紅の饗応

マスター:秋月雅哉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/10/22 19:00
完成日
2014/10/23 06:40

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●天上の花は赤く燃えて
 曼珠沙華。天上に咲く花、という意味という宗教的な名前の他に死人花や手腐り花、といった不吉な名前も併せ持つ花の名である。
 彼岸花、という名前が最も一般的だろうか。色は主に紅と白。問題が発生した地に咲く曼珠沙華は燃えるような赤の花畑となっていた。
 ずず、ずず。
 川が近く、畦がそのまま花畑となったような曼珠沙華の群生地帯に何かが這うような音が響く。
 ずず、ずず。
 川から上がってきたのは泥状のスライムの様な雑魔の集団だった。

●赤く燃える花が祈るのは冥福か、あるいは
「はいはい、仕事だよー。泥状のスライムっぽい雑魔、団体三十名様討伐のご案内。知能は低くて体の一部、つまり泥状の何かを投げつけてくる程度だけど数が多いから気は抜かない方向でよろしく。
 目とか狙ってくるからね、ゴーグルとかあれば少し楽かも。視界効かない相手を優先的に狙うみたいだけどこれは知性というより本能だろうね。弱いやつから狩るっていう、さ」
 斡旋者の青年が珍しく普通の珈琲を淹れた後らしく簡易キッチンから書類を片手に、カップをもう片手にもってやってきた。
 しかし染みついた【何か】の異臭は消えないらしく珈琲の芳香は残念ながらかき消されている。
「場所は帝国領の一角にある河川敷……でいいのかな。畦から川の近くまで真っ赤な曼珠沙華が咲いてて、雑魔は人の気配を感じると川から這いずって上がってくる。曼珠沙華の群生地帯に入り込まれちゃうと這ってくる敵だからちょっと視認しにくいかもね。一応地元の人が観光に来たり毒抜きした後非常食用に取っていくらしいんで可能なら曼珠沙華にあまり被害が及ばないよう配慮をお願いするね」
 一番の注意は数に物言わせてくることと目つぶしを狙ってくること、あとは皮に引きずり込んで溺死体を作ろうとすることかな。
 資料をざっと見通した後青年はそういって言葉を切った。
「油断しなければ勝てる相手だからさ、今言った三つだけ注意して。気を付けて行ってらっしゃい」

リプレイ本文

●天上に咲く花で今日も川の付近は赤く染まり
 泥状のスライムに似た雑魔が大量に出るという報告を受けたハンターオフィスでは覚醒者たちに討伐を要請した。
「赤い花……綺麗。兄さんの目の色と同じですね……」
 そうつぶやいたシュネー・シュヴァルツ(ka0352)と同行を申し出たルリ・エンフィールド(ka1680)の二人は一度花畑の場所を確認したあとで地元の住民にコンタクトを取り曼珠沙華に対する被害を少なくするため一部を刈り取る許可とできるだけ荒らさないようにはするがすこし河原が荒れるかもしれない旨を報告した。
「まぁ……雑魔も怖いし、数が多いから迂闊に近づけないしね。観光にしろ食料調達にしろ命あっての物種だし、あまり極端に見栄えが悪くならないなら構わないと思うけれど……あんたたちが討伐の依頼を受けたのかい? 覚醒者だって話だけれど向こうは数が多いし気を付けておくれよ」
 地元の住民は多少荒れる程度なら仕方ない、作戦の開始前にわざわざ許可を取りに来てくれるほど律儀な人がいるなら酷いことにはならないだろう。
 とにかく数が多いという話だから討伐するときには身の安全を最優先にしてほしい。
 そんな風に二人の申し出を快諾したのだった。
 一度遭遇して向こうが川から這い上がりきる前にぎりぎり逃げ出すことに成功した住民から敵が出現した時の様子や移動速度、どのあたりまで川に近づくと反応するのかなど思い出せる範囲で答えてもらうと合流のために住民たちに別れを告げた。
「これであとから怒られることはないですね。では、現場へ戻りましょうか」
「そうだな。ぱぱっとやっつけて地元の人たちが安心して曼珠沙華の花畑を楽しんだり食料が足りない時に使えるようにしないとな。雑魔なんかに邪魔はさせないぜ!」
 一方曼珠沙華を刈り取った後が目立たないように丁寧に刈り取るメンバーはといえば。
「なるほど、こりゃ壮観だわ。名所にもなるよなー」
 その場所が静かに、熱を持たない炎で燃えているような一面の赤に息をのんだ岩井崎 旭(ka0234)が「守るためだけど、これを刈り取るのか……呪われねーよな?」と誰に聞くでもなく呟いている。
「折角綺麗な花なんだもの。傷つけたり汚したりしたくない。被害は最小限に食い止めないと」
 ジュード・エアハート(ka0410)は川と群生地の近くに花が生えていなくて足場のよさそうな場所がないか鋭敏感覚で探していた。
 探った限りでは足場のよさそうな場所は花が咲き乱れており、足場の悪い場所は岩や流木で足場を整えるのが難しい。
「……できるだけ目立たないように刈るしかないか」
 もったいないけれど、と心の中で呟きながらナイフで曼珠沙華を刈っていく。
「モニカ、曼珠沙華って初めて見たけど、とっても綺麗なのよっ!
