ゲスト
(ka0000)
鋼鉄の身に熱き魂を
マスター:剣崎宗二

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2014/10/21 12:00
- 完成日
- 2014/10/22 06:35
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ドクター。ここでいいのか?」
「ええ。ですが気をつけてください。ここにはどんな物があるかは――」
辺境、とある荒涼地帯。
辺境と言う地は、移り住む特性を持つ部族も多くある関係上、彼らが昔使っていた建築物が廃棄され、廃墟、遺跡になると言うことも多い。
今回の研究者が調査していたのは、その一つであった。
「大丈夫ですか?」
「へっ、任せておけって。こんな所に、何が出るってんだよ」
「油断は禁物だ。周りには注意を配れ」
彼が雇ったのは、二人組のハンター。
元よりそんなに歪虚が大量に出没する地区ではなく、故にそれ程多くは雇わなかった。
ハンターの内の一人は、まだ若さと無謀さが多少残るようであったが…もう一人の男の方は、恐らくそれなりの場数を踏んできたのだろう。
彼らを先頭にし、着実に調査を進めていく。
「お、扉か。やっとだぜ」
「おい待て」
年長のハンターが止めるよりも早く、若いハンターは駆け出していく。
その脚が付近の鎧片を踏みつけた瞬間。近くにあった一体の古びた鎧が、震える。
――その目には赤き、輝く宝石が如く光を放ち。
――その鋼鉄の脚は、大地を踏みしめ。
――その豪腕が、付近の鎧片を拾い上げ。
猛烈な弾丸が、一行に飛来する!
「ぬう…!…オートマトンか、それとも…」
年長のハンターが盾で鎧片を受け流すと共に、若いハンターが飛び出す。
「待てっ!敵の正体がまだ…」
「そんなの、叩き潰してから調べりゃいいって!」
大剣を振り上げ、全力で斜めに切り下ろす!
ガキン。
鎧に直撃したそれは、鈍い手応えを返す。
「っち、やっぱ鎧はだめか」
振り下ろされる豪腕を回避し、即座に腰からレイピアを抜刀。鎧の隙間を狙って差し込む!
「……」
「!?」
泥に突き刺さるような手応え。何かに粘着されたのか、抜けない。
「この――っ!?」
次の瞬間、鎧の隙間から、音速で突き出される何か。
「うぐっ!?」
目を掠めた『何か』。血が噴出し、一時的に視界が塞がれる。
「下がれっ!」
年長のハンターが滑り込み、彼を叩き潰そうとした豪腕の下から、若いハンターを助け出す。
振り向きざまの魔法弾が鎧に直撃する。然し、それほど大きなダメージになった感覚はない。
「…このままじゃ不利だ。一旦下がるぞ!」
かくして、ハンターオフィスに改めて、十分な戦力を以ってこの障害を排除し、調査を続けるべく――
――依頼が出されたのであった。
「ええ。ですが気をつけてください。ここにはどんな物があるかは――」
辺境、とある荒涼地帯。
辺境と言う地は、移り住む特性を持つ部族も多くある関係上、彼らが昔使っていた建築物が廃棄され、廃墟、遺跡になると言うことも多い。
今回の研究者が調査していたのは、その一つであった。
「大丈夫ですか?」
「へっ、任せておけって。こんな所に、何が出るってんだよ」
「油断は禁物だ。周りには注意を配れ」
彼が雇ったのは、二人組のハンター。
元よりそんなに歪虚が大量に出没する地区ではなく、故にそれ程多くは雇わなかった。
ハンターの内の一人は、まだ若さと無謀さが多少残るようであったが…もう一人の男の方は、恐らくそれなりの場数を踏んできたのだろう。
彼らを先頭にし、着実に調査を進めていく。
「お、扉か。やっとだぜ」
「おい待て」
年長のハンターが止めるよりも早く、若いハンターは駆け出していく。
その脚が付近の鎧片を踏みつけた瞬間。近くにあった一体の古びた鎧が、震える。
――その目には赤き、輝く宝石が如く光を放ち。
――その鋼鉄の脚は、大地を踏みしめ。
――その豪腕が、付近の鎧片を拾い上げ。
猛烈な弾丸が、一行に飛来する!
「ぬう…!…オートマトンか、それとも…」
年長のハンターが盾で鎧片を受け流すと共に、若いハンターが飛び出す。
「待てっ!敵の正体がまだ…」
「そんなの、叩き潰してから調べりゃいいって!」
大剣を振り上げ、全力で斜めに切り下ろす!
