ゲスト
(ka0000)
おおきに屋、託された願い
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/19 09:00
- 完成日
- 2014/10/26 20:54
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
おおきに屋のイルド兄さんの復活やでー!
前回はちょおしんみりなってしもたんやけど、しんみり続きはあかん!
俺のええとこは明るい所や! それがなくなったら何も残らんしな!
……って、誰が明るいだけの男やねん!
※※※
「……実は、仕事を頼みたいんや」
真剣な表情のイルドに話しかけられ、案内人は前回の事を思い出す。
故郷に赴いた時と同じ表情をしているせいか、また何かあったのだろうか、と少し心配になった。
「これ、集落まで運んで欲しいって頼まれとんのやけど、雑魔おるっぽいやろ?」
イルドの言葉に、案内人がその周辺を調べると、確かに雑魔退治の依頼が出ている。
いくら仕事があるからと言っても、一般人のイルドに雑魔のいる道を通りぬける事はできないだろう。
「どうしても届なあかんのや、ハンター紹介してほしいんやけどええ?」
「そちらの中身をご確認させて頂けますか?」
案内人の言葉に、イルドはビクッと肩を震わせる。
その態度が妙に怪しくて、変な物でも運ぼうとしているのでは、と案内人が疑いの眼差しを向けた。
「べ、別にええけど、女の子にはちょお刺激が強いかもしれへんで?」
「……刺激が強い? 意味の分からないことを――……っ!?」
イルドから渡された物を案内人が確認して、言葉を失う。
「な? 刺激が強かったやろ?」
そこに描かれていたのは女性の裸、しかも妙にリアルに描かれているため生々しさが半端ない。
「な、ななななな、何ですか! それは! そ、そんなはしたないもの……!」
「……これはな、男の……浪漫や」
ふ、と遠くを見つめて哀愁を漂わせているが、しょせんは(ピー)本である。
(こ、これを運ぶためにハンターを雇うなんて……)
これから仕事を受けるハンター達に案内人は同情せざるを得なかった。
リプレイ本文
●男の浪漫、それは――……
「運ぶのは、つまり……その、そういう類のものって事でいいんだよね? こっちにもそういうのがあるんだね、日本では18歳未満は購入できないんだけど、こちらでもそうなの?」
天竜寺 詩(ka0396)は苦笑しながら、イルドに問い掛けると「せやなー、男の浪漫は大人にならんと手にできひんもんやって思とるよ」と良い笑顔で答えられる。
「まぁ、色々な趣味の人……居りますし、迷惑掛けなければ……有りと……思いますがねぇ」
神杜 静(ka1383)も苦笑しながら呟く。
むしろ、その類の物を運ばされるハンターとしては苦笑しか出来ないのではないだろうか。
「私は……正直に言えば、このようないかがわしい物などには微塵の興味も湧かんのだがね」
「な、なんやて……!」
久延毘 大二郎(ka1771)がため息と同時に零した言葉に、真っ先に食いついたのはイルドだった。
「男の浪漫に興味を抱かないなど、つ、つまり、あんさんの恋愛対象はおt――……」
「イルド君、切り裂かれたいか?」
久延毘はイルドの言葉を遮りながら、にっこりと笑顔で告げる。その笑顔を見て、イルドは身の危険を感じたらしく、慌てて口を手で塞ぐ。
「しかし、対象は違えど情熱を持って浪漫を追い求めているのは私も同じ。イルド君、喜んで協力しようじゃないか」
「ありがとな! やー、依頼人も楽しみにしとるらしいんで、どないしよか悩んでたんや」
ハンター達がいれば安心やな! と言うイルドを横目に見ながら、イェルバート(ka1772)は小さなため息を吐いた。
(普通の届け物依頼兼雑魔退治の依頼だって思えばいいんだけど、届ける物がアレな物だから、気が抜けるっていうか、なんていうか……)
彼も『男の浪漫』について、男性なのだから分からなくもないらしいが、だからと言って、自分の全部をさらけ出してはしゃげるような人物でもないらしい。
いや、しかし今回のハンターの中に、すべてをさらけ出してはしゃいでいる者がいた。
