ゲスト
(ka0000)
【初心】植物雑魔掃討作戦に備えて
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- LV1~LV20
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/14 12:00
- 完成日
- 2017/05/19 00:04
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
グラズヘイム王国東にあるリンダールの森。
とあるエルフの集落付近に、植物雑魔の巣のようになった大穴の存在が確認された。
先日、この大穴をハンター達が調査に向かったのだが、穴の奥に歪虚らしきものの存在が確認された。
この討伐の為、ハンターらが持ち帰った情報を元に、エルフや集落にやってきた聖堂戦士団らが作戦を練っているところなのだが……。
「どうやら、歪虚は自衛の為に、植物雑魔を中で生み出しているようですー」
王都イルダーナのハンターズソサエティで、金髪ウェーブヘアで糸目の女性シェリーが経験の浅いハンターへと説明を行う。
エルフ達はしっかりと作戦を練って掃討に当たりたいと考えているようだが、その間に植物雑魔が活動範囲を再び広げ、集落が襲われる懸念も大きい。
「作戦前に、雑魔の勢力を削いでおきたいとの事ですねー」
現れる敵はこれまで、幾度かハンター達が交戦しており、敵対処の為の情報も十分。
これら内容を踏まえ、ハンターズソサエティは新人ハンターにこの依頼を任せることとしていた。実戦経験の浅いハンターをメインに、経験を積んでもらおうとの狙いがあるのだそうだ。
「現状、ハンターの数が足りておりませんのでー、こうした形でハンター育成の為の依頼を斡旋させていただいておりますー」
戦闘経験を積み、様々な依頼で活躍できるようになってほしいと、シェリーは告げる。
場所は、リンダールの森、エルフの集落南にある大穴だ。
直径は6~7mほど。穴は片側からやや急な斜面となり、地中に続いている。この中は現状、植物歪虚を始め、植物雑魔が数多くいると見られている。
「皆さんには、この大穴の外周にいる植物雑魔退治をお願いしますー」
穴の外には、植物雑魔が4体ほど出ているようだ。これを駆除し、当面の懸念を消しておきたい。
植物雑魔は枯れ木や倒木などに枯れ草が撒きつき、人型のようになった雑魔だ。その身長は大体成人男性と同等くらいだ。
敵は獲物と定めた相手の手足を蔓草で締め上げ、別の蔓草で突きを繰り出し、枝で殴打して相手を倒そうとする。
また、4体の植物雑魔を率いる大木雑魔の存在が1体確認されている。
こちらは4メートルほどの樹高を持ち、枝を振り回したり、広げた根を使って相手を締め付けたりしてくる。また、振り下ろす木の葉は鋭い刃となっており、広範囲の相手を傷つけるのだそうだ。
「合わせて、エルフの皆様から、エルフの新人ハンターさんとご一緒に依頼に臨んでいただきますよう、依頼があっておりますー」
いずれも若いエルフ達であり、彼らも実戦経験が乏しい。ただ、数の利はこちらにある。上手く連携して戦えば、新人ハンターであっても雑魔を討伐出来るはずだ。
「ここで、2つだけ注意ですー」
まず、大穴内には立ち入らないこと。無闇に立ち入ると中にいる植物歪虚に襲われ、命の危険すらありうる。現状は下手な好奇心を抱かず、外側の雑魔退治に専念したい。
また、雑魔討伐後は速やかにこの場を離れたい。大穴から、いつ新たな雑魔が湧き出るか分からない。怪我を負った戦闘後の状態であれば、無理は禁物。引き際を見定めるのも、ハンターとしては重要なことなのだ。
「以上ですー。張り切って雑魔討伐、がんばってくださいねー」
シェリーはにこやかに、転移門に向かう新人ハンター達を見送るのだった。
グラズヘイム王国東にあるリンダールの森。
とあるエルフの集落付近に、植物雑魔の巣のようになった大穴の存在が確認された。
先日、この大穴をハンター達が調査に向かったのだが、穴の奥に歪虚らしきものの存在が確認された。
