ゲスト
(ka0000)
【王臨】我らに勝利を
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/04/21 19:00
- 完成日
- 2017/04/28 19:24
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
※このシナリオは(赤山比で)難易度が“超”高く設定されています。貴方の大事な装備アイテムの損失、重体や再起不能、死亡判定が下される可能性があります。
なお、登場する登録NPCも、皆さんと同様、重体や再起不能、死亡判定があり、その判定の際は、容赦なく判定されます。
●我らに勝利を
カラン――乾いた音を立てて床に落ちた何かに、書類整理を終えたソルラ・クート(kz0096)は振り返った。
床には、愛用していたマテリアルブローチが割れて落ちている。
「あれ……留め金がダメになっていたのかしら」
仕方の無い様子でブローチを拾うと、適当な棚の上に置いた。片付けるのは後でも良いはずだ。
ソルラはブローチに気にもせず、隣の部屋へと通じる扉を開く。
部屋では幾人かのアルテミス小隊の隊員らとハンター達が集まって談笑していた。
「ソルラ様も召し上がります?」
ハンターズソサエティの受付嬢である紡伎 希(kz0174)が、何かを広げており、それを一同で食べているようだった。
「パインパイですよ」
「ノゾミさん?」
ニッコリと笑った希にソルラは首を傾げた。
希を通じて依頼を出したのはソルラ自身である。依頼の性質上、古都に彼女を呼び、直接依頼したのだ。
既にハンター達は集合しているので、希が此処に居なくてもよい――はずなのだが。
「差し入れです……それと、ソルラ様にご相談したい事がありまして」
「そういう事ね。でも、急ぎでなければ、落ち着いた場所で、どうかしら?」
希の相談事は、何かと込み入った話が多いので、塔では落ち着かないかなとソルラは思った。
「そうですね。特に急ぎ……という訳ではないので……」
「なら、私の実家の街に良いカフェがあるわ」
「約束ですよ」
パインパイの一切れを、希がソルラに渡そうとしたその時だった。
突如の轟音と振動。
「た、隊長ッ! 大変です! すぐに表に!」
外の見張りに就いていた隊員が血相を変えて入ってきた。
全員がお互いに顔を見合わせ、急いで表に出る。
「あれ……はっ!」
ソルラが絶句した。
そこには、煌びやかな装飾の服を着込んでいる人型の歪虚。
高貴さを漂わせる姿をしてはいるが、その姿はまるで蜘蛛の悪魔だ。
傲慢の歪虚『死を刈る蜘蛛』メフィスト(kz0178)。十三魔クラスに匹敵する力を持つ高位の歪虚である。その存在を、ソルラも希も報告書で知っていた。
「メフィスト! あれがッ!」
驚きと共に怒りの視線を希は向ける。
彼女にとって、大切な人を失う原因となった歪虚でもある。
駆け出そうとする希をソルラは手で制した。
一方、ソルラやハンター達の姿なぞ、眼中に無い様子でメフィストは塔を見上げる。
「ふむ……これが“古の塔”ですか……なるほど」
人間如きが作った塔を一階から上がっていくなど、崇高で高邁で荘厳な私がやる事では無いと傲慢らしい考えに至る。
「フフフ」
不気味な笑いと共に両手を塔の頂上へと向けた。
次の瞬間、膨大な量の負のマテリアルが轟音と共に放たれた。黒い稲光を伴った負のマテリアルのレーザーが塔の頂上近くの側面に直撃する。
いや、正確に言うと、塔に張り巡らされている結界に直撃していた。
「な、なんて……負の、マテリアル……」
放出している負のマテリアルのレーザーから溢れ出ているその力が周囲の空間を圧迫させる。
マテリアル汚染とは違うだろうが、そう言っても過言ではないだろう。
「た、隊長……」
見張りの為、前に出ていたアルテミス小隊の隊員らが、照射開始時の負のマテリアルに当てられたのか、地に伏せていた。直接当たった訳ではないはずなのに、相当な量のマテリアルだったのだろう。
彼らは塔防衛の為に連れてきた覚醒者の小隊員であるが、ほとんどの者が身動き出来ない状況だった。
「動けない者を塔の中に退避させて!」
何とか動ける隊員に命じると、ソルラは希に視線を向けた。
希の瞳は殺意に満ちていた。あの歪虚を倒すという気持ちでいっぱいなのだろう。その気持ちをソルラは痛い程、よく分かっていた。
以前の自分であれば、今の希と同様だっただろう。
(ランドル船長……今なら分かります。貴方が守ろうとしたものが)
塔を見上げる。
頂上にはシスティーナ王女が居る。メフィストの狙いは分からない。だが、頂上に向かって負のマテリアルを放出している時点で、それは“絶対に止めないといけない事”と直感した。
「ノゾミさん。私達の勝利は、歪虚に勝つ事ではありませんよ」
「……ソルラ様?」
「想いを繋いでいく事です。その為に、あの歪虚の企みを止めますよ」
凛とした眼差しのソルラに希は一瞬見つめていたが、すぐに力強く頷いた。
「メフィストの企みを止めて、あの人への手向けにします!」
アルケミストデバイスを握って希は宣言した。
その時になってソルラは気がついた。彼女が丸腰だと。受付嬢の仕事の合間で来たので武器を携帯していなかったのだろう。
「これを使いなさい、ノゾミさん」
質素な鞘にクート家の紋章が入った剣をソルラは希に渡した。
「これは?」
「大事な剣だから、間違っても折らないでね」
クスっと笑いながらソルラは隊員が落としたままの剣を拾うと抜刀して鞘を投げ捨てた。
戦う様子を見せた騎士とハンター達の様子を感じてメフィストは目の一つを向ける。
この期に及んで抵抗するという。
実力の差を感じないのか、無謀な事に挑むとは愚かな存在だ。
「……いいでしょう。これは貴方達への“ゲーム”です」
ボロボロとメフィストから崩れた落ちた塊。
それらがウネウネと奇妙な動きと共に成長し――複眼と翼を持つ黒い人型となった。
腕は異様に長く、二の腕の辺りから、さらに別の腕が伸びており、横腹からも腕が現れた。
「さぁ、必死に戦ってみなさい」
メフィストの台詞と共に、禍々しい雰囲気と強烈な負のマテリアルを発しながら、“それら”が、一歩一歩大地を確かめるように歩き出した。
連れてきた小隊員は、先程の負のマテリアルにあてられ、戦闘不能の者ばかりだ。
退避させたので、ここに残るは、ソルラと希、そして、ハンター達だけで、数だけ見ても不利は明らかだ。
「絶対に退きません……『鉄壁の騎士』の名にかけて!」
己を奮い立たせるソルラ。戦力差は明らかだと感じた。
メフィストほどの高位歪虚が姿を現して、行動を起こしているのだ。事態の深刻さは底知れない。
だからこそ、守り通す必要がある。
王女の為だけでもない。王国の為だけでもない。想いを託し逝った人達の為にも、想いを繋いでいく残された人達の為にも――。
「想いを繋ぐ為に……我らに、勝利を――」
ソルラは正眼に剣を構えた。
――――――――解説――――――――
●目的
メフィストの撃退、あるいは企みの阻止
●内容
塔の前面に出現したメフィストを撃退する
もしくは、企みを阻止する
なお、登場する登録NPCも、皆さんと同様、重体や再起不能、死亡判定があり、その判定の際は、容赦なく判定されます。
●我らに勝利を
カラン――乾いた音を立てて床に落ちた何かに、書類整理を終えたソルラ・クート(kz0096)は振り返った。
床には、愛用していたマテリアルブローチが割れて落ちている。
「あれ……留め金がダメになっていたのかしら」
仕方の無い様子でブローチを拾うと、適当な棚の上に置いた。片付けるのは後でも良いはずだ。
ソルラはブローチに気にもせず、隣の部屋へと通じる扉を開く。
部屋では幾人かのアルテミス小隊の隊員らとハンター達が集まって談笑していた。
「ソルラ様も召し上がります?」
ハンターズソサエティの受付嬢である紡伎 希(kz0174)が、何かを広げており、それを一同で食べているようだった。
「パインパイですよ」
「ノゾミさん?」
ニッコリと笑った希にソルラは首を傾げた。
希を通じて依頼を出したのはソルラ自身である。依頼の性質上、古都に彼女を呼び、直接依頼したのだ。
既にハンター達は集合しているので、希が此処に居なくてもよい――はずなのだが。
「差し入れです……それと、ソルラ様にご相談したい事がありまして」
「そういう事ね。でも、急ぎでなければ、落ち着いた場所で、どうかしら?」
希の相談事は、何かと込み入った話が多いので、塔では落ち着かないかなとソルラは思った。
「そうですね。特に急ぎ……という訳ではないので……」
「なら、私の実家の街に良いカフェがあるわ」
「約束ですよ」
