ゲスト
(ka0000)
森に開いた巨大洞穴調査
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/01 09:00
- 完成日
- 2017/05/04 23:45
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
リンダールの森。
以前、とあるエルフの集落の南に大樹があった。
ある日、その木は何者かに切り倒され、一時は切り株となっていたのだが……。今やその切り株ごとなくなってしまい、巨大な穴が地中に向かって開いている状況なのだという。
その中から、植物雑魔の巣のようになった大穴の存在が確認された。
この植物雑魔はエルフの集落付近に出現が確認されている。枯れ木に撒きついた蔓草が手足のようになって人型をとった個体だ。その大きさも人間の成人男性くらいが一般的な個体らしい。
だが、最近、大木型の雑魔の存在も確認されている。こちらは植物雑魔と違い、木そのものが雑魔と成り果てた個体。樹高は4メートルほどなので木としてはそれほど大きくはないが、雑魔としてみれば大きく、面倒な相手だ。
先日、新人ハンターが依頼で大穴周辺の雑魔の駆除していたこともあり、大穴の外に植物雑魔の姿はない。ただ、ハンター達は穴の中で幾体もの蠢く雑魔の姿を見たという。
再びこれらが外へと出て集落付近に姿を現す前に、雑魔の駆除を行わねばならない……のだが。
王都イルダーナのハンターズソサエティ。
「……できれば、手が欲しい状況なのだ」
依頼を受けにやってきたハンターへ、アルウェスと名乗る1人のエルフの男性が依頼説明を行っていた。
彼の依頼は、自身の住むエルフの集落付近にある大穴の調査に同行して欲しいというものだ。
このアルウェスというエルフの青年は、集落の中でも手練のハンターだ。これまでも、集落からの依頼でエルフのリーダーとしてハンターに同行していることもあり、顔見知りとなっているハンターもちらほらといる。
「本格的な殲滅作戦の前に、調査を行いたいということですねー」
カウンターの中から、金髪ウェーブヘアで糸目の女性、シェリーが相槌を打つ。
雑魔討伐の為に集落に滞在していた聖堂戦士団の小隊も、別雑魔の討伐に出向いているとのこと。彼女達が戻ってくる前に、出来る限り雑魔討伐の態勢を整えておきたいとリーダーは言う。
大穴へはハンター達の他、リーダーのアルウィス含む3人のエルフが同行する。多少であれば、何か必要なものがあれば、集落から融通してくれると彼は言う。
「まあ、調査だからな。雑魔の討伐が出来ればそれに越したことはないが、情報を得ることが今回の目的だ」
森に開いた大穴の広さ。そして、その中に巣食う雑魔の種類に数。新人ハンター達が大穴の外から、穴の内部に雑魔の姿を確認している。大穴内部で戦闘は免れぬと見て間違いないだろう。
「準備ができれば、すぐ転移門で向かおうと思っている。……よろしく頼む」
「はいー、皆さん、いってらっしゃいませー」
シェリーは大きく手を振り、森に向かうハンターを見送るのだった。
リンダールの森。
以前、とあるエルフの集落の南に大樹があった。
ある日、その木は何者かに切り倒され、一時は切り株となっていたのだが……。今やその切り株ごとなくなってしまい、巨大な穴が地中に向かって開いている状況なのだという。
その中から、植物雑魔の巣のようになった大穴の存在が確認された。
この植物雑魔はエルフの集落付近に出現が確認されている。枯れ木に撒きついた蔓草が手足のようになって人型をとった個体だ。その大きさも人間の成人男性くらいが一般的な個体らしい。
だが、最近、大木型の雑魔の存在も確認されている。こちらは植物雑魔と違い、木そのものが雑魔と成り果てた個体。樹高は4メートルほどなので木としてはそれほど大きくはないが、雑魔としてみれば大きく、面倒な相手だ。
先日、新人ハンターが依頼で大穴周辺の雑魔の駆除していたこともあり、大穴の外に植物雑魔の姿はない。ただ、ハンター達は穴の中で幾体もの蠢く雑魔の姿を見たという。
再びこれらが外へと出て集落付近に姿を現す前に、雑魔の駆除を行わねばならない……のだが。
王都イルダーナのハンターズソサエティ。
「……できれば、手が欲しい状況なのだ」
依頼を受けにやってきたハンターへ、アルウェスと名乗る1人のエルフの男性が依頼説明を行っていた。
