ゲスト
(ka0000)
【陶曲】Pクレープ~火付けのY
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/02 19:00
- 完成日
- 2017/05/14 02:24
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
Pクレープの南那初華(kz0135)、本日は魔術師協会のどこぞの一室で白茶(ぱいちゃ)を淹れていた。
「ほう。確かにガラス器の中で細い小魚のような茶葉が上下しとるの」
それを見た広報部長のドメニコ・カファロ(kz0017)、満足そうに立派な顎髭を撫でている。
「茶葉が細いのは芽や産毛のある若葉の段階で摘んでいるからです」
「ふむ。おのずと生産量が限られそうじゃの」
ドメニコ、さすがの推察。本来なら高級茶だ。
「Pクレープみたいな街角屋台で出せるのはタスカービレ産を使ってるからなんですよ」
「ああ。サルヴァトーレ・ロッソからの移民を受け入れた村の一つじゃの。頑張っとるようじゃが、それと経費を抑えるのは話が別じゃろ?」
「あん、ごめんなさい。実は新種の茶葉生産に失敗して、『芽の付きはいいけど育たない』種ができたからなんですって。……はい、どうぞ」
つまり、普通の茶葉としては失敗作だったが、偶然白茶生産の弱点を補完する特徴があったということらしい。住民流出にもつながっていたが、移民受け入れによって軌道に乗ったらしい、とも。
「そうか。事業が地方の助けになるなら幸せなことじゃ」
うむ、と茶器を受け取り一口。
「ほう。口に含んでじっくり甘いの。なかなか上品な甘さじゃ」
「ありがとうございます」
初華、にっこり。
そしてお役は完了、とばかりに下がろうとした時だった。
「ああ、そのまま」
「ほへ? 会議中じゃないの?」
初華の言う通り、実はここでお偉いさんが集まって重要そうな話をしていた。
「実はやってもらいたいことがあっての。ほかでもない。先日のフマーレの大火の事じゃ」
「フマーレは幸い、石と土壁の街並みなので完全焼失したわけではなく、復旧も見込みより早い」
ドメニコの話を待ってから、席についている初華の知らない誰かが言った。
「街の動力源とその供給線が残っていたのも大きいですね。……もっとも、これをわざとと見るかうっかりと見るかで犯人の見解が変わりますが」
さらに別の男。
「ほへ? そう言えば原因が不明のままのような?」
「放火よ。もちろん」
初華の言葉にさらに別の人物が。
「しかも歪虚による、ね。……現場ではそれなりの歪虚がいたようで」
災厄の十三魔、ナナ・ナイン(kz0081)の事である。このあたり、報告書「【陶曲】業火の79」に詳しい。
「もしも奴が大火の主犯なら、動力源と補給路に特段の注意を払ってないのはうなずける」
「もしあれの指揮なら、ただ火をつけてしばらく見て飽きたらほったらかし。後はにぎやかに人的被害を追い求めよう」
ナナ、酷い言われようである。もしもこの場にいたら「そんなこと言うおじいさんたちには、早めのお迎えを呼んであ・げ・るっ☆」とか言い出しそうだが、これは余談。
「じゃが、先も言うたがフマーレは石の町。大火を起こそうと思ったら相当の『見る目』が必要じゃ。……今回のが、まさにそれ」
ドメニコ、低い声で言う。
「見る目?」
「左様。燃え移りやすい素材を多く使った通りを導火線に……」
「温度変化による路地の風向きを計算し、それが消火ではなく業火になるように……」
「かつ、足りない部分には必要な火を足す」
次々に手口を称賛する声。報告書「【陶曲】燃えたフマーレ」の通りである。
「最後に炭などの粒子を含んだ空気で雨を呼ぶ……見事なマッチポンプ。適度に騒ぎを起こすという目的であれば手練れの仕業。伝説の『火付けのY』にも劣らぬ手口」
「ひつけのわい?」
ドメニコの言葉に首をひねる初華。
「『ラパーチェ・ラーロ』と呼ばれた街道の盗賊、ルモーレと同じ時代に世間を騒がせた放火魔じゃ。本名不詳。Zの一つ前を取った通り名の由来は『後は待つ(末=Z)だけ』」
「ルモーレが堕落者になって蘇っているなら、こいつも堕落者になっている可能性がある」
「Yがやったなら、奴は間違いなく一度現場に戻る」
「現場の、特に昼の飲食店は営業再開してないところもあるらしい。クレープ販売屋台なら怪しまれないだろう。つまり、君に適任ということだ」
ドメニコと、それに続く言葉。
「ええっと、それってもしかして……」
「火付けのYは長い前髪で目を隠し、がりがりに痩せた長身男性だ。潜伏工作のプロなら歪虚の気配くらいは平気で消してくるぞ」
「とはいえ、現地は復旧や日常生活などで住民かどうかは一目瞭然。不審者がいれば片っ端から誰何すればいいだろう。現地の警備には話しておく」
「人員は別の依頼などで不足しておる。街中での依頼も多くこなしていると聞く。頼むぞ」
