ゲスト
(ka0000)
【界冥】ブルートフォースアタック
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/04/03 22:00
- 完成日
- 2017/04/12 00:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「カスケード。お前のことだから全て見ていたのだろう」
エバーグリーンの都市・セントラル中心部。二股に別れたビルの残骸の中。
そこには厳然とそびえ立つ神霊樹の姿があった。いや、その樹には様々なパーツが取り付けられている。これが“サーバー”というものなのだろう。
その場所で黙示騎士の一人、ラプラスはそう語りかけた。その言葉に答える声が響き渡る。
「見てたに決まってるじゃーん! アッヒャヒャヒャヒャ!」
甲高い笑い声がビルに、セントラル全体に木霊した。
●
「パーツの解析結果じゃが……」
トマーゾはナディアに向けてそう話し始める。前回、ハンター達がセントラルに偵察した際に手に入れた自動兵器の残骸。セントラルに踏み込んだ際に襲ってきたもののそれである。そのパーツをナディアはトマーゾに送り解析を依頼していた。その結果はと言うと。
「特に変わったことは無いな」
「なんじゃ、無いのか」
「いや、無いということがわかった。これは重要じゃぞ」
頭にハテナマークをいくつも浮かべるナディアにトマーゾは説明を続ける。
「お主らの言うにはこの自動人形、奇妙奇天烈な動きで襲ってきたようじゃないか。普通自動兵器はそのような行動は取らん」
「そりゃそうじゃろうが……」
「となると改造を施した場合や歪虚化している場合などが考えられるのじゃが、このような場合改造の痕跡が見つかったりそもそもパーツが残らなんだりと何らかの変化があるはずじゃ。じゃがそうではない。これが意味することは……」
「意味することは……」
「何者かが直接操作しとったのじゃろう」
その者の名をハンター達は知っていた。それこそがカスケードだった。
●
「ちょいちょいっとおちょくって見たんだけど慌てふためく姿が面白いの面白くないのって!」
「……カスケード、またそれか」
ラプラスは表情を変えず淡々とそう口にする。
「彼らはあなたのことももう知っている。その様なふざけた態度では何が起こるかわからんだろう」
「何が起こるかわからないのが楽しいんじゃーん。……って俺っちのことアイツらに伝えちゃったわけ?! もう、何してんのよラプラスちゃーん!」
「それがフェアというものだろう」
「フェアかも知んないけどそれじゃ裏かけないでしょ? 俺っちは裏をかいて相手を唖然とさせたまま倒すのが大好きなんだからさぁ」
ラプラスの言葉にカスケードはそうまくし立てた。
「まあいいよ。今度は俺っち自ら相手してやってビックリさせちゃおっかな。いやぁ、どんな反応するか楽しみ、超楽しみ!」
その言葉を聞きながらラプラスは立ち去る。その時彼女は一言こう漏らした。
「ここはカスケードに任せる他無いか」
「カスケード。お前のことだから全て見ていたのだろう」
エバーグリーンの都市・セントラル中心部。二股に別れたビルの残骸の中。
そこには厳然とそびえ立つ神霊樹の姿があった。いや、その樹には様々なパーツが取り付けられている。これが“サーバー”というものなのだろう。
その場所で黙示騎士の一人、ラプラスはそう語りかけた。その言葉に答える声が響き渡る。
「見てたに決まってるじゃーん! アッヒャヒャヒャヒャ!」
甲高い笑い声がビルに、セントラル全体に木霊した。
●
「パーツの解析結果じゃが……」
トマーゾはナディアに向けてそう話し始める。前回、ハンター達がセントラルに偵察した際に手に入れた自動兵器の残骸。セントラルに踏み込んだ際に襲ってきたもののそれである。そのパーツをナディアはトマーゾに送り解析を依頼していた。その結果はと言うと。
「特に変わったことは無いな」
「なんじゃ、無いのか」
「いや、無いということがわかった。これは重要じゃぞ」
頭にハテナマークをいくつも浮かべるナディアにトマーゾは説明を続ける。
「お主らの言うにはこの自動人形、奇妙奇天烈な動きで襲ってきたようじゃないか。普通自動兵器はそのような行動は取らん」
「そりゃそうじゃろうが……」
「となると改造を施した場合や歪虚化している場合などが考えられるのじゃが、このような場合改造の痕跡が見つかったりそもそもパーツが残らなんだりと何らかの変化があるはずじゃ。じゃがそうではない。これが意味することは……」
