【魔装】いつか『約束』へ辿り着く為に

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/05/29 09:00
完成日
2017/06/02 04:09

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●“武具”
「怪我が治ったと思ったら、すぐに鍛錬したいと……」
 白髪の爺――オキナ――が、申し出てきた緑髪の少女――紡伎 希(kz0174)――へ応える。
 希は真剣な眼差しを真っ直ぐにオキナへと向けていた。
「強く……なりたいのです」
「ふ……む……」
 少女の切実な想いをオキナも知らない訳ではない。
 古の塔を守る為に戦死した騎士の話は聞いているからだ。
 そもそも、希が今の立場に居る事は、その騎士の協力があった。転移者という事を保証する為に、騎士の母方の実家の商会を頼ったのだ。
 そして、その商会で現在も手腕を振るう長は、オキナの古い戦友でもある。
「メフィストだけではなく、傲慢の歪虚との戦いで、もう二度と負ける訳にはいかないのです」
「熱意は分かった」
「ではっ!」
 今にも席から立ち上がりそうな希を両手で落ち着かせるオキナ。
「じゃが、儂にも無理じゃ。もう、儂が教えられる事はない」
「そんな……」
 希は落胆とした。
「だが、強くなれる方法なら、教えられない事もない」
「それは一体?」
 期待が込められた視線にオキナはニヤっと笑う。
「……武具じゃ」
「武具……ですか?」
「受付嬢しているなら、分かるじゃろ。一流のハンターは、一流の武具を持っているものじゃ」
 その言葉に、希は携帯している魔導拳銃に視線を向けた。
 もし、この武器を持っていたとして、先の戦いで臨んでいたら……いや、結果は変わらなかっただろう。
「彼らは、多大な費用と手間を掛けて武具を強化する。中には伝説級の強さに至った武具を持つ者もおるはずじゃ」
「私にはとても……」
 受付嬢としての給料だけでなんとかなる程度の話ではない。
 噂によると、そうした超強化を行う為には、流れ星の加護も必要だとかなんとか。
「まぁ、慌てんことだ。そのうち、縁があるじゃろう」
「……はい」
 結局、何の進展も無かったと希は肩を落とした。

●“強さ”
 レタニケの街に鳴月 牡丹(kz0180)は滞在していた。
 領主代理だったライルは堕落者と化して、ハンター達に討伐。今は戦後処理としてフレッサ領の私兵が慌ただしく街中を駆け回っていた。
「やぁ、ノゾミ君」
 少し寂しげな様子で牡丹が部屋に入ってきた希に声を掛けた。
「牡丹様……」
 何があったのか、概略だけは希も確認していた。
 だが、実際に牡丹の姿を見たら、自然と涙が流れる。牡丹の弟に似ていたライルを、牡丹は何かと気に掛けていたのを知っているからだ。それに合わせて、古の塔で恩人を失った事も加え、色々な感情が希から溢れ出した。
 牡丹もまた、希に何があったかとオフィスの職員から聞いていた。街への帰還が遅れた理由を確認した時に知ったのだ。
「……よく生きて帰ってきた。ちゃんと、ボクの言った事を守ったんだね」
 静かに泣く希の身体をしっかりと抱き締める。
 しばらく希は泣いていたが、やがて、少女は顔を上げた。
「牡丹様は、大丈夫なのですか?」
「そうだね……」
 言葉を濁す。
 ライルが堕落者と化したのは、自分も責任があるかもしれない。そんな風に思っていた。
 強さを求め続けた果てに、ライルは道を誤った。
「ボクはライルの分も強くなるよ。今までとは違うやり方かもしれないけど」
 “強さ”とは何か……牡丹は今までに持っていなかった一端を掴んだ気がしていた。
 その為には、どうするべきかは、彼女の頭の中に構想はある。
「東方に帰って、将軍様に提案してくるよ。ボクは……ボクらが、もっと“強く”なる為に」
「……それでは牡丹様はこの街を立たれますか?」
「いや、東方に帰る前に、ちょっとこの街ですべき事があるからね」
 ライルが守ろうとしたこの街の行く末がどうなるのか気になる所でもあるし、なにより、傲慢の歪虚であるアリトゥスには返さなければならない“借り”があるからだ。
 それらの決着をつけてからでないと前に進めない。
「それじゃ……牡丹様、お願いがあります」
「なんだい?」
「手合わせしたいです!」
 希の気概に牡丹は嬉しそうに頷いた。

