ゲスト
(ka0000)
ファッションショーをしまショー
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~15人
- サポート
- 0~20人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/17 12:00
- 完成日
- 2014/10/23 16:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「スランプかもしれない……」
新進気鋭のファッションデザイナー、モーダ氏は、極彩色の都市ヴァリオスに構えた自分のスタジオで独りつぶやきました。
モーダ氏は、斬新なデザインのファッションを次々に発表して人気を博していました。それはクリムゾンウェストの既製の枠をぶち破り、リアルブルーのデザインを大胆に取り込んだものです。
おかげて、ヴァリオスに住む一部の好事家からは絶大な人気を得ていたのですが、最近はどうもパッとしません。巷では、もう終わったとか、ただの充電期間だとか、俳優に転進とか、好き勝手な噂が飛び交っています。
「ううーん、何が原因なんだ……」
いろいろと考えてみますが、スランプの原因がさっぱり分かりません。
デザインでしょうか。
確かに、サルヴァトーレ・ロッソのハンターたちの衣装を参考にしたデザインは、あまりにも奇抜すぎます。クリムゾンウェストでは、とても万人受けしているとは言えません。
さすがの好事家たちも、コレクションにはしても、それを自分で着て町中を歩き回るような剛の者は少数です。
では、素材でしょうか。
サルヴァトーレ・ロッソにあるような素材をそのまま使うことはいろいろと制約がありますが、似たような素材でデザインをちゃんと再現しています。むしろ、物によっては、かなりの高級素材で作られているくらいです。
クリムゾンウェストでの慣習と照らし合わせるといろいろ言われることもあるでしょうが、品物自体に問題があるとはあまり思えません。
そう考えていくと……。
「そうか、問題はモデルかあ!」
ついに、モーダ氏が思いあたりました。
せっかくのデザインも、それを着るクリムゾンウェストの人々にとっては、斬新すぎて着こなせないのです。そうに決まっています。
いままで、地元貢献ということでクリムゾンウェスト出身のモデルを使っていたのですが、どうやらそれが限界に達してしまったようです。
「なに、分かってしまえば対応は可能だよ」
何やら計画を練ると、モーダ氏は広告を打ちました。
『男女ファッションモデル募集! 資格は、リアルブルーのファッションを着こなせるハンターであること。この条件を満たせば、出身がクリムゾンウェストでもリアルブルーでもどちらでも可』
「えっ、綺麗な服が着れるの? いいじゃない!」
「モデル? 私にぴったりの仕事だわ」
「よし、ペアルックで、格好良く決めようぜ」
広告を見て、次々にモデルたちが集まってきました。はたして、ファッションショーは、どうなるのでしょうか。
新進気鋭のファッションデザイナー、モーダ氏は、極彩色の都市ヴァリオスに構えた自分のスタジオで独りつぶやきました。
モーダ氏は、斬新なデザインのファッションを次々に発表して人気を博していました。それはクリムゾンウェストの既製の枠をぶち破り、リアルブルーのデザインを大胆に取り込んだものです。
おかげて、ヴァリオスに住む一部の好事家からは絶大な人気を得ていたのですが、最近はどうもパッとしません。巷では、もう終わったとか、ただの充電期間だとか、俳優に転進とか、好き勝手な噂が飛び交っています。
「ううーん、何が原因なんだ……」
いろいろと考えてみますが、スランプの原因がさっぱり分かりません。
デザインでしょうか。
確かに、サルヴァトーレ・ロッソのハンターたちの衣装を参考にしたデザインは、あまりにも奇抜すぎます。クリムゾンウェストでは、とても万人受けしているとは言えません。
さすがの好事家たちも、コレクションにはしても、それを自分で着て町中を歩き回るような剛の者は少数です。
では、素材でしょうか。
サルヴァトーレ・ロッソにあるような素材をそのまま使うことはいろいろと制約がありますが、似たような素材でデザインをちゃんと再現しています。むしろ、物によっては、かなりの高級素材で作られているくらいです。
クリムゾンウェストでの慣習と照らし合わせるといろいろ言われることもあるでしょうが、品物自体に問題があるとはあまり思えません。
そう考えていくと……。
「そうか、問題はモデルかあ!」
ついに、モーダ氏が思いあたりました。
せっかくのデザインも、それを着るクリムゾンウェストの人々にとっては、斬新すぎて着こなせないのです。そうに決まっています。
いままで、地元貢献ということでクリムゾンウェスト出身のモデルを使っていたのですが、どうやらそれが限界に達してしまったようです。
「なに、分かってしまえば対応は可能だよ」
何やら計画を練ると、モーダ氏は広告を打ちました。
『男女ファッションモデル募集! 資格は、リアルブルーのファッションを着こなせるハンターであること。この条件を満たせば、出身がクリムゾンウェストでもリアルブルーでもどちらでも可』
「えっ、綺麗な服が着れるの? いいじゃない!」
「モデル? 私にぴったりの仕事だわ」
「よし、ペアルックで、格好良く決めようぜ」
広告を見て、次々にモデルたちが集まってきました。はたして、ファッションショーは、どうなるのでしょうか。
リプレイ本文
●
「バイト募集って、てっきり力仕事だと思ったんですが……」