とにかく期待される初華であった。
なお、かつての資料によると町や村での大きな火災の後、小さな火災が続くケースが多かったという。何かしら、やり残した仕掛けをしている可能性もある。
「ほう。確かにガラス器の中で細い小魚のような茶葉が上下しとるの」
それを見た広報部長のドメニコ・カファロ(kz0017)、満足そうに立派な顎髭を撫でている。
「茶葉が細いのは芽や産毛のある若葉の段階で摘んでいるからです」
「ふむ。おのずと生産量が限られそうじゃの」
ドメニコ、さすがの推察。本来なら高級茶だ。
「Pクレープみたいな街角屋台で出せるのはタスカービレ産を使ってるからなんですよ」
「ああ。サルヴァトーレ・ロッソからの移民を受け入れた村の一つじゃの。頑張っとるようじゃが、それと経費を抑えるのは話が別じゃろ?」
「あん、ごめんなさい。実は新種の茶葉生産に失敗して、『芽の付きはいいけど育たない』種ができたからなんですって。……はい、どうぞ」
つまり、普通の茶葉としては失敗作だったが、偶然白茶生産の弱点を補完する特徴があったということらしい。住民流出にもつながっていたが、移民受け入れによって軌道に乗ったらしい、とも。
「そうか。事業が地方の助けになるなら幸せなことじゃ」
うむ、と茶器を受け取り一口。
「ほう。口に含んでじっくり甘いの。なかなか上品な甘さじゃ」
「ありがとうございます」
初華、にっこり。
そしてお役は完了、とばかりに下がろうとした時だった。
「ああ、そのまま」
「ほへ? 会議中じゃないの?」
初華の言う通り、実はここでお偉いさんが集まって重要そうな話をしていた。
「実はやってもらいたいことがあっての。ほかでもない。先日のフマーレの大火の事じゃ」
「フマーレは幸い、石と土壁の街並みなので完全焼失したわけではなく、復旧も見込みより早い」
ドメニコの話を待ってから、席についている初華の知らない誰かが言った。
「街の動力源とその供給線が残っていたのも大きいですね。……もっとも、これをわざとと見るかうっかりと見るかで犯人の見解が変わりますが」
さらに別の男。
「ほへ? そう言えば原因が不明のままのような?」
「放火よ。もちろん」
初華の言葉にさらに別の人物が。
「しかも歪虚による、ね。……現場ではそれなりの歪虚がいたようで」
災厄の十三魔、ナナ・ナイン(kz0081)の事である。このあたり、報告書「【陶曲】業火の79」に詳しい。
「もしも奴が大火の主犯なら、動力源と補給路に特段の注意を払ってないのはうなずける」
「もしあれの指揮なら、ただ火をつけてしばらく見て飽きたらほったらかし。後はにぎやかに人的被害を追い求めよう」
ナナ、酷い言われようである。もしもこの場にいたら「そんなこと言うおじいさんたちには、早めのお迎えを呼んであ・げ・るっ☆」とか言い出しそうだが、これは余談。
「じゃが、先も言うたがフマーレは石の町。大火を起こそうと思ったら相当の『見る目』が必要じゃ。……今回のが、まさにそれ」
ドメニコ、低い声で言う。
「見る目?」
「左様。燃え移りやすい素材を多く使った通りを導火線に……」
「温度変化による路地の風向きを計算し、それが消火ではなく業火になるように……」
「かつ、足りない部分には必要な火を足す」
次々に手口を称賛する声。報告書「【陶曲】燃えたフマーレ」の通りである。
「最後に炭などの粒子を含んだ空気で雨を呼ぶ……見事なマッチポンプ。適度に騒ぎを起こすという目的であれば手練れの仕業。伝説の『火付けのY』にも劣らぬ手口」
「ひつけのわい?」
ドメニコの言葉に首をひねる初華。
「『ラパーチェ・ラーロ』と呼ばれた街道の盗賊、ルモーレと同じ時代に世間を騒がせた放火魔じゃ。本名不詳。Zの一つ前を取った通り名の由来は『後は待つ(末=Z)だけ』」
「ルモーレが堕落者になって蘇っているなら、こいつも堕落者になっている可能性がある」
「Yがやったなら、奴は間違いなく一度現場に戻る」
「現場の、特に昼の飲食店は営業再開してないところもあるらしい。クレープ販売屋台なら怪しまれないだろう。つまり、君に適任ということだ」
ドメニコと、それに続く言葉。
「ええっと、それってもしかして……」
「火付けのYは長い前髪で目を隠し、がりがりに痩せた長身男性だ。潜伏工作のプロなら歪虚の気配くらいは平気で消してくるぞ」
「とはいえ、現地は復旧や日常生活などで住民かどうかは一目瞭然。不審者がいれば片っ端から誰何すればいいだろう。現地の警備には話しておく」
「人員は別の依頼などで不足しておる。街中での依頼も多くこなしていると聞く。頼むぞ」
とにかく期待される初華であった。
なお、かつての資料によると町や村での大きな火災の後、小さな火災が続くケースが多かったという。何かしら、やり残した仕掛けをしている可能性もある。
リプレイ本文
●
「さあ、これ以上街を焼かせはしないわよ!」
