ゲスト
(ka0000)
マシュマロ☆クッキー
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2017/05/27 12:00
- 完成日
- 2017/06/09 01:40
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
日々歪虚退治とか困りごとのお手伝いをしているハンターさん。実は、たまには自分たちだけで集まってわいわいきゃいきゃいもしているんですよ。
「ほへ?」
南那初華(kz0135)さんがふらっとハンターオフィスをのぞいたとき、たくさんのハンターさんたちが集まって楽しそうに賑わっているではありませんか。なんだかイベントでもしているようですね。
「何やってるの?」
「テーブルトークRPGだよ」
どうやら異能学園モノTRPG「エリュシオン」のイベントをしているようです。ダイスロールの硬質な音、出た目に歓喜するプレイヤーに「まさか出るとは」な感じのゲームマスター。複数のテーブルで盛り上がっているようですね。
「ふうん……わ、敵が出て戦闘なの?」
あらあら。
特に用事のない初華さん、見学して一緒に盛り上がっちゃってますね。
でもって、イベントは盛況の内に終了しました。
「真夜さん、手作りクッキー作ってきたの。お一つどうぞ~」
あらら。
初華さん、お試しで「深夜真夜」というキャラクターを作ったようです。早速キャラ名で呼ばれてますね~。
「ありがとー。でも、ハンターオフィスでこんな催しやってたとは知らなかったわ~」
「依頼以外で交流できるように、なんだって。依頼と一緒にお知らせが出ることもあるけど依頼じゃないから報酬はなし。ハンター有志の催しでオフィス主催じゃないからクラブ活動に近い、かな? ギルド主催でもないしね」
「あれ……んあっ!」
おや。
いきなり初華さん、目を輝かせましたよ。
「このクッキー、不思議な味がするね~。焦げた部分はカリッと香ばしくて、そうでないとこは口溶け軽やかでふわっとしてて、炭酸みたいにじゅわって弾けるようなの。で、甘いというか……不思議な後口がある~。ね、これ何?」
丸くて真ん中にアーモンドがのっている一口サイズのクッキーの、半分かじった部分をまじまじと確認するのです。
「それ、マシュマロを半分に切って押しつぶしてアーモンドをのせて焼いただけなの」
「ほへ? それだけ?」
意外な言葉に激しく興味をそそられてますね。
「簡単でしょ?」
「うん。だから小麦っぽくないのか~。でも、あの白くてふわふわしたマシュマロがねぇ」
私も作ってみよっかな、とかぽわわん、と呟く初華です。
「……あ、そっか。お料理クラブって、こういうお菓子も作ったりするよね?」
「んじゃ、私がオフィスの人に施設借りてやっていいか聞いてくるね!」
急いで駆け出す初華さん。知り合いのオフィス係員を発見したようで一生懸命説得しています。
でもって満面の笑みで戻ってきます。
「どうだった?」
「んふふ。オッケーだって。ここのオーブンだとかも使っていいみたい♪」
というわけで、オフィスのリアルブルーの調理器具を使い「マシュマロクッキー」を一緒に習いつつ作る人、求ム。
作った後は試食して、オフィスを偶然訪れたり機械系ユニットを整備しているハンターにも配ることができるので、たまたまオフィスを訪れてるとか整備しているという人もご参加を。
「ほへ?」
南那初華(kz0135)さんがふらっとハンターオフィスをのぞいたとき、たくさんのハンターさんたちが集まって楽しそうに賑わっているではありませんか。なんだかイベントでもしているようですね。
「何やってるの?」
「テーブルトークRPGだよ」
どうやら異能学園モノTRPG「エリュシオン」のイベントをしているようです。ダイスロールの硬質な音、出た目に歓喜するプレイヤーに「まさか出るとは」な感じのゲームマスター。複数のテーブルで盛り上がっているようですね。
「ふうん……わ、敵が出て戦闘なの?」
あらあら。
特に用事のない初華さん、見学して一緒に盛り上がっちゃってますね。
でもって、イベントは盛況の内に終了しました。
「真夜さん、手作りクッキー作ってきたの。お一つどうぞ~」
あらら。
初華さん、お試しで「深夜真夜」というキャラクターを作ったようです。早速キャラ名で呼ばれてますね~。
「ありがとー。でも、ハンターオフィスでこんな催しやってたとは知らなかったわ~」
「依頼以外で交流できるように、なんだって。依頼と一緒にお知らせが出ることもあるけど依頼じゃないから報酬はなし。ハンター有志の催しでオフィス主催じゃないからクラブ活動に近い、かな? ギルド主催でもないしね」
「あれ……んあっ!」
おや。
いきなり初華さん、目を輝かせましたよ。
「このクッキー、不思議な味がするね~。焦げた部分はカリッと香ばしくて、そうでないとこは口溶け軽やかでふわっとしてて、炭酸みたいにじゅわって弾けるようなの。で、甘いというか……不思議な後口がある~。ね、これ何?」
丸くて真ん中にアーモンドがのっている一口サイズのクッキーの、半分かじった部分をまじまじと確認するのです。
「それ、マシュマロを半分に切って押しつぶしてアーモンドをのせて焼いただけなの」
「ほへ? それだけ?」
意外な言葉に激しく興味をそそられてますね。
「簡単でしょ?」
「うん。だから小麦っぽくないのか~。でも、あの白くてふわふわしたマシュマロがねぇ」
私も作ってみよっかな、とかぽわわん、と呟く初華です。
「……あ、そっか。お料理クラブって、こういうお菓子も作ったりするよね?」
「んじゃ、私がオフィスの人に施設借りてやっていいか聞いてくるね!」
急いで駆け出す初華さん。知り合いのオフィス係員を発見したようで一生懸命説得しています。
でもって満面の笑みで戻ってきます。
「どうだった?」
「んふふ。オッケーだって。ここのオーブンだとかも使っていいみたい♪」
というわけで、オフィスのリアルブルーの調理器具を使い「マシュマロクッキー」を一緒に習いつつ作る人、求ム。
作った後は試食して、オフィスを偶然訪れたり機械系ユニットを整備しているハンターにも配ることができるので、たまたまオフィスを訪れてるとか整備しているという人もご参加を。
リプレイ本文
●
依頼探しのハンターに、書類を胸に抱えてぱたぱた走る案内係。
きょうもハンターオフィスには多くの人が訪れ、賑やかです。
「すいませ~ん、通して下さ~い」
ひときわ賑やかなのは南那初華(kz0135)さんです。きょうもきょうとてエプロンドレス姿。
何やら箱入りの荷物を両手で抱え、ぱたぱた通路を小走りしています。
そんな通路でのんびり歩く人影が。
「さーて、次の依頼は何にしようかな~」
両手を頭の後ろ手組んでリラックスした様子は、天竜寺 舞(ka0377)さんです。
「お姉ちゃん、元気だよね」
隣を歩く天竜寺 詩(ka0396)さんはくすくす微笑してますね。どうやらいつも活発なお姉さんから元気をもらっているようです。
そこに初華さんがぱたぱたとやってきました。
「ごめんなさ~い、開けて下さ~い」
「何、それ?」
「これ? マシュマロが入ってるの。いまからマシュマロクッキー、焼くのよ。一緒にどう?」
舞さんに答える初華さん、楽しそうです。
「へえ~。マシュマロクッキーって言うのは初めて聞いたけど、楽しそうだね♪」
ちょっと行ってみようかな、と詩さんはウキウキしています。
「あー、あたパス」
おっと。舞さんは苦笑して手をひらひらさせていますね。
「訓練場で体を動かしてお腹を空かせとくよ。沢山食べられるようにね」
「あ、行っちゃった」
「食べる気は満々みたいね~」
汗たら~して見送る詩さん。初華さんも汗たら~してます。
こうして初華さんと詩さんはきゃいきゃい調理室に向かうのです。
「次の依頼受けたけど……また大変なことになってるね」
「そ、そうですねぇ。うまくいくといいのですけどぉ」
途中で霧雨 悠月(ka4130)さんと弓月・小太(ka4679)さんの前を通り掛かります。何をしているのか聞かれてこたえる初華さんと詩さん。
「なんだかおもしろそうだね……小太さん?」
「も、もちろん興味ありますぅ」
うん、と頷き合う二人です。
「ベリモルさん、ふらふらしちゃだめですよぅ……あら?」
「ん、何かにゃ?」
氷雨 柊(ka6302)さんがどこかに行こうとしたハヒヤ・ベリモル(ka6620)さんの裾をつかんだところ、わいわいと四人が通り掛かりました。で、皆さん何してるんです?とかお話を。
「……マシュマロがクッキーになるんですー?」
「料理したことにゃいから、してみるにゃ!」
まあ、と口元に手を当てる柊さん。ハヒヤさんは元気に拳を突き上げてますね。
しばらくのち。
「スキル発動にゃ~!」
どかーん、とダイスを投げたら部屋の外に出たので取りに出たアルス・テオ・ルシフィール(ka6245)さんこと、ルーシーさん。ぺちゃくちゃ移動する六人に気付きます。
聞くと、とても楽しそう。
「よろしくお願いなの」
ぺこ、と一礼して一緒に移動です。
「初華さーん、お待たせ~♪」
しばらくしてメルクーア(ka4005)さんも合流です。
おや、箱を抱えてますね。
「それは?」
興味津々の悠月さん。
「素焼きのアーモンド。今回の材料なんだって」
「そ、それにしては箱が大きいような気がしますよぉ?」
小太さんが中を覗こうとしますが、メルクーアさんはふいと身をよじって中身を見せません。
「秘密♪ も一つ、面白いお菓子を作りたいのだ」
なんか得意げにおっきな胸を張ってますよ?