ガキン。
鎧に直撃したそれは、鈍い手応えを返す。
「っち、やっぱ鎧はだめか」
振り下ろされる豪腕を回避し、即座に腰からレイピアを抜刀。鎧の隙間を狙って差し込む!
「……」
「!?」
泥に突き刺さるような手応え。何かに粘着されたのか、抜けない。
「この――っ!?」
次の瞬間、鎧の隙間から、音速で突き出される何か。
「うぐっ!?」
目を掠めた『何か』。血が噴出し、一時的に視界が塞がれる。
「下がれっ!」
年長のハンターが滑り込み、彼を叩き潰そうとした豪腕の下から、若いハンターを助け出す。
振り向きざまの魔法弾が鎧に直撃する。然し、それほど大きなダメージになった感覚はない。
「…このままじゃ不利だ。一旦下がるぞ!」
かくして、ハンターオフィスに改めて、十分な戦力を以ってこの障害を排除し、調査を続けるべく――
――依頼が出されたのであった。
リプレイ本文
●闘気、漲り
「――上等だ。黙らせて玄関先にでも飾ってやるよ」
鎧片が掠めた右手に滲む血をぺろっと舐め、ウィンス・デイランダール(ka0039)は眼前の『敵』を睨み付ける。
「その前に自分が飾り物にならないようにな」
皮肉を込めてキール・スケルツォ(ka1798)が呟く台詞。
社会の最下層を見てきた彼は、ウィンスの持つ良家の出であるオーラを敏感に感じたのだろう。
『そんないい所の人間が何故、こんな危険を犯すような職についたのか』『何か、裏があるのではないか――』
その疑惑が恐らく、彼がウィンスに向ける警戒心の元だ。
「遺跡…を守ってるのかな?どういう仕組みで動いているのか気になるね」
ソフィア =リリィホルム(ka2383)が頭をかしげる。どんな物でも、その仕組みを解析したくなる『好奇心』。それは恐らく、彼女が機械を友とし、鍛冶と機械の修理を生業としていた影響もあるのだろう。
――有無を言わさぬ先制攻撃。逃げたハンターたちを追ってこなかったと言う事実と組み合わせれば、恐らくこの『敵』が遺跡を守る守護者のような物だと言う事は容易に推測できる。が、ここで足止めされる訳にはいかない。
「任に命を捧げるか。皮肉なもんだ。歪虚の方がよほど騎士らしい」
ウィンスのその台詞は、果たして本物の皮肉か。それとも――素直な賞賛か。
●刃、交え
「遅いぜ」
火蓋を切ったのはキール。回避の隙を与えぬ、予備動作なしの無造作な袖の一振り。
ナイフが飛び出し、一直線に『敵』の関節へと向かう。
キン。鎧の隙間に挟まれるようにして、刃が突き刺さる。
「こちらも行かせて貰いましょう」
直後、彼とタッグを組むマッシュ・アクラシス(ka0771)が突撃。前屈みの姿勢からレイピアを顔の横に構え、すれ違うように突破!
――『敵』の後ろに降り立った彼の手には、レイピアはない。見れば、キールのナイフ同様。鎧の間、関節部分に突き刺さっていた。
が、近接する相手を放って置くほど、この『敵』も甘くはないのは、先に接敵したハンターたちが実証済みだ。関節に刺さった二本の刃をまるで気に介する事はなく、振り向きざまにその豪腕が薙がれる!
「ふ…っ!」
咄嗟に逆手のサーベルで、振るわれたその腕を受け止める。軽々と後ろへ跳び、衝撃を涼しげな顔で受け流すが――流石にノーダメージ、とは行かなかったのだろう。その頬には一筋の汗が流れている。
「さて、どんな相手なんだろうね!」
シン・コウガ(ka0344)の別方向からの牽制射撃が鎧の脚部の周りに土煙を巻き起こし、『敵』を戸惑わせその動きを止める。
それに乗じ、リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)が、死角となる下方へ低姿勢でもぐりこみ、上半身をバネのように伸ばし、回転を伴って脇下に漆黒のナイフを突き刺す。
「顎下から銃弾ぶち込んだらさすがに衝撃が中に浸透するもんなんだが、さてどうかな?」
突き刺した刃を支えにして体を至近距離に引き込み、鎧の顎に逆手の銃口を突きつけそのままトリガーを一気に引く!
