が合う。テーブルの脇に片膝をついた真の顔が僅かに赤い。チョコをつまんだ指先が、細かく震えた。
唇が開く。視線が交錯し、チョコレートが飲み込まれていく。
周囲の目が伊織のテーブルに集中し、
「ごちそうさまです」
口の端についたチョコレートをぺろっと真が舐めとると、地響きのような悲鳴が響き渡った。
高鳴る鼓動を抑えつつ、
「面映ゆいです、が、夢のようです、ね」
伊織が照れ笑いを浮かべると、
「夢? これは奇跡だよ。僕が貴女に出逢えたことが、この世で一番の、ね」
首元に顔を寄せ、真が囁く。
「会えて、うれしい」
互いの瞳を独占する。拍動が近い。自分のものなのか、相手のものなのか。
「貴女のことを、愛してるよ」
平常心、平常心。言い聞かせるが、既に顔が燃えるように熱い。限界だ。
「ご注文をお取りいたします」
メニューを持ったシャーリーンの登場に、二人はばっと我に返って、居住まいを正した。
本日限定で、お菓子作りの得意な彼女ならではのメニューが盛り込まれている。どれもおいしそうだが、迷ってしまって決められない。
「どれ、が、いいと、思い、ます、か?」
シャーリーンはぐるりと見渡すと、優雅にメニューを取り下げて、
「チョコレートは、お好きですか」
と問いかけた。こくりと、伊織が頷く。
「では、咲き誇る薔薇のようなあなたには、ショコラ・ド・ローズを」
右膝を折って恭しく一礼すると、テーブルを後にする。
「お茶、お持ちしますね」
真は伊織の手を取って、チョコレートで汚れた指先をそっと拭うと、一旦テーブルを離れた。
「ああ、真さん」
厨房でシャーリーンが声を掛けると、真は首の付け根まで真っ赤に染めてその場にしゃがみ込み、
「駄目だ、顔から、火が出そうだ!」
と顔を覆って激しく首を振った。
「はいはい、お茶持って。蒸してる間に復活しなよね」
問答無用で送り出すシャーリーンであった。
真っ白いミニワンピースに、ハイヒールというファッションで店を訪れた獅子堂 灯(ka6710)は、どぎまぎしながら入り口に立った。
服装を最終確認。スカートを履いた足元が、スカスカして心許ない。ハイヒールも、気を抜くと転びそうだ。
扉が開く。出迎えたひふみと目が合った。
「お帰りなさいませ灯お嬢様。上着はこちらでお預かりします」
凛とした表情に、どぎまぎして、
「あ、は、はい」
予め腕にかけていた上着を、膝をがくがくさせながら預ける。
さり気なく腕を回して転ばないように支えながら、
「灯お嬢様、そちらのドレス大変似合っております。お綺麗ですよ」
見上げて目が合った瞬間、ひふみの表情が、ふっと柔らかく崩れた。動悸がして、顔を見られるのが恥ずかしい。反射的に視線を逸らしてから、勇気を出して顔をあげたら、元の表情に戻っていた。
「えっと、よ、よろしくお願いします……こういうお店は初めてなもので……き、緊張してます」
慣れないハイヒールで、歩き方がぎこちない。
「お席はこちらです。足元にお気を付け下さい」
手を取って、卓に誘われる。少し大きい掌に、そっと握りこまれて、灯は更に頬を赤らめた。
椅子を引かれてテーブルに就くと、
「メニューをどうぞ、お嬢様」
ヴィントがグラスに水を注いで現れた。メニューを開くと、聞いたこともないお菓子の名前が並んでいる。戸惑っていると、
「カリソン・デンサン・プロヴァンスは、花びらのような形で、幸福のお菓子とも呼ばれている、そうですよ」
袖からカンペが覗いている。シャーリーンに教わったのだろう。思わず顔を見ると、流し目にこちらを見た。燃える薔薇のような瞳が、蠱惑的に細められ、視線が絡みつく。
「で、では、それで、お願いします!」
飲み物には、色が変化するというマロウブルーのハーブティーを選んだ。
「本当に楽しいです……えへへ」
