ゲスト
(ka0000)
【陶曲】百年旅~燃えたフマーレ
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/04/20 12:00
- 完成日
- 2017/04/30 00:09
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「やれやれ、ようやく復旧したかしら」
ふぅ、とシエラ・エバンスは肩で深く息を吐いた。
ここは蒸気工業都市フマーレの一角。
チョコレート専門店「チョコレート・ハウス」。
「まさか大火でお店が燃えちゃうとはねぇ」
はふぅ、と頬に手を添えてげっそり。
先日、フマーレは原因不明の大火に見舞われた。
石の建物などはともかく、天幕のつながる市場通りなどは酷いありさまだった。
ここ、チョコレート・ハウスも木製のテラス席があったのでそこを中心に焼けてしまった。もちろん、店内も焦げてしまい一から改装する羽目になっていた。
「気の毒じゃったの」
そこに、元隠者のジル・コバルトがやって来た。オカマの興行師、シェイクも一緒だ。
「ま、今回はウチだけじゃないから仕方ないんだけどね」
「今回、ね」
シエラの言葉をシェイクが繰り返した。
しばらく前に、夜な夜なフリルドレスが人を襲っていたという事件があった時、店員の制服にフリルドレスを使っているからとこの店だけが疑われた。業績が好調でやっかまれていたこともあったのだが、とにかくそのことを暗に行っているのだ。
「店はいつから再開するんかの?」
「うーん、店舗は一応応急修理はしたけど……」
ジルに聞かれ、シエラが悩ましく身をよじり言葉を濁す。
「ああ。売り子さんもお店どころじゃないかもしれないわね」
「それもあるけど……チョコレートってほら、嗜好品じゃない?」
気付いたシェイクだが、シエラの思案は他にあった。
「生活にゆとりがある時に夢を与えるのが、ウチのチョコレートなの。高級路線だから、この大変な時に売り出していいものじゃないわ。……被害にあった人には夢を持ってもらいたいけど、今はしっかり地に足をつけてほしいの」
そんなこだわりを話す。
「でも……店の修理でお金がいって、それで営業もできないんじゃ資金的に苦しいだけじゃないの?」
「そうじゃの。何のために急いで店を復旧させたか分からんの」
心配するシェイクに、重々しく頷くジル。
「あ、今回の大火被害で営業形態を一新したの」
そういえば、と口調を変えるシエラ。
「営業形態を一新?」
「そう。今まではスイーツショップだったけど、今度は飲酒業の許可もぶんどって来たわ」
「は?」
ジルとシェイク、聞き返した。
「だから、今までは夜の営業はバレンタインとホワイトデーの臨時だったでしょ? 臨時だから周りの飲酒店から客が取られると煙たがられてたの」
このあたり、商売で同業者同士すり合わせている部分もあるところ「期間限定だから」と割り込んでいたので仕方がない。
「今回はほら、わたし被害者じゃない。周りもそうだけど。……とにかく、このどさくさに紛れて飲酒業として営業してもいいって同業者に認めさせたの」
フリルドレス事件でしつこく疑われていたところ、ハンターのフラ・キャンディ(kz0121)たちを雇って自力で事件解決。濡れ衣だったこと後ろめたさを感じる周りの店に対し今回の被害で同情を誘い、常時営業の許可を取ったのだ。
「……転んでもただでは起きん性格じゃの」
「そういうの、好きだわ~」
呆れるジルににまりと共感するシェイク。
が、ここでジルが気付く。
「チョコレートが嗜好品なら、酒も嗜好品ではないか?」
「酒はほら、辛いことから立ち直るためとかにも飲む物じゃない?」
あっさりと言い返すシエラ。
「しかも日中の復旧作業で疲れてる人が多いわ。……幸い、ウチ独自のチョコレートリキュール『ショコラヴィーナス』は甘いお酒。疲れた体にとってもいいと思うの。チョコレートみたいに甘い夢を与えるのではなく、明日への活力としてのアルコールを提供していきたいわ」
店の修理でふっとんだお金もこれでいくらか取り返せるし、と夢のない言葉も付け加える。
「成程の……それじゃ、フラを売り子で呼んだほうがええかの?」
「あら、ちゃんとハンターオフィスに連絡するわ。……フラちゃんは必ずつけるように、ってね」
そんなこんなで、チョコレート・ハウスの夜の業態「スイーツカクテルバー」での店員として、カクテル作りやつまみ作り、そして接客などこなしてくれる人、求ム。
なお、フラ・キャンディは店が街が燃えたことでとても意気消沈しています。
「故郷も失って……お店や町も燃えてしまって……世の中どうして奪われることばっかりなんだろ」
などと考えてブルーになっているようですね。
