ゲスト
(ka0000)
【血盟】百年旅~故郷からの呼び声
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/15 19:00
- 完成日
- 2017/05/26 02:42
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
同盟領は農業推進地「ジェオルジ」のとある村で。
――どさっ、びちびちっ。
「え?」
晴れ渡った空の下、水汲みから戻った娘が誰もいないはずの背後から突然聞こえた異音に振り返っていた。
見ると道のわだちに一匹の魚が跳ねているではないか。
彼女が通った時にはいなかった。もちろん、彼女が重そうに両手で提げて運んでいた水桶に入っていたわけでもない。
突然現れたのだ。
しかもこの魚、虹色に輝いている。
「な、何?」
「おおい、無事かぁ?」
面妖な事態にたじろいだところ、近くで農作業をしていた男が慌てて近寄った。
「無事……ですけど」
「いや、さっき空の上にいた鳥があんた目掛けて何かを落としたから」
狙ってこの魚を離したように見えたらしい。もうその鳥は森の方へ飛び去った後だが。
「ああ、それで……え?」
一応、理由が分かって安心した娘だが再び目を見開いた。
魚の輝きが増したのだ。
そしてとんでもないことが起こる!
『里を助けてほしい』
びちびちっ、と魚は激しく乾いた地面で跳ねながらそんなことを言った。これには駆けつけた男も一瞬身を引く。ただ、とても清らかな声だったので逃げ出すことはなかった。
『里を助けてやってくれ』
びちびち、と魚は変わらず繰り返す。
ただ、ぱくぱくする魚の口と発音が合わない。魚がしゃべっているわけではないかもしれない。
「里と言われても……」
『それと、この魚に水を』
「あ。はい、ただいま」
娘、慌てて自らの持つ水桶に魚を入れてやる。魚はすいと元気に泳ぎだした。
そしてまた言葉が響いてくる。
『里を、助けてほしい……』
これを最後に魚は虹色の光を失い、二度としゃべらなかった。
はっきりしているのは、娘はもう一度水汲みに行かねばならないということくらいだろうか。
その後、同じ事件が相次いだ。
村長宅の池には村人から持ち寄られた、空から降ってきた魚が増えていくばかりだ。
「精霊の仕業に違いない」
「鳥は森の奥から来とる。人里はないが、例の闇商人がたまに取引に行くエルフの隠れ里じゃろう」
「二年前じゃったか、あの森に隠遁しとった隠者がエルフの娘を連れてきたことがあったはず」
村長ら村の顔役たちの出した結論である。
「すぐにベンド商会とジル・コバルトに連絡せにゃあ!」
●
というわけで、ジル・コバルトの耳に入る。
「やれやれ、ずっと不安ではあったがの……」
ジル、観念したように天を仰いで息を吐いた。伝えに来たジルの資金管理などをする青年はすでに辞している。
そんな、ジルが佇み紅茶だけが冷えゆく居間にフラ・キャンディ(kz0121)が入って来た
「ジルさん、その……いつもボクのこと見守ってくれて、ありがとう。これまで二年間の感謝の印だよ」
フラ、もじもじと背後に隠していた両手を差し出し、リボンで飾ったパイプを手渡した。
「おお、気にせんでも……いや、フラは優しいの。そういえば最近こっそり何かしてたようじゃから、もしかしてこのパイプは……」
「うんっ。ボクが作ったんだ♪」
得意そうなフラ。
ジルが受け取りリボンを外して隅々までじっくり確認するとボウルの下に「♭」のマークがついていた。
「ボクの故郷で造ってる人から教わったんだ。たまに闇の商人さんが来てたくさん買い込んでいくから、きっとお金になるってみっちり教え込まれたんだよ」
「ありがとう、今日から早速使わせてもらおうかの。それにしても……もうあれから二年か」
しみじみとつぶやいた後、口調を変えた。
「フラ、実はな?」
ジル、先に聞いたばかりの情報をゆっくりと話し出した。
「ボクの里だよ!」
ジルから話を聞いたフラ・キャンディが、がたと立ち上がる。
「残念ながら、間違いないじゃろう。フラのやってきた方向と、ルモーレの骸骨歪虚の侵攻してきた方向がほぼ一緒じゃったからの」
ジル、フラからもらったばかりのパイプをくゆらせながらため息を吐く。
「すぐ助けに行こう! ううん、ボク一人でも……」
「待て。『百年目のエルフ』としての掟を破るのか?」
「う……」
フラ、青い顔をして立ち尽くす。
それにほっとするジル。
「ほれ、キャンディをなめて落ち着くといい。……みんなを呼ぼう。みんなに助けてもらうんじゃ。フラは……村には入れんかもしれんが近くまでなら掟破りにはなるまい?」
「う、うん。うん……お願い。ボクの里を守って!」
キャンディで頬を膨らせ落ち着いたところに優しい言葉。フラ、ジルに抱きついて顔を見上げ泣きじゃくるのだった。
というわけでフラの故郷、エルフの小さな隠れ里「♭(フラット)」に向かい、おそらくいるであろう堕落者「ルモーレ」の軍勢と戦ってくれる人、求ム。
同盟領は農業推進地「ジェオルジ」のとある村で。
――どさっ、びちびちっ。
「え?」
晴れ渡った空の下、水汲みから戻った娘が誰もいないはずの背後から突然聞こえた異音に振り返っていた。
見ると道のわだちに一匹の魚が跳ねているではないか。
彼女が通った時にはいなかった。もちろん、彼女が重そうに両手で提げて運んでいた水桶に入っていたわけでもない。
突然現れたのだ。
しかもこの魚、虹色に輝いている。
「な、何?」
「おおい、無事かぁ?」
面妖な事態にたじろいだところ、近くで農作業をしていた男が慌てて近寄った。
「無事……ですけど」
「いや、さっき空の上にいた鳥があんた目掛けて何かを落としたから」
狙ってこの魚を離したように見えたらしい。もうその鳥は森の方へ飛び去った後だが。
「ああ、それで……え?」
一応、理由が分かって安心した娘だが再び目を見開いた。
魚の輝きが増したのだ。
そしてとんでもないことが起こる!