「意味することは……」
「何者かが直接操作しとったのじゃろう」
その者の名をハンター達は知っていた。それこそがカスケードだった。
●
「ちょいちょいっとおちょくって見たんだけど慌てふためく姿が面白いの面白くないのって!」
「……カスケード、またそれか」
ラプラスは表情を変えず淡々とそう口にする。
「彼らはあなたのことももう知っている。その様なふざけた態度では何が起こるかわからんだろう」
「何が起こるかわからないのが楽しいんじゃーん。……って俺っちのことアイツらに伝えちゃったわけ?! もう、何してんのよラプラスちゃーん!」
「それがフェアというものだろう」
「フェアかも知んないけどそれじゃ裏かけないでしょ? 俺っちは裏をかいて相手を唖然とさせたまま倒すのが大好きなんだからさぁ」
ラプラスの言葉にカスケードはそうまくし立てた。
「まあいいよ。今度は俺っち自ら相手してやってビックリさせちゃおっかな。いやぁ、どんな反応するか楽しみ、超楽しみ!」
その言葉を聞きながらラプラスは立ち去る。その時彼女は一言こう漏らした。
「ここはカスケードに任せる他無いか」
リプレイ本文
●
「これですね」
再度のエバーグリーンへの偵察前、雨を告げる鳥(ka6258)はハンターオフィス経由でトマーゾ教授に情報を問い合わせていた。
「私は調査する。セントラル中心部の状態とカスケードの能力について。ルビーとの約束を果たすためにも、尽力しよう」
情報を軽く見ながら、彼女はそう返した。
「あまり無理は為さらないでください。敵の力も全て分かっているわけではないですから」
●
「なんだか、ワクワクしますね。まるで、冒険小説みたいです~」
アシェ-ル(ka2983)を先頭にエバーグリーンをハンター達は歩いていた。前回彼女が付けた目印を頼りに地下通路への入り口を目指す。迷うことはない。足取りも自然と軽くなる。
だがそんな中、アシェールの隣で落ち込んでいる者が居た。
「はぁ……全く俺ってヤツはよぉ……こーいう肝心な時に使えねーよな」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)であった。彼女が先日の依頼で猛攻を受け負った傷はまだ癒えていない。少なくとも戦いに挑める様な状態ではない。それでも仲間達のために力になろうとする彼女をアシェールが横に付き、いつでも守れるようにする。
一方、カール・フォルシアン(ka3702)はここに居ると知らされた歪虚の事を思っていた。
「カスケード……一体何者なんでしょうか」
「カスケードだかカスタードだか知ンねぇけど、オレ達が来るこたもうバレてンだよな? 気ぃ引き締めてかねぇと!」
彼の言葉に大伴 鈴太郎(ka6016)がそう返す。
「奴自身が案外ルビーと似たような存在、『AI』なのかもしれないね」
そんな二人の言葉に岩井崎 メル(ka0520)は思案して意見を述べ、そして言葉を続けた。
「……ただまぁ、暴走ロボットよりはましか。悪意でもなんでも、心には『ぶつける相手』が必要だ。それが時に弱点にもなり、武器にもなり。ヒントにもなる」
●
その路は、今や陽の光の届かない場所と変わっていた。先頭に立った鞍馬 真(ka5819)はランタンに火を入れ腰に下げる。
「用事でこれなかった団長に変わって、私がバッチリ偵察です! 偵察忍務もニンジャにお任せなんだからっ!」
そしてもう一人、自称忍者であるところのルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が前を進む。
その路は幾何学的な直線で構成されている。レインの情報によると碁盤の目状に走っているらしい。だが、天井が真っ直ぐあったのも少しの間。一部が砂状に化し、崩れているところがある。これは実際に行って見ないと先に進めるかわからない。
そこでボルディアは通路の状況を書き止めていく。そんな彼女の足元には流線型のボディを持つロボット。これはメルが周囲を警戒すべく配置したポッドと呼んでいるロボットだ。それと共に周囲に気を配る。
そしてアシェールは道中を写真に撮っていく。それを確認した所で、メルは地面に何か書き込んだ。それは通路の分岐を示すマークだった。
この場所は風化により完全な迷宮と化していた。元の地図はあれどそれは正解の道を教えてはくれない。実際に回らないと答えがわからないこの迷宮を乗り越える方法は総当り、そのためには一度辿った道を完全に把握する必要がある。
