• 界冥

【界冥】シャットダウン・カスケード

マスター:cr

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/06/12 22:00
完成日
2017/06/25 03:14

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「ほれ、これがパーツじゃ。リクエスト通りゲートの機能も付けてある」
 “サーバー”の復活、そしてオートマトンの復活につながるパスポートはあっさりと届けられた。ハンター達がトマーゾ教授のオーダーに沿って集めた成果は十分だったようだ。
「あとはこれをセットすれば……本当にやるのか?」
「今更言うなんて君らしくないね」
 さすがに怖気づくナディアにアズラエルはそう肩をすくめつつ返した。
「理屈の上ではこの前の血盟作戦の時と同じ。違いと言えば今度は取り込まれている最中に死んだら本当に死ぬ、ってことだけだよ」
「それが大きな違いじゃと思うのじゃが」
「だけど、だからこそカスケードも倒すことが出来る。リスクがあるからリターンもあるわけだよ」
「確かにそうじゃが……そういえばそのカスケードは一体どういう歪虚なのじゃ?」
 ナディアの疑問には誰も答えられなかった。当然だ。今までカスケードがこちらに見せた姿は全てかりそめの物。その実体を確認した者は誰もいない。
「あくまで推測でしか言えぬが、恐らく嫉妬の眷属じゃろう。精霊が入っていないオートマトンの素体をあたかもオートマトンの様に動かしていたのじゃからな」
 だが、その疑問に但し書き付きで教授はそう答えた。
「なんと、そこまでわかっておるのか」
「お前達がパーツ以外の物、特にオートマトンの残骸を収集してくれとったからな」
 人と機械、その境界線は精霊の存在、言い換えるなら“心”があるか否かとも言えた。その境界線をエバーグリーン出身のトマーゾが知るということは、すなわちオートマトンを心ある者として扱わなかったエバーグリーンの者に反省を迫ることになるのだろうが、それについて教授がどう思っていたかは我々は知る由もない。
「ただ、嫉妬の眷属じゃとすると厄介なことになる。それはすなわちサーバーの中がカスケードの領域にされておるということじゃ。敵地に踏み込むということじゃから半端な覚悟では臨めぬぞ」
 教授は代わりに、警告を一つしていた。


 そこにあったものは真っ暗な空間と、そこに上下左右に整然と走る緑色の光の線、グリッドラインであった。自然の造形を一切感じさせないその空間に音もなくある者が現れる。
「カスケード、居るか?」
 現れた者の名はラプラス。黙示騎士の一体だった。
「もうラプラスちゃーん、わざわざここに入ってくること無いじゃーん。俺っちとお話したかったら外でも大丈夫っしょ?」
 それに答えて甲高い耳障りな声が聞こえる。が、姿は見えない。
「その前に姿を見せたらどうだ」
「ちぇっ、今回こそラプラスちゃんを驚かせたかったのに」
 突然ラプラスの前に巨大な人影が飛び出してくる。その姿は派手な色の衣服に身を包み顔を白塗りにした人間、言うならば道化師のそれであった。そんな姿の者が突然大きくなり姿を表したとなるとびっくり箱でも模したつもりなのだろうか。
「外で話さなかった理由は簡単だ。あなたが聞きたくないからとサーバー内に閉じこもられても困るからな」
「もう何よラプラスちゃーん、そんなにもったいぶっちゃって。もしかしてここにオマヌケちゃんたちがやってくるとか言いたいの?」
「さすがに察しがいいな」
「マジで?」
 しばらくの沈黙。やがてカスケードの狂いじみた笑い声が空間に響く。
「ア~ッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! イ~ッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ! バカだとは思ってたけどこんなにバカだとは思わなかった。ここは俺っちの領域。こっちにわざわざ来てくれるなんて最高じゃーん!」
 笑いの余り転げ回るカスケードを全く反応を示さず見下ろすラプラス。
「論理の無い自信はフェアではない、カスケード」
「俺っちがフェアなわけ無いじゃーん! ウッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
 そしてカスケードの前にトマーゾ教授が突然現れた。
「俺っちならこういうことも出来るわけでさあ、な~に考えてんだろ。アッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
「趣味の悪いデーモンは片付けろ」
 ラプラスはそれを剣の一振りで切り捨てる。これはカスケードが生み出すデーモンという眷属らしい。
「我はフェアにするために外でハンター達を待つ。サーバー内はあなたの自由にしろ」
 そしてラプラスの姿は掻き消えた。後にはまだ笑い転げ続けるカスケードの姿が残っていた。