「ひゃっはー! 最高っす! 素晴らしいっす! 男の浪漫っす! ぶぁっ、鼻血が……!」
そう、はしゃいでいるのは神楽(ka2032)だ。
今までのテンションが30%程度だったとすると、ぶっちぎりで1000%になっていると言っても過言ではないくらいのはしゃぎようだ。
「もっとないっすか!? エルフのクールビューティーとか! ドワーフの合法ロリとか! あ! 人間の色っぽい姉ちゃんでもいいっすよ!? 余ってたら俺にも売って欲しいっす!」
神楽はまくし立てるように言い、さすがのイルドも少々驚くほどだった。
「あいにくやけど、今回は依頼人の分しか仕入れてへんのや、次があったら真っ先に連絡するさかい、それで勘弁してもらえん?」
「もちろんっす! あ、ちなみにこれは学術的芸術的好奇心ってあってやらしい気持ちは一切ないっすよ!」
「……学術と芸術が汚されるような好奇心ですね、いえ、荷物の内容については私は見なかった事にしていますけど……荷物の護衛としか聞かずに依頼を受けた私の失敗です……」
サクラ・エルフリード(ka2598)は遠い目をしながら、哀愁を漂わせている。
確かに、堂々と荷物の内容提示で依頼を出せるようなものではなかったから、サクラが勘違いをして依頼を受けたのも分かる、運が悪かった、としか言いようがないくらいだ。
「卑猥な物は、男が生きる以上必要になる事は否定出来ませんからね」
やんわりとした口調で呟くのは藤田 武(ka3286)だった。
「私も聖職者である前に1人の男、リアルブルーにいた頃は、色々と妄想して過ごしていましたし、皆で写真を見て興奮していたものです」
うんうん、と藤田は頷きながら呟いた。
「あ、あんた……今、穏やかな表情でさらっと、とんでもない事を暴露したんちゃう?」
イルドもどこに突っ込めばいいのか分からないらしく、恐る恐る問いかけている。
「……とりあえず、男性にとっては必需品であるという事だけは分かりました。分かりましたから、本来の目的を終わらせましょう、早く依頼を達成させてしまいましょう……!」
この空気に耐えきれなくなったのか、サクラがスタスタと歩き始める。
彼女の後を追うように、イルド、そして他のハンター達も行動を開始し始めたのだった。
●いざ、男の浪漫を持って
「雑魔がいるって話だけど、どの辺にいるのかな? 大事な男の浪漫を運んでるんだもんね、警戒に警戒を重ねなくちゃ……! けど、これを手にした男の人を想像すると……うん、見事なほどに何の感慨も沸かないね!」
天竜寺の言葉に「何て事を言うっすか!」と神楽はクワッと目をかっぴらきながら叫ぶ。
「イケメンの絵や写真があったら欲しいっすよね? 男は、それが裸の姉ちゃんなだけっす!」
確かにそうかもしれないが『裸の姉ちゃん』という時点で、既にお察しレベルである。
「そういえば、その春画の山に、リアルブルー由来の物はあるかね? それも古い、数百年物」
久延毘が思い出したように問いかけると「リアルブルー由来のモンはないなぁ」とイルドが言葉を返す。
「そうか。その時代の春画は史料的、歴史的な価値が高い。此方にあれば、一度本物をお目に掛かりたいものだがね――……くく、つまり、今に残された過去の遺物から、同じく今に残る謎をひも解いていく……その繰り返しこそが我が浪漫! 分かるかね、諸君!?」
やや興奮気味に告げられた言葉に「つまり、あんたは若い子より熟女好みやいう事やな?」とイルドは見当違いの言葉を返していた。
「なっ、だ、誰がそのような事を言った!? 確かに遺物は好ましいが、それを恋愛対象にまで当てはめるのはいかがな物かと思うが……!」
「大丈夫っす! 人の好みはそれぞれっすから!」
「だから、私はそんな事など言っていないだろう!」
イルドの言葉に神楽まで入って来て、久延毘はひたすら否定するが、むきになって否定する所が怪しいと言われ、それ以上の言葉が言えなくなってしまう。
「イルドさん、荷物が落ちかけ――……うわぁっ! 女の子もいるんだから、こういうのをパッと晒しちゃだめだろ……! せめて違う本のカバーをかけてカモフラージュとか……!」