「まあ、力仕事もほしいんだが、それよりも今はモデルだ!」
バタバタしている楽屋で、モーダ氏が不知火 陽炎(ka0460)に言いました。
広場で行われるファッションショーですが、舞台裏はそんなに華やかな物ではありません。着替えのためにほとんど裸で走り回っているモデルを捕まえては、着付係が裾を纏ってサイズ調整していたりします。
圧倒されて顔を赤らめていた陽炎の周りを、モーダ氏がひょいひょいと凄いスピードで確認しました。
「君、なかなかいい身体をしているな。よし、採用。他のバイトと一緒に出てくれ。さあ、急いだ急いだ」
モーダ氏が、陽炎を他のモデルたちの所へ追いっていきました。
今回はバイトということで、モデルの体形に合わせて衣装を最初から作るわけにもいきません。すでにある衣装から着られる物を選ぶことになります。それらを着こなせるであろうハンターの技量に期待です。
「うちにお任せっす。ハンターの新しい分野への進出、決めてみせるっす!」
キャロル・スピア(ka3355)が自信満々で言いました。
「それはいいけど、どんなのを着せてくれるのかな?」
ロザーリア・アレッサンドリ(ka0996)が、ちょっと戸惑ったように言いました。
「リアルブルーデザインの服が着られるとは、楽しみじゃ!」
ハンガーに掛けられた色とりどりの服を見て、シルヴェーヌ=プラン(ka1583)が歓声をあげました。
「クリムゾンウェストの私に似合うでしょうか。あっ、私はフェリア(ka2870)。フェリア=シュベールト=アウレオスです。よろしくね」
見慣れない衣装に、ちょっと戸惑いながらフェリアが言いました。帝国の名家に籍をおくので、ファッションショーに出たと家の者が知ったら、卒倒されそうです。
「似合うに合わないはともかくも、珍しい服を着られるとは楽しそうなのじゃ」
ニコニコしながら服を選ぶヴィルマ・ネーベル(ka2549)が言いました。
「おう、ここだここだ」
そこへ、真白・祐(ka2803)が、園藤 美桜(ka2822)、御崎・汀(ka2918)を連れて現れました。
「ごめんなさいなのー」
三河 ことり(ka2821)が、ちょっとだけ遅れてやってきます。
「揃ったな。みんな、モデルのお仕事だぜ。どうだい、いい気晴らしになるだろ?」
しれっと、祐が言いました。みんなをステージに立たせて、自分は裏方のつもり満々です。
「モデルだなんて……。悠さん、聞いていないです!」
「嘘はついてないだろ」
綺麗な服が着られるとだけ聞いていた汀が、祐に詰め寄りました。
「綺麗な服は楽しみなの」
初めて見る衣装を一つ一つ手に取りながら、ことりが言いました。話はすでに聞いていたので、一番ノリノリです。本当は事前に衣装を見ておきたかったのですが、事前にリークさせるわけにはいきませんから、当然NGでした。
「ちょっと華やかすぎですけれど」
薔薇のように真っ赤なドレスを横目で見て、美桜が戸惑ったような表情を浮かべました。
「仕方ないですね。みんなで頑張りましょう」
半ば諦めて、汀が言いました。
「せっかくだから、みんなで一緒にステージに立つのー。祐君は何にするの?」
「ちょっと待て、俺は参加するなんで言ってないぞ!?」
ことりに聞かれた祐が、なんだか雲行きが怪しくなってきたと焦ります。
「もう、みんな登録してきたの」
「祐さんも出るのですか? これで、安心です」
ホッとしたように、真顔で汀が言いました。
「えっ、私はメイク係がよいかと……」
すっかり他人事でいようとした美桜でしたが、ことりからは逃げられなかったようです。
結局、全員で参加することになりました。
「祐君に似合うのは、これなの」
ことりが、あろうことか白いタキシードを手にとると、無邪気に祐に突きつけました。
「いいですわね。さっそく着替えてもらいましょう」
ニッコリと、美桜が容赦なく手をのばしてきました。
「や、やめ……」
「まあ……」
ちょっと顔を赤らめつつも、汀がちゃんと参加します。そのまま、祐は三人娘にひんむかれていきました。
●
さあ、ショーの開幕です。
「じゃあ、うちから行くよー!」
元気いっぱいに一番手をかって出たのはキャロルです。
「最初のコレクションは、フォーマルなパンツスーツを大胆にカットした野心的な作品。モデルは、キャロル嬢です」
司会を務めるセンサーレ・クリティコが、キャロルを呼びました。
スーツの袖を外すという、なんとも斬新なデザインです。ホルターネック状に腕と肩を大きく露出させると共に、腕には柔らかなアームウォーマーをアクセントとしています。クリムゾンウェストの人々の目から見たら、なんとも珍妙かもしれませんが、キャロルが堂々としているので、不思議と変には見えません。
スマートな体形と、ダンスをしているせいもあって、キャロルの足運びは確かで綺麗です。その一足ごとに、むきだしの首筋で、ネックレスが明かりを反射してキラキラと輝きます。観客の男性たちの目が、嫌でもむきだしの肌に釘付けになりました。
花道を堂々と往復すると、キャロルは楽屋に戻ってきました。
「ふうっ」
やっと緊張が解けたのか、大きく息を吐き出します。一番手としては、こんなものでしょう。機会があれば、またやりたいと思いつつ、キャロルは自分に続くモデルたちの衣装を楽しむことにしました。
●
「続いては、目にも鮮やかな深紅の薔薇のドレス。モデルは、ロザーリア嬢です」
キャロルと入れ替わりでステージに現れたのはロザーリアを、司会者が紹介します。
ローザリアが着こなしているのは、裾にいくに従って広くなっている、いわゆるAライン型のドレスでした。