ひふみが微笑み返してくれた時、灯は写真に残せないことを、ほんのちょっと後悔した。
「あら、今日の執事は、随分毛色が違うこと」
高慢な表情を浮かべて、女の視線が全身を舐めるようにゆっくりと上下する。
質のいい服を着ている。コンサバな服装は、保守的ながら、刺激を求める彼女の鎧なのか。ヴィントは観察し、接客を変えていく。
暫くの後、当然のように腕が差し出された。お眼鏡にはかなったようだ。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
型通りの挨拶から、手を取り、瞬間的に熱を込めて見つめる。女の心は目で殺す。
「失礼」
視線を外す瞬間、瞳の底が揺れる様を確かめる。
「こちらへ」
物腰は丁寧だが、主導権は彼にある。彼女は刺激を求めている。
「お嬢様、お飲み物は何を?」
椅子を引く。後ろから低く、耳元に囁く。
「おすすめ、知りたいですか」
女が顔を赤らめて、耳を手で覆った。
「あなたの、決めたものでいいわ。持ってきてちょうだい」
強気な女が必ずしも支配的なわけではない。薄く笑って、注文を取った。堕天のセバスチャン(仮)、なかなかのご活躍である。
「あのっ! お、お帰りなさましぇお嬢様!」
噛んだ。
血の気が引いたがもう遅い。ミュオは女性客らを前に、そーっと大きな目で上目遣いに顔を上げた。
「やー! 噛み方可愛い!」
「連れてかえりたい!」
一人が堪りかねた様に、悶えて叫び、地団太を踏んで興奮し始めた。妙齢の女性3人組である。
「あ、あの、上着をお預かりいたします!」
3人分のダウンを預かって、もこもこになりながら、クロークへ向かう。
みんなみたいなイケメンじゃなくていいのかな。不安にぎゅっと蓋をして、ミュオは給仕に励んだ。
「でも、僕だって、あと5年くらいすればもっと男らしく……」
せっせと動き回りながら、口の中でごにょごにょ呟く。席に戻ると、
「オラオラオラァ! 今日は俺の肉体に酔いしれな!!」
隣のテーブルでは、炎が斜め上行く接客の真っただ中だった。
「炎ちゃぁ~ん! ハイ、もうちょっと! もうちょっと!」
野太いコールの合間に手拍子が入る。手を叩いている大柄な方々は、明らかにママのご同業であった。恐ろしいことに全員素面である。
「今日は出血大サービスだぜ! 100Gで俺の肉体触り放題だ! 遠慮はいらねぇ! 思う存分触ってくれ!」
たった100Gで操を散らそうというのか。
「おおっと、ここのお触りは別料金だぜぇ!」
早くもお触り営業に黄信号が点る。
「何ならピンドン入れてくれてもいいんだぜぇ!」
ドンペリなど、執事喫茶のメニューにはない。程なく盛り上がった卓上に、ティーカップで築かれたティータワーが組みあがる。そして炎は、俺の生き様を見ろ、という言葉を残して、紅茶5リットルと共に、タンニンの海に沈んでいった。
ミュオの担当客らは、一部始終を口を開けて見守ったのち、
「ミュオ君は、そのままでいてね」
全員で大きく頷きながら、ミュオを見つめた。
首を傾げて、曇りのない眼でじっと見つめ返す。
褒められているんだろうか。嬉しくなってはにかんだ。
「ありがとうございます。あの、まずはメニューのご説明をしますね」
今日はシャーリーン自慢の洋菓子が特別にメニューに上がっている。
「えっと、このミルリトン・ド・ルーアンは……」
説明にも熱が入る。客達は、「ご注文は、ミュオ君」という、不届き極まりない本心を封じたまま、おすすめのスイーツを全て残らず注文した。
こうしてミュオは売り上げを伸ばし、後に比類なきショタとして、裏通りに名を馳せることになる。