この討伐の為、ハンターらが持ち帰った情報を元に、エルフや集落にやってきた聖堂戦士団らが作戦を練っているところなのだが……。
「どうやら、歪虚は自衛の為に、植物雑魔を中で生み出しているようですー」
王都イルダーナのハンターズソサエティで、金髪ウェーブヘアで糸目の女性シェリーが経験の浅いハンターへと説明を行う。
エルフ達はしっかりと作戦を練って掃討に当たりたいと考えているようだが、その間に植物雑魔が活動範囲を再び広げ、集落が襲われる懸念も大きい。
「作戦前に、雑魔の勢力を削いでおきたいとの事ですねー」
現れる敵はこれまで、幾度かハンター達が交戦しており、敵対処の為の情報も十分。
これら内容を踏まえ、ハンターズソサエティは新人ハンターにこの依頼を任せることとしていた。実戦経験の浅いハンターをメインに、経験を積んでもらおうとの狙いがあるのだそうだ。
「現状、ハンターの数が足りておりませんのでー、こうした形でハンター育成の為の依頼を斡旋させていただいておりますー」
戦闘経験を積み、様々な依頼で活躍できるようになってほしいと、シェリーは告げる。
場所は、リンダールの森、エルフの集落南にある大穴だ。
直径は6~7mほど。穴は片側からやや急な斜面となり、地中に続いている。この中は現状、植物歪虚を始め、植物雑魔が数多くいると見られている。
「皆さんには、この大穴の外周にいる植物雑魔退治をお願いしますー」
穴の外には、植物雑魔が4体ほど出ているようだ。これを駆除し、当面の懸念を消しておきたい。
植物雑魔は枯れ木や倒木などに枯れ草が撒きつき、人型のようになった雑魔だ。その身長は大体成人男性と同等くらいだ。
敵は獲物と定めた相手の手足を蔓草で締め上げ、別の蔓草で突きを繰り出し、枝で殴打して相手を倒そうとする。
また、4体の植物雑魔を率いる大木雑魔の存在が1体確認されている。
こちらは4メートルほどの樹高を持ち、枝を振り回したり、広げた根を使って相手を締め付けたりしてくる。また、振り下ろす木の葉は鋭い刃となっており、広範囲の相手を傷つけるのだそうだ。
「合わせて、エルフの皆様から、エルフの新人ハンターさんとご一緒に依頼に臨んでいただきますよう、依頼があっておりますー」
いずれも若いエルフ達であり、彼らも実戦経験が乏しい。ただ、数の利はこちらにある。上手く連携して戦えば、新人ハンターであっても雑魔を討伐出来るはずだ。
「ここで、2つだけ注意ですー」
まず、大穴内には立ち入らないこと。無闇に立ち入ると中にいる植物歪虚に襲われ、命の危険すらありうる。現状は下手な好奇心を抱かず、外側の雑魔退治に専念したい。
また、雑魔討伐後は速やかにこの場を離れたい。大穴から、いつ新たな雑魔が湧き出るか分からない。怪我を負った戦闘後の状態であれば、無理は禁物。引き際を見定めるのも、ハンターとしては重要なことなのだ。
「以上ですー。張り切って雑魔討伐、がんばってくださいねー」
シェリーはにこやかに、転移門に向かう新人ハンター達を見送るのだった。
リプレイ本文
●
グラズヘイム王国東部にあるリンダールの森。
そこにあるエルフの集落に、比較的ハンター経験の浅いメンバー達の姿があった。
「未経験者の為に、危なくない範囲で経験を積ませてあげようって言うことですよね」
パワーレベリングの手法がこのクリムゾンウェストの世界にも存在するのかと、ほんのり青い瞳の眼鏡っ娘、穂積 智里(ka6819)は何やら食指が動いていたようで、ふむふむと得心する。
こちらは、唯一、ハンター側でエルフの舞鶴・鈴香(ka6703) 。黒髪をポニーテールにした鈴香は人知れず、表情を翳らせていた。
(同族には、いい思い出が無いわね……)
年不相応の大人びた態度をした彼女は、自身のエルフの里で辛い日々を送っている。エルフばかりの集落だと、嫌でもそれを喚起させられてしまうのだ。
「今回は、よろしくお願いするわね」
それでも、鈴香はこの地のエルフ達を不安な気持ちにさせぬように、普段どおりの振る舞いを心がける。