生まれ育ったエルフの隠れ里から「百年目のエルフ」として追放された身ですので、ある程度仕方ないですよね。
励ましてあげないと暗い雰囲気のまま接客などして依頼が失敗しますので、まずは開店前に声を掛けてあげてください。
ふぅ、とシエラ・エバンスは肩で深く息を吐いた。
ここは蒸気工業都市フマーレの一角。
チョコレート専門店「チョコレート・ハウス」。
「まさか大火でお店が燃えちゃうとはねぇ」
はふぅ、と頬に手を添えてげっそり。
先日、フマーレは原因不明の大火に見舞われた。
石の建物などはともかく、天幕のつながる市場通りなどは酷いありさまだった。
ここ、チョコレート・ハウスも木製のテラス席があったのでそこを中心に焼けてしまった。もちろん、店内も焦げてしまい一から改装する羽目になっていた。
「気の毒じゃったの」
そこに、元隠者のジル・コバルトがやって来た。オカマの興行師、シェイクも一緒だ。
「ま、今回はウチだけじゃないから仕方ないんだけどね」
「今回、ね」
シエラの言葉をシェイクが繰り返した。
しばらく前に、夜な夜なフリルドレスが人を襲っていたという事件があった時、店員の制服にフリルドレスを使っているからとこの店だけが疑われた。業績が好調でやっかまれていたこともあったのだが、とにかくそのことを暗に行っているのだ。
「店はいつから再開するんかの?」
「うーん、店舗は一応応急修理はしたけど……」
ジルに聞かれ、シエラが悩ましく身をよじり言葉を濁す。
「ああ。売り子さんもお店どころじゃないかもしれないわね」
「それもあるけど……チョコレートってほら、嗜好品じゃない?」
気付いたシェイクだが、シエラの思案は他にあった。
「生活にゆとりがある時に夢を与えるのが、ウチのチョコレートなの。高級路線だから、この大変な時に売り出していいものじゃないわ。……被害にあった人には夢を持ってもらいたいけど、今はしっかり地に足をつけてほしいの」
そんなこだわりを話す。
「でも……店の修理でお金がいって、それで営業もできないんじゃ資金的に苦しいだけじゃないの?」
「そうじゃの。何のために急いで店を復旧させたか分からんの」
心配するシェイクに、重々しく頷くジル。
「あ、今回の大火被害で営業形態を一新したの」
そういえば、と口調を変えるシエラ。
「営業形態を一新?」
「そう。今まではスイーツショップだったけど、今度は飲酒業の許可もぶんどって来たわ」
「は?」
ジルとシェイク、聞き返した。
「だから、今までは夜の営業はバレンタインとホワイトデーの臨時だったでしょ? 臨時だから周りの飲酒店から客が取られると煙たがられてたの」
このあたり、商売で同業者同士すり合わせている部分もあるところ「期間限定だから」と割り込んでいたので仕方がない。
「今回はほら、わたし被害者じゃない。周りもそうだけど。……とにかく、このどさくさに紛れて飲酒業として営業してもいいって同業者に認めさせたの」
フリルドレス事件でしつこく疑われていたところ、ハンターのフラ・キャンディ(kz0121)たちを雇って自力で事件解決。濡れ衣だったこと後ろめたさを感じる周りの店に対し今回の被害で同情を誘い、常時営業の許可を取ったのだ。
「……転んでもただでは起きん性格じゃの」
「そういうの、好きだわ~」
呆れるジルににまりと共感するシェイク。
が、ここでジルが気付く。
「チョコレートが嗜好品なら、酒も嗜好品ではないか?」
「酒はほら、辛いことから立ち直るためとかにも飲む物じゃない?」
あっさりと言い返すシエラ。
「しかも日中の復旧作業で疲れてる人が多いわ。……幸い、ウチ独自のチョコレートリキュール『ショコラヴィーナス』は甘いお酒。疲れた体にとってもいいと思うの。チョコレートみたいに甘い夢を与えるのではなく、明日への活力としてのアルコールを提供していきたいわ」
店の修理でふっとんだお金もこれでいくらか取り返せるし、と夢のない言葉も付け加える。
「成程の……それじゃ、フラを売り子で呼んだほうがええかの?」
「あら、ちゃんとハンターオフィスに連絡するわ。……フラちゃんは必ずつけるように、ってね」
そんなこんなで、チョコレート・ハウスの夜の業態「スイーツカクテルバー」での店員として、カクテル作りやつまみ作り、そして接客などこなしてくれる人、求ム。
なお、フラ・キャンディは店が街が燃えたことでとても意気消沈しています。
「故郷も失って……お店や町も燃えてしまって……世の中どうして奪われることばっかりなんだろ」
などと考えてブルーになっているようですね。
生まれ育ったエルフの隠れ里から「百年目のエルフ」として追放された身ですので、ある程度仕方ないですよね。
励ましてあげないと暗い雰囲気のまま接客などして依頼が失敗しますので、まずは開店前に声を掛けてあげてください。
