【AP】動物がどったんばったん大騒ぎ!

マスター:cr

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2017/04/09 22:00
完成日
2017/04/18 00:12

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 一面に広がる草原。その丈は高く、中に生きる動物たちの姿を外から隠してしまいます。
 その中に丈の低い木がまばらに生えています。下のほうが大きく膨らんだこの木はバオバブ。サバンナでよく見られる樹木です。
 今回我々がやって来たのはクリムゾンウェス島。世界各地の動物を集めた一大動物園として開業される予定の島でした。しかしこの島で不思議な事が起こり始めたのです……。


「狩りごっこだね、負けないんだから☆」
 可愛らしい少女がサバンナを駆けています。特徴的な大きく立った耳、見つけました、サーバルキャットのナナです。
「(サーバルキャットの魅力は)ジャンプ力ぅ……ですかね」
 ガイドのモア・プリマクラッセさん(kz0066)がそう答えてくれました。
「このクリムゾンウェス島は世界中の動物を集めるという目標を元に、巨大動物園として開園される予定だったのですが、この島で定期的に噴出するマテリアルという物質を浴びることでこのような姿に変わるのです」
 そうやって示してくれたナナちゃんの姿は可愛らしい女の子にしか見えません。
「これを何と称するかについては現在協議中なのですが、端的に言えば元の動物の運動能力や趣向、習性などを残したままヒトの女の子に姿に……擬人化と言うそうですが、そのような変化を起こします」
 その時ナナちゃんは大きく高く飛び上がりました。人間ではありえないこのジャンプこそサーバルキャットの最大の特徴です。
「食事については元の動物とは違い通常の人間が食べるものと同じものを食べます。基本的にはクリムゾンまんという完全栄養食品を配っていますが……ともかく、例えば肉食獣だからといって他の動物を狩り食べる、ということはありません。狩猟本能はあのように狩りごっことして現れるようですね」
 モアさんが指し示してくれた場所では、ナナちゃんが他の動物を押さえ込んで喜んでいました。


「マテリアルの効果はもう一つありまして、熱帯から寒帯まで五つの気候帯、それに伴う様々な地形がこの一つの島で全て再現されています」
 モアさんはこの島の地図を見せながらそう説明してくれました。
「まだ我々はこの島にいる人の姿に変わった動物達を全て把握していません。全ての気候帯を周り出来る限り多くの動物達に出会いたいですね」
 さあ、私たちはどういった動物たちに出会えるのでしょうか。大冒険に出かけましょう!

リプレイ本文

●森林
 ここはクリムゾンウェス島中心部の森。うっそうと樹が生い茂るこの場所で話し声が聞こえます。
「博士、あの者なんか良いのではないでしょうか?」
 そう言ったのはアフリカワシミミズクの仁川 リア(ka3483)。コクリと頷いたのはアフリカオオコノハズクの夕凪 沙良(ka5139)。ミミズクらしくピンと撥ねた二本の髪が特徴の二人です。
 そして二人の言葉に眼鏡を光らせたのはメガネフクロウのキャリコ・ビューイ(ka5044)。フクロウ科の彼女達は何か企んでいる様です。
 さてそんな三人の視線の先に居たのはアームブラスターオオカミのアルマ・A・エインズワース(ka4901)。オオカミと言えば獰猛というイメージがありますが、彼女はとても臆病なようです。おどおどしながら薄暗い森を行きます。そんな彼女の肩が突然掴まれました。
「た、たべないでくださいー!?」
 フクロウ科の彼女達にとって音もなく飛行することなど朝飯前。かわいそうにアルマは三人に囲まれてしまいました。そんな三人がアルマを脅かした理由。それは。
「食べられたくなかったら料理を作るのです」
「我々はグルメなので、長の言う通りクリムゾンまんは食べ飽きたのであります!」
「きゅー……料理ってなんですかっ」
「料理とは、食材を組み合わせて加工し別の形にして味わえるようにした物であります!」
「料理の作り方はガイドから得るのです、頭を使うのです」
「料理の本はガイドを襲えばきっと手に入るです」
「わぅー……でもガイドさんを襲うのはだめですー……」
 恐ろしいことを言う博士くーんと涙声になっているアルマをフォローしてか? 助手達は助け舟を出します。
「かっぷらーめんでもいいのですよ、らーめんが何かは調べるのです」
「必要な物が有ったら、自分に言うと用意するのであります!」
「食材はクリムゾンまんを生成している所から得る事が出来るはずです、僕たちは賢いので分かるのです」
 結局トボトボと出かけることになったアルマ。そんな彼女にリアはこう言って送り出しました。
「セルリだかセロリだかには気を付けて行くのですよ」