リプレイ本文


「これが、カスケードさんのお家……何もないですね……」
 サーバーの中に飛び込んだハンター達が見たものは、アシェ-ル(ka2983)が思わずそう漏らしてしまうほど殺風景な光景だった。彼らを除けばそこに広がるのは一切の変化のない黒一色の世界と、そこに規則正しく引かれた緑色の光の線、たった二色でしか構成されていなかった。その風景がここが敵の領域であることを雄弁に語っていた。
「カスケードを倒さなけりゃルビーは復活出来ねえ、なら俺がやる事は一つ、野郎をぶっ飛ばしてサーバーを復活させる事、虎穴に入らずんば虎子を得ずって奴だ」
 だが春日 啓一(ka1621)の言うとおり、ここに入らなければ行けない理由がハンター達にはあった。
「これが終わればオートマトンとも『友達』になれる世の中になる、か。面白そうだ」
 そう、仙堂 紫苑(ka5953)が言ったようにここで目的を達成すれば世界は変る。その条件は一つ。ここの主を討つこと。世界が変わるのか否かはここに居る八人の肩にかかっていた。
「初めての真剣勝負だ。行くよ、ボクのデッキ!」
 龍堂 神火(ka5693)は既にゴーグルを下ろしていた。それは彼が最初から全開で行く事を示していた。胸に締まった少女の、そして仲間の姿に誓い、必ずここで奴を倒す。その倒すべき相手はいつものように人を食った形で現れた。
「レディース・アンド・ジェントルメーン! ようこそ俺っちのエリアへ!」
 突然ハンター達の中心に飛び出してくる道化師の様な白塗りの男。けばけばしい原色に彩られた姿と聞き覚えのある甲高い声が不快感をもたらす。奴こそがこの場所の主、サーバーに巣食った歪虚、カスケードだった。
「カスケード、何となく嫌いじゃなかったけど」
 その男の声に岩井崎 メル(ka0520)はそう反応する。
「なぁに? 俺っちのファン? サインとか欲しい?」
「でもごめんね、私は『バカ』真面目なだけが取り柄なんだ」
 そして彼女は臨戦態勢に入る。
「ルビーを。オートマトンを。何としても救わなくちゃあいかんのさ……」