リプレイ本文
●
「あ~あ、世の中どうして奪われることばっかりなんだろ」
営業時間前、フラ・キャンディ(kz0121)はテラスの手すりに身を預けてため息をついていた。通りはずいぶん復旧しているが大火の傷跡はそこかしこに残っている。
フラ自身、「百年目のエルフ」として故郷の隠れ里から追放されている。
失ってばかりという感覚があるようだ。
「……ごらんの有様なのよ」
フラの後方で見守っていたシエラ・エバンスがため息をつく。
「そういえばあまり落ち込んでるところは見ないね」
霧雨 悠月(ka4130)はこれまでを思い出しつつ、そっとフラの傍に寄った。
「世の中、奪われることは多いかもしれないけど、相応に新しく生まれることもあると思うんだ」
悠月、そっと横に立った。フラ、手すりに両腕を乗せ枕にしたままそちらをチラリ。
「聞いてたの?」
「……フラさんは優しいね」
「どうして?」
顔を上げてくれた。悠月、ほっとする。
「皆のために悲しんでるから。……でも見て」
通りに視線を向ける。
「ほら大丈夫、まだまだ活力に満ち溢れてる人達ばかりだもの」
住民が復旧作業をしている。すでに自己責任の部分ばかりだ。
「でも……」
「折角引き受けたお仕事だし、新しいお店の魅力で、落ち込んだ人たちを元気にしちゃおう!」
ぽん、と背中を叩いて店の奥に引っ込んだ。
背中越しに振り返る瞳に、楽しさと明るさを宿して。
「悠月さんはそう言うけど……」
フラ、声も心も弾ませていたが、やがてまたぽふりと腕枕に頬を落とした。重症である。
「ねぇフラっち?」
そこにキーリ(ka4642)が近付いた。
「いろいろあったのは聞いてるけど……故郷を出たから今があるんだし、今回飲酒業ゲットしてるし。悪い事ばかりじゃ無いわよね」
「それはそうだけど」
口答えしたフラをじっと見るキーリ。フラ、怒られるかもと不安そうにする。
が、キーリは口調を荒げるどころか深いため息をついた。
「キーリさん?」
「……ん、私ってやっぱりシリアス向いてないわ。いい、フラっち?」
「な、何?」
「今日一日無理矢理でも笑顔でいる事。私にシリアスやらせた罰よ。罰!」
キーリ、ぴしりと言い放つ。何それ酷いと思いつつも、それがあまりに彼女らしかったので思わず笑みを作るフラ。
「て、照れてないわよ。真面目な話したからって……随分遠慮なく燃やしてくれたわねー。燃やすなんて美しくない手段よね」
笑顔に慌て、くるっと振り向くキーリ。
「うん。美しくない」
変わらず普通でいてくれるキーリに感謝するフラだった。
フラ、もう腕枕はしない。
でもやっぱり外を向いている。
そこに、ふわっと腕が掛けられた。
後ろから抱き締められたのだ。
フラ、振り向かない。背中に感じたやさしさで、何となく誰だか分かる。
「例え奪われても失っても、また作り出せばいいのですよぉ。お店も街も、皆が頑張って作ってますし……」
「ありがとう、小太さん」
後ろから回された弓月・小太(ka4679)の手に手の平を重ねるフラ。
「でもすぐには……。里から出て一人ぼっちの時もこんな感じだったかなぁ」
「ひ、一人ぼっち?! ……え、ええと、フラさんの家族には僕……僕達がなるのですよぉ?」
小太、話が思ったよりも重くなったことに慌ててしまった。思わず心にしまっていた大切な言葉が出てしまった。
「え?」
振り返りまじまじと覗き込んでくるフラの瞳。
まっすぐで、少しうるんでいる。
そして何より店の奥で誰か……というか、皆の気配を感じた。
「あぅ……で、ですからお手伝い、頑張りましょう」
真っ赤になりわたわたと離れる小太だった。
そして、小太がそそくさと店の奥に逃げ……立ち去るのを見送るフラ。
もう、外は向かない。
「私も似たようなものだ。特に故郷に関しては」
そんなフラの背後、つまり通りの方から手すり越しに声がした。
鞍馬 真(ka5819)である。
「わ、びっくりした!」
「奪われたものは取り返し、失ったものは……新たに築いて行こう。我々には、その力があるのだからさ」
そう言いながら手すりに手を付くと、ひょいとジャンプし飛び越えて店内に着地。
「うわっ! 真さん……」
「このくらいはできるさ。できる力で、できるだけのことをする……そうだな。こういう時こそ、私たちの歌だろう?」
「えーと、『リラ・ゼーレ』だよね」
「そうそう。一人じゃないよ、ほら私♪ ……だろう?」
一緒に口ずさみながら店の奥に行く真だった。
入れ替わりにエーミ・エーテルクラフト(ka2225)がやって来た。
「マイナスばっかりじゃ、確かに割に合わないわよね?」
フラの横に寄りかかり問うエーミ。
「そういうわけじゃ……」
「じゃあ、奪う側に回る?」
まだ吹っ切れていないフラに、ぴしりと聞いてみた。