「……よ、何かうまいもん作るんだって?」
おや。メルクーアさんが身をよじった方には道元 ガンジ(ka6005)さんが寄ってきていました。
「鼻をきかせたのかにゃ?」
「そ、そんなことはないんだぜ!」
感じたことをストレートに口に出したハヒヤさんですが、ガンジさんは否定しているようです。……その割にちょっと慌てた様子ですが。
「ベリモルさんたら……」
横では柊さんがほふぅ、と頬に手を当てています。
「きっとベリモルさん自身、普段からよく鼻をきかせてるんでしょうねぇ」
とか思っての発言なのは内緒です。
一方、調理室では。
「これでいいでしょうか」
フリルのエプロンを身に着けた月護 紫苑(ka3827)さんがオーブンのスイッチを入れています。
「あれ? みんな来てないし、まだ早いですよ?」
メイド服を着ている玉兎・恵(ka3940)さんが目を丸めて振り返ります。
「今回のクッキー、手間が掛からないそうですから」
「だからですか。温度上がるまで待たないといけないですからね」
どうやら二人は料理上手さんの様子。いろいろ気が回りますよね。
「ただいま~」
そこへ、初華さんたち材料係が戻ってきましたよ。
「行きより人数が増えてますよ?!」
恵さん、半身に振り返ってびっくりです。
「きっとみんな鼻をきかせたにゃ!」
「ベリモルさん……あっ!」
再び調子のいいことを言うハヒヤさんに、柊さんが頬に手を当てほふぅとしようとしたところ、びっくりします。
初華さんも詩さんも、みんながやれやれとため息をついたり、んもうと微笑していたからですね。
「にゃ! みんなどうしたのかにゃ!」
ががん、と周りを見るハヒヤさんに、皆は改めて温かく笑うのでした。
●
「じゃあ、はじめましょうかぁ」
小太さんがくるっとエプロンを着けます。
「小太さん、手慣れた感じだね?」
「じ、実家の時に姉達から料理全部任されてましたからぁ……」
少し照れてる小太さんです。
「お姉さんたちって……あ、そういう悠月さんも手慣れてない?」
料理ダメダメさん?と聞こうとした初華さんは自重して、悠月さんがエプロンを着けるのを手伝おう……と思ったけど、さっそうと身に着けたのを見てびっくりしています。
「そう? 面白いことは何だって好きだから、かな?」
着ることにしても返答にしても、舞台慣れしたような感じの悠月さんなのです。
その向こうではルーシーさんが……。
「にゃ? すごいの」
あらあら。
ピンクの長髪を揺らしてあっちに行ってのぞき込んだり、こっちに行って首をひねったり。リアルブルーの調理器具に興味津々です
「トッピングはアーモンドですね」
「ほかのナッツやチョコレートを乗せても美味しいんじゃないでしょうか?」
恵さんは材料を確認。紫苑さんは自分の携行品からチョコとかを取り出しています。
「でも、このマシュマロがクッキーにねぇ」
詩さんは箱からマシュマロを出してしげしげと眺めます。
確かに今は真っ白でまん丸。とてもクッキーっぽくはありません。
それはともかく、本日の材料なので次々と皿の上に移します。
「材料も美味しそうで目が止まるにゃ……食べたいにゃー」
それをじーっと見ていたハヒヤさん、ついふらふらと皿の方に手をそーっと伸ばして……。
「あらっ?」
びくっ!
ハヒヤさんの動向に柊さんが気付きましたよ?
「ベリモルさん、今食べようとしてましたぁ?」
「はっ! 気づいたら手がましゅまろに! これは作ろうとして取ったんにゃ! 気のせいにゃ!」
あーん、と口を開けてマシュマロを……いやいや、きっとあくびに違いありません。
「き、気のせいでしたかぁ。それはごめんなさいですよぅ」
柊さん、本当は気のせいなんかじゃなく……いやいや、そうですね。気のせいです。
「それにしても、ふわふわのマシュマロがクッキーになるなんて、びっくりですねぇ……でも考えてみれば元々甘いから砂糖を入れる必要もないし、簡単で作りやすそうですー」
柊さんもハヒヤさんに習ってマシュマロを手に取り微笑んでいます。
――ぺしっ!
おや、何か音が。
「うん。作り方はマシュマロを半分に切って円盤状に潰して上にトッピング乗せて焼くだけって教わったよ♪」
初華さんが作り方を説明します。
なお、その前にちょっと何かを叩いたようですね。
初華さんの背後ではへにょっとしょぼくれたルーシーさんと、めっという感じで注意をしているメルクーアさんがいます。
「まさかファントムハンドでつまみ食いをたくらむとはねぇ。きっともっと美味しくなるのに」
「ごめんなさいにゃ……でも叩くことないにゃ」
メルクーアさんに諭されている最中もファントムハンドで初華さんのメイド服のリボンをいじってほどいたり。初華さん、服の腰が急に緩くなって気付いて振り返って、びくっとしたルーシーさんは逃げてそれを初華さんが追い掛けたり。
「というわけで、早速作りましょっか」
変わってメルクーアさんがにこり、なのです。
「じゃ、まずはこれを半分に切る、だね」
戦闘では刀を振るう悠月さんですが、ちゃんと包丁も使えるのです。
「……うん、柊さんの言う通り、元々甘いから砂糖も必要ないね」
切った半分をぱくっと試食してみる悠月さんです。
「にゃ!」
これを見たハヒヤさん、少し不満そうです。きっとルーシーさんも近くにいれば同じ反応をしたに違いありません。
「……味見とつまみ食いの違いだと思いますよぅ」
小太さんは半分に切ったマシュマロを潰しながら説明します。
「それにしても微妙な手ごたえですねぇ」
これは麺棒を使った方がいいかもですぅ、と小太さん。手慣れた感じに探し出して、しっかりころころと押し潰すのです。
「でも、見た目がクッキーっぽい方がいいですよね」
恵さん、可愛らしくぷっくりと中央の膨らんだ形に整えます。
「……うーん、やっぱり女の子は上手だね」
「それはそうですねぇ」
感心する悠月さん。もちろん小太さんも上手で、完全な小判型にはせず見た目にこだわるのです。だてにお姉さんたちに料理全部を任されていたわけではないですね。
「でも、マシュマロって小さいよなぁ」
おや。
ガンジさんは半分にしたマシュマロをつまんで眺めては首をひねっていますね。
一体何を考えているのでしょうか?