イェルバートが慌てて叫ぶと「……少年、お主、やり口を知っておるな?」とイルドからイラッとする口調で言われる。
「そういえば、私も無関係の本のカバーをかけてカモフラージュしていましたね。そういう仕方は此方でも変わりないようですね」
「ち、違いますよ! 僕は一般的な事を言っただけであって……! ちょっと! お願いだから、その生温い視線をやめて下さい……!」
生温い視線を向けられ、居た堪れなくなったイェルバートは手で顔を覆いながら叫ぶ。
「……あのー、あそこに……雑魔っぽいもの、いるんですけど……」
神杜が少し離れた所を指差す。
もちろん、他のハンター達も気づいているだろうと思ってはいたが、念のために言ってみた。
「……やれやれ……戦闘、苦手なんですよねぇ……自分は『デリンジャー』で、後方からの援護射撃に、なります……トドメは、お任せしますので……」
神杜は呟きながら『デリンジャー』を構え、3匹のうちの1体を狙って攻撃を行う。
他のハンター達も既に攻撃体勢に入っており、天竜寺、イェルバート、藤田の3名が護衛対象であるイルドの傍についた。
そして、神楽とサクラがイルドや荷物から離れ、雑魔に向かって駆けていく。
神杜、久延毘の2名は後方から攻撃をメインとするため、護衛対象から少し距離を取った位置から、それぞれの攻撃を始める。
「何はともあれ、雑魔を残しておくのは後々の問題になってもいけませんからね。可能ならここで殲滅できるように頑張りましょう」
サクラは神楽に向けて言葉を投げかける。
もちろん依頼は護衛任務という事は分かっているが、後からここを通る人のためにも雑魔を殲滅させておきたいという気持ちが強いようだ。
「これ以上先へは行かせませんよ……! ここで、このまま倒されてしまって下さい!」
サクラは『聖剣・アルマス』を振りかざし、雑魔に向かって斬り込む。
その際、別の雑魔からの攻撃を受けたが、彼女の勢いを止めるまでには至らず、サクラは無理矢理、持っていた武器を雑魔へとねじ込んだ。
「ひゃっはー! 喰らえ~っす!」
神楽も『クレイモア』を振りかざし『クラッシュブロウ』を使用しながら雑魔に攻撃を行う。
しかし、攻撃対象外の雑魔が神楽に向かい、無防備な体勢で攻撃を受けてしまう――という時、天竜寺の『ホーリーライト』が、神楽を狙っていた雑魔に当たった。
「おおっ、助かったっす!」
「ふふっ、男の浪漫を運んでいる時に現れた雑魔が狼……男は皆狼だっていうけど、雑魔も男の浪漫を狙ってやってきたのかな?」
天竜寺はおかしそうに笑いながら、再び『ホーリーライト』を繰り出す。
「傷を負った方がいらっしゃれば、私が『ヒール』で治療しますので……」
「了解っす! そん時にはよろしく頼むっすよー!」
藤田の言葉に答えながら、神楽は雑魔に斬りかかる。
「あっ! すみません! そちらに1体向かいました……!」
神楽とサクラの間をすり抜け、雑魔の1体が後衛&イルド達の元へとめがけて駆けてくる。
「くっ、依頼達成のためにも、邪魔はさせないよ」
イェルバートは『エレクトリックショック』を使用する。
すると、雑魔は雷撃を受け、麻痺により、少しの間動けなくなってしまった。
「このまま荷物を持って逃げるという手もあるけど、荷物と一緒に雑魔も運びました――……なんて事になったら最悪だからね、ここで倒させてもらうよ」
イェルバートは小さく呟きながら『オートマチックピストル』で射撃を行い続ける。
「さて、そろそろ終了が近いのだろうかね」
前衛で戦う2人に『ウインドガスト』を断続的に使用していた、久延毘が短く呟く。
雑魔が後衛の方に来てからの彼は『アースバレット』や『ウィンドスラッシュ』を使用して、雑魔がイルドや荷物の方に向かわないように攻撃を仕掛けていた。
「神楽さんやサクラさんの方も雑魔を倒したみたいだし、ここらでばっちり決めさせてもらうよ」
天竜寺は『ホーリーライト』で雑魔に攻撃を仕掛け、神杜の『ウィップ』が雑魔の足に絡まり、雑魔は転んでしまう。
もちろんその隙を逃すハンター達ではなく、ほぼ総攻撃を仕掛けながら最後の雑魔退治を終えたのだった――……。
●おおきに屋の依頼、終了!