●いつか『約束』へ辿り着く為に
 牡丹との実戦形式の訓練を終えて、希は自室へと戻ってきた。
 度が過ぎて、体力を使い過ぎ、崩れるようにベットへと倒れ込む。
「ネル・ベル様……」
 いまもこの街の何処かに居るのだろうか……。
 ライルの鎧に姿を変えていたのは報告書で知った。かつての主は、自分の存在に気がつかない訳ではないはずだ。
「……」
 近いうちに対峙するかもしれない。
 そんな気がした。傲慢――アイテルカイト――は決して、裏切り者を許さない……と、オキナから聞いていた。
「今の私に足りないもの……」
 それは覚醒者としての力なのか、あるいは、武具なのか、想いなのか。
 古の塔での戦いを思い出す。
「そう……私に足りないのは、傲慢――アイテルカイト――の事」
 これでも、一般人よりかはよく知っている自信はあった。
 だが、その情報が正しいのか、あるいは、思い込みの所はないのかは分からない。
 それに、新しく判明した情報もあるかもしれない。
「えと。確か通帳に……」
 ベットから起き上がった希は鞄の中を確認する。
 これまで受付嬢として、ハンターとして、コツコツと貯めた分。
 その額を確認して――少女は依頼書を書き出した。

リプレイ本文

●土産の行方
 龍崎・カズマ(ka0178)が大峡谷を駆けていた。
 訓練された軍馬は段差や細い道を抜けて奥深くへと踏み入っている。これが魔導バイクや普通の馬であれば断念していただろう。
 帰り道を間違わないように、彼はしっかりと記録していく。その為の装備でもある。
 もっとも、大峡谷は崖崩れや風化が激しい所もある。今回記録したデータが、後日、有効かは分からない事ではあるが。
「さて……何も無きゃ、何も無いで良いんだがね」
 その時、騒ぎが先から聞こえてきた。人の騒ぎではない。亜人の叫び声の様だ。
「縄張り争いか?」
 岩陰から見えたのは亜人共の争い。ラプターに乗ったゴブリンを複数のコボルトが囲んでいる。
 そして、カズマはラプターに騎乗しているゴブリンに見覚えがあった。

 歴戦の猛者であるカズマにコボルトが敵うはずもない。
「久しぶりだな……エネミンと言ったか?」
「タ、タスカッタ。カンシャスル。ニンゲン」
 エネミンという亜人もカズマの事は覚えていた様子だった。
 安堵して息を大きく吐き出す。その手には豪華な装飾の杖。
 杖を観察するカズマの視線にエネミンは杖を抱える。
「コレ、ナワバリコウカン、ノコシテモラッタ、タイセツナツエ。ワタサナイ」
「縄張り交換だと?」
「ニンゲンカラ、モラッタ、ツヨイブキト、ナワバリ、コウカンシタ」
 北方動乱の際に、ある領主が古都より贈られた支援物資という名の属性武器を亜人の協力を得る為に横流ししたという噂があった。
 受け取った亜人の群れは、北方動乱後、大峡谷の奥へと進んだらしい。そして、そこには別の亜人が居ても不思議ではない。
 属性武器を交換材料としたのであろう。そして、その武器を手にした亜人達はレタニケ領へと南下した。北方動乱と同様に、人間共に一泡吹かす為……。
「なるほど。作っていた訳ではない……という事か」
 その時、遠くからコボルトの叫び声が響いた。
「ゾウエンガ、キタ。アルジト、ゴウリュウスル。ニンゲン、オマエモニゲロ」
 エネミンは短くお礼を言うと慌ててラプターを走らせる。
 慌ただしい再会となったが、収穫はそれなりにあった。一先ず、属性武具についてはこれ以上状況は悪化しないだろう。
 カズマも来た道を引き返す。追っ手から上手く逃れられたのは、信頼する仲間の祈りが届いたからかもしれない。