彼の依頼は、自身の住むエルフの集落付近にある大穴の調査に同行して欲しいというものだ。
このアルウェスというエルフの青年は、集落の中でも手練のハンターだ。これまでも、集落からの依頼でエルフのリーダーとしてハンターに同行していることもあり、顔見知りとなっているハンターもちらほらといる。
「本格的な殲滅作戦の前に、調査を行いたいということですねー」
カウンターの中から、金髪ウェーブヘアで糸目の女性、シェリーが相槌を打つ。
雑魔討伐の為に集落に滞在していた聖堂戦士団の小隊も、別雑魔の討伐に出向いているとのこと。彼女達が戻ってくる前に、出来る限り雑魔討伐の態勢を整えておきたいとリーダーは言う。
大穴へはハンター達の他、リーダーのアルウィス含む3人のエルフが同行する。多少であれば、何か必要なものがあれば、集落から融通してくれると彼は言う。
「まあ、調査だからな。雑魔の討伐が出来ればそれに越したことはないが、情報を得ることが今回の目的だ」
森に開いた大穴の広さ。そして、その中に巣食う雑魔の種類に数。新人ハンター達が大穴の外から、穴の内部に雑魔の姿を確認している。大穴内部で戦闘は免れぬと見て間違いないだろう。
「準備ができれば、すぐ転移門で向かおうと思っている。……よろしく頼む」
「はいー、皆さん、いってらっしゃいませー」
シェリーは大きく手を振り、森に向かうハンターを見送るのだった。
リプレイ本文
●
リンダールの森のエルフの集落。
そこには、調査依頼に臨むハンター数人の姿があった。
「エルフの皆さん、またお世話になります」
北方出身ではあるが、同じエルフであるミオレスカ(ka3496)が同士へと挨拶を交わす。
すでにエルフ達からハンターへの依頼も度重なっており、顔見知りとなっているハンターもいる。
「鎧は不気味ですが、着ている俺は陽気なハンターですよ」
南護 炎(ka6651)もまた頻繁に依頼に参加していることもあり、すっかり顔なじみになっていた様子だ。
「アルウェスさん達、前に会った時からまた強くなってる?」
「皆さんに近づいたなら、幸いです」
同行するエルフ3人と面識を持つリアリュール(ka2003) 。それだけ実戦経験を積み、彼らも苦労しているのだろうと彼女は察していた。
そんな彼らを含めたエルフ達を助けるべく、早速準備を始めるのだが。
リアリュールはこれまでの経過をおさらいする。
現状、エルフの集落を襲う雑魔は植物のみ。そして、集落南に大きく開いた穴がそいつらの現れる場所として最も怪しいということだ。
「大穴の調査ですか。暗闇で視界が悪そうですから、光源は必須ですね」
エルバッハ・リオン(ka2434)は持参してきたLEDライトの調子を確認する。問題ないと判断した彼女はそれに紐をつけ、首に掛けられるようにする。戦闘時の視界確保と両手を空ける為だ。
「敵は植物型の雑魔と聞く。ならば、この火尖槍が役立つかもしれない。今日の得物はこいつだな」
戦闘における想定として、榊 兵庫(ka0010)は自身の最も得意とする槍を手にかける。広い場所ならば、十分力を発揮してくれるはずだ。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、エルフ達へと魔導短伝話を1つ依頼していた。穴との内外で通信が出来るかを試したいとのことである。
エルフ達もまた松明など、独自で入り用な物を用意していた。その中で、炎はエルフからメモ帳を借りていた。
合わせて、魔力感知器みたいなものがないかと彼は掛け合っていたが、残念ながらエルフ達はそういった類のものを備えてはいなかったそうだ。
程なく、ハンターと3人のエルフ、総勢11人が大穴を前にする。
ちなみに、炎は学者がいればとも話していたが、同胞を危険に晒したくないという同行エルフのリーダー、アルウェスの配慮から、炎はそれを断念していた。
「いよいよ捜索ですね。雑魔の発生原因は、こちらなのでしょうか」
「浄化したはずの切り株がこんなことになってるなんて」
自分達が入っても手狭と思えぬ程、森に大きく開かれた穴。
以前、聖堂戦士団が浄化した報告を受けていたからこそ、リアリュールはこの惨状に唖然としてしまう。
「ごく短期間で出来た大穴なぁ……」
「ここまで大きい穴ならば、奥もそれなりの広さがありそうだ」