「ありがとうございます! 俺、これが届くのを楽しみにしていたんです……!」
雑魔退治を終えた後、イルドとハンター達は依頼人の元へと向かい、真っ直ぐ見るのもはばかられる絵を依頼人に届けた。
「男の浪漫が手に入って、よかったね……!」
天竜寺が依頼人に言葉を投げかけると「はい!」と、物凄く良い笑顔で返事をされてしまい、天竜寺は少しだけ表情を引きつらせた。
「興味あるのは……仕方がないですよ? ただ……好奇心が強すぎると、わが身を滅ぼす事に……なりかねませんけど、ね……」
くすくす、と悪戯っぽく微笑みながら神杜は怖い言葉を呟いている。過去に何かあったのか、と問い掛けたくなるほどの物騒な笑みに、イルドも「……俺もほどほどにしよう」と呟いていた。
「確かに……お届けしましたが……これって、需要あるんでしょうかねぇ……マニアな人は、喜びそうですけど……」
神杜は気づいているのだろうか。
まさにその『マニア』な人が目の前に依頼人としているという事に。そしてその絵を見て、ひゃっはー、とテンション高く叫んでいたハンターが仲間にいるということに。
「私に言わせれば、こんな物にまで手をつけようとするとは……君達は一体何に飢えているのか、と聞きたくなるね」
久延毘もため息混じりに呟く。
「せや、彼女なんかに見つからんように別な本とかのカバーで隠しとった方がええで? あそこにいる子ぉからの助言や!」
「ちょっと! いつまでそのネタを引っ張るんですか……! 言っておきますけど、僕、そういう物を買った事も手にした事もありませんから……!」
イェルバートが慌てて叫ぶけど「わかっとるって、少年」と言いながら、イルドはポンとイェルバートの肩に手を置く。
(……む、無性に腹立たしくなるのは何で!?)
「イルドさん、イルドさん、リアルブルーには写真って映像を記録する技術があるっす! 写真は絵と違って一瞬で記録出来て、1度でも記録したらいくらでも簡単にコピーできるっすよ!」
「なんと! そないな便利なモンがあるん!?」
神楽の言葉に、イルドは驚いたように目を丸くしながら答える。
「つまり、この絵のモデルのねーちゃん達に写真のモデルになってもらえば、大量の……ぐふっ、な写真が出来るっす! そうなれば今みたいに1枚ずつ売るんじゃなく、写真で1冊の本が出来るっすよ! この男の夢、イルドさんに託していいっすか……!?」
神楽の言葉を聞き、女性陣はドン引きした表情を見せる。
「……任せるんや、俺は神楽くんの夢を継いで……立派な(ごにょごにょ)本を作るで!」
「ああいう物を運んでいる割に、妙に照れ屋な所があるんですね……」
ぽっ、と頬を染めて言葉を濁すイルドを見ながら、サクラは呆れたように呟く。
「……男の浪漫、ああいうのが浪漫、なんですかね……? 私には理解出来ません……」
「この辺は女性と男性の考え方の違い、としか言えませんねぇ」
サクラの言葉を聞きながら、藤田は苦笑しながら答えたのだった――……。
END
「運ぶのは、つまり……その、そういう類のものって事でいいんだよね? こっちにもそういうのがあるんだね、日本では18歳未満は購入できないんだけど、こちらでもそうなの?」
天竜寺 詩(ka0396)は苦笑しながら、イルドに問い掛けると「せやなー、男の浪漫は大人にならんと手にできひんもんやって思とるよ」と良い笑顔で答えられる。
「まぁ、色々な趣味の人……居りますし、迷惑掛けなければ……有りと……思いますがねぇ」
神杜 静(ka1383)も苦笑しながら呟く。
むしろ、その類の物を運ばされるハンターとしては苦笑しか出来ないのではないだろうか。
「私は……正直に言えば、このようないかがわしい物などには微塵の興味も湧かんのだがね」
「な、なんやて……!」
久延毘 大二郎(ka1771)がため息と同時に零した言葉に、真っ先に食いついたのはイルドだった。
「男の浪漫に興味を抱かないなど、つ、つまり、あんさんの恋愛対象はおt――……」
「イルド君、切り裂かれたいか?」
久延毘はイルドの言葉を遮りながら、にっこりと笑顔で告げる。その笑顔を見て、イルドは身の危険を感じたらしく、慌てて口を手で塞ぐ。
「しかし、対象は違えど情熱を持って浪漫を追い求めているのは私も同じ。イルド君、喜んで協力しようじゃないか」
「ありがとな! やー、依頼人も楽しみにしとるらしいんで、どないしよか悩んでたんや」
