ゲスト
(ka0000)
歪虚リアンと捕らわれの女商人
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/03/09 07:30
- 完成日
- 2017/03/14 20:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●襲撃
恩人の商人が犯した罪を償う為、女商人のカレンは数多くの町を回った。
その謝罪行脚もひと息つき、彼女はようやく自身の目的の為に動き出す。
それは自分の商会を作ること。
もっともまだ名前も知られていないので、まずは商店あたりから地道に頑張っていこうと考えていた。
「さあ、今日も元気にいこう!」
カレンにしてはやや高い買い物ではあったが、馬も購入した。徒歩で移動するよりは、ずっと安全だと以前に護衛してくれたハンターに教えてもらったのである。
馬を走らせ、馴染みの薬師から薬草を仕入れに行く。
とても爽やかな朝だ。吹く春の風は少し肌寒いが、昇り始めた太陽が温もりをくれる。
今日は良いことがありそうだ。
そう思ったカレンだったが、突如として頭上を黒い影が覆う。
「あれ。雲……? 一雨くるの……」
見上げたカレンの両目が見開かれる。
口の動きが止まり、作りかけの言葉は無残に大地へ落ちる。
「フフフ。貴女には見覚えがありますね」
並走……というべきなのだろうか。
カレンのすぐ上を、翼を広げた鴉にも似た顔の奇妙な生物が飛んでいた。
「私の名はリアン。直接会うのは初めてかもしれませんね」
「な……な……! ば、化物っ!」
懐に忍ばせていた護身用の拳銃を取り出し、引き金を引く。
けれど最近になって拳銃を扱い出したばかりのカレンが、馬上で上手く狙いを定められるはずがなかった。
震える手では上手く持つこともできず、大空へ撃ち上げるだけの結果に終わる。
「そう怯えなくても結構ですよ。今はまだ貴女を殺すつもりはありません。私の主催する楽しい楽しい舞台に参加してほしいのです。それもヒロイン役です。フフフ。嬉しいでしょう?」
「い、嫌……いやあァァァ!!!」
●奇妙な依頼
グラズヘイム王国ラスリド領アクスウィル。領主ゲオルグ・ミスカ・ラスリドの治める領内でもっとも大きな街だ。
当然ながらハンターズソサエティの支部も存在し、そこでは数多くの依頼が扱われている。
「……依頼者はリアン? 歪虚!?」
受付の若い男性が驚いて立ち上がる。
今朝になって、いつの間にかカウンターに置かれていた依頼書には確かにそう書かれている。
しかも内容はラスリド領内のとある場所にて、捕らわれの少女を救ってほしいというものだった。
「たちの悪い冗談なのか? だけど以前に報告があった歪虚と名前が同じ……。どうなってるんだ……」
迷った末に受付の男性は、依頼書をハンターたちへの案内板へと張りつけるのだった。
●舞台
昼過ぎ。土と草の香る大地に緊迫の気配が増していく。
指定された場所の奥にある大木に、一人の少女が張りつけにされている。
周りには雑魔と思われる蜘蛛に狼の姿まである。
ハンターたちが現場に到着すると、待ちかねていたように一人の男――いや、一体の何者かが姿を現した。
マントのような黒衣をはおり、二本足で立っているが、顔は鴉によく似ている。金色の瞳が不気味で、得体の知れない何かを無理やり人の形にしている。そんな印象を受けた。
「いらしたようですね。私の主催する舞台へようこそ。ハンターの方々には主役を務めていただきます。さあ、捕らわれの少女を助けてあげてください。早くしないとせっかくのヒロインが殺されてしまいますからね。フフフ」
リアンが指を鳴らすと、少女の周囲――足元を炎が囲んだ。
「私の作った火が少女の体に到達するまで五分といったところでしょうか。どうします? さあ、どうします!? フッフフフ! 見せてください。私に! 素晴らしい舞台の結末を。ハッハハハ!」
恩人の商人が犯した罪を償う為、女商人のカレンは数多くの町を回った。
その謝罪行脚もひと息つき、彼女はようやく自身の目的の為に動き出す。
それは自分の商会を作ること。
もっともまだ名前も知られていないので、まずは商店あたりから地道に頑張っていこうと考えていた。
「さあ、今日も元気にいこう!」
カレンにしてはやや高い買い物ではあったが、馬も購入した。徒歩で移動するよりは、ずっと安全だと以前に護衛してくれたハンターに教えてもらったのである。
馬を走らせ、馴染みの薬師から薬草を仕入れに行く。
とても爽やかな朝だ。吹く春の風は少し肌寒いが、昇り始めた太陽が温もりをくれる。
今日は良いことがありそうだ。