ボルディアの書いた地図をカールは方位磁針で確かめる。そして彼は壁に耳を当て音を聞き始めた。分岐の両方に耳を当て先を探る。
耳に届いたかすかな駆動音。それを確認したカールは東を指差す。一行はそちらへと歩を進める。
●
静まり返った通路に足音だけが響く。一定の間隔で鳴っていたそれが少し乱れる。レイン、鈴太郎、それにアシェール。三人の足音が他の者達とずれていた。もう一度先へ進もうとしたところで彼女たちは再び止まり、アシェールが視線を上に上げた所で叫び声を上げた。
「来ます!」
次の瞬間、何かが上空から落ちてきた。
同時に鈴太郎はボルディアの上に覆いかぶさり、レインは飛び退く。そしてアシェールは盾を掲げ前に立った。その盾に落ちてきた物が食い込む。もう一つのそれは落ちてきて鈴太郎の腕に突き刺さり、血を滴らせていた。
「また、怪しい動きをする機械物体Xですか。邪魔するなら、容赦しません!」
落ちてきた物を盾で受け止めたアシェールは弾き飛ばし構えを取る。そんな彼女の眼に映るのはカサカサと蠢く蜘蛛型の自動人形、オート・スパイダーと呼ばれるそれであった。
その頃後方で体を張っていた鈴太郎は投げ飛ばす様に引き剥がし、再び立つ。奇襲を仕掛けるための配置。おそらく先程聞こえた物音もこちらへと向かわせる誘い水だったのだろう。その悪意を向けたのは誰かわかっている。
まず動いたのはレイン。銃を取り出しそれを発射する。弾が装甲に当たり澄んだ高い音が響く。
次に動いたのは鞍馬。刀を握り直すとそこにマテリアルを流し込む。流れ込んだマテリアルが刀身を青白く輝かせ、そのきらめきと共に彼は刀を横に一つ薙ぎ払った。
そして鈴太郎が駆けた。レインが弾を撃ち込んだそれにダッシュで近づき、そのスピードを残したまま横っ飛びから胴部に蹴りを打ち込む。彼女より一回り、二回り大きなその機械の体はもろに彼女の蹴りを喰らい、回転しながら吹っ飛んでいった。
一方鞍馬が一太刀入れたオート・スパイダーには盾を構えて警戒していたアシェールが意識を集中していた。一瞬後に風の刃が現れ放たれ、それが太刀筋に食い込み、傷を押し広げていく。
そしてメルは遠くに吹き飛んだスパイダーを視線を合わせながらポッドを呼び寄せた。足元に戻ってきたポッドに手を触れ、素早く操作する。すると空間に青い光の線が走り、それがポッドに繋がり、巻き付き、覆っていく。
最後にメルが手のひらを押し当てるとどこからともなく現れた水がポッドを覆い、次の瞬間竜巻状の水流となって噴出された。一瞬のうちにそれに飲まれたスパイダー。水流が消えたときには残骸ごと押し流されていた。
一方アシェールの風の刃を受けたもう一機の方がぐいっとその体を押し縮める。その時レインが何かに気づいた。
「来る」
その刹那、スパイダーが押し縮めた脚部を解放するとその身体はふわりと浮き上がり、アシェール、鞍馬の頭を飛び越えて来た。そしてその後ろに居る二人――カールとルンルンの上にのし掛かり押し潰す。
もがき脱出しようとするルンルン、そんな彼女が次に見たのは突然はじけ飛んだ光の粒子と、吹き飛ばされているスパイダーの姿だった。
「大丈夫でしたか」
スパイダーを弾き飛ばした当事者であるカールが埃を払いながら立ち上がり、ルンルンを助け起こす。その頃吹き飛ばされたスパイダーにとどめを刺そうと鞍馬が近づいていたが、彼はその歩みを止めた。その先で、爆発し火球へと変わったスパイダーの姿があった。
●
奇襲をかいくぐった一行は先を進む。分岐に来るたびカールが聞き耳を立て、先を急ぐ。紙に書き留められた構造図は一行がおおよそ全体の半分を進んだことを表していた。ボルディアは時計を確認する。時間も残り半分といったところか。
次へ進もうとした所でルンルンが一行を制する。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法分身の術!」
彼女が符を一枚取り出し印を結ぶと、それは人型に変わり通路をちょこちょこと駆けていった。通路の先に消えてしばらく、ザーッという物音が聞こえ、意識を集中していたルンルンが首を振る。
「こっちはダメですね、落盤したみたいです」
そして彼女はもう一度符を取り出すと今度はもう一方の通路へと人型の式神を進ませた。しばらく後、彼女は偵察結果を報告する。
「自動人形が何体か見えます」
その言葉に皆の覚悟は決まった。一行は一つ頷き、先へと進んでいく。
●
通路の向こうにほんの少しだけ届く光が何かを照らす。ルンルンの見た結果がそこにあった。オート・ソルジャーだった。