●伝言
 レタニケの街に滞在している鳴月 牡丹(kz0180)にイレーヌ(ka1372)は会いに来た。
 図書館での調べ物が上手くいかなかったので、仲間に任せ、急いで戻って来たのだ。
「お邪魔するよ、牡丹」
「きっと、来ると思ったよ」
 宿の部屋で牡丹はくつろいでいた。手元にはハンターオフィスから取り寄せたと思われる書類の束が置かれている。
 牡丹が傲慢歪虚から受けた傷はすっかりと癒えているようだった。
 実の弟のように溺愛していたライルを失った後であるので、精神的に落胆しているのかと思えば、そんな様子も見えない。
「ボクもイレーヌ君も、お互い、酷い目に遭ったね」
 恐らく、アリトゥスの能力の事を言っているのだろう。イレーヌ自身はライルとの戦いで関係は無かったかもしれないが、姿を盗まれて利用されたという意味では、イレーヌも被害者といえば、被害者だ。
 振り返ってみれば、あの温泉の出来事から、既に巻き込まれていたとも言える。
 傲慢歪虚の特殊能力【変容】の中でも、アリトゥス固有の能力なのだろう。
「今日はライルの……最後を伝えようかと思ってさ」
 堕落者と化したライルとの最後、何があったのか、牡丹は知らなければいけないのだから。

 ライルとの戦い、ネル・ベルとの戦い、そして、最後の言葉……。
「最後に、強さというものを知り得た事が出来たと」
「……ありがとう、イレーヌ君」
 強さを求め続けたライルの背を牡丹は押していた。それが全てではないだろうが、牡丹が責任を感じる事ではあるだろう。
 それでも、最後に、彼なりに“強さ”へと辿り着いた。そして、それは牡丹も同様だった。
「信頼できる友や仲間と共に、ボクは強くなりたい」
 その為にどうするべきか、牡丹の頭の中に考えがあった。
 今はまだ明かす時ではないが、その時が来たら、きっと、ハンター達も協力してくれると信じている。
 挫けてはいない牡丹の強い雰囲気にイレーヌはニヤリと口元を緩めた。
 真面目な話で締めるのは得意ではないから。
「噂で聞いたけど、カズマ君と口付けしたって?」
「救護活動の一環だからね~」
 思ったより反応が薄いのは、彼女の性格だからか。
 これは土産話にはちょっと足らないかなとイレーヌが思っていると牡丹は言葉を続けた。
「まぁ、でも、相手がカズマ君で良かったとボクは思うけどね」
 少し照れたような可愛げのある笑顔で牡丹はそう言ったのだった。

●感謝
 檜ケ谷 樹(ka5040)が纏めた書類にはネル・ベルらの情報が記されていた。

ネル・ベル
攻撃手段は二刀流と火球(魔法型、範囲攻撃)
特殊能力は瞬間移動(1人程度であれば連行も可)、【強制】(単体高強度、広域低強度の2種)
【懲罰】行使の記録は無い

ネオピア
高機動、高威力
純粋に戦闘力が高いが【強制】等は使ってこない

アリトゥス
桜型妖精「アリス」の様な外見
【変容】【強制】を使用可。雑魔生産も可

「こんな所かな」
「……ありがとうございます、樹様」
 紡伎 希(kz0174)は本心を隠すように、嬉しそうな笑みを浮かべてお礼を述べた。
 集まった情報は意味はある。だが、それ以上の情報が欲しかった。例えば、【強制】であれば、どの程度、装備を整えれば安全なのか。【懲罰】を防ぐ方法など……だ。

(自分で調べるしか――)
 
 緑色に染められた革鎧の上にドレスを着込んでいる希に、樹は持参した品を並べた。
 魔杖と護符と錬装具……これらの品々はハンターといえども、簡単には手に入れられないだろう。
「来るべき決戦の為に」
 しかし、希は首を横に振った。
「とても嬉しいのですが……仕事ですので」
 仕事中の貰い物はしないという、言い訳のようにも聞こえる。
「真面目だね、希ちゃんは」
「樹様ほどではありません」
 ニコっと笑う希。
 縁がある武器とは、希自らが得るもの……なのかもしれない。彼女自身が希望を再び手にしたように。
「それと、ネル・ベルの目的だけど、僕には、政治や情勢を利用して内から崩してこようとする意図が見えるんだ」
「ご推測の通りだと思います」
 ネル・ベルは人間の悪を利用して来た。
 政争を利用するという発想に至るのに違和感はない。
「フラベルとの関係を聞いてないかい?」
「主従関係にあるという事と、護衛役ではなく、特別任務を受けていたと聞いています。そして、敬愛していたとも……」
 最終的な目的は王国の崩壊やダメージを与える事なのだろう。主の仇という訳だ。
 樹は口元に指を当てて考える。
「フレッサ領主を取り込んで、勢力を拡大させ……貴族派を動かしてクーデターによる内部崩壊が目的か」
 それは口にすれば確信にも近いかもしれないと思った。
 内部崩壊した所を突かれればひとたまりも無いのは明らかだ。
「食い止める方法はあるのでしょうか?」
「そうだね……フレッサ領主を失脚させる証拠があれば、かな……」
 応えた樹自身が、それが困難だと一番認識していたのだった。