「守るためなら。それで悪く言われるなら……ボク一人で十分。ボクは一人ででも戦う」
あるいは、いつか誓った決心だったかもしれない。
これを見て責める口調をやめほほ笑むエーミ。
「表情は鏡。自らの心だけでなく、相手の心も映すの」
少し寂しそうな顔で続ける。
「相手の顔を見たら、自分がどんな顔してるか、考えてみて? ……今の、誰かさんたちが寂しがるわよ?」
「え?」
フラ、拍子抜けした。
これを見て悪戯っぽく、くすりと笑うエーミ。
「これが、エーテルクラフトの魔法の極意よ。お仕事、頑張りましょう」
言い残し、店の奥に戻る。
「……寂しい、ことかな?」
残されたフラ、胸に手を当て自問する。
里から一人で旅立つよう育てられ、実際一人で旅だった。戦う技術、生活する技能、そして生き残る智慧。それを我が身に叩き込まれた。
でも仕方ない、と一人旅の途中で我が身に言い聞かせた。
そして今、一人ぼっち……。
そこに背後から声が。
「あかんわ、えろう遅れた…」
パタパタと誰かが飛び込んで来た。
六道銭 千里(ka6775)である。
その、慌てて駆け込んだ姿がフラの横でピタと止まる。
で、振り返りフラの表情を見る。
「キャンディさん……そう、塞ぎ込んどったら、お客さんに笑顔になってもらえへんで?」
「え?」
「確かに世の中辛い事も多いけど、それだけちゃうわ…」
びっくりするフラに、気持ちは分かるけどなと千里。
「今日は笑おう…笑う門には福来る…」
「でも…笑うって……」
「爆笑ちゃう、可愛い笑顔や。ほら、お客さんもキャンディさんの可愛い笑顔見たいと思うわ…」
「可愛い?」
「そや、その顔や。頑張ろな…」
深く考えさせない畳み掛けトークで店の奥に行く千里。
すでに皆に置いて行かれたと感じていたフラ、店の奥について行く。
●
やがて開店の時間に。
エーミの収まるカウンターに、どさりと男が座った。すぐにため息。
「いらっしゃいませ。初めてでいらっしゃいますか?」
「いや……【ヴィーナスキッス】を」
どうぞ、と出してもなかなか口を付けない。しかも隣の席に置いた。
「ではこちらを。お客様に合いそうと思いまして。……ほかに、ご心配なども伺っております」
心の落ち着くような香りのカクテルを出して聞く。
「恋人がこの火事で行方不明でね」
「待っていらっしゃる?」
「ええ。生きていると信じています」
エーミ、微妙な顔。この機に逃げられ……。
ううん、と顔を振る。
「もし、【ヴィーナスキッス】を頼む女性の一人客がいれば『きっと待ってるはず』と声を掛けます」
男、顔を上げた。来た時より明るい。
やがて男が辞した後、やはり疲れたような女性客が。
一人だ。
「お疲れのようですね」
「いつもは彼氏と来てるんだけど、ようやく職場が落ち着いて……」
彼とは連絡がまだ取れないという。
注文は、【ヴィーナスキッス】だった。
「そのうち、この店で会えるような気もします」
「バーテンダーさんを信じるわ」
女性、にっこり。
「きっと、待ってるはずです」
確信して、そう声を掛けた。
悩む女性はこちらにも。
「え? 『嫌い』……」
花の花弁を摘んで恋占いをしていた女性が愕然としていた。
「恋占いですか? 俺占いとか得意なんで占いましょうか?」
そこに千里登場。
女性、バーテンダー衣装の千里を見て微妙な表情をした。持参しテーブルに並べたタロットを片付けようとする。
「こう見えても、ね。例えばお客さんのラッキーカクテルは……」
千里、ちょい借りまっせとタロットから一枚。数字をメニューにあてはめ、【ホワイトデー】を勧めた。
「落ち着く……」
持ってきたカクテルを一口飲んで、柔らかい気分になった様子。
「ほな、恋愛について占ってみますわ…」
またもタロット拝借。
「ご主人さんの占いや、頼むで」
カードを丁寧に扱い、スプレッド。
「『塔』の正位置が出るあたり、今を暗示してはるなぁ……でも、この『星』の正位置が輝いとるわ…」
並べてオープンしたカードに見入る客。それに気付いた千里、くす。
「え?」
「そういうひたむきな姿勢、ええね。この星のように輝いてれば、ええ結果くるんちゃうかな…」
「この星のように……」
嬉しそうな客。
「片思い、かないそうな気がしてきました」
明るく一礼するのだった。
「ふぅ……」
こちらにもため息を吐く女性客が。くるっ、と封書を弄っている。
この様子に、遠くからきらーん☆といい顔をする姿が。
「いらっしゃいませ。恋の魔術師のお相手、必要かしら?」
キーリである。落ち着いた衣装のエプロンドレスで客の傍に寄った。
「分かるの? 悩んでるって」
「もちろん。【スカーレットヴィーナス】のお代わりはどう?」
「ええ。……いいわよね、甘い恋の味で」
「望めば魔法で火もつけてあげるわ。……もちろん、恋の炎。大火なんか気にならない程熱いの……あ」