一同は構えを取り、ジリジリと近づいていく。衝突は避けられない。だが、それだけではなかった。
左に右に、上に、注意を払う。そして。
「下か!」
気づいた者達の叫び声と共にマテリアルライフルが放たれる。既の所でかわした彼らが見たのはオート・パラディンと呼ばれる機体だった。そこから甲高い声が響く。
「もぅ~、どうして避けちゃうの? それじゃつまんないじゃーん!」
現れるや否やべらべらとまくし立てるその者の名をハンター達は知っていた。その名は
「名前なんつったっけ。なんとかカスだっけか?」
「あの変態さんが言ってた……え……と、誰でしたっけ? 確か、甘そうな名前……そう、カスタードさん!」
「カスケードだよ! カスケード! もう、調子狂うわ~」
挑発なのか天然なのか、ボルディアとアシェールのその調子にこれまた気の抜けた返しをするカスケード。
「乙女でもSEXYでも無いなんて、名前詐欺なのです」
「勝手にプンプン怒られても俺っちの方が困るよ!」
なぜか怒り出したルンルンにツッコミを入れているカスケード。
だが、ボルディアは我が身を顧みず挑発を続ける。
「ようカス元気そうじゃねぇかカスもっとしっかり動けよカスこんなとこで何してんだカス?」
「カスカスうるせぇよ! テメェから消えなよ!」
その言葉が終わる前にレーザーが再び放たれボルディアを貫く。
「アヒャヒャヒャ、一人おしまーい……?」
しかし巻き上がった砂埃が収まった頃、そこにはアシェールが居た。傷は決して小さくはない。しかし盾でそれを受け止め、確かに守りきっていた。
そしてメルはその隙にポッドに専用カードリッジを差し込む。密かに展開される機導浄化術・白虹。オート・ソルジャーはカスケードの存在に反応して動いている。それを汚染と考えれば……果たして、立ち上がり動き出そうとしたオート・ソルジャー達は突然動きを止める。
「ゲゲッ?! テメェら何をした?!」
狼狽するカスケードに答える義理もない。鞍馬は一気に間合いを詰める、狙うはオート・ソルジャーの先、カスケード。
「……ってそんな訳ないじゃーん! アッヒャヒャヒャ!」
だが、それも罠だった。急に動き出したソルジャーがその剣と化した腕を鞍馬の土手っ腹目掛け突き立てる。裏をかき悪意に満ちた一撃。
異様な動きをすることは前もってわかっていた。平常心を保とうとしていた。傷はついたが心は乱れない。
鞍馬は一旦下がる。それと入れ替わるようにピンク色の弾が飛び出していった。放ったのはアシェール。盾の隙間から一点を狙い放つ。それがソルジャー達の中心に飛び込むと冷気の爆発が巻き起こり、一体に居たソルジャー達を凍りつかせていく。
凍りついたソルジャー達の動きが鈍くなった頃、その足元にいつの間にか七芒星が浮かび上がっていた。キラリと一瞬その頂点が輝き、次の瞬間眩い閃光。そして。
「天地開闢にして原初の崩壊。星に眠りし不滅の炎よ。万象等しく灰燼に還せ」
レインの詠唱が完成するとその閃光が広がり、爆炎へと変わりソルジャー達を飲み込んでいく。そしてその後にはソルジャー達の残骸がただ残っていた。
ソルジャーを一掃したところで、カールが動き始めていた。彼が手にした杖の先端が展開され、光の花が開く。そして。
「我が手に宿れ、雷鎚!」
その声とともに光の花冠から青白い雷撃が放たれる。通路を一直線に走った雷光は一瞬でカスケードにまとわりつく。だが。
「はい、ざんねーん!」
人を苛つかせるカスケードの声とともに、予想もつかぬ方向――カールの後方から光線が放たれた。幸い急所に直撃することは無かったとは言え、腕を掠め灼いた予想外の一撃が彼に痛撃を与える。
しかし、裏をかくカウンターもある者にとっては隙だった。電撃がまとわりつき痺れているカスケードに一瞬で間合いを詰める者が居た。鈴太郎だった。
一瞬で間合いを詰めた鈴太郎はその勢いのまま掴みかかる。しかしそこにマテリアルソードが待っていた。小さな音と共に切っ先が彼女の体に刺さり、血の花を開かせる。
「へっ、オレだってちっとはアタマ使えンだよ!」
しかしそれまで鈴太郎の狙いだった。己の体に刺さった剣の先、腕を持つと剣撃の勢いを活かして引き込みながら捻る。これだけで遥かに大きいその機体は一回転し地面に落ちた。
「あれを倒すにはもう、愛の心にて悪しき空間を断つしかないのです!」
そしてルンルンは符を空中に投げ上げていた。それは地面に倒れたカスケードの上空で三角形を形作り、そして稲妻と化して降り注ぐ。