そんな時、調理室の外を通り掛かる二人組がいました。
「あれ? 何か賑やかね」
ひょい、と覗いたのはフィリテ・ノート(ka0810)さんです。ハーフアップにした自分の髪に手を添えなでなでしています。
「あ、これ? マシュマロでクッキーを作ってるんだ」
気付いた悠月さん、バットに載せた焼く前の白いマシュマロを見せます。
「へー。珍しいもんだな」
フェリテさんと一緒にいたのはオウガ(ka2124)さんです。
部屋では初華さんがルーシーさんに「そうじゃないよぅ」とか手取り教えていたり、紫苑さんの「自分の作ったお菓子を、誰かに食べてもらえて、喜んでもらえるのって……嬉しいですよね!」という言葉に詩さんが頷いて「簡単に沢山作れるから今度アマリリス商会や十三夜の皆にも作ってもっていってあげようかな?」とか言ってたり。
わいわい、きゃいきゃい。
にぎやかなのとか楽しいことが……ええとつまり、お祭りっぽいこと大好きな少年の瞳には、そんなにぎわいがとってもキラキラに映ります。
「なあ、リテ。ちょっと寄ってかないか?」
「そう言うと思ってた♪」
フェリテさん、オウガさんの言葉ににっこり頷きながらハーフアップにした自分の髪を撫でるのです。
●
「いいですかぁ、まず半分に切って……」
柊さんが包丁でマシュマロを切りつつ、フェリテさんに教えます。
「まず半分ね」
「半分にゃ」
フェリテさんとハヒヤさんが並んで実践。
「そして押し潰して形を整えてくださいねー」
恵さんが隣でマシュマロむぎゅり。
「よし、押し潰すんなら任せとけ!」
「……オー君、力づくはだめだよ?」
恋人の蛮行……いやいや、思い切りの良い行動をいち早く察知したフェリテさん、それとなくくぎを刺しておきます。
ちなみに、そういうストップがない場合どうなるかというと……。
「よし! マシュマロをいっぱいつぶして、大きなマシュマロクッキーを作るのだ!」
ばばん、と拳を固めてガンジさんが一大決心。
麺棒を使って十五個くらいがくっつくようにこねこねと奮闘中です。
……はい。普通、なかなかくっつかないですよね?
だものでガンジさん、より一層体重をかけてこねこねこねこね……。
「にゃ? 大きすぎでオーブンに入らないと思うのー」
おっと。
ルーシーさん、さすがに興味津々で機材を見て回っていただけはありしっかり注意しましたよ。
「え?! じゃ、じゃあ手のひらサイズぐらいならOK?」
がーんと動きを止めたガンジさん。両手で抱えるぐらいのを作ろうとしていたのは内緒ですよ。
ちなみにこのころ最初にオーブンに掛けた分が焼きあがっています。
「ふわ、こんな簡単に美味しいお菓子出来るのですねぇ。驚いたのですよぉ」
「うん。かりふわで美味しいね♪」
早速試食会。口にした小太さんと詩さん、それぞれカリッと端の方をかんでみたり口の中でじっくりと気泡のある内部の軽やかさを味わってみたり。甘味がとろけるような食感も楽しいようですね。上に乗った良い香りのアーモンドからにじむ油脂もいいアクセントになります。
おや。
作業がひと段落して試食段階に入ったところで、なにやらがさごそしてる人がいますね。
「それじゃそろそろ用意しようかしら?」
メルクーアさんです。アーモンドと一緒に運んだ材料を取り出しています。
「そういえばもう一つ何か作るっていってましたかぁ?」
小太さん、ひょいと覗きます。
すると、豆腐にココアパウダーに蜂蜜、そしてビスケットが出てきましたよ?
「ほへえ、もう一品?」
「んふふー。その名も『ヘルシーなんちゃってトリュフ』」
寄って来た初華さんに、得意げに話すメルクーアさん。
「まずは袋に入れてビスケットを細かく砕いてー」
「よし、砕くんなら任せとけ!」
「オー君……」
メルクーアさんの説明に腕まくりするオウガさん。フェリテさんは汗たら~です。
「豆腐は水切り。そしてそれをココアパウダーと蜂蜜を容器に入れて、なめらかになるまで混ぜる」
「水切り? 急がないと! ……確か電子レンジで時間短縮できたはず!」
恵さんがびっくりしつつ豆腐を手に取ります。リアルブルー出身の女子高生なのでこのあたりの手抜き……あわわ、近代的テクニックはお手の物。
でもって、チン♪
出してココアパウダーと蜂蜜滑らかになるまで混ぜます。
「そしてクリーム状になった豆腐をスプーンで一口大にとり、砕いたビスケットをまぶして丸く整形」
「うん、整形だね」
詩さんも一緒にまぶして丸く。
「豆腐……だね。もう一品作るなら挑戦するよ」
これがどうなるの、と悠月さんも寄ってきました。好奇心いっぱいで、にこにこと手伝います。
「最後に茶こしでココアパウダーをかけて完成! どお? 普通のトリュフチョコと間違えるわよ?」
そんなこんなで、メルクーアさんのなんちゃってトリュフもなかなか簡単ですよね。
「確かにまろやかなチョコの味がするね」
「しかも濃厚な感じですかね」
試食した詩さんと恵さんも納得です。
ほかにもアレンジを加える人がいます。
「あら?」
柊さんがハヒヤさんの様子に気付きました。何かごそごそおやつ袋から何か取り出しているようですね。
「今持っているお菓子は……なっつとちょことちーず……うん! 適当に乗せれば良さそうにゃ!」
たりらりったりー、と取り出したものを掲げるハヒヤさん。これをアーモンドの代わりにするつもりです。
「あ……私もナッツとチョコレートを用意してきました。試しに焼いてみたいですよね?」
紫苑さんもお皿に載せた材料を持ってきます。でもって、二人一緒にちょんちょんとリズミカルにデコレーション。
「美味しく焼けたら差し入れに配って回りたいです。やっぱり、お料理は誰かに食べて貰えてこそ、ですからね」
紫苑さん、そう言ってにっこりなのです。
これにガンジさんも気付きます。
「トッピングで遊ぶのか? そんじゃ、いろんな木の実を砕いてみたりマシュマロ自体に色や味をつけたり……」
「え、えーと、色付けですか? その……初華さん、何かあります?」
ガンジさんのアイデアを聞いた小太さん、近くにいた初華さんに聞いてみます。
「色は……焼き上がりが小麦色だからどうだろ? 味もすでに甘いから……やるならトウガラシを細かくして混ぜるとか?」
「どうしてレモンとか言わないかな……」
近くで聞いていた詩さんは一瞬固まってたり。といっても、手元にトウガラシがあったのだから仕方ないともいうのです。
「俺がやるのかーうおぅ。……がんばる、やってみる!」
「ガンジさん、それはしない方がいいのではぁ?」
一本気なガンジさん、期待されたからにはと燃えます。トウガラシを初華さんから受け取るとどだだだだっ、とみじん切りに。小太さんは止めますが、そんなおずおずした静止でストップするようなガンジさんではありませんよ?