『里を助けてほしい』
びちびちっ、と魚は激しく乾いた地面で跳ねながらそんなことを言った。これには駆けつけた男も一瞬身を引く。ただ、とても清らかな声だったので逃げ出すことはなかった。
『里を助けてやってくれ』
びちびち、と魚は変わらず繰り返す。
ただ、ぱくぱくする魚の口と発音が合わない。魚がしゃべっているわけではないかもしれない。
「里と言われても……」
『それと、この魚に水を』
「あ。はい、ただいま」
娘、慌てて自らの持つ水桶に魚を入れてやる。魚はすいと元気に泳ぎだした。
そしてまた言葉が響いてくる。
『里を、助けてほしい……』
これを最後に魚は虹色の光を失い、二度としゃべらなかった。
はっきりしているのは、娘はもう一度水汲みに行かねばならないということくらいだろうか。
その後、同じ事件が相次いだ。
村長宅の池には村人から持ち寄られた、空から降ってきた魚が増えていくばかりだ。
「精霊の仕業に違いない」
「鳥は森の奥から来とる。人里はないが、例の闇商人がたまに取引に行くエルフの隠れ里じゃろう」
「二年前じゃったか、あの森に隠遁しとった隠者がエルフの娘を連れてきたことがあったはず」
村長ら村の顔役たちの出した結論である。
「すぐにベンド商会とジル・コバルトに連絡せにゃあ!」
●
というわけで、ジル・コバルトの耳に入る。
「やれやれ、ずっと不安ではあったがの……」
ジル、観念したように天を仰いで息を吐いた。伝えに来たジルの資金管理などをする青年はすでに辞している。
そんな、ジルが佇み紅茶だけが冷えゆく居間にフラ・キャンディ(kz0121)が入って来た
「ジルさん、その……いつもボクのこと見守ってくれて、ありがとう。これまで二年間の感謝の印だよ」
フラ、もじもじと背後に隠していた両手を差し出し、リボンで飾ったパイプを手渡した。
「おお、気にせんでも……いや、フラは優しいの。そういえば最近こっそり何かしてたようじゃから、もしかしてこのパイプは……」
「うんっ。ボクが作ったんだ♪」
得意そうなフラ。
ジルが受け取りリボンを外して隅々までじっくり確認するとボウルの下に「♭」のマークがついていた。
「ボクの故郷で造ってる人から教わったんだ。たまに闇の商人さんが来てたくさん買い込んでいくから、きっとお金になるってみっちり教え込まれたんだよ」
「ありがとう、今日から早速使わせてもらおうかの。それにしても……もうあれから二年か」
しみじみとつぶやいた後、口調を変えた。
「フラ、実はな?」
ジル、先に聞いたばかりの情報をゆっくりと話し出した。
「ボクの里だよ!」
ジルから話を聞いたフラ・キャンディが、がたと立ち上がる。
「残念ながら、間違いないじゃろう。フラのやってきた方向と、ルモーレの骸骨歪虚の侵攻してきた方向がほぼ一緒じゃったからの」
ジル、フラからもらったばかりのパイプをくゆらせながらため息を吐く。
「すぐ助けに行こう! ううん、ボク一人でも……」
「待て。『百年目のエルフ』としての掟を破るのか?」
「う……」
フラ、青い顔をして立ち尽くす。
それにほっとするジル。
「ほれ、キャンディをなめて落ち着くといい。……みんなを呼ぼう。みんなに助けてもらうんじゃ。フラは……村には入れんかもしれんが近くまでなら掟破りにはなるまい?」
「う、うん。うん……お願い。ボクの里を守って!」
キャンディで頬を膨らせ落ち着いたところに優しい言葉。フラ、ジルに抱きついて顔を見上げ泣きじゃくるのだった。
というわけでフラの故郷、エルフの小さな隠れ里「♭(フラット)」に向かい、おそらくいるであろう堕落者「ルモーレ」の軍勢と戦ってくれる人、求ム。
リプレイ本文
●
「そう言えばフラさん……色々あって旅に出ることになったんだっけ?」
森の中での休憩中、霧雨 悠月(ka4130)がフラ・キャンディ(kz0121)に聞いてみた。
「結構付き合いが長いけど、そういえば僕は詳しく聞いたことはなかったかも」
「ま、エルフだからねー。いろいろあるんじゃない?」
「あ……、その、ええと、ですね……」
エルフのキーリ(ka4642)がため息交じりにぽそり。弓月・小太(ka4679)はわたわたとフラを思いやる。
「村が小さくて血統が飽和するから百年くらいたって生まれた子は『百年目のエルフ』として旅に出さなくちゃならないらしいんだ」
フラ、特に感情的になることもなく「血が濃くなりすぎるんだって」などと説明する。
「……納得してるのか、フラ?」
気になって柊 恭也(ka0711)が念を押した。
「うん。……そりゃお母さんやお父さんと離れ離れになるからりたくさん泣いたけど、栄誉ある村の代表だって教えられたんだ。村のためになるんだからボクが頑張らなくちゃ」
「ほかに方法があるような気もするがねぇ……」
トリプルJ(ka6653)が不満そうに呟いている。
「あはは。まあ旅を続けるのも楽しいよねー」