ばーん、とメルクーア(ka4005)が周辺の地図を広げた。
ここは移動屋台「Pクレープ」の裏。メルクーアの後ろでは南那初華(kz0135)がクレープを焼いている。
「焼くのは初華さんのクレープで十分。これ以上被害が出ちゃうとそれこそ大変だしね。何としても未然に防ぎたいところだよね」
うんうん、と狐中・小鳥(ka5484)が覗き込む。
「大きな火災の後に小さな火災を続ける、か……」
ろくなもんじゃねぇ、とレイオス・アクアウォーカー(ka1990)が拳を手の平に打ち付ける。
「ずいぶん復興したとはいえ焼けた匂いは染みついてる。それが消えるまでは不穏なものだ」
地図を指差し通りをなぞっているキャリコ・ビューイ(ka5044)が淡々と語る。
「手掛かりはないんだよね?」
同じく地図に目を落としていた仁川 リア(ka3483)、視線を上げて確認した。
「ま、簡単に分かるようなら俺たちゃ呼ばれてねえってな」
初華はまあ呼ばれるかもしれんが、とトリプルJ(ka6653)。
「そうだね。……こうして地図を見るだけでも気にかかる場所はあるし」
「そういうことだ。もしも迷推理だとしても一歩は一歩、ゼロより飛躍的に前進することになるんだぜ?」
再び地図に集中するリア。Jは楽しそうに続ける。
「それにしてもこれが全て計算された火災なら恐いくらいだな。その気なら焼け野原になってそうだ」
「その辺がポイントだと思うわね~」
レイオスが言ったところでメルクーアがうーん、と顎に手を置く。
「どちらにしてもここはまだ戦場だ」
キャリコ、短く皆の気を引き締める。
「火付けのY……末尾の『Z』の一つ前を取って『後は待つだけ』なら……」
そこでぼんやりとレイオスがこぼす。皆が注目した。
「その前に止めるオレたちはもう一つ前の『X』だな」
今度の言葉は力強い。皆もうんと頷く。
そこへ、初華の悲鳴。
「きゃ~っ。ちょっと小鳥さん、メルクーアさん、ほんのちょっといまだけ手伝って――っ!」
「……せっかくだから後で手伝おうと思ったら」
「まさかのいま助けて。……ついて来ておいてよかったわぁ」
Pクレープの店員でもある小鳥とメルクーア、開店直後の混雑を乗り切るべくまずはこっちで張り切る。
●
キャリコ、再興中の地域にいた。木材資材が集められている。
「気を取り直してやり直そう、と思ったところにドン……常套手段だ」
面を引き締め敵の狙いについて推察する。
ふと、横の路地が目についた。火勢があれば資材に届く、と見て路地に入る。
路地はやや暗かった。いや、明かりがある。
重ねられた木箱の上にランタンが置かれているのだ。もちろん火がともっている。木箱はバランスが悪い。
「……」
何にしても危ないと手を伸ばした時だった。
――ぴょん、ぐぐぐ……。
何とランタンに手足が生え木箱から飛び降りると、見る見る子供の身長くらいに巨大化したではないか!
「まずい」
直感で分かった。
このランタン人形は歪虚で、木箱を燃やして火をつける予定だったのだと。
瞬間、体当たりして吹っ飛ばす。
追い掛けるように間合いを詰めるのは木箱に近付かさせないため。箱の中身はおそらく可燃性のものと見る。同時にリボルバー「憤慨せしアリオト」を抜いている。
「魔導式だから油があっても問題ないだろう」
――ドンッ、パァン!
「なるほど。ただではやられんということか」
一発で仕留めたが、そうなってもいいように爆発して倒れるようになっているらしい。
キャリコ、咄嗟に顔を左手でふさいだが爆発に巻き込まれた。
「……火のついたランタンに注意してくれ」
座り込んで魔導短伝話で仲間に知らせ、少し休憩する。
「学校……か。燃えやすいものもあるはずだね」
路地を歩いていたリアがつば広帽子を押し上げまじまじとその建物を見る。屋外で少年たちが鉋掛けなどを習っているようだ。
リアが見ていると、学校側から慌てて人が出て来た。
放火魔に関係した調査だと告げると……。
「いま厳重警戒中で関係者でも厳重に立ち入りを禁じてるんだ。勘弁してくれ。燃えやすいものならたくさんあるんだ」
「じゃ、昼間でも火のついたランタンみたいな怪しい物があれば注意してくれ」
これだけ意識が高いなら大丈夫だろうと、勘所を伝えて辞した。
ただ、少し離れてからにっと悪戯っぽい笑みを見せるのだ。
「な~んて。やっぱり自分で確認したいよね」
ぼっ、と黄金の炎のオーラを外套……いや、翼のように纏い加速。その勢いで建物の壁に駆け上がると壁歩きでいったんぴたり。よっ、はっ、とジャンプを交え高い屋根の上まで到達した。
そして風を感じながら広く広く街並みを見る。もちろん、学校の中も。
「ただいま高所から調査中だよ、怪しい場所があったら連絡するね」
魔導短伝話で仲間にも連絡。
何かあれば一気に駆け降りることもできる。
屋根にすらっと立ち見下ろす街は、静かだ。
こちら、J。
「ほへ? Jさん探索に行かないの?」