 そんな光景を樹の上で聞いている者が居ました。ビクトリアコアラのドゥアル(ka3746)です。
「……すぴー」
 訂正します。彼女は寝息を立てて寝ていました。

●サバンナ
 さて場面は変わってここはサバンナ。ナナちゃんの狩りごっこを見ていた私達に近づいてくる者達が居ました。
「シンガプーラのキララじゃ☆ミ」
「私はサバンナキャットのイスカ! サーバルの父さまとベンガルの母さまから産まれたハイブリッドっ」
 二人は星輝 Amhran(ka0724)とUisca Amhran(ka0754)。ナナと合わせてサバンナの三姉妹としてちょっと有名です。
「つまりイスカさんはナナさんとは腹違いの姉妹になりますね」
「でも、いじわるな父さまは、いつの間にかいなくなって、たのしー☆」
 そんなイスカはナナと同じく元気いっぱい、大好きな狩りごっこをしたくてたまらないようです。
「それで、彼女はシンガプーラ。小さな妖精とも呼ばれる猫で、愛情深くおとなしい性格なのですが……」
 そう口ごもったモアさんの視線の先では、キララがナナの事を面白くないといった目つきで見つめていました。
「感情表現が笑顔しか無いとか、昔っからヘラヘラと面白う無い奴じゃ」
 何だか敵意むき出しのキララにイスカはおろおろ。でも彼女も一つ心配していました。
「ナナ姉さまはいつも笑顔だね。でもいつも笑顔ばかりでちょっと心配……本当は無理して笑ってないかな……?」
 そして二人は何やら内緒話を始めます。
 さて、そんな時私達に別の動物が話しかけてきました。
「こんにちは! ハツカネズミのカンナです!」
 小柄なキララよりもさらに小柄な観那(ka4583)が明るく元気よく挨拶してくれました。ハツカネズミは生存能力に長けた動物。だからいつでもどこでも元気一杯です。
「でも寒い場所はご勘弁を」
 そんなカンナにキララが何か耳打ちしていました。それを聞いたら彼女はあっという間にナナの前に飛び出していきました。
「狩りごっこだね☆」
 ナナも理解したようで追いかけ始めます。
「姉さまには負けません!」
 イスカも競うように追いかけます。そんな二人をニヤリと見ているキララ。持ち前のすばしっこさで二人を追い抜くとそのまま巻き上げた土をナナに引っ掛けます。
「きゃっ! でも負けないんだから☆」
 土を浴びても楽しそうに走り続けるナナ。スピードは猫の方が上のようです。だんだん距離が近づいていきます。
 しかしここでカンナは急にカーブ! それに対応できず大きく膨らむ二人。ハツカネズミの動きについて行けません。
 一方キララは小柄さ故かカンナについていき、飛びかかります。
「キャーっ!」
 悲鳴を上げるカンナ。ですが次の瞬間キララの足を引っ掛けます。見事に転ぶキララ。窮鼠猫を噛むとはまさにこの事です。
「あはは、逃げられちゃった☆」
 失敗しても楽しく笑顔なナナ。そんな彼女にイスカが恐る恐るこう言いました。
「姉さま……あの……リボンは?」
 そんなイスカの手にはナナのリボン。大切な物を隠せばナナの怒った顔を見られるかと思ったのでした。ですが……?
「私の……大切な……リボン……どうしてかな……早起きしたからかな……」
 ナナは笑顔のままでしたが、突然大粒の涙をポロポロと流し始めます。その様子におろおろしてしまう二人。そして。
「隠してごめんなさい、です……」
「……ごめんなさい、なのじゃ」
「サバンナキャットもシンガプーラも心の機微が分かると言われています。それは確かなようですね」
 ガイドのモアさんはそう我々に説明してくれました。

「……暑い……」
 そんなサバンナで目を覚ます者が居ました。ドゥアルです。森林に居たはずの彼女がどうしてここに居るのでしょう。それは先日森林地帯に降った豪雨の影響で流されてしまっていたのです。