柊 恭也(ka0711)が呟くと、ロニ・カルディス(ka0551)は灯火の水晶球を使って軽く中を窺った後、言葉を続ける。
「……何があったとしても、不思議でないかもしれないな」
「雑魚ばっかりなら大した驚異じゃないんだろうが、これ絶対大型種いるよなぁ」
飄々とした態度の恭也は魔導バイクのアクセルを吹かす。彼はこのまま、穴へと突入するようだ。
また、アルトの依頼で魔導短電話を設置するエルフ達に、リアリュールは後方からの援護を願う。
「援護射撃には期待してるよ。あと、範囲攻撃するときは避けるから教えてね」
「了解した、よろしく頼む」
頼りにしていると、アルウェスはハンター達に告げた。
「……さて、鬼が出るか蛇が出るか。俺も尽力させて貰おう」
集落民に安らかな生活をもたらす為に。準備が整ったところで、兵庫はアルトと共に中へと踏み出す。
大穴の入り口は緩やかな下り坂となっており、兵庫がライトで中を照らしながら進む。
アルトも腰にライトを固定した上で、時計を確認し時刻を確認する。そして、気休めにとガスを気にかけつつ手拭で鼻と口を覆っていた。
その後ろから、ロニ、バイクに乗った恭也が続く。ロニは灯火の水晶球で前方、さらにランタンを駆使し、恭也は魔導ライトで照明を確保する。
「慎重に進みましょう」
そう告げたミオレスカは後衛メンバーが照明を持つよう提案したが、結局は各自が持つ形となったようだ。
とはいえ、安全面を考えればやむなしと割り切った彼女はエルフ達と一緒に、パルムメモ帳へと周囲の様子を記録していく。
「何か、古代エルフ語みたいな言語でもあればな」
「そういったものがあれば、直接集落に残っていると思いたいですが……」
炎はエルフ達へと語りかけるが。さすがにそれはないかなとアルウェスは笑う。エルフに分かるものがあれば、末代に残されているのでないかと。
エルバッハは魔導カメラのシャッターを切っていた。どうやら、大きなフロアのようになった場所のようだが……。
「雑魔か!!」
何かを感じた炎が叫ぶ。前方からわらわらと現われたのは、植物雑魔達。そして、一際大きな大木雑魔がそれらを従えている。
障害が現れれば、調査と言ってもいられない。ハンター達は即座に覚醒し、その排除に乗り出すのだった。
●
ハンター達の前に現れた植物雑魔達。
以前の依頼でも現れているという、大木型1体と植物型4体だ。
覚醒し、薔薇を模した赤い紋様を現したエルバッハ。全身に棘のような紋様を四肢に現した彼女はすかさず、敵陣へと冷気の嵐を巻き起こす。
全てを凍てつかせるようにも思わせる強烈な旋風。それに耐え切った植物雑魔2体が腕のように絡む触手を前方へと伸ばしてくる。
(ここは敵の巣。どれだけ湧いて来るかわからない)
雑魔は確実に潰していきたい。炎のようなオーラを纏ったアルトはそう考えながら、迫り来る雑魔へと手裏剣を投げ飛ばす。
それに自らのマテリアルを紐付けていたアルトは敵に飛び込み、すれ違いざまに雑魔どもへと超重刀「ラティスムス」の刃を見舞っていく。
光源をエルフ達へと預けたミオレスカ。覚醒した七色の光を髪から発する彼女は、強弓「アヨールタイ」を構える。
(効果があれば、いいのですが)
現れる雑魔の特性調査だって、後々大きなプラスとなる。ミオレスカは手にする矢にマテリアルを込め、冷気を纏った一矢を放ち、命中した敵の触手の動きを一部止めた。
それでも動く敵。脚として機能する下部の触手を、ミオレスカは遠方から見つめていた。
髪を虹色に輝かせたリアリュールもまた敵を射程に捉えつつ、可能な限り入り口近くの坂を背にする。
「行かせないわ」
凛々しい口調で雑魔ニ言い放ったリアリュールは、エルフ達へと近づく敵を牽制すべく、敵に手裏剣を二連で投げつけていく。
「すまない。……我々も行くぞ」
それに感謝しつつもエルフ達も続けて矢を放ち、1人は炎の矢を飛ばす。彼らは事前の要請どおり不必要には前に出ず、掩護射撃を繰り返す。
そこで動き出す後方の大木雑魔。そいつはその身を震わせて木の葉を戦場に舞い散らせ、エッジのついた刃でハンター達を切り裂いてくる。
「確かに、でかい敵だ。これなら……」
赤黒く発光する茨の紋様を右半身に現した恭也がその大木型を狙い、大型魔導銃「オイリアンテMk3」の引き金を引いて弾丸を叩き込む。小回りの利かぬ銃だが、その威力は抜群。敵の幹に大きな風穴を穿つ。
兵庫は全身に血をにじませた傷痕を浮かび上がらせ、体内のマテリアルを燃やして敵を引きつける。