さて、今回のハンター達の任務は、大穴周りの植物雑魔退治なのだが。
「……前回の依頼の時には、居なかった敵も居るみたいだね。前回の戦闘の経験を生かして、今回も頑張るよ」
辺境部族の出身、サクヤ・フレイヤ(ka5356)は前回の植物雑魔掃討作戦にも参加していた。ただ、今回はその時よりも強力な雑魔がいるということで、彼女は気合を入れている。
「ハンター達、よろしく頼むぜ」
「こちらこそよろしくね」
今回同行するエルフ、リーダー格のタッドに合わせ、サクヤが挨拶を返す。彼女は先輩疾影士として、教えられることもあるだろうと考えていたのだ。
やや控えめな態度のマナリィ、エナもぺこりと頭を下げる。
「植物が相手なら、火炎符で燃やしてしまうのが一番手っ取り早そうだ」
一見すると、その容姿や振る舞いから男性にも見間違えそうな桃之枝(ka6824)が問うと、2人のエルフの少女は頷く。
「えっと、お2人のスキルの射程を確認させてもらっていいですか?」
それに合わせて、智里が作戦の為にと少女達の力量を確かめる。これも、無駄に怪我をしないようにとの智里の配慮だ。
「私達は3人で息を合わせて、植物雑魔を1体ずつ燃やしていこうじゃないか」
「「はい」」
桃之枝が協力を求めると、エルフ達もほんわかした笑顔ではいと応じていたようだ。
程なく、ハンターとエルフは、集落南の大穴までやってくる。
若いエルフ達はこの場所に穴が開いて以降、集落の長から近づくなと厳命されていたらしく、現状でこの場に来た経験があるのは、先の依頼に参加したサクヤだけだった。
ここまで馬にやってきた鈴香は馬から降りて木に繋ぎ、口を開いたその地面を眺める。
「ふんわりとだけれど……、大穴の中からすごく不気味な感じがするわね」
その禍々しい気配の一端を感じた鈴香。現状の力量では、命の保証すらできぬということで、仲間達に入らないよう注意喚起する。
そこで侵入者を察したのか、周囲の木陰からわらわらと登場する植物雑魔が怪しげに四肢代わりの蔓草を蠢かす。
そして、大穴からは、一回り以上大きな大木雑魔が現れた。こちらも枝や根を動かし、自在に動き回っている。
「本当ならば、争いは避けたいものでござるが……」
それらを目視で捉えた着物姿の東雲 夜月(ka6833)。平和的な解決を望む彼だが、話すら出来そうにない雑魔を前に致し方なしと覚醒し、ゆったりと敵に近づく。
「……くすぶってた方が性に合うけど、仕方ないな」
精霊や武器の属性と自らの性格をそう例えるのは、銀色の短髪で穏健な様子の浪風悠吏(ka1035)だ。
しかし、雑魔を前にすれば、彼は契約した火の精霊の力を解放して瞳を真っ赤に変色させ、髪には赤いメッシュが入っていた。
「攻撃する対象とタイミングについては、私が適宜合図をするよ」
「お願い……」
「よろしくなの」
覚醒した桃之枝(ka6824)は、狐を思わせる真っ白な耳と大きな尻尾の幻影を現して。返事を返すエルフ達は緊張でやや身体をこわばらせていた。
「前方だけなら、下がるだけでも……。マナリィさんやエナさんは、術射程のぎりぎりから攻撃でいいと思います」
智里はエルフのマナリィと並ぶように立つ。桃之枝、エナが射程の都合から、少しだけその前方に立つ。
ただ、雑魔どもはハンター達の態勢が整うのを待ちはしない。脚代わりに根や蔓草を動かしつつ、こちらへと迫ってくるのである。
●
マテリアルを解放し、覚醒状態になるハンター達。エルフ達もまた力を解き放ち、追随する。
前線に飛び出すのは、鈴香、そして、じりじりと植物雑魔と距離を詰める夜月だ。
敵が間合いに入るまでは、夜月は火竜票を投げ飛ばす。刹那青白い炎に包まれたそれは敵に突き刺さり、炎の力でその雑魔を苛む。
鈴香は夜月と上手く敵の分担をしながら、円を意識した動きで日本刀「骨喰」で雑魔の胴体に斬りかかった。その上で、彼女は出来るだけ、後方の仲間に攻撃がいかないように敵を引きつける。
鈴香、夜月が前に出たことで植物雑魔は彼らへとメインに襲い掛かり、枝を大きく振るい、伸ばした蔓草でハンター達の体を締め上げてきた。