「ふふふ、エルフには、なんでも似合うのだよ」
ちょっと自慢げな表情で、ロザーリアが言いました。トレードマークのモノクルを外し、金髪をアップにしてうなじと背中を顕わにした姿は、普段とはまるで別人です。
深紅のペタルドレスは、それ自体がまるで豪奢な薔薇の花のようでした。胸には大きめの薔薇のコサージュをつけ、腰帯は後ろで大きくリボン結びにしてアクセントとしています。
ちょっとおすまし気味に花道を進んでいきますが、思った以上にドレスが重くて、裾を踏んだりしないように進むのが大変です。もちろん、密かに練習したモデル歩きですので、そのようなドジは踏みません。
花道の端まで辿り着くと、腰に手を当ててポーズをとり、ちょっと惚けたような顔で見つめている観客の男共にウインクをしてみせます。続いて、クルリとターンしてドレスの裾を華麗に翻しました。さすがに、ふわりという感じではありませんが、微かに広がったスカートの裾から、赤いパンプスがチラリと見えます。
ステージに戻ってきたところで再び振り返って科を作ると、ロザーリアは楽屋に戻ってきました。
「うん、なかなか」
自画自賛すると共に、これでこのドレスとサヨナラするのはちょっとおしい気もします。
「これって、いくらぐらいで買えるのかな?」
さっさとドレスを脱がしにかかる裏方さんに、ロザーリアが訊ねました。買える物であればちょっとほしい感じです。
「ええっと、これぐらいですかねえ……」
「うっ」
現在の所持金よりも二桁は高い金額をささやかれて、さすがにロザーリアが言葉に詰まりました。高い、高すぎます。
「じ、次回も呼んでね」
さすがに買えないので、次回もモデルに呼んでねと頼むロザーリアでした。
●
衣装を手に取ったものの、今ひとつ自分で着る勇気の出ない黒の夢(ka0187)でした。
「何をしている、じき出番だぞ」
モーダ氏が、ぼーっとして立っている黒の夢を見つけて急かしました。
「でも、こんな綺麗なドレスは似合わないのだ……」
「そんなことはあるものか、私のデザインしたドレスだぞ。衣装は人を際立たせ、人は衣装を際立たせる。そうだな、君はこれを着るんだ」
そう言うと、モーダ氏が白のドレスを黒の夢に押しつけました。
「んっ、衣装が際立てばそれでいいのだな」
とりあえず納得すると、黒の夢が急いでドレスの着付けをしてもらいました。
「うーん、おっ!」
何か足りないと思ったモーダ氏が、ポンと手を叩きました。側でがちがちに固まって出番を待っていた陽炎を引きずってきます。
「エスコートしたまえ」
「えっ、えっ、S?」
支度の済んだ黒の夢の腕を陽炎にとらせると、モーダ氏がステージへ二人を突き出しました。
「続いては、ウエディングドレスのお披露目です」
もともと身体のメリハリのはっきりしている黒の夢ですから、身体にぴっちりとしたマーメードラインの純白のドレスは、それをよくはっきりと印象づけてくれます。黒の夢が気にしている漆黒の肌も、ドレスの放つシルクの艶めきを受けてか、艶々と黒曜石のように燦めいて見えました。長くのびたレースのトレーンは、白いリボンの花咲く野原のようです。
黒髪は編んで頭に纏められ、それをつつむ縁をレースで飾ったマリアベールからのぞく顔は、緊張からかちょっと伏し目がちです。
「新郎の方は……、ちょっとこの色でいいんですか?」
陽炎のスーツの紺色を見て、司会が小声でモーダ氏に確認しました。
「しかたないだろう。ペアで用意しておいた白のタキシードがないんだ。適当にごまかしてくれ」
そのための司会だろうと、モーダ氏が小声で答えます。
「……えーっと、リアルブルーの今年の流行色、紺でまとめておりますです。モデルは、黒の夢嬢と不知火氏です」
紹介された黒の夢が、首から提げたドッグタグを一度強く握りしめると、ステージに向かって一歩を踏み出しました。
腕を組んだ陽炎も一緒に歩き出しますが、緊張して、右手と右足が一緒に前に出ています。
「誰か、知っている人はいないか?」
観客たちに目を走らせた黒の夢でしたが、見知った顔はありませんでした。せっかくですからと、手に持っていたカスケードタイプのブーケから、カトレアの花を一輪ずつ抜いて、花道近くの人たちに配っていきます。そのたびに、陽炎が腕を引っぱられて、身体を斜めにして踏ん張りました。
●
「ここで目立てば、ボクの記憶の手がかりになる人に見つけてもらえるかもね。頑張ろう」
自分の出番となって、星垂(ka1344)が気合いを入れました。観客が多くてちょっとビビりますが、ここは気合いです。
「続いては、リアルブルーとクリムゾンウェストの融合。まさに、明日を担う着物ドレスです。モデルは、星垂嬢!」
司会にコールされて、星垂がステージへと進みました。
真っ赤な蛇の目傘でその姿を隠しつつ、摺り足で前へと進みます。頃合いを見て、星垂は立ち止まってさっと傘を翻しました。
広げた扇で顔を隠した星垂の姿が顕わになります。
ホルターネックのワンピースの上に着ているのは、ピンク色の着物ドレスですが、かなり大胆にアレンジされています。袖の部分はセパレートになっていて、肩はむきだしです。衿の部分は赤地に金糸で模様が縫い取られアクセントとなっています。着物の生地は柔らかく、ドレスのように美しい皺を作っていました。縁取りはレースで華やかに、金色の帯は脇で大きく結んでいます。
パチンと扇を閉じると、星垂が再び歩き始めます。今度は、和傘をステッキに、扇をタクトのように扱いながら、大胆に進んでいきます。
花道の終わりまで来たら、決めポーズです。腰まである長い黒髪を振ってクルリと一回転し、扇を頬にツンと押しあててウインクをします。