連続で発射される弾丸が、鎧を次々と揺らす。
その多大な衝撃は、鎧騎士を大きく後ろにのけぞらせる。
「ふん、他愛も――っ!」
倒したかと思ったが、そうでもなかったようだ。ゆっくりと振り上げられる豪腕。すぐさま突き刺した漆黒の刃を引き、後退しようとするが――
「抜けないか…っ!」
先のハンターたちの報告書の内容が頭を過ぎる。恐らくレイピアを鎧に突き刺したハンターも、この状態になっていたのだろう。僅かな戸惑い、そして鎧片を踏み滑った隙を突き、鋼の腕がリカルドのの額に正面から叩き付けられる!
「大丈夫か…?」
見た目に違わぬ強烈な衝撃によって大きく吹き飛ばされるリカルドを受け止めるシン。
「ああ。…いろんなのとやり合ってきたが、ハンターになったのを改めて後悔するなこれ」
額から血を流してはいるが、命に別状もなく。頭を横に振って意識を落ち着けると、再度リカルドは立ち上がる。ハンターの身体能力の賜物、と言った所か。
「さすがに対人戦闘術のみじゃ、きついもんがあるな、もう少し似たような敵と戦って改良を加える必要がある」
そんな彼らに『敵』の注意は向いたようだ。付近の鎧片に、手を伸ばす。恐らくは拾い上げ弾丸にし、シンもろともリカルドを巻き込むつもりか。
「誰だかは知らんが、まったく、後片付けくらいしてから姿を消すべきだ!」
掴もうとしたその鎧片は、然しラグナ・グラウシード(ka1029)の蹴撃によって、遥か彼方へ飛ばされる。
「強固な鎧、ねえ」
代わりに振り下ろされた鋼の拳を、盾で正面から受け止める。
「だが、『神聖騎士教則本』曰く!『誇らしき長所の裏には、もろい弱点が隠されているもの』なのだ!」
盾の影からナイフが突き出され、鎧の腰の部分の隙間に嵌る。そのまま盾を全力で振るい、強打を以ってしてナイフを中へと押し込む!
目的を達したのか、ラグナは後退すると同時に、後ろに向かって叫ぶ。
「準備は整った! 後は任せるぞ!」
●雷光、迸り
「ああ…任せておけ」
『敵』の注意がラグナに向かったその一瞬の隙を突き、彼とペアであった鳳 覚羅(ka0862)が、鎧の背後から迫る。
その両手には蒼き光。飛び散る火花が、そのエネルギーの正体を表していた。
――恐らく敵の正体は、鎧その物ではなく、その中に居坐している『何か』と、覚羅は推測していた。
それ故に、彼は、鎧の外ではなく、内部に確実に攻撃を与えられるこの『機』を待っていた。
「堅固な鎧の中に身を潜ませたとしても金属である以上これは防げないはずだが…もっと効果的な方法が提供されたからな。…使おう!」
『雷撃』を溜め込んだ両手で、そのままラグナの刺したナイフの柄と、マッシュが突き刺したレイピアの刃の腹を、同時に握る!
「――!!」
雷撃が、奔る。両手を『電極』とし、突き刺さった刃を媒介に内部に到達した雷撃は、確実にその『何か』の体力を奪い、元々それ程速くなかったその動きを更に緩慢にさせる。
四方に撒き散らされる電光をよそ目に。
やるならば今がチャンス、とばかりに。
マテリアルを弾丸に充填し、爆発的なパワーを持った一射と化して、シンは鎧の頭部――赤い宝石の部分を狙撃する。
ガン。
鈍い音を立てて、衝撃によって、弾丸の直撃を受けた鎧の頭部が吹き飛ぶ。
だが、その下には何もない。
「…?」
不審に思った覚羅の注意が、吹き飛ばされた兜に向いた瞬間。ザシュっと、鎧の隙から突き出された二本の刃が、彼の胸部を交差するように貫く。
動きを鈍らせたとて、この至近距離、しかも直接電撃をを流し込むために手を掛けた状態ならば、『外さない』のである。
「断ち切らせて頂きましょう!」
傷を受けた覚羅の手が、レイピアから離れた直後。跳躍したマッシュが、空中から、体重を乗せた渾身の一撃を振り下ろす。
――突き刺したレイピアは、同時にこの一撃への布石でもある。レイピアの刃をガイドレールのように使い、マッシュのサーベルは、突き刺さったその関節を断ち切ろうと――
ガキン。
鎧片が、その刃を阻む。
急速に関節部を圧縮したのか。『敵』は鎧片で一片の隙間も残さずにレイピアを挟みこむことによって、何とかサーベルを受け止めたのだ。