そう思ったカレンだったが、突如として頭上を黒い影が覆う。
「あれ。雲……? 一雨くるの……」
見上げたカレンの両目が見開かれる。
口の動きが止まり、作りかけの言葉は無残に大地へ落ちる。
「フフフ。貴女には見覚えがありますね」
並走……というべきなのだろうか。
カレンのすぐ上を、翼を広げた鴉にも似た顔の奇妙な生物が飛んでいた。
「私の名はリアン。直接会うのは初めてかもしれませんね」
「な……な……! ば、化物っ!」
懐に忍ばせていた護身用の拳銃を取り出し、引き金を引く。
けれど最近になって拳銃を扱い出したばかりのカレンが、馬上で上手く狙いを定められるはずがなかった。
震える手では上手く持つこともできず、大空へ撃ち上げるだけの結果に終わる。
「そう怯えなくても結構ですよ。今はまだ貴女を殺すつもりはありません。私の主催する楽しい楽しい舞台に参加してほしいのです。それもヒロイン役です。フフフ。嬉しいでしょう?」
「い、嫌……いやあァァァ!!!」
●奇妙な依頼
グラズヘイム王国ラスリド領アクスウィル。領主ゲオルグ・ミスカ・ラスリドの治める領内でもっとも大きな街だ。
当然ながらハンターズソサエティの支部も存在し、そこでは数多くの依頼が扱われている。
「……依頼者はリアン? 歪虚!?」
受付の若い男性が驚いて立ち上がる。
今朝になって、いつの間にかカウンターに置かれていた依頼書には確かにそう書かれている。
しかも内容はラスリド領内のとある場所にて、捕らわれの少女を救ってほしいというものだった。
「たちの悪い冗談なのか? だけど以前に報告があった歪虚と名前が同じ……。どうなってるんだ……」
迷った末に受付の男性は、依頼書をハンターたちへの案内板へと張りつけるのだった。
●舞台
昼過ぎ。土と草の香る大地に緊迫の気配が増していく。
指定された場所の奥にある大木に、一人の少女が張りつけにされている。
周りには雑魔と思われる蜘蛛に狼の姿まである。
ハンターたちが現場に到着すると、待ちかねていたように一人の男――いや、一体の何者かが姿を現した。
マントのような黒衣をはおり、二本足で立っているが、顔は鴉によく似ている。金色の瞳が不気味で、得体の知れない何かを無理やり人の形にしている。そんな印象を受けた。
「いらしたようですね。私の主催する舞台へようこそ。ハンターの方々には主役を務めていただきます。さあ、捕らわれの少女を助けてあげてください。早くしないとせっかくのヒロインが殺されてしまいますからね。フフフ」
リアンが指を鳴らすと、少女の周囲――足元を炎が囲んだ。
「私の作った火が少女の体に到達するまで五分といったところでしょうか。どうします? さあ、どうします!? フッフフフ! 見せてください。私に! 素晴らしい舞台の結末を。ハッハハハ!」
リプレイ本文
●炎と少女と歪虚
足元から立ち上るように勢いを増していく火を空から見下ろす一体の歪虚。
見上げたティス・フュラー(ka3006)は可愛らしい顔を微かに歪ませる。
「あれが依頼してきた歪虚ね。一体、何を考えてるの」
「それはわかりませんが、巻き添えになった方の安全の為にも、ここは全力で敵の排除に当たらなくてはなりませんわよね」
癒し系のほんわか眼鏡美人の日下 菜摘(ka0881)が礼儀正しい口調でティスに応じた。
「普通に考えたら罠だけど、助けられる人を放置していい理由にはならないわよね」
「ええ。力不足ではありますが、全力で当たらさせて頂きます」
ティスと菜摘が頷き合う。
空を舞う歪虚を地上から眺めているのは二人だけではない。ヴァイス(ka0364)も意思の強さを宿した瞳で、この場においてもっとも強そうな敵を視界に捉え続けていた。
「持ち上げて落とす気満々って顔を隠す気はない……か」
「妹からあの歪虚のことを聞いたことがある。ずいぶんと嫌な性格をしているみたいだよ」
いつでも得意の抜刀を繰り出せる体勢を維持しつつアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が言った。こうした場面でも冷静さを維持できるのは幼少からの戦場経験や訓練で、戦闘中の出来事を全て情報として捉える彼女の特性ゆえだろう。
アルトの言葉を受けて、ヴァイスは気合を入れるように拳と掌をパンと合わせた。
「彼女を助ける為に敢えて演じ、脚本家の想定を超えてやるとしよう」
パチパチと音を立てて草を燃やす火と少女を交互に見た龍崎・カズマ(ka0178)は腕を組んでフンと鼻を鳴らす。
「なるほど確かにこれは致命的だろう、時間をかけてしまえば彼女が火にまかれる」
