• 春郷祭1017

【春郷祭】同人誌即売会、ちょっと狭い?

マスター:龍河流

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/06/18 07:30
完成日
2017/07/05 03:07

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 同盟領のジェオルジで、今年も行われている春の郷祭。
 祭りの本来は村長の寄合会議だと聞くが、今の時期にやってくる人々は祭りを楽しみに来ている人がほとんどだ。
 そして二年前から、この時期のジェオルジで行われている催しがあった。

 同人誌即売会。

 小説、漫画に絵本、最近は画集に写真集、更にはフィギュアにアクセサリーまで、参加する老若男女の情熱が注ぎ込まれた制作物が売買されているところである。
 元はリアルブルーの催しらしいとか、細かいことを気にしてはいけない。何かを作り上げようとする、同好の士の集まりである。
 作品の中に同性愛を取り扱うものが多かろうが、コスプレと呼ばれる仮装衣装の裾が接着剤で止まっていようが、時に子供が見てはいけない大人向け作品があろうが、それはそれ。
 他人に迷惑を掛けない。そこを守って、楽しく過ごそうとする催しなのである。

 しかし、今年は少し危険である。
 何故なら。

「参加希望者の増加により、通路が少々狭くなっております! 通行の際は、譲り合ってくださ~い」

 回数を重ねるにつれ、参加者が地道に増え、会場が狭くなって来たのである。
 お目当ての品物に突撃したい情熱と、他の参加者に対する思いやり。
 これを両立させることが、今回の参加者には求められている。

リプレイ本文

●会場の開場前
 同人誌即売会会場の中。
 スペースと呼ばれる自分の販売場所の机の周りで、音羽 美沙樹(ka4757)は悪戦苦闘の真っ最中。
「あら、倒れそう」
 並べているのは、今日この日のために作った入魂の本にアクセサリー、それ等に加えて無料で振る舞うお茶と幅広い。これらをいかに見栄えよく、また安全に置き並べるか。
 単に本とアクセサリーだけなら、お茶道具があっても難しいことはない。
 しかし、彼女は自らが扱うジャンルの紹介四コマ漫画が描かれた大型ボードを、目立つように掲げるのに苦労していたのだ。
「争騎衆の魅力を、一人でも多くの方に広めたいですもの」
 彼女の推しは、リアルブルーのゲーム、退魔戦記。幾つかシリーズがある中の、当人曰く『真とかつかないオリジナル』の退魔戦記である。
 どういうゲームかと言えば、リアルブルー地球の日本を舞台に、歪虚に似ている人外の魔物、妖魔と戦う、霊能力者なる覚醒者の物語となるのだろうか。ゲームゆえに、プレイヤーが扱うキャラクターは当然霊能力者だ。
 リアルブルーでもいささか古い時期のゲームゆえに、退魔戦記を知っている人間が何人いるのか。
 はっきり言って、そんな状態だが、
「今日は退魔戦記と争騎衆の魅力の、そう……布教日ですわ!」
 ボードをようやく満足いく状態にした美沙樹は、利き手で握り拳を作って、気合を入れている。

 かたや会場の外。
 親しい友人から春郷祭に誘われたエメラルド・シルフィユ(ka4678)は、待ち合わせ場所に指定された建物前に、指定時間の三十分ほど前に到着した。まだ会場には入れないとかで、入り口には列を為した人々がいる。
 春郷祭だから名物でも見て歩くのかと思っていたエメラルドだが、その列の整然とした有様には感心した。どういう集まりだかよく知らないが、着飾った女性も目立つ。
 そう言えば、友人は現地で着替えるという話だから、これはもしや土地の紳士淑女の集まる舞踏会でもあろうか。しかし自分達が入れるのだから、そこまで敷居は高くないはず……しかしいつもの服装より、礼装がふさわしいかったかと、少々エメラルドは悩んでいた。
 ちなみに彼女の服装は、ビキニアーマー。下にシャツなどは着ているが、ビキニアーマーだ。
「あれ、再現度スゴイ」
 時々、列の方から何か聞こえてきて、こちらを窺う気配がするのも、彼女を悩ませる謎だった。
 なぜか名前を呼ばれているのだが……知り合いは、いないはず。