「ヘェイ! そういうおセンチな感動ストーリーは主に俺っちが求めてないって伝えたはずだぜ!」
 そんな彼の嘲りの言葉に央崎 遥華(ka5644)はこう返した。
「私達のオートマトンへの思いはカスケードにとって滑稽でしょう」
 カスケードが派手な登場に満足している頃、彼女は死角に回り込んでいた。ここは奴の領域。その中でやるべき事がある。
「サーバー返して貰うんダヨっ」
 遥華と共に居たパトリシア=K=ポラリス(ka5996)は符を辺りに張り巡らせ浄化の陣を作る。最小限の範囲でも自分達の領域に変えようとしていた。
 二人がそうしていたのにカスケードは気づいていたのか、いきなりこちらに向けて指をを鳴らす。
「それじゃ俺っちからのウェルカムプレゼントだぜ!」
 突然彼の前に負のエネルギーが集まってくる。紫色の光の球体がみるみるうちに大きくなっていった。その光景にアシェールは見覚えがあった。
「その手は通用しませんよ!」
 魔法の一種として扱えれば、それを遮断する術も彼女は身につけている。
「ぐわー、やられたー」
 大きくなっていった紫色の球体は急にしぼみ、消え失せる。
「なんて言うと思った?」
 が、またしても大きくなる球体。その球体は限界まで膨れ上がったかと思うと、一条の光線へと姿を変えた。巨大な円柱となりそれはレーザーと化してこちらを襲う。
「システムオールグリーン、ちゃんと機能するみたいだな」
 龍堂に光線が迫る。だがその前には仙堂が居た。機導術を用いマテリアルの鎧を纏った彼は、龍堂を抱え飛ぶ。足から噴出するマテリアルの反動で高く高く飛び上がる。レーザーは脚を掠めた。それだけで強烈な衝撃が来る。直撃していたら只では済まなかっただろう。だが、確かにかわしたのだ。
 仙堂は反射的に障壁を展開しそれをカスケードにぶつける。強制的に押しやり間合いを作る。
 二人が空中に飛んでかわしたその後ろにはメルが居た。そしてもう一人、雨を告げる鳥(ka6258)が居た。
「私は推測する。カスケードは決してフェアには戦わない」
 時に勝利よりも人を小馬鹿にすることを優先する。その事を彼女はこれまでの経験でわかっていた。素直に左右に分かれて回避すればそれはおそらく奴の思う壺だ。
 彼女が短い詠唱を完成させると突如二人の目の前に土壁が出現する。次の瞬間その土壁にレーザーが直撃していた。あっという間に土壁はレーザーに焼かれ消滅していたがそれで威力はずいぶん抑えられていた。メルを残った光線が掠めるが深い傷ではなかった。
 同じようにレインにも光線の残滓が飛ぶ。しかしそれは運悪く急所をピンポイントで直撃していた。その事を理解する前に意識が遠のく。あっという間の出来事だった。
 だがレインは倒れなかった。仲間達の思いが、ここに届けてくれた者達の、そしてクリムゾンウェストで帰りを待っている者達の思いが彼女を支えていた。
 そして彼女は切り札を切った。
「夜を纏いし魔眼よ。終焉の都より来たれり。彼の者の影に楔を打ち込まん」
 再びの詠唱の後に漆黒の球体が現れ、重力という理を捻じ曲げていく。それに逆にカスケードが引き寄せられるのを見て春日とアシェールは動く。
 まず前に出て左右の拳で連打を仕掛ける春日、それに対し
「足を引っ張らないように頑張りますね!」
 盾を構えて並んで進むアシェール。近づいた所で彼女のもう片方の手に持った銃、それに仕込まれた特製の弾丸が火を吹いた。
「ギャッギャッ! か、辛ぇー! いきなり何すんだよ!」
 鉛の代わりにスパイスが詰まった弾丸。撒き散ったものがカスケードの士気を挫く。そこに何かがぶつかって割れた。
「なんだよこれ、ベタベタして変な匂いがして……」
 それは遥華が用意した梅ジャムだった。
「お前ら俺っちがやるようなことやって来てキャラが被ってんだよ! そういうのは俺っち特製のコイツらがお相手してやんよ!」
 配下を呼び出すのも織り込み済み。龍堂はまとめて焼き払おうとカードを用意する。だが。
「ドル……くそ!」
 そこに現れた少女の姿を知っていた。忘れられるはずがなかった。どうしても手が止まる。
 そこに居たのはオートマトンを巡る物語の始まりとなった少女、ルビーだった。