チョコレートを一緒に食べるひふみと灯、他の女性客からの嫉妬を回避するため、ねこみみを装着する羽目になった伊織、赤くなる彼女に「可愛いよ、ねこみみ姫」と微笑む真、そこここにべったりと口紅の跡をつけて、腹をタプタプにした炎、ナンパのスキルが絶好調なヴィント、スイーツの話で盛り上がるミュオとシャーリーン、店は大盛り上がりのうちに閉店となった。
ご来店、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。
「シャーリーンさんは執事をされるんですね」
ミュオ(ka1308)が、心持ち目をキラキラさせながら、その様を見つめた。年上のお姉さんに憧れるお年頃なのかもしれない。
「ん、あたしは執事として参加だよ。タカラヅカ的な、男装の麗人ってやつかな」
シャーリーンは肩ほどまでの髪を、撫でつけるか結い上げるかで迷いながら、鏡とにらめっこしている。
「タカラヅカ?」
変声期前の高い声が問い返す。小柄な体に纏った礼装は、アレンジが加えられ、テールコートに半ズボン、短めのリボンタイは、さながら少年執事といったところか。
「うん。リアルブルーに、女子が男装して役を演じる歌劇団があってね」
ハタと気づく。映像で見たタカラヅカは大層作りこんだメイクをしていなかったか。
「化粧、するべきなのか?」
元は軍籍にあった彼女には、あまり馴染まない習慣である。
「いえ! そのままで十分、その、素敵だと、思い、ます」
ミュオが慌てた様子で声をかけた。
「そうか? ありがとう。ミュオ君も、とってもかわいいよ」
にっこり微笑む。
「でも、ハンターオフィスでは、求む、イケメンって言われてきたんですけど」
「イケメン、ねぇ」
戦いに明け暮れる彼らに、イケメンの定義など分かろうはずがない。
横を見ると、ダブルの燕尾服を、着崩すことなくきっちりと着込んだ鞍馬 真(ka5819)の姿があった。袖のカフスボタンを留めながら、とろんとした表情をしている。
ふと、目が合った。
「ん? なんだい」
融けるような笑顔を見せた。想像よりも低めの声が、優しく響く。
ミュオは戦慄した。これが、イケメンの威力。すらりとして、絵になる美しさがある。
どうしよう。果たして喜んでもらえるだろうか。だって背は低いし、性格はこんなだし、たまに女の子に間違われるし。
「アラ、いいわね。似合ってるわ」
角刈りの店主、三郎ママの声が響き渡る。着替えを終えたヴィント・アッシェヴェルデン(ka6346)が現れた。アルビノの外見を有した彼は、浮世離れした容貌にテールコートを纏って、颯爽と立っていた。両手に嵌めた絹の白手袋を直しながら、
「執事になりすまして客としてやってきた女性の心を堕とせということだったな。なるほど主旨は理解した。依頼人の要望通り……確実に一夜の夢の中に沈めてみせよう」
響きの良い低音で嘯いた。
「あらぁ、ちょっとドSっぽくて素敵」
ぐふっとにやけると、手元の履歴書を眺めた。
「ヴィントちゃんね。ナニナニ……殺しの業を背負うモノ」
ママの視線が、ヴィントの顔と履歴書の間を行きつ戻りつした。
「彼、モノホンの、ヒットマンです」
傍らの黒服が囁く。二人の脳裏に、受付嬢とのやり取りが蘇った。
「お屋敷の戸を開けると……フットマンならぬヒットマンがお出迎え」
二人の声が揃う。
「……存在が、出オチ!」
狙ったわけでもないのに、出てきただけでネタになる。そんな理不尽があってよいものか。
「出……いや、大丈夫だ。執事として、確実に、客を沈めてみせる」
動揺が、台詞の物騒度合いに表れている。
「分かったわ。今日だけは、ヒットマンの己を捨て、執事セバスチャン(仮)として羽ばたくのよ!」
裏通り。不条理ばかりが行き交う街角。ヴィントはのこのこやってきた己を深く悔いた。
「さて、うまく執事になりきる事が出来るかな」
久瀬 ひふみ(ka6573)が、襟元を直しながら入ってきて、鏡の前で足を止めた。
首にかけた黒いネクタイを、苦心しながら結び始める。