 その入り口に並ぶ一人、エステル・クレティエ(ka3783))は開場時間を待っていた。
 手には、事前に入手した本日の参加サークルの一覧と会場内の配置地図。もちろん地図には、お目当てのサークルの場所がチェック済み。
 初めてのイベント参加である。
 友人に男性同士の恋愛物語を書くのが好きなエルフ女性がいるので、どういうところかはだいたい聞いて来た。コスプレなる仮装をする時の心構えも、事前学習はバッチリである。
 まずは更衣室に出向いて、着替えをしてから目当ての本を買いに行き、それからアクセサリーを見るのに会場をぐるり。
 簡素だが大事な計画を立てて、会場時間を待ち焦がれていたエステルは、列に入らず人待ち顔の女性を近くに見付けて、首を傾げた。
「コスプレは、会場に入ってからかと思っていましたが……きっと、熱心なファンの方ですのね」
 それともおうちが近いのかしら。それだったら、私も家で着替えて、上着でも羽織って歩いて来るのにとかなんとか。
 自由な想像の翼を広げていた彼女の本日の目的は、リアルブルーの異国物語AFOこと「Asura Fantasy Online」の異世界オチ本である。
 リアルブルーから見た異世界、クリムゾンウェストと共通点が多そうなジ・アースなる世界にある、ノルマン王国の騎士団の話がエステルの心を掴んで離さない。その一冊を求めるために、ここまで来てしまったのだ。
「あぁ、茶様の侍女本、楽しみ~」
 彼女が言う『茶様』とは、ノルマン王国近衛のブランシュ騎士団団長ヨシュアス・レインのことである。

 開場時間の五分前。
 もう二十五分前には余裕で到着するために、早朝には怒涛の準備と出発をこなしたのに、地図を見ても反対方向に行ってしまう方向音痴が災いした玉兎・恵(ka3940)が、ようやく目的地に辿り着いた。最後には、きっと目的地は同じと狙い定めた『同好の士』を見出して、連れて来てもらう有様だったが、辿り着ければそれでいい。
 そのまま列に並んだ同好の士に頭を下げ、それから待ち合わせ相手を見付けた恵は、荷物が半分詰まったカートをコロコロ引き摺って、友人に手を振った。
「メグミ、迷わなかったか?」
「もうっ、エメちゃんったら。この玉兎・恵、もはや女子高生ではなく人妻なの! 今までとは違うんだから」
 迷っていたことは素知らぬ振りで、大人なのですと主張した恵は、結婚の話を目の前の友人に伝えていなかったかもしれないと思いだした。
 友人の驚愕ぶりを見るに、伝え忘れていたようだ。ちょっと悪いことをした。
 だがしかし。
「さっ、開場だわ。行きましょ、エメちゃん!」
 今はそれどころではない。
 こちらの世界に来てからのイベント初参戦。コスプレマイスターめぐは、本日大活躍予定なので!

●混沌と整然
 会場が手狭になっているので、コスプレの撮影、スケッチは指定の場所でのみ行うこと。
 事前の指示がよく守られていて、コスプレをした人々は買い物中の人を除けば、大抵が会場の一角に揃っていた。
「メグミ、これは一体何なんだ。写真って、私を撮ってどうしたいのか分からないぞ」
「あ~、そこは追求しない方が、エメちゃんにはいいかなぁ」
 名前といい、普段の装備といい、これはもう神の仕業か悪魔の悪戯と思うしかない状態で、友人をコスプレに誘った自分を褒めた恵だが、エメラルドの慌てぶりに多少は反省しないでもない。
 彼女がエメラルドに勧めた仮装は、AFOに出てくる神聖騎士のエメラルド・シルフィユだ。見事に同姓同名。クラスは神聖騎士と聖導士と方向性が一緒。
 しかもAFOのエメラルドは、水着姿で剣を振るう信心深い女性である。なんとまあ、恵の友人と似ていることか。
 あまりに似ていたので、エメラルドのためにすっごい切込みの水着を用意してきたのだが、当人の慌てぶりと服装を見たら、まあわざわざ着替えなくてもいいかなと思い直した。
「うぅ……自分のことではない活躍で、名前を連呼されるのはなんだか横取りしているようで申し訳がない。だいたい、なりきってますねとは、どういう意味だ」
「なりきっているというより、魂の双子って感じなの。どう説明すると、分かりやすいかなぁ……あ!」
 まだコスプレを今ひとつ理解しきれていない風情のエメが、撮影攻勢からようやく逃れてきて、珍しく弱音を吐いた。同姓同名でも異人、しかも相手は物語上の人物なのに、皆が似ていると大喜びするのがまだ納得出来ないらしい。
 そんな彼女に、AFOを一から説明するのも退屈させそうと思い悩んだ恵だったが、ここで妙案が。
「本を探せばいいのね。エメちゃん、一緒にエメラルド・シルフィユの本がないか、捜しに行きましょ」
 そう、AFO本を探して、それを見てもらえば他の人達が何を言っているのか分かるはず。
「さっ、確かあっちの方のはず」
 何はともあれ、撮影スペースから離れられるなら嬉しいエメラルドと、邪魔にならないように縦一列で移動し始めた恵は、いつものようにまったく別方向に向かっているとはまだ気付いていない。

