雨中襲撃

マスター:四方鴉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2014/10/21 07:30
完成日
2014/11/28 18:27

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●廃村の影
 歪虚との戦いに巻き込まれ、人々が生活を放棄した村がそこにはあった。
 激しい戦いに打ち壊された住居の壁、焼け落ち朽ち果てた鶏舎や崩れた井戸、抉り取られた土壌は風雨で崩れ窪地を成し、痛々しい戦いの傷跡を今に残している。
 住人を失い、ただ朽ち果てるだけの村。
 周辺地域から歪虚の脅威は去り、今は朽ちるもかつて生活のあった村。
 一から村を起こすよりは復旧させる方がコストも低く、生活基盤を作り直す事は可能と判断され人々が戻る事となったのだが、既にこの村には招かれざる住人達が潜んでいた。
 それは、この村の生活を人々が放棄する原因となった存在、歪虚である……


 最初の遭遇は、村の現状を調べる為に訪れた数人の男女だった。
 崩れた家々の影から、雑草生い茂るかつての畑から、逃げた先の広場からと多方面から襲撃され負傷、命からがら逃げ帰る事に成功する。
 こうなればハンターに頼むより道は無く、数名のハンターがチームを組み歪虚撃破を目標に村へと入るが折からの悪天候、視界不良の中での戦いを余儀なくされたのだ。

「クソッ、こうも視界が悪いとどうしようもないぞ」
「文句を言うな、これでも……ぐおっ、遠距離からだと!?」
 降りしきる雨の中、密集陣形を組み上げ村を探索していたハンター達であったが突如飛来した銃弾に貫かれ一人が負傷、不意打ちを受け守りを固める。
 だが、大まかな位置を把握したのか遠方より放たれる数多の銃弾はハンター達の身体を傷つけ、雨粒を弾き飛ばし、地表スレスレから放たれた鋭い爪の一撃は前衛を務める者の生命力を容赦なく奪っていく。
 負けじとハンターも応戦、しかしながら悪天候と視界不良が足枷となり有効打は少なく、ぬかるみに足を取られた所への攻撃という不利な状況から消耗は増大、結果的に撤退を余儀なくされていたのだ。
「無理だ、撤退する。あんたらもそう思うだろう?」
「ああ、報酬分は働いたさ、お釣りが出るくらいだ」
 攻撃の合間を見計らい、傷ついた仲間を庇いつつの撤退戦。
 追い討ちの為に放たれた砲弾が地面を抉り、立ち昇る巨大な水柱を背にハンター達は撤退を完了していた……



「ミッションの概要を説明します。依頼内容はとある廃村、そこに住み着いたと思われる雑魔の撃破です。
 敵の総数は不明、個々の能力はそれほど高いとはいえませんが現場は続く天候不順による視界不良、物陰や茂みからの不意打ちを多用するその戦闘スタイルはそれなり以上の脅威となるでしょう」
 集まったハンターを前に説明を開始する受付嬢。
 いつものハイテンションではなく今回は嫌みったらしい言い回しにチャレンジ。キャラ換えを試みているのだろう。
 彼女が提示した情報には既に廃村となった村の地図と一度交戦に当たったハンターの報告、そして襲撃を受けた人々の証言が取り纏められていた。
「どうやら、敵は村の各所に分散しているようです。侵入した直後には攻撃せず、小賢しい事にある程度踏み込んだところで襲撃を仕掛けるのでしょう。
 先に依頼に当たったハンター達は纏まって進軍、その間に各所にいた雑魔が集結し一斉攻撃を受けたと推測できます。
 これを避けるため、皆さんには同時多方面からの攻撃を仕掛けていただく事になります」
 総数不明、分散し布陣し遠距離攻撃を主体とする者と格闘攻撃を主体とする者。
 下手に纏まって進軍すれば地形を把握した敵の事、容易く包囲攻撃されることが予想された。
 ならば、集結前に各個撃破を狙う多方面からの攻撃というわけだ。
「相手は視界不良の中、ハンターより先んじて攻撃を仕掛けてきました。何らかの索敵方法を有していると推測されます。
 先に言ったとおり現場は天候不順という悪条件、皆さんだけでは荷が重い可能性もありますので、協力者としてハンターが数名控えています。
 協力者無くとも大丈夫と仰るなら彼らは戦闘に参加せず後始末を行う事になりますが、無理はしないほうが良いのでは? 私からも、強く協同をお奨めします」
 降りしきる雨の中、敵は此方を何らかの手段で察知。
 先手を取って放たれた銃撃は光源として松明を持っていた者を重点的に狙ってはいたが、松明から離れた者も大まかな狙いではあるが攻撃されるという展開。
 灯りや視覚以外でおおよその狙いをつけてきたという事が推測される中、複数方向からの襲撃だ。
 集まったハンター以外にも数名、それなりのハンターは雇われ状況に応じて作戦を行う事になるという。
「説明は以上となります。依頼主だけでなく多方面へ皆さんの実力を示すには良い機会、悪い話では無いと思いますよ?」
 そこまで言うと彼女は取りまとめられた資料をハンターに託し、説明を終了。
 詳細不明、動じた方面からの襲撃という少々厄介な依頼へと一行を送り出すのであった。