智里は魔導機式抜刀剣「白雪」を媒体に、前に立つメンバーへとマテリアルをエネルギーとして流入し、防御力を順に高めながらエルフの少女らへ呼びかける。
「あちらこちらの敵を狙わず、前衛さんを抜けてきそうな敵優先でいいんじゃないでしょうか」
敵の侵攻自体はそれほど速くはない。ただ、メンバーと体長がそれほど変わらぬこともあり、前方を抜けてこようとする雑魔もいる。
「今だ」
夜月の真横を通り抜ける敵を見た桃之枝は、手にする符「花吹雪」に炎の精霊力を付与して投げ飛ばす。
その合図に合わせてエナも炎の符を飛ばし、マナリィは燃える矢を撃ち、次々に雑魔へとぶつけていく。
逆サイドでは、サクヤとタッドが鈴香の脇をすり抜けようとする雑魔を相手取る。
後方と言えぬまでも、敵から距離を取っていたサクヤ達。縁を鋭く尖らせた赤い金属製の札にマテリアルを込めてサクヤが投げ飛ばすと、それを胴体に受けた雑魔が手足となる蔓草をジタバタと振るって苦しむ。
最も突出する形となっていたそいつへ鈴音が追って切りかかるが、悠吏が荒々しい態度で攻め入る。
「依頼は初めてでも、狩りの仕方は知っているよ」
仄かに赤みがかった刀身の小太刀「烈火」を叩きつける悠吏へ、雑魔は素早く蔓草を伸ばす。
それに貫かれた彼はやや顔を引きつらせながらも、敵の脇を狙うように、小太刀で再び力強く殴打する。
その植物雑魔はぼとりと糸が切れたように地面に落ち、この場から消え去っていく。
「本気になれば、このくらい……」
事も無げに言い放った悠吏は次なる敵を見定め、強く踏み込んでいくのだった。
前に出てくるのは植物雑魔だけではない。大木雑魔もまた近づき、広範囲にエッジの利いた木の葉を降らせてハンター達の体を刻まんとする。
夜月も投擲による牽制から近接攻撃へと切り替え、後ろからスキルを飛ばす仲間の射線を遮らぬように雑魔の側面に陣取り、敵の注意を引きつけていた。
乱雑に一房に纏められた長髪を揺らし、夜月は太刀「螺旋丸」で植物雑魔の体を斬って、斬って斬って斬り伏せんと刃を振るう。
その夜月を、植物雑魔2体、そして、大木雑魔がほぼ同時に狙う。
「させないよ」
状況を察した桃之枝が符を光り輝く鳥の姿に変えて投げつけ、大木の枝を受け止めさせる。
その上で、彼女はまたも炎の符を構え、エルフ達とまたも植物雑魔へ炎を飛ばす。
敵の体力はさほど高くない。ならば、エルフ達と対象を分散して攻撃もと考えるが、味方が多数の敵に絡まれているなら話は別だ。
悠吏もそちらへと加勢し、敵の後方から切り込む。
そこで、悠吏へと絡んでくる蔓草。彼は腕を自由にする為、敢えて胴でそれを受け止めてから、その蔓草を切り払う。
身体の一部を失って体勢を崩しかけたところで、サクヤが素早く迫る。身体にマテリアルを潤滑させた彼女は、ウィップ「エスプランドル」でそいつの全身を打ち据えて撃破してしまった。
しかし、植物雑魔はまだいる。サクヤは次の攻撃が来る前に、その場から飛びのいて距離を取った。
「……疾影士は一撃の重さで勝負するクラスじゃないからね。動き回って敵を翻弄しつつ的確にダメージを与えていくのが基本スタイルだと思うよ」
普段、少女2人をぐいぐいと引っ張っているであろう、エルフの少年タッド。そんな彼は戦いながらも、流れるような動きで戦うサクヤに見とれていて。
「だから、自分のスタイルが確立するまでは基本スタイルで戦えば、間違いないと思う」
「あ、うん……」
タッドも同じように、今なお暴れる植物雑魔へと駆け寄り、短剣を見舞っていく。
その後もハンター達は攻撃を繰り返し、雑魔達を攻め立てる。
前線メンバーは上手く敵を引きつけてくれているので、智里は安心して彼らの防御を高めていた。
「それじゃ、私も行きますよ」
手にする「白雪」を通して、高まるエネルギー。智里はそれを一筋の光となして植物雑魔へと放射していく。智里も戦況を見定め仲間を援護していたのだ。
そして、前線で戦っていた鈴香は、その光を受けて崩れかけた敵へ、身体を捻らせながらも「骨喰」で植物雑魔の胴体を断ち切る。