 本物ではない。あるはずもない。
(こんなもんで諦めるかよ。ボクは…!)
 手を止めてしまった龍堂だが改めてカードを投げる。竜の幻影が現れ、炎を吹き付ける。
「どうしてわたしを攻撃しようと……やっぱり敵なんですね……」
 焼かれた少女は聞き覚えのある声で語りかける。その声に戸惑わざるを得ない。
 だがそれ以上に、アシェールが戸惑っていた。
「ル、ルビーさん? なんで? ルビーさんってそんなに有名人だったなんて!?」
 彼女はその少女のことを知っていた。しかし知っている内容が違った。アシェールにとっては通りすがりに出会った少女。他の者達には大切な存在。
「わ、私だけ…知らない……私だけ……」
 その差にガタガタと震えるしか出来ないアシェール。そんな彼女を引き戻したのは仲間の存在だった。
「惑わされるんじゃねえ! 俺たちが何をしにきたか思い出せ!」
 春日が一喝し、手を取って一旦距離を取る。
 一方パティの目の前で炎に包まれていたルビーの偽物。その炎が消えた時、そこには死体が転がっていた。その姿を見て、いつもはあれだけ明るい彼女が恐怖に襲われる。なぜなら彼女はその死体を見たことがあったからだ。
 彼女はハンターとして依頼を受けて、そして目の前で人が死ぬのを見た。体温が下がり命の灯火が消えていく光景。とっさに目を閉じるパティだったが、その瞼の裏にあの時のことが浮かび上がる。
「アッヒャヒャヒャヒャヒャ! いいねぇ、実にいいよ! 俺っちそういうのが見たかったのよ!」
 今カスケードは絶頂を迎えていた。その彼の様子が故かその姿が大きく見える。いや、実際に大きくなっていた。みるみるうちに膨れ上がり圧倒的な存在となってそびえ立っていた。
 再び奴の目の前に紫の球体が現れ膨らんでいく。
「今度こそ!」
 アシェールは一度効かなかったことにも諦めず、再びレーザーを打ち消すため術式を完成させた。もう一度球体はしぼんでいき、そして今度は確かに消え失せた。
「へへっ、やるじゃーん! まあ俺っちには全然効かないわけだけど? アッヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
 メルのガトリング砲に合わせてレインと仙堂は銃を、そして春日は拳でもって攻撃を打ち込む。しかしその巨体には外れることは無いとは言え、捉えた攻撃もまた効いているようには感じられなかった。
「それじゃもう一発、いっちゃうよ~?」
 もう一度紫色の球体が出現する。アシェールは再度それを押さえるべく術式を組み上げたが、今度は上手く行かなかった。
「アッヒャヒャヒャヒャヒャ! まだ死ぬんじゃねーぞ!」
 放たれる光線の太さは今までのそれとは比べ物にならなかった。その負のマテリアルで構成された光が春日達を襲う。
 春日はためらわず真上に跳んだ。アシェールは一歩も動かなかった。
「もうそこは横に跳べよー! そうやって自分からトラップに突っ込むのが面白いんだからさぁ」
 カスケードは余裕なのかタネを明かしているが、言われたとおりにやるつもりなど無かった。その太い光線はかわしきれるものではなく、彼の足を焼く。
 そしてその後ろにはパティと遥華。しかし彼女は恐れていなかった。レインがこのレーザーを押さえる方法を教えてくれたのだから。
 遥華は術を素早く唱える。土壁が眼前に飛び出したかと思うと一瞬で光線が駆け抜け、全てを消し去っていた。しかし光の晴れた後には壁に守られた二人の無事な姿があった。
 それは春日達も同様だった。足を焼かれつつも跳んでいた彼は着地する。痛みはあるが戦えないことはない。まだ行ける。
 もう一人、アシェールはというと、光が晴れた後も微動だにしていなかった。そう、つまりは彼女は盾一枚でレーザーを耐え抜いていたのだ。
 だが、同時にカスケードの姿も消え失せていた。
「はーい、それじゃあ俺っちのグレートでスッペシャルな方法で終わらせちゃうぜ!」
 一瞬戸惑ったハンター達の前に、気球が急速に膨れ上がるようにカスケードの姿が現れた。その姿は大きく大きく、みるみるうちに大きくなっていく。一瞬でつい先程見た大型自動兵器達のサイズを越え、こちらの何百倍もある巨大な姿へと変わった。
 そのまま足を上げるカスケード。奴がとどめに選んだのは路傍のアリの様に踏み潰すことだった。だが。

「ふふっ、かかったね、カスケード」
 メルの腕が蒼くほのかに光っていたことにカスケードは気づいていなかった。いつからか?それは最初からだった。彼女はこの時を待っていた。杖にまとわりつくワイヤーの様なマテリアルの輝きが強く発光し、そして次の瞬間一帯が炎に包まれる。
「カスタドがイジワルなのハ知ってるモノ」
 目を閉じていたパティは一つ、大きく大きく深呼吸をした。心が透き通っていく。もう乱されることはない。
「ダケドみんなを信じるコトはできるのヨ」
 パティは符を展開する。四方八方に飛んでいく符。それが宙に舞い、そこから雷を落とすその瞬間、遥華の詠唱は終わった。
「どちらの心が強いか、根競べをしましょうか……雑音カスタネット!!」
 水平にも稲妻が走る。何本もの雷撃がカスケードの体を上下左右に貫いていく。
「吼えろドルガ! 頑強なその装甲を突き破れ!」
 そして龍堂の切ったカードから現れたドラゴンがもう一度ブレスを吹き付け、歪虚の体を焼き払う。
 すべての攻撃が重なり、歪虚を押しつぶしていく。その中に春日が飛び込んでいった。右拳に生命をも削りすべての力を集め、たった一点、カスケードのいる場所へ拳を叩き込んだ。
「カスケードは知らない。人の恐怖と絶望。そして弱さしか。希望を、仲間の絆を信じて戦う者の強さを理解できない」
 その全てをカスケードはかわせなかった。レインの展開していた重力球が枷となっていた。もうどうしようもなかった。
「テ、テメェら何だってんだよ! 俺っちはもう止めさせてもらうぜ!」
 急速にしぼんでいくカスケードの体。小さくなり、小さくなり、やがて目にも入らないほど小さくなっていく。
 逃すわけには行かない。パティは符を展開し五角形を形作る。遥華はそこに吹雪を合わせようとする。だが手が止まった。カスケードが今何処にいるかはわかっていた。ふざけたように思えた梅ジャムの付けた匂いが場所を示してくれていた。そこには。
「私、また……ぼっちなんですか……」
 アシェールが居た。