「ギ、ギニャーーーー!!」
その雷の雨を受け、カスケードは断末魔の叫びとともに砕け散った。
●
最大の障害を突破した一行は油断はせずに、しかし先を急ぐ。時間は残り少ない。だが、目指す場所の方向はほぼ読めていた。通路を駆け抜け、その場所へと飛び出す。
「これが……」
やおら広がった視界の前にあったのはこのビルの上まで貫かんばかりの巨大な樹――神霊樹だった。だが、彼らの知るそれとは違う。神霊樹の下部を中心にびっしりと付けられた機械類。何かを伝えるためなのか、コードのようにも蔦のようにも見える物が纏わり付いている。これこそが彼らの求めるもの、“サーバー”だった。
安心するのも束の間、彼らはカメラを取り出しサーバーの状態を写真に収めていく。その時だった。
「アッヒャヒャヒャヒャ! 俺っちがそれぐらいで死ぬと思った?」
つい先程まで聞いていた声が響く。同時にガシャガシャと自動人形達が動き出す。
「……ってあれ?」
「……絶対やると思ったのです!」
●
「ラプラスのヤツはムカつくけど、ハッタリぬかすようなヤツじゃねぇ。ああまで言い切るからには、喧嘩が強えとかいう次元の話じゃねぇはずだぜ」
「絶対に倒せない……サーバーその物だったら倒せない……サーバーに蔓延したウィルスだから、とか?」
「多分そうだろうね。万が一セントラル、データに潜り込まれたら。ルビーの復活を目指す私達には壊せない。壊したところでデータの海に逃げられたら……」
●
彼らは一つの推論を導き出していた。すなわち“カスケード”の正体は実体の無い存在。その推論を元に考えれば、カスケードの行動は驚きではなく論を補強する物になる。
レインはボルディアの時計を確認していた。残り時間あと僅か。今なら。彼女は突然飛び出し、サーバーに手を触れる。その瞬間脳に流れ込んでくるイメージ。
「アッヒャヒャヒャヒャ! バレちゃったらしょうが無いや。脳焼き切れて死んじまいな!」
彼女がカスケードの声を聞いた時、友の祈りが彼女の身を動かしていた。意志の力で手を引き剥がす。強制断線のショックが襲い彼女の意識は一時的に吹き飛ばされるが、深刻なダメージを受ける前に確かに逃げ切っていた。
そして小さな爆発とともに機械が壊れていくのをルンルンが写真に収めた時、それがタイムリミットだった。
「これですね」
再度のエバーグリーンへの偵察前、雨を告げる鳥(ka6258)はハンターオフィス経由でトマーゾ教授に情報を問い合わせていた。
「私は調査する。セントラル中心部の状態とカスケードの能力について。ルビーとの約束を果たすためにも、尽力しよう」
情報を軽く見ながら、彼女はそう返した。
「あまり無理は為さらないでください。敵の力も全て分かっているわけではないですから」
●
「なんだか、ワクワクしますね。まるで、冒険小説みたいです~」
アシェ-ル(ka2983)を先頭にエバーグリーンをハンター達は歩いていた。前回彼女が付けた目印を頼りに地下通路への入り口を目指す。迷うことはない。足取りも自然と軽くなる。
だがそんな中、アシェールの隣で落ち込んでいる者が居た。
「はぁ……全く俺ってヤツはよぉ……こーいう肝心な時に使えねーよな」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)であった。彼女が先日の依頼で猛攻を受け負った傷はまだ癒えていない。少なくとも戦いに挑める様な状態ではない。それでも仲間達のために力になろうとする彼女をアシェールが横に付き、いつでも守れるようにする。
一方、カール・フォルシアン(ka3702)はここに居ると知らされた歪虚の事を思っていた。
「カスケード……一体何者なんでしょうか」
「カスケードだかカスタードだか知ンねぇけど、オレ達が来るこたもうバレてンだよな? 気ぃ引き締めてかねぇと!」
彼の言葉に大伴 鈴太郎(ka6016)がそう返す。
「奴自身が案外ルビーと似たような存在、『AI』なのかもしれないね」
そんな二人の言葉に岩井崎 メル(ka0520)は思案して意見を述べ、そして言葉を続けた。
「……ただまぁ、暴走ロボットよりはましか。悪意でもなんでも、心には『ぶつける相手』が必要だ。それが時に弱点にもなり、武器にもなり。ヒントにもなる」
●
その路は、今や陽の光の届かない場所と変わっていた。先頭に立った鞍馬 真(ka5819)はランタンに火を入れ腰に下げる。
「用事でこれなかった団長に変わって、私がバッチリ偵察です! 偵察忍務もニンジャにお任せなんだからっ!」