……歪虚なんかに、台無しになんてさせない! なのよっ!」
 モニカ(ka1736)が意気込む。
「ほっとけば、地元の人の命にかかわりそうだから、早急に退治しないと」
 今回は敵の数が多いため味方の負傷も避けられないだろうと回復専門役として同行したシャル・ブルーメ(ka3017)はきゅっとこぶしを握りこむ。
「毒草だから……あまり食べてほしくないんだけどねぇ」
 持参の水は革袋とビンに入れてすぐに取り出せるよう腰にベルトを巻いて括りつけている。
「曼珠沙華ってのは、死者が眠る場所に植える花らしいな。河川敷がその場所か分からねえが、雑魔が荒らしていいもんじゃねえな。
 神に連なる花だってんなら尚更だ。自分は聖導士だからよ。聖域を侵す不届きは尽く討つ、だ。
 水晒しにして毒を抜いて食うらしいが、どんな味なんだろうな。神の味か?」
 アゼル=B=スティングレイ(ka3150)が言葉の後半で首をかしげたところで地元住民に事情を説明にいっていた二人が戻ってくる。
 そしてそれを待っていたように川が濁っていき、泥状のスライムが這いずってきたのだった。
「団体さんのお越しだな。聴覚があるかしらねぇがもう一度言うぜ。不届きは尽く討つ、それが自分の信念だ」
 アゼルが泥状のスライムの群れを見て好戦的な笑みを浮かべてロッドを抜いた。

●散った花と流れる血で赤く染まり
「雑魔とはいえ三十体とはえらい数やんなあ。気合入れていこか」
 目つぶし攻撃対策として水中用ゴーグルを着用した紗耶香(ka3356)は若干眉根を寄せて一瞬だけ背後の花畑を見やる。
「こんな綺麗なお花畑はなかなかあらへんし、なるべく荒らさんようにせなあかんな。そのためにも近づけさせへんよ」
 後衛に陣取り、前衛陣の気配か臭いか……それとも音かそれ以外のものか。とにかく引き寄せられるように岸に上がってきたスライムの群れに標準を絞る。
 体内にマテリアルを満たすことで一時的に攻撃力を増加させた旭の一撃が次々と押し寄せるスライムの一体を切り裂く。
 切り裂かれると分裂、というような厄介な事態はどうやら避けられるようでぐずぐずと崩れながらスライムはただの泥へと還っていった。
「数は多いけど確かにオフィスで聞いた通り脆いぜ、油断しなければ八人しかいないこっちでもなんとかなりそうだ!」
 マテリアルを込めて移動力を上昇させ、その素早い動きによりスライムの姿を取った雑魔が回避のタイミングを逃したところにすれ違いの一撃を食らわせすぐに離脱する戦法のシュネー。戦力はこちらの方が上のようだし向こうは連携らしい連携は今のところ取っていないようだが何しろ圧倒的に数で負けている。負傷が少ないうちにできる限り数を減らす必要があった。
 ジュードとモニカは威嚇射撃によって花畑の中に侵入して姿を視認するのが難しくなりそうなスライムが入り込む前に移動を阻止していた。お互い威嚇射撃を向ける相手が被らないように阿吽の呼吸で着実に阻止していく。
 動けなくなったスライムが再び花畑へと動き出す前に止めを刺すのはルリだ。
「花畑には行かせないって言ってるだろ!」
 モニカは戦場になった河川敷を見渡し、引きずり込まれそうになっている味方がいれば一時的に威嚇射撃をジュードに任せて仲間に纏わりついている敵に標準を合わせると的確に射抜く。
 スライムがどうやって硬化させたのか、体から切り離した部分を石つぶてのように投げて前衛陣を負傷させたときに活躍したのはシャルだ。
「仕事柄攻撃は難しいけど……治療なら任せてね♪」
 前衛で負傷が激しかったメンバーや自己申告で回復を頼んできたメンバーに精霊に祈りを捧げることによりマテリアルの力を引きだし、傷を癒す。
「ヒールかけるから、一旦さがってください! 他の人は下がる際の支援をお願い!」