パインパイの一切れを、希がソルラに渡そうとしたその時だった。
突如の轟音と振動。
「た、隊長ッ! 大変です! すぐに表に!」
外の見張りに就いていた隊員が血相を変えて入ってきた。
全員がお互いに顔を見合わせ、急いで表に出る。
「あれ……はっ!」
ソルラが絶句した。
そこには、煌びやかな装飾の服を着込んでいる人型の歪虚。
高貴さを漂わせる姿をしてはいるが、その姿はまるで蜘蛛の悪魔だ。
傲慢の歪虚『死を刈る蜘蛛』メフィスト(kz0178)。十三魔クラスに匹敵する力を持つ高位の歪虚である。その存在を、ソルラも希も報告書で知っていた。
「メフィスト! あれがッ!」
驚きと共に怒りの視線を希は向ける。
彼女にとって、大切な人を失う原因となった歪虚でもある。
駆け出そうとする希をソルラは手で制した。
一方、ソルラやハンター達の姿なぞ、眼中に無い様子でメフィストは塔を見上げる。
「ふむ……これが“古の塔”ですか……なるほど」
人間如きが作った塔を一階から上がっていくなど、崇高で高邁で荘厳な私がやる事では無いと傲慢らしい考えに至る。
「フフフ」
不気味な笑いと共に両手を塔の頂上へと向けた。
次の瞬間、膨大な量の負のマテリアルが轟音と共に放たれた。黒い稲光を伴った負のマテリアルのレーザーが塔の頂上近くの側面に直撃する。
いや、正確に言うと、塔に張り巡らされている結界に直撃していた。
「な、なんて……負の、マテリアル……」
放出している負のマテリアルのレーザーから溢れ出ているその力が周囲の空間を圧迫させる。
マテリアル汚染とは違うだろうが、そう言っても過言ではないだろう。
「た、隊長……」
見張りの為、前に出ていたアルテミス小隊の隊員らが、照射開始時の負のマテリアルに当てられたのか、地に伏せていた。直接当たった訳ではないはずなのに、相当な量のマテリアルだったのだろう。
彼らは塔防衛の為に連れてきた覚醒者の小隊員であるが、ほとんどの者が身動き出来ない状況だった。
「動けない者を塔の中に退避させて!」
何とか動ける隊員に命じると、ソルラは希に視線を向けた。
希の瞳は殺意に満ちていた。あの歪虚を倒すという気持ちでいっぱいなのだろう。その気持ちをソルラは痛い程、よく分かっていた。
以前の自分であれば、今の希と同様だっただろう。
(ランドル船長……今なら分かります。貴方が守ろうとしたものが)
塔を見上げる。
頂上にはシスティーナ王女が居る。メフィストの狙いは分からない。だが、頂上に向かって負のマテリアルを放出している時点で、それは“絶対に止めないといけない事”と直感した。
「ノゾミさん。私達の勝利は、歪虚に勝つ事ではありませんよ」
「……ソルラ様?」
「想いを繋いでいく事です。その為に、あの歪虚の企みを止めますよ」
凛とした眼差しのソルラに希は一瞬見つめていたが、すぐに力強く頷いた。
「メフィストの企みを止めて、あの人への手向けにします!」
アルケミストデバイスを握って希は宣言した。
その時になってソルラは気がついた。彼女が丸腰だと。受付嬢の仕事の合間で来たので武器を携帯していなかったのだろう。
「これを使いなさい、ノゾミさん」
質素な鞘にクート家の紋章が入った剣をソルラは希に渡した。
「これは?」
「大事な剣だから、間違っても折らないでね」
クスっと笑いながらソルラは隊員が落としたままの剣を拾うと抜刀して鞘を投げ捨てた。
戦う様子を見せた騎士とハンター達の様子を感じてメフィストは目の一つを向ける。
この期に及んで抵抗するという。
実力の差を感じないのか、無謀な事に挑むとは愚かな存在だ。
「……いいでしょう。これは貴方達への“ゲーム”です」
ボロボロとメフィストから崩れた落ちた塊。
それらがウネウネと奇妙な動きと共に成長し――複眼と翼を持つ黒い人型となった。
腕は異様に長く、二の腕の辺りから、さらに別の腕が伸びており、横腹からも腕が現れた。
「さぁ、必死に戦ってみなさい」
メフィストの台詞と共に、禍々しい雰囲気と強烈な負のマテリアルを発しながら、“それら”が、一歩一歩大地を確かめるように歩き出した。
連れてきた小隊員は、先程の負のマテリアルにあてられ、戦闘不能の者ばかりだ。
退避させたので、ここに残るは、ソルラと希、そして、ハンター達だけで、数だけ見ても不利は明らかだ。
「絶対に退きません……『鉄壁の騎士』の名にかけて!」
己を奮い立たせるソルラ。戦力差は明らかだと感じた。
メフィストほどの高位歪虚が姿を現して、行動を起こしているのだ。事態の深刻さは底知れない。
だからこそ、守り通す必要がある。
王女の為だけでもない。王国の為だけでもない。想いを託し逝った人達の為にも、想いを繋いでいく残された人達の為にも――。
「想いを繋ぐ為に……我らに、勝利を――」
ソルラは正眼に剣を構えた。
――――――――解説――――――――
●目的
メフィストの撃退、あるいは企みの阻止
●内容
塔の前面に出現したメフィストを撃退する
もしくは、企みを阻止する
リプレイ本文
●開戦
絶大な負のマテリアルが、極太の黒い光線と成り、“古の塔”に放たれていた。
黒大公ベリアルも“魔砲”という強烈な攻撃が出来るらしいが、負のマテリアルを大量に放出するという点では、似ている……かもしれない。
「なんて、負のマテリアルの量……身体が重い。でも、だからって、負けられない!」
時音 ざくろ(ka1250)が力強く宣言すると前に進み出た。
振り返れば、度々の冒険で共にしたソルラ・クート(kz0096)と紡木 希(kz0174)の姿が視界に入る。
誰一人死なせないし、敵の企みを粉砕させ、想いを繋ぎ未来へと斬り開く――そう、心に刻んだ。
希が手にしている剣の具合をUisca Amhran(ka0754)は確認する。
覚醒者が戦場に持ってくる武具はギルドで調整されており、本来は借りて使えるものではない。
「ノゾミちゃん、その剣が、きっと貴女を守ってくれる……これまでの戦いや、皆の言葉を思い出して、自分の中の力を信じてっ」
「はい!」
気合の入った希の返事。
もっとも、彼女は知らない。なぜ、その剣がソルラにとって大事な品なのかを。
Uiscaはソルラへと視線を向けた。
「トルンさんや船長達の想いを繋いでいく為にも……生き残って、勝利を」
「勿論です。Uiscaさんも無茶しないで下さいね」
これまで、幾つの死線をくぐり抜けてきただろう。
二人が同時に頷いた所で、星輝 Amhran(ka0724)がギュっと割り込んできた。
可愛らしい笑みを浮かべている星輝ではあるが、その眼光は鋭い。
「儂に出来ることは少ない。存分に、儂を使うが良い!」
手にしているのは、大太刀とワイヤー。
今回はひたすらに援護に回るつもりで居るのだ。
「アレがメフィストですか。なるほど……強いですね」
放出されている負のマテリアルの圧力に、連城 壮介(ka4765)が険しい顔を浮かべる。
視線の先に居るメフィスト(kz0178)は特段、巨躯という訳ではない。それでも、発せられるオーラは、正に化物だろう。
「厳しい戦いになりそうです。だからと言って、退く気はありませんが」
振動刀を抜いた。
死ぬ気で挑んで勝てるかどうか。少なくとも、相手にとって不足はないのは確かな事だ。瀬崎・統夜(ka5046)も、そういう意味では集まった面々と決意は変わらない。
「ここで王女が倒れると、ダチが困るんでな」
そう呟いて見上げた塔。
この負のマテリアルが厄介事を招いているのは確かだろう。ダチの為にも王女は守らないといけない。
「……それに、俺の目の前で女を殺させたりはしねぇよ!」
アサルトライフルを構える。
ここからでも十分に届く射程だ。まずは……と標的を定めた。
一方、銃と特殊な弾丸を持ちながら、キャリコ・ビューイ(ka5044)はどうしたものかと考えていた。
「背中にペイント弾で印を……と思ったが」
傲慢歪虚の能力への対策としてとだったが、その時間的余裕は無かった。
となると、今から行うべきだが、それこそ、時間が勿体無いだろう。
気を取り直して、キャリコも銃を構えた。彼のライフルも既に敵を射程圏内に収めているのだから。
前に出ようとした希とソルラにハンス・ラインフェルト(ka6750)が刀を抜きながら呼び止めていた。
「貴女方、お二人の方が私より強いとお見受けします。なればこそ、貴女方、お二人が前に出るのは私より後でお願いします」
自らが先に出る事で、相手の動きを見て貰える。
例え、自分が倒れる事があっても、意味は十分にある……はずだ。
「それは……」
ソルラが返事を言いかけた所で、アルマ・A・エインズワース(ka4901)も追随する。
「お二人とも、一緒に来てくれませんか? 僕ら後衛、孤立しちゃうですよー」