――最も、渾身の一撃が、その様な急ごしらえな手で完全に受け止める訳もなく。鎧片にヒビが走り、砕け散る。
「なるほど。そういう事ね!」
強化された視覚で、己の知りたかった『事実』を確認したソフィアが、ぽんっと手を叩く。
●刃の、正体
――最早、疑いの余地はない。
砕けた鎧片の裏から覗く物。そして、覚羅の身に突き刺さった刃。
――鎧を操る雑魔は、『液体金属』のスライム。
軟体故に、衝撃は致命的なダメージとは成らず、刃を巻き取る事ができる。
金属ゆえに、硬化させれば斬撃もまた致命的なダメージにはならず、刃が離れれば元に戻る。そして、その突き刺しは強力な武器にも変わる。
そしてこの二つの特性を組み合わせる事によって――『敵』は動くための動力を生み出し、そして剛力と柔軟性を併せ持ったのである。
「ちっ、そう簡単には…断たせてはくれねーって訳か!」
マッシュの一撃によって鎧片の割れた箇所を再度狙ったウィンスの刃は、半分ほど液体金属部分に食い込む物の、逆に粘着されてしまい拳が直撃する。
刃で強引に受けた物の、彼の日本刀はマッシュのサーベルよりも更に受けには向かず、ダメージは軽いとは言えない。
「おっと、来ないの?ならこっちから行くよー!」
ウィンスへの追撃を警戒し武器を構えたソフィアだったが、敵の追撃がないと見るや即座に体勢を切り替え、突進していく。
液体金属スライムはその体を触手の如く伸ばし、兜を回収すると共に周囲の鎧片を引き寄せ破損部位を補おうとするが、キールの刀撃がそれを阻み、完全には回収できない。
「っと!?」
重い一撃を当てるには絶好のチャンス。然し、武器の重みもあり、突進中に鎧片を踏んづけてバランスを崩してしまうソフィア。すぐさま体勢を立て直すが、『敵』にキールの迎撃を潜り抜けて鎧片を回収するチャンスを与えてしまう。
「むう…やはりこうも動き回るようでは、完全に場をクリアするのは難しそうか」
ソフィアの状態を見て、ラグナが呟く。
彼とキールは、ちょくちょく隙を見ては、周囲の鎧片を撤去し敵に利用する隙を与えまいとはしていたが、敵もまた移動している上、豪腕による殴り飛ばしにより味方の位置もめまぐるしく変わる故に確実な効果を発揮できていない。
何よりも、鎧片を撤去するだけの手数の余裕がなかったのである。
或いは、敵を一箇所に留められる何かの工夫があれば、また効果はあったのかもしれないが。
「回収させちゃったけど、そんな欠片で止められると思ってる?」
突き出される杭による強烈な一撃が、鎧片をものともせずに貫き、内部のスライムに突き刺さる。
元より障害物を破砕する為にあるこの武装による一撃は、スライムに大きなダメージを与えたのか、鎧がぐらつく。
「…倒したと思われては困るな」
直後、打ち砕かれた鎧の隙間から、光の剣が突き刺さる。
その柄であるタクトを握るのは、覚羅。先の刃は彼を傷つけた物の、戦闘不能まではいたらせていない。
●砕ける、魂
二人の重い攻撃により、大きく傷ついた『敵』。その体が揺らいだのに気づいたウィンスは、警告の言葉を叫ぶ。
「全員下がれ!来るぞ!」
「命令するな!」
反発するキールに、ちっ、と軽く舌打ちするウィンス。
「あぶねーから、そこを出ろってんだよ!」
ウィンスが体当たりでキールを突き飛ばした次の瞬間、無数の棘が鎧の全身から噴出する。
それは、同時に、先ほどまでに打ち込まれた弾丸や、突き刺した刃も全て一斉に噴出された事を意味する。
「厄介なもんだ…っ!」
ハンターたちが反応できる前に、棘を収納し、ウィンスに殴りかかった『敵』。然し、その拳は、キールの刃に止められる。
「貸しを作るのは嫌いだからな」
「それはお互い様だおっさん――」
ウィンスの突きが鎧の腕を弾き、『敵』は距離をとる。その後ろには、待ち構えていたが如く、シンとリカルドが。
「――一斉掃射だ」
「ああ!」
敵の正体が判明し、計画していた攻撃法が効を成さないと判明した以上。リカルドは既存の手に執着せず、シンと共に一斉に銃に手を掛け、猛烈な弾幕を『敵』に浴びせる!