気分よく話していたキーリ、失言だと自分で気付いた。
「いいわ。火事は怖かったしいろいろ失ったけど、新たな恋に生きたいの」
一方的に振られたらしい。封書、くるっ。
「もう、忘れたの」
今日は一からやり直したくて来たのだと言う。
「ちょうどいいじゃない。ここもカクテルバーとしては新参者だけどお酒は一級品ばかりよ。みんな貴方の背中を押してくれる物ばかり」
「選び放題ね……客にも店員にもいい男がちらほら。こっちも選び放題でいい?」
客、新たなグラスを飲み干し封書を破り捨てて言う。吹っ切れたようだ。
「もちろん。ただ……」
キーリ、ちらと客の表情を見た。
「店員も綺麗どころばっかだけどね」
ウインクするキーリ。
「うらやましいくらい綺麗ね」
客、そう言って感謝する。
こちらではトラブルが。
「お疲れの貴女に、甘い女神の口付けを……」
真が、憔悴している女性客の注文した【エンジェラ】を届けていた。
「ありがとうございます。火事、大変でしたね……私もでしたが、この店も」
「そうですね……」
ここで真、意を決した。
「私はハンターです。……もう、あんな災害は起こさせないし、万が一があっても必ず助け出す」
力強い言葉。聞いていた女性客、安心したようにふっと力が抜けていた。
「そう……女神に誓って」
ショコラヴィーナスに引っ掛け、ホットのショートカクテルを客の前にすいっ、と。
まるで引き込まれるように飲んだ客だが……。
――がたっ、どさっ。
「きゃああ!」
「どうしたの?」
女性客、ホットのショートカクテルで心身とも疲れ果てた体に一気に酔いが回ったようで派手に倒れた。
「いかん。すぐに休憩室に!」
真の機敏な対応で悪評がつくまではいかなかった。
そして小太。
「い、いらっしゃいませぇ」
「まったく。どこもここも焦げ臭いんだから」
ツンケンした若い女性客を接客していた。
「ふぇっ、それならいい香りがするものはいかがですかぁ?」
「じゃ、それお願い」
提案に、一言で返してツン。
で、ミントの葉ののる【ヴィーナスキッス】を持ってきた。
「あら、いいわね」
瑞々しい緑の葉に目を輝かすツン娘。香りをかいですーっとしたのだろう。晴れやかな表情だ。
小太、さらに何かを客の前に出したぞ?
「このお花もいい匂いがしますよぉ?」
すっといい匂いのする花も添えた。
「まあ、結構やるじゃない……可愛い顔して、かなりの女を泣かせてるんじゃない?」
ツン娘、今度はにやりと意地悪そうに小太に迫る。
「そ、そんなことないですよぅ……そうだ。どこも焦げ臭いなら花を植えてお姉さんの手で嫌な匂いを消し去ってしまうとかどうですかぁっ」
「それ、いいわね。帰ったら早速お父様に掛け合ってみるわ。……私は手を汚さないけどね。文句ある?」
「は、はわわっ」
ぐいっ、と挑戦的に寄られて辞した。
途中、ちらとフラの様子を気にした。
頑張っているようで、小太も笑顔になる。
やがて、杯の進んだ客もちらほら。
「ううん、もうだめぇ……」
テーブルにぐでーっとなっている女性客がいた。胸がおっきい。
「大丈夫ですか、何か辛いことでも?」
悠月、気付いて対応する。コップ一杯のお水を出して声を掛けた。
「そうじゃないのぉ。お酒が美味しかったのぉ」
「そ、それはありがとうございます」
これは危ないかな、と危険を察知する悠月。
この時、真がぐったりした女性客を店の奥に運んでいるのが目に入った。周りがざわついている。
「ええと、お酒の強さは人それぞれ……少しだけ心に余裕をもって。そうすればもっと、味と香りをお楽しみいただけると思いますよ」
「そう? でもぉ、ここのお酒全部味わいたいぃ」
その状態でそれは止した方が、と思う悠月だが、店の売り上げも脳裏をかすめた。いやんいやん、と椅子で身をよじっている様子も、いつふらっとくるか怪しいものだ。
「それじゃあ、特別にアルコール薄めにカクテルを作りますから、カウンターへ」
その瞬間だった!
「やぁん、ありがとぉお。どぉしても全種類制覇したかったのぉ」
感極まった客に、むぎゅーと抱き着かれる悠月だった。
「あ。あはは…」
その悠月、倒れた女性客を奥の部屋に横たえシエラに任せて来た真とばったり。
真は無言だったが、女性客に抱き着かれたままカウンターに移動していた悠月は動揺したり。
「支えられなかったな、俺は」
真、自責の念に駆られる。
「大丈夫なん…」
「ああ、すまん」
千里ともすれ違いそんな会話。
「まこっち。綺麗どころなんだからしっかりして!」
「ありがとう。きみの方が綺麗どころだ」
キーリとはそんな会話。すでに笑顔が戻っていた。
「やはり仲間はいい」
フラともすれ違い、そう声を掛けた。
そして、周りの人を物色するようにきょろきょろする女性の元へ接客に……。
ああっ!