彼の横には既に、キャリコがライフルの銃口を歪虚に向けていた。
前衛にハンター達が向かうとあれば、防御という面で不安が残るのは当然の事だ。
どうしたものかと悩むソルラにUiscaも言葉を掛ける。
「敵の能力が不明なので、後方の人の安全も考えて、二人は護衛を」
「……分かりました。後ろは任せて下さい」
「わふっ。僕も守りますから、守ってくださいっ」
ソルラの言葉にアルマが笑顔で杖を掲げて見せる。
銃口の先を見つめながらキャリコもお礼を述べつつ口を開く。
「徐々に戦線を押し上げるので、その間、護衛を要請する。頼んだ」
「はい。頑張らせて頂きます」
しっかりと返事をした希の言葉に全員が力強く頷いた。
●序盤戦
全速力でハンターは駆ける。
一番先頭を走るの星輝。後ろにUiscaとざくろが続く。
(……隊列を考えるべきだったかもしれん)
星輝が嫌な予感を胸の奥底へと抑えながら思った。
援護を主体とする為、彼女自身が正面から敵に挑むという訳にはいかない。
連携する為には、全員の位置取りは重要な調整箇所だったはずだ。
「“ゲーム”のルールは、何でしょうか? キララ姉さま」
「……ん? そう……じゃの……」
妹に呼び掛けられて星輝は考える。
メフィストが出現させた気色の悪い歪虚――ロノウェ――は、ゆっくりとした足取りで一斉に塔へと進んだ。
「確かに、メフィストの企てが気になる……」
鉾と盾を構えて、ざくろは目を細めた。
メフィストから発せられている負のマテリアルの光線の正体は分からない。
分からないが、塔の結界を直撃している以上、魔法的なものである可能性は高い。
「結界を壊すもの……だったりして」
「ざくろの推測は合っているかもしれんのう」
塔を含め、ここの空間は魔法的なもの、そのものでもある。
最初の大きな衝撃は、空間を無理矢理捻じ曲げて、メフィストが“此処”に侵入したものだったという事であれば、メフィストが放っている負のマテリアルが、結界を破壊する可能性は、十分にあった。
「塔を直接破壊するつもり……でしょうか?」
「その可能性も否定できん……か」
ズキン――と星輝は胸の古傷に痛みを覚えた。
嫌な予感は、そう、この傷が声を上げている事だろうか……。
敵の目的についてアルマとキャリコ、ソルラと希の後衛も考えながら、足を進める。
「わふ? ……わふー!」
強大な負のマテリアルの光線を見上げてアルマが驚きの声を上げた。
まるで、未知と遭遇した好奇心いっぱいの犬のようだ。
「あれが何か分かるか?」
「私も……見当が付かないですね。強力な負のマテリアルではあるようですが」
キャリコの疑問に対し、ソルラが両肩を竦めた。
「……あくまで、推測ですが……」
そう前置きを言って、口を開いたのは希だった。
視線だけで殺しているだろうというキツイ視線をメフィストに向けている。
「“頂上へ続く道”を作っている可能性はあります」
「道……どういう事だ?」
「歪虚の中には、瞬間移動が使える個体も居ます……詳しい原理は分かりませんが、私が知っている中では……『負のマテリアルの流れに乗る』と表現していました」
それを教えて貰ったのは、かつての主である。
一瞬、その端正な顔が浮かび――振りほどくように希は自身の頭を振った。
「つまり、塔の頂上へと瞬間移動する為に……」
「わふー。それは、ずるいですー」
ソルラとアルマがそんな感想を言った。
もし、希の推測通りだとすれば、尚更の事、止めなくてはならないだろう。
塔の頂上には、黒大公ベリアルを討つための『国防装置』と、王女が居るのだから……そこへ、メフィストが侵入したら、どんな惨事になるか。想像するだけで恐ろしい。
「わふっ。ここから、十分届きますね」
もちろん、魔法の話である。アルマはマテリアルを練りながら、機導術を行使する。
青い流星にも似た光の筋が弾けると、メフィストとロノウェに降り注ぐ。
ロノウェの1体に直撃した瞬間、反撃のように負のマテリアルの塊が、アルマへと襲いかかる。
傲慢――アイテルカイト――の固有能力の一つである【懲罰】だ。
与えたダメージと等しいダメージを与えてくるカウンタースキルのようなものである。
「敵さん、懲罰持ってますっ、要注意ですー!!」
強力な能力ではあるが、【懲罰】を受けたアルマはどういう訳か無傷だった。
これが人の祈りや想いが成せる技であるのであれば、効果は十分だったろう。
だが、同時に、一撃目から敵の能力が【懲罰】であると分かったのは、“運が悪かった”としか言い様がない事だったと、ハンター達は後ほど気が付くのである……。
「【変容】している奴は、今の所、居ない様子だな」
注意深くロノウェを確認しながらキャリコは呟いた。
これなら、味方の姿を真似て来られる心配はないだろう。ペイント弾を使う必要性は無さそうである。
「……そういえば、丸っきり、誰かに似るという【変容】は見た事無いかも……」
キャリコの呟きが耳に入った希がボソっと言った。
あるいは個体差が激しい能力なのだろうか……。
「この戦いは、相棒と共に臨みたかったですね」
そんな台詞を言いながらハンスは横一列になって向かって来るロノウェを睨んでいた。
「これほどの大舞台、相棒とならばどんな結末を迎えようと悔いは残らなかったと思いますが……残念です」
相棒である幻獣の姿を思い浮かべながら、ハンスは全力で前に向かって走る。
その隣を壮介も全速力で駆けていた。
「例え此処で終わるとしても……失って、皆が涙に暮れるのを……見るよりはマシです」
そう、それを見る位なら、自分が守って死んだ方が大分とマシというものだ。
ビュンと正面から飛んできた歪虚の魔法。
負のマテリアルを練成したエネルギー弾みたいなものだ。舞刀士としての能力を活かし、それを打ち払う。
「これなら……」
硬い防御を活かして接敵出来るはずだ。
なおも全力で走る壮介の背中を見ながら、射線が被らないように微妙に位置をズレながら、瀬崎は銃撃にマテリアルを込める。
「抜け目なくクールに……フォローだ」
ロノウェの動きはゆっくりだ。
だが、塔に向かっている以上は、その動きを止めた方が良いだろうと感じていた。だからこそ、『制圧射撃』を放つ。
相手の行動を不能にさせる猟撃士の技の一つであるが……効果範囲が狭いのが難点だ。
1体は確実に、もう1体は運がよければ巻き込める――程度だろう。
「そろそろ、接敵か……」
前線の仲間達がいよいよ、刃を叩きつけようとしていた。
●中盤戦
ロノウェを切り刻んだ先、ハンスは横一列に並んでいた敵を隙間を突いて、更に走る。
「敵の数は多い、何事も小手調べが必要でしょう?」
高位歪虚に加え、敵の数が多い。
前衛は厳しい戦いとなるだろう。それゆえ、危険な死地にソルラと希を送り出したくなかった。
だったら、自分が犠牲となっても、小手調べ出来ればそれでいいからと。
「行くぞぉ!!」
ピンッと刀を真横に突き出しながらハンスは全力でメフィスト目掛けて突撃する。
メフィストは負のマテリアルを放ち続けているだけで隙だらけだ。仲間の攻撃を避けたり受けたりはしていたが、位置が動けない様子は、攻撃の絶好のチャンスだろう。
口に刀先を叩き込んでやるつもりなのだ。
大太刀が振るわれる――と見せかけて、ワイヤーがヒュンヒュンと音を立てた。
「儂の仕事は、直接的な撃破に非ず」
器用にワイヤーを操り、ロノウェの動きに牽制を入れているのは星輝だった。
銀光に煌く一筋の線が歪虚に絡まる。
「味方を活かす為の技術の全てを……」
「魔力フル収束……着装! マテリアルアーマー! ざくろの後ろへは、絶対に行かせないよ!」
星輝の口上を途中で遮る形となって、ざくろの叫び声が響いた。
本人にとってわざとでは無いので、ポカンとした口を星輝は閉じる。
「……これが儂の戦い方よ!」
という事で、格好良く最後を締めくくり、ギュっとワイヤーを締め付けた。
敵もただの的という訳ではない。避けもするし受けもするしバットステータスに対する抵抗もする。
そういう意味では、星輝の援護は正しい選択だったはずだ。
「輝け光の矢……必殺! デルタエンド!」
ざくろが作り出した光り輝く三角形の頂点から光が放たれる。
光の筋は左右端と彼の正面に居るロノウェを直撃した。うち、左端のロノウェから【懲罰】が発動し、ざくろへと負のマテリアルの塊が向かって来る。
それを、ざくろは冷静に盾と鎧で受け止めた。
「???」
歪虚の反応にUiscaは首を傾げた。
既に幾人かがロノウェに攻撃している。だが、【懲罰】が返ってきたのは、今の所、アルマとざくろの攻撃だけだ。
【懲罰】の能力は狙って使う事が出来るというのだろうか……それとも……
(まさか、敵の全員が【懲罰】を使って来ない可能性も?)