屋台が落ち着いた初華が、そこらに座っていたJに聞く。
「ここも危ないだろーがよ。……それより初華、あんたが屋台を曳きながら1日歩くとしたらこの街のどういう経路を通るか教えてくれねぇか」
「うーん……売り歩きはしたことないけど、当然人通りの多いところ!」
J、口元を押さえ横を向く。明らかにしまった、という風情。
「な、なによぅ」
「いや、俺が悪かった。……大体、推理が全部当たったらミステリ読む楽しみがなくなっちまうだろうが」
ぱぱっと埃を振るって立ち上がる。
「ただなぁ……設置段階で捕まえそこなった場合な、多分奴の最後の着火ルートがほぼそれに重なると思うんだ」
背中越しに振り返りそれだけ言って出掛けるのだった。
そのまま、下町のような込み入った場所へ向かってみる。
小鳥は川沿いにいた。
爽やかな風にチャイナ服の裾がなびく。
「んー…火が燃え広がりやすいルート……」
ふらっ、と路地に入る。
「風上から風下……」
まるで風に誘われたお散歩状態。ぺことお辞儀する住民に会釈し、軽やかに逃げていく猫にひらひらと手を振る。
「燃えやすいものが置いてある路地とかが風の通り道とかになってたら危険かな? かな?」
なんだか腰の後ろで両手を組んでリズミカルな歩調に。両手を離してくるっと回りスキップスキップ。これは木製棚、こっちは木箱、燃えやすいかもだよね~とか歌うように。
で、ふと動きが止まる。
薄暗い路地に明かりがともっているのだ。
「親切かもだけど……必要なのかな?」
近寄って見るとランタンだった。樽の上に置いてある。
「誰かが忘れたのかな?」
右に顔を傾げ大きな瞳で見詰める。ランタン、そのまま。
「だとしたら火は消し忘れ?」
今度は左に顔を傾げる。
そこへ魔導短伝話のコール。キャリコからだ。
「え? 火のついたランタンに注意?」
応答した時、目の前のランタンに手足が生えぐわっと巨大化した。歪虚である!
「はわっ!?」
殺意の炎を内に秘めたランタンの拳を戦籠手「災厄」で受けると短いダンサーズショートソードを引き抜きつつ斬りつけた。攻防一体の鋭い動きだ!
刹那。
――ぱぁん!
ランタン雑魔、爆発。
小鳥、もちろん爆発に巻き込まれた。
「びっくりしたんだよ!? ……むぅ、ちょっと服が焦げちゃったよ」
服の裾を持ち上げ焦げ具合を確認。その下の太腿とかちょい上の以下略とかは白いままなので問題はないのだが。
●
「火付けのYってのがどんなのかは知らないけど」
メルクーアは初華を手伝った後、復興中の地域にいた。
「現場に戻って来る、ってんなら目的は『復興中の建物と復興に携わる人々』と考えるわね」
考えをまとめながら歩き、それっぽいところに目を配る。
「つまり、復興に懸ける人々の心を折るのが目的」
まったくゲスいわよね、とかぶつぶつ。
おや。
それなのに復興地域から外れて細い路地に入ったぞ?
で、出て来る。近くの住民を捕まえて聞いてみる。
「ちょっと。この路地の途中に木棚があったけど、いつも置いてあった?」
「いや、最近だね。誰が置いたか知らないけど、資材を置いておくのに便利だよね」
ありがたい、と住民。
「怪しいんじゃないかしらね?」
一応、それで納得しておくメルクーア。
で、そこからまた別細い路地に。
で、出て来る。近くの住民に以下略。
「この奥にある燃え残りは?」
「誰がまとめたか知らねぇけど、まだ使えそうな角材とかが集まってんだ。足りねぇちょっとした部分に活用するとかしてやると『まあ、なんということでしょう!』って喜ばれんだ」
もったいないし、あれがこんな風に、ってなと、職人。
「怪しすぎ。そんなのが距離置いて並んでるなんて、まるで導火線じゃない!」
メルクーア、確信。
そんな感じで導火線らしきものを辿ってみる。
どんどん行ったところで、遠くから爆発音を聞くことになる。
時は若干遡る。
「簡単にはみつからないもんだな」
レイオスは飲食店の固まる地域などを回っていた。
「ま、それならやることは決まってるがな」
きびすを返して細い路地へと入っていく。
そこには街の人々の様子を隠れるようにしてじっと見ている黒い人影が座り込んでいた。
「あんた、誰だ?」
「占い師」
黒装束の男は座ったまま言って紙を差し出した。街からの営業許可書だった。
「何をしている?」
「夜に占うために昼の市井を見ておく。基本さね」
「そうか」
言い残し立ち去る。
「あんたは?」
再び路地で別の小男に誰何する。
「掃除屋」
ひひ、と小男は逃げようとしたがやめて答える。
「こんなところをか?」
「いま、あっしが逃げたとすると追うざんしょ? 意外と物を落とすものざんすよ」
ひひひ、と答える。
そしてしれっと付け加えるのだ。
「あっちに怪しいのがいましたぜ? 火でも点けられる前に派手に追ってもらいたいね」
「くそっ」
見透かされ気分を害したこともあり、素直にそちらに走ってみた。
すると、いた!