一方で、夜月の相手にする雑魔も、四肢の蔓草をヘたらせてきていた。
エナ、マナリィが飛ばす炎に合わせ、術の精度を高める符を使用した桃之枝が燃える符を投擲する。
命中した植物雑魔は一瞬大きく燃え上がり、塵すら残すことなく森から消え去っていった。
残る大木雑魔1体のみ。
前線で暴れるそいつが振るう太い枝は、新人ハンター達には重い一撃だ。しかも、それを避けようとすれば、根を触手のように変化させ脚を狙って絡めとってくるから厄介だ。
しかしながら、減り行く植物雑魔の数もあり、大木雑魔も徐々に焦りを見せていた。
前線で抑える鈴香、夜月のスタンスは変わらず。
傷が深くなっていたこともあり、鈴香は自身を暖かな光に包んで自らの体力を回復させる。その上で、彼女はその幹を斬る。乾いた音が森に鳴り響いた。
夜月も猛攻を仕掛ける。できるだけ敵の側面や背後で敵を抑えつつ太刀で猛攻を行う。斬ることのできる状況であれば、それを逃す理由などないのだ。
悠吏も果敢に敵へと攻め立てていた。鈴香と同様に自らの体力を回復させつつ、夜月と上手く立ち位置を替えて敵の枝を小太刀で切り払う。
そんな前線メンバーに当たらないように、智里は4m近くある敵の上部、枝葉目掛けて機導砲を発射する。
続けざまに、炎の符を発射する桃之枝。ここまでくれば、集中攻撃あるのみ。残るスキルを全てぶつけていくのみだ。
「負けられない……」
「雑魔の、好きにはさせないの」
マナリィもエナも、ありったけの力を雑魔にぶつける。
「あんな奴に負けていられるか!」
タッドが飛び出し、敵の正面から短剣を深く突き刺す。
彼を狙って大木雑魔が根を伸ばしてきたところへ、飛び込んだ昨夜が白色の鞭で敵の体を強かに打ち払う。強烈な一打に、大木がついに揺らいだ。
「これで終わりね」
倒れる間、痛みの為か、じたばたと暴れ狂う大木雑魔。
そいつは地響きを立てつつその身体を地面に横たえ、その身を黒い霧のように散らしていったのだった。
●
雑魔を全て討伐した一行。
周りを見回した鈴香は、忘れ物がないかと確認してから自らの馬に跨る。
「長居は無用よ、早く引き上げましょう」
同意するエルフやハンターが撤退の準備を整える中、智里は大穴を見つめる。
「あの中に敵がいるって言われると、確かに気になりますけど……。私達じゃ倒せないほどの敵だっていうことも、分かっているんですよね?」
「……まだまだ大穴の内部の捜索は進んでいないみたいだし、ここは指示通り離脱が賢いと思うな」
サクヤの意見に皆、同意する。それを聞いた智里は気にする素振りを見せつつも、大穴から距離を取った。
「ホラー映画の1人目になる迷惑はかけられませんからね」
「ほらーえいが……?」
とはいえ、智里は後ろ髪を引かれる思いで、この場から離脱していく。エルフの少女達は、彼女の言葉が気になっていた様子だった。
少しして、大穴から距離を取った場所で一息つくメンバー達。
「皆さん、大事には至っていないようですね」
悠吏は皆の状態を見て、深手を負った者がいないことを確認する。若いエルフ達も無事に仕事を追え、笑みすら浮かべていた。
後は熟練ハンターの仕事なのだろう。ともあれ、順当に雑魔の討伐を完了したハンター達は、大手を振って集落へと戻っていくのだった。
グラズヘイム王国東部にあるリンダールの森。
そこにあるエルフの集落に、比較的ハンター経験の浅いメンバー達の姿があった。
「未経験者の為に、危なくない範囲で経験を積ませてあげようって言うことですよね」
パワーレベリングの手法がこのクリムゾンウェストの世界にも存在するのかと、ほんのり青い瞳の眼鏡っ娘、穂積 智里(ka6819)は何やら食指が動いていたようで、ふむふむと得心する。
こちらは、唯一、ハンター側でエルフの舞鶴・鈴香(ka6703) 。黒髪をポニーテールにした鈴香は人知れず、表情を翳らせていた。
(同族には、いい思い出が無いわね……)