「動かなければ、的、だよっ!」
動きが止まった『敵』に対して、ソフィアがアッパーカットのように腕を振るい、突き上げるような一撃を叩き込む。
突き出された杭は鎧の中心を貫き、周りにもヒビを入れる。
反撃の拳をラグナが受け止め、そのまま腕を引っ張るようにして拘束。
「名乗る名の一つも無い事こそ、あんたの悲劇かもな……ッ!」
構えたウィンスの刀は、一撃必殺を狙い。
それを避けられないと悟ったのか、『敵』は最後の手段に出る。
「!?」
拘束した腕が急激に軽くなったのを悟ったラグナは、直ぐに隣に予備していたたいまつに手をかける。だが、それよりも速く、胸の鎧に開いた穴から、液体金属のスライムが飛び出し、一直線にウィンスを狙う!
「へっ、逃げるよりも敵の殲滅を優先するって訳か。なるほど、『騎士』らしい」
カッ、とウィンスが目を見開く。
「上ッ、等だあああああああああッ!」
絶叫と共に、気合の一閃。
一瞬の間。
――スライムは崩れ去り、液体と化す。
●続く、調査
「ふむふむ。水銀…でしょうかね」
シンによってライフルが打ち込まれ、確実な死亡をが確認された後。スライムが残した液体を調べるソフィア。
元々、歪虚とは生物が負のマテリアルの影響を受けて出来た物だ。ならば、何故その死体は…『水銀』なのか?
「もう少し、中を調べた方がよさそうだな。ドクターが調査を再開して、他のに襲われたらまずいだろ」
「確かに安全を考えれば調べたいが2体で挟み撃ちとかにあったら不味いだろ…?今回の依頼はこれを倒すだけだ…、それに怪我の事も考慮すれば尚更だ…」
シンがウィンスの意見に反発する。メンバーの内、リカルドと覚羅の傷は比較的に重く、次の戦闘があった場合、それに挑むにはやや荷が重い。
「なら、半分ずつだ。片方をこのままけが人の護衛に残して、もう片方が探索する。敵が見えたら即撤退。それでどうだ?」
――遺跡の扉を何とか開け、中へと進んでいく。
狭い通路の中。程なくして、ハンターたちは、もう一体の鎧を目の当たりにする。
その目に赤い光が点っていたのを確認したハンターたちは、事前の約束どおり、撤退する。
「――ふむ。少し騒がしいですね。もう私が起きる時間――という事でしょうか」
ハンターたちが去った後。遺跡には、誰の物とも分からぬ声が響き渡ったのを、彼らは知る由はない。
「――上等だ。黙らせて玄関先にでも飾ってやるよ」
鎧片が掠めた右手に滲む血をぺろっと舐め、ウィンス・デイランダール(ka0039)は眼前の『敵』を睨み付ける。
「その前に自分が飾り物にならないようにな」
皮肉を込めてキール・スケルツォ(ka1798)が呟く台詞。
社会の最下層を見てきた彼は、ウィンスの持つ良家の出であるオーラを敏感に感じたのだろう。
『そんないい所の人間が何故、こんな危険を犯すような職についたのか』『何か、裏があるのではないか――』
その疑惑が恐らく、彼がウィンスに向ける警戒心の元だ。
「遺跡…を守ってるのかな?どういう仕組みで動いているのか気になるね」
ソフィア =リリィホルム(ka2383)が頭をかしげる。どんな物でも、その仕組みを解析したくなる『好奇心』。それは恐らく、彼女が機械を友とし、鍛冶と機械の修理を生業としていた影響もあるのだろう。
――有無を言わさぬ先制攻撃。逃げたハンターたちを追ってこなかったと言う事実と組み合わせれば、恐らくこの『敵』が遺跡を守る守護者のような物だと言う事は容易に推測できる。が、ここで足止めされる訳にはいかない。
「任に命を捧げるか。皮肉なもんだ。歪虚の方がよほど騎士らしい」
ウィンスのその台詞は、果たして本物の皮肉か。それとも――素直な賞賛か。
●刃、交え
「遅いぜ」
火蓋を切ったのはキール。回避の隙を与えぬ、予備動作なしの無造作な袖の一振り。
ナイフが飛び出し、一直線に『敵』の関節へと向かう。
キン。鎧の隙間に挟まれるようにして、刃が突き刺さる。
「こちらも行かせて貰いましょう」
直後、彼とタッグを組むマッシュ・アクラシス(ka0771)が突撃。前屈みの姿勢からレイピアを顔の横に構え、すれ違うように突破!