リプレイ本文

●驟雨の中に佇むは
「ちぇー、覚醒後の自慢の毛並みが雨でグッショリっす……」
「ふー……雨、ゆっくり、休みたい。でも、まず、やつら、倒してからだな!」
 覚醒、そして広がる獣の毛。
 雨に濡れべたりと肌にはりつく不快感にげんなりしつつフューリ(ka0660)がとぼとぼ歩く隣で拳に力を込め月(ka3244)が言葉を発する。
 村に近づくにつれ小雨だった雨はその激しさを増し、進む面々の足取りも重くなるが成すべき事は成さねばならない。
「敵の数も正体も不明……しかも足場は抜かるんで視界も悪い……楽な仕事ってわけじゃなさそうだが……やるしかねぇか!」
「相手が有利、面倒そうですがそれをひっくり返すのも楽しそうですね」
 右の拳を左手に。パシッと打ち付け気合を入れるリック=ヴァレリー(ka0614)とは対照的に、落ち着き払った椥辻 ヒビキ(ka3172)。
 3方向からの同時攻撃、彼ら4人は廃村の東側から。
 南側には共にソサエティにて集った別の4人が、北側には別途依頼された4人のハンターが向かい、戦いの時を待っている事だろう。
 暫しの沈黙、慎重に歩を進めようやく耕作地が見えてきた時その変化は訪れた。
「ッ……! 北側から砲音? 派手に始めたみたいだな」
「そうっすね。じゃ、こっちも行くっすよ!」
 雨音に紛れ聞こえた轟音、それは砲撃を放つ際に生じる重低音。
 いち早く察知したリックが声を上げれば、同時にフューリが地を駆ける。
 集結を許さぬ同時攻撃、ハンター達の猛攻が始まろうとしていた。


