ゲスト
(ka0000)
【春郷祭】壁掛け猫と火付けのY
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/23 22:00
- 完成日
- 2017/07/02 23:35
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
同盟領の農業振興地「ジェオルジ」で開催中の春郷祭は、前半の村長会議が終了しさまざまな催しが始まっていた。近隣から多くの物資が運び込まれ、観光客も広域からたくさん集まり、出店に舞台にイベントにと連日賑わいを見せている。
「何だ、こりゃ?」
「どっかの村の特産だってよ、いいから売っとけ」
「これ、なにかしら?」
「どこだったかな、新種開発に取り組んでる村の新しい野菜らしいよ」
あまりに多彩に集まるため、すべての売り場や店員が正しい知識を得ているとは限らないようで。
とにかくごちゃごちゃしている面もある。
何せハンターによる同人誌即売会やらも開かれたりしているので買い手も多彩。一般の人にはまったく価値の分からないという、その手の人からすれば一種の誉め言葉になってしまうようなものすらあるので杓子定規の価値観は通用しない。
「こまけぇこと気にするな。いいから売っとけ」
そんな言葉が交わされる次第である。
「はー、やれやれねー」
そんな中、巻き込まれクイーンの南那初華(kz0135)が肩を縮めて小さくなってぽつりと呟いていた。
少しお疲れの様子なのは、プロレス会場で広島風お好み焼きを販売したり(【春郷祭】集結!悪役レスラー)、カルドルビーノ村で開発された黒トマト・ピュアダークを活用したトマトクレープ販売のお手伝いをしたり(【春郷祭】トマトクレープ・ア・ラ・モード/奈華里MS担当)と、いろいろジェオルジで依頼をこなしているから。
「よお、初華」
「あれ? ダインさんじゃない」
ここで、屋台友達の自称「戦場詩人」ダイン・グラマンに声を掛けられた。
「どうしてジェオルジに? あ。もしかして自転車修理屋台の出張?」
「違うさ。……たまにはちゃんとハンターオフィスからの依頼も受けるのさ」
あは、と手を合わせた初華に首を振るダイン。
「へー、どんなお仕事?」
「この『壁掛け猫』の販売と、特殊任務だ」
ダインが出したのは、まるで塀の上に両手を置きジト目でこちらを見ているかのような猫の陶器人形だった。顔つきはなんか不機嫌そうでアレだが、だらーん、と体と尻尾が伸ばしている様子が可愛らしい。
「きゃー、なにこれ可愛い~♪」
「本来、家の壁に掛けておいて深夜に泥棒が塀を超えようとするとこいつのジト目と目が合って泥棒はびっくりして逃げ出すはず、という商品だが……」
「そんなことよりこうして抱っこすれば可愛いじゃない」
「……さすが女の子だな、正解だ」
びっくりしたダイン。
つまり、壁に一つ掛けておいても効果は知れているため販売不振。不良在庫を抱えていたが、初華がしたように前で抱っこすれば可愛いし、肩に掛けても可愛いからと新たな可能性が見つかった。そこで、春郷祭で在庫を売り払ってほしいという依頼だ。
「で、特殊任務って?」
「初華、『火付けのY』って知ってるだろ?」
「ほへ? フマーレの大火を引き起こした張本人でしょ? 私、魔術師協会から依頼受けて調査したも……むぎゅ!」
「しっ。声が高い」
ダイン、初華の口を塞いで周りを警戒していた。
「壁掛け猫の販売依頼者が、春郷祭の会場で「消えないロウソク」があるのを見つけて不審がっていた。幸い、ハンターオフィスの係員は初華の関わった依頼を知っていたので魔術師協会に連絡。で、「火付けのY」が関与している疑いがあるので俺が先遣部隊として確認に来たというわけだ」
「で?」
「どんぴしゃ。依頼者の報告の裏路地に不自然なロウソクがあったので確認してみると、初華の仲間たちが戦った「ランタン人形」のように巨大化して襲ってきたので倒した。このことはすでに伝令を飛ばしている。俺は緊急に春郷祭会場にいるハンターを八人仲間にして、この人形を売る名目で滞在。大騒ぎになったり火事になる前にほかに仕掛けられたロウソク人形を探し出して退治する任務を遂行しなくちゃならんのだ」