●サバンナ続き
 我々はサバンナの旅を続けます。そんな我々の前に次に現れたのは、こちらを睨みつけてくる子でした。
「……なんだよ。あっち行けよ」
 蛇柄のフードを被った彼女はステラ・レッドキャップ(ka5434)。ロイヤルパイソンが擬人化した様です。
「ボールニシキヘビさんですね」
「ロ、ロイヤルパイソンだ!」
 しかしツンツンしていた彼女は、ガイドのその言葉に突然うろたえ、何故か涙目になってしまいました。
 彼女がおろおろしていた頃、カンナが元気いっぱいに走ってきました。それをひと目見たステラでしたが、興味ないとばかりに顔を背けます。
 が、その後でチラチラとカンナの方を見ています。体をゆらゆら揺らしているその様子はちょっと挙動不審です。
「……どうされたのですか?」
「な、なんだよ! 関係ないよ!」
「ひょっとして狩りごっこがしたいのですか?」
「……だって怪我させちゃうかもしれないだろ! も、もう! あ、あっち行けよ!」
 恥ずかしいのか顔を真っ赤にしているステラの様子に思わず笑顔になりながら、カンナを追いかけていた我々が出会ったのはピョンピョンと飛び跳ねている彼女でした。
「みんなー! あつまってー!! クリウェステージのダンスタイムだよー!!!」
 そうやってアピールしているのはカオグロインパラです。
「私はインパラについては詳しくないので、この人に説明していただきましょう」
「カオグロインパラはですね、スキップのように軽快な動きが特徴でやはりジャンプ力ぅ……ですかねぇ……独特のステップから、ストッティングと呼ばれるダンスで健康さを……元気だぞ! とアピールしてるんですねぇ」
 同盟森林の藤堂研司(ka0569)おにいさんの解説どおり、インパラちゃんは楽しそうに飛び跳ねています。そんな彼女は今日のゲストを紹介しました。
「今日のゲストはアオダイショウおねえさん!」
 その紹介とともに緑のフードを被った女性、仙堂 紫苑(ka5953)が現れます。どことなく気だるげな彼女は息を呑むような美人さん。洗練された雰囲気はまさにシティーガール。それもそのはず、四季のある日本で生息している彼女は寒いのも暑いのも大丈夫。さらに都市化にも対応する別名「都市の蛇」なのです。
 そんな彼女がアンニュイな気分だった理由はすぐにわかりました。
「インパラに呼ばれて来たけど……ステージなんて聞いてない! 騙された! 食べちゃうぞー!」
「きゃー! 狩られちゃうー!!」
 その声とともにダンスを始める二人。ステージを滑るように歩くまるでモデルの様な紫苑に対し、ステップを刻み軽やかにダンスしていきます。
「きゃー!」
 さらにここで飛び入り参加したのはカンナ。こちらもぴょこぴょこ跳ねるようにダンス。二人揃ってストッティングを始めればステージ上は大騒ぎです。
 そんなステージを眺めている子がいました。
「お菓子ないのかなー……」
 直立不動でぼんやりしている彼女は高瀬 未悠(ka3199)薄茶色の髪に飛び出た焦げ茶色のツインテールが特徴的です。そんな彼女ですがかつてガイドさんから奪ったあま~いお菓子を一度食べて依頼、その虜になっていました。しかしそんな彼女の眼に突然ある物が飛び込んできます。
「あそこにあるのは……特大ドーナツ!? ああっ、早くかじりつきたいわ!!」
 と同時に猛ダッシュしていく未悠。そのまま特大ドーナツに飛びつこうとしますが……。
「その特大ドーナツは私のものよ! このダンス対決に勝ってみせるわ!!」
「ド、ドーナツ?!」
 みんながそんなもの無いぞと思っているのもお構いなし。彼女は眼をハートにしてシング&ダンス!
「アイウォンチュー! アイニージュー! アイラービュー! アイイートユー!!」
 くるくる回りながら踊り、お尻を振りながらジャンプしてそのままインパラちゃんの上に着地!
「あはっ、あーはっはっはっ!! ライドオンターーイム!! 誰にも邪魔できな~い!!」
 そしてダイブしてガブリ!
「いったーーーい!」
 そこには思い切りかぶりつかれた紫苑の姿がありました。しかし彼女、その性格はおとなしくて穏やか。だからでしょうか、思わずへたり込んでしまいます。
「もうやだ……あんまり目立つのは得意じゃない! 暗くて狭いところが落ち着くの!」
 さてその頃、クリムゾンまんをモグモグと食べながら歩いている子が居ました。
「あら、なにかしら……」
 おしとやかな彼女はコモドドラゴンのミモザ・エンヘドゥ(ka6804)。王女が人とコモドドラゴンの双子を産んだという伝説もあるぐらいの生き物です。彼女ももしかしたら王家の血筋の引いているのかもしれない、そう思わせる高貴な雰囲気を纏っています。まあその割にはかなりの勢いでクリムゾンまんを食べているのですが。
「ちょっと近づいてみようかしら……」
 そのまま綺麗な姿勢で歩いて行くミモザ。ですが大柄な身体故か、そのスピードは原付バイク並です。
 そしてそのままステージに近づくと上がろうとしたのですが……。