 前衛が一人抜けたことでスライムたちがその穴を突かないようにとの支援要請だったが前衛陣は数が少ないながらもうまく陣取って刈り取った場所以上には先には進ませない働きぶりを見せている。
 怪我がひどく一度下がってきた旭の傷にヒールをかければ柔らかい光が傷を包み込み傷口がふさがっていった。
「目に泥が入った人は無理にこすろうとしないで一度離脱してきて! 水で洗い流した方が敵に付け入られる隙が少ないだろうから洗浄用の水を用意してきてます!」
 今回の依頼で自分がすべきことは最終的に負傷者の負傷の度合いをどこまで軽減できるかだと考えたシャルはスライムの進撃を身を挺して防いでいる前衛のメンバーに自分が思いつく限りの方法で心を砕いていた。
 打撃武器での戦闘能力を上昇させたアゼルはロッドで一体を叩き潰したあと輝く光の弾を打ち出し衝撃によってスライムにダメージを与える。
 衝撃によって飛散したスライムのかけらがゴーグルに付着したのを拭い大まかにスライムの数を数えれば半数から三分の二程度の中間程度までには減らすことができたようだ。
 ゴーグルを拭っている間にアゼルの足に纏わりついたスライムを紗耶香の放った銃弾が吹き飛ばした。
「悪いな、助かった」
「援護は任しとき」
 他に近づいている敵がいないかと戦場を見渡し前衛に近づいてきているスライムを近い順に集中砲火で各個撃破していく。
 ジュードとモニカの威嚇射撃で花畑に近づいて身を潜めようとしても動けなくなったところを前衛に蹴散らされるだけだと多くの仲間を犠牲にして学んだらしくスライムたちは正面から覚醒者たちに物量作戦で挑むことにどうやってか意思の疎通を図って決めたらしかった。
 威嚇射撃の必要がなくなった二人が援護射撃に回ったことと物量作戦に切り替えるには随分たくさんの味方が倒されたことでスライム側の旗色は悪いままだ。
「雑魔は大人しく無に帰りなさい! なのよっ!」
 歪虚を嫌うモニカは冷徹なまでに冷静に引き金を引いてスライムを無に帰していく。敵なのだから容赦をする必要はない。
 相手を侮れば自分や仲間に被害が及ぶ。ここで殲滅できなければ地元の住民たちにも害が及ぶだろう。
 引き金を引くことにためらう理由など、一つもなかった。
 ルリが大きく武器を振り回し勢いと力で相手の体勢を崩しながら攻撃を仕掛けると振り回された武器にぶつかったスライムがひしゃげて泥に還った。
 振り回した武器を戻す数瞬の間に纏わりついたスライムはジュードの弾薬が射抜いて撃破した。
「俺の仲間に汚い体で触れないでくれる?」
 ひんやりとした声で着弾の衝撃で弾けたスライムに告げた後他に狙われている仲間がいないか注意するその面には何の感情も浮かんでいない。
 シュネーは泥を投擲しようとするスライムの動きを動作で先読みして回避しながらヒットアンドウェイの攻撃を積み重ねて着実に数を削いでいった。
 目つぶしを狙ってきたスライムの一体に対する回避が遅れたため短剣の腹部を盾に目を守るが少しだけ泥が目に入る。
 仲間に声をかけて一旦下がるとシャルが用意した水で目の中の泥を洗い流し再び戦線へと戻っていった。
「傷がひどいようなら遠慮なく声をかけてくださいね」
「有難うございます。まだ大丈夫ですがいざというときはお願いします」
 言葉少ななやり取りの中に仲間に対する信頼が見えた。
 一般人が相手だったのなら連携がさほど取れずとも、脆くとも、移動速度がそれほど速くなくても物量作戦で何とかなったかもしれない。
 しかし今雑魔たちが相手にしているのは覚醒者として戦う道を選び、仲間との連携によって自らの不足を補い、長所を生かす戦い方を学んだ八人だ。
 たとえ最初は圧倒的に数で負けていてもそれをひっくり返すだけの実力と仲間に対する信頼が彼らの中にはある。
「これで、終わりだ!」