●南方戦線
「おっとぉ、北側じゃ派手にやってるね。しかしこの雨きっついなぁ……止む気配ないし、風があっても臭いも気配も運んでくれないじゃない……」
「あんまり良い状況ではないわな……はあ、嫌な予感が……するわなぁ……」
 響く砲音、それを聞きとめたレベッカ・アマデーオ(ka1963)と真田 八代(ka1751)が言葉を交わす。
 双方この雨に辟易、雨避けの外套に包まれても尚感じる不快感からストレスを溜める八代であったが既に北方で戦闘開始。
 感情的にならぬよう心落ち着け後方警戒、横に立つレベッカも嫌な気配が無いか見えてきた住居跡、遮蔽物にするにはどう移動するかを勘案しつつ歩を進める。
「一方的に攻撃される、か……お互い見える、お互い見えない……と言う二通りの解法があるが。はてさて」
 ふっと呟きロイド・ブラック(ka0408)が遮蔽物の影へと移動、周囲を警戒しつつ手持ちのランプを崩れた壁にぶら下げる。
 視覚以外の探知手段を持つと推測、手段は分からぬが工夫をすれば妨害は出来ると彼は考え、複数箇所にランプを設置。
「……嫌な気配だ。そろそろ来そうだな」
 その間に周囲を警戒、最前列を進んでいたユルゲンス・クリューガー(ka2335)が警告を。
 直後に響く発砲音。風雨の中で輝く銃口、遠方に見えた光は3つ。
 着弾地点はロイドの設置したランプ、そして後方、援護を前提とした八代とレベッカを狙い放たれていた。
 壁を抉り、雨粒弾き八代に直撃する銃弾。
 しかしながら遠方、それに大まかな狙いだったのか防御の高い胴部に命中した事で損害は軽微。
 反対に、発砲炎から相手の居場所を特定するもユルゲンスは小さな違和感を感じていた。
(ロイドの仕掛けたランプは光源、故に分かる。だが……何故最も近い俺ではなく、八代とレベッカを狙った?)
 クレイモアを虚空に一振り。
 風音と共に雨粒が砕け、彼の纏う甲冑が数多の水滴を弾き飛ばす。
 暫しの静寂、水溜りに出来る波紋を凝視し敵の接近に備えれば、大きな波紋が雨にて生じた波紋を打ち消す。
 来たか、と身構えたユルゲンス。しかしながらその影は彼の横を駆け抜け一直線にロイドに向かう。
 ここにきて彼の違和感は一つの疑念へ、それを確かめるべく地を蹴り先ほど走り抜けた影を追撃。
『ギッ!?』
 接近に気付いたのが遅かったか、ロイドに肉薄した巨大トカゲに叩きつけられたユルゲンスのクレイモア。
 尻尾を切断、鮮血が舞い散り直後に走るロイドが生んだ光の刃。
「どうしてこっちに来たんだか。まあ、連携させてもらったよ」
 不敵に笑った彼の斬撃は袈裟懸けに振り下ろされた鋭い一撃。
 頭部を斬られ、激痛に叫びつつ雑魔は慌てて後退し雨粒の中へと逃げて行く。
 遮蔽物を利用しての戦闘、その障害となる近接タイプの迎撃に成功したが直後に聞こえる発砲音、それは遠方から相手を倒さんとした雑魔の銃撃。
「っと、面倒だね。暫く隠れるよっ!」
 レベッカが声に従い残る3名も廃墟の影へと避難、その間にユルゲンスが感じた疑念を近くに居た八代、ロイドへと伝えていた。
「なるほど……金属鎧のクリューガー氏を認識できず、此方を認識したのなら」
「体温を見ての探知、ってのが当たりか。となれば、俺達が派手にやれば」
「ユルゲンスが回りこめる、ってワケね。いいじゃん、それで行こうよ、近接潰してからの鬼ごっこより楽しそうだしさ」
 情報整理、敵の性質を判断する中近づくレベッカも情報把握。
 即席で作戦を組み上げ、一気に攻めるべく動き出す。