「……あ、焼けたみたいですよぉ」
「な、何? よし、どうだった?」
小太さん、頭を一ひねりしてガンジさんの注意をほかに向けました。これでトウガラシマシュマロクッキーの誕生が阻止されましたね。
一方、ハヒヤさんがお友達の様子に気付きます。
「にゅ? ひさめんの方は何してるにゃ?」
「メルクーアさんたちの『なんちゃってトリュフ』を作ってます。ベリモルさんのクッキーも美味しく出来上がるといいですねぇっ」
うふふと微笑しつつ、ハヒヤさんと紫苑さんの分のトリュフも作ってあげる柊さんなのです。
ちなみにオーブンの方に行ったガンジさん。
「うおお……なんだ、これは」
「みごとに分解されてますねぇ」
バットを取り出して、手のひら大のマシュマロクッキーの焼き上がりを見ると、見事それぞれ一つの形に分かれて焼きあがっていたようで。
「立体ジグソーパズルみたいねー。……でも、ちゃんとそれぞれ焼けてるよ?」
「あーっ。食ったらジグソーパズルできねぇジャン!」
横から覗いた初華さん、ひょいと一つつまんでかじって確認したのですが、それぞれのしかかるような形から外れていた立体パズルのピースが一つ欠けた形になりました。ガンジさんが慌てるのも無理ないですが……。
「いつの間にジグソーパズルづくりになってしまったのでしょうかぁ」
汗たら~する小太さんの言う通りだったりします。
「後は何かお茶があればいいよね……」
それはそれとして、ほぼ試食会に移りつつある雰囲気から悠月さんが気をきかせます。
「お、おう。紅茶用意しようぜ」
ガンジさんもくよくよしていません。
「じゃ、まずはお湯だね」
悠月さんと一緒に準備をするのです。
●
さて、時は若干遡ります。
「ふぅ……」
黒い長髪を後ろでまとめた、すらりとした男がハンターオフィスを歩いています。深いため息とともに、ちょっとぐらりと体勢を崩したりも。
うつむいていた顔を上げたのは鞍馬 真(ka5819)さんです。
どうやらお疲れのようですね。
「重体寸前の怪我が治ったとはいえ……」
普段ならもうちょっと早い時間帯にハンターオフィスに来て新たな依頼を探していたかもしれません。というか、それならそれで休んでいればいいのにしっかりオフィスに依頼探しに来るあたり……。
「我ながら、本能だな」
ワーカーホリックの、と自嘲します。でもなんだかにやりとする表情に、誇らしいような様子もありますね。
そんな真さんが目的の場所に行くと、先客がいます。
「よ」
「やぁ」
真さん、ハンター同士として短い挨拶をすると相手も勝手知ったるように短く挨拶を返してきます。
相手は玉兎 小夜(ka6009)さんです。
で、小夜さんは依頼探しの場所から離れてオペレーターの方へ。
「無駄に強い敵の依頼ばっかじゃーん!」
だしだし、と両手で机を叩いて文句言ってますね。とはいえよくあることなのでしょうか、対応しているオペレーターは慣れたもので特に慌てた様子はありません。
「雑魚とは言わないけど、こう。普通のいないの、普通の!」
ぴょんぴょんと前かがみのまま弾んだり。まるでウサギさんのようですね。
「そうですかぁ? よく探してみてくださいよぅ」
オペレーターさん、不服そうな表情です。これにはいったん引き下がる小夜さんです。
「……よく探せ、か」
これを聞いていた真さん、今の俺には無理かもしれない、と依頼探しをやめました。
再び、疲れたようにオフィス内を徘徊……はわわ、あてどなくさまよいます。
「ん?」
いや、何かに反応しました。
それはあるいは、本能だったのかもしれません。
「ここは?」
気付いた時には調理室の前に立っていました。中から甘いいい匂い。真さんの身体はこれに反応したのかもしれませんね。
「んあっ! 真さん、こっちこっち!」
気付けば初華さんに招き入れられ……。
「うまいな、これ」
「チーズが乗ったのもあるから食べてくださいね」
「真さん、トリュフもあるからねー」
いつの間にか試食している真さん。紫苑さんとメルクーアさんかもら立て続けに次のお菓子を勧められたり。
さらにほかの人も次々と。
だって真さん、とってもおいしそうに食べるのですから。
(ああ、思ったより疲れていたんだなぁ)
今日は休もう、と紅茶をすする真さんなのです。
「ねえ?」
「ん? おう」
そんな楽しいお茶会の中、フェリテさんはオウガさんにウインクしてこっそりと部屋から離れるのでした。
「さあ、差し入れに行きますよ」
恵さんも調理室からどこかへレッツゴー。
こちら、再び依頼探しをしている小夜さん。
「全く、最近の依頼はなんか大きな敵だとか眷属だとかばかり……」
むー、と目を細めて再び依頼を探していますね。
そこに、いつも聞きなれた声が背後から。
「うさぎさん♪」
「ん? 恵。どうしたの?」
小夜さんが振り向いた瞬間でした!
「んー……」
背後にどアップで迫っていた恵さんの顔。しかも丸いクッキーを唇にくわえて夢見るように瞳を閉じて迫ってきているじゃないですか!
小夜さん、もう逃げられません。
――むにゅ。
あるいは逃げる必要はなかったかもですが、クッキーを唇に押し付けられました。
キス……まではいかない微妙な距離感で離れる恵さん。
「どうです? 美味しいですか?」
恵さん、楽しそうに両手を腰の後ろに組んでゆらりしながらにこにこ聞いてきます。
「むぐむぐ」
さくさく、むぎゅり、と全部食べる小夜さん。間接キスですね。
「さすが恵、おいしい」
とか思いましたが、口には出しません。
「ん……」
代わりに手を出しました。
「ん♪」
手を差し出しす恵さん。
手に手をつないで場所を変えるのでした。
そんな小夜さんと恵さんが通り過ぎたのは資料室の前。
おや。資料室に誰かいますね。
「傲慢の歪虚か……」
並ぶ書籍から目当ての一冊に指を掛けて引き抜いているのは、イレーヌ(ka1372)さんです。ちょっと薄暗い部屋ですが、変わらず色眼鏡は外しません。
「奴等と戦うことも増えた。……何か対抗する為の有力な情報があればいいのだが」
ぺら、とページをめくりますがもちろん有力な情報が出てくるわけではありません。
「ま、出ている情報をどう活用するか、だからな」
イレーヌさん、前向きです。
「お姉ちゃん、来たよ~~」
そこへハートマークを背負ったような雰囲気のメルクーアさんがぴょんと入室。
「……メル、よくここが分かったな?」
「そりゃもうお姉ちゃんのことだから」
んもうあたしに言わせるの、もじもじ、なメルクーアさんです。
「分かった分かった」
言わんとすることが分かり本を戻すイレーヌさん。
向かった先は裏庭の大きな木の下。仲良く座ります。
「……なんちゃってトリュフか。確かに濃厚で甘いな」
「どのくらい濃厚?」
「そうだな……」
イレーヌさん、トリュフを一つつまんでメルクーアさんの口にくわえさせます。
「このくらい、かな?」
でもって、そのトリュフに唇を急接近なのです!
「んんん……」
メルクーアさん、期待に瞳を輝かせ……おっと、エチケットはしっかりしなくちゃ、とばかりに瞳を閉じて顎を可愛らしく上げました。
もぐ、と唇の先で食べられる振動。
「このくらい、だ」
「んんん~?」
えええー、とメルクーアさん。
唇が触れる寸前まででぱくっと食べられいやんいやんと半分をくわえたまま身をひねるのです。
似たような光景は、広間の隅でも。
「うさぎさん、どうでしたか?」
誰もいない木陰で振り向き、改めてさっきの味を恵さんが聞いています。
「恵ぃ」
あら。
今度は小夜さんがクッキーくわえてんーって迫ってきました。
「ん……」
しっかりと受け止めてあげる恵さん。
もちろん、さっきのお返しとばかりに触れない程度に、キス手前まで。
「おいしかったでしょ?」
聞いて来た小夜さんの「さすが恵、おいしい」の気持ちはしっかりと伝わり、にっこりと頷く恵さんなのです。
●
「あー、食った」
「美味しいにゃ~」
「美味しくできてよかったですね、ベリモルさん」
調理室では、ガンジさんが満足そうにのけぞって、それを真似てハヒヤさんも満腹にゃ―、とのけぞりむにゃり。柊さんはそんなお友達に微笑んでおかたずけに入っています。
「せっかくですしフラさんにも食べて貰いたいですけど、い、いないですかねぇ?」
そわ、と小太さんも恋人さんがオフィスにいないかきょろきょろしています。
「それじゃ、差し入れに配ってまわりましょう」
紫苑さんが残りのクッキーを可愛らしく個別ラッピング。
「僕も……今じゃなくていいからいつもお世話になってる人たちにも配りたいな」
悠月さんは、多めに作った分を個別に包んでお持ち帰り♪
「みんなにおすそ分けなの~♪」
ルーシーさんは持参して冷やしておいたミルクに余ったマシュマロを入れてしっかり振り振りしてますね?
「あれ? ルーシーさん何してるの?」
「甘々ミルクにゃ!」
聞いた初華さんにこたえるルーシーさん。リアルブルーのファストフード店で売ってるような、シェイクになるようですね。
「あ、美味しい」
「どれどれ?」
試飲した初華さんの言葉に早速興味を引かれる悠月さんなのです。
そのころ、舞さんは訓練場にいました。
「速く!」
ユナイテッド・ドライブ・ソードを手に腰を落として払います。
そして踏み込んで突き。
「もっと速く!」
そのまま前に出てダウンスイングをかまし、今度は軸線をずらした突きを見舞うのです。
「そして正確に! 狙ったところを一撃で!」
気合の入る訓練ですが、気配を感じて中止し汗をぬぐいましたよ?
