蛇の通る道

マスター:水貴透子

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2014/06/18 07:30
完成日
2014/06/26 00:44

みんなの思い出

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オープニング

旅人の通る道、そこに奴は存在した。

細く長い舌を覗かせ、鋭い牙は獲物を狙い――……。

とぐろを巻くその姿は、見る者に恐怖を与えた。

※※※

舗装もされていない街道だが、その途中に巨大な大蛇の姿をした雑魔がいると、ハンターオフィスに通達があった。

集落と集落をつなぐ場所にいるため、その場所を通らねばならない者から討伐依頼が出されたらしい。

「今回の討伐対象は蛇型の雑魔になります。大きさは人間の2倍ほど、毒を持っている可能性がありますので、なるべく攻撃は受けない方がいいでしょう」

ハンターオフィスの案内人は、さらりと言ってくれるが、それがどれだけ難しいことなのか分かっているのか、とツッコミを入れたくなる。

「もし、攻撃を受け、毒を受けた場合の事も想定して、ハンターオフィスの方で治療薬を用意しておきます」

「ただし、一般の治療薬なので、今回の雑魔から与えられる毒に効果があるかどうかは分かりませんよ……という事で、やはり攻撃を受けない方がいいかもしれないですね、無傷帰還、かっこいいじゃないですか」

だから、言う側は簡単だが、実行する側は苦労するのか、と小一時間ほど説教してやりたくなる気持ちを覚醒者はグッと堪える。

「本日の天気は晴れ、視界良好ですので、みなさま頑張って雑魔討伐をお願いしますね」

ド天然の案内人の応援を受けながら、覚醒者達は白蛇討伐の任務を開始したのだった――……。


リプレイ本文

●大蛇討伐のために……

「道を行き交う人々が何の心配もなく往来出来るようにしなくてはならないね」
 資料を読みながら、クレド・デイランダール(ka0047)が呟く。
「案内人は少々気になる事を言っていたが、口調から察すると気負う必要はないだろう」
 自分は関係ないからあんな口調なのかな、とクレドは心配そうに言葉を付け足す。
「攻撃を受けないに越した事はないんだけど……簡単に言ってくれるねぇ」
 やれやれ、と肩を竦めるのはクライヴ・シュターゼン(ka0708)だった。
「相手は毒を持った大蛇、本格的に戦闘するのは転移して以来だから……だから、腕が鈍ってないか、少し心配だな」
 酒ばかり飲んでたツケが回って来なければいいけど、と苦笑気味に漏らす。
「……愚弄するにも程があるわね」
 今にも資料を握りつぶしてしまいそうな程、低い声で呟いたのはエルティア・ホープナー(ka0727)、彼女は今回の敵が『蛇』である事に対して、酷く怒りを露にしていた。
「……? 外見が蛇ってだけで分かりやすいと思うんだけど、どうしたの?」
 ティアーチェ・バルフラム(ka0745)はエルティアが何に対して怒っているのか分からず、首を傾げながら問いかける。
「蛇は知識の象徴……それがこの有様よ、怒りたくもなるわ……!」
 怒りたくもなる、と言っているけどエルティアの表情はほぼ無表情であり、あまり怒っているように見えない、とハンター達は心の中でささやかなツッコミを入れた。
「ふぅん? 私にはよく分からないけど……雑魔は雑魔だし、倒すしかないのよね」
 ティアーチェは苦笑気味に呟く。
「結構な大きさよね、これが普通のサイズなら綺麗な毒蛇で終わりなんでしょうけど」
 クレメンタイン・ロレンス(ka0821)は「さっさと倒してしまいしょう、どうせ蒲焼には出来ないんだし」とさらっと恐ろしい発言をしている。
「……」
 そんなハンター達を見つめながら、ダラントスカスティーヤ(ka0928)は強く拳を握りしめり。
(大蛇退治は初めてだが、何時も通りやるだけだ、決して油断はしない)
 ダランは握り締めた拳に視線を落とし、小さく深呼吸をした。
「大蛇退治……冒険活劇の1シーンとして入れるのにはちょうど良さそうですねぇ」
 ふむふむ、と頷きながらアシュリー・クロウ(ka1354)が呟く。彼女は今回の経験を、自身が執筆する小説のネタにする事を目的にしていた。
「……」
金刀比良 十六那(ka1841)は初任務のせいか、やや緊張しているように見える。彼女は性格的に弱さを表に出す方ではないので、他のハンター達から見ればクールな女性、としか映っていないだろう。
「……あなた、大丈夫かしら?」
 俯き気味の金刀比良に、エルティアが話しかける。
「別に大丈夫よ、自分の役割くらいしっかりやれるわ」
 金刀比良は、少し強がった様子で言葉を返す。
「そう……」
 エルティアもそれ以上の事は言わず、金刀比良から離れる。
「そろそろ行きましょうか、あまり遅くなってもこちらが不利になるだけですし……」
 クレメンタインの言葉に、ハンター達は頷き、大蛇退治のために本部を出発した。