 ドガシャーーン!

「あらあら、どうしましょう」
 実は彼女はとてもパワフル。彼女が普通に尻尾を一振りしてみたら、辺りにあるものが全部壊れてしまいました。

「ん、今日も平和です……」
 さてそんな大騒ぎを木の上から見ていたのはカナリアの金糸雀(ka6409)。日差しに気持ちよくなってきたのか、彼女はそのまま歌い始めます。
「~♪」
 その歌声を聞きながらゴロゴロ寝ていたのはライオンの葛音 水月(ka1895)。でも彼女は髪も服の色も真っ黒。黒変種のライオン、言うならばブラックライオンなのです。
 そんなゴロゴロしていた彼女ですが、気分が変わったのでしょうか、やおら飛び起きます。金糸雀も何をしたいのかはわかった模様。木から飛び降りるとそのまま地面スレスレを飛行し始めます。そんな彼女を追いかけ始める水月。狩りごっこの始まりです。
 二人はサバンナをしばらく走り続けます。ですが金糸雀は鳥。突然高度を上げ始めます。
「あっ、降りてきてくださいよー! 飛ぶなんてずるいですーっ」
 ぴょんぴょん跳んで捕まえようとする水月ですが、中々届きません。そんな様子を見た金糸雀は満足したのでしょうか、柔らかい笑顔でクルクルと円を描いて飛んでいます。
 一方の水月は必死に捕まえようと何度も何度もジャンプします。その高さは少しずつ高くなっていき、そしてとうとう手が届きました。
「やった……?」
 空中で金糸雀を掴んだ水月。ですがその拍子に二人揃ってバランスを崩してしまいます。結果二人は折り重なるように落下してしまいました。
「いたた……」
 起き上がろうとする二人。しかし上手く起き上がれません。それもそのはず、水月の顔は金糸雀の胸の中に埋もれていたのです。
 その状況に気づいて赤面する二人。ですがそれもつかの間。仲良い相手とのこの一時を楽しんでいました。そして。
「ん、心がポカポカです……」
 そのまま二人は抱き合ったまま、口づけをかわしていました。

●半砂漠
 さて、我々はサバンナを通り過ぎ次の場所へやって来ました。乾燥が進んだこの場所は生えている草木の量が格段に減り、砂や岩がむき出しになった部分が多く占められています。一つの島の中で気候が変化する、これもクリムゾンウェス島、ひいてはこの島を覆うマテリアルの不思議でしょうか。
 そんな中最初に出会ったのは両手両足に黒いブレスレット、アンクレットを付けたのが眼を引くクロアシネコのアイビス・グラス(ka2477)でした。我々は早速彼女と交流しようと近づきます。が……
「余り……近寄らないで……」
 そのままあっという間に走り去り、穴の中に入ってしまいました。
「クロアシネコはとてもシャイですからね。我々には中々会おうとしてくれないんです。まあ太陽も傾いてきましたし、もう少し移動して本日は終了にしましょう」
 ガイドさんの言葉に従って我々は数キロ移動し、岩陰を見つけてキャンプにすることにしました。クリムゾンウェス島の本日の冒険はここで終了です。

 翌朝、早速冒険を再開しようとした我々が眼にしたのはクリムゾンまんを食べているアイビスの姿でした。一晩で何キロもの距離を移動し、集めたクリムゾンまんは8kg以上あるでしょうか。
「……沢山動くから、一杯食べるの」
 この細い体にこれだけの量を収めるとは驚きです。それを見た我々取材班の一人は、居てもたってもいられず彼女に接触しようと近づいていきます。逃げるアイビス。ですが逃げられないとわかると……。
「近寄らないでって、言ってるでしょ……!!」
「クロアシネコはとてもシャイですが、追い詰められると獰猛に反撃します。そのことから別名『蟻塚の虎』とも呼ばれています」
 KOされた取材班のカメラを確認した所、そこに映っていたのは見事な横飛び蹴りを決めたアイビスのシューズの真っ黒なソールでした。