そうして近づく敵が伸ばす蔓草での突きを受けつつ、兵庫は火尖槍を突き返す。
――効果は覿面。敵は明らかにダメージを受けて大きく仰け反っている。広さも問題ないと判断した彼は、しばし槍を振るって雑魔を攻め立てた。
「南護 炎、行くぜ!!!」
片方の瞳を赤く染めた炎もまた、向かい来る雑魔を抑える。呼吸を整えた彼は素早く敵へと試作振動刀「オートMURAMASA」を振るい、敵の蔓草を切り裂いていく。
ロニも前線に立ち、敵を抑えていた。そんな中で彼は身に纏う羽織「白鳥」を媒体にしつつレクイエムを歌い始め、雑魔達の活動を抑制する。
苦しみ悶える雑魔1体を見定め、捉えたアルト。彼女は燃え上がるオーラを昇華させ、陽炎を生み出しつつ相手に迫った。
「そこはもう、私の間合いだ」
再び、彼女は戦場を駆けながら雑魔達へと刃を浴びせる。ついに衝撃に堪えられなくなったのか、植物雑魔1体が闇の中で爆ぜ飛んだのだった。
ハンターの中には、植物雑魔との交戦経験もある者もちらほらといる。それもあって、戦況はかなり優勢に展開していた。
とはいえ、暗い穴倉の中だ。照明を使えど、その合間の闇に紛れられると対処が遅れることもある。
(少し暗いですが、見えているのでしたら)
自身の持つスキルを全て乗せ、ミオレスカは敵に近づかれる前にと再び冷気の矢を飛ばす。それに貫かれた雑魔1体が急速に萎れ、闇へと同化していく。
レクイエム歌っていたロニも敵の接近を見て、自身を中心として眩い光を放つ。それを間近で浴びた植物雑魔は完全に力を失い、全身を霧散させていった。
そして、エルバッハは魔術師として魔力を行使し、一陣の風を放つ。ただ、飛ばした炎の矢の威力の方が大きいと判断した彼女はしばし、燃え盛る矢を撃ち続ける。
それが命中しても敵に燃え広がることはなかったが、雑魔は植物の本能として、炎を苦手としているのだろう。エルバッハの放つ幾度目かの矢が敵の胴体へとぶつかると、狂ったように暴れた雑魔はついにその場から消えていった。
(やはり、植物雑魔ということで、炎や光が効くようですかね)
そんな敵の状況を、ミオレスカは具にチェックしていたようだ。
気づけば、この場に残るは大木雑魔1体。
(やることはさして変わらないが)
再び、時計に目をやり、周囲の状況にアルトは注意を払う。その上で彼女は大木雑魔を見据えた。
「さて、お前は喋れるか?」
仲間が気を引いているうちに彼女は覚醒して長くなった赤髪を躍らせながら敵の死角へと回り込み、自身の疾さを体現した剣を見舞っていく。
「…………」
だが、大木は言葉を発しない、いや、できないのだろう。アルトは敵が喋れないのを察しながらも、その挙動を隈なく暗記する。
仲間が大木を抑えてくれる間、身体に浮かんだ茨の紋様を不気味に明滅させた恭也はオイリアンテの照準を合わせた。
手前側では、兵庫がメインとなって大木の気を引いてくれている。大きな枝を受け止めた彼は早期撃破の為にと強く踏み込み、勢いを強めながら火尖槍を大きく振り抜いた。
枝、幹、根、その全てに斬撃痕が増えていく。大木雑魔も相当弱っているはずだ。
そこに、恭也が強烈な一射を浴びせかける。これで3度目。彼はリロードしつつ、敵が完全に沈黙するまで弾丸を浴びせかける。
「歪虚め! 逃がしはしない!!」
炎もまたスキルを出し惜しみすることなく全力で斬りかかり、襲い来る根を切り払った。覚醒によって好戦的になった彼は、敵を恐れることなく果敢に攻めていく。
敵の数が少ないことも幸いしてか、大木雑魔はハンター達を拘束すらほとんどできず、徐々に動きを鈍らせてしまって。
入り口付近に立つリアリュールは外からの光と、仲間の照明を頼りに、敵へと手裏剣「八握剣」を連続して投げ飛ばす。
「これで……、終わらせるわ」
彼女の飛ばす手裏剣は回転しながら真っ直ぐ宙を飛び、敵の身体深くへ突き刺さる。
木の擦れる音を立てて暴れていた大木雑魔だったが、やがて完全に力尽きたそいつは、崩れ落ちるようになくなっていったのだった。
●
当面の障害を排除したハンター達。
アルトは敵の攻撃やその動きなどを脳内で整理しつつ、討伐後の時間などを暗記する。
ロニもまた、雑魔の情報を後ほど纏め、確認しやすくしようと考えていたようだ。
「さて、調査調査っと」
炎の言葉で、この場の面々は穴の中の調査を再開、というよりも本格化させる。ミオレスカも何か予感を感じながらもそれに続く。