ハンター達がいれば安心やな! と言うイルドを横目に見ながら、イェルバート(ka1772)は小さなため息を吐いた。
(普通の届け物依頼兼雑魔退治の依頼だって思えばいいんだけど、届ける物がアレな物だから、気が抜けるっていうか、なんていうか……)
彼も『男の浪漫』について、男性なのだから分からなくもないらしいが、だからと言って、自分の全部をさらけ出してはしゃげるような人物でもないらしい。
いや、しかし今回のハンターの中に、すべてをさらけ出してはしゃいでいる者がいた。
「ひゃっはー! 最高っす! 素晴らしいっす! 男の浪漫っす! ぶぁっ、鼻血が……!」
そう、はしゃいでいるのは神楽(ka2032)だ。
今までのテンションが30%程度だったとすると、ぶっちぎりで1000%になっていると言っても過言ではないくらいのはしゃぎようだ。
「もっとないっすか!? エルフのクールビューティーとか! ドワーフの合法ロリとか! あ! 人間の色っぽい姉ちゃんでもいいっすよ!? 余ってたら俺にも売って欲しいっす!」
神楽はまくし立てるように言い、さすがのイルドも少々驚くほどだった。
「あいにくやけど、今回は依頼人の分しか仕入れてへんのや、次があったら真っ先に連絡するさかい、それで勘弁してもらえん?」
「もちろんっす! あ、ちなみにこれは学術的芸術的好奇心ってあってやらしい気持ちは一切ないっすよ!」
「……学術と芸術が汚されるような好奇心ですね、いえ、荷物の内容については私は見なかった事にしていますけど……荷物の護衛としか聞かずに依頼を受けた私の失敗です……」
サクラ・エルフリード(ka2598)は遠い目をしながら、哀愁を漂わせている。
確かに、堂々と荷物の内容提示で依頼を出せるようなものではなかったから、サクラが勘違いをして依頼を受けたのも分かる、運が悪かった、としか言いようがないくらいだ。
「卑猥な物は、男が生きる以上必要になる事は否定出来ませんからね」
やんわりとした口調で呟くのは藤田 武(ka3286)だった。
「私も聖職者である前に1人の男、リアルブルーにいた頃は、色々と妄想して過ごしていましたし、皆で写真を見て興奮していたものです」
うんうん、と藤田は頷きながら呟いた。
「あ、あんた……今、穏やかな表情でさらっと、とんでもない事を暴露したんちゃう?」
イルドもどこに突っ込めばいいのか分からないらしく、恐る恐る問いかけている。
「……とりあえず、男性にとっては必需品であるという事だけは分かりました。分かりましたから、本来の目的を終わらせましょう、早く依頼を達成させてしまいましょう……!」
この空気に耐えきれなくなったのか、サクラがスタスタと歩き始める。
彼女の後を追うように、イルド、そして他のハンター達も行動を開始し始めたのだった。
●いざ、男の浪漫を持って
「雑魔がいるって話だけど、どの辺にいるのかな? 大事な男の浪漫を運んでるんだもんね、警戒に警戒を重ねなくちゃ……! けど、これを手にした男の人を想像すると……うん、見事なほどに何の感慨も沸かないね!」
天竜寺の言葉に「何て事を言うっすか!」と神楽はクワッと目をかっぴらきながら叫ぶ。
「イケメンの絵や写真があったら欲しいっすよね? 男は、それが裸の姉ちゃんなだけっす!」
確かにそうかもしれないが『裸の姉ちゃん』という時点で、既にお察しレベルである。
「そういえば、その春画の山に、リアルブルー由来の物はあるかね? それも古い、数百年物」
久延毘が思い出したように問いかけると「リアルブルー由来のモンはないなぁ」とイルドが言葉を返す。
「そうか。その時代の春画は史料的、歴史的な価値が高い。此方にあれば、一度本物をお目に掛かりたいものだがね――……くく、つまり、今に残された過去の遺物から、同じく今に残る謎をひも解いていく……その繰り返しこそが我が浪漫! 分かるかね、諸君!?」
やや興奮気味に告げられた言葉に「つまり、あんたは若い子より熟女好みやいう事やな?」とイルドは見当違いの言葉を返していた。
「なっ、だ、誰がそのような事を言った!? 確かに遺物は好ましいが、それを恋愛対象にまで当てはめるのはいかがな物かと思うが……!」
「大丈夫っす! 人の好みはそれぞれっすから!」
「だから、私はそんな事など言っていないだろう!」
イルドの言葉に神楽まで入って来て、久延毘はひたすら否定するが、むきになって否定する所が怪しいと言われ、それ以上の言葉が言えなくなってしまう。