●大蛇のいる場所、戦闘開始――……

「探す手間が省ける、というのは実にありがたい事だね」
 大蛇から少し離れた場所で、クレドがため息混じりに呟く。
「あとは毒を持ってるらしいし、なるべく攻撃を食らわないように……か、だけどそれにとらわれ過ぎると、余計な傷を負いそうだから、普段通りでいいんじゃないか? ね」
 クライヴは肩を竦め、両手を軽くあげながら呟く。
 確かに彼の言う通り『無傷』に拘れば、必要以上の傷を負う事になりかねない。
 だから、ハンター達は現地に到着するまでに作戦会議を行い、結果として8人のハンター達は3つの班に分かれる事になった。
 敵を引きつける第一陣、後衛への攻撃を防ぐ第二陣、遠距離から攻撃を行う後衛。
「気休め程度でしょうけど、解毒剤は貰って来てるんですよ。ただ、確実に効くとは言いきれないんで、油断をしない事が一番でしょうね」
 アシュリーは案内人から受け取って来た解毒剤を見せるが、アシュリー自身を含めたハンター達は、その解毒剤にあまり期待をしていなかった。
「……」
 ダランは仲間達の言葉を聞きながら、小さく頷く。彼は何も言わないけれど、やれる事はやった、あとは実戦あるのみ、と言っているような気がしてならない。
「さてさて、それじゃあ行きますかねー!」
 アシュリーはニッと不敵に微笑んで『ショートソード』を振るいながら、出会い頭に軽く攻撃を仕掛ける。
 アシュリーが攻撃を仕掛けた後、同じく第一陣のクライヴ、ティアーチェ、ダランが大蛇の周りを囲むような立ち位置を取る。
「おっと……! 随分と尻尾癖の悪い蛇ちゃんだな、まあ、その方が思いきりやれるけど」
 クライヴは大蛇の尻尾攻撃を避けて『スラッシュエッジ』を使用して攻撃を仕掛ける。
 第一陣が大蛇から離れた後、金刀比良は『集中』を使用して、魔法攻撃の威力を高めた後に『マジックアロー』で攻撃を仕掛ける。
「私も、行きます……!」
 金刀比良の攻撃に合わせ、クレメンタインも『攻性強化』を使用して自らの攻撃力を高めた後に『機導砲』を大蛇に向けて放つ。
「……っ! アシュリー、左から来てる!」
 攻撃を仕掛けようとしたアシュリーを、大蛇の鋭い牙が狙っていて、ティアーチェは大きな声でアシュリーに知らせる。
 アシュリーは攻撃を避けようとしたが、僅かに牙が腕を掠めてしまう。
「アシュリーに代わって、私が前衛に行くわ」
 大蛇の毒の事を懸念して、エルティアが呟き、アシュリーと前衛と中衛を交代する。
「大丈夫? 身体に異常は?」
 金刀比良が問い掛けると「そこまではないけど、何か身体が怠い感じ」と、大蛇の牙に猛毒ではないにしろ、僅かな毒を有している事が伺える。
「一応、私も治療薬を持って来ていたから飲むといい」
 クレドも案内人から治療薬を受け取っており、それをアシュリーに渡す。
「……飲んでみたけど、あんまり変わらないかな」