僕も似たようなものだけど何せいろんな楽しいことがあるし、とラン・ヴィンダールヴ(ka0109)がお気楽に。なお、彼の場合はフラとはちょっと違うのは内緒である。
「私も似たようなものかもしれませんが見聞を広めるのは良いことです」
エルフの夜桜 奏音(ka5754)がランの話に頷く。なお彼女の場合、放蕩なランよりもフラのほうに近かったりする。
「ありがとう。……ボクの村って、大きな滝を取り囲む岸壁にあるんだ。とっても涼しい場所で……旅に出た時、外はこんなに暑いんだって思ったんだよ。ほかにはええと……そうそう。旅に出るんだからといろいろ教えてもらって訓練されたんだ」
「だ、だからフラさん……」
小太、フラが薄着好きである理由が分かり赤くなっている。
「ほう? そうか……」
それまで黙っていた不動シオン(ka5395)は、幼い時から訓練、というところにだけ反応したが、それきりそれまで同様に押し黙った。
「……故郷が襲われているとなったら、行かないわけにはいかないね」
悠月、優しく言ってフラを見詰める。ありがとう、とフラの瞳。
あるいは悠月、黒い髪と白い肌を受け継いだ自分はどうだろう、との思いもあったかもしれない。
「滝……か」
ここで恭也が改めて呟いた。
「なあ、隠れ里へ進入するルートが他にないか?」
「あは。恭也さんが思った通り、下流がまた隠れるように滝になってるけど……」
フラ、右手を絶壁のように立てて左指で差した点を上から下に動かす。
「外敵防止にたくさん罠があるんだ」
「岩登りに脆弱な部分を作っておく、あたりか……えぐいな」
「しっかし、ルモーレもヒマね~」
ここでキーリが話題を変える。
「そうだな。わざわざフマーレで騒ぎを起こし、警戒されてる最中に行うかね」
恭也も話題に乗った。
ここで初めて、フラが悲しそうな様子を見せた。
「いつもならいま来てるこの道、手入れしてあるんだ。それがここまでひどく荒れてるってことは……」
「下手すりゃ一年以上前に、ってことか」
フラの代わりにJが呟いた。ため息交じりにやれやれ。
「楽しいピクニックといきそうにはないなぁ」
恭也のぼやきが皆の心中でもあろう。
●
それでも道中、キーリが楽しくおしゃべり。
「それにしても滝にある垂直の村って面白くて珍しいわね。なんだか貴重なアイテムがありそうな感じー」
「確かに興味はある。……垂直の村の方にな」
無口なシオンもその点には同意のようで。
「集落に精霊が宿っている……とても親近感がわきます」
奏音はシオンとは別の方にうっとり。
「フラっち、そのへんどうなのよ? ユッキーも小太んも何か知ってんじゃないの?」
「えっと……フラさん?」
キーリが呼び掛けたところで先頭を行ってた悠月が立ち止まってフラに聞いた。
「あそこが村への入口?」
「あー、ありゃ駄目だな。敵の数が多すぎるし……」
悠月が確認したのも無理はない。恭也の言う通り切り立った岸壁にある洞窟入り口の前に泥人形っぽい兵士と岩人形っぽい兵士がたむろしているのだから。
「アレ何? ゴーレムに見えるけど?」
「……少なくとも里の護衛じゃないよ」
キーリも思わずフラに振り向き「はいてくねー」とか。フラ、絶望の眼差し。明らかに敵のようで。キーリ、ごめんごめんとフラの頭をぽふり。
それだけではない。
「ぬりかべみたいなものまで……しっかり防御を固めて来ていますねぇ」
「結構厳しいな、オイ……」
小太の言う通り岩壁ともいうべき存在もいる。完全に門番として集まっているという感じでJの表情も難しくなる。
幸い、敵はまだ森の中のこちらに気付いていない。
森から岩壁まで木々はなく、歪虚は洞窟入り口に固まっているが塞いではいない。
彼我の戦力差は敵二十数体に対し味方九人。数的には圧倒的不利。
「んー、……予定外だけど、どうしよーかなー?」
「条件が悪いな。まあいい、それはそれで面白いゲームができるからな」
どうしようという割に誘うように聞くラン。シオンもオートマチックの装弾数を確認している。
やる気満々だ。
「ここまで来たんです。ひとまず敵を減らすとしましょう」
ね?とフラを見る奏音。
「そりゃもちろん……」
「もしかしたらあれもルモーレの兵なのかもしれない。倒して調べてみよう」
感情的なフラに少し遅れて悠月の冷静な指摘。
「ルモーレ?」
この一言で因縁のある者たちが振り返った。
完全に意思統一ができた瞬間だ。
「……速攻で倒せるとよいのですがぁ」
「そうだな。時間稼ぎされて洞窟破壊されるとクッソ面倒な事になる」
小太の懸念と恭也の意見で今回は威力偵察までが共有された。これまでルモーレは二度追い詰めたが逃げられている。今回は袋のネズミかもしれないが、逆に恭也の言う事態になる可能性がある。
「よし」
「あはは、細かいことは任せたよ~」
「すぐ行かなくちゃ!」
即座にシオン、ラン、フラが動いた。突撃だ!