年不相応の大人びた態度をした彼女は、自身のエルフの里で辛い日々を送っている。エルフばかりの集落だと、嫌でもそれを喚起させられてしまうのだ。
「今回は、よろしくお願いするわね」
それでも、鈴香はこの地のエルフ達を不安な気持ちにさせぬように、普段どおりの振る舞いを心がける。
さて、今回のハンター達の任務は、大穴周りの植物雑魔退治なのだが。
「……前回の依頼の時には、居なかった敵も居るみたいだね。前回の戦闘の経験を生かして、今回も頑張るよ」
辺境部族の出身、サクヤ・フレイヤ(ka5356)は前回の植物雑魔掃討作戦にも参加していた。ただ、今回はその時よりも強力な雑魔がいるということで、彼女は気合を入れている。
「ハンター達、よろしく頼むぜ」
「こちらこそよろしくね」
今回同行するエルフ、リーダー格のタッドに合わせ、サクヤが挨拶を返す。彼女は先輩疾影士として、教えられることもあるだろうと考えていたのだ。
やや控えめな態度のマナリィ、エナもぺこりと頭を下げる。
「植物が相手なら、火炎符で燃やしてしまうのが一番手っ取り早そうだ」
一見すると、その容姿や振る舞いから男性にも見間違えそうな桃之枝(ka6824)が問うと、2人のエルフの少女は頷く。
「えっと、お2人のスキルの射程を確認させてもらっていいですか?」
それに合わせて、智里が作戦の為にと少女達の力量を確かめる。これも、無駄に怪我をしないようにとの智里の配慮だ。
「私達は3人で息を合わせて、植物雑魔を1体ずつ燃やしていこうじゃないか」
「「はい」」
桃之枝が協力を求めると、エルフ達もほんわかした笑顔ではいと応じていたようだ。
程なく、ハンターとエルフは、集落南の大穴までやってくる。
若いエルフ達はこの場所に穴が開いて以降、集落の長から近づくなと厳命されていたらしく、現状でこの場に来た経験があるのは、先の依頼に参加したサクヤだけだった。
ここまで馬にやってきた鈴香は馬から降りて木に繋ぎ、口を開いたその地面を眺める。
「ふんわりとだけれど……、大穴の中からすごく不気味な感じがするわね」
その禍々しい気配の一端を感じた鈴香。現状の力量では、命の保証すらできぬということで、仲間達に入らないよう注意喚起する。
そこで侵入者を察したのか、周囲の木陰からわらわらと登場する植物雑魔が怪しげに四肢代わりの蔓草を蠢かす。
そして、大穴からは、一回り以上大きな大木雑魔が現れた。こちらも枝や根を動かし、自在に動き回っている。
「本当ならば、争いは避けたいものでござるが……」
それらを目視で捉えた着物姿の東雲 夜月(ka6833)。平和的な解決を望む彼だが、話すら出来そうにない雑魔を前に致し方なしと覚醒し、ゆったりと敵に近づく。
「……くすぶってた方が性に合うけど、仕方ないな」
精霊や武器の属性と自らの性格をそう例えるのは、銀色の短髪で穏健な様子の浪風悠吏(ka1035)だ。
しかし、雑魔を前にすれば、彼は契約した火の精霊の力を解放して瞳を真っ赤に変色させ、髪には赤いメッシュが入っていた。
「攻撃する対象とタイミングについては、私が適宜合図をするよ」
「お願い……」
「よろしくなの」
覚醒した桃之枝(ka6824)は、狐を思わせる真っ白な耳と大きな尻尾の幻影を現して。返事を返すエルフ達は緊張でやや身体をこわばらせていた。
「前方だけなら、下がるだけでも……。マナリィさんやエナさんは、術射程のぎりぎりから攻撃でいいと思います」
智里はエルフのマナリィと並ぶように立つ。桃之枝、エナが射程の都合から、少しだけその前方に立つ。
ただ、雑魔どもはハンター達の態勢が整うのを待ちはしない。脚代わりに根や蔓草を動かしつつ、こちらへと迫ってくるのである。
●
マテリアルを解放し、覚醒状態になるハンター達。エルフ達もまた力を解き放ち、追随する。
前線に飛び出すのは、鈴香、そして、じりじりと植物雑魔と距離を詰める夜月だ。
敵が間合いに入るまでは、夜月は火竜票を投げ飛ばす。刹那青白い炎に包まれたそれは敵に突き刺さり、炎の力でその雑魔を苛む。