 暫しの静寂、強まった雨が崩れつつあった住居の外壁にぶつかり音を奏で、幾つか設置されたランタンがその様子を照らし出す。
 銃撃、砲撃はハンター達が物陰に潜んだ事で停止、地を這う影が雨粒を弾き廃墟の中へと入っていく。
 朽ちた床、そこに響く湿った足音。
 鎌首を左右に揺らし、内部の様子を窺いながら進む巨大なトカゲ、しかしその進軍を止める攻撃が成されていた。
「音がしてるんだよ、足音がさ!」
 壁の裏側、光る閃光。
 一筋の光線がトカゲの横っ腹へと突き刺さり、痛みに身をよじった瞬間飛び出すレベッカ、その手に光るは一本のダガー。
 反転しつつ振るわれたトカゲの豪腕、そこより伸びる爪をダガーでいなし懐に入れば腕の付け根に突き立てる。
「おっと、こっちからも懐に飛び込ませてもらうよ」
 同時に飛び出す影一つ。
 八代が機械仕掛けのバスタードソード、アルケミックギアブレイドに電気を湛え反対側から切り裂けば光り輝く軌跡が走る。
 その斬撃、電撃を纏った一撃は雑魔の鱗を焼き焦がし反撃を封殺。
 細かく痙攣する身からレベッカはダガーを引き抜き、逆手に持ち替え体重を乗せて突き刺せば同時に振るう八代の一閃。
 二度、三度と鱗を引き裂く猛攻の果て、のたうち回った雑魔はその動きを止めていた。
 廃墟に侵入した同胞、その断末魔を聞いたのは雨中3体の人型雑魔。
 戦場に響くは降り付ける雨の音、ただそれだけ。
 仲間の死を実感、仲間を待つべきか自分達が逃げるか逡巡するが、その躊躇いこそが致命的な隙を生じる。
 強烈な悪寒、それを感じゆっくりと一体の雑魔が首を回し後ろを見れば、一つの影が剣を構え鎮座する。
「貴様の腕をもらうぞ!」
 響く声はユルゲンス、グレートヘルムのスリットから眼光鋭く雑魔を睨み、地を蹴り反応できぬ相手に肉薄。
 咄嗟に構えた左腕、砲を放つも砲弾は外れ遠方に着弾、雨粒弾き振り下ろされたクレイモアがその腕を叩き切る。
 さらに一振り、踏み込みながら振るわれた斬撃と右腕からの銃弾が交錯、驟雨の中に一瞬の煌きが舞い踊り、両者の姿を照らし出す。
 上体沈ませ踏み込むユルゲンス、その突撃を側面に飛び退きつつ発砲、追撃凌ぐ雑魔の攻防。
 さらには残る2体の雑魔も銃と化した右腕を構え、数多の銃弾を吐き出すがそれは自分達の姿をハンター達へと知らせる愚行となる。
「さて、そちらの動きは丸見えだがどう出る?」
 雨を苦にせず地を駆けるロイド、注意が完全に逸れていた雑魔の懐に走り込み、拳を叩き付ければ凄まじい電圧が体内へと流れ込む。
 まともな反撃、それすら出来ず行動不能に陥れば、続けて飛来する二筋の光。それは八代とレベッカの機導砲。
『グガッ!?』
 唸り声と共に鱗が焼け焦げ、タンパク質が焦げた不快な臭いが周囲に満ちる。
 だらりと下がった両腕、そこを狙い大上段から振るわれたユルゲンスの大剣が右腕を、左方に回りこんだロイドの輝く光の剣が左腕を切り落とす。
 激痛に苛まれ、目を見開いた雑魔が最後に見た光景は。
 自身を見据えたレベッカ、彼女の放った光の奔流が頭部に迫る強烈な光であった。
「見える敵は残り2体、下がったみたいだけど、懐に飛び込むかな」
「ま、砲ぶっ放すなら異音も聞こえるし丸見えだけどね」
 八代とレベッカが言葉を交わし、前線に立つロイド、ユルゲンスと合流。
 一体を集中攻撃、その間に急ぎ距離取る雑魔であったがその主力は既に無く、大勢は決していた。
「さて、残りは敗残兵といった所か」
「東側への連絡は完了したよ。では、仕上げといこうかな」
 呼吸を整えたユルゲンス、敵の特性を別の場所にて戦う仲間へと伝えたロイド。
 其々が得物を構え、数を減じた雑魔討つべく再度、地を駆けていた。