黒装束に白い陶器のような肌をした、これまで出会った二人とは明らかに違う異質な雰囲気を纏う男性が。食い入るように表通りを見ている。
「おい」
こっそり近寄ったがバレたので声を掛けた。
こちらを向いた瞳は闇のように黒く渦巻いていた。
「歪虚か?」
逃げる。追う。
初速で勝ったレイオスだが、優位性を放棄した。
「これでも食らえ!」
弓を構え放った。見事命中。
が、黒い男にダメージは少ない。逆に引き離す好機だったが足を止めた。
命中後、そこから鼻の曲がるような名状しがたき悪臭が漂ったのだ。
レイオス、この隙に詰めてタックルをかました!
――ドゴォ……ン。
「おわっ!」
相手が爆発。痛手を食らい片膝を付くレイオス。
そして目を剥いた。
爆発した男は硝煙をまき散らしながら吹っ飛びごろごろ転がっていたのだが、その動きのまま起き上がりスピードに乗って逃げたのだ。
「発見した。黒い男だ。悪臭と火薬臭が目印」
急いで魔導短伝話で伝える。
爆発は逃走の加速と匂い消しの効果もあったのだと理解した。
●
「すぐに向かうよ」
連絡を受けたリア、再びオーラを翼のようにして壁歩きして屋根から下り爆発のあった場所に向かう。
「煙が少し上がったのは見えたからね」
位置取りの優位性があり、迷うことはない。
「こっちだったわね」
メルクーアは近くにいたので爆発音が頼り。導火線を想定して移動していたのも良かった。
「あっ、いたわよ!」
ジェットブーツで加速。煙を引きつつ逃げる男がちょうど横合いを向いて止まっていたので一気に追い付く。
そして分かった。
止まっていたのはそっちからリアが突っ込んでいたからだ。
「逃がさないよ!」
「取ったどー!」
二人が同時に捕えた瞬間だった。
――ドゴッ!
再び爆発。先と同じく自分のほうが吹っ飛び二人と距離が離れる。この隙にやはり逃走。
だがさすがに速度が鈍っている。
そこにちゅいん、と横からの射撃。
「発見。足止めする」
キャリコである。
「見つけたんだよ! こっちに来るのかな?」
小鳥も反対側から登場!
男、まっすぐ逃げる。
そして進行方向遠くにすらっと立つ姿がッ!
テンガロンハットに手を掛け悠然と佇むシルエットは……。
「やっぱこっちに来たか。逃げるとありゃごちゃごちゃした下町の方が逃げやすいもんなぁ!」
Jであるッ!
「爆発音もしてたが、こっちでそれやられるわけにゃいかねぇんだよ!」
機械脚甲「モートル」の右足を上げカバーリングナックルの拳を構えて見せると、捕えるべく突進。
「観念するんだよ!」
右からは小鳥が迫っている。
背後からは爆発から復帰したメルクーアとリア。
唯一空いている左ではキャリコが銃を構えている。
完全包囲である!
●
その後、メンバーはぞろぞろと初華の所まで引き上げた。
「お疲れ様! ……えっと、クレープ食べたくなっちゃって。甘いやつがいいな!」
リア、明るく振る舞い注文。
「うんっ、お疲れ様。どうだった?」
初華、生クリームのクレープを焼きながら聞いてみる。
「現場検証してたのかな? でも逃げられたわ、見事に」
「新たなトラップ試してたのかもだよ。……そうそうあれはびっくりしたよね~。まさか消えるとは、だよ」
メルクーアと小鳥、再びエプロンを付けて初華を手伝う。
あの黒い男は爆発の加減を調整して逃げていたこともあり、「火付けのY」に違いないと断定していた。
それが、あの完全包囲の中から姿を消した。
「あいつは完全に俺の方を向いていた。銃を撃ったが一瞬で消えた。横に素早く動いたとかじゃないな」
キャリコが取り逃した瞬間を振り返る。
「消える前、俺の方に一瞬奴の影が伸びたような気もしたが……」
自分の角度からのみ見えた現象を話すJ。
「影はこっちに向いてたような気がするけど」
「そういえばそうねー」
はい、どうぞ♪と初華から手渡されたクレープにかぶりつきながら呟くリア。一緒にいたメルクーアも思い出す。
「横に素早く、じゃないなら上に跳躍とかは?」
「一緒さ。もしそうなら見逃さない」
ぽややん、と聞く初華にキャリコが冷静に指摘する。
「影が伸びて……匂いはどうだった?」
レイオス、Jに確認してみた。
「匂いが強くなったとかはなかったんだがなぁ。……あれから下町のほうで変なにおいのする男が走ってたって話が出たから俺の方を抜かれたのは間違いないんだが」
「通過したわけじゃない、ということだな」
キャリコの呟き。
だがどうやって、というのは明らかではない。皆押し黙って考え込む。
「でもでも、火付けのYを発見できたし二度目の火付けも阻止できたし、何より敵の能力が少しわかったから大成功よね♪」
初華、明るく言って皆を励ました。
「さあ、これ以上街を焼かせはしないわよ!」
ばーん、とメルクーア(ka4005)が周辺の地図を広げた。