「きゃ~、綺麗どころっ!」
「うわっ!」
自責の念がたたったか、ハグ魔な厚化粧の女性客に抱き着かれべったりと頬に化粧をつけられる真だった。
後日の話になるが、店の前に花が飾られた。
街の誰かからの好意だ。
リピーターも、増えた。
「あ~あ、世の中どうして奪われることばっかりなんだろ」
営業時間前、フラ・キャンディ(kz0121)はテラスの手すりに身を預けてため息をついていた。通りはずいぶん復旧しているが大火の傷跡はそこかしこに残っている。
フラ自身、「百年目のエルフ」として故郷の隠れ里から追放されている。
失ってばかりという感覚があるようだ。
「……ごらんの有様なのよ」
フラの後方で見守っていたシエラ・エバンスがため息をつく。
「そういえばあまり落ち込んでるところは見ないね」
霧雨 悠月(ka4130)はこれまでを思い出しつつ、そっとフラの傍に寄った。
「世の中、奪われることは多いかもしれないけど、相応に新しく生まれることもあると思うんだ」
悠月、そっと横に立った。フラ、手すりに両腕を乗せ枕にしたままそちらをチラリ。
「聞いてたの?」
「……フラさんは優しいね」
「どうして?」
顔を上げてくれた。悠月、ほっとする。
「皆のために悲しんでるから。……でも見て」
通りに視線を向ける。
「ほら大丈夫、まだまだ活力に満ち溢れてる人達ばかりだもの」
住民が復旧作業をしている。すでに自己責任の部分ばかりだ。
「でも……」
「折角引き受けたお仕事だし、新しいお店の魅力で、落ち込んだ人たちを元気にしちゃおう!」
ぽん、と背中を叩いて店の奥に引っ込んだ。
背中越しに振り返る瞳に、楽しさと明るさを宿して。
「悠月さんはそう言うけど……」
フラ、声も心も弾ませていたが、やがてまたぽふりと腕枕に頬を落とした。重症である。
「ねぇフラっち?」
そこにキーリ(ka4642)が近付いた。
「いろいろあったのは聞いてるけど……故郷を出たから今があるんだし、今回飲酒業ゲットしてるし。悪い事ばかりじゃ無いわよね」
「それはそうだけど」
口答えしたフラをじっと見るキーリ。フラ、怒られるかもと不安そうにする。
が、キーリは口調を荒げるどころか深いため息をついた。
「キーリさん?」
「……ん、私ってやっぱりシリアス向いてないわ。いい、フラっち?」
「な、何?」
「今日一日無理矢理でも笑顔でいる事。私にシリアスやらせた罰よ。罰!」
キーリ、ぴしりと言い放つ。何それ酷いと思いつつも、それがあまりに彼女らしかったので思わず笑みを作るフラ。
「て、照れてないわよ。真面目な話したからって……随分遠慮なく燃やしてくれたわねー。燃やすなんて美しくない手段よね」
笑顔に慌て、くるっと振り向くキーリ。
「うん。美しくない」
変わらず普通でいてくれるキーリに感謝するフラだった。
フラ、もう腕枕はしない。
でもやっぱり外を向いている。
そこに、ふわっと腕が掛けられた。
後ろから抱き締められたのだ。
フラ、振り向かない。背中に感じたやさしさで、何となく誰だか分かる。
「例え奪われても失っても、また作り出せばいいのですよぉ。お店も街も、皆が頑張って作ってますし……」
「ありがとう、小太さん」
後ろから回された弓月・小太(ka4679)の手に手の平を重ねるフラ。
「でもすぐには……。里から出て一人ぼっちの時もこんな感じだったかなぁ」
「ひ、一人ぼっち?! ……え、ええと、フラさんの家族には僕……僕達がなるのですよぉ?」
小太、話が思ったよりも重くなったことに慌ててしまった。思わず心にしまっていた大切な言葉が出てしまった。
「え?」
振り返りまじまじと覗き込んでくるフラの瞳。
まっすぐで、少しうるんでいる。
そして何より店の奥で誰か……というか、皆の気配を感じた。
「あぅ……で、ですからお手伝い、頑張りましょう」
真っ赤になりわたわたと離れる小太だった。
そして、小太がそそくさと店の奥に逃げ……立ち去るのを見送るフラ。
もう、外は向かない。
「私も似たようなものだ。特に故郷に関しては」
そんなフラの背後、つまり通りの方から手すり越しに声がした。
鞍馬 真(ka5819)である。
「わ、びっくりした!」
「奪われたものは取り返し、失ったものは……新たに築いて行こう。我々には、その力があるのだからさ」
そう言いながら手すりに手を付くと、ひょいとジャンプし飛び越えて店内に着地。
「うわっ! 真さん……」
「このくらいはできるさ。できる力で、できるだけのことをする……そうだな。こういう時こそ、私たちの歌だろう?」
「えーと、『リラ・ゼーレ』だよね」
「そうそう。一人じゃないよ、ほら私♪ ……だろう?」
一緒に口ずさみながら店の奥に行く真だった。
入れ替わりにエーミ・エーテルクラフト(ka2225)がやって来た。
「マイナスばっかりじゃ、確かに割に合わないわよね?」
フラの横に寄りかかり問うエーミ。
「そういうわけじゃ……」
「じゃあ、奪う側に回る?」
まだ吹っ切れていないフラに、ぴしりと聞いてみた。
「守るためなら。それで悪く言われるなら……ボク一人で十分。ボクは一人ででも戦う」
あるいは、いつか誓った決心だったかもしれない。