可愛らしく決めると、星垂は楽屋へと戻ってきました。
「はあー。いつものハンターの仕事とは別の意味で緊張したよぉ……」
柱にもたれかかりながら、緊張の解けた星垂がそうつぶやきました。
●
「おおっ! あれもこれも、どの服もステキだのう。迷うのう。郷で着ておった服とは比べ物にならぬのじゃ……」
「そうですよね、迷いますよね」
同じように衣装を吟味していたフェリアがシルヴェーヌ=プラン(ka1583)にうなずきました。
たくさんの服を身体にあてがって迷っているシルヴェーヌたちに、モーダ氏がちょっとやきもきします。
「君は、これを着て!」
モーダ氏が手早くコーディネートします。着付係が、あっという間にシルヴェーヌを裸にひんむいて衣装を着せていきます。
「さて、続いては、カジュアルな普段着。モデルはシルヴェーヌ嬢です」
司会に呼ばれて、シルヴェーヌがステージへと出ていきます。
その姿は、活動的でおしゃれな女の子そのものという感じです。白いブラウスには、少し控えめに可愛らしくレースがあしらわれ、スカートは白黒チェック柄の少しふくらんだフレアスカート、膝上までのニーハイソックスはチェック柄のリボンを脇につけて絶対領域を作り出しています。靴は明るい茶のローファー。手には小さめの他案バッグ。なんだか、これから街にデートにでも出かけそうなファッションです。
もしも、リアルブルーに生まれていたら、このような服を着ていたのだろうかと思いながら、シルヴェーヌは花道をちょっとおしゃまな顔で進んでいきました。銀色の長髪を軽く靡かせ、蒼緋のオッドアイを軽く閉じ、ちょっとツンと顎を反らせます。
思わず口許がほころぶのを必死に押さえながら、バッグを肩にかけなおし、花道の端で左右にくるりくるりと回ってスカートの裾を軽く翻しました。
「この服、ほしいかも……」
花道を戻りながら、そう思うシルヴェーヌでした。
「高いぞ……。ぼったくりだぞ……」
楽屋に戻ってきたシルヴェーヌの側にスッとやってきたロザーリアが、耳許でそうささやきました。
●
「続いては、華やかなアイドル衣装。モデルは、ヴィルマ嬢です!」
呼ばれたヴィルマが、勢いよくステージに飛び出してきました。
紫と青のチェック柄のワンピースは、短めのスカートがパニエでふっくらと広がっています。あちこちについている光沢のある赤や青のリボン飾りがきらびやかです。脚には紺色のニーハイソックスに黒のブーツ、片目を隠すように下ろしたペールアクアの髪には、ちょこんとミニハットを留めています。
二十歳になった身としてはちょっと恥ずかしいような気もしますが、ショーですからそんなことを考えてもいられません。それに、なんと言うか、いい気持ちです。思っていたよりも楽しいと言うべきでしょうか。
そのため、なんとも軽い足取りでヴィルマは花道を進んでいきました。一足ごとに、スカートがひらひらとするのが心地よい感じです。
花道の端でスカートの両端をつまんでにんまりとお辞儀をすると、ヴィルマは小走りに楽屋へと戻ってきました。
「とりあえず、ちゃんとできたかえ? 後は、他の者たちを見学させてもらうとしようかの」
息を整えると、ヴィルマはステージへと目をむけました。
●
「次は、清楚なエプロンドレス。モデルは、ファリス(ka2853)嬢です。」
呼ばれて、ファリスがゆっくりとステージに現れます。
胸元に大きな青いリボンを飾った浅黄色のワンピースの上に、白いエプロンドレスを着ています。エプロンらしく、ポケットがアクセントとしてついていますが、オーバースカートにもなっていて、本来のアンダースカートと共にレースの縁取りが華やかで、美しい重なりを作り出していました。
二の腕は胸元と同じ色の細いリボンできりりと縛られ、袖口には手の甲まで被うファンシーカフスがついています。
ステージでは、ファリスは花道には出ず、舞台の左右を何度か往復していきました。軽く歌を口ずさみながら、何か花でも摘むような仕種でゆっくりと移動していきます。その姿に、ステージが花咲く野原のように見えてきました。
銀髪赤目のファリスは、なんだか野で遊ぶ子ウサギのようでもあります。
少しして歌を歌い終わると、中央に立ったファリスがスカートをつまんでレディっぽくお辞儀をしました。まだ10歳のファリスとしては、ちょっとおしゃまな感じです。
「このお洋服、ファリス、とっても気に入ったの」
楽屋に戻ってきたファリスが、満足そうに言いました。
「高いわよ」
ローザリアとシルヴェーヌが、声を揃えて忠告します。
「あっ、いや、普段着の奴は、そんなに高くないから……」
何でもかんでもぼったくりにしないでくれと、モーダ氏が困ったように言いました。
●
「続いては、艶やかな異国のドレス。モデルは、フェリア嬢です」
ずっと迷っていたフェリアでしたが、なんとか衣装を決めたようです。直前のファリスを参考にして、ステージを左右に動いてポーズをとります。
彼女が着ているのは、深紅のチャイナドレスです。大胆に刺繍された金糸銀糸の吉祥図が、クリムゾンウェストの人々が見たこともないような動物や花を表していました。シルク特有の光沢が美しく、フェリアの美しい銀髪と共にきらびやかに輝いています。
大きく左右にあいたスリットからおしげもなく美脚を見せながら、フェリアが手に持った白い羽扇をひらひらさせます。どうやら、この感じが気に入ったようです。
適当なところでポーズを決めると、フェリアは満足気に楽屋へと戻っていきました。
●
「それでは、最後の作品です。グループでのコーディネートとなります。モデルは、三河嬢、園藤嬢、御崎嬢、他一名です」