かつては軍に雇用されていた傭兵らしく、カズマは的確に状況を分析していく。
「かといって救出を優先すると、出てくるときに数の暴力に押される。下手すれば押し込まれる」
カズマの視線が、場違いなほど優雅に大空を旋回する歪虚へと向けられる。
「一つ間違えてるとすれば。此処にいるのは大半が計算外の存在って事だがな」
いつもにこにこ。モテるために追求する可愛らしさを戦場でも失わずに、星野 ハナ(ka5852)は跨っているゴースロンの鬣を優しく撫でていた。
「ゴンちゃん移動は頼みますぅ、近づく雑魔はガンガン蹴り殺しちゃって下さいぃ」
明るく楽しげな声から放たれた物騒な言動。人語を理解しているかは不明だが、ハナのゴースロンは任せてくれとばかりに嘶く。
「気が合いますねぇ、私も歪虚は全ブッコロ派ですぅ!」
●戦闘開始
初手を仕掛けたのはカズマだった。投擲武器の影渡を正面奥にいる狼の腹に命中させると、紐づけていたマテリアルと引き合うような速度で背後へと回り込む。
「後ろがガラ空きだぜ。いくら素早くても、この位置からはかわせねえだろ」
手早く武器を持ち替えての死角からの連撃が急所を捉え、狼雑魔を絶命させる。
それを見ていたティスが赤光を帯びた瞳で右奥の狼を捉える。生まれた四冊の魔導書は幻覚の影像。淡い白銀の光を伴い厳かに漂う。
「動きが軽快そうな敵から仕留めれば、救出もしやすくなるわよね」
放たれた刃のごとき風が狼の腹部を切り裂く。
カズマとティスの先制攻撃で、移動力が厄介な狼歪虚は消滅した。
■
「ではではでは! 次は蜘蛛歪虚をブッコロですぅ。ドカーンとやっちゃいますよぉ」
ハナの両の目に宿る輝きが期待から吸い込まれそうな蒼へと変化する。寄り添うような微風しか感じない草原地帯で、艶かしく踊るかのごとく髪の毛がゆらゆらと広がる。
複数の符が狙った地点を中心に結界を作る。三体を狙うも、中央の蜘蛛以外の二体には僅かに効果が及ばなかった。
しかしながら閉じ込められた一体の蜘蛛は光で焼き尽くされ、存在ごと抹消される。
「二体もブッコロできなかったですぅ」
「では私がまいります!」
戦馬で地を駆ける菜摘がホーリーパニッシャーを構えて、正面近くにいる蜘蛛との距離を詰める。
菜摘に気付いた蜘蛛が主導権を握ろうと体勢を変えようとするが、馬の足を活かしてそれよりも早く気合を乗せたストライクブロウを見舞う。
回避に失敗し、脚に一撃を受けた蜘蛛が体をよろめかせる。
「敵の体勢が崩れました。追撃をよろしくお願いします!」
「了解した。一気に仕留める」
真っ先に反応したのは、カレン救出の前準備として味方との連携を狙っていたヴァイスだった。
全身に纏うオーラはまるで紅蓮の炎。敵を貫き徹すという強い意志が、武器が伸びたと錯覚させるような真紅のマテリアルの光を放つ。
菜摘の攻撃で弱っていた蜘蛛の背中を、ヴァイスの徹刺が事も無げに貫いた。
数秒後に動きを完全に止めた蜘蛛を見下ろし、ヴァイスは呟く。
「よし、順調だな。奴は……上空か。まだこちらの妨害をするつもりはなさそうだ」
空から戦闘を眺めている歪虚の状況を逐一確認しつつ、ヴァイスは次の行動へと移る。
■
残り一体となった蜘蛛に突進するのは飛花を使いながら、短くまとめた赤髪を揺らすアルトだ。
「移動力の高い狼はすでにいない。残りの蜘蛛はボクが受け持つよ」
加速度的に距離を詰めてくる真紅の狩人を恐れたのか、蜘蛛が慌てた様子で糸を吐く。
敵の攻撃を予測していたアルトは丁度踏み出していた左足に力を入れ、左前方へと進みながら飛んできた糸を後方へ置き去りにする。
「どんなに粘つく糸も当たらなければ意味がないんだよ。勉強になったかな」
それはまるで不死鳥のようだった。灼熱の猛炎がアルトの全身と武器を包み込んだかと思ったら、短かったはずの髪が腰まで伸びて炎を灯したように瞳が真紅に染まった。
冷徹さに支配された無慈悲な刃が連続で放たれ、さらには命中直前のエンタングルで敵の回避能力は激減。次の瞬間にはもう蜘蛛の頭部はあるべき場所に存在していなかった。
「あとはあいつだけだね。油断したままのうちに仕留めたいけど」
●歪虚リアン戦
実力派揃いのハンターの奮戦により、少女救出を妨害しようとしていた雑魔は瞬く間に全滅。
最後となった歪虚との戦闘に備えるべく、カズマが木を標的にした影渡で移動を行うと、そのタイミングでリアンは急降下を開始した。
口を開いた異形の歪虚の警戒を続けていたヴァイスが叫ぶ。
「気をつけろ! 何か仕掛けてくるつもりだ!」
敵の坑道に注意を払っていたのが功を奏し、攻撃の兆候を事前に察知したカズマとアルトが両者を狙ったファイアブレスを回避する。