「おい、誰か!」
「フラさん、あまり無茶はしないでくださいねぇ? 僕も今回は一緒に前で戦いますよぉっ」
小さいフラが行ったことに驚く恭介。ここは恋人の小太がしっかりと続いてエスコート。
「心配しないで。余程手強い敵でなければ、こちらが有利のはず」
続いて最近そう戦う形が多いように、二列目として続く悠月が恭也に頷き前を追い掛ける。その瞳は揺るぎのない、相手を安心させるものだった。
もちろん、根拠は明らかだ。
「ま、味方が意表を突かれるような急襲だからな」
そう言う恭也は枯れ葉模様のマントをひっ被り右に開く。擬態マントの効果たるや、木々に消えるの表現に近い。
時は若干遡り、恭也の動く前。
その横でJ。
「いいか、相棒? お前は俺様が戦闘中に見つからないようこっそり上に上がるんだ。村の見える位置まで。撤退直前に口笛吹くからよ」
何やら連れて来たパルムに秘策を伝えて頭をわしわし可愛がってやっている。始動が遅れたはこのためだ。
ただし!
ペットのパルムは基本的に知能は高くない。
ふわっと浮くと……好奇心の赴くままに洞窟入り口の方に回り込んでいったぞ?
「だああっ! そっちじゃねぇ!」
J、遅れて突撃することに。
「街で露骨に騒ぎを起こしてた時は何か仕込んでるんだなって思ってたけど……案の定戦力整えてたのね」
その後ろではキーリがやれやれねー、と魔杖「スキールニル」でとんと地面を叩きつつ周囲の木々の茂り具合などを確認していた。
●
時は戻り、こちらは奏音。
「ひとまず敵を減らしましょう」
キーリが何をやっていたのかは気になったが、突撃した仲間の方へと集中する。
目の前の敵はさすがにこちらに気付き迎撃態勢を取ったぞ?
恭也とは逆に左に流れつつ森を出て視線を確保しつつ陰陽符「伊吹」を五枚ぴらっとエプロンドレスのボッケから取り出した。
「詩天は三条家ゆかりの符よ……」
掲げた符が紫色に輝く。
「五光の陣となれ!」
瞬く間に敵を囲む五芒星となり敵を囲むとまばゆい光を放った!
「……なるほど、視界を一瞬奪ったか」
突撃先頭のシオン、意図を理解。
こちらに気付いた敵が向かって来ないという賢い選択をしたため不意打ちの効果が弱まっていたと感じていたが、この好機を逃さず銃撃。一瞬止まった敵を撃ち牽制する。とりあえず、岩人形は一発で倒れるなどという弱さでないことは理解した。
「だが爆ぜてもらう」
シオン、そのまま突っ込み振動刀を渾身のダウンスイング!
――ガツッ、パーン……!
肩口に見事入り飛び散る岩に爆炎のような閃光。閃火爆砕の理ここにあり。
これが大乱戦の合図となった。
「あはは、花火がきれいだねー」
続いていたランも飛び込んだのはほぼ同時。こちらは泥人形を狙った。
「こっちも爆ぜてもらおうかなー」
身を沈めたラン、発現した白銀の毛並みの耳と尻尾が右に左にと派手に舞う。
ずばっ、ずばっと泥人形二体にサンガマの遺跡から発掘された豪奢な槍が力強く振るわれる。食いしん坊らしく――おっと、ここでは関係ないか――二体を狙ったワイルドラッシュ。一撃の重さも十分で一撃必殺! 光輝く何かを残してどさっと二体とも崩れ落ちる。
「お前ら、里から出ていけ!」
フラも到達。鬼気迫る勢いでウォーハンマーをぶち当て敵の身体の一部をぶっ散らかす。
が、体幹部分と四肢は無事。振りかぶった拳を食らってフラがすっ飛ばされる。
「そこっ、フラさんをイジメたら……」
その背後からぬっと出てきたのは、小太。エスコートなんだから前に出たかったがお転婆フラについて行くのがやっと。理由の一つでもある大きな試作振動刀「オートMURAMASA」を構えて……。
「許さないのですよぉ!」
身体ごと体当たりするように突くと同時に振動ぶいいいん……。
が、これでも踏みとどまった泥人形。小太も手ひどくぶっ飛ばす!
――バサッ!