「イルドさん、荷物が落ちかけ――……うわぁっ! 女の子もいるんだから、こういうのをパッと晒しちゃだめだろ……! せめて違う本のカバーをかけてカモフラージュとか……!」
イェルバートが慌てて叫ぶと「……少年、お主、やり口を知っておるな?」とイルドからイラッとする口調で言われる。
「そういえば、私も無関係の本のカバーをかけてカモフラージュしていましたね。そういう仕方は此方でも変わりないようですね」
「ち、違いますよ! 僕は一般的な事を言っただけであって……! ちょっと! お願いだから、その生温い視線をやめて下さい……!」
生温い視線を向けられ、居た堪れなくなったイェルバートは手で顔を覆いながら叫ぶ。
「……あのー、あそこに……雑魔っぽいもの、いるんですけど……」
神杜が少し離れた所を指差す。
もちろん、他のハンター達も気づいているだろうと思ってはいたが、念のために言ってみた。
「……やれやれ……戦闘、苦手なんですよねぇ……自分は『デリンジャー』で、後方からの援護射撃に、なります……トドメは、お任せしますので……」
神杜は呟きながら『デリンジャー』を構え、3匹のうちの1体を狙って攻撃を行う。
他のハンター達も既に攻撃体勢に入っており、天竜寺、イェルバート、藤田の3名が護衛対象であるイルドの傍についた。
そして、神楽とサクラがイルドや荷物から離れ、雑魔に向かって駆けていく。
神杜、久延毘の2名は後方から攻撃をメインとするため、護衛対象から少し距離を取った位置から、それぞれの攻撃を始める。
「何はともあれ、雑魔を残しておくのは後々の問題になってもいけませんからね。可能ならここで殲滅できるように頑張りましょう」
サクラは神楽に向けて言葉を投げかける。
もちろん依頼は護衛任務という事は分かっているが、後からここを通る人のためにも雑魔を殲滅させておきたいという気持ちが強いようだ。
「これ以上先へは行かせませんよ……! ここで、このまま倒されてしまって下さい!」
サクラは『聖剣・アルマス』を振りかざし、雑魔に向かって斬り込む。
その際、別の雑魔からの攻撃を受けたが、彼女の勢いを止めるまでには至らず、サクラは無理矢理、持っていた武器を雑魔へとねじ込んだ。
「ひゃっはー! 喰らえ~っす!」
神楽も『クレイモア』を振りかざし『クラッシュブロウ』を使用しながら雑魔に攻撃を行う。
しかし、攻撃対象外の雑魔が神楽に向かい、無防備な体勢で攻撃を受けてしまう――という時、天竜寺の『ホーリーライト』が、神楽を狙っていた雑魔に当たった。
「おおっ、助かったっす!」
「ふふっ、男の浪漫を運んでいる時に現れた雑魔が狼……男は皆狼だっていうけど、雑魔も男の浪漫を狙ってやってきたのかな?」
天竜寺はおかしそうに笑いながら、再び『ホーリーライト』を繰り出す。
「傷を負った方がいらっしゃれば、私が『ヒール』で治療しますので……」
「了解っす! そん時にはよろしく頼むっすよー!」
藤田の言葉に答えながら、神楽は雑魔に斬りかかる。
「あっ! すみません! そちらに1体向かいました……!」
神楽とサクラの間をすり抜け、雑魔の1体が後衛&イルド達の元へとめがけて駆けてくる。
「くっ、依頼達成のためにも、邪魔はさせないよ」
イェルバートは『エレクトリックショック』を使用する。
すると、雑魔は雷撃を受け、麻痺により、少しの間動けなくなってしまった。
「このまま荷物を持って逃げるという手もあるけど、荷物と一緒に雑魔も運びました――……なんて事になったら最悪だからね、ここで倒させてもらうよ」
イェルバートは小さく呟きながら『オートマチックピストル』で射撃を行い続ける。
「さて、そろそろ終了が近いのだろうかね」
前衛で戦う2人に『ウインドガスト』を断続的に使用していた、久延毘が短く呟く。
雑魔が後衛の方に来てからの彼は『アースバレット』や『ウィンドスラッシュ』を使用して、雑魔がイルドや荷物の方に向かわないように攻撃を仕掛けていた。
「神楽さんやサクラさんの方も雑魔を倒したみたいだし、ここらでばっちり決めさせてもらうよ」
天竜寺は『ホーリーライト』で雑魔に攻撃を仕掛け、神杜の『ウィップ』が雑魔の足に絡まり、雑魔は転んでしまう。
もちろんその隙を逃すハンター達ではなく、ほぼ総攻撃を仕掛けながら最後の雑魔退治を終えたのだった――……。
●おおきに屋の依頼、終了!