不機嫌さを隠そうともせず降り立ったリアンと、アルトが正面から対峙する。
「お前が、妹の言ってた歪虚か、厄介なことをしているらしいな?」
アルトとその妹は双子であり、身長は違うが顔は一緒。だからこそ気が付くかもしれない。
刀を突き出したアルトを見ていたリアンの目が細まる。
「どこかで見た覚えがある顔ですね。フフ。何にしても私の脚本を駄目にしたハンターの姉というのなら、代わりに報いを受けてもらいましょう」
「それはボクの台詞だよ。コボルドの繁殖。さらには雑魔を村にけしかけたりと、放っておくと厄介だ。ここで仕留めさせてもらおうか?」
高まる緊張感が鋭く尖った棘のように肌に突き刺さる。常人なら腰を抜かしてもおかしくはないが、まったく意に介さないのがハンターである。
挑みかかる前に、カズマは小ばかにするような口調でリアンに話しかける。
「その前に名乗ってみろよ、聞いてやる。あぁ、小物けしかけるしか能のない程度なら時間の無駄だからとっとと去れ」
話術と交渉術を活用した挑発に、リアンが狙い通りのリアクションを示す。
「ほう、私の脚本を台無しにするだけでは飽き足らず、ケチをつけますか」
「脚本? だとしたらずいぶんとセンスがねえな」
自尊心に傷をつけるという目的は成功し、怒りに満ちたリアンはカズマだけを集中的に睨むようになる。
それを自覚したカズマがヴァイスに合図を送る。
「今だ、こっちに注意が向いている間に彼女を助けろ」
「わかった。そっちは任せる」
■
バイクで捕らわれの現場に急行するヴァイス。時間をかけずに雑魔を全滅させられたのもあり、少女を焼こうとする火の回りはまだ深刻化していなかった。
銀を加工して作られた造花の薔薇は茎の先端が鋭く尖り、短剣としても使える。その銀華でヴァイスは大木に張りつけられていた少女を無事に救出する。
「しっかりしろ! ……まだ意識は戻らないか。だがグズグズしてる暇はない。急いで退避する!」
動けないカレンを抱きかかえ、木々の間から抜け出ようとするヴァイスの近くにハナが立つ。
「私が援護しますよぉ。符もたっぷり用意してますし、尽きるまで乱れ撃ちですぅ」
蜘蛛雑魔を瞬殺した五色光符陣がリアンの胴を焼く。かなりのダメージを与えたかのように見えたが、雑魚とはレベルが違うとばかりに平然な態度を崩さない。
「さっすが親玉ですぅ。簡単にはブッコロできませんねぇ。でもでもぉ、こっちもまだまだおかわりできますよぉ」
楽しくなってきたとばかりにはしゃぐハナの近くには、同じく遠距離から攻撃を仕掛けられるティスもいた。
「射程距離に到達。今度は私の番ね。風と氷、どちらをお気に召すか、観察させてもらうわね」
ティスのダブルキャストからのウィンドスラッシュとアイスボルトが、それぞれリアンの胴と頭へまともに命中する。
ハナの五色光符陣に引き続いての強力な魔法の同時攻撃は、かなりの生命力を持つ歪虚でさえも顔を苦痛に歪めずにはいられないダメージとなった。
事前の宣言通りにじっとリアンを観察していたティスは小さく頷く。
「どちらの属性も有意な差はないわね。ただ、遠距離から狙われてもまだ挑発されたカズマさんを狙うのね。相当に執念深い性格みたい」
脳内のメモ帳に得た情報を記していくティスの近くを、菜摘が駆け抜ける。
「……わたしがあの歪虚と戦ったら遅れを取る可能性が高いでしょう。ならば、その代わりにわたしはわたしの出来る形で尽力させて頂きます。聖導士としてわたしが出来るだけの支援をさせて頂きますね」
敵ではなく、カズマに近寄った菜摘は彼の抵抗力をレジストで上昇させる。
「カレンさんの救出はヴァイスさんが完了しました。あとは敵を排除するだけになります」
「援護に感謝する。よし、いくぜっ!」
菜摘から事情説明を受けたカズマと同時に、アルトも動き出す。
「きみが背後に回るなら、ボクは左から攻め込むよ」
近接戦闘を仕掛ける二人を援護すべく、ハナとティスも再度の遠距離攻撃の準備に入る。
「遠距離組もバンバン仕掛けますよぉ」
「出し惜しみせず、一気に片を付けるわ」
魔法と符の連続攻撃で身動きできないリアンに、アルトは再度の飛花で宣言した通りに左へ回り込むと、すかさず連撃とエンタングルを組み合わせたコンビーネーションを見舞う。
回避しきれないリアンが苦悶する。そこへカズマが迫る。
「これ以上、好きにはさせませんよっ!」
瀕死になっているリアンは、前衛二人を無力化させるために瞳から魔力を帯びた輝きを放つ。
しかしこの苦し紛れの魔眼をアルトは鋭敏感覚と武術知識により、すんでのところで目を逸らし、威力を軽減させて抵抗に成功する。
もう一人のカズマも、菜摘のレジストの恩恵を受けて難なく抵抗できていた。