「フラさん、遅れてごめん。小太さん、カッコよかったよ」
再び人影から姿を現す者が。
「ゆ、悠月さん……」
「け、剣ってあまり使ったことないですけどぉ」
悠月、日本刀「白狼」の袈裟斬りとともにただいま参上。
一体を切り捨て仁王立ちしつつ二人の無事を確かめると、新たに左右から寄って来た泥人形に横薙ぎ一閃、返す刀で踏み込みずばっ。狼の遠吠えのような唸りが響き渡る。
「フラさん?!」
倒れていた小太、次の反応は素晴らしい。
フラに襲い掛かっていた泥人形に気付き、今度はしっかり前に出てフラを守りつつ射撃。
「小太さん! こいつっ!」
今度は小太が殴られ激怒の一撃。
この様子を森から観察していたのは、恭也。
「ま、悪くない。中心から外れだしたな」
恭也、黒い銃身に紅色の荒縄が巻かれた魔導銃「雷紅」を構え、フラに援護射撃。これで泥人形は泥と化し地に落ち、残った光の球も泥の上に落ちた。
「ん?」
もちろんこれに気付く恭也だが、森に隠れた位置からでは確認しようがない。
一方、シオンが一発ぶちかました岩人形にはJが突っ込んでいた。
「遅れてすまねぇ!」
蹴りを一撃入れてからの旋棍「疾風迅雷」。ワイルドラッシュを食らわしていた。
●
序盤の乱戦からすぐに流れが変わったのは、敵に壁粘土がいたから。
――どしん、どしーん!
味方を守るように――特にシオンとラン、そしてJの前に――割って入り、泥人形たちもいったんこの背後に隠れた。
「次は壁かよ?」
「あはは、時間の無駄だよー」
Jとランがこの破壊に掛かろうとしたところ、背後から声がした。
「そこー、回復してるわよー」
キーリだ。
先ほど倒した泥人形が再び蘇っていたのだ。
「なるほど」
ちょうどシオン、Jの連撃した岩人形に止めを刺したところだった。
崩れた岩の中から小さな光体が現れたのだ。先にランが倒して蘇った粘土人形も、あとからこの光体が落ちていたことを目の端でとらえていた。
「からくりは分かった!」
ばさっ、と振動刀で刀の錆びに。さすがにこれは一撃で済む。岩人形の欠片はこれで復活の兆しもなくなった。
一方、蘇った泥人形はキーリのウインドカッターとランとJのラッシュで再び消滅。今度は光体も斬る。
「壁の後ろで新たな動きです! ……きゃっ!」
横に回っていた奏音、投げ上げた符三枚を三つの雷として三体を穿つ。ただ敵も体の一部を投げて遠距離戦に。
「こちらは通さん!」
シオン、刺突一閃からの薙ぎ払いで左翼の敵をまとめてたたっ斬る。が、光対までは手は回らない。
「こっちは大丈夫」
「小太さん、援護お願い」
「ま、任せてですよ……」
悠月、右翼へ回りつつ獅子奮迅の働き。フラがこぼれた敵を倒し、小太の射撃が光体を撃つ。
「ん?」
そして、いち早く気付いたのは全体を見渡している恭也だった。
――ひゅんひゅん……。
突然、右手からナイフの嵐が目の前の味方を襲った。
「新手だ……おわっ!」
なりふり構わず叫んだところ、同じくナイフの嵐を食らった。
見ると、森から細マッチョの黒い服に白い肌の男が泥人形と従え登場していた。
――ひゅん……。
壁を壊したラン、一気にその前に行き殴り……おっと。ぱしっと手の平で止めらめた。
「いやー。久しぶりだねー? あはは」
「カカカ、挨拶とは酔狂だな?」
ラン、槍は右手で左手で殴っていた。ルモーレはパイプを左手に、右手で拳を止めていた。
「あそこの里はどうしたの?」
「途中にあったから全滅さ。一年前半前にな?」
ストレートに聞くラン。当然だろう、とルモーレ。
「あっ、そのパイプ。……許さないッ!」
「フラさん!」
「はーい!総員撤退ー! さっさと逃げんぞー!」
冷静さを失ったフラを小太が抱き着いて止めた。これを見てこれ以上はまずいと恭也。
「面白いものを見せてやろう。カカカ」
何かしてくる、と感じてばっと離れるラン。
ルモーレ、パイプから灰を落とした。
それが地に落ちると見る見る泥人形が誕生した。
「んー、ここまでかな?」
ランもここで撤収した。
「紹介するわ私の「ぬりかべ」よ」
「大丈夫だと思いますが、一応設置しておくとしましょう」
撤収に成功したのはキーリが事前にチェックしておいた場所にアースウォールのおかげだった。
そして敵の追撃の手が広がらなかったのは、奏音の地縛符の影響もあったから。
なお、Jのパルムは激しい戦闘を避け洞窟入り口には到達せず。浮かびもしたが村が見えるほど高度も取れなかったようで。
「いいぞ。もうひと押し」
後日、森近くの村に再び魚が降り、この言葉とイクシード・プライムが届いた。
ハンターたちの手に無事に渡ることになる。
「そう言えばフラさん……色々あって旅に出ることになったんだっけ?」
森の中での休憩中、霧雨 悠月(ka4130)がフラ・キャンディ(kz0121)に聞いてみた。
「結構付き合いが長いけど、そういえば僕は詳しく聞いたことはなかったかも」
「ま、エルフだからねー。いろいろあるんじゃない?」
「あ……、その、ええと、ですね……」
エルフのキーリ(ka4642)がため息交じりにぽそり。弓月・小太(ka4679)はわたわたとフラを思いやる。
「村が小さくて血統が飽和するから百年くらいたって生まれた子は『百年目のエルフ』として旅に出さなくちゃならないらしいんだ」
フラ、特に感情的になることもなく「血が濃くなりすぎるんだって」などと説明する。