そしてもう一人、自称忍者であるところのルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が前を進む。
その路は幾何学的な直線で構成されている。レインの情報によると碁盤の目状に走っているらしい。だが、天井が真っ直ぐあったのも少しの間。一部が砂状に化し、崩れているところがある。これは実際に行って見ないと先に進めるかわからない。
そこでボルディアは通路の状況を書き止めていく。そんな彼女の足元には流線型のボディを持つロボット。これはメルが周囲を警戒すべく配置したポッドと呼んでいるロボットだ。それと共に周囲に気を配る。
そしてアシェールは道中を写真に撮っていく。それを確認した所で、メルは地面に何か書き込んだ。それは通路の分岐を示すマークだった。
この場所は風化により完全な迷宮と化していた。元の地図はあれどそれは正解の道を教えてはくれない。実際に回らないと答えがわからないこの迷宮を乗り越える方法は総当り、そのためには一度辿った道を完全に把握する必要がある。
ボルディアの書いた地図をカールは方位磁針で確かめる。そして彼は壁に耳を当て音を聞き始めた。分岐の両方に耳を当て先を探る。
耳に届いたかすかな駆動音。それを確認したカールは東を指差す。一行はそちらへと歩を進める。
●
静まり返った通路に足音だけが響く。一定の間隔で鳴っていたそれが少し乱れる。レイン、鈴太郎、それにアシェール。三人の足音が他の者達とずれていた。もう一度先へ進もうとしたところで彼女たちは再び止まり、アシェールが視線を上に上げた所で叫び声を上げた。
「来ます!」
次の瞬間、何かが上空から落ちてきた。
同時に鈴太郎はボルディアの上に覆いかぶさり、レインは飛び退く。そしてアシェールは盾を掲げ前に立った。その盾に落ちてきた物が食い込む。もう一つのそれは落ちてきて鈴太郎の腕に突き刺さり、血を滴らせていた。
「また、怪しい動きをする機械物体Xですか。邪魔するなら、容赦しません!」
落ちてきた物を盾で受け止めたアシェールは弾き飛ばし構えを取る。そんな彼女の眼に映るのはカサカサと蠢く蜘蛛型の自動人形、オート・スパイダーと呼ばれるそれであった。
その頃後方で体を張っていた鈴太郎は投げ飛ばす様に引き剥がし、再び立つ。奇襲を仕掛けるための配置。おそらく先程聞こえた物音もこちらへと向かわせる誘い水だったのだろう。その悪意を向けたのは誰かわかっている。
まず動いたのはレイン。銃を取り出しそれを発射する。弾が装甲に当たり澄んだ高い音が響く。
次に動いたのは鞍馬。刀を握り直すとそこにマテリアルを流し込む。流れ込んだマテリアルが刀身を青白く輝かせ、そのきらめきと共に彼は刀を横に一つ薙ぎ払った。
そして鈴太郎が駆けた。レインが弾を撃ち込んだそれにダッシュで近づき、そのスピードを残したまま横っ飛びから胴部に蹴りを打ち込む。彼女より一回り、二回り大きなその機械の体はもろに彼女の蹴りを喰らい、回転しながら吹っ飛んでいった。
一方鞍馬が一太刀入れたオート・スパイダーには盾を構えて警戒していたアシェールが意識を集中していた。一瞬後に風の刃が現れ放たれ、それが太刀筋に食い込み、傷を押し広げていく。
そしてメルは遠くに吹き飛んだスパイダーを視線を合わせながらポッドを呼び寄せた。足元に戻ってきたポッドに手を触れ、素早く操作する。すると空間に青い光の線が走り、それがポッドに繋がり、巻き付き、覆っていく。
最後にメルが手のひらを押し当てるとどこからともなく現れた水がポッドを覆い、次の瞬間竜巻状の水流となって噴出された。一瞬のうちにそれに飲まれたスパイダー。水流が消えたときには残骸ごと押し流されていた。
一方アシェールの風の刃を受けたもう一機の方がぐいっとその体を押し縮める。その時レインが何かに気づいた。
「来る」
その刹那、スパイダーが押し縮めた脚部を解放するとその身体はふわりと浮き上がり、アシェール、鞍馬の頭を飛び越えて来た。そしてその後ろに居る二人――カールとルンルンの上にのし掛かり押し潰す。
もがき脱出しようとするルンルン、そんな彼女が次に見たのは突然はじけ飛んだ光の粒子と、吹き飛ばされているスパイダーの姿だった。
「大丈夫でしたか」
スパイダーを弾き飛ばした当事者であるカールが埃を払いながら立ち上がり、ルンルンを助け起こす。その頃吹き飛ばされたスパイダーにとどめを刺そうと鞍馬が近づいていたが、彼はその歩みを止めた。その先で、爆発し火球へと変わったスパイダーの姿があった。