「私の魔眼が効かないっ!?」
慌てふためく歪虚の様子に、不敵な笑みを浮かべるのは菜摘だ。
「どうして魔眼を絶対だと思っていられるのかしら? 大いなるモノの加護を甘く見られては正直不愉快ですわね」
「フ、フフ……この私にそのような口を――」
「――笑ってるところ済まないが、詰みだ」
影渡から背後を取ったカズマの連撃が、リアンの腕と胴を貫く。これが決定打となり、多くの攻撃に耐えてきた歪虚もついに倒れた。
「これで終わり……でいいのよね」
呟くように言ったティスに、アルトが首を左右に振る。
以前に妹から出し抜かれたという話を聞いていただけに、アルトは倒れている敵に容赦なく追撃を放つ。
止めるのではなく同意したカズマも、持っていた刀でリアンの体を地面に突き刺す。
完全に命奪うまで気を緩めないハンターたちだったが、ここで急激にリアンの体が膨れ上がる。
「――っおのれえぇぇぇ!」
余裕のある口調が消え失せ。激昂した歪虚の全身がまさしく巨大な鴉も同然な化物となる。
変身していた人型サイズを上回り、カズマの刀が呑み込まれるように消えていきそうになる。
舌打ちしたカズマが刀を引き抜くと同時に、リアンは大きな翼を広げて立ち上がる。
カラス同然の顔に一本角を生やし、鳥類の足で大地を砕くように踏みしめる。
「逃がさないよっ!」
叫んだアルトが魔導ワイヤーで絡めるのを狙うが、上下に開いた鋭いくちばしの奥から放たれた炎が、海のように揺らめいてリアンの巨体を隠してしまう。
放たれたのは憤怒の咆哮。大気を揺らし、絶え間なく炎を吐きながら飛び去ろうとする。
カレンを守らなければならないヴァイスは距離を取らざるをえなく、菜摘はそのヴァイスとともに少女をフォローできる位置にいる。
ティスとハナが炎を目掛けて魔法や符で仕掛けるも、手応えはさほど得られない。
距離を詰め過ぎていたカズマとアルトは肌がヒリつくような熱波の中を強引に突破するが、その頃にはもうリアンは上空への移動を終えていたのだった。
●戦闘後
「……あれが真の姿なのね。逃げられたのは不愉快だけど、新しい情報にはなるわね」
歪虚が逃げ去った方角を眺めながら言うティスの隣で、アルトが顔を上下に動かす。
「そうだね。追いかけても間に合いそうにないし、カレンさんを村に連れて行こう」
「賛成です。ここでは満足な手当てが出来ないかもしれませんし」
眼鏡の位置を直す菜摘の足元、ヴァイスによって草の上に寝かされていたカレンが目を覚ます。リアンの逃走とともに火は消えており、草原には従来の爽やかさが戻っている。
「こ、ここはっ! 私はっ!」
気絶前の状況を思い出して怯える少女を、横にしゃがみ込んだハナが観察する。催眠等をかけられてないか観察するためだ。
正常な状態だと判断したハナは、カレンの肩にポンと手を置いた。
「したくない体験だったと思いますけどぉ、酒場の小噺が増えたと思えば転んでもただでは起きない商人になれますよぅ?」
ハナの慰めの言葉に頷いた少女は改めて事情を聞き、ハンターの一人一人にお礼を言う。
そして最後に自分をずっと守ってくれていたというヴァイスに頭を下げる。
「どうもありがとうございました」
「気にするな。それが俺たちの仕事だ。あんたが無事ならそれでいいのさ」
どことなく照れくさそうに髪を掻いたあと、ヴァイスは少女に街まで送るぜと告げるのだった。
足元から立ち上るように勢いを増していく火を空から見下ろす一体の歪虚。
見上げたティス・フュラー(ka3006)は可愛らしい顔を微かに歪ませる。
「あれが依頼してきた歪虚ね。一体、何を考えてるの」
「それはわかりませんが、巻き添えになった方の安全の為にも、ここは全力で敵の排除に当たらなくてはなりませんわよね」
癒し系のほんわか眼鏡美人の日下 菜摘(ka0881)が礼儀正しい口調でティスに応じた。
「普通に考えたら罠だけど、助けられる人を放置していい理由にはならないわよね」
「ええ。力不足ではありますが、全力で当たらさせて頂きます」
ティスと菜摘が頷き合う。
空を舞う歪虚を地上から眺めているのは二人だけではない。ヴァイス(ka0364)も意思の強さを宿した瞳で、この場においてもっとも強そうな敵を視界に捉え続けていた。
「持ち上げて落とす気満々って顔を隠す気はない……か」
「妹からあの歪虚のことを聞いたことがある。ずいぶんと嫌な性格をしているみたいだよ」
いつでも得意の抜刀を繰り出せる体勢を維持しつつアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が言った。こうした場面でも冷静さを維持できるのは幼少からの戦場経験や訓練で、戦闘中の出来事を全て情報として捉える彼女の特性ゆえだろう。