「結んでやろうか」
ご不浄でムダ毛の処理を終えた南護 炎(ka6651)が、見かねて手を貸す。
「ああ、ありが……」
顔を上げたひふみは、言葉を失った。平常心に戻るべく瞬きする。しかし、悲しいかな見える景色は変わらない。
上半身、裸ネクタイ。下半身、真っ赤な丸がドでかく描かれた六尺褌。装備、以上。もはやムダ毛もない。
「なもりいぃぃん!」
ママの血圧は、その時300を超えた。
「俺は今日、熱血オラオラ系半裸執事で行くつもりだ」
彼の履歴書にも、注意書きとして書かれている。
頭のほうはあまり鍛えていないため、少し残念、つまり、
「脳筋です」
黒服の囁きに、
「なぜに、褌」
ママが若干震えながら呟いた。
「リアルブルーの一部地域では、2月14日を褌の日としているとか」
黒服は、割と何でも知っている。
炎を除く全員が、意気揚々とフロアに躍り出る、褌食い込む生尻を見やって思った。執事喫茶の正しい姿など、この中の誰一人として知りはしない。しかし、
『間違いなく、あれではない』
接客に対する皆の不安を、吹き飛ばして余りあるインパクトであった。
黒服が開店の時刻を告げる。いよいよ、待ったなしの本番である。
一夜のときめきを求めて、乙女、また気持ちは乙女の面々が、次々と来店する。
その中に、今夜のパートナーである白樺 伊織(ka6695)の姿を認めて、真はにっこりとほほ笑んだ。
「おかえりなさいませ、姫」
呼び名に少々アレンジを加えて、小さなその手を取った。まっすぐに真を見上げる金の瞳は、柔らかな光を湛えている。瞳に淡いオレンジのワンピースに、レースアップパンプスを揃えた伊織は、事前に顔を合わせたときよりもずっと、大人びて見えた。
「今日はよろしくね、姫」
テーブルに案内しながら、こそっと耳元で囁く。
「ふふ、真さん……よくお似合い、です、よ。本物の王子様、の、ようです……あ、えと、本物の王子にお目通りしたこと、は、ありませんが」
差し出した右手に、左手を重ねて歩きながら、伊織が微笑む。
奥で追加メニューの相談をしていたシャーリーンとママが、並んで出迎える。
「ママさん……皆様お加減、如何でしょうか? チョコ、沢山用意して、きま、した……中は色々、入ってる、ので……話題作りの、一環、あーん、にも、仲良く半分個にも、向いていますので、どうで、しょう」
伊織は持参した籠いっぱいの手作りチョコレートをママに手渡した。
「まぁ! ありがとう、伊織ちゃん! ほら、真ちゃん」
椅子を引いた真を肘でつつく。
「僕にも、頂けるんですか」
と、真が覗き込んだ。
「え、ええ!」
びくっと反応してから、深呼吸して、
「もち、ろん、です」
卓上のおしぼりで手を拭って、緊張しながら包みを開ける。小さな卵型のチョコレート、中には、細かなハートチョコや、星形ラムネ、金平糖や、干しブドウなどが隠されている。
「あーん……」
一瞬、戸惑った気配があって目が合う。テーブルの脇に片膝をついた真の顔が僅かに赤い。チョコをつまんだ指先が、細かく震えた。
唇が開く。視線が交錯し、チョコレートが飲み込まれていく。
周囲の目が伊織のテーブルに集中し、
「ごちそうさまです」
口の端についたチョコレートをぺろっと真が舐めとると、地響きのような悲鳴が響き渡った。
高鳴る鼓動を抑えつつ、
「面映ゆいです、が、夢のようです、ね」
伊織が照れ笑いを浮かべると、
「夢? これは奇跡だよ。僕が貴女に出逢えたことが、この世で一番の、ね」
首元に顔を寄せ、真が囁く。
「会えて、うれしい」
互いの瞳を独占する。拍動が近い。自分のものなのか、相手のものなのか。
「貴女のことを、愛してるよ」
平常心、平常心。言い聞かせるが、既に顔が燃えるように熱い。限界だ。
「ご注文をお取りいたします」