ここは移動屋台「Pクレープ」の裏。メルクーアの後ろでは南那初華(kz0135)がクレープを焼いている。
「焼くのは初華さんのクレープで十分。これ以上被害が出ちゃうとそれこそ大変だしね。何としても未然に防ぎたいところだよね」
うんうん、と狐中・小鳥(ka5484)が覗き込む。
「大きな火災の後に小さな火災を続ける、か……」
ろくなもんじゃねぇ、とレイオス・アクアウォーカー(ka1990)が拳を手の平に打ち付ける。
「ずいぶん復興したとはいえ焼けた匂いは染みついてる。それが消えるまでは不穏なものだ」
地図を指差し通りをなぞっているキャリコ・ビューイ(ka5044)が淡々と語る。
「手掛かりはないんだよね?」
同じく地図に目を落としていた仁川 リア(ka3483)、視線を上げて確認した。
「ま、簡単に分かるようなら俺たちゃ呼ばれてねえってな」
初華はまあ呼ばれるかもしれんが、とトリプルJ(ka6653)。
「そうだね。……こうして地図を見るだけでも気にかかる場所はあるし」
「そういうことだ。もしも迷推理だとしても一歩は一歩、ゼロより飛躍的に前進することになるんだぜ?」
再び地図に集中するリア。Jは楽しそうに続ける。
「それにしてもこれが全て計算された火災なら恐いくらいだな。その気なら焼け野原になってそうだ」
「その辺がポイントだと思うわね~」
レイオスが言ったところでメルクーアがうーん、と顎に手を置く。
「どちらにしてもここはまだ戦場だ」
キャリコ、短く皆の気を引き締める。
「火付けのY……末尾の『Z』の一つ前を取って『後は待つだけ』なら……」
そこでぼんやりとレイオスがこぼす。皆が注目した。
「その前に止めるオレたちはもう一つ前の『X』だな」
今度の言葉は力強い。皆もうんと頷く。
そこへ、初華の悲鳴。
「きゃ~っ。ちょっと小鳥さん、メルクーアさん、ほんのちょっといまだけ手伝って――っ!」
「……せっかくだから後で手伝おうと思ったら」
「まさかのいま助けて。……ついて来ておいてよかったわぁ」
Pクレープの店員でもある小鳥とメルクーア、開店直後の混雑を乗り切るべくまずはこっちで張り切る。
●
キャリコ、再興中の地域にいた。木材資材が集められている。
「気を取り直してやり直そう、と思ったところにドン……常套手段だ」
面を引き締め敵の狙いについて推察する。
ふと、横の路地が目についた。火勢があれば資材に届く、と見て路地に入る。
路地はやや暗かった。いや、明かりがある。
重ねられた木箱の上にランタンが置かれているのだ。もちろん火がともっている。木箱はバランスが悪い。
「……」
何にしても危ないと手を伸ばした時だった。
――ぴょん、ぐぐぐ……。
何とランタンに手足が生え木箱から飛び降りると、見る見る子供の身長くらいに巨大化したではないか!
「まずい」
直感で分かった。
このランタン人形は歪虚で、木箱を燃やして火をつける予定だったのだと。
瞬間、体当たりして吹っ飛ばす。
追い掛けるように間合いを詰めるのは木箱に近付かさせないため。箱の中身はおそらく可燃性のものと見る。同時にリボルバー「憤慨せしアリオト」を抜いている。
「魔導式だから油があっても問題ないだろう」
――ドンッ、パァン!
「なるほど。ただではやられんということか」
一発で仕留めたが、そうなってもいいように爆発して倒れるようになっているらしい。
キャリコ、咄嗟に顔を左手でふさいだが爆発に巻き込まれた。
「……火のついたランタンに注意してくれ」
座り込んで魔導短伝話で仲間に知らせ、少し休憩する。
「学校……か。燃えやすいものもあるはずだね」
路地を歩いていたリアがつば広帽子を押し上げまじまじとその建物を見る。屋外で少年たちが鉋掛けなどを習っているようだ。
リアが見ていると、学校側から慌てて人が出て来た。
放火魔に関係した調査だと告げると……。
「いま厳重警戒中で関係者でも厳重に立ち入りを禁じてるんだ。勘弁してくれ。燃えやすいものならたくさんあるんだ」
「じゃ、昼間でも火のついたランタンみたいな怪しい物があれば注意してくれ」
これだけ意識が高いなら大丈夫だろうと、勘所を伝えて辞した。
ただ、少し離れてからにっと悪戯っぽい笑みを見せるのだ。
「な~んて。やっぱり自分で確認したいよね」
ぼっ、と黄金の炎のオーラを外套……いや、翼のように纏い加速。その勢いで建物の壁に駆け上がると壁歩きでいったんぴたり。よっ、はっ、とジャンプを交え高い屋根の上まで到達した。
そして風を感じながら広く広く街並みを見る。もちろん、学校の中も。
「ただいま高所から調査中だよ、怪しい場所があったら連絡するね」
魔導短伝話で仲間にも連絡。
何かあれば一気に駆け降りることもできる。
屋根にすらっと立ち見下ろす街は、静かだ。
こちら、J。
「ほへ? Jさん探索に行かないの?」
屋台が落ち着いた初華が、そこらに座っていたJに聞く。