アルトの言葉を受けて、ヴァイスは気合を入れるように拳と掌をパンと合わせた。
「彼女を助ける為に敢えて演じ、脚本家の想定を超えてやるとしよう」
パチパチと音を立てて草を燃やす火と少女を交互に見た龍崎・カズマ(ka0178)は腕を組んでフンと鼻を鳴らす。
「なるほど確かにこれは致命的だろう、時間をかけてしまえば彼女が火にまかれる」
かつては軍に雇用されていた傭兵らしく、カズマは的確に状況を分析していく。
「かといって救出を優先すると、出てくるときに数の暴力に押される。下手すれば押し込まれる」
カズマの視線が、場違いなほど優雅に大空を旋回する歪虚へと向けられる。
「一つ間違えてるとすれば。此処にいるのは大半が計算外の存在って事だがな」
いつもにこにこ。モテるために追求する可愛らしさを戦場でも失わずに、星野 ハナ(ka5852)は跨っているゴースロンの鬣を優しく撫でていた。
「ゴンちゃん移動は頼みますぅ、近づく雑魔はガンガン蹴り殺しちゃって下さいぃ」
明るく楽しげな声から放たれた物騒な言動。人語を理解しているかは不明だが、ハナのゴースロンは任せてくれとばかりに嘶く。
「気が合いますねぇ、私も歪虚は全ブッコロ派ですぅ!」
●戦闘開始
初手を仕掛けたのはカズマだった。投擲武器の影渡を正面奥にいる狼の腹に命中させると、紐づけていたマテリアルと引き合うような速度で背後へと回り込む。
「後ろがガラ空きだぜ。いくら素早くても、この位置からはかわせねえだろ」
手早く武器を持ち替えての死角からの連撃が急所を捉え、狼雑魔を絶命させる。
それを見ていたティスが赤光を帯びた瞳で右奥の狼を捉える。生まれた四冊の魔導書は幻覚の影像。淡い白銀の光を伴い厳かに漂う。
「動きが軽快そうな敵から仕留めれば、救出もしやすくなるわよね」
放たれた刃のごとき風が狼の腹部を切り裂く。
カズマとティスの先制攻撃で、移動力が厄介な狼歪虚は消滅した。
■
「ではではでは! 次は蜘蛛歪虚をブッコロですぅ。ドカーンとやっちゃいますよぉ」
ハナの両の目に宿る輝きが期待から吸い込まれそうな蒼へと変化する。寄り添うような微風しか感じない草原地帯で、艶かしく踊るかのごとく髪の毛がゆらゆらと広がる。
複数の符が狙った地点を中心に結界を作る。三体を狙うも、中央の蜘蛛以外の二体には僅かに効果が及ばなかった。
しかしながら閉じ込められた一体の蜘蛛は光で焼き尽くされ、存在ごと抹消される。
「二体もブッコロできなかったですぅ」
「では私がまいります!」
戦馬で地を駆ける菜摘がホーリーパニッシャーを構えて、正面近くにいる蜘蛛との距離を詰める。
菜摘に気付いた蜘蛛が主導権を握ろうと体勢を変えようとするが、馬の足を活かしてそれよりも早く気合を乗せたストライクブロウを見舞う。
回避に失敗し、脚に一撃を受けた蜘蛛が体をよろめかせる。
「敵の体勢が崩れました。追撃をよろしくお願いします!」
「了解した。一気に仕留める」
真っ先に反応したのは、カレン救出の前準備として味方との連携を狙っていたヴァイスだった。
全身に纏うオーラはまるで紅蓮の炎。敵を貫き徹すという強い意志が、武器が伸びたと錯覚させるような真紅のマテリアルの光を放つ。
菜摘の攻撃で弱っていた蜘蛛の背中を、ヴァイスの徹刺が事も無げに貫いた。
数秒後に動きを完全に止めた蜘蛛を見下ろし、ヴァイスは呟く。
「よし、順調だな。奴は……上空か。まだこちらの妨害をするつもりはなさそうだ」
空から戦闘を眺めている歪虚の状況を逐一確認しつつ、ヴァイスは次の行動へと移る。
■
残り一体となった蜘蛛に突進するのは飛花を使いながら、短くまとめた赤髪を揺らすアルトだ。
「移動力の高い狼はすでにいない。残りの蜘蛛はボクが受け持つよ」
加速度的に距離を詰めてくる真紅の狩人を恐れたのか、蜘蛛が慌てた様子で糸を吐く。
敵の攻撃を予測していたアルトは丁度踏み出していた左足に力を入れ、左前方へと進みながら飛んできた糸を後方へ置き去りにする。
「どんなに粘つく糸も当たらなければ意味がないんだよ。勉強になったかな」
それはまるで不死鳥のようだった。灼熱の猛炎がアルトの全身と武器を包み込んだかと思ったら、短かったはずの髪が腰まで伸びて炎を灯したように瞳が真紅に染まった。
冷徹さに支配された無慈悲な刃が連続で放たれ、さらには命中直前のエンタングルで敵の回避能力は激減。次の瞬間にはもう蜘蛛の頭部はあるべき場所に存在していなかった。
「あとはあいつだけだね。油断したままのうちに仕留めたいけど」