「お姉ちゃん、焼き上がったよ~」
見ると、詩さんがやってきています。胸にバスケットを抱えて。
「待ってました!」
ウキウキしつつ駆け寄る様子に、可愛らしいなぁもう、と思う舞さんですが、食いけが先。
「早速いただくよ!」
「もう、恥ずかしいなぁ」
座っていきなりがっつく舞に、汗たら~な苦笑を浮かべる詩さん。
「これは! カリっとしてふわっとしてじゅわっ。面白い食感だね~。うん、いけるいける。詩が作ったと思うとなおさら美味しい!」
食べっぷりもそうだけど、口の回転もなかなかのもの。よほどおいしいのでしょうね。運動したあとでもあるし。
「お姉ちゃんも別にお料理苦手じゃないんだから一緒に作ればよかったのに」
「いや~、やっぱりあたしは作るより作ってもらう方がいいな」
そこまではいいのですが、「うん、将来料理人と結婚しよう!」とかきっぱりと言い放ちます。
「もう、お姉ちゃんたら!」
さすがにこれには将来を案じる妹の詩さんだったりするのです。
でもって、差し入れ部隊として繰り出した一行は。
「ひ、日ごろお世話になってますのでぇ」
「飲み物もどうぞなのー」
「わあっ、ありがとうございます」
小太さんとルーシーさん、オフィスの係員に差し入れです。とっても喜ばれた様子ですね。
「これは、次に何かやるときも協力してあげなくちゃいけないわねー」
中には機嫌よくそんなことをいう係員さんもいます。
「次もオフィスの施設、使わせてくれるの?」
「ほかの予定がなければ、ね」
勢い込んで聞いた初華さんに協力を約束する係員さんです。
のちの話になりますが、「はんたあ倶楽部」の名称でハンター主導の自主的な部活動をすることになりそうです。
「フラさんは今日いなくて残念ですがぁ」
小太さん、次はもしかしたらちゃんといるかもしれませんよ。
「……ですって」
これを通り掛かりに聞いたフェリテさん、オウガさんににっこり微笑みます。
「また活動するかもって? それならまたおじゃましてもいいんじゃねーの?」
そんな会話をしつつちょっと小高い風の感じられる場所へ。
「いい天気♪」
「気持ちいいよな」
二人並んで、フェリテさんが特別に焼いたシナモンとかドライフルーツを乗せて焼いたマシュマロクッキーをパクリ。
「うん、美味しい」
「良かった」
この時、風が。
フェリテさん、長い癖のある髪を押さえました。
「今日は特別に可愛いな」
思わず漏らしたオウガさんの一言に、それまでちょっと物足りなく髪を触っていたフェリテさんに笑顔の花が咲きます。
良かった。ハーフアップにした髪型、気付いてくれてほめてもらえましたね♪
「これから海とか、七夕とか、一緒に行きたいねー」
「ああ。楽しみだ」
二人して抜けるような青空を見て語り合うのです。
そんな、期待感にあふれる天気の良い一日でした。
依頼探しのハンターに、書類を胸に抱えてぱたぱた走る案内係。
きょうもハンターオフィスには多くの人が訪れ、賑やかです。
「すいませ~ん、通して下さ~い」
ひときわ賑やかなのは南那初華(kz0135)さんです。きょうもきょうとてエプロンドレス姿。
何やら箱入りの荷物を両手で抱え、ぱたぱた通路を小走りしています。
そんな通路でのんびり歩く人影が。
「さーて、次の依頼は何にしようかな~」
両手を頭の後ろ手組んでリラックスした様子は、天竜寺 舞(ka0377)さんです。
「お姉ちゃん、元気だよね」
隣を歩く天竜寺 詩(ka0396)さんはくすくす微笑してますね。どうやらいつも活発なお姉さんから元気をもらっているようです。
そこに初華さんがぱたぱたとやってきました。
「ごめんなさ~い、開けて下さ~い」
「何、それ?」
「これ? マシュマロが入ってるの。いまからマシュマロクッキー、焼くのよ。一緒にどう?」
舞さんに答える初華さん、楽しそうです。
「へえ~。マシュマロクッキーって言うのは初めて聞いたけど、楽しそうだね♪」
ちょっと行ってみようかな、と詩さんはウキウキしています。
「あー、あたパス」
おっと。舞さんは苦笑して手をひらひらさせていますね。
「訓練場で体を動かしてお腹を空かせとくよ。沢山食べられるようにね」
「あ、行っちゃった」
「食べる気は満々みたいね~」
汗たら~して見送る詩さん。初華さんも汗たら~してます。
こうして初華さんと詩さんはきゃいきゃい調理室に向かうのです。
「次の依頼受けたけど……また大変なことになってるね」
「そ、そうですねぇ。うまくいくといいのですけどぉ」
途中で霧雨 悠月(ka4130)さんと弓月・小太(ka4679)さんの前を通り掛かります。何をしているのか聞かれてこたえる初華さんと詩さん。
「なんだかおもしろそうだね……小太さん?」
「も、もちろん興味ありますぅ」
うん、と頷き合う二人です。
「ベリモルさん、ふらふらしちゃだめですよぅ……あら?」
「ん、何かにゃ?」
氷雨 柊(ka6302)さんがどこかに行こうとしたハヒヤ・ベリモル(ka6620)さんの裾をつかんだところ、わいわいと四人が通り掛かりました。で、皆さん何してるんです?とかお話を。
「……マシュマロがクッキーになるんですー?」
「料理したことにゃいから、してみるにゃ!」
まあ、と口元に手を当てる柊さん。ハヒヤさんは元気に拳を突き上げてますね。
しばらくのち。
「スキル発動にゃ~!」
どかーん、とダイスを投げたら部屋の外に出たので取りに出たアルス・テオ・ルシフィール(ka6245)さんこと、ルーシーさん。ぺちゃくちゃ移動する六人に気付きます。
聞くと、とても楽しそう。
「よろしくお願いなの」
ぺこ、と一礼して一緒に移動です。
「初華さーん、お待たせ~♪」
しばらくしてメルクーア(ka4005)さんも合流です。
おや、箱を抱えてますね。
「それは?」
興味津々の悠月さん。
「素焼きのアーモンド。今回の材料なんだって」
「そ、それにしては箱が大きいような気がしますよぉ?」
小太さんが中を覗こうとしますが、メルクーアさんはふいと身をよじって中身を見せません。
「秘密♪ も一つ、面白いお菓子を作りたいのだ」
なんか得意げにおっきな胸を張ってますよ?