で、一人の仲間は当然初華だ、とダイン。
「壁掛け猫の依頼者は?」
初華、陶器猫を抱きつつ聞いてみる。
「怖いから後は頼む。在庫は全部置いてあるから売り払って依頼料にしてくれって」
不良在庫で廃棄予定だったので、それまでの売り上げにより原価回収はできたから後は祭りの平和に役立ててくれ、と言われたそうだ。
「分かった」
「何、初華は猫の販売に力を入れてくれりゃいい」
俺がやるより売れるはずだ、とまっとうな言葉。
「そうだね。廃棄処分されるのもかわいそうだし、頑張って売るね」
というわけで、壁掛け猫販売か火付けのYが仕掛けたロウソク人形退治をしてくれる人、求ム。
「何だ、こりゃ?」
「どっかの村の特産だってよ、いいから売っとけ」
「これ、なにかしら?」
「どこだったかな、新種開発に取り組んでる村の新しい野菜らしいよ」
あまりに多彩に集まるため、すべての売り場や店員が正しい知識を得ているとは限らないようで。
とにかくごちゃごちゃしている面もある。
何せハンターによる同人誌即売会やらも開かれたりしているので買い手も多彩。一般の人にはまったく価値の分からないという、その手の人からすれば一種の誉め言葉になってしまうようなものすらあるので杓子定規の価値観は通用しない。
「こまけぇこと気にするな。いいから売っとけ」
そんな言葉が交わされる次第である。
「はー、やれやれねー」
そんな中、巻き込まれクイーンの南那初華(kz0135)が肩を縮めて小さくなってぽつりと呟いていた。
少しお疲れの様子なのは、プロレス会場で広島風お好み焼きを販売したり(【春郷祭】集結!悪役レスラー)、カルドルビーノ村で開発された黒トマト・ピュアダークを活用したトマトクレープ販売のお手伝いをしたり(【春郷祭】トマトクレープ・ア・ラ・モード/奈華里MS担当)と、いろいろジェオルジで依頼をこなしているから。
「よお、初華」
「あれ? ダインさんじゃない」
ここで、屋台友達の自称「戦場詩人」ダイン・グラマンに声を掛けられた。
「どうしてジェオルジに? あ。もしかして自転車修理屋台の出張?」
「違うさ。……たまにはちゃんとハンターオフィスからの依頼も受けるのさ」
あは、と手を合わせた初華に首を振るダイン。
「へー、どんなお仕事?」
「この『壁掛け猫』の販売と、特殊任務だ」
ダインが出したのは、まるで塀の上に両手を置きジト目でこちらを見ているかのような猫の陶器人形だった。顔つきはなんか不機嫌そうでアレだが、だらーん、と体と尻尾が伸ばしている様子が可愛らしい。
「きゃー、なにこれ可愛い~♪」
「本来、家の壁に掛けておいて深夜に泥棒が塀を超えようとするとこいつのジト目と目が合って泥棒はびっくりして逃げ出すはず、という商品だが……」
「そんなことよりこうして抱っこすれば可愛いじゃない」
「……さすが女の子だな、正解だ」
びっくりしたダイン。
つまり、壁に一つ掛けておいても効果は知れているため販売不振。不良在庫を抱えていたが、初華がしたように前で抱っこすれば可愛いし、肩に掛けても可愛いからと新たな可能性が見つかった。そこで、春郷祭で在庫を売り払ってほしいという依頼だ。
「で、特殊任務って?」
「初華、『火付けのY』って知ってるだろ?」
「ほへ? フマーレの大火を引き起こした張本人でしょ? 私、魔術師協会から依頼受けて調査したも……むぎゅ!」
「しっ。声が高い」
ダイン、初華の口を塞いで周りを警戒していた。
「壁掛け猫の販売依頼者が、春郷祭の会場で「消えないロウソク」があるのを見つけて不審がっていた。幸い、ハンターオフィスの係員は初華の関わった依頼を知っていたので魔術師協会に連絡。で、「火付けのY」が関与している疑いがあるので俺が先遣部隊として確認に来たというわけだ」
「で?」