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奇襲をかいくぐった一行は先を進む。分岐に来るたびカールが聞き耳を立て、先を急ぐ。紙に書き留められた構造図は一行がおおよそ全体の半分を進んだことを表していた。ボルディアは時計を確認する。時間も残り半分といったところか。
次へ進もうとした所でルンルンが一行を制する。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法分身の術!」
彼女が符を一枚取り出し印を結ぶと、それは人型に変わり通路をちょこちょこと駆けていった。通路の先に消えてしばらく、ザーッという物音が聞こえ、意識を集中していたルンルンが首を振る。
「こっちはダメですね、落盤したみたいです」
そして彼女はもう一度符を取り出すと今度はもう一方の通路へと人型の式神を進ませた。しばらく後、彼女は偵察結果を報告する。
「自動人形が何体か見えます」
その言葉に皆の覚悟は決まった。一行は一つ頷き、先へと進んでいく。
●
通路の向こうにほんの少しだけ届く光が何かを照らす。ルンルンの見た結果がそこにあった。オート・ソルジャーだった。
一同は構えを取り、ジリジリと近づいていく。衝突は避けられない。だが、それだけではなかった。
左に右に、上に、注意を払う。そして。
「下か!」
気づいた者達の叫び声と共にマテリアルライフルが放たれる。既の所でかわした彼らが見たのはオート・パラディンと呼ばれる機体だった。そこから甲高い声が響く。
「もぅ~、どうして避けちゃうの? それじゃつまんないじゃーん!」
現れるや否やべらべらとまくし立てるその者の名をハンター達は知っていた。その名は
「名前なんつったっけ。なんとかカスだっけか?」
「あの変態さんが言ってた……え……と、誰でしたっけ? 確か、甘そうな名前……そう、カスタードさん!」
「カスケードだよ! カスケード! もう、調子狂うわ~」
挑発なのか天然なのか、ボルディアとアシェールのその調子にこれまた気の抜けた返しをするカスケード。
「乙女でもSEXYでも無いなんて、名前詐欺なのです」
「勝手にプンプン怒られても俺っちの方が困るよ!」
なぜか怒り出したルンルンにツッコミを入れているカスケード。
だが、ボルディアは我が身を顧みず挑発を続ける。
「ようカス元気そうじゃねぇかカスもっとしっかり動けよカスこんなとこで何してんだカス?」
「カスカスうるせぇよ! テメェから消えなよ!」
その言葉が終わる前にレーザーが再び放たれボルディアを貫く。
「アヒャヒャヒャ、一人おしまーい……?」
しかし巻き上がった砂埃が収まった頃、そこにはアシェールが居た。傷は決して小さくはない。しかし盾でそれを受け止め、確かに守りきっていた。
そしてメルはその隙にポッドに専用カードリッジを差し込む。密かに展開される機導浄化術・白虹。オート・ソルジャーはカスケードの存在に反応して動いている。それを汚染と考えれば……果たして、立ち上がり動き出そうとしたオート・ソルジャー達は突然動きを止める。
「ゲゲッ?! テメェら何をした?!」
狼狽するカスケードに答える義理もない。鞍馬は一気に間合いを詰める、狙うはオート・ソルジャーの先、カスケード。
「……ってそんな訳ないじゃーん! アッヒャヒャヒャ!」
だが、それも罠だった。急に動き出したソルジャーがその剣と化した腕を鞍馬の土手っ腹目掛け突き立てる。裏をかき悪意に満ちた一撃。
異様な動きをすることは前もってわかっていた。平常心を保とうとしていた。傷はついたが心は乱れない。
鞍馬は一旦下がる。それと入れ替わるようにピンク色の弾が飛び出していった。放ったのはアシェール。盾の隙間から一点を狙い放つ。それがソルジャー達の中心に飛び込むと冷気の爆発が巻き起こり、一体に居たソルジャー達を凍りつかせていく。
凍りついたソルジャー達の動きが鈍くなった頃、その足元にいつの間にか七芒星が浮かび上がっていた。キラリと一瞬その頂点が輝き、次の瞬間眩い閃光。そして。
「天地開闢にして原初の崩壊。星に眠りし不滅の炎よ。万象等しく灰燼に還せ」
レインの詠唱が完成するとその閃光が広がり、爆炎へと変わりソルジャー達を飲み込んでいく。そしてその後にはソルジャー達の残骸がただ残っていた。
ソルジャーを一掃したところで、カールが動き始めていた。彼が手にした杖の先端が展開され、光の花が開く。そして。
「我が手に宿れ、雷鎚!」