「ここも危ないだろーがよ。……それより初華、あんたが屋台を曳きながら1日歩くとしたらこの街のどういう経路を通るか教えてくれねぇか」
「うーん……売り歩きはしたことないけど、当然人通りの多いところ!」
J、口元を押さえ横を向く。明らかにしまった、という風情。
「な、なによぅ」
「いや、俺が悪かった。……大体、推理が全部当たったらミステリ読む楽しみがなくなっちまうだろうが」
ぱぱっと埃を振るって立ち上がる。
「ただなぁ……設置段階で捕まえそこなった場合な、多分奴の最後の着火ルートがほぼそれに重なると思うんだ」
背中越しに振り返りそれだけ言って出掛けるのだった。
そのまま、下町のような込み入った場所へ向かってみる。
小鳥は川沿いにいた。
爽やかな風にチャイナ服の裾がなびく。
「んー…火が燃え広がりやすいルート……」
ふらっ、と路地に入る。
「風上から風下……」
まるで風に誘われたお散歩状態。ぺことお辞儀する住民に会釈し、軽やかに逃げていく猫にひらひらと手を振る。
「燃えやすいものが置いてある路地とかが風の通り道とかになってたら危険かな? かな?」
なんだか腰の後ろで両手を組んでリズミカルな歩調に。両手を離してくるっと回りスキップスキップ。これは木製棚、こっちは木箱、燃えやすいかもだよね~とか歌うように。
で、ふと動きが止まる。
薄暗い路地に明かりがともっているのだ。
「親切かもだけど……必要なのかな?」
近寄って見るとランタンだった。樽の上に置いてある。
「誰かが忘れたのかな?」
右に顔を傾げ大きな瞳で見詰める。ランタン、そのまま。
「だとしたら火は消し忘れ?」
今度は左に顔を傾げる。
そこへ魔導短伝話のコール。キャリコからだ。
「え? 火のついたランタンに注意?」
応答した時、目の前のランタンに手足が生えぐわっと巨大化した。歪虚である!
「はわっ!?」
殺意の炎を内に秘めたランタンの拳を戦籠手「災厄」で受けると短いダンサーズショートソードを引き抜きつつ斬りつけた。攻防一体の鋭い動きだ!
刹那。
――ぱぁん!
ランタン雑魔、爆発。
小鳥、もちろん爆発に巻き込まれた。
「びっくりしたんだよ!? ……むぅ、ちょっと服が焦げちゃったよ」
服の裾を持ち上げ焦げ具合を確認。その下の太腿とかちょい上の以下略とかは白いままなので問題はないのだが。
●
「火付けのYってのがどんなのかは知らないけど」
メルクーアは初華を手伝った後、復興中の地域にいた。
「現場に戻って来る、ってんなら目的は『復興中の建物と復興に携わる人々』と考えるわね」
考えをまとめながら歩き、それっぽいところに目を配る。
「つまり、復興に懸ける人々の心を折るのが目的」
まったくゲスいわよね、とかぶつぶつ。
おや。
それなのに復興地域から外れて細い路地に入ったぞ?
で、出て来る。近くの住民を捕まえて聞いてみる。
「ちょっと。この路地の途中に木棚があったけど、いつも置いてあった?」
「いや、最近だね。誰が置いたか知らないけど、資材を置いておくのに便利だよね」
ありがたい、と住民。
「怪しいんじゃないかしらね?」
一応、それで納得しておくメルクーア。
で、そこからまた別細い路地に。
で、出て来る。近くの住民に以下略。
「この奥にある燃え残りは?」
「誰がまとめたか知らねぇけど、まだ使えそうな角材とかが集まってんだ。足りねぇちょっとした部分に活用するとかしてやると『まあ、なんということでしょう!』って喜ばれんだ」
もったいないし、あれがこんな風に、ってなと、職人。
「怪しすぎ。そんなのが距離置いて並んでるなんて、まるで導火線じゃない!」
メルクーア、確信。
そんな感じで導火線らしきものを辿ってみる。
どんどん行ったところで、遠くから爆発音を聞くことになる。
時は若干遡る。
「簡単にはみつからないもんだな」
レイオスは飲食店の固まる地域などを回っていた。
「ま、それならやることは決まってるがな」
きびすを返して細い路地へと入っていく。
そこには街の人々の様子を隠れるようにしてじっと見ている黒い人影が座り込んでいた。
「あんた、誰だ?」
「占い師」
黒装束の男は座ったまま言って紙を差し出した。街からの営業許可書だった。
「何をしている?」
「夜に占うために昼の市井を見ておく。基本さね」
「そうか」
言い残し立ち去る。
「あんたは?」
再び路地で別の小男に誰何する。
「掃除屋」
ひひ、と小男は逃げようとしたがやめて答える。
「こんなところをか?」
「いま、あっしが逃げたとすると追うざんしょ? 意外と物を落とすものざんすよ」
ひひひ、と答える。
そしてしれっと付け加えるのだ。
「あっちに怪しいのがいましたぜ? 火でも点けられる前に派手に追ってもらいたいね」
「くそっ」
見透かされ気分を害したこともあり、素直にそちらに走ってみた。
すると、いた!