――『敵』の後ろに降り立った彼の手には、レイピアはない。見れば、キールのナイフ同様。鎧の間、関節部分に突き刺さっていた。
が、近接する相手を放って置くほど、この『敵』も甘くはないのは、先に接敵したハンターたちが実証済みだ。関節に刺さった二本の刃をまるで気に介する事はなく、振り向きざまにその豪腕が薙がれる!
「ふ…っ!」
咄嗟に逆手のサーベルで、振るわれたその腕を受け止める。軽々と後ろへ跳び、衝撃を涼しげな顔で受け流すが――流石にノーダメージ、とは行かなかったのだろう。その頬には一筋の汗が流れている。
「さて、どんな相手なんだろうね!」
シン・コウガ(ka0344)の別方向からの牽制射撃が鎧の脚部の周りに土煙を巻き起こし、『敵』を戸惑わせその動きを止める。
それに乗じ、リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)が、死角となる下方へ低姿勢でもぐりこみ、上半身をバネのように伸ばし、回転を伴って脇下に漆黒のナイフを突き刺す。
「顎下から銃弾ぶち込んだらさすがに衝撃が中に浸透するもんなんだが、さてどうかな?」
突き刺した刃を支えにして体を至近距離に引き込み、鎧の顎に逆手の銃口を突きつけそのままトリガーを一気に引く!
連続で発射される弾丸が、鎧を次々と揺らす。
その多大な衝撃は、鎧騎士を大きく後ろにのけぞらせる。
「ふん、他愛も――っ!」
倒したかと思ったが、そうでもなかったようだ。ゆっくりと振り上げられる豪腕。すぐさま突き刺した漆黒の刃を引き、後退しようとするが――
「抜けないか…っ!」
先のハンターたちの報告書の内容が頭を過ぎる。恐らくレイピアを鎧に突き刺したハンターも、この状態になっていたのだろう。僅かな戸惑い、そして鎧片を踏み滑った隙を突き、鋼の腕がリカルドのの額に正面から叩き付けられる!
「大丈夫か…?」
見た目に違わぬ強烈な衝撃によって大きく吹き飛ばされるリカルドを受け止めるシン。
「ああ。…いろんなのとやり合ってきたが、ハンターになったのを改めて後悔するなこれ」
額から血を流してはいるが、命に別状もなく。頭を横に振って意識を落ち着けると、再度リカルドは立ち上がる。ハンターの身体能力の賜物、と言った所か。
「さすがに対人戦闘術のみじゃ、きついもんがあるな、もう少し似たような敵と戦って改良を加える必要がある」
そんな彼らに『敵』の注意は向いたようだ。付近の鎧片に、手を伸ばす。恐らくは拾い上げ弾丸にし、シンもろともリカルドを巻き込むつもりか。
「誰だかは知らんが、まったく、後片付けくらいしてから姿を消すべきだ!」
掴もうとしたその鎧片は、然しラグナ・グラウシード(ka1029)の蹴撃によって、遥か彼方へ飛ばされる。
「強固な鎧、ねえ」
代わりに振り下ろされた鋼の拳を、盾で正面から受け止める。
「だが、『神聖騎士教則本』曰く!『誇らしき長所の裏には、もろい弱点が隠されているもの』なのだ!」
盾の影からナイフが突き出され、鎧の腰の部分の隙間に嵌る。そのまま盾を全力で振るい、強打を以ってしてナイフを中へと押し込む!
目的を達したのか、ラグナは後退すると同時に、後ろに向かって叫ぶ。
「準備は整った! 後は任せるぞ!」
●雷光、迸り
「ああ…任せておけ」
『敵』の注意がラグナに向かったその一瞬の隙を突き、彼とペアであった鳳 覚羅(ka0862)が、鎧の背後から迫る。
その両手には蒼き光。飛び散る火花が、そのエネルギーの正体を表していた。
――恐らく敵の正体は、鎧その物ではなく、その中に居坐している『何か』と、覚羅は推測していた。
それ故に、彼は、鎧の外ではなく、内部に確実に攻撃を与えられるこの『機』を待っていた。
「堅固な鎧の中に身を潜ませたとしても金属である以上これは防げないはずだが…もっと効果的な方法が提供されたからな。…使おう!」
『雷撃』を溜め込んだ両手で、そのままラグナの刺したナイフの柄と、マッシュが突き刺したレイピアの刃の腹を、同時に握る!