「……よ、何かうまいもん作るんだって?」
おや。メルクーアさんが身をよじった方には道元 ガンジ(ka6005)さんが寄ってきていました。
「鼻をきかせたのかにゃ?」
「そ、そんなことはないんだぜ!」
感じたことをストレートに口に出したハヒヤさんですが、ガンジさんは否定しているようです。……その割にちょっと慌てた様子ですが。
「ベリモルさんたら……」
横では柊さんがほふぅ、と頬に手を当てています。
「きっとベリモルさん自身、普段からよく鼻をきかせてるんでしょうねぇ」
とか思っての発言なのは内緒です。
一方、調理室では。
「これでいいでしょうか」
フリルのエプロンを身に着けた月護 紫苑(ka3827)さんがオーブンのスイッチを入れています。
「あれ? みんな来てないし、まだ早いですよ?」
メイド服を着ている玉兎・恵(ka3940)さんが目を丸めて振り返ります。
「今回のクッキー、手間が掛からないそうですから」
「だからですか。温度上がるまで待たないといけないですからね」
どうやら二人は料理上手さんの様子。いろいろ気が回りますよね。
「ただいま~」
そこへ、初華さんたち材料係が戻ってきましたよ。
「行きより人数が増えてますよ?!」
恵さん、半身に振り返ってびっくりです。
「きっとみんな鼻をきかせたにゃ!」
「ベリモルさん……あっ!」
再び調子のいいことを言うハヒヤさんに、柊さんが頬に手を当てほふぅとしようとしたところ、びっくりします。
初華さんも詩さんも、みんながやれやれとため息をついたり、んもうと微笑していたからですね。
「にゃ! みんなどうしたのかにゃ!」
ががん、と周りを見るハヒヤさんに、皆は改めて温かく笑うのでした。
●
「じゃあ、はじめましょうかぁ」
小太さんがくるっとエプロンを着けます。
「小太さん、手慣れた感じだね?」
「じ、実家の時に姉達から料理全部任されてましたからぁ……」
少し照れてる小太さんです。
「お姉さんたちって……あ、そういう悠月さんも手慣れてない?」
料理ダメダメさん?と聞こうとした初華さんは自重して、悠月さんがエプロンを着けるのを手伝おう……と思ったけど、さっそうと身に着けたのを見てびっくりしています。
「そう? 面白いことは何だって好きだから、かな?」
着ることにしても返答にしても、舞台慣れしたような感じの悠月さんなのです。
その向こうではルーシーさんが……。
「にゃ? すごいの」
あらあら。
ピンクの長髪を揺らしてあっちに行ってのぞき込んだり、こっちに行って首をひねったり。リアルブルーの調理器具に興味津々です
「トッピングはアーモンドですね」
「ほかのナッツやチョコレートを乗せても美味しいんじゃないでしょうか?」
恵さんは材料を確認。紫苑さんは自分の携行品からチョコとかを取り出しています。
「でも、このマシュマロがクッキーにねぇ」
詩さんは箱からマシュマロを出してしげしげと眺めます。
確かに今は真っ白でまん丸。とてもクッキーっぽくはありません。
それはともかく、本日の材料なので次々と皿の上に移します。
「材料も美味しそうで目が止まるにゃ……食べたいにゃー」
それをじーっと見ていたハヒヤさん、ついふらふらと皿の方に手をそーっと伸ばして……。
「あらっ?」
びくっ!
ハヒヤさんの動向に柊さんが気付きましたよ?
「ベリモルさん、今食べようとしてましたぁ?」
「はっ! 気づいたら手がましゅまろに! これは作ろうとして取ったんにゃ! 気のせいにゃ!」
あーん、と口を開けてマシュマロを……いやいや、きっとあくびに違いありません。
「き、気のせいでしたかぁ。それはごめんなさいですよぅ」
柊さん、本当は気のせいなんかじゃなく……いやいや、そうですね。気のせいです。
「それにしても、ふわふわのマシュマロがクッキーになるなんて、びっくりですねぇ……でも考えてみれば元々甘いから砂糖を入れる必要もないし、簡単で作りやすそうですー」
柊さんもハヒヤさんに習ってマシュマロを手に取り微笑んでいます。
――ぺしっ!
おや、何か音が。
「うん。作り方はマシュマロを半分に切って円盤状に潰して上にトッピング乗せて焼くだけって教わったよ♪」
初華さんが作り方を説明します。
なお、その前にちょっと何かを叩いたようですね。
初華さんの背後ではへにょっとしょぼくれたルーシーさんと、めっという感じで注意をしているメルクーアさんがいます。
「まさかファントムハンドでつまみ食いをたくらむとはねぇ。きっともっと美味しくなるのに」
「ごめんなさいにゃ……でも叩くことないにゃ」
メルクーアさんに諭されている最中もファントムハンドで初華さんのメイド服のリボンをいじってほどいたり。初華さん、服の腰が急に緩くなって気付いて振り返って、びくっとしたルーシーさんは逃げてそれを初華さんが追い掛けたり。
「というわけで、早速作りましょっか」
変わってメルクーアさんがにこり、なのです。
「じゃ、まずはこれを半分に切る、だね」
戦闘では刀を振るう悠月さんですが、ちゃんと包丁も使えるのです。
「……うん、柊さんの言う通り、元々甘いから砂糖も必要ないね」
切った半分をぱくっと試食してみる悠月さんです。
「にゃ!」
これを見たハヒヤさん、少し不満そうです。きっとルーシーさんも近くにいれば同じ反応をしたに違いありません。
「……味見とつまみ食いの違いだと思いますよぅ」
小太さんは半分に切ったマシュマロを潰しながら説明します。
「それにしても微妙な手ごたえですねぇ」
これは麺棒を使った方がいいかもですぅ、と小太さん。手慣れた感じに探し出して、しっかりころころと押し潰すのです。
「でも、見た目がクッキーっぽい方がいいですよね」
恵さん、可愛らしくぷっくりと中央の膨らんだ形に整えます。
「……うーん、やっぱり女の子は上手だね」
「それはそうですねぇ」
感心する悠月さん。もちろん小太さんも上手で、完全な小判型にはせず見た目にこだわるのです。だてにお姉さんたちに料理全部を任されていたわけではないですね。
「でも、マシュマロって小さいよなぁ」
おや。
ガンジさんは半分にしたマシュマロをつまんで眺めては首をひねっていますね。
一体何を考えているのでしょうか?
そんな時、調理室の外を通り掛かる二人組がいました。
「あれ? 何か賑やかね」
ひょい、と覗いたのはフィリテ・ノート(ka0810)さんです。ハーフアップにした自分の髪に手を添えなでなでしています。
「あ、これ? マシュマロでクッキーを作ってるんだ」
気付いた悠月さん、バットに載せた焼く前の白いマシュマロを見せます。
「へー。珍しいもんだな」
フェリテさんと一緒にいたのはオウガ(ka2124)さんです。
部屋では初華さんがルーシーさんに「そうじゃないよぅ」とか手取り教えていたり、紫苑さんの「自分の作ったお菓子を、誰かに食べてもらえて、喜んでもらえるのって……嬉しいですよね!」という言葉に詩さんが頷いて「簡単に沢山作れるから今度アマリリス商会や十三夜の皆にも作ってもっていってあげようかな?」とか言ってたり。
わいわい、きゃいきゃい。
にぎやかなのとか楽しいことが……ええとつまり、お祭りっぽいこと大好きな少年の瞳には、そんなにぎわいがとってもキラキラに映ります。
「なあ、リテ。ちょっと寄ってかないか?」
「そう言うと思ってた♪」
フェリテさん、オウガさんの言葉ににっこり頷きながらハーフアップにした自分の髪を撫でるのです。
●
「いいですかぁ、まず半分に切って……」
柊さんが包丁でマシュマロを切りつつ、フェリテさんに教えます。
「まず半分ね」
「半分にゃ」
フェリテさんとハヒヤさんが並んで実践。
「そして押し潰して形を整えてくださいねー」
恵さんが隣でマシュマロむぎゅり。
「よし、押し潰すんなら任せとけ!」
「……オー君、力づくはだめだよ?」
恋人の蛮行……いやいや、思い切りの良い行動をいち早く察知したフェリテさん、それとなくくぎを刺しておきます。
ちなみに、そういうストップがない場合どうなるかというと……。
「よし! マシュマロをいっぱいつぶして、大きなマシュマロクッキーを作るのだ!」
ばばん、と拳を固めてガンジさんが一大決心。
麺棒を使って十五個くらいがくっつくようにこねこねと奮闘中です。
……はい。普通、なかなかくっつかないですよね?
だものでガンジさん、より一層体重をかけてこねこねこねこね……。
「にゃ? 大きすぎでオーブンに入らないと思うのー」
おっと。
ルーシーさん、さすがに興味津々で機材を見て回っていただけはありしっかり注意しましたよ。
「え?! じゃ、じゃあ手のひらサイズぐらいならOK?」
がーんと動きを止めたガンジさん。両手で抱えるぐらいのを作ろうとしていたのは内緒ですよ。
ちなみにこのころ最初にオーブンに掛けた分が焼きあがっています。
「ふわ、こんな簡単に美味しいお菓子出来るのですねぇ。驚いたのですよぉ」
「うん。かりふわで美味しいね♪」
早速試食会。口にした小太さんと詩さん、それぞれカリッと端の方をかんでみたり口の中でじっくりと気泡のある内部の軽やかさを味わってみたり。甘味がとろけるような食感も楽しいようですね。上に乗った良い香りのアーモンドからにじむ油脂もいいアクセントになります。
おや。
作業がひと段落して試食段階に入ったところで、なにやらがさごそしてる人がいますね。
「それじゃそろそろ用意しようかしら?」
メルクーアさんです。アーモンドと一緒に運んだ材料を取り出しています。
「そういえばもう一つ何か作るっていってましたかぁ?」
小太さん、ひょいと覗きます。
すると、豆腐にココアパウダーに蜂蜜、そしてビスケットが出てきましたよ?