「何もなければ、単純に穴を塞ぐということでもいいかもしれませんが……」
「ここが拠点だとすると、奥にまだ何かがあるのは確実。次の殲滅戦で楽する為にも、情報が欲しいな」
恭也は先行する形でバイクを走らせようとするが、進めば進むほど木の根によって足場が安定しなくなる。やむを得ず、彼は大型魔導銃をバイクに乗せたまま停め、音を立てぬよう歩くことにしていた。
アルトは先ほど置いた魔導短伝話へと通話を試す。さすがに、入り口にエルフを1人だけ残すなどというわけにもいかなかった為、彼女は通話にノイズが入らないかだけチェックする。
さらに、彼女は導きの水晶球や方位磁石の効力も確認する。どうやら、それらは上手く機能しているようだ。
「風の流れなどを調べるのには不向きだから、な。原始的かもしれないが、これが一番だろう」
兵庫はライトに合わせ、ミオレスカに着火してもらった松明を光源とし、壁沿いに歩く。思った以上に広い空間ということもあり、調べるだけでも時間を要してしまう。
「穴が崩れない程度の強度か、気になるのですが」
メモを取っていたミオはその壁に着目した。そこは所々に木の根が張っていたのだが、何かで抉られた後が延々と壁には付いている。ロニは足元の木の根など、調査の妨げとなりそうな箇所にマーカーで印をつけていた。
また、エルバッハがそれを魔導カメラで撮影し、逐一情報端末に記録していく。
それは、空気の流れる方向とも一致している。リアリュールはマテリアルの流れも合わせ、辿ってみた。
「明らかに、不自然な痕ね……」
しかも、マテリアルの淀みは奥に行くほど強くなる。リアリュールは壁などを叩きつつ、直感視も合わせて奥を探ると……。
「……っ、気をつけてください」
「何かがいます」
それに一番早くリアリュールが気づき、エルバッハも仲間へと何かの存在を示し、奥に行かないよう促す。
フロア奥にはさらに下方へと向かう穴。その周囲にはびっしりと木の根が張り巡らされていて。
さらに奥で、植物雑魔の中央に何やら巨大なモノがいた。
「……行きなさい」
声がしたかと思うと、ぞろぞろと木の根を伝って現れる植物雑魔数体が現れる。
「そんな見え透いた手に乗るかよ」
相手の奇襲に警戒していた炎が再び覚醒し、刀の柄に手を掛ける。
「ちっ……」
兵庫は敵目掛け、松明を1本投げ飛ばす。敵が怯む隙にロニは木の根へとマーカーで印をし、身を引く。これ以上は危険と判断したメンバー達は調査の手を止め、大穴の外に向かって飛び出していった。
明らかに一連の事件の糸を引く何か。メンバー達はそれを目視し、カメラに収めつつもこの場から退却していくのだった。
リンダールの森のエルフの集落。
そこには、調査依頼に臨むハンター数人の姿があった。
「エルフの皆さん、またお世話になります」
北方出身ではあるが、同じエルフであるミオレスカ(ka3496)が同士へと挨拶を交わす。
すでにエルフ達からハンターへの依頼も度重なっており、顔見知りとなっているハンターもいる。
「鎧は不気味ですが、着ている俺は陽気なハンターですよ」
南護 炎(ka6651)もまた頻繁に依頼に参加していることもあり、すっかり顔なじみになっていた様子だ。
「アルウェスさん達、前に会った時からまた強くなってる?」
「皆さんに近づいたなら、幸いです」
同行するエルフ3人と面識を持つリアリュール(ka2003) 。それだけ実戦経験を積み、彼らも苦労しているのだろうと彼女は察していた。
そんな彼らを含めたエルフ達を助けるべく、早速準備を始めるのだが。
リアリュールはこれまでの経過をおさらいする。
現状、エルフの集落を襲う雑魔は植物のみ。そして、集落南に大きく開いた穴がそいつらの現れる場所として最も怪しいということだ。
「大穴の調査ですか。暗闇で視界が悪そうですから、光源は必須ですね」
エルバッハ・リオン(ka2434)は持参してきたLEDライトの調子を確認する。問題ないと判断した彼女はそれに紐をつけ、首に掛けられるようにする。戦闘時の視界確保と両手を空ける為だ。
「敵は植物型の雑魔と聞く。ならば、この火尖槍が役立つかもしれない。今日の得物はこいつだな」
戦闘における想定として、榊 兵庫(ka0010)は自身の最も得意とする槍を手にかける。広い場所ならば、十分力を発揮してくれるはずだ。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、エルフ達へと魔導短伝話を1つ依頼していた。穴との内外で通信が出来るかを試したいとのことである。