●東方戦線
「なるほど、温度で見てたってワケか」
「炎、熱い。茂み、燃やせば、見えなく、なる」
 地面に伏せ銃弾をやり過ごし、仲間からの情報を伝えるリックと応じた月。
 木陰に立てた松明へと月が駆け、銃撃された茂みに向けて投擲する。
 長期の雨にて濡れそぼった雑草は燃える事は無いが、近場に炎という熱源が生じれば熱源探知の精度は下がる。
 妨害を嫌ってか2つの影が茂みより飛び出すも、それを狙って動くはフューリ。
「不利なことばっかだったっすけど、チャンスは逃がさないっすよー!」
 逆五角形、青き鱗の盾翳し一直線に影へと肉薄、片刃の短剣が引き抜かれれば、トカゲ雑魔の豪腕と激しく交錯。
 鱗引き裂く感触と共にフューリの腕には鋭い痛み、互いの腕に傷付けつつも彼は茂みの中へその身を沈め反転、トカゲ雑魔も身体を捻る。
「視えました。ならば射抜くのみ、ですね」
 その動き、逃さず弓を引き絞るのはヒビキ。
 降りしきる雨の中、放り込まれた松明の光で照らされ淡く浮かぶその姿。しかしそこに『在る』という事さえ分かれば、単に銃撃の光に反撃するのとは雲泥の差、高精度での攻撃が可能となる。
 雨濡れ、滑りやすくなったロングボウを握りこみ、自身の体を巡るマテリアルを矢に込め手を離す。
 ビィンと弦が音を響かせ、放たれた矢がトカゲの腕部に突き刺さる。
 流れ出た体液が雨に流され、水溜りに新たな色彩を加える中さらにもう一本の矢がトカゲの身体へと刺さっていた。
「倒せる、時に、倒す。追い討ち、今!」
 矢の軌跡、その跡を追えば先に居たのは泥濡れることを気にせず、片膝を地面に付けた月が佇む。
 松明を茂みに投げた直後に地面を転がり泥を被った彼女の体表温度は低下。熱源探知による索敵から逃れた事とフューリが気を引き付けた事、この二点が重なりトカゲの認知外からの攻撃を仕掛けていたのだ。
 二度、三度と続けざまに矢を番え放てば、別方向よりヒビキも合わせて矢を放つ。
 幾本もの矢を受けつつもトカゲは反転、探知できたヒビキの方へと進軍するもそれを許さぬフューリの突撃。
「へっへー、狼の牙のお味はいかがってね!」
 身体に宿すは祖霊の力、覚醒した彼が狼の牙、耳、尾を生やすのに対応した狼の力。
 大きく弧を描きつつ振り下ろされたその斬撃、トカゲの首へと吸い込まれた一撃は鎌首を切り飛ばし、一体目の雑魔はその動きを止めていた。
「やるな、フューリ! じゃ、こっちもいくぜ!」
 同刻、放たれる銃弾を盾で受けつつ前進するリックは銃撃から出る発砲炎、それを頼りに銃撃雑魔の位置を特定。
 接近戦に勝機を見出し進むリックに対し、近づかれまいとする雑魔は左腕を突き出し砲撃体勢。
 途切れた銃声、一拍置かれて響く轟音、吹き上がる水柱。
 だが、次に雑魔の目に飛び込んできたのは衣服の一部が破れつつも、水柱を掻き分け自身に迫るリックの姿。
「一筋縄じゃいかねぇけど……これで、どうだ!」
 肉薄、そして力強く大地を踏みしめ、大上段から振り下ろされたカッツバルゲル。
 攻撃の刹那、攻撃こそ至上とす彼の知己たるバルバロス(ka2119)の思念が武器へと宿り、その力は大いに上昇。
 咄嗟に翳した左腕の砲、それごと胴部を叩き切り、夥しいまでの体液を撒き散らしながら人型雑魔は大地へと倒れ伏していた。
「まだ、次、くるぞ!」
 敵の撃破、しかしながら第二波が来た事を告げる月の声。
 雨の中に光る砲煙、直後に響く轟音だが、事前に察したハンターは飛び退く事で砲撃を回避。
「威力はあっても、目立てば反撃を受けますよ。不用意に動く必要はありません」
 フッと微笑みヒビキが呟き、弓へと己のマテリアルを流し込む。
 マテリアルの力を持って通常以上に射程を延ばしたその一矢、先手を取ったが故に自らの居場所を知らしめた雑魔にとっては想定外の距離。
 胴部に深々と矢が刺さり、武器化した腕が災いして引き抜くことも不可能。
「次の一発、撃たせないっすよー!」
 反撃を許さず突っ込むフューリ、狼の祖霊、その力を身に宿し素早く地を駆け一気に接近。
 闇雲に放たれた銃弾、眼球目掛け飛来する弾丸を顔を傾けやり過ごし、翳した盾が胴部に向かう銃弾を防ぎきる。
「狼って、しつこくしぶとく持久戦を挑む事もあるんすよ」
 ニヤリと笑い、銃撃雑魔の右側面に回りこむよう大きく跳躍。
 左腕部、小型砲の射角外に逃れる事で砲撃を阻止し、旋回しつつ放たれた銃弾を盾にて凌ぐ。
「んでもって、僕も持久力にはちょーっと自信あったり」
 そのまま旋回、右側に回りこみつつ距離を詰めナイフを一閃、時間をかけ隙を窺った一撃が人型雑魔の脇を切り裂き、右腕の機能を奪う。
「隙、だらけ、今!」
「学習能力は無い様で。これでチェックメイトです」
 更には、銃撃にて自らの場所を示した事で月とヒビキが敵の位置を正確に把握。
 ギリリと通常以上にしなった弓から放たれる矢が胸部と腹部を貫き、雑魔は倒れ派手に水飛沫を上げるのだった。
「よし、押し込んでるな……このまま……っておわぁ!?」
 優位な戦況、しかしながら眼前を横切る黒い影。それを見たリックが思わず悲鳴を上げる。
「おい……冗談だろ……マジかよ……!?」
 ゴキブリ嫌いなリック、そんな彼の目に映ったのは巨大なゴキブリ。
 あろう事か羽根にて飛翔、脂ぎった身体は雨など苦にせず触角を振り回しながらリックに迫る。
「うおおお!? こっちくんなぁ!!」
 いつも以上の力が篭った振り下ろし、すれ違い様に触角が身体を打つも残る一本は虚空を舞う。
 修羅の如き形相で追撃、その光景に仲間は若干引きつつも援護、雑魔は瞬時にバラバラに解体されてしまった……