メニューを持ったシャーリーンの登場に、二人はばっと我に返って、居住まいを正した。
本日限定で、お菓子作りの得意な彼女ならではのメニューが盛り込まれている。どれもおいしそうだが、迷ってしまって決められない。
「どれ、が、いいと、思い、ます、か?」
シャーリーンはぐるりと見渡すと、優雅にメニューを取り下げて、
「チョコレートは、お好きですか」
と問いかけた。こくりと、伊織が頷く。
「では、咲き誇る薔薇のようなあなたには、ショコラ・ド・ローズを」
右膝を折って恭しく一礼すると、テーブルを後にする。
「お茶、お持ちしますね」
真は伊織の手を取って、チョコレートで汚れた指先をそっと拭うと、一旦テーブルを離れた。
「ああ、真さん」
厨房でシャーリーンが声を掛けると、真は首の付け根まで真っ赤に染めてその場にしゃがみ込み、
「駄目だ、顔から、火が出そうだ!」
と顔を覆って激しく首を振った。
「はいはい、お茶持って。蒸してる間に復活しなよね」
問答無用で送り出すシャーリーンであった。
真っ白いミニワンピースに、ハイヒールというファッションで店を訪れた獅子堂 灯(ka6710)は、どぎまぎしながら入り口に立った。
服装を最終確認。スカートを履いた足元が、スカスカして心許ない。ハイヒールも、気を抜くと転びそうだ。
扉が開く。出迎えたひふみと目が合った。
「お帰りなさいませ灯お嬢様。上着はこちらでお預かりします」
凛とした表情に、どぎまぎして、
「あ、は、はい」
予め腕にかけていた上着を、膝をがくがくさせながら預ける。
さり気なく腕を回して転ばないように支えながら、
「灯お嬢様、そちらのドレス大変似合っております。お綺麗ですよ」
見上げて目が合った瞬間、ひふみの表情が、ふっと柔らかく崩れた。動悸がして、顔を見られるのが恥ずかしい。反射的に視線を逸らしてから、勇気を出して顔をあげたら、元の表情に戻っていた。
「えっと、よ、よろしくお願いします……こういうお店は初めてなもので……き、緊張してます」
慣れないハイヒールで、歩き方がぎこちない。
「お席はこちらです。足元にお気を付け下さい」
手を取って、卓に誘われる。少し大きい掌に、そっと握りこまれて、灯は更に頬を赤らめた。
椅子を引かれてテーブルに就くと、
「メニューをどうぞ、お嬢様」
ヴィントがグラスに水を注いで現れた。メニューを開くと、聞いたこともないお菓子の名前が並んでいる。戸惑っていると、
「カリソン・デンサン・プロヴァンスは、花びらのような形で、幸福のお菓子とも呼ばれている、そうですよ」
袖からカンペが覗いている。シャーリーンに教わったのだろう。思わず顔を見ると、流し目にこちらを見た。燃える薔薇のような瞳が、蠱惑的に細められ、視線が絡みつく。
「で、では、それで、お願いします!」
飲み物には、色が変化するというマロウブルーのハーブティーを選んだ。
「本当に楽しいです……えへへ」
ひふみが微笑み返してくれた時、灯は写真に残せないことを、ほんのちょっと後悔した。
「あら、今日の執事は、随分毛色が違うこと」
高慢な表情を浮かべて、女の視線が全身を舐めるようにゆっくりと上下する。
質のいい服を着ている。コンサバな服装は、保守的ながら、刺激を求める彼女の鎧なのか。ヴィントは観察し、接客を変えていく。
暫くの後、当然のように腕が差し出された。お眼鏡にはかなったようだ。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
型通りの挨拶から、手を取り、瞬間的に熱を込めて見つめる。女の心は目で殺す。
「失礼」
視線を外す瞬間、瞳の底が揺れる様を確かめる。
「こちらへ」
物腰は丁寧だが、主導権は彼にある。彼女は刺激を求めている。
「お嬢様、お飲み物は何を?」