であれば、範囲攻撃を使っても問題はないかもしれない。
敵がどんな能力を持っているか、よくよく確認する必要があったかもしれない。
(そういえば、あのイケメン歪虚さんも【懲罰】は使って来なかったですね……)
そこまで思案した時だった。
5体ほど、ロノウェの姿が変わった。
この世の下は思えない醜い姿から、一変し、悲哀に満ちたか弱い少女のような姿へと【変容】したのだ。
「それぐらいで、狼狽えると思いましたか!?」
刀を振るう壮介の動きに戸惑いは見られない。
当たり前だ。最初から少女の姿をしていたとしても、覚醒者は負のマテリアルを感じられる。
よほど巧妙に負のマテリアルを隠せる個体であれば別だろうが、少なくとも、目の前のロノウェには、そこまでの能力は無さそうだ。
「甘いですよ」
【変容】したロノウェに立て続けに猛攻を加える壮介。
押している手応えは確かにあった。
奇怪な叫び声を上げつつ、ロノウェは負のマテリアルの拳骨を作り出すが、それが銃撃で吹き飛んだ。
「どうやら、【変容】持ちは【懲罰】使ってくる様子はないかもしれないな」
後方からスナイプしている瀬崎の射撃だ。
冷静に戦況を把握しつつ、必要な所に銃撃を放っていた。
【懲罰】が来ないなら安心して攻撃に全力を出せる。か細い勝機が見えた――気がした。
残りの不安材料は……メフィストそのものだが……。
聖なる力が込められた銃弾がメフィストに襲いかかる。
「どうやら、効くのは確からしいな」
メフィストが闇の属性を持つ存在であるのは確かなようだ。
でなければ、メフィストが回避行動を取ったりしないだろう。回避するという事は当たればダメージになるという事を意味しているはずなのだから。
「僅かに身体を逸らして、こちらの攻撃を避ける時もあるようです、ね」
剣を構えながらソルラは言った。
効率よく攻撃を当てるには、複数人での攻撃を重ねる必要があるだろう。
ハンスが向かっている事もあるので、より的確に攻撃が当たるかもしれない。
「凄い……凄いですよ、アルマ様」
希はアルマが放つ機導術の威力に驚いていた。
「わぅ? ノゾミさん、火力お好きです? これ、実は最大火力じゃないです。今度、僕の全力見せてあげますっ」
「ぜひ、観たいです!」
確かにアルマが放つ術は強力であった。
闇の属性であるメフィストにとっては厄介だっただろう。彼の術が直撃した時に限っていえば、負のマテリアルの光線が途切れるからだ。
「……いけますね。これなら、もしかして、メフィストさえ倒す事も……」
僅かな希望が見え、ソルラが呟いた時だった。
●逆転
前衛が押し込み、後衛が援護する……一見、理想的な状態だったかもしれない。
だが、それは、戦線が伸びきっている形でもある。
そこを敵が狙って来たという事は、敵も戦況を見極める頭脳と連携という言葉を知っているのだろう。
「……我らが主を守れ」
もし、聞こえたのなら、そんな“命令”だったかもしれない。
傲慢歪虚の持つ強力無比な能力【強制】だ。それを5体ほどのロノウェが同時に使った。
対抗するには、自身の抵抗力を増すしかない。
ハンター達にとって不幸だったのは、この場に負のマテリアルが満ちていた事だろう。耐えられるはずの【強制】は防ぎきれなかったのだ。
「わふ!?」
「なんて……事だ」
アルマとキャリコが驚愕する。
二人の放った攻撃はメフィストに当たらず、ハンスが“庇った”のだ。
覚醒者であっても、下手をすれば死んでしまうかもしれない程の強力な攻撃は、ハンスを一撃で倒すには十分だった。
地面に倒れたハンスを助ける為か、壮介が走る。
……もし、ハンター達が【強制】への対処を念入りに決めていれば、あるいは、この結末は防げたかもしれない。
壮介を援護する為にと放った、アルマとキャリコの攻撃は、確かにメフィストを狙っていた。
絶大なる負のマテリアルが放たれている付近で倒れては、どうなるか、大体、検討がつくだろう。それを防ぐ為にはメフィストの光線を途切れさせる必要があるからだ。
「そんな……壮介さんも」
ソルラが絶句する。
ハンスを助ける為に走っていたと思われた壮介もまた、【強制】に掛かっていたのだ。
彼もハンス同様にメフィストを庇って――地に倒れた。
「私が救援に向かいます。キララ姉さまとざくろさんは敵を食い止めて下さい」
回復魔法を唱える為、意識を集中させながら、Uiscaが走る。
「二人を頼むのじゃ」
「ここは、ざくろ達に任せて」
星輝とざくろの二人が圧倒的な数を相手に大立ち回る。
ワイヤーが唸り、ロノウェの身動きを抑え付けた所で、ざくろが術を叩き込む。
別のロノウェの攻撃に対し、光の障壁で迎え撃つ。
「超機導パワーオン! 何があってもみんなで生きて切り抜ける……絶対!」
ざくろの奮戦は左右に展開しているロノウェの片翼を、辛うじて押さえつけていた。
いくら、硬い防御であっても、防御の薄い所に入れば無傷で済まない。
それは高回避力を誇る星輝であっても同様だ。数多く攻撃を受ければ、中には回避が極めて困難な攻撃が当たる時もあるからだ。
回復薬のおかげで保ってはいるが、それもいつまでもという訳にはいかない。
戦線が崩壊した――。
戦況分析だけは昔から得意だと自負していたソルラは、この状況を瞬時に理解した。
左右に展開している歪虚を抑えていた前衛が一気に半減したのだ。星輝とざくろの二人では抑えきれず、障害が無くなった歪虚が塔へと向かってくる。
この状況を立て直す術を、彼女は見い出せない。
(……)
考えるのを辞めた。今は、敵の迎撃だ。
不気味に塔へと向かって進んでくるロノウェを打ち倒すには人手も火力も不足している。
かといって、メフィストへと攻撃を繰り返しているアルマをキャリコの二人も、その手を緩めていいのか分からないし、防御の薄いアルマとキャリコの二人が倒れれば、それこそ、逆転のチャンスは無い。
「ソルラ様、私は瀬崎様の護衛に回ります」
希の緊迫した声。
瀬崎は塔付近から射撃を繰り返しているからだ。
ロノウェに接近されてしまえば、瀬崎の援護射撃は止まってしまう。希の選択は妥当だろう。
「決して、無理をしてはいけませんよ」
「それは、ソルラ様も、ですよ」
微笑を浮かべ希は駆け出す。全力で走れば、ロノウェの動きより数段早いからだ。
(どこまで……耐えられるでしょうか……)
ソルラは心の中で呟いた。
●我らに勝利を
そこからは辛い持久戦が展開された。
倒れたハンスと壮介に回復魔法を使い、一先ずの急場を凌ぐ。
だが、傷が思った以上に深く、身動きが取れない状況だった。その為、Uiscaはメフィストの近くで倒れる二人を、引きずって引き離す。
「……攻撃、しないのですか?」
彼女が見上げるとそこにはメフィストが居るのだ。
死にかけのハンターと救護に入ったUiscaを、いとも簡単に殺せただろう。だが、メフィストはその場を動かなかった。
アルマとキャリコの執拗な妨害攻撃を受けながらも負のマテリアルの照射を続けている。
その状態の中、メフィストの目の一つがUiscaを見た。
「籠の中の羽虫に、この私が何故、かかずらう必要が?」
「――っ!」
怒りの声を上げようとした所で、Uiscaは噛み締めた。
悔しいが、助け出すチャンスを失う訳にはいかない。安全と思われそうな位置まで二人を引きずる。
「……もう、あんな所にまで」
ロノウェの動きはゆっくりであったが、持久戦となり、時間はそれなりに経過した。
邪魔されず塔付近へと近づいているロノウェが数体見える。
それを希と瀬崎が白兵戦で迎撃しているが――数の差が圧倒的で接近を防げていない。
アルマとキャリコの護衛に回っていたソルラもその状況に塔へと向かっている。
星輝とざくろが、数体のロノウェを相手に足止めに成功していた。
「さあ、これからが見ものですよ」
勝ち誇ったようなメフィストの言葉にUiscaは背筋が凍った。
「何を企んでいるのですか!」
Uiscaの叫びと共に、大きい爆発音が響いた。
その爆発はロノウェが負のマテリアルを撒き散らして自爆したものだった。
「結界にダメージが?」
比較的近くにいた希は爆発のダメージに耐えながら、結界にヒビが入るのを見た。
ここに来て、誰もが“ゲーム”の意味を理解した。
ロノウェは塔に到着すると負のマテリアルを含んだ爆発を起こす。その結果、結界にダメージが入る。
古の塔の結界がそのダメージに耐え切れなくなった時、結界は崩壊、メフィストは瞬間移動で頂上へと移動出来るのだろう。
「つまり、このロノウェも!」
目の前に褐色に変化するロノウェ。きっと、これが自爆の合図なのだろう。
希は逃げる事も出来たはずだった。
「させないです!」
ロノウェを自爆に巻き込まれる覚悟で押し出す。
危険とか死んでしまうとか、そんなもの考えている暇は無かった。あるには、依頼を失敗させたくないという受付嬢魂だったかもしれない。
「おまえっ!」
悲痛な瀬崎の叫びと共に、希を巻き込んで、ロノウェは自爆。
煙が流れ――残ったのは大地に伏せて動かない希。
ピクリと希の身体が動いたのは――きっと、緑髪の少女の無事を祈った者が居たからだろう。
だが、安堵するまでもなく、次のロノウェが希に……塔に、近寄る。
「やらせるかよっ!」
目の前で女を殺させる訳にはいかない。
皮膚の色が変わっていくロノウェの横腹にタックルを入れる瀬崎は、そのまま、力の限りロノウェを押し出す。
「うおぉぉぉ!」
雄叫びを上げ、希と塔から引き離した。
その直後――爆発。
それまでほぼ無傷だったのが瀬崎の命を救った。彼は希の無事を確認すると、意識を失う。
塔の扉が勢いよく開かれると、アルテミス小隊員が飛び出してきた。
「戻りなさい!」