●希望への手紙
 王都イルダーナのある宿の一室で瀬崎・統夜(ka5046)はペンを走らせていた。
 調査に時間を掛け過ぎて、レタニケ領に居る希に逢えそうになかったからだ。
 あの戦いの後という事もあるし、調査内容が芳しくないという事もあり、顔を合わせにくい……というのもあるかもしれないが。
「古の塔での詳細な話は騎士団でないと分からない、か……」
 メフィストがどうして古の塔に突然現れたのか。何が目的だったのか。それらを統夜は王都で調べていた。
 だが、調査先にアテがあるわけではなく、調査は難航。そもそも、古の塔の存在が世間に明らかになったのも最近の事だ。
「情報が漏れている……いや、違うな。メフィストが“知った”のは世間が知った後かもしれない」
 もし、もっと前に――ハンター達の調査を行っている時から――塔を把握していたら、メフィストは容赦なかっただろう。
 結果的にメフィストを退かせる事は出来たのは、塔の全容を、塔が持つ力を全て把握していなかったかもしれない。
「それと、【懲罰】についてもだな」
 友人の話によると、その歪虚は、目隠し状態でも【懲罰】を行使したという。
 その時の【懲罰】と“あの戦い”の時の【懲罰】とは内容に差があると統夜は感じた。
「歪虚の個体差による違いはあるようだな」
 別の話によると、攻撃意思を失っている場合、使用してこなかったという話もあるらしい。
(つまり、意識が無い状態では返せないのではないか……)
 意識して使っているのだろう。
 それはある意味驚異的な能力だ。選んで使えるという事は、アタッカーの攻撃に対して狙って【懲罰】を使えるからだ。
 所謂、リアクションスキルとハンター達は呼んでいる能力と似ているのかもしれない。
 正体が分かれば、対策は立て易い。これはきっと、この先、傲慢歪虚との戦いでは有効な情報になるはずだ。
(……)
 統夜は黙って手紙を書き続ける。
 それは調査内容の話ではなく、希自身と、自分自身に宛てたものだ。
 “あの戦い”で、希を紙一重で救ったのは統夜だった。もちろん、統夜もただでは済まなかった。
 それだけ威力のある爆発だった。統夜が庇えなかったら、希もまた、爆散した騎士と同じ道を辿ったかもしれない。
(亡くした人間が、在ったという証を残せるのは、生きて想い出を共有した人間だけなのだから、な……)
 だから、遺された人は簡単に、死んではいけない。例え、一人、残されたとしても。
 もう、誰も失わずに済むように、お互いに強くなろうと記し、統夜はペンを止めた。

●ゲーマーの勘
「ルンルン忍法と書物の力で、傲慢歪虚勢力の調査をして、これからに備えちゃいます!」
 という威勢の良い気合の掛け声を出したルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が、司書に怒られるのはその直後の事であった。
 古都の図書館には膨大な量の書籍が保管されている。今回はその中でも中層域にルンルンは足を運んでいた。
 普段は正式な手続きをしないと入れない所だ。更に奥に進むと空間が捻じ曲がっているとも噂される所もあるという。
「懲罰について、受けられる物と受けられない物があるって聞くし……」
 ギルドの団長が参加した戦いは熾烈と聞いていた。
 その中でも厄介だったのは【懲罰】への対処だった。団長は硬い防具で【懲罰】を止めていたが……ブルダズルダの街に出没した歪虚は回避困難だった様子だとルンルンは認識している。
「私達が知らない攻略法や、裏技の欠片は何処かにあるはずだもの」
 だからこそ、調べているのだが、なかなか情報に当たらない。
 歪虚の個体差と言われればそれまでだろう。だが、その詳しい内容が知りたいという事でもあるのだ。
 伝説伝承の類の書物から、現段階、ルンルンが傲慢について分かっている能力と照らし合わせて違いを探る。
「……【強制】に対抗する為の強い精神なら、【懲罰】も?」
 強い精神を持つ事で防げる方法と、反射したダメージを回避したり、防具で受け止められる場合もあるようだ。
 無制限に使える訳でも無さそうである。同時に使えるケースもあれば、1度の攻撃で1回しか使えない場合もある……らしい。
「色々な個体差があるって事ですね。なら、特有の能力を見抜けば有力な対策が立てられるはずです!」
 と、ゲーマーの勘が告げた。同時に、また、司書に怒られた。
 気を取り直して、ルンルンは別の調べ物を始める。
 それは、ネル・ベルに関する情報だった。
「うーん。見つからないというかですねー」
 困ったような表情を見せて、本を元の位置に戻す為に背を伸ばす。
 豊満な胸が盛大に揺らしながら、なんとか本を戻すルンルン。
「……歪虚だから、闇とか、人だから光とか、あんまり関係が無いかもです」
 ネル・ベルの情報は出て来なかったが、属性の傾向と歪虚との確定情報は出て来なかった。
 ある程度の傾向はあるようだが、少なくとも、歪虚であるから闇属性に固定という訳ではないようだった。