 旭が最後の一体を切り裂き、泥が飛散する。
 雑魔三十体の討伐という大掛かりな作戦は覚醒者側の圧倒的勝利に終わったのだった。
「曼珠沙華は無事だったけど泥汚れが酷いな」
「タオルを持ってきてるから体についた泥汚れは落とせると思うぜ。ついでに川の様子を見れば残党がいないか確認もできるしな」
 数が多かったため流石に誰が何体倒したかを正確に把握しているものはいない。
 旭の持ってきたタオルで各々が顔や体についた泥を落とし、戦闘が始まる前に水桶に入れておいた刈り取った曼珠沙華を村人に引き渡そうか、という話になったところでおずおずと上がる手が一つと、その手よりは勢いよく上がる手が一つ。
 シュネーとモニカだった。
「刈った後のものか、戦闘影響で形が悪くなってしまった曼珠沙華を少し分けて頂けないでしょうか。お土産にします……」
「ねえねえ、ジュード。これお店に飾っちゃだめかな? なのよ??」
「折角だからお店に飾りたいね。秋の風物詩だし」
 どのくらいの配分にするか、と相談を始めようとしたところで事前に雑魔を討伐するため花を一部刈らせてほしい、と許可を取りに行った際安全を優先してくれ、と口にした住民が様子を見にやってきた。
 無事に討伐が済んだ旨と三人が曼珠沙華を少し貰って帰りたいと言っている旨を告げれば「思ったより被害も少ないしそれでお礼になるなら構わない。お疲れ様」というねぎらいの言葉とともに許可が下りる。
「有難うございます……」
「有難う! なのよっ」
「有難うございます。大切に飾らせてもらいますね」
「死人花だの手腐り花だのという異名のせいで縁起が悪い、なんていう人もいるけどね。綺麗なものだろう? あんたたちがこの景色を大事に思ってできるだけ被害が出ないように戦ってくれて嬉しいよ。数が多くて花に気を配る余裕がないかもしれないって思ってたからさ。無事でよかった。泥まみれになっちまったね。何軒か知り合いの家に頼んで風呂を沸かしてもらってるからさっぱりしていくといいよ」
 このくらいしかお礼はできないけど、感謝しているから遠慮はしないで。
 そう告げた恰幅のいい女性の言葉に女性陣を中心に喜びの声が上がったのだった。
 雑魔がいなくなって平穏が戻った後の河川敷。ほんの少しだけ数を減らしたもののまだまだ咲き誇る曼珠沙華の数は多く、赤い花が風に揺れていた。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 癒しへの導き手
    シュネー・シュヴァルツ(ka0352
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 大食らいの巨剣
    ルリ・エンフィールド(ka1680
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人
  • 【騎突】芽出射手
    モニカ(ka1736
    エルフ|12才|女性|猟撃士
  • テキパキ看護師さん
    シャル・ブルーメ(ka3017
    人間(蒼)|22才|女性|聖導士
  • 粗野で優しき姉御
    アゼル=B=スティングレイ(ka3150
    エルフ|25才|女性|聖導士
  • 弔いの鐘を鳴らした者
    紗耶香(ka3356
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ジュード・エアハート(ka0410
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/10/22 18:31:41
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/18 22:09:33