これを見て責める口調をやめほほ笑むエーミ。
「表情は鏡。自らの心だけでなく、相手の心も映すの」
少し寂しそうな顔で続ける。
「相手の顔を見たら、自分がどんな顔してるか、考えてみて? ……今の、誰かさんたちが寂しがるわよ?」
「え?」
フラ、拍子抜けした。
これを見て悪戯っぽく、くすりと笑うエーミ。
「これが、エーテルクラフトの魔法の極意よ。お仕事、頑張りましょう」
言い残し、店の奥に戻る。
「……寂しい、ことかな?」
残されたフラ、胸に手を当て自問する。
里から一人で旅立つよう育てられ、実際一人で旅だった。戦う技術、生活する技能、そして生き残る智慧。それを我が身に叩き込まれた。
でも仕方ない、と一人旅の途中で我が身に言い聞かせた。
そして今、一人ぼっち……。
そこに背後から声が。
「あかんわ、えろう遅れた…」
パタパタと誰かが飛び込んで来た。
六道銭 千里(ka6775)である。
その、慌てて駆け込んだ姿がフラの横でピタと止まる。
で、振り返りフラの表情を見る。
「キャンディさん……そう、塞ぎ込んどったら、お客さんに笑顔になってもらえへんで?」
「え?」
「確かに世の中辛い事も多いけど、それだけちゃうわ…」
びっくりするフラに、気持ちは分かるけどなと千里。
「今日は笑おう…笑う門には福来る…」
「でも…笑うって……」
「爆笑ちゃう、可愛い笑顔や。ほら、お客さんもキャンディさんの可愛い笑顔見たいと思うわ…」
「可愛い?」
「そや、その顔や。頑張ろな…」
深く考えさせない畳み掛けトークで店の奥に行く千里。
すでに皆に置いて行かれたと感じていたフラ、店の奥について行く。
●
やがて開店の時間に。
エーミの収まるカウンターに、どさりと男が座った。すぐにため息。
「いらっしゃいませ。初めてでいらっしゃいますか?」
「いや……【ヴィーナスキッス】を」
どうぞ、と出してもなかなか口を付けない。しかも隣の席に置いた。
「ではこちらを。お客様に合いそうと思いまして。……ほかに、ご心配なども伺っております」
心の落ち着くような香りのカクテルを出して聞く。
「恋人がこの火事で行方不明でね」
「待っていらっしゃる?」
「ええ。生きていると信じています」
エーミ、微妙な顔。この機に逃げられ……。
ううん、と顔を振る。
「もし、【ヴィーナスキッス】を頼む女性の一人客がいれば『きっと待ってるはず』と声を掛けます」
男、顔を上げた。来た時より明るい。
やがて男が辞した後、やはり疲れたような女性客が。
一人だ。
「お疲れのようですね」
「いつもは彼氏と来てるんだけど、ようやく職場が落ち着いて……」
彼とは連絡がまだ取れないという。
注文は、【ヴィーナスキッス】だった。
「そのうち、この店で会えるような気もします」
「バーテンダーさんを信じるわ」
女性、にっこり。
「きっと、待ってるはずです」
確信して、そう声を掛けた。
悩む女性はこちらにも。
「え? 『嫌い』……」
花の花弁を摘んで恋占いをしていた女性が愕然としていた。
「恋占いですか? 俺占いとか得意なんで占いましょうか?」
そこに千里登場。
女性、バーテンダー衣装の千里を見て微妙な表情をした。持参しテーブルに並べたタロットを片付けようとする。
「こう見えても、ね。例えばお客さんのラッキーカクテルは……」
千里、ちょい借りまっせとタロットから一枚。数字をメニューにあてはめ、【ホワイトデー】を勧めた。
「落ち着く……」
持ってきたカクテルを一口飲んで、柔らかい気分になった様子。
「ほな、恋愛について占ってみますわ…」
またもタロット拝借。
「ご主人さんの占いや、頼むで」
カードを丁寧に扱い、スプレッド。
「『塔』の正位置が出るあたり、今を暗示してはるなぁ……でも、この『星』の正位置が輝いとるわ…」
並べてオープンしたカードに見入る客。それに気付いた千里、くす。
「え?」
「そういうひたむきな姿勢、ええね。この星のように輝いてれば、ええ結果くるんちゃうかな…」
「この星のように……」
嬉しそうな客。
「片思い、かないそうな気がしてきました」
明るく一礼するのだった。
「ふぅ……」
こちらにもため息を吐く女性客が。くるっ、と封書を弄っている。
この様子に、遠くからきらーん☆といい顔をする姿が。
「いらっしゃいませ。恋の魔術師のお相手、必要かしら?」
キーリである。落ち着いた衣装のエプロンドレスで客の傍に寄った。
「分かるの? 悩んでるって」
「もちろん。【スカーレットヴィーナス】のお代わりはどう?」
「ええ。……いいわよね、甘い恋の味で」
「望めば魔法で火もつけてあげるわ。……もちろん、恋の炎。大火なんか気にならない程熱いの……あ」
気分よく話していたキーリ、失言だと自分で気付いた。
「いいわ。火事は怖かったしいろいろ失ったけど、新たな恋に生きたいの」
一方的に振られたらしい。封書、くるっ。
「もう、忘れたの」
今日は一からやり直したくて来たのだと言う。
「ちょうどいいじゃない。ここもカクテルバーとしては新参者だけどお酒は一級品ばかりよ。みんな貴方の背中を押してくれる物ばかり」