 さて、先を進んだ我々が次に眼にしたのは岩が多くを占める場所。ハラダとも呼ばれる場所です。
 そこで我々が出会ったのは昼寝をしている子でした。ですが、我々に気づいたのか起き出すと挨拶をしてくれました。
「よぉ、オレはナマケグマ! さっき昼寝してたのは夜行性だからでさ、こんな名前だからって怠けモンじゃねンだぜ?」
 セーラー服のような胸元のV字と長い黒髪が印象的な彼女の名は大伴 鈴太郎(ka6016)です。唇を突き出しながら喋るのもナマケグマの特徴です。
「ナマケグマという名前ですが木にぶら下がる姿がナマケモノの様に見えたから勘違いしたようですね」
「そうだよ! 冬眠もしねぇし寧ろ他のクマよか働きモンだよ。まあ見ててな。こんな感じで……よっと! な?」
 木から木へ飛び移る姿は実に巧みです。そんな彼女ですが、ぶら下がりながら我々にこう提案してくれました。
「他の気候帯に行くンなら途中まで背負ってってやろうか?」
 というわけで我々はその言葉に甘えることにします。我々が長い黒髪に体を預け、背中にしがみついた所彼女はそれを物ともせず軽やかに進んでいきます。結果あっという間に次の目的地にたどり着きました。岩の姿は影を潜め、代わりに青々とした草原が広がっています。
「ありがとうございます。これはお礼です」
「あ! これ美味しいんだよな~♪」
 モアさんが差し出したハチミツを幸せそうな顔で舐める鈴太郎の姿に我々も幸せな気分になるのでした。

●平原
 さて、やって来た草原では大きな川が我々の行く手を阻んでいます。ですが、この川は彼女たちにとって生命の営みをする上で欠かせない、ゆりかごのような存在なのです。
 そんな川の中で何かがキラキラと銀色に光ってみます。あれは何でしょう。近づいてみましょう。
「我はカワネズミじゃ」
 そうやって顔を出したのはヴィルマ・ネーベル(ka2549)でした。カワネズミの特徴はその毛。毛の間に気泡を溜め、泳ぐのが得意です。その気泡が先程見たように銀色に輝くことからギンネズミとも呼ばれています。
「カワネズミは手に水かきの役割を果たす扁平な剛毛が生えていて……」
「これのことじゃな」
 そうやって彼女が見せてくれた手には水かきの手袋が付いていました。
「この姿になった時にこんな影響が出たんですね」
 気さくなヴィルマちゃんと話をしていると、何かが川を泳いで近づいてきました。そして突然波が上がったかと思うと……。
「痛くはないがなんじゃそなた……」
 ヴィルマちゃんは何者かに噛みつかれてしまいました。彼女は大丈夫なようですが噛み付いてきた方は誰なのでしょう。
「ひゃっ?!」
 ですが話を聞こうとするとすぐに川に潜ってしまいました。我々はじっと待ち彼女が顔を出してくれるのを待ちます。
 しばらく後もじもじしながら顔を出してくれたのはインドガビアルのヨルムガンド・D・アルバ(ka5168)でした。
「ワニかえ? 川住まいとは仲間のようなものじゃな」
 ヴィルマが言うとおりガビアルはワニの一種なのですが、我々がワニに持つイメージと違いかなり恥ずかしがり屋のようです。
「え、何でかって? ……だって陸には他の動物がいっぱい居るんだもん」
 そうやって彼女はまた川の中に身を隠します。
「でもインドガビアルさんはかなりの大食漢ですよね。そんな調子でクリムゾンまんは十分確保できるのでしょうか」
「うん、クリムゾンまんだけじゃお腹いっぱいにならないの。仕方ないから、川の中に落ちてる石を齧って空腹感を満たしてたんだ」
「それで我がかじられたのか」
「石と色が一緒なんだもん。でもごめんなさい……」
 また沈んでしまった彼女に水中でヴィルマが声をかけます。
「ここであったのも何かの縁じゃ、我にとってはそなたはもう友だちじゃて」
「ひええっ、お、お友達なんて恥ずかしいよ」
「いやかえ? でもそんなの知ったことじゃないのじゃ」
 ヨルガも本当はみんなと友達になって一緒に遊びたいと思っていました。でも声をかける勇気が出ませんでした。そんな彼女の心の壁を軽々と乗り越えてきたヴィルマ。断る道理はありませんでした。
「そ、それじゃ……」
 二人仲良く川を出て、草原を歩きます。初めての友達が出来たヨルガの様子をもうちょっと追ってみましょう。