●歪虚リアン戦
実力派揃いのハンターの奮戦により、少女救出を妨害しようとしていた雑魔は瞬く間に全滅。
最後となった歪虚との戦闘に備えるべく、カズマが木を標的にした影渡で移動を行うと、そのタイミングでリアンは急降下を開始した。
口を開いた異形の歪虚の警戒を続けていたヴァイスが叫ぶ。
「気をつけろ! 何か仕掛けてくるつもりだ!」
敵の坑道に注意を払っていたのが功を奏し、攻撃の兆候を事前に察知したカズマとアルトが両者を狙ったファイアブレスを回避する。
不機嫌さを隠そうともせず降り立ったリアンと、アルトが正面から対峙する。
「お前が、妹の言ってた歪虚か、厄介なことをしているらしいな?」
アルトとその妹は双子であり、身長は違うが顔は一緒。だからこそ気が付くかもしれない。
刀を突き出したアルトを見ていたリアンの目が細まる。
「どこかで見た覚えがある顔ですね。フフ。何にしても私の脚本を駄目にしたハンターの姉というのなら、代わりに報いを受けてもらいましょう」
「それはボクの台詞だよ。コボルドの繁殖。さらには雑魔を村にけしかけたりと、放っておくと厄介だ。ここで仕留めさせてもらおうか?」
高まる緊張感が鋭く尖った棘のように肌に突き刺さる。常人なら腰を抜かしてもおかしくはないが、まったく意に介さないのがハンターである。
挑みかかる前に、カズマは小ばかにするような口調でリアンに話しかける。
「その前に名乗ってみろよ、聞いてやる。あぁ、小物けしかけるしか能のない程度なら時間の無駄だからとっとと去れ」
話術と交渉術を活用した挑発に、リアンが狙い通りのリアクションを示す。
「ほう、私の脚本を台無しにするだけでは飽き足らず、ケチをつけますか」
「脚本? だとしたらずいぶんとセンスがねえな」
自尊心に傷をつけるという目的は成功し、怒りに満ちたリアンはカズマだけを集中的に睨むようになる。
それを自覚したカズマがヴァイスに合図を送る。
「今だ、こっちに注意が向いている間に彼女を助けろ」
「わかった。そっちは任せる」
■
バイクで捕らわれの現場に急行するヴァイス。時間をかけずに雑魔を全滅させられたのもあり、少女を焼こうとする火の回りはまだ深刻化していなかった。
銀を加工して作られた造花の薔薇は茎の先端が鋭く尖り、短剣としても使える。その銀華でヴァイスは大木に張りつけられていた少女を無事に救出する。
「しっかりしろ! ……まだ意識は戻らないか。だがグズグズしてる暇はない。急いで退避する!」
動けないカレンを抱きかかえ、木々の間から抜け出ようとするヴァイスの近くにハナが立つ。
「私が援護しますよぉ。符もたっぷり用意してますし、尽きるまで乱れ撃ちですぅ」
蜘蛛雑魔を瞬殺した五色光符陣がリアンの胴を焼く。かなりのダメージを与えたかのように見えたが、雑魚とはレベルが違うとばかりに平然な態度を崩さない。
「さっすが親玉ですぅ。簡単にはブッコロできませんねぇ。でもでもぉ、こっちもまだまだおかわりできますよぉ」
楽しくなってきたとばかりにはしゃぐハナの近くには、同じく遠距離から攻撃を仕掛けられるティスもいた。
「射程距離に到達。今度は私の番ね。風と氷、どちらをお気に召すか、観察させてもらうわね」
ティスのダブルキャストからのウィンドスラッシュとアイスボルトが、それぞれリアンの胴と頭へまともに命中する。
ハナの五色光符陣に引き続いての強力な魔法の同時攻撃は、かなりの生命力を持つ歪虚でさえも顔を苦痛に歪めずにはいられないダメージとなった。
事前の宣言通りにじっとリアンを観察していたティスは小さく頷く。
「どちらの属性も有意な差はないわね。ただ、遠距離から狙われてもまだ挑発されたカズマさんを狙うのね。相当に執念深い性格みたい」
脳内のメモ帳に得た情報を記していくティスの近くを、菜摘が駆け抜ける。
「……わたしがあの歪虚と戦ったら遅れを取る可能性が高いでしょう。ならば、その代わりにわたしはわたしの出来る形で尽力させて頂きます。聖導士としてわたしが出来るだけの支援をさせて頂きますね」
敵ではなく、カズマに近寄った菜摘は彼の抵抗力をレジストで上昇させる。
「カレンさんの救出はヴァイスさんが完了しました。あとは敵を排除するだけになります」
「援護に感謝する。よし、いくぜっ!」
菜摘から事情説明を受けたカズマと同時に、アルトも動き出す。
「きみが背後に回るなら、ボクは左から攻め込むよ」
近接戦闘を仕掛ける二人を援護すべく、ハナとティスも再度の遠距離攻撃の準備に入る。
「遠距離組もバンバン仕掛けますよぉ」
「出し惜しみせず、一気に片を付けるわ」