「――!!」
雷撃が、奔る。両手を『電極』とし、突き刺さった刃を媒介に内部に到達した雷撃は、確実にその『何か』の体力を奪い、元々それ程速くなかったその動きを更に緩慢にさせる。
四方に撒き散らされる電光をよそ目に。
やるならば今がチャンス、とばかりに。
マテリアルを弾丸に充填し、爆発的なパワーを持った一射と化して、シンは鎧の頭部――赤い宝石の部分を狙撃する。
ガン。
鈍い音を立てて、衝撃によって、弾丸の直撃を受けた鎧の頭部が吹き飛ぶ。
だが、その下には何もない。
「…?」
不審に思った覚羅の注意が、吹き飛ばされた兜に向いた瞬間。ザシュっと、鎧の隙から突き出された二本の刃が、彼の胸部を交差するように貫く。
動きを鈍らせたとて、この至近距離、しかも直接電撃をを流し込むために手を掛けた状態ならば、『外さない』のである。
「断ち切らせて頂きましょう!」
傷を受けた覚羅の手が、レイピアから離れた直後。跳躍したマッシュが、空中から、体重を乗せた渾身の一撃を振り下ろす。
――突き刺したレイピアは、同時にこの一撃への布石でもある。レイピアの刃をガイドレールのように使い、マッシュのサーベルは、突き刺さったその関節を断ち切ろうと――
ガキン。
鎧片が、その刃を阻む。
急速に関節部を圧縮したのか。『敵』は鎧片で一片の隙間も残さずにレイピアを挟みこむことによって、何とかサーベルを受け止めたのだ。
――最も、渾身の一撃が、その様な急ごしらえな手で完全に受け止める訳もなく。鎧片にヒビが走り、砕け散る。
「なるほど。そういう事ね!」
強化された視覚で、己の知りたかった『事実』を確認したソフィアが、ぽんっと手を叩く。
●刃の、正体
――最早、疑いの余地はない。
砕けた鎧片の裏から覗く物。そして、覚羅の身に突き刺さった刃。
――鎧を操る雑魔は、『液体金属』のスライム。
軟体故に、衝撃は致命的なダメージとは成らず、刃を巻き取る事ができる。
金属ゆえに、硬化させれば斬撃もまた致命的なダメージにはならず、刃が離れれば元に戻る。そして、その突き刺しは強力な武器にも変わる。
そしてこの二つの特性を組み合わせる事によって――『敵』は動くための動力を生み出し、そして剛力と柔軟性を併せ持ったのである。
「ちっ、そう簡単には…断たせてはくれねーって訳か!」
マッシュの一撃によって鎧片の割れた箇所を再度狙ったウィンスの刃は、半分ほど液体金属部分に食い込む物の、逆に粘着されてしまい拳が直撃する。
刃で強引に受けた物の、彼の日本刀はマッシュのサーベルよりも更に受けには向かず、ダメージは軽いとは言えない。
「おっと、来ないの?ならこっちから行くよー!」
ウィンスへの追撃を警戒し武器を構えたソフィアだったが、敵の追撃がないと見るや即座に体勢を切り替え、突進していく。
液体金属スライムはその体を触手の如く伸ばし、兜を回収すると共に周囲の鎧片を引き寄せ破損部位を補おうとするが、キールの刀撃がそれを阻み、完全には回収できない。
「っと!?」
重い一撃を当てるには絶好のチャンス。然し、武器の重みもあり、突進中に鎧片を踏んづけてバランスを崩してしまうソフィア。すぐさま体勢を立て直すが、『敵』にキールの迎撃を潜り抜けて鎧片を回収するチャンスを与えてしまう。
「むう…やはりこうも動き回るようでは、完全に場をクリアするのは難しそうか」
ソフィアの状態を見て、ラグナが呟く。
彼とキールは、ちょくちょく隙を見ては、周囲の鎧片を撤去し敵に利用する隙を与えまいとはしていたが、敵もまた移動している上、豪腕による殴り飛ばしにより味方の位置もめまぐるしく変わる故に確実な効果を発揮できていない。
何よりも、鎧片を撤去するだけの手数の余裕がなかったのである。
或いは、敵を一箇所に留められる何かの工夫があれば、また効果はあったのかもしれないが。
「回収させちゃったけど、そんな欠片で止められると思ってる?」
突き出される杭による強烈な一撃が、鎧片をものともせずに貫き、内部のスライムに突き刺さる。
元より障害物を破砕する為にあるこの武装による一撃は、スライムに大きなダメージを与えたのか、鎧がぐらつく。
「…倒したと思われては困るな」