 そんな我々の前を突然走り抜けていく物がありました。よく見るとこれはバイク。バイクが走るのは当然ですが、誰も乗っていません。これはどういうことなのでしょう。
「……涼し……」
 いえ、居ました。ドゥアルです。暑くなった身体を冷ますため、ひんやりとした物に身を預けたらさあ大変、エンジンがかかってしまいバイクが走り出してしまいました。普通の動物なら振り落とされるのがオチなのですが、木の上で生活するビクトリアコアラの彼女にとってこの程度朝飯前。まあ風を切って走るバイクに乗れば涼しいでしょうし良いのではないでしょうか。
「……すぴー……」
 いえ、寝息が聞こえてきます。果たして彼女は大丈夫なのでしょうか?

 改めて彼女を追いかけた私達がたどり着いたのは一面の花畑でした。そこに木で作られた小屋が建っています。
「ここは元々管理小屋だったのですが、ある方にお願いされまして彼女の管理下に移りました。さて、ここの住人に挨拶していきましょう。皆さんどうぞ」
 というわけで我々はヴィルマ達と一緒に中に入ります。
「いらっしゃい。紅茶でも一杯いかが?」
 ドアを開けて入った我々を出迎えてくれたのはアナウサギのアリス・ブラックキャット(ka2914)でした。
「私はダッチのナインチェだよ」
 ダッチは別名パンダウサギ、その名の通り黒と白のツートンカラーの髪が目を引きます。どうも彼女はこの小屋を使ったカフェの店主のようです。しかし彼女たちにお湯は扱えるのでしょうか。
「博士達から教えてもらったのだけれど、ここからお湯が出るみたい」
「太陽光システムですね。それで博士達にはもう少し先で会えますよ」
 慣れた手つきでポットにお湯を注ぐ彼女を見ながら、モアさんが色々説明してくれました。
「良い天気だね。ふぁ……眠くなってきちゃった」
 蒸らしの間にあくびを一つ。ゆったりとした時間が流れます。
 そして我々の前に琥珀色の液体が注がれます。甘く爽やかな香りが立ち上ります。
「いい匂いじゃのう……」
「うん、いい香り……」
 ヴィルマもヨルガも自然と顔は綻び、器に口をつけました。
「えへへ、やっぱりお友達を飲むお茶は美味しいね」
 そして彼女はヴィルマの身体に気が付きました。
「あ、怪我してない? もう狩りごっこは良いけれどやり過ぎは駄目、だよ?」
「これは怪我じゃなくて友だちの印なのじゃ」