「他一名って……、まあ、可愛い三人と比べたら、そうだよなあ……」
なし崩しにステージへと連れ出された祐が、ため息まじりにつぶやきました。無理矢理着せられた白いタキシード姿です。とりあえず、独りだけ浮いているのは確かです。
ことりは、自分の瞳と髪の色に合わせた紫色のドレスを着ています。ワンショルダーのティアードドレスで、流れるように重ねられた布地が、微妙な色合いの重ねを表現してとても上品です。
美桜は、深紅のゴスロリドレスです。こちらも、瞳の色に合わせたのでしょうか。黒のレースとのグラデーションが派手で、パニエでふくらんだスカートと共に、メリハリのあるボリュームを全体に与えています。黒薔薇の模様のあるストッキングも艶っぽく、短い手袋の手首を絞ったリボンは臙脂色でした。愛用の日傘を差した美桜は、ちょっと御満悦のようにも見えます。
汀は、白いエンパイアドレスです。ハイウエストの、ちょっと胸を強調したすらりとしたラインのドレスでした。一見するとシンプルですが、白い糸で美しい刺繍が胸元に施されています。パフスリーブは可愛らしいですが、全体的にはちょっと大人目な感じです。
「パフォーマンス……、何かしなきゃなの」
そう言うと、ことりが持ってきていたバイオリンを取りに戻ろうとしました。
「それは、また今度な」
慌てて祐が、小鳥を掴んで引き止めます。ことりの殺人バイオリンを免疫のない人々に聞かせるわけにはいきません。
「飲み物、飲みます?」
「それも、後々!」
いきなり、飲み物を取りに行こうとする美桜を、またしても祐が慌ててとめました。
まったく、気の休まる暇もありません。
「もう、勘弁してくれ……」
汀に助けを求めようとしましたが、彼女が台本を取り出すに至っては、全力でそれを奪い取りました。
もう、なんだか、祐が怪しい動きで女の子たちの身体に触っているようにしか見えません。
「早く終わりにしてくれ……」
必死に、司会者に助けを求めます。はたして、それが通じたのでしょうか……。
「それでは、デザイナーのモーダ氏、どうぞ!」
司会がモーダ氏を呼ぶと、それまでの衣装を着て全員がステージに現れました。会場から、大きな拍手があがります。
「ありがとうございます。それでは、ステキなモデルたちにも拍手を!」
自ら手を叩きながら、モーダ氏が全員を讃えました。
「バイト募集って、てっきり力仕事だと思ったんですが……」
「まあ、力仕事もほしいんだが、それよりも今はモデルだ!」
バタバタしている楽屋で、モーダ氏が不知火 陽炎(ka0460)に言いました。
広場で行われるファッションショーですが、舞台裏はそんなに華やかな物ではありません。着替えのためにほとんど裸で走り回っているモデルを捕まえては、着付係が裾を纏ってサイズ調整していたりします。
圧倒されて顔を赤らめていた陽炎の周りを、モーダ氏がひょいひょいと凄いスピードで確認しました。
「君、なかなかいい身体をしているな。よし、採用。他のバイトと一緒に出てくれ。さあ、急いだ急いだ」
モーダ氏が、陽炎を他のモデルたちの所へ追いっていきました。
今回はバイトということで、モデルの体形に合わせて衣装を最初から作るわけにもいきません。すでにある衣装から着られる物を選ぶことになります。それらを着こなせるであろうハンターの技量に期待です。
「うちにお任せっす。ハンターの新しい分野への進出、決めてみせるっす!」
キャロル・スピア(ka3355)が自信満々で言いました。
「それはいいけど、どんなのを着せてくれるのかな?」
ロザーリア・アレッサンドリ(ka0996)が、ちょっと戸惑ったように言いました。
「リアルブルーデザインの服が着られるとは、楽しみじゃ!」
ハンガーに掛けられた色とりどりの服を見て、シルヴェーヌ=プラン(ka1583)が歓声をあげました。
「クリムゾンウェストの私に似合うでしょうか。あっ、私はフェリア(ka2870)。フェリア=シュベールト=アウレオスです。よろしくね」
見慣れない衣装に、ちょっと戸惑いながらフェリアが言いました。帝国の名家に籍をおくので、ファッションショーに出たと家の者が知ったら、卒倒されそうです。
「似合うに合わないはともかくも、珍しい服を着られるとは楽しそうなのじゃ」
ニコニコしながら服を選ぶヴィルマ・ネーベル(ka2549)が言いました。
「おう、ここだここだ」
そこへ、真白・祐(ka2803)が、園藤 美桜(ka2822)、御崎・汀(ka2918)を連れて現れました。
「ごめんなさいなのー」
三河 ことり(ka2821)が、ちょっとだけ遅れてやってきます。
「揃ったな。みんな、モデルのお仕事だぜ。どうだい、いい気晴らしになるだろ?」
しれっと、祐が言いました。みんなをステージに立たせて、自分は裏方のつもり満々です。
「モデルだなんて……。悠さん、聞いていないです!」
「嘘はついてないだろ」
綺麗な服が着られるとだけ聞いていた汀が、祐に詰め寄りました。
「綺麗な服は楽しみなの」
初めて見る衣装を一つ一つ手に取りながら、ことりが言いました。話はすでに聞いていたので、一番ノリノリです。本当は事前に衣装を見ておきたかったのですが、事前にリークさせるわけにはいきませんから、当然NGでした。
「ちょっと華やかすぎですけれど」
薔薇のように真っ赤なドレスを横目で見て、美桜が戸惑ったような表情を浮かべました。
「仕方ないですね。みんなで頑張りましょう」
半ば諦めて、汀が言いました。
「せっかくだから、みんなで一緒にステージに立つのー。祐君は何にするの?」
「ちょっと待て、俺は参加するなんで言ってないぞ!?」