 ハンター達は傲慢歪虚に関する情報を収集・整理した。
 きっと、これらの情報は今後、大きな意味があるはずである。


 おしまい。



●試練
 ライラ = リューンベリ(ka5507)がオキナと呼ばれる爺を見つけたのはレタニケの街のある酒場だった。
「初めまして、ライラと申します。オキナ様ですわね」
「……希ちゃんの依頼で儂の所にハンターが来るとは思っていたがの。如何にも、儂がオキナじゃ」
 白髪の老人がニヤリと笑った。
(この方が、オキナ様ですか、ネル・ベルに仕えていて、ノゾミ様の師匠……)
 そんな風に思っていると、カウンターに座っているオキナが隣の席を勧めてきた。
 ライラは一礼すると、そこへ座る。店主がサッと厨房から出てきて飲み物を出すとすぐに戻って行った。
「貴方がここに居るという事は、ここがまた戦場になるということですか?」
「また率直に聞いて来るの。まぁ、それは無いと見ていいはずじゃぞ」
 領主不在となったこの街に、今滞在しているのはフレッサ領の私兵達だ。
 彼らはしっかりと統制されており、略奪行為も見られない。
「【強制】でハンターを操り、体裁整えていますが、レタニケ領はネル・ベルの手が入っているべきとみるべきでは」
「そう簡単にはいかぬものじゃ。貴族らの勢力争いなら尚更のう」
「……レタニケ領は王家派なのですね」
 オキナの言葉に、ライラは推測した。
 フレッサ領は貴族派だという。対抗する勢力を削るにも、今回の事件は一石二鳥だったという訳だ。
「ネル・ベルは他の傲慢とは違う、力による王国の崩壊ではなく、人の手による崩壊を目指していると感じます」
「利用されておるのじゃ。王国には、王家派と貴族派の流れがあるからのう」
 国難の時に派閥争いをしている場合ではないはずだ。
 王国は歪虚の驚異に晒されていたので、そうした政争は表立つ事は少なかったかもしれない。
「それが分かっていて、オキナ様は……私達を試そうとされているのですか?」
「ハンターとて、無縁という訳にはいかぬ事じゃろ」
 政争に巻き込まれろと言いたげなオキナの言葉だった。
 まだ、雑魔を倒す方が単純なものだ。
「最後に、貴方のお気持ちを確認させてください。ノゾミ様にはどうなって欲しいのですか?」
「成るように成れば良い。あの子が、人として生きても、堕落者となっても儂は、あの子の選択を尊重するからの」
「それも、私達に対する“試練”なのですね」
 オキナは返事の代わりに静かに頷いたのであった。

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MVP一覧

  • 【魔装】猫香の侍女
    ライラ = リューンベリka5507

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士
  • 幸せを手にした男
    檜ケ谷 樹(ka5040
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 【魔装】希望への手紙
    瀬崎・統夜(ka5046
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 【魔装】猫香の侍女
    ライラ = リューンベリ(ka5507
    人間(紅)|15才|女性|疾影士
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/24 22:00:03
アイコン 【質問版】なぜなに相談室
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/05/27 23:02:18
アイコン 【情報共有】【調査目的と行先】
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/05/28 21:08:29