鈴香は夜月と上手く敵の分担をしながら、円を意識した動きで日本刀「骨喰」で雑魔の胴体に斬りかかった。その上で、彼女は出来るだけ、後方の仲間に攻撃がいかないように敵を引きつける。
鈴香、夜月が前に出たことで植物雑魔は彼らへとメインに襲い掛かり、枝を大きく振るい、伸ばした蔓草でハンター達の体を締め上げてきた。
智里は魔導機式抜刀剣「白雪」を媒体に、前に立つメンバーへとマテリアルをエネルギーとして流入し、防御力を順に高めながらエルフの少女らへ呼びかける。
「あちらこちらの敵を狙わず、前衛さんを抜けてきそうな敵優先でいいんじゃないでしょうか」
敵の侵攻自体はそれほど速くはない。ただ、メンバーと体長がそれほど変わらぬこともあり、前方を抜けてこようとする雑魔もいる。
「今だ」
夜月の真横を通り抜ける敵を見た桃之枝は、手にする符「花吹雪」に炎の精霊力を付与して投げ飛ばす。
その合図に合わせてエナも炎の符を飛ばし、マナリィは燃える矢を撃ち、次々に雑魔へとぶつけていく。
逆サイドでは、サクヤとタッドが鈴香の脇をすり抜けようとする雑魔を相手取る。
後方と言えぬまでも、敵から距離を取っていたサクヤ達。縁を鋭く尖らせた赤い金属製の札にマテリアルを込めてサクヤが投げ飛ばすと、それを胴体に受けた雑魔が手足となる蔓草をジタバタと振るって苦しむ。
最も突出する形となっていたそいつへ鈴音が追って切りかかるが、悠吏が荒々しい態度で攻め入る。
「依頼は初めてでも、狩りの仕方は知っているよ」
仄かに赤みがかった刀身の小太刀「烈火」を叩きつける悠吏へ、雑魔は素早く蔓草を伸ばす。
それに貫かれた彼はやや顔を引きつらせながらも、敵の脇を狙うように、小太刀で再び力強く殴打する。
その植物雑魔はぼとりと糸が切れたように地面に落ち、この場から消え去っていく。
「本気になれば、このくらい……」
事も無げに言い放った悠吏は次なる敵を見定め、強く踏み込んでいくのだった。
前に出てくるのは植物雑魔だけではない。大木雑魔もまた近づき、広範囲にエッジの利いた木の葉を降らせてハンター達の体を刻まんとする。
夜月も投擲による牽制から近接攻撃へと切り替え、後ろからスキルを飛ばす仲間の射線を遮らぬように雑魔の側面に陣取り、敵の注意を引きつけていた。
乱雑に一房に纏められた長髪を揺らし、夜月は太刀「螺旋丸」で植物雑魔の体を斬って、斬って斬って斬り伏せんと刃を振るう。
その夜月を、植物雑魔2体、そして、大木雑魔がほぼ同時に狙う。
「させないよ」
状況を察した桃之枝が符を光り輝く鳥の姿に変えて投げつけ、大木の枝を受け止めさせる。
その上で、彼女はまたも炎の符を構え、エルフ達とまたも植物雑魔へ炎を飛ばす。
敵の体力はさほど高くない。ならば、エルフ達と対象を分散して攻撃もと考えるが、味方が多数の敵に絡まれているなら話は別だ。
悠吏もそちらへと加勢し、敵の後方から切り込む。
そこで、悠吏へと絡んでくる蔓草。彼は腕を自由にする為、敢えて胴でそれを受け止めてから、その蔓草を切り払う。
身体の一部を失って体勢を崩しかけたところで、サクヤが素早く迫る。身体にマテリアルを潤滑させた彼女は、ウィップ「エスプランドル」でそいつの全身を打ち据えて撃破してしまった。
しかし、植物雑魔はまだいる。サクヤは次の攻撃が来る前に、その場から飛びのいて距離を取った。
「……疾影士は一撃の重さで勝負するクラスじゃないからね。動き回って敵を翻弄しつつ的確にダメージを与えていくのが基本スタイルだと思うよ」
普段、少女2人をぐいぐいと引っ張っているであろう、エルフの少年タッド。そんな彼は戦いながらも、流れるような動きで戦うサクヤに見とれていて。
「だから、自分のスタイルが確立するまでは基本スタイルで戦えば、間違いないと思う」
「あ、うん……」
タッドも同じように、今なお暴れる植物雑魔へと駆け寄り、短剣を見舞っていく。
その後もハンター達は攻撃を繰り返し、雑魔達を攻め立てる。
前線メンバーは上手く敵を引きつけてくれているので、智里は安心して彼らの防御を高めていた。
「それじゃ、私も行きますよ」