「ほへえ、もう一品?」
「んふふー。その名も『ヘルシーなんちゃってトリュフ』」
寄って来た初華さんに、得意げに話すメルクーアさん。
「まずは袋に入れてビスケットを細かく砕いてー」
「よし、砕くんなら任せとけ!」
「オー君……」
メルクーアさんの説明に腕まくりするオウガさん。フェリテさんは汗たら~です。
「豆腐は水切り。そしてそれをココアパウダーと蜂蜜を容器に入れて、なめらかになるまで混ぜる」
「水切り? 急がないと! ……確か電子レンジで時間短縮できたはず!」
恵さんがびっくりしつつ豆腐を手に取ります。リアルブルー出身の女子高生なのでこのあたりの手抜き……あわわ、近代的テクニックはお手の物。
でもって、チン♪
出してココアパウダーと蜂蜜滑らかになるまで混ぜます。
「そしてクリーム状になった豆腐をスプーンで一口大にとり、砕いたビスケットをまぶして丸く整形」
「うん、整形だね」
詩さんも一緒にまぶして丸く。
「豆腐……だね。もう一品作るなら挑戦するよ」
これがどうなるの、と悠月さんも寄ってきました。好奇心いっぱいで、にこにこと手伝います。
「最後に茶こしでココアパウダーをかけて完成! どお? 普通のトリュフチョコと間違えるわよ?」
そんなこんなで、メルクーアさんのなんちゃってトリュフもなかなか簡単ですよね。
「確かにまろやかなチョコの味がするね」
「しかも濃厚な感じですかね」
試食した詩さんと恵さんも納得です。
ほかにもアレンジを加える人がいます。
「あら?」
柊さんがハヒヤさんの様子に気付きました。何かごそごそおやつ袋から何か取り出しているようですね。
「今持っているお菓子は……なっつとちょことちーず……うん! 適当に乗せれば良さそうにゃ!」
たりらりったりー、と取り出したものを掲げるハヒヤさん。これをアーモンドの代わりにするつもりです。
「あ……私もナッツとチョコレートを用意してきました。試しに焼いてみたいですよね?」
紫苑さんもお皿に載せた材料を持ってきます。でもって、二人一緒にちょんちょんとリズミカルにデコレーション。
「美味しく焼けたら差し入れに配って回りたいです。やっぱり、お料理は誰かに食べて貰えてこそ、ですからね」
紫苑さん、そう言ってにっこりなのです。
これにガンジさんも気付きます。
「トッピングで遊ぶのか? そんじゃ、いろんな木の実を砕いてみたりマシュマロ自体に色や味をつけたり……」
「え、えーと、色付けですか? その……初華さん、何かあります?」
ガンジさんのアイデアを聞いた小太さん、近くにいた初華さんに聞いてみます。
「色は……焼き上がりが小麦色だからどうだろ? 味もすでに甘いから……やるならトウガラシを細かくして混ぜるとか?」
「どうしてレモンとか言わないかな……」
近くで聞いていた詩さんは一瞬固まってたり。といっても、手元にトウガラシがあったのだから仕方ないともいうのです。
「俺がやるのかーうおぅ。……がんばる、やってみる!」
「ガンジさん、それはしない方がいいのではぁ?」
一本気なガンジさん、期待されたからにはと燃えます。トウガラシを初華さんから受け取るとどだだだだっ、とみじん切りに。小太さんは止めますが、そんなおずおずした静止でストップするようなガンジさんではありませんよ?
「……あ、焼けたみたいですよぉ」
「な、何? よし、どうだった?」
小太さん、頭を一ひねりしてガンジさんの注意をほかに向けました。これでトウガラシマシュマロクッキーの誕生が阻止されましたね。
一方、ハヒヤさんがお友達の様子に気付きます。
「にゅ? ひさめんの方は何してるにゃ?」
「メルクーアさんたちの『なんちゃってトリュフ』を作ってます。ベリモルさんのクッキーも美味しく出来上がるといいですねぇっ」
うふふと微笑しつつ、ハヒヤさんと紫苑さんの分のトリュフも作ってあげる柊さんなのです。
ちなみにオーブンの方に行ったガンジさん。
「うおお……なんだ、これは」
「みごとに分解されてますねぇ」
バットを取り出して、手のひら大のマシュマロクッキーの焼き上がりを見ると、見事それぞれ一つの形に分かれて焼きあがっていたようで。
「立体ジグソーパズルみたいねー。……でも、ちゃんとそれぞれ焼けてるよ?」
「あーっ。食ったらジグソーパズルできねぇジャン!」
横から覗いた初華さん、ひょいと一つつまんでかじって確認したのですが、それぞれのしかかるような形から外れていた立体パズルのピースが一つ欠けた形になりました。ガンジさんが慌てるのも無理ないですが……。
「いつの間にジグソーパズルづくりになってしまったのでしょうかぁ」
汗たら~する小太さんの言う通りだったりします。
「後は何かお茶があればいいよね……」
それはそれとして、ほぼ試食会に移りつつある雰囲気から悠月さんが気をきかせます。
「お、おう。紅茶用意しようぜ」
ガンジさんもくよくよしていません。
「じゃ、まずはお湯だね」
悠月さんと一緒に準備をするのです。
●
さて、時は若干遡ります。
「ふぅ……」
黒い長髪を後ろでまとめた、すらりとした男がハンターオフィスを歩いています。深いため息とともに、ちょっとぐらりと体勢を崩したりも。
うつむいていた顔を上げたのは鞍馬 真(ka5819)さんです。
どうやらお疲れのようですね。
「重体寸前の怪我が治ったとはいえ……」
普段ならもうちょっと早い時間帯にハンターオフィスに来て新たな依頼を探していたかもしれません。というか、それならそれで休んでいればいいのにしっかりオフィスに依頼探しに来るあたり……。
「我ながら、本能だな」
ワーカーホリックの、と自嘲します。でもなんだかにやりとする表情に、誇らしいような様子もありますね。
そんな真さんが目的の場所に行くと、先客がいます。
「よ」
「やぁ」
真さん、ハンター同士として短い挨拶をすると相手も勝手知ったるように短く挨拶を返してきます。
相手は玉兎 小夜(ka6009)さんです。
で、小夜さんは依頼探しの場所から離れてオペレーターの方へ。
「無駄に強い敵の依頼ばっかじゃーん!」
だしだし、と両手で机を叩いて文句言ってますね。とはいえよくあることなのでしょうか、対応しているオペレーターは慣れたもので特に慌てた様子はありません。
「雑魚とは言わないけど、こう。普通のいないの、普通の!」
ぴょんぴょんと前かがみのまま弾んだり。まるでウサギさんのようですね。
「そうですかぁ? よく探してみてくださいよぅ」
オペレーターさん、不服そうな表情です。これにはいったん引き下がる小夜さんです。
「……よく探せ、か」
これを聞いていた真さん、今の俺には無理かもしれない、と依頼探しをやめました。
再び、疲れたようにオフィス内を徘徊……はわわ、あてどなくさまよいます。
「ん?」
いや、何かに反応しました。
それはあるいは、本能だったのかもしれません。
「ここは?」
気付いた時には調理室の前に立っていました。中から甘いいい匂い。真さんの身体はこれに反応したのかもしれませんね。
「んあっ! 真さん、こっちこっち!」
気付けば初華さんに招き入れられ……。
「うまいな、これ」
「チーズが乗ったのもあるから食べてくださいね」
「真さん、トリュフもあるからねー」
いつの間にか試食している真さん。紫苑さんとメルクーアさんかもら立て続けに次のお菓子を勧められたり。
さらにほかの人も次々と。
だって真さん、とってもおいしそうに食べるのですから。
(ああ、思ったより疲れていたんだなぁ)
今日は休もう、と紅茶をすする真さんなのです。
「ねえ?」
「ん? おう」
そんな楽しいお茶会の中、フェリテさんはオウガさんにウインクしてこっそりと部屋から離れるのでした。
「さあ、差し入れに行きますよ」
恵さんも調理室からどこかへレッツゴー。
こちら、再び依頼探しをしている小夜さん。
「全く、最近の依頼はなんか大きな敵だとか眷属だとかばかり……」
むー、と目を細めて再び依頼を探していますね。
そこに、いつも聞きなれた声が背後から。
「うさぎさん♪」
「ん? 恵。どうしたの?」
小夜さんが振り向いた瞬間でした!