「どんぴしゃ。依頼者の報告の裏路地に不自然なロウソクがあったので確認してみると、初華の仲間たちが戦った「ランタン人形」のように巨大化して襲ってきたので倒した。このことはすでに伝令を飛ばしている。俺は緊急に春郷祭会場にいるハンターを八人仲間にして、この人形を売る名目で滞在。大騒ぎになったり火事になる前にほかに仕掛けられたロウソク人形を探し出して退治する任務を遂行しなくちゃならんのだ」
で、一人の仲間は当然初華だ、とダイン。
「壁掛け猫の依頼者は?」
初華、陶器猫を抱きつつ聞いてみる。
「怖いから後は頼む。在庫は全部置いてあるから売り払って依頼料にしてくれって」
不良在庫で廃棄予定だったので、それまでの売り上げにより原価回収はできたから後は祭りの平和に役立ててくれ、と言われたそうだ。
「分かった」
「何、初華は猫の販売に力を入れてくれりゃいい」
俺がやるより売れるはずだ、とまっとうな言葉。
「そうだね。廃棄処分されるのもかわいそうだし、頑張って売るね」
というわけで、壁掛け猫販売か火付けのYが仕掛けたロウソク人形退治をしてくれる人、求ム。
リプレイ本文
●
「これが初華さんの言ってたブサカワちゃん?」
準備中の売り場で、メルクーア(ka4005)がひょいと壁掛け猫を抱き上げていた。顔の正面でにらめっこする形だが、陶器の猫の目はばつが悪そうに横に逸らされている。
「うんっ。なかなか可愛いでしょ?」
「どれどれ。この不機嫌な猫の顔にも愛嬌が感じ……られねえな」
メルクーアときゃいきゃいやってる南那初華(kz0135)。その横からレイオス・アクアウォーカー(ka1990)が会話に加わるが、どうもこの猫の可愛らしさが分からない。顔つきは不細工で、明らかに不貞腐れているこの猫のどこが可愛いのか。
「えー、こうして抱いたら照れてるみたいじゃない」
初華、胸に抱っこ。猫は横向いて不貞腐れ。
「……まあ、気に入るヤツが実際にいるなら売れそうか」
「どれ、一つみてやろう」
レイオスが心の広いところを見せた横から、今度はコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)が顔を覗かせた。
で、コーネリア、見る。猫、当然そっぽを向いている。
瞬間、拳銃を引き抜き銃口を猫の額にぐりりと押し付けた!
「ほう。視線を逸らすとは……心にやましいところがあると見える」
「ええっ! ちょっと待ってよぅ」
「……冗談だ」
慌てて止める初華に、いたずらそうににやり。
「この猫にもそういう茶目っ気が感じられるんじゃないかな、かな?」
狐中・小鳥(ka5484)はそんなコーネリアの様子を見てぽそり。胸に抱いた壁掛け猫に「ねー?」と同意を求めていたり。
その横では、「ふんふふんふふーん♪」と鼻歌交じりに星野 ハナ(ka5852)が何かやっている。
カラフルで可愛い紐を取り出しブサカワ猫の首にくるっと回して……。
「ふんふん♪ ……ふんっ!」
思いっきり首を絞めた!
「……それはどうなのかな?」
「あれみたいなものですぅ」
最後のひと絞めの力強さに突っ込んだ小鳥。ハナはにこやかにメルクーアのほうを指差している。
「ふんふんふん~♪」
メルクーアもやっぱり鼻歌交じり。
工具を手にして猫耳カチューシャをぐりぐりねじねじしている。
でもって、壁掛け猫にもぐりぐり細工してドッキング。
「できた! 初華さん、可愛いでしょ?」
くるっと振り向いたメルクーアの頭には、ブサカワの壁掛け猫が両前肢をちょこんと添えて乗っていた。猫耳カチューシャに固定して、そのカチューシャを被った形だ。猫の視線は、横。
「きゃー、可愛い可愛い!」
盛り上がるメルクーアと初華。
「それに比べてこちらは、だよ」
ハナに視線を戻す小鳥。
「ロープワークで丈夫で武骨なピンバッジに括り付けて……リアルブルーのJK(女子高生)のバック必須アイテム、ブサカワ首つり人形の完成ですぅ!」
えらくごっつごつしているがまあ、間違いなく首つり人形である。そのほかの点はハナの満面の笑顔が異論を認めない。
「……初華さんも本当にいろんな依頼をやってるよね? 何でも屋さん状態?」
小鳥、店舗責任者の初華の方に突っ込んだ。