ソルラの命令に対し、隊員達は言い返す。
「アイツ等が行けって五月蝿いんですよ!」
「せめて、彼らを安全な所に」
最初の照射で負のマテリアルを浴び、倒れた兵士達を看病していた隊員らであった。
戦闘の経過を見ていたのだろう。看病を受けていた兵士達は自分の命が危険になる事を承知で、彼らを向かわせたようだ。
「……分かりました。早く!」
ソルラは隊員に命令すると、迫るロノウェへと剣先を向けた。
傾いた天秤を元に戻す力は、もはや、ハンター達には無かった。
残るロノウェは着実に塔へと接近している。
「ざくろ、任せたのじゃ」
「片付けたら、すぐに向かうから!」
星輝はざくろに、この場を託した。ロノウェは何体か残っているが、今は塔の防衛が優先だ。
そして、星輝は機動力に自信があった。自分であれば、疾影士としての能力を活かし、次の爆発までに間に合うかもしれない。
「ソルラ! 無茶するでないぞ!」
その叫び声が届いているだろうが、聞く耳はないだろう。
なんとか、爆発から安全に引き離さなければいけない。
星輝は手に持つワイヤーに力を込める。
●鉄壁の騎士
ハンターの言葉はソルラの耳に届いていた。
しかし、そうは言っても目の前の状況も、また、見逃せない。
「塔に、触れさせたり、しません!」
ソルラがロノウェを間一髪引き剥がした。
その瞬間、歪虚が負のマテリアルを盛大に撒き散らして爆発する。
「……あれ?」
一撃でハンターが戦闘不能になる爆発に、ソルラはほぼ無傷で耐えた。
この場には居ない、けど、確かに繋がっている人達の祈りの力だったかもしれない。
「次が!!」
まだ、残りは数体居る。
その1体にソルラは飛びついた。このまま、メフィストの企みを達成させる訳にはいかないのだ。
もし、万が一でも、塔の結界が破れ――メフィストが塔の頂上に至った場合……。
『装置』が破壊されるか奪取されてしまうだろう。それは、黒大公ベリアルとの決戦で無くてはならないものだ。失う訳にはいかない。
そして、それ以上に、その場に居るはずであるシスティーナ姫は殺されるか連れ去られてしまうだろう。
姫様は王国に住まう人々の希望なのだ。
「絶対に、止める!」
飛び付いた勢いそのままにロノウェと転がるソルラ。
間一髪、間に合った為、塔に影響のない位置で爆発する。
「あ……がっ……」
しかし、ソルラを守った奇跡は、二度も起こらない。
いや、この状況でも、立ち上がったソルラの気迫自体が、ある意味、奇跡だったかもしれない。
「ソルラ! 退くのじゃー!」
頼もしい仲間の声が耳に入ってくる。
(あぁ……そうだ、私……)
困った時、辛い時、ハンターを頼れって言われていたっけ……。
フラフラの足。眼前に、別のロノウェが今まさに、爆発しようとしていた。
(私に、力を貸して、貴方の強さをっ……)
真っ赤な髪が風に靡くイメージのまま、ソルラは“最後の気力”を振り絞った。
そこからはどうしたのか分からない。ただ、力のままに、歪虚を押す。
(……鐘の音が、聞こ……える……)
爆発音は聞こえなかった。
ただ、遠くから、鐘の音色が響き、ソルラはそれに包まれた――。
●終結
足元に転がったきたソルラの篭手に星輝は呆然とした。
なぜ、篭手だけが飛んできたのか……。
「ソ……ルラ……?」
煙がなかなか晴れないのは、幸いだったかもしれない。
絶望と悲しみに襲われ、ショックを受けるよりも早く、別のロノウェが塔に近づいていたからだ。
「これで、どうじゃ!」
グルングルンとワイヤーで絡めると全力で引き剥がす。
が、ここに来て、長期戦の影響が出た。思うようと引っ張れず、爆発直前まで引っ張り続けなくてはならなかったからだ。
「ぐっ、ぬぬぅぅぅ!!」
同時にロノウェが自爆。
いくつものマテリアルの輝きが、星輝の生命を守った。
爆風で吹き飛ばされた星輝が音を立てて地面に倒れる。
「キララ姉さま!」
全力で走るUiscaとすれ違うように、機導術と銃弾がメフィストに放たれる。
アルマとキャリコの二人はこの惨状に無力だった訳ではない。
メフィストの照射は続いており、こちらを止める為に攻撃の手を緩める訳にはいかなかったのだ。後ろで大きな爆発音が響くが、振り返っている暇はない。
「当たれ、ですー!」
「……誤算だったか」
二人の攻撃は強力であり、当たれば、メフィストの照射を一時的に止めるのは十分だった。
メフィストは積極的に行動してこないのだが、だからといって、全く動かないという訳ではない。
攻撃が、当たらない場合があるのは誤算だったかもしれない。
「ふむ……ロノウェは全滅しましたか」
ざくろが最後に残ったロノウェを討伐した様子を見て、メフィストはそんな言葉を言った。
ロノウェの全滅した時点で、塔の結界がまだ維持出来ている事はメフィストにとっても、ちょっとした誤算だった。
「無様……もとい“必死に”抗う人間を眺めるのも時には悪くない」
「ふざけるな」
キャリコの銃撃がメフィストの顔を掠めた。
「次は外さない」
「“ゲーム”は終わりだ、人間。そして終わりには結果があり、結果にはそれに相応しいものが与えられねばならない。なれば、この私が褒美を与えましょう」
チラリと視線をアルマに向けた。
「悪くない攻撃でした。この私の照射に介入できたのですから」
「もう1発、どうぞですー!」
放たれた機導術をメフィストは避けようともしなかった。
かなりのダメージは与えているはずなのだが……。
「倒れるまで、打ち込むだけだ」
キャリコが撃った次弾も、また、属性を突いた為、強力な一撃となった。
だが……直後の事だった。
「あなたには、これが褒美です」
それは【懲罰】だった。不意打ちにも近い形での思わぬカウンターにキャリコは為すすべもなかった。
真横で崩れ落ちた“おともだち”の姿が、アルマの中で過去の記憶と重なる――。
「……ス……ロス……殺ス! 絶対に、殺ス!」
「ん? エルフにしては面白い反応ですね」
怒り狂ったアルマの機導術が次々に放たれる。
まるで、光の流星群のような中で、平然と歪虚の言葉は続く。
「だが、“値しない”。さて、余興はここまでとしましょう。私にもすべきことがある」
メフィストの高笑いが響いた。
【懲罰】を使おうと思えば使えるのだろうが、メフィストは敢えて使わなかった。
術を打たれるがまま、笑いながら踵を返して歩き出す。
「ふむ……予想していたよりあの豚が保たなかった事は残念だが……悪くない余興でした」
メフィストが唐突に姿を消すまで、アルマの機導術は続いた。
それでも収まりきれない彼の怒りの光筋が、メフィストが居なくなった虚空に飛翔し続けるのであった。
古の塔での戦いは結果的には、メフィストを退けた事になった。
だが、その犠牲は余りにも大きく、国内潜伏歪虚追跡調査隊、通称『アルテミス』は隊長以下、主な覚醒者は戦死。
小隊の存続は難しく、騎士団直属の隊としては事実上の解散となったのであった。
絶大な負のマテリアルが、極太の黒い光線と成り、“古の塔”に放たれていた。
黒大公ベリアルも“魔砲”という強烈な攻撃が出来るらしいが、負のマテリアルを大量に放出するという点では、似ている……かもしれない。
「なんて、負のマテリアルの量……身体が重い。でも、だからって、負けられない!」
時音 ざくろ(ka1250)が力強く宣言すると前に進み出た。
振り返れば、度々の冒険で共にしたソルラ・クート(kz0096)と紡木 希(kz0174)の姿が視界に入る。
誰一人死なせないし、敵の企みを粉砕させ、想いを繋ぎ未来へと斬り開く――そう、心に刻んだ。
希が手にしている剣の具合をUisca Amhran(ka0754)は確認する。
覚醒者が戦場に持ってくる武具はギルドで調整されており、本来は借りて使えるものではない。
「ノゾミちゃん、その剣が、きっと貴女を守ってくれる……これまでの戦いや、皆の言葉を思い出して、自分の中の力を信じてっ」
「はい!」
気合の入った希の返事。
もっとも、彼女は知らない。なぜ、その剣がソルラにとって大事な品なのかを。
Uiscaはソルラへと視線を向けた。
「トルンさんや船長達の想いを繋いでいく為にも……生き残って、勝利を」
「勿論です。Uiscaさんも無茶しないで下さいね」
これまで、幾つの死線をくぐり抜けてきただろう。
二人が同時に頷いた所で、星輝 Amhran(ka0724)がギュっと割り込んできた。
可愛らしい笑みを浮かべている星輝ではあるが、その眼光は鋭い。
「儂に出来ることは少ない。存分に、儂を使うが良い!」
手にしているのは、大太刀とワイヤー。
今回はひたすらに援護に回るつもりで居るのだ。
「アレがメフィストですか。なるほど……強いですね」
放出されている負のマテリアルの圧力に、連城 壮介(ka4765)が険しい顔を浮かべる。
視線の先に居るメフィスト(kz0178)は特段、巨躯という訳ではない。それでも、発せられるオーラは、正に化物だろう。
「厳しい戦いになりそうです。だからと言って、退く気はありませんが」
振動刀を抜いた。
死ぬ気で挑んで勝てるかどうか。少なくとも、相手にとって不足はないのは確かな事だ。瀬崎・統夜(ka5046)も、そういう意味では集まった面々と決意は変わらない。
「ここで王女が倒れると、ダチが困るんでな」
そう呟いて見上げた塔。
この負のマテリアルが厄介事を招いているのは確かだろう。ダチの為にも王女は守らないといけない。
「……それに、俺の目の前で女を殺させたりはしねぇよ!」
アサルトライフルを構える。
ここからでも十分に届く射程だ。まずは……と標的を定めた。
一方、銃と特殊な弾丸を持ちながら、キャリコ・ビューイ(ka5044)はどうしたものかと考えていた。