「んー……」
背後にどアップで迫っていた恵さんの顔。しかも丸いクッキーを唇にくわえて夢見るように瞳を閉じて迫ってきているじゃないですか!
小夜さん、もう逃げられません。
――むにゅ。
あるいは逃げる必要はなかったかもですが、クッキーを唇に押し付けられました。
キス……まではいかない微妙な距離感で離れる恵さん。
「どうです? 美味しいですか?」
恵さん、楽しそうに両手を腰の後ろに組んでゆらりしながらにこにこ聞いてきます。
「むぐむぐ」
さくさく、むぎゅり、と全部食べる小夜さん。間接キスですね。
「さすが恵、おいしい」
とか思いましたが、口には出しません。
「ん……」
代わりに手を出しました。
「ん♪」
手を差し出しす恵さん。
手に手をつないで場所を変えるのでした。
そんな小夜さんと恵さんが通り過ぎたのは資料室の前。
おや。資料室に誰かいますね。
「傲慢の歪虚か……」
並ぶ書籍から目当ての一冊に指を掛けて引き抜いているのは、イレーヌ(ka1372)さんです。ちょっと薄暗い部屋ですが、変わらず色眼鏡は外しません。
「奴等と戦うことも増えた。……何か対抗する為の有力な情報があればいいのだが」
ぺら、とページをめくりますがもちろん有力な情報が出てくるわけではありません。
「ま、出ている情報をどう活用するか、だからな」
イレーヌさん、前向きです。
「お姉ちゃん、来たよ~~」
そこへハートマークを背負ったような雰囲気のメルクーアさんがぴょんと入室。
「……メル、よくここが分かったな?」
「そりゃもうお姉ちゃんのことだから」
んもうあたしに言わせるの、もじもじ、なメルクーアさんです。
「分かった分かった」
言わんとすることが分かり本を戻すイレーヌさん。
向かった先は裏庭の大きな木の下。仲良く座ります。
「……なんちゃってトリュフか。確かに濃厚で甘いな」
「どのくらい濃厚?」
「そうだな……」
イレーヌさん、トリュフを一つつまんでメルクーアさんの口にくわえさせます。
「このくらい、かな?」
でもって、そのトリュフに唇を急接近なのです!
「んんん……」
メルクーアさん、期待に瞳を輝かせ……おっと、エチケットはしっかりしなくちゃ、とばかりに瞳を閉じて顎を可愛らしく上げました。
もぐ、と唇の先で食べられる振動。
「このくらい、だ」
「んんん~?」
えええー、とメルクーアさん。
唇が触れる寸前まででぱくっと食べられいやんいやんと半分をくわえたまま身をひねるのです。
似たような光景は、広間の隅でも。
「うさぎさん、どうでしたか?」
誰もいない木陰で振り向き、改めてさっきの味を恵さんが聞いています。
「恵ぃ」
あら。
今度は小夜さんがクッキーくわえてんーって迫ってきました。
「ん……」
しっかりと受け止めてあげる恵さん。
もちろん、さっきのお返しとばかりに触れない程度に、キス手前まで。
「おいしかったでしょ?」
聞いて来た小夜さんの「さすが恵、おいしい」の気持ちはしっかりと伝わり、にっこりと頷く恵さんなのです。
●
「あー、食った」
「美味しいにゃ~」
「美味しくできてよかったですね、ベリモルさん」
調理室では、ガンジさんが満足そうにのけぞって、それを真似てハヒヤさんも満腹にゃ―、とのけぞりむにゃり。柊さんはそんなお友達に微笑んでおかたずけに入っています。
「せっかくですしフラさんにも食べて貰いたいですけど、い、いないですかねぇ?」
そわ、と小太さんも恋人さんがオフィスにいないかきょろきょろしています。
「それじゃ、差し入れに配ってまわりましょう」
紫苑さんが残りのクッキーを可愛らしく個別ラッピング。
「僕も……今じゃなくていいからいつもお世話になってる人たちにも配りたいな」
悠月さんは、多めに作った分を個別に包んでお持ち帰り♪
「みんなにおすそ分けなの~♪」
ルーシーさんは持参して冷やしておいたミルクに余ったマシュマロを入れてしっかり振り振りしてますね?
「あれ? ルーシーさん何してるの?」
「甘々ミルクにゃ!」
聞いた初華さんにこたえるルーシーさん。リアルブルーのファストフード店で売ってるような、シェイクになるようですね。
「あ、美味しい」
「どれどれ?」
試飲した初華さんの言葉に早速興味を引かれる悠月さんなのです。
そのころ、舞さんは訓練場にいました。
「速く!」
ユナイテッド・ドライブ・ソードを手に腰を落として払います。
そして踏み込んで突き。
「もっと速く!」
そのまま前に出てダウンスイングをかまし、今度は軸線をずらした突きを見舞うのです。
「そして正確に! 狙ったところを一撃で!」
気合の入る訓練ですが、気配を感じて中止し汗をぬぐいましたよ?
「お姉ちゃん、焼き上がったよ~」
見ると、詩さんがやってきています。胸にバスケットを抱えて。
「待ってました!」
ウキウキしつつ駆け寄る様子に、可愛らしいなぁもう、と思う舞さんですが、食いけが先。
「早速いただくよ!」
「もう、恥ずかしいなぁ」
座っていきなりがっつく舞に、汗たら~な苦笑を浮かべる詩さん。
「これは! カリっとしてふわっとしてじゅわっ。面白い食感だね~。うん、いけるいける。詩が作ったと思うとなおさら美味しい!」
食べっぷりもそうだけど、口の回転もなかなかのもの。よほどおいしいのでしょうね。運動したあとでもあるし。
「お姉ちゃんも別にお料理苦手じゃないんだから一緒に作ればよかったのに」
「いや~、やっぱりあたしは作るより作ってもらう方がいいな」
そこまではいいのですが、「うん、将来料理人と結婚しよう!」とかきっぱりと言い放ちます。
「もう、お姉ちゃんたら!」
さすがにこれには将来を案じる妹の詩さんだったりするのです。
でもって、差し入れ部隊として繰り出した一行は。
「ひ、日ごろお世話になってますのでぇ」
「飲み物もどうぞなのー」
「わあっ、ありがとうございます」
小太さんとルーシーさん、オフィスの係員に差し入れです。とっても喜ばれた様子ですね。
「これは、次に何かやるときも協力してあげなくちゃいけないわねー」
中には機嫌よくそんなことをいう係員さんもいます。
「次もオフィスの施設、使わせてくれるの?」
「ほかの予定がなければ、ね」
勢い込んで聞いた初華さんに協力を約束する係員さんです。
のちの話になりますが、「はんたあ倶楽部」の名称でハンター主導の自主的な部活動をすることになりそうです。
「フラさんは今日いなくて残念ですがぁ」
小太さん、次はもしかしたらちゃんといるかもしれませんよ。
「……ですって」
これを通り掛かりに聞いたフェリテさん、オウガさんににっこり微笑みます。
「また活動するかもって? それならまたおじゃましてもいいんじゃねーの?」
そんな会話をしつつちょっと小高い風の感じられる場所へ。
「いい天気♪」
「気持ちいいよな」
二人並んで、フェリテさんが特別に焼いたシナモンとかドライフルーツを乗せて焼いたマシュマロクッキーをパクリ。
「うん、美味しい」
「良かった」
この時、風が。
フェリテさん、長い癖のある髪を押さえました。
「今日は特別に可愛いな」
思わず漏らしたオウガさんの一言に、それまでちょっと物足りなく髪を触っていたフェリテさんに笑顔の花が咲きます。
良かった。ハーフアップにした髪型、気付いてくれてほめてもらえましたね♪
「これから海とか、七夕とか、一緒に行きたいねー」
「ああ。楽しみだ」
二人して抜けるような青空を見て語り合うのです。
そんな、期待感にあふれる天気の良い一日でした。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/26 21:31:13 |