 激しき騒音は消え、そして村の中央には12の人影。
 縁深き者達は互いの無事を喜びあい、初見なる者は互いの武を労う。
 廃村に潜んだ脅威は去り、降り付ける雨も止む。
 いずれはこの村も、かつての活気を取り戻すのだろう。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 4
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • フェイスアウト・ブラック
    ロイド・ブラックka0408
  • ケンプファー
    ユルゲンス・クリューガーka2335

重体一覧

参加者一覧

  • フェイスアウト・ブラック
    ロイド・ブラック(ka0408
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 一日パパ
    リック=ヴァレリー(ka0614
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 紅色のにぎやかおおかみ
    フューリ(ka0660
    人間(紅)|16才|男性|霊闘士
  • ファランクス
    真田 八代(ka1751
    人間(蒼)|17才|男性|機導師
  • 嵐影海光
    レベッカ・アマデーオ(ka1963
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • ケンプファー
    ユルゲンス・クリューガー(ka2335
    人間(紅)|40才|男性|闘狩人
  • チェックメイトです
    椥辻 ヒビキ(ka3172
    人間(蒼)|20才|女性|猟撃士

  • 月(ka3244
    人間(紅)|17才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談
ロイド・ブラック(ka0408
人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/10/20 13:29:31
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/20 00:27:19