魔法と符の連続攻撃で身動きできないリアンに、アルトは再度の飛花で宣言した通りに左へ回り込むと、すかさず連撃とエンタングルを組み合わせたコンビーネーションを見舞う。
回避しきれないリアンが苦悶する。そこへカズマが迫る。
「これ以上、好きにはさせませんよっ!」
瀕死になっているリアンは、前衛二人を無力化させるために瞳から魔力を帯びた輝きを放つ。
しかしこの苦し紛れの魔眼をアルトは鋭敏感覚と武術知識により、すんでのところで目を逸らし、威力を軽減させて抵抗に成功する。
もう一人のカズマも、菜摘のレジストの恩恵を受けて難なく抵抗できていた。
「私の魔眼が効かないっ!?」
慌てふためく歪虚の様子に、不敵な笑みを浮かべるのは菜摘だ。
「どうして魔眼を絶対だと思っていられるのかしら? 大いなるモノの加護を甘く見られては正直不愉快ですわね」
「フ、フフ……この私にそのような口を――」
「――笑ってるところ済まないが、詰みだ」
影渡から背後を取ったカズマの連撃が、リアンの腕と胴を貫く。これが決定打となり、多くの攻撃に耐えてきた歪虚もついに倒れた。
「これで終わり……でいいのよね」
呟くように言ったティスに、アルトが首を左右に振る。
以前に妹から出し抜かれたという話を聞いていただけに、アルトは倒れている敵に容赦なく追撃を放つ。
止めるのではなく同意したカズマも、持っていた刀でリアンの体を地面に突き刺す。
完全に命奪うまで気を緩めないハンターたちだったが、ここで急激にリアンの体が膨れ上がる。
「――っおのれえぇぇぇ!」
余裕のある口調が消え失せ。激昂した歪虚の全身がまさしく巨大な鴉も同然な化物となる。
変身していた人型サイズを上回り、カズマの刀が呑み込まれるように消えていきそうになる。
舌打ちしたカズマが刀を引き抜くと同時に、リアンは大きな翼を広げて立ち上がる。
カラス同然の顔に一本角を生やし、鳥類の足で大地を砕くように踏みしめる。
「逃がさないよっ!」
叫んだアルトが魔導ワイヤーで絡めるのを狙うが、上下に開いた鋭いくちばしの奥から放たれた炎が、海のように揺らめいてリアンの巨体を隠してしまう。
放たれたのは憤怒の咆哮。大気を揺らし、絶え間なく炎を吐きながら飛び去ろうとする。
カレンを守らなければならないヴァイスは距離を取らざるをえなく、菜摘はそのヴァイスとともに少女をフォローできる位置にいる。
ティスとハナが炎を目掛けて魔法や符で仕掛けるも、手応えはさほど得られない。
距離を詰め過ぎていたカズマとアルトは肌がヒリつくような熱波の中を強引に突破するが、その頃にはもうリアンは上空への移動を終えていたのだった。
●戦闘後
「……あれが真の姿なのね。逃げられたのは不愉快だけど、新しい情報にはなるわね」
歪虚が逃げ去った方角を眺めながら言うティスの隣で、アルトが顔を上下に動かす。
「そうだね。追いかけても間に合いそうにないし、カレンさんを村に連れて行こう」
「賛成です。ここでは満足な手当てが出来ないかもしれませんし」
眼鏡の位置を直す菜摘の足元、ヴァイスによって草の上に寝かされていたカレンが目を覚ます。リアンの逃走とともに火は消えており、草原には従来の爽やかさが戻っている。
「こ、ここはっ! 私はっ!」
気絶前の状況を思い出して怯える少女を、横にしゃがみ込んだハナが観察する。催眠等をかけられてないか観察するためだ。
正常な状態だと判断したハナは、カレンの肩にポンと手を置いた。
「したくない体験だったと思いますけどぉ、酒場の小噺が増えたと思えば転んでもただでは起きない商人になれますよぅ?」
ハナの慰めの言葉に頷いた少女は改めて事情を聞き、ハンターの一人一人にお礼を言う。
そして最後に自分をずっと守ってくれていたというヴァイスに頭を下げる。
「どうもありがとうございました」
「気にするな。それが俺たちの仕事だ。あんたが無事ならそれでいいのさ」
どことなく照れくさそうに髪を掻いたあと、ヴァイスは少女に街まで送るぜと告げるのだった。
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- 虹の橋へ
龍崎・カズマ(ka0178)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/03/05 07:17:01 |
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カレンさん救出相談 星野 ハナ(ka5852) 人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2017/03/08 19:42:14 |