「……納得してるのか、フラ?」
気になって柊 恭也(ka0711)が念を押した。
「うん。……そりゃお母さんやお父さんと離れ離れになるからりたくさん泣いたけど、栄誉ある村の代表だって教えられたんだ。村のためになるんだからボクが頑張らなくちゃ」
「ほかに方法があるような気もするがねぇ……」
トリプルJ(ka6653)が不満そうに呟いている。
「あはは。まあ旅を続けるのも楽しいよねー」
僕も似たようなものだけど何せいろんな楽しいことがあるし、とラン・ヴィンダールヴ(ka0109)がお気楽に。なお、彼の場合はフラとはちょっと違うのは内緒である。
「私も似たようなものかもしれませんが見聞を広めるのは良いことです」
エルフの夜桜 奏音(ka5754)がランの話に頷く。なお彼女の場合、放蕩なランよりもフラのほうに近かったりする。
「ありがとう。……ボクの村って、大きな滝を取り囲む岸壁にあるんだ。とっても涼しい場所で……旅に出た時、外はこんなに暑いんだって思ったんだよ。ほかにはええと……そうそう。旅に出るんだからといろいろ教えてもらって訓練されたんだ」
「だ、だからフラさん……」
小太、フラが薄着好きである理由が分かり赤くなっている。
「ほう? そうか……」
それまで黙っていた不動シオン(ka5395)は、幼い時から訓練、というところにだけ反応したが、それきりそれまで同様に押し黙った。
「……故郷が襲われているとなったら、行かないわけにはいかないね」
悠月、優しく言ってフラを見詰める。ありがとう、とフラの瞳。
あるいは悠月、黒い髪と白い肌を受け継いだ自分はどうだろう、との思いもあったかもしれない。
「滝……か」
ここで恭也が改めて呟いた。
「なあ、隠れ里へ進入するルートが他にないか?」
「あは。恭也さんが思った通り、下流がまた隠れるように滝になってるけど……」
フラ、右手を絶壁のように立てて左指で差した点を上から下に動かす。
「外敵防止にたくさん罠があるんだ」
「岩登りに脆弱な部分を作っておく、あたりか……えぐいな」
「しっかし、ルモーレもヒマね~」
ここでキーリが話題を変える。
「そうだな。わざわざフマーレで騒ぎを起こし、警戒されてる最中に行うかね」
恭也も話題に乗った。
ここで初めて、フラが悲しそうな様子を見せた。
「いつもならいま来てるこの道、手入れしてあるんだ。それがここまでひどく荒れてるってことは……」
「下手すりゃ一年以上前に、ってことか」
フラの代わりにJが呟いた。ため息交じりにやれやれ。
「楽しいピクニックといきそうにはないなぁ」
恭也のぼやきが皆の心中でもあろう。
●
それでも道中、キーリが楽しくおしゃべり。
「それにしても滝にある垂直の村って面白くて珍しいわね。なんだか貴重なアイテムがありそうな感じー」
「確かに興味はある。……垂直の村の方にな」
無口なシオンもその点には同意のようで。
「集落に精霊が宿っている……とても親近感がわきます」
奏音はシオンとは別の方にうっとり。
「フラっち、そのへんどうなのよ? ユッキーも小太んも何か知ってんじゃないの?」
「えっと……フラさん?」
キーリが呼び掛けたところで先頭を行ってた悠月が立ち止まってフラに聞いた。
「あそこが村への入口?」
「あー、ありゃ駄目だな。敵の数が多すぎるし……」
悠月が確認したのも無理はない。恭也の言う通り切り立った岸壁にある洞窟入り口の前に泥人形っぽい兵士と岩人形っぽい兵士がたむろしているのだから。
「アレ何? ゴーレムに見えるけど?」
「……少なくとも里の護衛じゃないよ」
キーリも思わずフラに振り向き「はいてくねー」とか。フラ、絶望の眼差し。明らかに敵のようで。キーリ、ごめんごめんとフラの頭をぽふり。
それだけではない。
「ぬりかべみたいなものまで……しっかり防御を固めて来ていますねぇ」
「結構厳しいな、オイ……」
小太の言う通り岩壁ともいうべき存在もいる。完全に門番として集まっているという感じでJの表情も難しくなる。
幸い、敵はまだ森の中のこちらに気付いていない。
森から岩壁まで木々はなく、歪虚は洞窟入り口に固まっているが塞いではいない。
彼我の戦力差は敵二十数体に対し味方九人。数的には圧倒的不利。
「んー、……予定外だけど、どうしよーかなー?」
「条件が悪いな。まあいい、それはそれで面白いゲームができるからな」
どうしようという割に誘うように聞くラン。シオンもオートマチックの装弾数を確認している。
やる気満々だ。
「ここまで来たんです。ひとまず敵を減らすとしましょう」
ね?とフラを見る奏音。
「そりゃもちろん……」
「もしかしたらあれもルモーレの兵なのかもしれない。倒して調べてみよう」
感情的なフラに少し遅れて悠月の冷静な指摘。
「ルモーレ?」
この一言で因縁のある者たちが振り返った。
完全に意思統一ができた瞬間だ。
「……速攻で倒せるとよいのですがぁ」
「そうだな。時間稼ぎされて洞窟破壊されるとクッソ面倒な事になる」
小太の懸念と恭也の意見で今回は威力偵察までが共有された。これまでルモーレは二度追い詰めたが逃げられている。今回は袋のネズミかもしれないが、逆に恭也の言う事態になる可能性がある。
「よし」
「あはは、細かいことは任せたよ~」
「すぐ行かなくちゃ!」
即座にシオン、ラン、フラが動いた。突撃だ!