●森林再び
 お茶を楽しむ三人に別れを告げ我々は次の場所に向かいました。樹木の量がどんどんと多くなり、薄暗い中に木漏れ日が溢れる森の中にたどり着きます。
「……すぴー……」
 最初に聞いたのは聞き覚えのある寝息でした。そうです。ドゥアルです。彼女は無事、この森に戻ってこれたようですね。その間には色々な動物の助けがあったのですが、それはまた別の機会にしましょう。
 さて、次に我々が目にしたのはきゃいんきゃいんと泣きながらこちらに向かってくる影でした。
 それが通り過ぎたかと思うと、もう一人走ってくる者が居ます。
「待ってくださーい」
 丁寧でどことなく気の抜ける言葉遣いでこちらへ向かってきたのは小宮・千秋(ka6272)。明るいクリーム色の髪と、そこから飛び出した犬耳が特徴的なゴールデンレトリバーの子です。でもまだ小柄、子犬のようですね。
 そんな二人が通り過ぎた後で、どうやらこちらに気づいた動物達が居た様です。
「イサト! みてみて! イッパイFriendsがいるヨー♪ オトモダチなれるカナー?」
 茂みから金色の髪が飛び出しました。その頭からはとても小さな獣耳が生えています。彼女はクアッカワラビーのアレクシス・ラッセル(ka6748)です。顔は満面の笑顔。ニコニコしたまま、こちらが構えているカメラに気づくと手を振りカメラ目線をくれました。さすが別名「世界一幸せな動物」。その笑顔を見るだけで幸せな気持ちになります。
 しかしその茂みはかなり深く、彼女の身長ではとても顔を出すことは出来ないはずです。一体どうしたというのでしょう。
「オイアレス、そろそろ降りろ……長ェよ……」
 その理由が聞こえてきました。アレスと対象的にスラリとした長身と、出るとこが出てくびれるところがくびれた美しいボディラインが目を引く妻崎 五郷(ka0559)です。黒と灰色が交わった髪が風に流れます。この毛色はニホンオオカミ、それも冬を迎えたそれの特徴です。彼女は「ヒマだ……いい加減狩り(ごっこ)がしてェ……」なんて愚痴っていた所、そこをアレスに見つかってこんな状況になっているようです。
 さて、そんな彼女に降りろと言われたアレスの方ですが……
「やだヨー! イサトのせなか、ヌクヌクダヨー♪」
「だ、い、た、い、だな!お前が上に乗ったまんまやれアッチだコッチだ言いながら動きやがるもんだから俺が落ちねェように動いてんだろうが! それをお前は移動の足に使いやがって……」
「……む、シツレイナ! ボクはイサトからおりたらイサトがどっか行っちゃうとおもってハナれナイんダヨ!」
「お前それ以上駄々こねてっと転がり落として狩り(ごっこ)の餌(役)にすんぞ!!」
「イサト、ボクを食べるの? ……イサトは、そーゆーシュミなの? イ、イサトなら……イイヨ?」
「……な、おま、待て! 違ェ! そういう話じゃ……ッ聞け話を待てオイ!!!」
 どったんばったん大騒ぎした後二人揃ってひっくり返ってドンガラガッシャーンと前に転がり出てきました。そんな二人をカメラは捉えます。
 みっともない状況に顔を赤くしている五郷。しかしその背中からVサインを出して顔を出すアレスがカメラの前から逃れることを許さなかったのでした。
 そんな時カメラの前に突然飛び出してくる影。ですがこちらにはカメラ。もう先に進めないと気づいたそれは周囲をあたふたと見回します。そこにクリーム色の物体が飛びかかります。
「たべないでくd」
「食べないですよー」
 そこには千秋にのしかかられたアルマの姿がありました。
「……犬に捕まる狼ってのは前代未聞だな……」
 同じオオカミとして五郷も口をあんぐり。ここでアルマもようやく状況を理解したのか、
「あっ、ガイドさーんっ」
 と尻尾を振っています。
 そんな時、我々カメラの後ろから声がしました。
「全く、料理も作れず犬に捕まるなんてとんだポンコツなのです」
「ああ、博士さんと助手のお二方ですか」
 モアさんが紹介してくれた彼女が博士と呼ばれている沙良。助手の二人がリアとキャリコ。
「我々は賢いので」
 フクロウは別名「森の賢者」、その異名の通り色々物知りで、それ故博士と呼ばれているそうです。
「私達フクロウは、大変臆病なので故意に驚かせてはいけません。優しく丁寧に敬わないとぶっとばすです」
 そう言いながら静かに羽ばたいて道案内をする三人。開けた場所に出ると、こちらを見てキャリコのメガネがキラリと光ります。
「此処が調理場であります。ガイドさんもアルマに料理を教えてあげると良いと思うのであります!」
「そういうことなら」
 これも乗りかかった船。モアさんと我々でアルマちゃんに料理を教えることになります。
「皆さんは火は怖くて扱えないと思いますが、ここには最新鋭のIH調理器を入れているので大丈夫ですね」
「あいえいちちょうりき、とは何でしょう。博士」
「ヒトのやることはよくわからないのです」
 博士達が内緒話をしている頃、モアさんの指導で料理が始まります。
「それでは野菜を切ってください」
「こうですか……」
 アルマは何だかんだ言っても狼。爪を使えば野菜を細かく切ることなんて簡単です。
「それでカレー粉はありますから……」
「……わふ? 他の材料はいいですけど……この、『とりにく』ってなんでしょう?これだけないですー」
 その言葉を聞いた瞬間、博士達はぶるぶる震えてキュッと細くなってしまいました。
「アフリカオオコノハズクを始めフクロウは脅威を感じた時身を細くします。その行動が観られるとは……」