エルフ達もまた松明など、独自で入り用な物を用意していた。その中で、炎はエルフからメモ帳を借りていた。
合わせて、魔力感知器みたいなものがないかと彼は掛け合っていたが、残念ながらエルフ達はそういった類のものを備えてはいなかったそうだ。
程なく、ハンターと3人のエルフ、総勢11人が大穴を前にする。
ちなみに、炎は学者がいればとも話していたが、同胞を危険に晒したくないという同行エルフのリーダー、アルウェスの配慮から、炎はそれを断念していた。
「いよいよ捜索ですね。雑魔の発生原因は、こちらなのでしょうか」
「浄化したはずの切り株がこんなことになってるなんて」
自分達が入っても手狭と思えぬ程、森に大きく開かれた穴。
以前、聖堂戦士団が浄化した報告を受けていたからこそ、リアリュールはこの惨状に唖然としてしまう。
「ごく短期間で出来た大穴なぁ……」
「ここまで大きい穴ならば、奥もそれなりの広さがありそうだ」
柊 恭也(ka0711)が呟くと、ロニ・カルディス(ka0551)は灯火の水晶球を使って軽く中を窺った後、言葉を続ける。
「……何があったとしても、不思議でないかもしれないな」
「雑魚ばっかりなら大した驚異じゃないんだろうが、これ絶対大型種いるよなぁ」
飄々とした態度の恭也は魔導バイクのアクセルを吹かす。彼はこのまま、穴へと突入するようだ。
また、アルトの依頼で魔導短電話を設置するエルフ達に、リアリュールは後方からの援護を願う。
「援護射撃には期待してるよ。あと、範囲攻撃するときは避けるから教えてね」
「了解した、よろしく頼む」
頼りにしていると、アルウェスはハンター達に告げた。
「……さて、鬼が出るか蛇が出るか。俺も尽力させて貰おう」
集落民に安らかな生活をもたらす為に。準備が整ったところで、兵庫はアルトと共に中へと踏み出す。
大穴の入り口は緩やかな下り坂となっており、兵庫がライトで中を照らしながら進む。
アルトも腰にライトを固定した上で、時計を確認し時刻を確認する。そして、気休めにとガスを気にかけつつ手拭で鼻と口を覆っていた。
その後ろから、ロニ、バイクに乗った恭也が続く。ロニは灯火の水晶球で前方、さらにランタンを駆使し、恭也は魔導ライトで照明を確保する。
「慎重に進みましょう」
そう告げたミオレスカは後衛メンバーが照明を持つよう提案したが、結局は各自が持つ形となったようだ。
とはいえ、安全面を考えればやむなしと割り切った彼女はエルフ達と一緒に、パルムメモ帳へと周囲の様子を記録していく。
「何か、古代エルフ語みたいな言語でもあればな」
「そういったものがあれば、直接集落に残っていると思いたいですが……」
炎はエルフ達へと語りかけるが。さすがにそれはないかなとアルウェスは笑う。エルフに分かるものがあれば、末代に残されているのでないかと。
エルバッハは魔導カメラのシャッターを切っていた。どうやら、大きなフロアのようになった場所のようだが……。
「雑魔か!!」
何かを感じた炎が叫ぶ。前方からわらわらと現われたのは、植物雑魔達。そして、一際大きな大木雑魔がそれらを従えている。
障害が現れれば、調査と言ってもいられない。ハンター達は即座に覚醒し、その排除に乗り出すのだった。
●
ハンター達の前に現れた植物雑魔達。
以前の依頼でも現れているという、大木型1体と植物型4体だ。
覚醒し、薔薇を模した赤い紋様を現したエルバッハ。全身に棘のような紋様を四肢に現した彼女はすかさず、敵陣へと冷気の嵐を巻き起こす。
全てを凍てつかせるようにも思わせる強烈な旋風。それに耐え切った植物雑魔2体が腕のように絡む触手を前方へと伸ばしてくる。
(ここは敵の巣。どれだけ湧いて来るかわからない)
雑魔は確実に潰していきたい。炎のようなオーラを纏ったアルトはそう考えながら、迫り来る雑魔へと手裏剣を投げ飛ばす。
それに自らのマテリアルを紐付けていたアルトは敵に飛び込み、すれ違いざまに雑魔どもへと超重刀「ラティスムス」の刃を見舞っていく。
光源をエルフ達へと預けたミオレスカ。覚醒した七色の光を髪から発する彼女は、強弓「アヨールタイ」を構える。
(効果があれば、いいのですが)