手にする「白雪」を通して、高まるエネルギー。智里はそれを一筋の光となして植物雑魔へと放射していく。智里も戦況を見定め仲間を援護していたのだ。
そして、前線で戦っていた鈴香は、その光を受けて崩れかけた敵へ、身体を捻らせながらも「骨喰」で植物雑魔の胴体を断ち切る。
一方で、夜月の相手にする雑魔も、四肢の蔓草をヘたらせてきていた。
エナ、マナリィが飛ばす炎に合わせ、術の精度を高める符を使用した桃之枝が燃える符を投擲する。
命中した植物雑魔は一瞬大きく燃え上がり、塵すら残すことなく森から消え去っていった。
残る大木雑魔1体のみ。
前線で暴れるそいつが振るう太い枝は、新人ハンター達には重い一撃だ。しかも、それを避けようとすれば、根を触手のように変化させ脚を狙って絡めとってくるから厄介だ。
しかしながら、減り行く植物雑魔の数もあり、大木雑魔も徐々に焦りを見せていた。
前線で抑える鈴香、夜月のスタンスは変わらず。
傷が深くなっていたこともあり、鈴香は自身を暖かな光に包んで自らの体力を回復させる。その上で、彼女はその幹を斬る。乾いた音が森に鳴り響いた。
夜月も猛攻を仕掛ける。できるだけ敵の側面や背後で敵を抑えつつ太刀で猛攻を行う。斬ることのできる状況であれば、それを逃す理由などないのだ。
悠吏も果敢に敵へと攻め立てていた。鈴香と同様に自らの体力を回復させつつ、夜月と上手く立ち位置を替えて敵の枝を小太刀で切り払う。
そんな前線メンバーに当たらないように、智里は4m近くある敵の上部、枝葉目掛けて機導砲を発射する。
続けざまに、炎の符を発射する桃之枝。ここまでくれば、集中攻撃あるのみ。残るスキルを全てぶつけていくのみだ。
「負けられない……」
「雑魔の、好きにはさせないの」
マナリィもエナも、ありったけの力を雑魔にぶつける。
「あんな奴に負けていられるか!」
タッドが飛び出し、敵の正面から短剣を深く突き刺す。
彼を狙って大木雑魔が根を伸ばしてきたところへ、飛び込んだ昨夜が白色の鞭で敵の体を強かに打ち払う。強烈な一打に、大木がついに揺らいだ。
「これで終わりね」
倒れる間、痛みの為か、じたばたと暴れ狂う大木雑魔。
そいつは地響きを立てつつその身体を地面に横たえ、その身を黒い霧のように散らしていったのだった。
●
雑魔を全て討伐した一行。
周りを見回した鈴香は、忘れ物がないかと確認してから自らの馬に跨る。
「長居は無用よ、早く引き上げましょう」
同意するエルフやハンターが撤退の準備を整える中、智里は大穴を見つめる。
「あの中に敵がいるって言われると、確かに気になりますけど……。私達じゃ倒せないほどの敵だっていうことも、分かっているんですよね?」
「……まだまだ大穴の内部の捜索は進んでいないみたいだし、ここは指示通り離脱が賢いと思うな」
サクヤの意見に皆、同意する。それを聞いた智里は気にする素振りを見せつつも、大穴から距離を取った。
「ホラー映画の1人目になる迷惑はかけられませんからね」
「ほらーえいが……?」
とはいえ、智里は後ろ髪を引かれる思いで、この場から離脱していく。エルフの少女達は、彼女の言葉が気になっていた様子だった。
少しして、大穴から距離を取った場所で一息つくメンバー達。
「皆さん、大事には至っていないようですね」
悠吏は皆の状態を見て、深手を負った者がいないことを確認する。若いエルフ達も無事に仕事を追え、笑みすら浮かべていた。
後は熟練ハンターの仕事なのだろう。ともあれ、順当に雑魔の討伐を完了したハンター達は、大手を振って集落へと戻っていくのだった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/10 08:04:45 |
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相談卓 サクヤ・フレイヤ(ka5356) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/05/12 12:35:17 |