 アリュリーは手を握ったり離したりを繰り返しているが、毒は抜けていないようだ。
「でも、少し怠いだけだし、戦闘には参加出来るから安心して」
 その時、大蛇の尻尾が後衛を狙って向かって行く。
「くっ……!」
「おっと、そうはさせませんよぉ!」
 クレドは『メイスファイティング』を使用、アシュリーは『強打』を使用し、大蛇の尻尾に攻撃をして、無理矢理軌道を逸らす。
 そのおかげで、大蛇の尻尾は後衛のハンター達には当たらず、地面を抉る事になった。
「……流石に間近で見るとデカイな、首が痛くなりそうだよ」
 自分を見下ろす大蛇に、クレドは苦笑気味に呟く。
「そっちばかり気にしていいのかな、蛇さんよ」
 クライヴは『ランアウト』を使用して素早さを上昇させた後に『スラッシュエッジ』を大蛇に叩きこむ。
 その強力な一撃に、大蛇が僅かによろめいた。
「その長くて邪魔な舌……斬り落としてあげるわ。あぁ、でもその瞳を潰してあげる」
 エルティアは感情の読めない口調で呟き、大蛇の瞳に『ダガー』を突き刺した。
「いかに鱗が固くても、さすがに瞳までは硬化させられないでしょう」
 瞳を潰された痛みで、大蛇がけたたましい叫び声をあげる。
「酷い声、でもこれはチャンスよね」
 ティアーチェは小さな声で呟いて『集中』と『マジックアロー』を使用して、大きく開いた大蛇の口めがけて放つ。
「なるほど、今のうちに危険な牙を折ってしまおうという事ですね」
 ティアーチェの狙いが分かったのか、クレメンタインも微笑んで『攻性強化』と『機導砲』で大蛇の口を狙う。
「じっとしてれば、直ぐに楽にしてあげるのに」
 金刀比良はため息混じりに呟き、暴れ回る大蛇の尻尾を狙って攻撃を仕掛ける。既に瞳を潰されているせいか、大蛇の攻撃は狙いも定まらず、地面を深く抉るだけ。
「……」
 後衛の攻撃を受け、大蛇の牙は既にボロボロだったが、まだ折れるまでには至らない。
 だが、ダランの『強打』の受け、バキン、と完全に折れた。
「毒の心配が全くなくなったわけじゃないけど、とりあえず牙に注意はしなくてすむかな」
 クライヴは『スラッシュエッジ』を使用して、大蛇に攻撃を仕掛ける。その際、暴れる大蛇の尻尾の攻撃を受けたけど、最初のような勢いはない。
「大丈夫ですよー、私の小説の一部として貴方は生き続けますから……なーんて」
 アシュリーは冗談めいた言葉を呟き『踏込』と『強打』を駆使して、攻撃を行う。
「そろそろ帰って本が読みたいわ……だから、早く逝ってちょうだい?」
 エルティアは『ダガー』を構えて『強打』を使用して、攻撃をしながら呟く。その表情からは特別なものを感じる事なく、ただ興味が失せた、というような雰囲気を感じた。
「……!」
 大蛇の周りを囲む前衛のハンター達は、それぞれスキルを使用して、連携する形で大蛇に絶大なダメージを与えた。
 倒れる寸前、大蛇は掠れたような声をあげ、ズシン、と響かせながら倒れた――……。