現れる雑魔の特性調査だって、後々大きなプラスとなる。ミオレスカは手にする矢にマテリアルを込め、冷気を纏った一矢を放ち、命中した敵の触手の動きを一部止めた。
それでも動く敵。脚として機能する下部の触手を、ミオレスカは遠方から見つめていた。
髪を虹色に輝かせたリアリュールもまた敵を射程に捉えつつ、可能な限り入り口近くの坂を背にする。
「行かせないわ」
凛々しい口調で雑魔ニ言い放ったリアリュールは、エルフ達へと近づく敵を牽制すべく、敵に手裏剣を二連で投げつけていく。
「すまない。……我々も行くぞ」
それに感謝しつつもエルフ達も続けて矢を放ち、1人は炎の矢を飛ばす。彼らは事前の要請どおり不必要には前に出ず、掩護射撃を繰り返す。
そこで動き出す後方の大木雑魔。そいつはその身を震わせて木の葉を戦場に舞い散らせ、エッジのついた刃でハンター達を切り裂いてくる。
「確かに、でかい敵だ。これなら……」
赤黒く発光する茨の紋様を右半身に現した恭也がその大木型を狙い、大型魔導銃「オイリアンテMk3」の引き金を引いて弾丸を叩き込む。小回りの利かぬ銃だが、その威力は抜群。敵の幹に大きな風穴を穿つ。
兵庫は全身に血をにじませた傷痕を浮かび上がらせ、体内のマテリアルを燃やして敵を引きつける。
そうして近づく敵が伸ばす蔓草での突きを受けつつ、兵庫は火尖槍を突き返す。
――効果は覿面。敵は明らかにダメージを受けて大きく仰け反っている。広さも問題ないと判断した彼は、しばし槍を振るって雑魔を攻め立てた。
「南護 炎、行くぜ!!!」
片方の瞳を赤く染めた炎もまた、向かい来る雑魔を抑える。呼吸を整えた彼は素早く敵へと試作振動刀「オートMURAMASA」を振るい、敵の蔓草を切り裂いていく。
ロニも前線に立ち、敵を抑えていた。そんな中で彼は身に纏う羽織「白鳥」を媒体にしつつレクイエムを歌い始め、雑魔達の活動を抑制する。
苦しみ悶える雑魔1体を見定め、捉えたアルト。彼女は燃え上がるオーラを昇華させ、陽炎を生み出しつつ相手に迫った。
「そこはもう、私の間合いだ」
再び、彼女は戦場を駆けながら雑魔達へと刃を浴びせる。ついに衝撃に堪えられなくなったのか、植物雑魔1体が闇の中で爆ぜ飛んだのだった。
ハンターの中には、植物雑魔との交戦経験もある者もちらほらといる。それもあって、戦況はかなり優勢に展開していた。
とはいえ、暗い穴倉の中だ。照明を使えど、その合間の闇に紛れられると対処が遅れることもある。
(少し暗いですが、見えているのでしたら)
自身の持つスキルを全て乗せ、ミオレスカは敵に近づかれる前にと再び冷気の矢を飛ばす。それに貫かれた雑魔1体が急速に萎れ、闇へと同化していく。
レクイエム歌っていたロニも敵の接近を見て、自身を中心として眩い光を放つ。それを間近で浴びた植物雑魔は完全に力を失い、全身を霧散させていった。
そして、エルバッハは魔術師として魔力を行使し、一陣の風を放つ。ただ、飛ばした炎の矢の威力の方が大きいと判断した彼女はしばし、燃え盛る矢を撃ち続ける。
それが命中しても敵に燃え広がることはなかったが、雑魔は植物の本能として、炎を苦手としているのだろう。エルバッハの放つ幾度目かの矢が敵の胴体へとぶつかると、狂ったように暴れた雑魔はついにその場から消えていった。
(やはり、植物雑魔ということで、炎や光が効くようですかね)
そんな敵の状況を、ミオレスカは具にチェックしていたようだ。
気づけば、この場に残るは大木雑魔1体。
(やることはさして変わらないが)
再び、時計に目をやり、周囲の状況にアルトは注意を払う。その上で彼女は大木雑魔を見据えた。
「さて、お前は喋れるか?」
仲間が気を引いているうちに彼女は覚醒して長くなった赤髪を躍らせながら敵の死角へと回り込み、自身の疾さを体現した剣を見舞っていく。
「…………」
だが、大木は言葉を発しない、いや、できないのだろう。アルトは敵が喋れないのを察しながらも、その挙動を隈なく暗記する。
仲間が大木を抑えてくれる間、身体に浮かんだ茨の紋様を不気味に明滅させた恭也はオイリアンテの照準を合わせた。
手前側では、兵庫がメインとなって大木の気を引いてくれている。大きな枝を受け止めた彼は早期撃破の為にと強く踏み込み、勢いを強めながら火尖槍を大きく振り抜いた。
枝、幹、根、その全てに斬撃痕が増えていく。大木雑魔も相当弱っているはずだ。
そこに、恭也が強烈な一射を浴びせかける。これで3度目。彼はリロードしつつ、敵が完全に沈黙するまで弾丸を浴びせかける。