ことりに聞かれた祐が、なんだか雲行きが怪しくなってきたと焦ります。
「もう、みんな登録してきたの」
「祐さんも出るのですか? これで、安心です」
ホッとしたように、真顔で汀が言いました。
「えっ、私はメイク係がよいかと……」
すっかり他人事でいようとした美桜でしたが、ことりからは逃げられなかったようです。
結局、全員で参加することになりました。
「祐君に似合うのは、これなの」
ことりが、あろうことか白いタキシードを手にとると、無邪気に祐に突きつけました。
「いいですわね。さっそく着替えてもらいましょう」
ニッコリと、美桜が容赦なく手をのばしてきました。
「や、やめ……」
「まあ……」
ちょっと顔を赤らめつつも、汀がちゃんと参加します。そのまま、祐は三人娘にひんむかれていきました。
●
さあ、ショーの開幕です。
「じゃあ、うちから行くよー!」
元気いっぱいに一番手をかって出たのはキャロルです。
「最初のコレクションは、フォーマルなパンツスーツを大胆にカットした野心的な作品。モデルは、キャロル嬢です」
司会を務めるセンサーレ・クリティコが、キャロルを呼びました。
スーツの袖を外すという、なんとも斬新なデザインです。ホルターネック状に腕と肩を大きく露出させると共に、腕には柔らかなアームウォーマーをアクセントとしています。クリムゾンウェストの人々の目から見たら、なんとも珍妙かもしれませんが、キャロルが堂々としているので、不思議と変には見えません。
スマートな体形と、ダンスをしているせいもあって、キャロルの足運びは確かで綺麗です。その一足ごとに、むきだしの首筋で、ネックレスが明かりを反射してキラキラと輝きます。観客の男性たちの目が、嫌でもむきだしの肌に釘付けになりました。
花道を堂々と往復すると、キャロルは楽屋に戻ってきました。
「ふうっ」
やっと緊張が解けたのか、大きく息を吐き出します。一番手としては、こんなものでしょう。機会があれば、またやりたいと思いつつ、キャロルは自分に続くモデルたちの衣装を楽しむことにしました。
●
「続いては、目にも鮮やかな深紅の薔薇のドレス。モデルは、ロザーリア嬢です」
キャロルと入れ替わりでステージに現れたのはロザーリアを、司会者が紹介します。
ローザリアが着こなしているのは、裾にいくに従って広くなっている、いわゆるAライン型のドレスでした。
「ふふふ、エルフには、なんでも似合うのだよ」
ちょっと自慢げな表情で、ロザーリアが言いました。トレードマークのモノクルを外し、金髪をアップにしてうなじと背中を顕わにした姿は、普段とはまるで別人です。
深紅のペタルドレスは、それ自体がまるで豪奢な薔薇の花のようでした。胸には大きめの薔薇のコサージュをつけ、腰帯は後ろで大きくリボン結びにしてアクセントとしています。
ちょっとおすまし気味に花道を進んでいきますが、思った以上にドレスが重くて、裾を踏んだりしないように進むのが大変です。もちろん、密かに練習したモデル歩きですので、そのようなドジは踏みません。
花道の端まで辿り着くと、腰に手を当ててポーズをとり、ちょっと惚けたような顔で見つめている観客の男共にウインクをしてみせます。続いて、クルリとターンしてドレスの裾を華麗に翻しました。さすがに、ふわりという感じではありませんが、微かに広がったスカートの裾から、赤いパンプスがチラリと見えます。
ステージに戻ってきたところで再び振り返って科を作ると、ロザーリアは楽屋に戻ってきました。
「うん、なかなか」
自画自賛すると共に、これでこのドレスとサヨナラするのはちょっとおしい気もします。
「これって、いくらぐらいで買えるのかな?」
さっさとドレスを脱がしにかかる裏方さんに、ロザーリアが訊ねました。買える物であればちょっとほしい感じです。
「ええっと、これぐらいですかねえ……」
「うっ」
現在の所持金よりも二桁は高い金額をささやかれて、さすがにロザーリアが言葉に詰まりました。高い、高すぎます。
「じ、次回も呼んでね」
さすがに買えないので、次回もモデルに呼んでねと頼むロザーリアでした。
●
衣装を手に取ったものの、今ひとつ自分で着る勇気の出ない黒の夢(ka0187)でした。
「何をしている、じき出番だぞ」
モーダ氏が、ぼーっとして立っている黒の夢を見つけて急かしました。
「でも、こんな綺麗なドレスは似合わないのだ……」
「そんなことはあるものか、私のデザインしたドレスだぞ。衣装は人を際立たせ、人は衣装を際立たせる。そうだな、君はこれを着るんだ」
そう言うと、モーダ氏が白のドレスを黒の夢に押しつけました。
「んっ、衣装が際立てばそれでいいのだな」
とりあえず納得すると、黒の夢が急いでドレスの着付けをしてもらいました。
「うーん、おっ!」
何か足りないと思ったモーダ氏が、ポンと手を叩きました。側でがちがちに固まって出番を待っていた陽炎を引きずってきます。
「エスコートしたまえ」
「えっ、えっ、S?」
支度の済んだ黒の夢の腕を陽炎にとらせると、モーダ氏がステージへ二人を突き出しました。
「続いては、ウエディングドレスのお披露目です」
もともと身体のメリハリのはっきりしている黒の夢ですから、身体にぴっちりとしたマーメードラインの純白のドレスは、それをよくはっきりと印象づけてくれます。黒の夢が気にしている漆黒の肌も、ドレスの放つシルクの艶めきを受けてか、艶々と黒曜石のように燦めいて見えました。長くのびたレースのトレーンは、白いリボンの花咲く野原のようです。
黒髪は編んで頭に纏められ、それをつつむ縁をレースで飾ったマリアベールからのぞく顔は、緊張からかちょっと伏し目がちです。