その声とともに光の花冠から青白い雷撃が放たれる。通路を一直線に走った雷光は一瞬でカスケードにまとわりつく。だが。
「はい、ざんねーん!」
人を苛つかせるカスケードの声とともに、予想もつかぬ方向――カールの後方から光線が放たれた。幸い急所に直撃することは無かったとは言え、腕を掠め灼いた予想外の一撃が彼に痛撃を与える。
しかし、裏をかくカウンターもある者にとっては隙だった。電撃がまとわりつき痺れているカスケードに一瞬で間合いを詰める者が居た。鈴太郎だった。
一瞬で間合いを詰めた鈴太郎はその勢いのまま掴みかかる。しかしそこにマテリアルソードが待っていた。小さな音と共に切っ先が彼女の体に刺さり、血の花を開かせる。
「へっ、オレだってちっとはアタマ使えンだよ!」
しかしそれまで鈴太郎の狙いだった。己の体に刺さった剣の先、腕を持つと剣撃の勢いを活かして引き込みながら捻る。これだけで遥かに大きいその機体は一回転し地面に落ちた。
「あれを倒すにはもう、愛の心にて悪しき空間を断つしかないのです!」
そしてルンルンは符を空中に投げ上げていた。それは地面に倒れたカスケードの上空で三角形を形作り、そして稲妻と化して降り注ぐ。
「ギ、ギニャーーーー!!」
その雷の雨を受け、カスケードは断末魔の叫びとともに砕け散った。
●
最大の障害を突破した一行は油断はせずに、しかし先を急ぐ。時間は残り少ない。だが、目指す場所の方向はほぼ読めていた。通路を駆け抜け、その場所へと飛び出す。
「これが……」
やおら広がった視界の前にあったのはこのビルの上まで貫かんばかりの巨大な樹――神霊樹だった。だが、彼らの知るそれとは違う。神霊樹の下部を中心にびっしりと付けられた機械類。何かを伝えるためなのか、コードのようにも蔦のようにも見える物が纏わり付いている。これこそが彼らの求めるもの、“サーバー”だった。
安心するのも束の間、彼らはカメラを取り出しサーバーの状態を写真に収めていく。その時だった。
「アッヒャヒャヒャヒャ! 俺っちがそれぐらいで死ぬと思った?」
つい先程まで聞いていた声が響く。同時にガシャガシャと自動人形達が動き出す。
「……ってあれ?」
「……絶対やると思ったのです!」
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「ラプラスのヤツはムカつくけど、ハッタリぬかすようなヤツじゃねぇ。ああまで言い切るからには、喧嘩が強えとかいう次元の話じゃねぇはずだぜ」
「絶対に倒せない……サーバーその物だったら倒せない……サーバーに蔓延したウィルスだから、とか?」
「多分そうだろうね。万が一セントラル、データに潜り込まれたら。ルビーの復活を目指す私達には壊せない。壊したところでデータの海に逃げられたら……」
●
彼らは一つの推論を導き出していた。すなわち“カスケード”の正体は実体の無い存在。その推論を元に考えれば、カスケードの行動は驚きではなく論を補強する物になる。
レインはボルディアの時計を確認していた。残り時間あと僅か。今なら。彼女は突然飛び出し、サーバーに手を触れる。その瞬間脳に流れ込んでくるイメージ。
「アッヒャヒャヒャヒャ! バレちゃったらしょうが無いや。脳焼き切れて死んじまいな!」
彼女がカスケードの声を聞いた時、友の祈りが彼女の身を動かしていた。意志の力で手を引き剥がす。強制断線のショックが襲い彼女の意識は一時的に吹き飛ばされるが、深刻なダメージを受ける前に確かに逃げ切っていた。
そして小さな爆発とともに機械が壊れていくのをルンルンが写真に収めた時、それがタイムリミットだった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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質問卓 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/04/02 23:34:31 |
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相談卓 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/04/03 21:06:52 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/04/03 09:12:23 |