「おい、誰か!」
「フラさん、あまり無茶はしないでくださいねぇ? 僕も今回は一緒に前で戦いますよぉっ」
小さいフラが行ったことに驚く恭介。ここは恋人の小太がしっかりと続いてエスコート。
「心配しないで。余程手強い敵でなければ、こちらが有利のはず」
続いて最近そう戦う形が多いように、二列目として続く悠月が恭也に頷き前を追い掛ける。その瞳は揺るぎのない、相手を安心させるものだった。
もちろん、根拠は明らかだ。
「ま、味方が意表を突かれるような急襲だからな」
そう言う恭也は枯れ葉模様のマントをひっ被り右に開く。擬態マントの効果たるや、木々に消えるの表現に近い。
時は若干遡り、恭也の動く前。
その横でJ。
「いいか、相棒? お前は俺様が戦闘中に見つからないようこっそり上に上がるんだ。村の見える位置まで。撤退直前に口笛吹くからよ」
何やら連れて来たパルムに秘策を伝えて頭をわしわし可愛がってやっている。始動が遅れたはこのためだ。
ただし!
ペットのパルムは基本的に知能は高くない。
ふわっと浮くと……好奇心の赴くままに洞窟入り口の方に回り込んでいったぞ?
「だああっ! そっちじゃねぇ!」
J、遅れて突撃することに。
「街で露骨に騒ぎを起こしてた時は何か仕込んでるんだなって思ってたけど……案の定戦力整えてたのね」
その後ろではキーリがやれやれねー、と魔杖「スキールニル」でとんと地面を叩きつつ周囲の木々の茂り具合などを確認していた。
●
時は戻り、こちらは奏音。
「ひとまず敵を減らしましょう」
キーリが何をやっていたのかは気になったが、突撃した仲間の方へと集中する。
目の前の敵はさすがにこちらに気付き迎撃態勢を取ったぞ?
恭也とは逆に左に流れつつ森を出て視線を確保しつつ陰陽符「伊吹」を五枚ぴらっとエプロンドレスのボッケから取り出した。
「詩天は三条家ゆかりの符よ……」
掲げた符が紫色に輝く。
「五光の陣となれ!」
瞬く間に敵を囲む五芒星となり敵を囲むとまばゆい光を放った!
「……なるほど、視界を一瞬奪ったか」
突撃先頭のシオン、意図を理解。
こちらに気付いた敵が向かって来ないという賢い選択をしたため不意打ちの効果が弱まっていたと感じていたが、この好機を逃さず銃撃。一瞬止まった敵を撃ち牽制する。とりあえず、岩人形は一発で倒れるなどという弱さでないことは理解した。
「だが爆ぜてもらう」
シオン、そのまま突っ込み振動刀を渾身のダウンスイング!
――ガツッ、パーン……!
肩口に見事入り飛び散る岩に爆炎のような閃光。閃火爆砕の理ここにあり。
これが大乱戦の合図となった。
「あはは、花火がきれいだねー」
続いていたランも飛び込んだのはほぼ同時。こちらは泥人形を狙った。
「こっちも爆ぜてもらおうかなー」
身を沈めたラン、発現した白銀の毛並みの耳と尻尾が右に左にと派手に舞う。
ずばっ、ずばっと泥人形二体にサンガマの遺跡から発掘された豪奢な槍が力強く振るわれる。食いしん坊らしく――おっと、ここでは関係ないか――二体を狙ったワイルドラッシュ。一撃の重さも十分で一撃必殺! 光輝く何かを残してどさっと二体とも崩れ落ちる。
「お前ら、里から出ていけ!」
フラも到達。鬼気迫る勢いでウォーハンマーをぶち当て敵の身体の一部をぶっ散らかす。
が、体幹部分と四肢は無事。振りかぶった拳を食らってフラがすっ飛ばされる。
「そこっ、フラさんをイジメたら……」
その背後からぬっと出てきたのは、小太。エスコートなんだから前に出たかったがお転婆フラについて行くのがやっと。理由の一つでもある大きな試作振動刀「オートMURAMASA」を構えて……。
「許さないのですよぉ!」
身体ごと体当たりするように突くと同時に振動ぶいいいん……。
が、これでも踏みとどまった泥人形。小太も手ひどくぶっ飛ばす!
――バサッ!