 本日の自分は、エステルではない。AFOの月の精霊にして、世を忍ぶ姿は旅の魔術師のマリン・マリンだ。服は手持ちのものの取り合わせで、上手い具合に色まで原作に合致した旅の魔術師バージョンである。
 そんな彼女が歩いているのは女性向けのAFOスペース。その端っこだが、マリン・マリンだと分かってくれる人はあちこちにいる。
 そういう人達がいるのに気付かず、エステルは目的地を目指して進もうとしていた。
「茶様の侍女本……すごい人、です」
 彼女が欲しい本を出しているのは、いわゆる壁サークル。人気があると、壁際に配置されるからそう呼ばれるらしい。そこまでは事前に聞いていたけれど、その人気はたいしたものらしい。
 人波の向こうに、辛うじて茶様のイラストが掲げられているのが見える。目的地は、確実にそこだ。この辺りには列が多く、避けながら行くのには結構時間が掛かりそうであるが……
「えーと、……満月の光よかの地まで道を開け ムーンロードっ……なんてって、えええーっ!」
「はーい、マリン・マリンさんのお通りですよー。ムーンロード開けてー」
 ざわざわとした中、軽い気持ちで冗句を飛ばしたつもりのエステルの前に、ずざーっと道が開かれた。実際はスタッフが列の整理と通路の確保で人を動かしたのと、彼女の台詞がたまたま一致したなのだけれど、スタッフが悪のりする。そして、このエリアの参加者達は『マリンさんじゃ仕方ない』『月道来た』などと、それに乗っかった。
 有名人コスプレは、予想外にすごい効果をもたらして、エステルはしばし立ち尽くしていたが……
「茶様と灰様の外伝本でしょ? 売り切れちゃうよ」
 同好の士らしいスタッフに促されて、我に返ると許される限界の早足で進み出した。
 茶様の侍女本こと『転移したら騎士団長の侍女になっちゃいました』が目的だが、今教えてもらった外伝は知らない。
「か、買わなきゃ」
 灰様は、騎士団の一隊を預かる分隊長の一人のこと。そのお方と茶様の外伝は、実は二冊あったりするのだけれど、そのことをまだエステルは知らない。

 退魔戦記は、案内を見ると自分も含めて三スペース。自分以外に二つもあると、非常に気をよくしていた美沙樹は、現在大変ご機嫌だった。
「十二魔将の中では、やはりシヴァが気になりますわね。争騎衆が直接やり合う相手ではありませんでしたけれど」
「シヴァか。パンクな格好していたっけ?」
「ぱんくと言うのが、残念ながら分かりませんわ」
「あ、こっちの人だものね。それで退魔戦記とは、とてもいい趣味よ、美沙樹ちゃん」
 実際にそのゲームを遊んだことがあるリアルブルー人に挟まれ、退魔戦記談義に花が咲く、咲き乱れる。今まで知らなかった情報やら、転移の時にもよく持ってきたものだと思われる資料を見せてもらい、新たな知識を得ることも出来ていた。
 まあ、彼女の興味はかなりマニアックなので、敵の花形十二魔将の情報も争騎衆が活躍した札幌に攻めてきたシヴァ・マハカーラ以外は別の機会でもいいと言ってしまいそうな感じではあるが。
 今は、よく分からないでいた日本地図を見ながら、札幌なる都市の知識を仕入れている。作った本の内容と、大きな齟齬はなさそうで一安心だ。
「あのぅ、この話の主役って、ハンターじゃなくて一般の人?」
「ええ、特殊な力を持たないけれども、人の盾になる道を選んだ争騎衆という……」
 開場して一時間、初めて興味を示してくれた来場者への説明に力が入った美沙樹を、両隣の二人が適度に抑えたり、補足を入れてくれたり。三人掛かりの売り込みで、リアルブルー出身らしい来場者は美沙樹の本を二冊セットでお買い上げしてくれた。
 これで退魔戦記仲間が増えたら、三人ともに幸せである。