「背中にペイント弾で印を……と思ったが」
傲慢歪虚の能力への対策としてとだったが、その時間的余裕は無かった。
となると、今から行うべきだが、それこそ、時間が勿体無いだろう。
気を取り直して、キャリコも銃を構えた。彼のライフルも既に敵を射程圏内に収めているのだから。
前に出ようとした希とソルラにハンス・ラインフェルト(ka6750)が刀を抜きながら呼び止めていた。
「貴女方、お二人の方が私より強いとお見受けします。なればこそ、貴女方、お二人が前に出るのは私より後でお願いします」
自らが先に出る事で、相手の動きを見て貰える。
例え、自分が倒れる事があっても、意味は十分にある……はずだ。
「それは……」
ソルラが返事を言いかけた所で、アルマ・A・エインズワース(ka4901)も追随する。
「お二人とも、一緒に来てくれませんか? 僕ら後衛、孤立しちゃうですよー」
彼の横には既に、キャリコがライフルの銃口を歪虚に向けていた。
前衛にハンター達が向かうとあれば、防御という面で不安が残るのは当然の事だ。
どうしたものかと悩むソルラにUiscaも言葉を掛ける。
「敵の能力が不明なので、後方の人の安全も考えて、二人は護衛を」
「……分かりました。後ろは任せて下さい」
「わふっ。僕も守りますから、守ってくださいっ」
ソルラの言葉にアルマが笑顔で杖を掲げて見せる。
銃口の先を見つめながらキャリコもお礼を述べつつ口を開く。
「徐々に戦線を押し上げるので、その間、護衛を要請する。頼んだ」
「はい。頑張らせて頂きます」
しっかりと返事をした希の言葉に全員が力強く頷いた。
●序盤戦
全速力でハンターは駆ける。
一番先頭を走るの星輝。後ろにUiscaとざくろが続く。
(……隊列を考えるべきだったかもしれん)
星輝が嫌な予感を胸の奥底へと抑えながら思った。
援護を主体とする為、彼女自身が正面から敵に挑むという訳にはいかない。
連携する為には、全員の位置取りは重要な調整箇所だったはずだ。
「“ゲーム”のルールは、何でしょうか? キララ姉さま」
「……ん? そう……じゃの……」
妹に呼び掛けられて星輝は考える。
メフィストが出現させた気色の悪い歪虚――ロノウェ――は、ゆっくりとした足取りで一斉に塔へと進んだ。
「確かに、メフィストの企てが気になる……」
鉾と盾を構えて、ざくろは目を細めた。
メフィストから発せられている負のマテリアルの光線の正体は分からない。
分からないが、塔の結界を直撃している以上、魔法的なものである可能性は高い。
「結界を壊すもの……だったりして」
「ざくろの推測は合っているかもしれんのう」
塔を含め、ここの空間は魔法的なもの、そのものでもある。
最初の大きな衝撃は、空間を無理矢理捻じ曲げて、メフィストが“此処”に侵入したものだったという事であれば、メフィストが放っている負のマテリアルが、結界を破壊する可能性は、十分にあった。
「塔を直接破壊するつもり……でしょうか?」
「その可能性も否定できん……か」
ズキン――と星輝は胸の古傷に痛みを覚えた。
嫌な予感は、そう、この傷が声を上げている事だろうか……。
敵の目的についてアルマとキャリコ、ソルラと希の後衛も考えながら、足を進める。
「わふ? ……わふー!」
強大な負のマテリアルの光線を見上げてアルマが驚きの声を上げた。
まるで、未知と遭遇した好奇心いっぱいの犬のようだ。
「あれが何か分かるか?」
「私も……見当が付かないですね。強力な負のマテリアルではあるようですが」
キャリコの疑問に対し、ソルラが両肩を竦めた。
「……あくまで、推測ですが……」
そう前置きを言って、口を開いたのは希だった。
視線だけで殺しているだろうというキツイ視線をメフィストに向けている。
「“頂上へ続く道”を作っている可能性はあります」
「道……どういう事だ?」
「歪虚の中には、瞬間移動が使える個体も居ます……詳しい原理は分かりませんが、私が知っている中では……『負のマテリアルの流れに乗る』と表現していました」
それを教えて貰ったのは、かつての主である。
一瞬、その端正な顔が浮かび――振りほどくように希は自身の頭を振った。
「つまり、塔の頂上へと瞬間移動する為に……」
「わふー。それは、ずるいですー」
ソルラとアルマがそんな感想を言った。
もし、希の推測通りだとすれば、尚更の事、止めなくてはならないだろう。
塔の頂上には、黒大公ベリアルを討つための『国防装置』と、王女が居るのだから……そこへ、メフィストが侵入したら、どんな惨事になるか。想像するだけで恐ろしい。
「わふっ。ここから、十分届きますね」
もちろん、魔法の話である。アルマはマテリアルを練りながら、機導術を行使する。
青い流星にも似た光の筋が弾けると、メフィストとロノウェに降り注ぐ。
ロノウェの1体に直撃した瞬間、反撃のように負のマテリアルの塊が、アルマへと襲いかかる。
傲慢――アイテルカイト――の固有能力の一つである【懲罰】だ。
与えたダメージと等しいダメージを与えてくるカウンタースキルのようなものである。
「敵さん、懲罰持ってますっ、要注意ですー!!」
強力な能力ではあるが、【懲罰】を受けたアルマはどういう訳か無傷だった。
これが人の祈りや想いが成せる技であるのであれば、効果は十分だったろう。
だが、同時に、一撃目から敵の能力が【懲罰】であると分かったのは、“運が悪かった”としか言い様がない事だったと、ハンター達は後ほど気が付くのである……。
「【変容】している奴は、今の所、居ない様子だな」
注意深くロノウェを確認しながらキャリコは呟いた。
これなら、味方の姿を真似て来られる心配はないだろう。ペイント弾を使う必要性は無さそうである。
「……そういえば、丸っきり、誰かに似るという【変容】は見た事無いかも……」
キャリコの呟きが耳に入った希がボソっと言った。
あるいは個体差が激しい能力なのだろうか……。
「この戦いは、相棒と共に臨みたかったですね」
そんな台詞を言いながらハンスは横一列になって向かって来るロノウェを睨んでいた。
「これほどの大舞台、相棒とならばどんな結末を迎えようと悔いは残らなかったと思いますが……残念です」
相棒である幻獣の姿を思い浮かべながら、ハンスは全力で前に向かって走る。
その隣を壮介も全速力で駆けていた。
「例え此処で終わるとしても……失って、皆が涙に暮れるのを……見るよりはマシです」
そう、それを見る位なら、自分が守って死んだ方が大分とマシというものだ。
ビュンと正面から飛んできた歪虚の魔法。
負のマテリアルを練成したエネルギー弾みたいなものだ。舞刀士としての能力を活かし、それを打ち払う。
「これなら……」
硬い防御を活かして接敵出来るはずだ。
なおも全力で走る壮介の背中を見ながら、射線が被らないように微妙に位置をズレながら、瀬崎は銃撃にマテリアルを込める。
「抜け目なくクールに……フォローだ」
ロノウェの動きはゆっくりだ。
だが、塔に向かっている以上は、その動きを止めた方が良いだろうと感じていた。だからこそ、『制圧射撃』を放つ。
相手の行動を不能にさせる猟撃士の技の一つであるが……効果範囲が狭いのが難点だ。
1体は確実に、もう1体は運がよければ巻き込める――程度だろう。
「そろそろ、接敵か……」
前線の仲間達がいよいよ、刃を叩きつけようとしていた。
●中盤戦
ロノウェを切り刻んだ先、ハンスは横一列に並んでいた敵を隙間を突いて、更に走る。
「敵の数は多い、何事も小手調べが必要でしょう?」
高位歪虚に加え、敵の数が多い。
前衛は厳しい戦いとなるだろう。それゆえ、危険な死地にソルラと希を送り出したくなかった。
だったら、自分が犠牲となっても、小手調べ出来ればそれでいいからと。
「行くぞぉ!!」
ピンッと刀を真横に突き出しながらハンスは全力でメフィスト目掛けて突撃する。
メフィストは負のマテリアルを放ち続けているだけで隙だらけだ。仲間の攻撃を避けたり受けたりはしていたが、位置が動けない様子は、攻撃の絶好のチャンスだろう。
口に刀先を叩き込んでやるつもりなのだ。
大太刀が振るわれる――と見せかけて、ワイヤーがヒュンヒュンと音を立てた。
「儂の仕事は、直接的な撃破に非ず」
器用にワイヤーを操り、ロノウェの動きに牽制を入れているのは星輝だった。
銀光に煌く一筋の線が歪虚に絡まる。
「味方を活かす為の技術の全てを……」
「魔力フル収束……着装! マテリアルアーマー! ざくろの後ろへは、絶対に行かせないよ!」
星輝の口上を途中で遮る形となって、ざくろの叫び声が響いた。
本人にとってわざとでは無いので、ポカンとした口を星輝は閉じる。
「……これが儂の戦い方よ!」
という事で、格好良く最後を締めくくり、ギュっとワイヤーを締め付けた。
敵もただの的という訳ではない。避けもするし受けもするしバットステータスに対する抵抗もする。
そういう意味では、星輝の援護は正しい選択だったはずだ。
「輝け光の矢……必殺! デルタエンド!」
ざくろが作り出した光り輝く三角形の頂点から光が放たれる。
光の筋は左右端と彼の正面に居るロノウェを直撃した。うち、左端のロノウェから【懲罰】が発動し、ざくろへと負のマテリアルの塊が向かって来る。
それを、ざくろは冷静に盾と鎧で受け止めた。
「???」
歪虚の反応にUiscaは首を傾げた。
既に幾人かがロノウェに攻撃している。だが、【懲罰】が返ってきたのは、今の所、アルマとざくろの攻撃だけだ。
【懲罰】の能力は狙って使う事が出来るというのだろうか……それとも……
(まさか、敵の全員が【懲罰】を使って来ない可能性も?)