「ありがとうございます! 俺、これが届くのを楽しみにしていたんです……!」
雑魔退治を終えた後、イルドとハンター達は依頼人の元へと向かい、真っ直ぐ見るのもはばかられる絵を依頼人に届けた。
「男の浪漫が手に入って、よかったね……!」
天竜寺が依頼人に言葉を投げかけると「はい!」と、物凄く良い笑顔で返事をされてしまい、天竜寺は少しだけ表情を引きつらせた。
「興味あるのは……仕方がないですよ? ただ……好奇心が強すぎると、わが身を滅ぼす事に……なりかねませんけど、ね……」
くすくす、と悪戯っぽく微笑みながら神杜は怖い言葉を呟いている。過去に何かあったのか、と問い掛けたくなるほどの物騒な笑みに、イルドも「……俺もほどほどにしよう」と呟いていた。
「確かに……お届けしましたが……これって、需要あるんでしょうかねぇ……マニアな人は、喜びそうですけど……」
神杜は気づいているのだろうか。
まさにその『マニア』な人が目の前に依頼人としているという事に。そしてその絵を見て、ひゃっはー、とテンション高く叫んでいたハンターが仲間にいるということに。
「私に言わせれば、こんな物にまで手をつけようとするとは……君達は一体何に飢えているのか、と聞きたくなるね」
久延毘もため息混じりに呟く。
「せや、彼女なんかに見つからんように別な本とかのカバーで隠しとった方がええで? あそこにいる子ぉからの助言や!」
「ちょっと! いつまでそのネタを引っ張るんですか……! 言っておきますけど、僕、そういう物を買った事も手にした事もありませんから……!」
イェルバートが慌てて叫ぶけど「わかっとるって、少年」と言いながら、イルドはポンとイェルバートの肩に手を置く。
(……む、無性に腹立たしくなるのは何で!?)
「イルドさん、イルドさん、リアルブルーには写真って映像を記録する技術があるっす! 写真は絵と違って一瞬で記録出来て、1度でも記録したらいくらでも簡単にコピーできるっすよ!」
「なんと! そないな便利なモンがあるん!?」
神楽の言葉に、イルドは驚いたように目を丸くしながら答える。
「つまり、この絵のモデルのねーちゃん達に写真のモデルになってもらえば、大量の……ぐふっ、な写真が出来るっす! そうなれば今みたいに1枚ずつ売るんじゃなく、写真で1冊の本が出来るっすよ! この男の夢、イルドさんに託していいっすか……!?」
神楽の言葉を聞き、女性陣はドン引きした表情を見せる。
「……任せるんや、俺は神楽くんの夢を継いで……立派な(ごにょごにょ)本を作るで!」
「ああいう物を運んでいる割に、妙に照れ屋な所があるんですね……」
ぽっ、と頬を染めて言葉を濁すイルドを見ながら、サクラは呆れたように呟く。
「……男の浪漫、ああいうのが浪漫、なんですかね……? 私には理解出来ません……」
「この辺は女性と男性の考え方の違い、としか言えませんねぇ」
サクラの言葉を聞きながら、藤田は苦笑しながら答えたのだった――……。
END
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 7人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
守れ!男の浪漫! 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/10/18 22:15:35 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/14 00:14:58 |