「し、しょうがないじゃない。舞い込んでくるんだもん」
「ただまあ、あの爆発男のこともあるしな」
ここでレイオスが冷静な指摘。
「火付けのYの方も忘れてないわよー」
「確かにそっちの縁もあるといえばあるよねー」
メルクーアも爆弾男こと「火付けのY」には縁がある。小鳥もそうなので仕方がないかなと思い直す。
そこに、真田 天斗(ka0014)。
「白茶が入りました」
恭しく人数分淹れる。
「え。今回白茶販売しないよ?」
「サービスですね。今後の白茶販売につながれば尚良いです」
初華、小鳥から「本当に何でも屋さん状態?」と繰り返され慌てて天斗に確認。天斗の方は涼しく言うのみ。
「そろそろ暑くなってきましたからね。白茶には宿酔い、夏ばてに効くといった効能や解熱作用が有りますからこれからの時期にちょうど良いでしょう」
その絶好の機会を逃す手はありませんから、と。
「でも、壁掛け猫の方は?」
「十の言葉より初華さんや皆さんの愛らしさ一つで十分でしょう」
食い下がる初華にエレガントに返す天斗。初華、「普段そんなこと言ってくれないくせに」とかうにゃもにゃ。
その背後から肩ぽむされ、はっと振り向く。
「よ。何か久しぶりに初華に会った気がするぜ……元気だったか」
トリプルJ(ka6653)である。
「うん、元気。疲れてたけどJさんの元気な顔見て元気になったよ♪」
「そりゃよかった。何の感傷だろうなぁ……初華に忘れられたくないなんて思っちまうとはよ」
J、視線をそらして髪をガシガシ掻きむしる。そんなわけないでしょ~、と初華。
「はいは~い、たったいま販売方針が決まったよん」
ここでメルクーアが注目~♪とか。
「この猫、視線逸らしてるから『逆招き猫』の設定で行くわよ~。正面から見ずこの視線に耐えられない、心にやましいものがある人は退散、って感じ」
「えぇ~、JK大人気はぁ~?」
可愛くぶーたれるハナ。
「大丈夫! 最近はこのぶさ可愛い外見が人気で、若い女性の間でインテリアとして人気ってことで」
「それなら満足ですぅ」
これで販売の準備はばっちり。
「警備は任せておけ。歪虚の手先の野望であれば跡形もなく粉砕するのみ」
コーネリア、立つ。
警備の方も本格的に始動である。
●
「さて、初華にはああ言ったが」
Jが屋台広場の裏を巡回している。
出発前、「怪しいロウソク、どこにあるんだろうね?」と初華が首をひねっていた。
「そこにあってもおかしくないと思える場所に、堂々潜んでると思うぜ? この辺りも明かりとりが置いてあっても不審じゃなく、近くに燃えやすいものがあるから怪しいな」
身を縮めて左右を気にしていた初華の様子を思い出し気合を入れる。
もちろん、簡単には見つからない。
防火用水から離れた位置の屋台、避難経路を火の海にして退路を塞ぐなんてのも……などと怪しい場所を確認する。
「なんだ、いねぇじゃ……」
肩透かしだなと思ったところで、不審なロウソク発見。
ロウソク、ぎくりとして人形に変身しいきなり襲って来た!
「騒ぐんじゃねぇぜ?」
ぐわっ、と来たところをファントムハンドで引き寄せ壁に押さえつける。そのままワイルドラッシュで殴り倒す。
「やれやれ。……しかし、こんな場所に仕掛けてどういうつもりだ?」
何もなかったかのように表通りに出て来るJ。ただ、首をひねっている。
こちら、レイオス。
「それにしてもランタンの次はロウソクか。照明の歴史を逆行してるなら次は松明人形になってそうだな」
家具販売などする屋台を品定めするふりをして確認中。
よし、問題なしと身を起こしたところでこれまでのYの手口を思い出す。
「そういや風向きも計算していたな」
えーと、と見回したところ路地裏の暗がりを照らす二本のロウソクが目についた。
自然な感じで脇を通っても変化なし。戻って休憩するふりをして横に座る。変化なし。
「Yって堕落者を逃がしたのが痛いな。次に見たら叩き割ってやる」
呟く。変化なし。
「Jか? そうか、一人で何とかなるか」
通信機で連絡。変化なし。
「やれゆれ」
いや、立ち上がったところで一本が人形化し襲ってきた!