であれば、範囲攻撃を使っても問題はないかもしれない。
敵がどんな能力を持っているか、よくよく確認する必要があったかもしれない。
(そういえば、あのイケメン歪虚さんも【懲罰】は使って来なかったですね……)
そこまで思案した時だった。
5体ほど、ロノウェの姿が変わった。
この世の下は思えない醜い姿から、一変し、悲哀に満ちたか弱い少女のような姿へと【変容】したのだ。
「それぐらいで、狼狽えると思いましたか!?」
刀を振るう壮介の動きに戸惑いは見られない。
当たり前だ。最初から少女の姿をしていたとしても、覚醒者は負のマテリアルを感じられる。
よほど巧妙に負のマテリアルを隠せる個体であれば別だろうが、少なくとも、目の前のロノウェには、そこまでの能力は無さそうだ。
「甘いですよ」
【変容】したロノウェに立て続けに猛攻を加える壮介。
押している手応えは確かにあった。
奇怪な叫び声を上げつつ、ロノウェは負のマテリアルの拳骨を作り出すが、それが銃撃で吹き飛んだ。
「どうやら、【変容】持ちは【懲罰】使ってくる様子はないかもしれないな」
後方からスナイプしている瀬崎の射撃だ。
冷静に戦況を把握しつつ、必要な所に銃撃を放っていた。
【懲罰】が来ないなら安心して攻撃に全力を出せる。か細い勝機が見えた――気がした。
残りの不安材料は……メフィストそのものだが……。
聖なる力が込められた銃弾がメフィストに襲いかかる。
「どうやら、効くのは確からしいな」
メフィストが闇の属性を持つ存在であるのは確かなようだ。
でなければ、メフィストが回避行動を取ったりしないだろう。回避するという事は当たればダメージになるという事を意味しているはずなのだから。
「僅かに身体を逸らして、こちらの攻撃を避ける時もあるようです、ね」
剣を構えながらソルラは言った。
効率よく攻撃を当てるには、複数人での攻撃を重ねる必要があるだろう。
ハンスが向かっている事もあるので、より的確に攻撃が当たるかもしれない。
「凄い……凄いですよ、アルマ様」
希はアルマが放つ機導術の威力に驚いていた。
「わぅ? ノゾミさん、火力お好きです? これ、実は最大火力じゃないです。今度、僕の全力見せてあげますっ」
「ぜひ、観たいです!」
確かにアルマが放つ術は強力であった。
闇の属性であるメフィストにとっては厄介だっただろう。彼の術が直撃した時に限っていえば、負のマテリアルの光線が途切れるからだ。
「……いけますね。これなら、もしかして、メフィストさえ倒す事も……」
僅かな希望が見え、ソルラが呟いた時だった。
●逆転
前衛が押し込み、後衛が援護する……一見、理想的な状態だったかもしれない。
だが、それは、戦線が伸びきっている形でもある。
そこを敵が狙って来たという事は、敵も戦況を見極める頭脳と連携という言葉を知っているのだろう。
「……我らが主を守れ」
もし、聞こえたのなら、そんな“命令”だったかもしれない。
傲慢歪虚の持つ強力無比な能力【強制】だ。それを5体ほどのロノウェが同時に使った。
対抗するには、自身の抵抗力を増すしかない。
ハンター達にとって不幸だったのは、この場に負のマテリアルが満ちていた事だろう。耐えられるはずの【強制】は防ぎきれなかったのだ。
「わふ!?」
「なんて……事だ」
アルマとキャリコが驚愕する。
二人の放った攻撃はメフィストに当たらず、ハンスが“庇った”のだ。
覚醒者であっても、下手をすれば死んでしまうかもしれない程の強力な攻撃は、ハンスを一撃で倒すには十分だった。
地面に倒れたハンスを助ける為か、壮介が走る。
……もし、ハンター達が【強制】への対処を念入りに決めていれば、あるいは、この結末は防げたかもしれない。
壮介を援護する為にと放った、アルマとキャリコの攻撃は、確かにメフィストを狙っていた。
絶大なる負のマテリアルが放たれている付近で倒れては、どうなるか、大体、検討がつくだろう。それを防ぐ為にはメフィストの光線を途切れさせる必要があるからだ。
「そんな……壮介さんも」
ソルラが絶句する。
ハンスを助ける為に走っていたと思われた壮介もまた、【強制】に掛かっていたのだ。
彼もハンス同様にメフィストを庇って――地に倒れた。
「私が救援に向かいます。キララ姉さまとざくろさんは敵を食い止めて下さい」
回復魔法を唱える為、意識を集中させながら、Uiscaが走る。
「二人を頼むのじゃ」
「ここは、ざくろ達に任せて」
星輝とざくろの二人が圧倒的な数を相手に大立ち回る。
ワイヤーが唸り、ロノウェの身動きを抑え付けた所で、ざくろが術を叩き込む。
別のロノウェの攻撃に対し、光の障壁で迎え撃つ。
「超機導パワーオン! 何があってもみんなで生きて切り抜ける……絶対!」
ざくろの奮戦は左右に展開しているロノウェの片翼を、辛うじて押さえつけていた。
いくら、硬い防御であっても、防御の薄い所に入れば無傷で済まない。
それは高回避力を誇る星輝であっても同様だ。数多く攻撃を受ければ、中には回避が極めて困難な攻撃が当たる時もあるからだ。
回復薬のおかげで保ってはいるが、それもいつまでもという訳にはいかない。
戦線が崩壊した――。
戦況分析だけは昔から得意だと自負していたソルラは、この状況を瞬時に理解した。
左右に展開している歪虚を抑えていた前衛が一気に半減したのだ。星輝とざくろの二人では抑えきれず、障害が無くなった歪虚が塔へと向かってくる。
この状況を立て直す術を、彼女は見い出せない。
(……)
考えるのを辞めた。今は、敵の迎撃だ。
不気味に塔へと向かって進んでくるロノウェを打ち倒すには人手も火力も不足している。
かといって、メフィストへと攻撃を繰り返しているアルマをキャリコの二人も、その手を緩めていいのか分からないし、防御の薄いアルマとキャリコの二人が倒れれば、それこそ、逆転のチャンスは無い。
「ソルラ様、私は瀬崎様の護衛に回ります」
希の緊迫した声。
瀬崎は塔付近から射撃を繰り返しているからだ。
ロノウェに接近されてしまえば、瀬崎の援護射撃は止まってしまう。希の選択は妥当だろう。
「決して、無理をしてはいけませんよ」
「それは、ソルラ様も、ですよ」
微笑を浮かべ希は駆け出す。全力で走れば、ロノウェの動きより数段早いからだ。
(どこまで……耐えられるでしょうか……)
ソルラは心の中で呟いた。
●我らに勝利を
そこからは辛い持久戦が展開された。
倒れたハンスと壮介に回復魔法を使い、一先ずの急場を凌ぐ。
だが、傷が思った以上に深く、身動きが取れない状況だった。その為、Uiscaはメフィストの近くで倒れる二人を、引きずって引き離す。
「……攻撃、しないのですか?」
彼女が見上げるとそこにはメフィストが居るのだ。
死にかけのハンターと救護に入ったUiscaを、いとも簡単に殺せただろう。だが、メフィストはその場を動かなかった。
アルマとキャリコの執拗な妨害攻撃を受けながらも負のマテリアルの照射を続けている。
その状態の中、メフィストの目の一つがUiscaを見た。
「籠の中の羽虫に、この私が何故、かかずらう必要が?」
「――っ!」
怒りの声を上げようとした所で、Uiscaは噛み締めた。
悔しいが、助け出すチャンスを失う訳にはいかない。安全と思われそうな位置まで二人を引きずる。
「……もう、あんな所にまで」
ロノウェの動きはゆっくりであったが、持久戦となり、時間はそれなりに経過した。
邪魔されず塔付近へと近づいているロノウェが数体見える。
それを希と瀬崎が白兵戦で迎撃しているが――数の差が圧倒的で接近を防げていない。
アルマとキャリコの護衛に回っていたソルラもその状況に塔へと向かっている。
星輝とざくろが、数体のロノウェを相手に足止めに成功していた。
「さあ、これからが見ものですよ」
勝ち誇ったようなメフィストの言葉にUiscaは背筋が凍った。
「何を企んでいるのですか!」
Uiscaの叫びと共に、大きい爆発音が響いた。
その爆発はロノウェが負のマテリアルを撒き散らして自爆したものだった。
「結界にダメージが?」
比較的近くにいた希は爆発のダメージに耐えながら、結界にヒビが入るのを見た。
ここに来て、誰もが“ゲーム”の意味を理解した。
ロノウェは塔に到着すると負のマテリアルを含んだ爆発を起こす。その結果、結界にダメージが入る。
古の塔の結界がそのダメージに耐え切れなくなった時、結界は崩壊、メフィストは瞬間移動で頂上へと移動出来るのだろう。
「つまり、このロノウェも!」
目の前に褐色に変化するロノウェ。きっと、これが自爆の合図なのだろう。
希は逃げる事も出来たはずだった。
「させないです!」