 開場してから、おおよそ五時間。
 イベントはあと一時間で終了となる。
「はい、お忘れ物がないように、お帰りの方はこちらの通路を移動してくださ~い。飲食店はあと三十分で閉店です~」
 疲労の色が濃いスタッフ達を交代で休憩させるために、自ら通路整理を買って出た恵は、帰路につく人が増えた会場の人波を手際よくさばいていた。他にも数人、スタッフではなさそうなレイヤー達が、出入り口の整理などをしている。
「向こうはエリュシオン、あ、ソウルパートナーは珍しいかも」
 その人達がリアルブルーで流行したゲームやアニメ、ラノベにTCGなどの有名キャラが多いので、恵は後で記念撮影出来ないかしらと思い付いた。これは実行されるのだが、彼女の友人エメラルドはものすごい勢いで逃げ去ったので、代わりにマリン・マリンが捕まった。
 そして、そのまま閉場までのお茶会に雪崩れ込む。
「布教活動ですわ。お荷物にならなければ、ぜひどうぞ」
 そのマリン・マリンことエステルが、手作りの指輪を買ったスペースの美沙樹から、お茶と一緒に本を贈られていた。指輪の由来が書かれていると聞いて、それならと鞄に仕舞う。
 鞄をこそっとしか開けないのは、中に『灰茶本、全年齢版』が入っているから。誰に見られても恥ずかしい内容ではないはずだが、当人が恥ずかしいのでなんとなくこそこそ。
 ちなみに、美沙樹が混じっているのは、お茶を振る舞うのはこちらの飲食スペースでと促されたから。一仕事終えた恵もお茶を貰い、ほっと一息。
「ハンターと海軍本が人気と聞いていたけど、リアルブルー本も結構あるのね。荷物に余裕があるから、ついつい買っちゃった」
 やっと戻って来たエメラルドに『何か買った?』と尋ねた恵は、確実に荷物が増えている相手がぶんぶんと首を振ったものだから、驚きを隠せない。
「いや、リアルブルーの書物に対する造詣の深さには感心した。それで、多少は勉強しようと思って、何冊か購入しては見たのだが……」
「ふうん、どんなの?」
「まだ読んでいないから、説明が難しい」
「そういうのって、あるよね」
 妙に堅苦しく応えるエメラルドに、いきなり同調するエステル。何事だと恵や美沙樹などは思うのだが、まさか『男性カップル本を初めて買った』緊張からだとは分からない。
 恵はそういうことで緊張しないし、美沙樹はその手の本とは今回接触していなかった。
「リアルブルーの文化は、奥が深いよ」
「そ、そうですね」
「それには、心から同意しますわ」
 三者三様に漏らした言葉に、リアルブルー人の恵は『買った本が難しかったのかな』と考えた。
 そういうことなら、少しはレクチャーしてあげられるかもしれないし、なにより。
「今回はコスと買い物とお手伝いで、あっという間に終わっちゃったから、この後に時間がある人はご飯に行かない? 趣味話や恋バナしましょ」
 心の中でつい『のろけちゃうもんね』と思っている恵の思いはさておき、結構な人数がこの誘いに応じてきた。
 しかし。
 エメラルドは入り口で預けた剣を忘れかけるし、エステルは鞄を抱えてのぎこちない動きが目立つこと。
「あの人達、どうなさったのでしょう」
「ねー? 買った本が早く読みたいのかな」
 美沙樹と恵の心配は方向違いだが、当然当人達は理由など言わない。
 彼女達のどきどきは、色々な意味で継続中だった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 星の音を奏でる者
    エステル・クレティエ(ka3783
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 白兎と重ねる時間
    玉兎・恵(ka3940
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 清冽の剣士
    音羽 美沙樹(ka4757
    人間(紅)|18才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/06/17 23:06:53