「歪虚め! 逃がしはしない!!」
炎もまたスキルを出し惜しみすることなく全力で斬りかかり、襲い来る根を切り払った。覚醒によって好戦的になった彼は、敵を恐れることなく果敢に攻めていく。
敵の数が少ないことも幸いしてか、大木雑魔はハンター達を拘束すらほとんどできず、徐々に動きを鈍らせてしまって。
入り口付近に立つリアリュールは外からの光と、仲間の照明を頼りに、敵へと手裏剣「八握剣」を連続して投げ飛ばす。
「これで……、終わらせるわ」
彼女の飛ばす手裏剣は回転しながら真っ直ぐ宙を飛び、敵の身体深くへ突き刺さる。
木の擦れる音を立てて暴れていた大木雑魔だったが、やがて完全に力尽きたそいつは、崩れ落ちるようになくなっていったのだった。
●
当面の障害を排除したハンター達。
アルトは敵の攻撃やその動きなどを脳内で整理しつつ、討伐後の時間などを暗記する。
ロニもまた、雑魔の情報を後ほど纏め、確認しやすくしようと考えていたようだ。
「さて、調査調査っと」
炎の言葉で、この場の面々は穴の中の調査を再開、というよりも本格化させる。ミオレスカも何か予感を感じながらもそれに続く。
「何もなければ、単純に穴を塞ぐということでもいいかもしれませんが……」
「ここが拠点だとすると、奥にまだ何かがあるのは確実。次の殲滅戦で楽する為にも、情報が欲しいな」
恭也は先行する形でバイクを走らせようとするが、進めば進むほど木の根によって足場が安定しなくなる。やむを得ず、彼は大型魔導銃をバイクに乗せたまま停め、音を立てぬよう歩くことにしていた。
アルトは先ほど置いた魔導短伝話へと通話を試す。さすがに、入り口にエルフを1人だけ残すなどというわけにもいかなかった為、彼女は通話にノイズが入らないかだけチェックする。
さらに、彼女は導きの水晶球や方位磁石の効力も確認する。どうやら、それらは上手く機能しているようだ。
「風の流れなどを調べるのには不向きだから、な。原始的かもしれないが、これが一番だろう」
兵庫はライトに合わせ、ミオレスカに着火してもらった松明を光源とし、壁沿いに歩く。思った以上に広い空間ということもあり、調べるだけでも時間を要してしまう。
「穴が崩れない程度の強度か、気になるのですが」
メモを取っていたミオはその壁に着目した。そこは所々に木の根が張っていたのだが、何かで抉られた後が延々と壁には付いている。ロニは足元の木の根など、調査の妨げとなりそうな箇所にマーカーで印をつけていた。
また、エルバッハがそれを魔導カメラで撮影し、逐一情報端末に記録していく。
それは、空気の流れる方向とも一致している。リアリュールはマテリアルの流れも合わせ、辿ってみた。
「明らかに、不自然な痕ね……」
しかも、マテリアルの淀みは奥に行くほど強くなる。リアリュールは壁などを叩きつつ、直感視も合わせて奥を探ると……。
「……っ、気をつけてください」
「何かがいます」
それに一番早くリアリュールが気づき、エルバッハも仲間へと何かの存在を示し、奥に行かないよう促す。
フロア奥にはさらに下方へと向かう穴。その周囲にはびっしりと木の根が張り巡らされていて。
さらに奥で、植物雑魔の中央に何やら巨大なモノがいた。
「……行きなさい」
声がしたかと思うと、ぞろぞろと木の根を伝って現れる植物雑魔数体が現れる。
「そんな見え透いた手に乗るかよ」
相手の奇襲に警戒していた炎が再び覚醒し、刀の柄に手を掛ける。
「ちっ……」
兵庫は敵目掛け、松明を1本投げ飛ばす。敵が怯む隙にロニは木の根へとマーカーで印をし、身を引く。これ以上は危険と判断したメンバー達は調査の手を止め、大穴の外に向かって飛び出していった。
明らかに一連の事件の糸を引く何か。メンバー達はそれを目視し、カメラに収めつつもこの場から退却していくのだった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/04/29 18:49:54 |
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洞穴調査 ロニ・カルディス(ka0551) ドワーフ|20才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/04/30 22:51:45 |