「新郎の方は……、ちょっとこの色でいいんですか?」
陽炎のスーツの紺色を見て、司会が小声でモーダ氏に確認しました。
「しかたないだろう。ペアで用意しておいた白のタキシードがないんだ。適当にごまかしてくれ」
そのための司会だろうと、モーダ氏が小声で答えます。
「……えーっと、リアルブルーの今年の流行色、紺でまとめておりますです。モデルは、黒の夢嬢と不知火氏です」
紹介された黒の夢が、首から提げたドッグタグを一度強く握りしめると、ステージに向かって一歩を踏み出しました。
腕を組んだ陽炎も一緒に歩き出しますが、緊張して、右手と右足が一緒に前に出ています。
「誰か、知っている人はいないか?」
観客たちに目を走らせた黒の夢でしたが、見知った顔はありませんでした。せっかくですからと、手に持っていたカスケードタイプのブーケから、カトレアの花を一輪ずつ抜いて、花道近くの人たちに配っていきます。そのたびに、陽炎が腕を引っぱられて、身体を斜めにして踏ん張りました。
●
「ここで目立てば、ボクの記憶の手がかりになる人に見つけてもらえるかもね。頑張ろう」
自分の出番となって、星垂(ka1344)が気合いを入れました。観客が多くてちょっとビビりますが、ここは気合いです。
「続いては、リアルブルーとクリムゾンウェストの融合。まさに、明日を担う着物ドレスです。モデルは、星垂嬢!」
司会にコールされて、星垂がステージへと進みました。
真っ赤な蛇の目傘でその姿を隠しつつ、摺り足で前へと進みます。頃合いを見て、星垂は立ち止まってさっと傘を翻しました。
広げた扇で顔を隠した星垂の姿が顕わになります。
ホルターネックのワンピースの上に着ているのは、ピンク色の着物ドレスですが、かなり大胆にアレンジされています。袖の部分はセパレートになっていて、肩はむきだしです。衿の部分は赤地に金糸で模様が縫い取られアクセントとなっています。着物の生地は柔らかく、ドレスのように美しい皺を作っていました。縁取りはレースで華やかに、金色の帯は脇で大きく結んでいます。
パチンと扇を閉じると、星垂が再び歩き始めます。今度は、和傘をステッキに、扇をタクトのように扱いながら、大胆に進んでいきます。
花道の終わりまで来たら、決めポーズです。腰まである長い黒髪を振ってクルリと一回転し、扇を頬にツンと押しあててウインクをします。
可愛らしく決めると、星垂は楽屋へと戻ってきました。
「はあー。いつものハンターの仕事とは別の意味で緊張したよぉ……」
柱にもたれかかりながら、緊張の解けた星垂がそうつぶやきました。
●
「おおっ! あれもこれも、どの服もステキだのう。迷うのう。郷で着ておった服とは比べ物にならぬのじゃ……」
「そうですよね、迷いますよね」
同じように衣装を吟味していたフェリアがシルヴェーヌ=プラン(ka1583)にうなずきました。
たくさんの服を身体にあてがって迷っているシルヴェーヌたちに、モーダ氏がちょっとやきもきします。
「君は、これを着て!」
モーダ氏が手早くコーディネートします。着付係が、あっという間にシルヴェーヌを裸にひんむいて衣装を着せていきます。
「さて、続いては、カジュアルな普段着。モデルはシルヴェーヌ嬢です」
司会に呼ばれて、シルヴェーヌがステージへと出ていきます。
その姿は、活動的でおしゃれな女の子そのものという感じです。白いブラウスには、少し控えめに可愛らしくレースがあしらわれ、スカートは白黒チェック柄の少しふくらんだフレアスカート、膝上までのニーハイソックスはチェック柄のリボンを脇につけて絶対領域を作り出しています。靴は明るい茶のローファー。手には小さめの他案バッグ。なんだか、これから街にデートにでも出かけそうなファッションです。
もしも、リアルブルーに生まれていたら、このような服を着ていたのだろうかと思いながら、シルヴェーヌは花道をちょっとおしゃまな顔で進んでいきました。銀色の長髪を軽く靡かせ、蒼緋のオッドアイを軽く閉じ、ちょっとツンと顎を反らせます。
思わず口許がほころぶのを必死に押さえながら、バッグを肩にかけなおし、花道の端で左右にくるりくるりと回ってスカートの裾を軽く翻しました。
「この服、ほしいかも……」
花道を戻りながら、そう思うシルヴェーヌでした。
「高いぞ……。ぼったくりだぞ……」
楽屋に戻ってきたシルヴェーヌの側にスッとやってきたロザーリアが、耳許でそうささやきました。
●
「続いては、華やかなアイドル衣装。モデルは、ヴィルマ嬢です!」
呼ばれたヴィルマが、勢いよくステージに飛び出してきました。
紫と青のチェック柄のワンピースは、短めのスカートがパニエでふっくらと広がっています。あちこちについている光沢のある赤や青のリボン飾りがきらびやかです。脚には紺色のニーハイソックスに黒のブーツ、片目を隠すように下ろしたペールアクアの髪には、ちょこんとミニハットを留めています。
二十歳になった身としてはちょっと恥ずかしいような気もしますが、ショーですからそんなことを考えてもいられません。それに、なんと言うか、いい気持ちです。思っていたよりも楽しいと言うべきでしょうか。
そのため、なんとも軽い足取りでヴィルマは花道を進んでいきました。一足ごとに、スカートがひらひらとするのが心地よい感じです。
花道の端でスカートの両端をつまんでにんまりとお辞儀をすると、ヴィルマは小走りに楽屋へと戻ってきました。
「とりあえず、ちゃんとできたかえ? 後は、他の者たちを見学させてもらうとしようかの」
息を整えると、ヴィルマはステージへと目をむけました。