●ツンドラ
 我々は森を抜けこの島の終着点にやって来ました。そこに広がるのは一面の銀世界。ツンドラ地帯です。
「なんだ、見慣れねぇヤツがいるぞ。敵か!? お前等待て! ここは通さねぇぞ」
 しかし到着した我々はいきなり武器を突き付けられてしまいました。彼女はシベリアンハスキーのボルディア・コンフラムス(ka0796)です。
「ボルディアさん、私ですよ」
「なんだモアさんか。今日も園内の見回りだ。今は平和でももしかしたら悪ぃヤツが来るかもしれねぇからな」
 モアさんに対する警戒は解きましたが、我々に対する警戒はまだ解いてくれません。どうしようかと思っていた所、モアさんが我々に知恵を授けてくれました。
「……これは?」
 我々はアドバイスに従い先程作ったカレー(なお結局野菜カレーになりました)の残りを差し出します。
「ん、食べ物をくれるのか? そうか、ありがとうな! お前はいいヤツだな! 食べ物をくれるヤツに悪い奴はいねぇからな」
 料理に簡単に釣られる。悪く言えば単純ですが、とても素直でいい子です。彼女だけではありません。この島で出会った皆が皆そうでした。
 そんな感想を抱いた我々をじっと観ている子が居ます。真っ白でふわふわもこもこの服、赤い瞳。そして長く立った耳。彼女はユキウサギのファリス(ka2853)です。
 しばらく我々を観ていた彼女ですが、興味を持ったのか、こちら側にゆっくり近づいてきました。カメラマンはこれはチャンスと彼女の元へ近づきます。
「ああ、いけません……」
 モアさんの警戒は間に合いませんでした。近づいてくるカメラに驚いたのか、文字通り脱兎のごとく逃げ出してしまいました。
「しばらく戻ってこないでしょう。ここで待ちましょう」
 やがて幾ばくかの時が経ち、保護色で隠れたファリスの頭がぴょっこりと出てきました。我々は同じ失敗を犯さないようにじっくりと待つと、彼女からこちらに近づいてきてくれました。
「……ファリスに何かご用事なの?」
 まず我々は彼女にもカレーを差し出すことにします。
「……辛い……でも美味しい……」
 気に入ってもらえたようです。そこで我々は一番言いたかったことを言います。
 皆さんもこの島のことが気にいったら是非来てください。そして彼女たちに言ってあげてください。すなわち。

 友だちになりましょう、と。

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参加者一覧

  • 蒼狼奮迅
    妻崎 五郷(ka0559
    人間(蒼)|36才|男性|霊闘士
  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • 戦いを選ぶ閃緑
    アイビス・グラス(ka2477
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • 新航路開発寄与者
    ファリス(ka2853
    人間(紅)|13才|女性|魔術師
  • それでも尚、世界を紡ぐ者
    アリス・ブラックキャット(ka2914
    人間(紅)|25才|女性|霊闘士
  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • 大地の救済者
    仁川 リア(ka3483
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • 寝具は相棒
    ドゥアル(ka3746
    エルフ|27才|女性|聖導士
  • 清淑にして豪胆
    観那(ka4583
    ドワーフ|15才|女性|闘狩人
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 紅瞳の狙撃手
    夕凪 沙良(ka5139
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士

  • ヨルムガンド(ka5168
    人間(紅)|22才|男性|猟撃士
  • Rot Jaeger
    ステラ・レッドキャップ(ka5434
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士
  • 大局を見据える者
    仙堂 紫苑(ka5953
    人間(紅)|23才|男性|機導師
  • 友よいつまでも
    大伴 鈴太郎(ka6016
    人間(蒼)|22才|女性|格闘士
  • 一肌脱ぐわんこ
    小宮・千秋(ka6272
    ドワーフ|6才|男性|格闘士
  • 弾ける砲弾
    金糸雀(ka6409
    エルフ|16才|女性|霊闘士
  • みんなトモダチ!
    アレクシス・ラッセル(ka6748
    人間(蒼)|23才|男性|機導師

  • ミモザ・エンヘドゥ(ka6804
    エルフ|25才|女性|霊闘士

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夕凪 沙良(ka5139
人間(リアルブルー)|18才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/04/09 20:57:38
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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/04/09 14:16:39