直後、打ち砕かれた鎧の隙間から、光の剣が突き刺さる。
その柄であるタクトを握るのは、覚羅。先の刃は彼を傷つけた物の、戦闘不能まではいたらせていない。
●砕ける、魂
二人の重い攻撃により、大きく傷ついた『敵』。その体が揺らいだのに気づいたウィンスは、警告の言葉を叫ぶ。
「全員下がれ!来るぞ!」
「命令するな!」
反発するキールに、ちっ、と軽く舌打ちするウィンス。
「あぶねーから、そこを出ろってんだよ!」
ウィンスが体当たりでキールを突き飛ばした次の瞬間、無数の棘が鎧の全身から噴出する。
それは、同時に、先ほどまでに打ち込まれた弾丸や、突き刺した刃も全て一斉に噴出された事を意味する。
「厄介なもんだ…っ!」
ハンターたちが反応できる前に、棘を収納し、ウィンスに殴りかかった『敵』。然し、その拳は、キールの刃に止められる。
「貸しを作るのは嫌いだからな」
「それはお互い様だおっさん――」
ウィンスの突きが鎧の腕を弾き、『敵』は距離をとる。その後ろには、待ち構えていたが如く、シンとリカルドが。
「――一斉掃射だ」
「ああ!」
敵の正体が判明し、計画していた攻撃法が効を成さないと判明した以上。リカルドは既存の手に執着せず、シンと共に一斉に銃に手を掛け、猛烈な弾幕を『敵』に浴びせる!
「動かなければ、的、だよっ!」
動きが止まった『敵』に対して、ソフィアがアッパーカットのように腕を振るい、突き上げるような一撃を叩き込む。
突き出された杭は鎧の中心を貫き、周りにもヒビを入れる。
反撃の拳をラグナが受け止め、そのまま腕を引っ張るようにして拘束。
「名乗る名の一つも無い事こそ、あんたの悲劇かもな……ッ!」
構えたウィンスの刀は、一撃必殺を狙い。
それを避けられないと悟ったのか、『敵』は最後の手段に出る。
「!?」
拘束した腕が急激に軽くなったのを悟ったラグナは、直ぐに隣に予備していたたいまつに手をかける。だが、それよりも速く、胸の鎧に開いた穴から、液体金属のスライムが飛び出し、一直線にウィンスを狙う!
「へっ、逃げるよりも敵の殲滅を優先するって訳か。なるほど、『騎士』らしい」
カッ、とウィンスが目を見開く。
「上ッ、等だあああああああああッ!」
絶叫と共に、気合の一閃。
一瞬の間。
――スライムは崩れ去り、液体と化す。
●続く、調査
「ふむふむ。水銀…でしょうかね」
シンによってライフルが打ち込まれ、確実な死亡をが確認された後。スライムが残した液体を調べるソフィア。
元々、歪虚とは生物が負のマテリアルの影響を受けて出来た物だ。ならば、何故その死体は…『水銀』なのか?
「もう少し、中を調べた方がよさそうだな。ドクターが調査を再開して、他のに襲われたらまずいだろ」
「確かに安全を考えれば調べたいが2体で挟み撃ちとかにあったら不味いだろ…?今回の依頼はこれを倒すだけだ…、それに怪我の事も考慮すれば尚更だ…」
シンがウィンスの意見に反発する。メンバーの内、リカルドと覚羅の傷は比較的に重く、次の戦闘があった場合、それに挑むにはやや荷が重い。
「なら、半分ずつだ。片方をこのままけが人の護衛に残して、もう片方が探索する。敵が見えたら即撤退。それでどうだ?」
――遺跡の扉を何とか開け、中へと進んでいく。
狭い通路の中。程なくして、ハンターたちは、もう一体の鎧を目の当たりにする。
その目に赤い光が点っていたのを確認したハンターたちは、事前の約束どおり、撤退する。
「――ふむ。少し騒がしいですね。もう私が起きる時間――という事でしょうか」
ハンターたちが去った後。遺跡には、誰の物とも分からぬ声が響き渡ったのを、彼らは知る由はない。
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鎧倒すよっ! ソフィア =リリィホルム(ka2383) ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/10/21 11:29:19 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/17 21:26:53 |