ロノウェを自爆に巻き込まれる覚悟で押し出す。
危険とか死んでしまうとか、そんなもの考えている暇は無かった。あるには、依頼を失敗させたくないという受付嬢魂だったかもしれない。
「おまえっ!」
悲痛な瀬崎の叫びと共に、希を巻き込んで、ロノウェは自爆。
煙が流れ――残ったのは大地に伏せて動かない希。
ピクリと希の身体が動いたのは――きっと、緑髪の少女の無事を祈った者が居たからだろう。
だが、安堵するまでもなく、次のロノウェが希に……塔に、近寄る。
「やらせるかよっ!」
目の前で女を殺させる訳にはいかない。
皮膚の色が変わっていくロノウェの横腹にタックルを入れる瀬崎は、そのまま、力の限りロノウェを押し出す。
「うおぉぉぉ!」
雄叫びを上げ、希と塔から引き離した。
その直後――爆発。
それまでほぼ無傷だったのが瀬崎の命を救った。彼は希の無事を確認すると、意識を失う。
塔の扉が勢いよく開かれると、アルテミス小隊員が飛び出してきた。
「戻りなさい!」
ソルラの命令に対し、隊員達は言い返す。
「アイツ等が行けって五月蝿いんですよ!」
「せめて、彼らを安全な所に」
最初の照射で負のマテリアルを浴び、倒れた兵士達を看病していた隊員らであった。
戦闘の経過を見ていたのだろう。看病を受けていた兵士達は自分の命が危険になる事を承知で、彼らを向かわせたようだ。
「……分かりました。早く!」
ソルラは隊員に命令すると、迫るロノウェへと剣先を向けた。
傾いた天秤を元に戻す力は、もはや、ハンター達には無かった。
残るロノウェは着実に塔へと接近している。
「ざくろ、任せたのじゃ」
「片付けたら、すぐに向かうから!」
星輝はざくろに、この場を託した。ロノウェは何体か残っているが、今は塔の防衛が優先だ。
そして、星輝は機動力に自信があった。自分であれば、疾影士としての能力を活かし、次の爆発までに間に合うかもしれない。
「ソルラ! 無茶するでないぞ!」
その叫び声が届いているだろうが、聞く耳はないだろう。
なんとか、爆発から安全に引き離さなければいけない。
星輝は手に持つワイヤーに力を込める。
●鉄壁の騎士
ハンターの言葉はソルラの耳に届いていた。
しかし、そうは言っても目の前の状況も、また、見逃せない。
「塔に、触れさせたり、しません!」
ソルラがロノウェを間一髪引き剥がした。
その瞬間、歪虚が負のマテリアルを盛大に撒き散らして爆発する。
「……あれ?」
一撃でハンターが戦闘不能になる爆発に、ソルラはほぼ無傷で耐えた。
この場には居ない、けど、確かに繋がっている人達の祈りの力だったかもしれない。
「次が!!」
まだ、残りは数体居る。
その1体にソルラは飛びついた。このまま、メフィストの企みを達成させる訳にはいかないのだ。
もし、万が一でも、塔の結界が破れ――メフィストが塔の頂上に至った場合……。
『装置』が破壊されるか奪取されてしまうだろう。それは、黒大公ベリアルとの決戦で無くてはならないものだ。失う訳にはいかない。
そして、それ以上に、その場に居るはずであるシスティーナ姫は殺されるか連れ去られてしまうだろう。
姫様は王国に住まう人々の希望なのだ。
「絶対に、止める!」
飛び付いた勢いそのままにロノウェと転がるソルラ。
間一髪、間に合った為、塔に影響のない位置で爆発する。
「あ……がっ……」
しかし、ソルラを守った奇跡は、二度も起こらない。
いや、この状況でも、立ち上がったソルラの気迫自体が、ある意味、奇跡だったかもしれない。
「ソルラ! 退くのじゃー!」
頼もしい仲間の声が耳に入ってくる。
(あぁ……そうだ、私……)
困った時、辛い時、ハンターを頼れって言われていたっけ……。
フラフラの足。眼前に、別のロノウェが今まさに、爆発しようとしていた。
(私に、力を貸して、貴方の強さをっ……)
真っ赤な髪が風に靡くイメージのまま、ソルラは“最後の気力”を振り絞った。
そこからはどうしたのか分からない。ただ、力のままに、歪虚を押す。
(……鐘の音が、聞こ……える……)
爆発音は聞こえなかった。
ただ、遠くから、鐘の音色が響き、ソルラはそれに包まれた――。
●終結
足元に転がったきたソルラの篭手に星輝は呆然とした。
なぜ、篭手だけが飛んできたのか……。
「ソ……ルラ……?」
煙がなかなか晴れないのは、幸いだったかもしれない。
絶望と悲しみに襲われ、ショックを受けるよりも早く、別のロノウェが塔に近づいていたからだ。
「これで、どうじゃ!」
グルングルンとワイヤーで絡めると全力で引き剥がす。
が、ここに来て、長期戦の影響が出た。思うようと引っ張れず、爆発直前まで引っ張り続けなくてはならなかったからだ。
「ぐっ、ぬぬぅぅぅ!!」
同時にロノウェが自爆。
いくつものマテリアルの輝きが、星輝の生命を守った。
爆風で吹き飛ばされた星輝が音を立てて地面に倒れる。
「キララ姉さま!」
全力で走るUiscaとすれ違うように、機導術と銃弾がメフィストに放たれる。
アルマとキャリコの二人はこの惨状に無力だった訳ではない。
メフィストの照射は続いており、こちらを止める為に攻撃の手を緩める訳にはいかなかったのだ。後ろで大きな爆発音が響くが、振り返っている暇はない。
「当たれ、ですー!」
「……誤算だったか」
二人の攻撃は強力であり、当たれば、メフィストの照射を一時的に止めるのは十分だった。
メフィストは積極的に行動してこないのだが、だからといって、全く動かないという訳ではない。
攻撃が、当たらない場合があるのは誤算だったかもしれない。
「ふむ……ロノウェは全滅しましたか」
ざくろが最後に残ったロノウェを討伐した様子を見て、メフィストはそんな言葉を言った。
ロノウェの全滅した時点で、塔の結界がまだ維持出来ている事はメフィストにとっても、ちょっとした誤算だった。
「無様……もとい“必死に”抗う人間を眺めるのも時には悪くない」
「ふざけるな」
キャリコの銃撃がメフィストの顔を掠めた。
「次は外さない」
「“ゲーム”は終わりだ、人間。そして終わりには結果があり、結果にはそれに相応しいものが与えられねばならない。なれば、この私が褒美を与えましょう」
チラリと視線をアルマに向けた。
「悪くない攻撃でした。この私の照射に介入できたのですから」
「もう1発、どうぞですー!」
放たれた機導術をメフィストは避けようともしなかった。
かなりのダメージは与えているはずなのだが……。
「倒れるまで、打ち込むだけだ」
キャリコが撃った次弾も、また、属性を突いた為、強力な一撃となった。
だが……直後の事だった。
「あなたには、これが褒美です」
それは【懲罰】だった。不意打ちにも近い形での思わぬカウンターにキャリコは為すすべもなかった。
真横で崩れ落ちた“おともだち”の姿が、アルマの中で過去の記憶と重なる――。
「……ス……ロス……殺ス! 絶対に、殺ス!」
「ん? エルフにしては面白い反応ですね」
怒り狂ったアルマの機導術が次々に放たれる。
まるで、光の流星群のような中で、平然と歪虚の言葉は続く。
「だが、“値しない”。さて、余興はここまでとしましょう。私にもすべきことがある」
メフィストの高笑いが響いた。
【懲罰】を使おうと思えば使えるのだろうが、メフィストは敢えて使わなかった。
術を打たれるがまま、笑いながら踵を返して歩き出す。
「ふむ……予想していたよりあの豚が保たなかった事は残念だが……悪くない余興でした」
メフィストが唐突に姿を消すまで、アルマの機導術は続いた。
それでも収まりきれない彼の怒りの光筋が、メフィストが居なくなった虚空に飛翔し続けるのであった。
古の塔での戦いは結果的には、メフィストを退けた事になった。
だが、その犠牲は余りにも大きく、国内潜伏歪虚追跡調査隊、通称『アルテミス』は隊長以下、主な覚醒者は戦死。
小隊の存続は難しく、騎士団直属の隊としては事実上の解散となったのであった。
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最終発言 2017/04/20 18:41:53 |
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最終発言 2017/04/17 12:57:11 |
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【相談卓】我らに勝利を! Uisca=S=Amhran(ka0754) エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/04/21 16:24:09 |