●大蛇消えて、やってくる平穏

「大蛇の牙を受けた方は、念のためにこれを飲んでいた方がいいかと……」
 戦闘終了後、クレメンタインは案内人から貰った治療薬を見せながら問いかける。
「……!」
 クレメンタインも受け取っていたのか、と言いたげな表情でダランは見つめる。
「きみ、身体の調子はどうかな? まだ身体の異変とかあるんじゃない?」
 クレドがアシュリーに問い掛ける。
 今回のハンター達の中で、大蛇の毒をまともに受けたのはアシュリーのみだ。他のハンター達も、僅かに攻撃は受けたが、大きな変化が出るような毒は受けていなかった。
「んー、どうやら時間が経てば元に戻るタイプだったんじゃないんですかね? それとも治療薬が効いたのかな? とにかく、今はもう異常なしですよ!」
 アシュリーは元気な声で答え、他のハンター達も安堵のため息を吐く。
「さてさて、今回の出来事をネタにしなくちゃいけないし、メモメモ……」
「毒が身体に残っているかもって考えたら、煙草とブランデーは控えた方がいいのかね……ま、戻ってから一服するか」
 クライヴは取り出した煙草とブランデーを見つめながら、元の場所に戻す。大した変化はないとはいえ、無傷では済まなかった。
 だから、確実とは言えないがクライヴの身体の中にも毒が残っている可能性が高い。
「アシュリーの様子を見る限り、体内に毒は長く残らないみたいだし……それまで我慢するとしようか」
「知識の象徴を愚弄した罪は重いわ、今後はこんな愚かな雑魔が現れない事を祈るのみね」
 今はもう動かぬ屍となった大蛇を見つめながら、エルティアが冷たく呟く。
「……」
 他のハンター達が傷の手当てなどをしている時、ティアーチェは『ワンド』を手放す事はなかった。
(確実に死んでるんでしょうけど、念には念を……ね)
 死んだふりはないと分かっていても、一瞬の油断が死を招くと考え、大蛇が倒れた後もティアーチェは警戒を緩める事はなく、いつでも攻撃が出来る体勢を取っていた。
「……」
 その時、ダランがティアーチェに水袋を差し出す。
「……? もしかして、これで傷口を洗い流せって言いたいの?」
 ティアーチェの言葉に、ダランはゆっくりと頷く。警戒を強めていたため、ティアーチェはまだ傷の手当てを行っていない。
「分かったわ、それじゃその間の警戒をお願いね」
 ティアーチェの言葉に頷き、ダランは警戒役を代わり、ティアーチェは傷の手当てを行い始めた。
(……初めての任務は終わり、か)
 金刀比良は、他のハンター達に気づかれぬよう、小さく息を吐く。出発した時から緊張続きだったせいか、金刀比良にとっては、ようやく落ち着ける時間がやってきたようだ。
 ゴトッ!
「……っ!?」
 風に吹かれたせいか、小さな石が金刀比良の足元に転がってくる。緊張を解いたせいか、小さな石に、ビクッ、と金刀比良は激しく身体を震わせる。
(……警戒してる時は何も出なかったのに、警戒を緩めた途端にこれって何なのよ)
 金刀比良は足元の石を恨めしそうに見つめながら、深くため息を吐く。
「そろそろ、報告に行くかね。案内人の彼女の結果がどうなったか気になってるだろうし」
 クライヴが呟き、ハンター達は報告のために本部へと帰還していった。

●帰還、そして報告――……

「お疲れ様でした! あらあら、結構怪我を負っていらっしゃるんですね」
 本部に報告に向かうと、案内人の明るい声にハンター達の疲れがドッと増した気がする。
「毒はどうでした? 私が渡した治療薬は役に立ちました? 大変でしたねぇ……」
 表情と言葉が一致していない、とツッコミを入れたいが、任務直後でそんな元気はない。
「無傷で帰還は出来なかったが、この痛みは私達が生きている証拠だよ」
 クレドの言葉に「そうですね、お疲れ様でした」とにっこりと微笑んで答える。
「また依頼をお願いする事もあるでしょうし、今は身体をゆっくり休めて下さい」
 お疲れ様でした、と明るい声に見送られながら、ハンター達は報告を終えたのだった。

END

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧


  • クレド・デイランダール(ka0047
    人間(紅)|19才|男性|聖導士
  • 大蛇狩り
    クライヴ・シュターゼン(ka0708
    人間(蒼)|26才|男性|疾影士
  • 物語の終章も、隣に
    エルティア・ホープナー(ka0727
    エルフ|21才|女性|闘狩人
  • 演技派
    ティアーチェ・バルフラム(ka0745
    エルフ|14才|女性|魔術師

  • クレメンタイン・ロレンス(ka0821
    人間(蒼)|14才|女性|機導師
  • 無口の傭兵
    ダラントスカスティーヤ(ka0928
    人間(紅)|30才|男性|闘狩人
  • GossipHunter
    アシュリー・クロウ(ka1354
    エルフ|20才|女性|闘狩人
  • 夢の迷い子
    イザヤ・K・フィルデント(ka1841
    人間(紅)|17才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 仮プレイング公開所
アシュリー・クロウ(ka1354
エルフ|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/06/18 01:30:36
アイコン 相談所。
イザヤ・K・フィルデント(ka1841
人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2014/06/18 01:04:53
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/14 01:02:59