 彼女に周囲の視線が突き刺さっていた。だが、それは非難するものではなかった。
「一人ぼっちじゃないんだヨ?」
 仲間達の支える声が聞こえる。
「ここには皆が居るのさ」
 その声が彼女を引き戻してくれる。
「嫌だけど、怖いけど、このままじゃダメだって、分かったから……殻は自分から破かなきゃって!」
 指輪から桃色の光球が生み出される。それは大きくなり、そしてどこにも飛ばなかった。
「これなら避けられないですよね、カスタネットさん!」
 アシェールは光球を自分の体にぶつける。次の瞬間一帯が大爆発に包まれた。その炎が晴れた後には変わらず彼女の姿があった。そして聞こえる声。
「ちくしょう! こうなったら!」
 カスケードは再び己の身を巨大化させる。どんどん大きくなるが既に限界を迎えていたことを本人は気づいていなかった。
 巨大化する道化師の姿の、その表面が剥がれ落ちていく。後には光る緑の枠のみ。
「オートマトン達と友達になりたかったのはカスケード、お前じゃないのか? 孤独が悲しくて、気付いて欲しくて、お前は道化をやってるんじゃないのか?」
 仙堂は崩れ行くカスケードにそう話しかける。
「友達になろう、カスケード。歪虚の友達も悪くない」
「ア、ア、アワワワ……」
 もはや言葉を返せないカスケードに仙堂は一つ別れの言葉をかけた。
「伝言だ、『嘘つき』だそうだ」
 龍堂もカスケードに伝えたい言葉があった。
「キミさ。ヒトに勝つの、楽しかったろ?」
 様々な想いが去来する。それでも。
「ボクも。キミに負けたり勝ったりするの、結構楽しかったよ」

 その時、パティは突然飛び出した。既に自壊を始めているカスケードの手を握り、共にログアウトしようとする。だが、一度触れた手の場所が崩れ離れていった。彼女がこの空間で最後に見たのは、カスケードが遺したたった二行のメッセージだった。

Shutdown.
BYE

「心というか……モノじゃなくて目に見えないトコ。私が見てるのはさ」
 最後にメルはそう、空間に向けて語りかけた。

依頼結果

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MVP一覧

  • 「ししょー」
    岩井崎 メルka0520
  • 東方帝の正室
    アシェ-ルka2983
  • 雨呼の蒼花
    雨を告げる鳥ka6258

重体一覧

参加者一覧

  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • 破れず破り
    春日 啓一(ka1621
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 雷影の術士
    央崎 遥華(ka5644
    人間(蒼)|21才|女性|魔術師
  • 九代目詩天の想い人
    龍堂 神火(ka5693
    人間(蒼)|16才|男性|符術師
  • 大局を見据える者
    仙堂 紫苑(ka5953
    人間(紅)|23才|男性|機導師
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリス(ka5996
    人間(蒼)|19才|女性|符術師
  • 雨呼の蒼花
    雨を告げる鳥(ka6258
    エルフ|14才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/06/07 08:17:33
アイコン 相談卓
龍堂 神火(ka5693
人間(リアルブルー)|16才|男性|符術師(カードマスター)
最終発言
2017/06/12 16:57:05
アイコン おしえて、モア!(質問卓)
パトリシア=K=ポラリス(ka5996
人間(リアルブルー)|19才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2017/06/10 22:38:43