「フラさん、遅れてごめん。小太さん、カッコよかったよ」
再び人影から姿を現す者が。
「ゆ、悠月さん……」
「け、剣ってあまり使ったことないですけどぉ」
悠月、日本刀「白狼」の袈裟斬りとともにただいま参上。
一体を切り捨て仁王立ちしつつ二人の無事を確かめると、新たに左右から寄って来た泥人形に横薙ぎ一閃、返す刀で踏み込みずばっ。狼の遠吠えのような唸りが響き渡る。
「フラさん?!」
倒れていた小太、次の反応は素晴らしい。
フラに襲い掛かっていた泥人形に気付き、今度はしっかり前に出てフラを守りつつ射撃。
「小太さん! こいつっ!」
今度は小太が殴られ激怒の一撃。
この様子を森から観察していたのは、恭也。
「ま、悪くない。中心から外れだしたな」
恭也、黒い銃身に紅色の荒縄が巻かれた魔導銃「雷紅」を構え、フラに援護射撃。これで泥人形は泥と化し地に落ち、残った光の球も泥の上に落ちた。
「ん?」
もちろんこれに気付く恭也だが、森に隠れた位置からでは確認しようがない。
一方、シオンが一発ぶちかました岩人形にはJが突っ込んでいた。
「遅れてすまねぇ!」
蹴りを一撃入れてからの旋棍「疾風迅雷」。ワイルドラッシュを食らわしていた。
●
序盤の乱戦からすぐに流れが変わったのは、敵に壁粘土がいたから。
――どしん、どしーん!
味方を守るように――特にシオンとラン、そしてJの前に――割って入り、泥人形たちもいったんこの背後に隠れた。
「次は壁かよ?」
「あはは、時間の無駄だよー」
Jとランがこの破壊に掛かろうとしたところ、背後から声がした。
「そこー、回復してるわよー」
キーリだ。
先ほど倒した泥人形が再び蘇っていたのだ。
「なるほど」
ちょうどシオン、Jの連撃した岩人形に止めを刺したところだった。
崩れた岩の中から小さな光体が現れたのだ。先にランが倒して蘇った粘土人形も、あとからこの光体が落ちていたことを目の端でとらえていた。
「からくりは分かった!」
ばさっ、と振動刀で刀の錆びに。さすがにこれは一撃で済む。岩人形の欠片はこれで復活の兆しもなくなった。
一方、蘇った泥人形はキーリのウインドカッターとランとJのラッシュで再び消滅。今度は光体も斬る。
「壁の後ろで新たな動きです! ……きゃっ!」
横に回っていた奏音、投げ上げた符三枚を三つの雷として三体を穿つ。ただ敵も体の一部を投げて遠距離戦に。
「こちらは通さん!」
シオン、刺突一閃からの薙ぎ払いで左翼の敵をまとめてたたっ斬る。が、光対までは手は回らない。
「こっちは大丈夫」
「小太さん、援護お願い」
「ま、任せてですよ……」
悠月、右翼へ回りつつ獅子奮迅の働き。フラがこぼれた敵を倒し、小太の射撃が光体を撃つ。
「ん?」
そして、いち早く気付いたのは全体を見渡している恭也だった。
――ひゅんひゅん……。
突然、右手からナイフの嵐が目の前の味方を襲った。
「新手だ……おわっ!」
なりふり構わず叫んだところ、同じくナイフの嵐を食らった。
見ると、森から細マッチョの黒い服に白い肌の男が泥人形と従え登場していた。
――ひゅん……。
壁を壊したラン、一気にその前に行き殴り……おっと。ぱしっと手の平で止めらめた。
「いやー。久しぶりだねー? あはは」
「カカカ、挨拶とは酔狂だな?」
ラン、槍は右手で左手で殴っていた。ルモーレはパイプを左手に、右手で拳を止めていた。
「あそこの里はどうしたの?」
「途中にあったから全滅さ。一年前半前にな?」
ストレートに聞くラン。当然だろう、とルモーレ。
「あっ、そのパイプ。……許さないッ!」
「フラさん!」
「はーい!総員撤退ー! さっさと逃げんぞー!」
冷静さを失ったフラを小太が抱き着いて止めた。これを見てこれ以上はまずいと恭也。
「面白いものを見せてやろう。カカカ」
何かしてくる、と感じてばっと離れるラン。
ルモーレ、パイプから灰を落とした。
それが地に落ちると見る見る泥人形が誕生した。
「んー、ここまでかな?」
ランもここで撤収した。
「紹介するわ私の「ぬりかべ」よ」
「大丈夫だと思いますが、一応設置しておくとしましょう」
撤収に成功したのはキーリが事前にチェックしておいた場所にアースウォールのおかげだった。
そして敵の追撃の手が広がらなかったのは、奏音の地縛符の影響もあったから。
なお、Jのパルムは激しい戦闘を避け洞窟入り口には到達せず。浮かびもしたが村が見えるほど高度も取れなかったようで。
「いいぞ。もうひと押し」
後日、森近くの村に再び魚が降り、この言葉とイクシード・プライムが届いた。
ハンターたちの手に無事に渡ることになる。
依頼結果
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サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 柊 恭也(ka0711) 人間(リアルブルー)|18才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/05/13 22:46:51 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/15 12:20:29 |