「選び放題ね……客にも店員にもいい男がちらほら。こっちも選び放題でいい?」
客、新たなグラスを飲み干し封書を破り捨てて言う。吹っ切れたようだ。
「もちろん。ただ……」
キーリ、ちらと客の表情を見た。
「店員も綺麗どころばっかだけどね」
ウインクするキーリ。
「うらやましいくらい綺麗ね」
客、そう言って感謝する。
こちらではトラブルが。
「お疲れの貴女に、甘い女神の口付けを……」
真が、憔悴している女性客の注文した【エンジェラ】を届けていた。
「ありがとうございます。火事、大変でしたね……私もでしたが、この店も」
「そうですね……」
ここで真、意を決した。
「私はハンターです。……もう、あんな災害は起こさせないし、万が一があっても必ず助け出す」
力強い言葉。聞いていた女性客、安心したようにふっと力が抜けていた。
「そう……女神に誓って」
ショコラヴィーナスに引っ掛け、ホットのショートカクテルを客の前にすいっ、と。
まるで引き込まれるように飲んだ客だが……。
――がたっ、どさっ。
「きゃああ!」
「どうしたの?」
女性客、ホットのショートカクテルで心身とも疲れ果てた体に一気に酔いが回ったようで派手に倒れた。
「いかん。すぐに休憩室に!」
真の機敏な対応で悪評がつくまではいかなかった。
そして小太。
「い、いらっしゃいませぇ」
「まったく。どこもここも焦げ臭いんだから」
ツンケンした若い女性客を接客していた。
「ふぇっ、それならいい香りがするものはいかがですかぁ?」
「じゃ、それお願い」
提案に、一言で返してツン。
で、ミントの葉ののる【ヴィーナスキッス】を持ってきた。
「あら、いいわね」
瑞々しい緑の葉に目を輝かすツン娘。香りをかいですーっとしたのだろう。晴れやかな表情だ。
小太、さらに何かを客の前に出したぞ?
「このお花もいい匂いがしますよぉ?」
すっといい匂いのする花も添えた。
「まあ、結構やるじゃない……可愛い顔して、かなりの女を泣かせてるんじゃない?」
ツン娘、今度はにやりと意地悪そうに小太に迫る。
「そ、そんなことないですよぅ……そうだ。どこも焦げ臭いなら花を植えてお姉さんの手で嫌な匂いを消し去ってしまうとかどうですかぁっ」
「それ、いいわね。帰ったら早速お父様に掛け合ってみるわ。……私は手を汚さないけどね。文句ある?」
「は、はわわっ」
ぐいっ、と挑戦的に寄られて辞した。
途中、ちらとフラの様子を気にした。
頑張っているようで、小太も笑顔になる。
やがて、杯の進んだ客もちらほら。
「ううん、もうだめぇ……」
テーブルにぐでーっとなっている女性客がいた。胸がおっきい。
「大丈夫ですか、何か辛いことでも?」
悠月、気付いて対応する。コップ一杯のお水を出して声を掛けた。
「そうじゃないのぉ。お酒が美味しかったのぉ」
「そ、それはありがとうございます」
これは危ないかな、と危険を察知する悠月。
この時、真がぐったりした女性客を店の奥に運んでいるのが目に入った。周りがざわついている。
「ええと、お酒の強さは人それぞれ……少しだけ心に余裕をもって。そうすればもっと、味と香りをお楽しみいただけると思いますよ」
「そう? でもぉ、ここのお酒全部味わいたいぃ」
その状態でそれは止した方が、と思う悠月だが、店の売り上げも脳裏をかすめた。いやんいやん、と椅子で身をよじっている様子も、いつふらっとくるか怪しいものだ。
「それじゃあ、特別にアルコール薄めにカクテルを作りますから、カウンターへ」
その瞬間だった!
「やぁん、ありがとぉお。どぉしても全種類制覇したかったのぉ」
感極まった客に、むぎゅーと抱き着かれる悠月だった。
「あ。あはは…」
その悠月、倒れた女性客を奥の部屋に横たえシエラに任せて来た真とばったり。
真は無言だったが、女性客に抱き着かれたままカウンターに移動していた悠月は動揺したり。
「支えられなかったな、俺は」
真、自責の念に駆られる。
「大丈夫なん…」
「ああ、すまん」
千里ともすれ違いそんな会話。
「まこっち。綺麗どころなんだからしっかりして!」
「ありがとう。きみの方が綺麗どころだ」
キーリとはそんな会話。すでに笑顔が戻っていた。
「やはり仲間はいい」
フラともすれ違い、そう声を掛けた。
そして、周りの人を物色するようにきょろきょろする女性の元へ接客に……。
ああっ!
「きゃ~、綺麗どころっ!」
「うわっ!」
自責の念がたたったか、ハグ魔な厚化粧の女性客に抱き着かれべったりと頬に化粧をつけられる真だった。
後日の話になるが、店の前に花が飾られた。
街の誰かからの好意だ。
リピーターも、増えた。
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相談なのですぅー 弓月・小太(ka4679) 人間(クリムゾンウェスト)|10才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/04/20 06:58:19 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/04/18 03:20:56 |