「……確かに何とかなるな」
レイオス、二刀流でカウンター。人形を真っ二つに。
「お前には悪いことをしたな」
もう一本は本当にロウソクだったので火を点け直してくっつけておいた。
「ただ、おかしいな?」
最後に首を傾げる。
「人混みに紛れてこっそり物騒なものを仕掛けるとは、まさにテロリストの所業だな」
コーネリアは左右に目を光らせながら屋台通りを歩いている。しかし、日中火をつけたロウソクなどはない。
「あるいは人の集まりが薄い場所にさりげなく、か」
人込みを後にした。
ここで気配に気付く。
「ここならいいだろう?」
「でも恥ずかしい」
人目を逃れたカップルが路地に潜んでいた。ロウソクの明かりもある。
「……」
どうしたものかなとコーネリア。物々しい雰囲気なのはいつもなので仕方ない。カップルはこの視線に気付き、びくっ。慌てて走って逃げた。ロウソクの火はその風でも揺らがない。
「擬態するならもっとマシな方法はないのか木偶の坊? それでは素人以下だな」
誰もいなくなり巻き込まないと判断し、つかつか詰め寄る。さすがにロウソクは人形化し襲ってきた!
「灯ごと凍るがいい」
拳銃を引き抜きドンとフローズンパニッシャー。動きを止めておいて左の一丁で近距離射撃。止めを刺した。
「貴様の主の首もいずれ叩き落とす。私の手から逃げられはせん」
裏路地に背を向け言い捨て、後にする。
「ブサカワ、コワカワ! 幸運の不審者避けアイテムはいかがですぅ?」
ハナは、前後に背負ったバックに隙間なくピンバッジでブサカワ人形を吊るして売り歩いている。揺れる壁掛け猫がゆらゆら揺れつつあっちに視線を飛ばしたりこっちに不機嫌そうな瞳を投げたり。周りからは胡乱な目。
「リアルブルーJKのマストアイテムでぇ、これをたくさん吊るして歩けば不審者遠ざけ良縁を呼び、素敵なお嫁さんになれると噂ですぅ」
陶器なので割れないよう人込みを避けたり、しっかり話を聞いてもらうためトイレの順番待ちをしている人に売り込んでみたり。ついでに不審なものについても聞きこんでいる。
その時だった。
「わ。なんだ、これ?」
路地裏から男性の不審な声。そしてどたばたという音。
「何かありま……不審者は滅殺ですぅ」
飛び込んだハナの声が響き、ぴかーっと五色光が乱舞した。
のち、男が出て来た。
「いやあ、助かったよ。これ、厄除け? 買うよ」
「ありがとうございますぅ。……不審者は消えましたよぉ」
実は男はトイレが我慢できず立ちショ……ごほごほ。とにかく狭い路地に入ったところロウソクが人形になって襲われたところ、ハナに助けてもらった。不審者と表現しているのはハナの商売のため。男も立ち以下略の弱みがあるのでむしろ協力的。
「一つください」
「買います~」
ご利益あり、と見られ売れ行き好調だ。
●
「わー、可愛い」
売り場では、猫を頭に載せたメルクーアと猫を抱いた小鳥と初華が目を引いている。
「これ、頭を激しく動かせないのよね~」
遠くでメルクーアをじっと見ている女の子がいるが、軽率に動くと猫の陶器が落ちてしまう。そうこうしているうち、女の子は歩いて行った。
「それじゃわたしが呼び込んでこようかな?」
小鳥、猫を抱いたまま軽快に出ていく。
「そこのお姉さん・お兄さん♪」
右にステップ。
揺れるエプロンのフリル。スリットの深いチャイナ服の裾。
「ちょっと時間があるなら寄っていかないかな?」
左にステップ。
スリットの隙間から覗く白い肌。抱いた猫をうまく動かし尻尾が揺れているように。
「この猫さん、ああ見えて防犯だけでなく不審者よけや、抱いて可愛い人形としてもいいと思うんだよ♪」
はい、と目の前に出してにこぱ。売り場の方では頭に乗られ胸に抱いた猫まみれのメルクーアが呼び込んでいる。
あるいはこの時、売り場で閑古鳥が鳴いていたら客は敬遠していただろう。
「どうぞ。ごゆっくり」
客がいたのは、天斗が白茶を無料で振る舞っていたから。サービスなので量は少ないが足を止めてみていく人は多い。
「女の子に人気でーす」
「彼女へのプレゼントにどう?」
初華が呼び掛け、寄って来た客にメルクーアがさらに魅力を伝える。