椅子を引く。後ろから低く、耳元に囁く。
「おすすめ、知りたいですか」
女が顔を赤らめて、耳を手で覆った。
「あなたの、決めたものでいいわ。持ってきてちょうだい」
強気な女が必ずしも支配的なわけではない。薄く笑って、注文を取った。堕天のセバスチャン(仮)、なかなかのご活躍である。
「あのっ! お、お帰りなさましぇお嬢様!」
噛んだ。
血の気が引いたがもう遅い。ミュオは女性客らを前に、そーっと大きな目で上目遣いに顔を上げた。
「やー! 噛み方可愛い!」
「連れてかえりたい!」
一人が堪りかねた様に、悶えて叫び、地団太を踏んで興奮し始めた。妙齢の女性3人組である。
「あ、あの、上着をお預かりいたします!」
3人分のダウンを預かって、もこもこになりながら、クロークへ向かう。
みんなみたいなイケメンじゃなくていいのかな。不安にぎゅっと蓋をして、ミュオは給仕に励んだ。
「でも、僕だって、あと5年くらいすればもっと男らしく……」
せっせと動き回りながら、口の中でごにょごにょ呟く。席に戻ると、
「オラオラオラァ! 今日は俺の肉体に酔いしれな!!」
隣のテーブルでは、炎が斜め上行く接客の真っただ中だった。
「炎ちゃぁ~ん! ハイ、もうちょっと! もうちょっと!」
野太いコールの合間に手拍子が入る。手を叩いている大柄な方々は、明らかにママのご同業であった。恐ろしいことに全員素面である。
「今日は出血大サービスだぜ! 100Gで俺の肉体触り放題だ! 遠慮はいらねぇ! 思う存分触ってくれ!」
たった100Gで操を散らそうというのか。
「おおっと、ここのお触りは別料金だぜぇ!」
早くもお触り営業に黄信号が点る。
「何ならピンドン入れてくれてもいいんだぜぇ!」
ドンペリなど、執事喫茶のメニューにはない。程なく盛り上がった卓上に、ティーカップで築かれたティータワーが組みあがる。そして炎は、俺の生き様を見ろ、という言葉を残して、紅茶5リットルと共に、タンニンの海に沈んでいった。
ミュオの担当客らは、一部始終を口を開けて見守ったのち、
「ミュオ君は、そのままでいてね」
全員で大きく頷きながら、ミュオを見つめた。
首を傾げて、曇りのない眼でじっと見つめ返す。
褒められているんだろうか。嬉しくなってはにかんだ。
「ありがとうございます。あの、まずはメニューのご説明をしますね」
今日はシャーリーン自慢の洋菓子が特別にメニューに上がっている。
「えっと、このミルリトン・ド・ルーアンは……」
説明にも熱が入る。客達は、「ご注文は、ミュオ君」という、不届き極まりない本心を封じたまま、おすすめのスイーツを全て残らず注文した。
こうしてミュオは売り上げを伸ばし、後に比類なきショタとして、裏通りに名を馳せることになる。
チョコレートを一緒に食べるひふみと灯、他の女性客からの嫉妬を回避するため、ねこみみを装着する羽目になった伊織、赤くなる彼女に「可愛いよ、ねこみみ姫」と微笑む真、そこここにべったりと口紅の跡をつけて、腹をタプタプにした炎、ナンパのスキルが絶好調なヴィント、スイーツの話で盛り上がるミュオとシャーリーン、店は大盛り上がりのうちに閉店となった。
ご来店、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。
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ときめきめもりある(相談卓) 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/02/20 00:47:24 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/02/16 16:44:23 |