●
「次は、清楚なエプロンドレス。モデルは、ファリス(ka2853)嬢です。」
呼ばれて、ファリスがゆっくりとステージに現れます。
胸元に大きな青いリボンを飾った浅黄色のワンピースの上に、白いエプロンドレスを着ています。エプロンらしく、ポケットがアクセントとしてついていますが、オーバースカートにもなっていて、本来のアンダースカートと共にレースの縁取りが華やかで、美しい重なりを作り出していました。
二の腕は胸元と同じ色の細いリボンできりりと縛られ、袖口には手の甲まで被うファンシーカフスがついています。
ステージでは、ファリスは花道には出ず、舞台の左右を何度か往復していきました。軽く歌を口ずさみながら、何か花でも摘むような仕種でゆっくりと移動していきます。その姿に、ステージが花咲く野原のように見えてきました。
銀髪赤目のファリスは、なんだか野で遊ぶ子ウサギのようでもあります。
少しして歌を歌い終わると、中央に立ったファリスがスカートをつまんでレディっぽくお辞儀をしました。まだ10歳のファリスとしては、ちょっとおしゃまな感じです。
「このお洋服、ファリス、とっても気に入ったの」
楽屋に戻ってきたファリスが、満足そうに言いました。
「高いわよ」
ローザリアとシルヴェーヌが、声を揃えて忠告します。
「あっ、いや、普段着の奴は、そんなに高くないから……」
何でもかんでもぼったくりにしないでくれと、モーダ氏が困ったように言いました。
●
「続いては、艶やかな異国のドレス。モデルは、フェリア嬢です」
ずっと迷っていたフェリアでしたが、なんとか衣装を決めたようです。直前のファリスを参考にして、ステージを左右に動いてポーズをとります。
彼女が着ているのは、深紅のチャイナドレスです。大胆に刺繍された金糸銀糸の吉祥図が、クリムゾンウェストの人々が見たこともないような動物や花を表していました。シルク特有の光沢が美しく、フェリアの美しい銀髪と共にきらびやかに輝いています。
大きく左右にあいたスリットからおしげもなく美脚を見せながら、フェリアが手に持った白い羽扇をひらひらさせます。どうやら、この感じが気に入ったようです。
適当なところでポーズを決めると、フェリアは満足気に楽屋へと戻っていきました。
●
「それでは、最後の作品です。グループでのコーディネートとなります。モデルは、三河嬢、園藤嬢、御崎嬢、他一名です」
「他一名って……、まあ、可愛い三人と比べたら、そうだよなあ……」
なし崩しにステージへと連れ出された祐が、ため息まじりにつぶやきました。無理矢理着せられた白いタキシード姿です。とりあえず、独りだけ浮いているのは確かです。
ことりは、自分の瞳と髪の色に合わせた紫色のドレスを着ています。ワンショルダーのティアードドレスで、流れるように重ねられた布地が、微妙な色合いの重ねを表現してとても上品です。
美桜は、深紅のゴスロリドレスです。こちらも、瞳の色に合わせたのでしょうか。黒のレースとのグラデーションが派手で、パニエでふくらんだスカートと共に、メリハリのあるボリュームを全体に与えています。黒薔薇の模様のあるストッキングも艶っぽく、短い手袋の手首を絞ったリボンは臙脂色でした。愛用の日傘を差した美桜は、ちょっと御満悦のようにも見えます。
汀は、白いエンパイアドレスです。ハイウエストの、ちょっと胸を強調したすらりとしたラインのドレスでした。一見するとシンプルですが、白い糸で美しい刺繍が胸元に施されています。パフスリーブは可愛らしいですが、全体的にはちょっと大人目な感じです。
「パフォーマンス……、何かしなきゃなの」
そう言うと、ことりが持ってきていたバイオリンを取りに戻ろうとしました。
「それは、また今度な」
慌てて祐が、小鳥を掴んで引き止めます。ことりの殺人バイオリンを免疫のない人々に聞かせるわけにはいきません。
「飲み物、飲みます?」
「それも、後々!」
いきなり、飲み物を取りに行こうとする美桜を、またしても祐が慌ててとめました。
まったく、気の休まる暇もありません。
「もう、勘弁してくれ……」
汀に助けを求めようとしましたが、彼女が台本を取り出すに至っては、全力でそれを奪い取りました。
もう、なんだか、祐が怪しい動きで女の子たちの身体に触っているようにしか見えません。
「早く終わりにしてくれ……」
必死に、司会者に助けを求めます。はたして、それが通じたのでしょうか……。
「それでは、デザイナーのモーダ氏、どうぞ!」
司会がモーダ氏を呼ぶと、それまでの衣装を着て全員がステージに現れました。会場から、大きな拍手があがります。
「ありがとうございます。それでは、ステキなモデルたちにも拍手を!」
自ら手を叩きながら、モーダ氏が全員を讃えました。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
---|
面白かった! | 7人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
- 零(ka0505)
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
It's show time! 黒の夢(ka0187) エルフ|26才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/10/17 00:19:50 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/16 22:34:34 |