黒装束に白い陶器のような肌をした、これまで出会った二人とは明らかに違う異質な雰囲気を纏う男性が。食い入るように表通りを見ている。
「おい」
こっそり近寄ったがバレたので声を掛けた。
こちらを向いた瞳は闇のように黒く渦巻いていた。
「歪虚か?」
逃げる。追う。
初速で勝ったレイオスだが、優位性を放棄した。
「これでも食らえ!」
弓を構え放った。見事命中。
が、黒い男にダメージは少ない。逆に引き離す好機だったが足を止めた。
命中後、そこから鼻の曲がるような名状しがたき悪臭が漂ったのだ。
レイオス、この隙に詰めてタックルをかました!
――ドゴォ……ン。
「おわっ!」
相手が爆発。痛手を食らい片膝を付くレイオス。
そして目を剥いた。
爆発した男は硝煙をまき散らしながら吹っ飛びごろごろ転がっていたのだが、その動きのまま起き上がりスピードに乗って逃げたのだ。
「発見した。黒い男だ。悪臭と火薬臭が目印」
急いで魔導短伝話で伝える。
爆発は逃走の加速と匂い消しの効果もあったのだと理解した。
●
「すぐに向かうよ」
連絡を受けたリア、再びオーラを翼のようにして壁歩きして屋根から下り爆発のあった場所に向かう。
「煙が少し上がったのは見えたからね」
位置取りの優位性があり、迷うことはない。
「こっちだったわね」
メルクーアは近くにいたので爆発音が頼り。導火線を想定して移動していたのも良かった。
「あっ、いたわよ!」
ジェットブーツで加速。煙を引きつつ逃げる男がちょうど横合いを向いて止まっていたので一気に追い付く。
そして分かった。
止まっていたのはそっちからリアが突っ込んでいたからだ。
「逃がさないよ!」
「取ったどー!」
二人が同時に捕えた瞬間だった。
――ドゴッ!
再び爆発。先と同じく自分のほうが吹っ飛び二人と距離が離れる。この隙にやはり逃走。
だがさすがに速度が鈍っている。
そこにちゅいん、と横からの射撃。
「発見。足止めする」
キャリコである。
「見つけたんだよ! こっちに来るのかな?」
小鳥も反対側から登場!
男、まっすぐ逃げる。
そして進行方向遠くにすらっと立つ姿がッ!
テンガロンハットに手を掛け悠然と佇むシルエットは……。
「やっぱこっちに来たか。逃げるとありゃごちゃごちゃした下町の方が逃げやすいもんなぁ!」
Jであるッ!
「爆発音もしてたが、こっちでそれやられるわけにゃいかねぇんだよ!」
機械脚甲「モートル」の右足を上げカバーリングナックルの拳を構えて見せると、捕えるべく突進。
「観念するんだよ!」
右からは小鳥が迫っている。
背後からは爆発から復帰したメルクーアとリア。
唯一空いている左ではキャリコが銃を構えている。
完全包囲である!
●
その後、メンバーはぞろぞろと初華の所まで引き上げた。
「お疲れ様! ……えっと、クレープ食べたくなっちゃって。甘いやつがいいな!」
リア、明るく振る舞い注文。
「うんっ、お疲れ様。どうだった?」
初華、生クリームのクレープを焼きながら聞いてみる。
「現場検証してたのかな? でも逃げられたわ、見事に」
「新たなトラップ試してたのかもだよ。……そうそうあれはびっくりしたよね~。まさか消えるとは、だよ」
メルクーアと小鳥、再びエプロンを付けて初華を手伝う。
あの黒い男は爆発の加減を調整して逃げていたこともあり、「火付けのY」に違いないと断定していた。
それが、あの完全包囲の中から姿を消した。
「あいつは完全に俺の方を向いていた。銃を撃ったが一瞬で消えた。横に素早く動いたとかじゃないな」
キャリコが取り逃した瞬間を振り返る。
「消える前、俺の方に一瞬奴の影が伸びたような気もしたが……」
自分の角度からのみ見えた現象を話すJ。
「影はこっちに向いてたような気がするけど」
「そういえばそうねー」
はい、どうぞ♪と初華から手渡されたクレープにかぶりつきながら呟くリア。一緒にいたメルクーアも思い出す。
「横に素早く、じゃないなら上に跳躍とかは?」
「一緒さ。もしそうなら見逃さない」
ぽややん、と聞く初華にキャリコが冷静に指摘する。
「影が伸びて……匂いはどうだった?」
レイオス、Jに確認してみた。
「匂いが強くなったとかはなかったんだがなぁ。……あれから下町のほうで変なにおいのする男が走ってたって話が出たから俺の方を抜かれたのは間違いないんだが」
「通過したわけじゃない、ということだな」
キャリコの呟き。
だがどうやって、というのは明らかではない。皆押し黙って考え込む。
「でもでも、火付けのYを発見できたし二度目の火付けも阻止できたし、何より敵の能力が少しわかったから大成功よね♪」
初華、明るく言って皆を励ました。
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- 王国騎士団“黒の騎士”
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)
重体一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/01 16:45:24 |
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相談卓 仁川 リア(ka3483) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/05/02 03:27:10 |