「こう、前肢を壁に引っ掛けるだけです。おそらく知らない人が見たらびっくりしますね」
理屈っぽい説明は、天斗。
「そうそう、防犯の御守りにもなりますよー。家族へのお土産にどうぞ」
メルクーア、ちっちゃな女の子に売ったあと別の客にそう伝えた。
「最近は火事も多いし不審者を近寄らせない安全対策にはピッタリじゃないかな? かな?」
出ていた小鳥も呼応。若い女性以外にも声を掛けていく。
「まあ、可愛い。じゃこれをいただくわ」
「わ、わたしは商品についてないんだよ……」
小鳥、危うくおばさん客にお持ち帰りされそうになるが。
メルクーアも似たような事態に。
「え? これが欲しいの?」
カチューシャ猫が欲しい客がいた。
「仕方ない、体験工作もしなくちゃかもね~」
ちょっと前の依頼でもやったかしら、とメルクーア。指導はあの時よりうまくなっていたりする。
この呼び込みでぐっと購買客層が増えた。
特に、商品は大きめの陶器。遠くからの客は持ち帰りにくい。主に近場の人に売れた。
ただ、家族へとなると包装が大変だ。初華がてんやわんやしている。
「手伝いますよぉ~」
「まあ、その程度なら」
そこに戻ってきたハナとコーネリアが交代。
天斗はお疲れの初華を連れ出した。
「何かあったら大変ですから」
「その……ごめんなさい」
天斗のクールな言葉に初華、少し落ち込んでいる。
「でも天斗さん、見回りだよね。私も頑張る」
「無理は禁物です。何せ、うちの店主は『巻き込まれクイーン』ですから」
「うー。それ、どういう意味~?」
「深く考えず普通に楽しくしてればよろしいかと」
とにかく、客側として楽しませてやる。
「あ。あれ、美味しそう……」
「仕方ありませんね……」
計算外の事態にも遭うことになるが。
で、売り場の方。
「これで最後の一つも売れたかな?」
店から少し離れた小鳥が振り返る。
「こっちも全部売れましたよぉ」
ハナ、店で手を振る。
「これでいいだろう。おしまいだ」
コーネリアの包装作業も完了。
「体験工作もこれで終わりねー」
メルクーアも落ちついたようだ。
そこに天斗と初華が帰って来た。
「ただいま~。お土産買ってきたよ♪」
カバブとか買い込んだ食べ物を天斗とともに配る。
警備のレイオスとJも戻ってきた。
「クレープは焼かないのか?」
「ごめんなさい、レイオスさん。今回ないの~」
また今度焼いたげるね、と初華。レイオス、仕方なくカバブにかぶりつく。
「せっかくの祭りなんだから俺たちも楽しもうぜ、と思ったがまさかすでに買い込んでるとはなぁ」
Jもがぶり。ま、これはこれで楽しむぜ、とか。
「それより敵がどういうつもりか分からん」
コーネリアもがぶりとやりながら警備の話をする。
「ああ、確かにな」
レイオスも同調する。
「どういうことです?」
天斗、白茶を配りつつ手短に。
「前回より仕掛ける場所が甘いんだよ」
J、本当に大火を起こす気とは思えん、とやれやれ。自分の見立てと激しく乖離した場所に仕掛けてあったことを話した。これで初華たちもおかしなことがよく分かった。
「目的が違うのかしらねー?」
メルクーア、首をひねる。
「覚えておいた方がいいかもしれませんね」
天斗、静かにそうまとめた。
とにかく販売を委託された壁掛け猫は完売。火付けのYが仕掛けたと思しきロウソク人形は騒ぎになる前に全滅。依頼は大成功だった。
「これが初華さんの言ってたブサカワちゃん?」
準備中の売り場で、メルクーア(ka4005)がひょいと壁掛け猫を抱き上げていた。顔の正面でにらめっこする形だが、陶器の猫の目はばつが悪そうに横に逸らされている。
「うんっ。なかなか可愛いでしょ?」
「どれどれ。この不機嫌な猫の顔にも愛嬌が感じ……られねえな」
メルクーアときゃいきゃいやってる南那初華(kz0135)。その横からレイオス・アクアウォーカー(ka1990)が会話に加わるが、どうもこの猫の可愛らしさが分からない。顔つきは不細工で、明らかに不貞腐れているこの猫のどこが可愛いのか。
「えー、こうして抱いたら照れてるみたいじゃない」
初華、胸に抱っこ。猫は横向いて不貞腐れ。
「……まあ、気に入るヤツが実際にいるなら売れそうか」
「どれ、一つみてやろう」
レイオスが心の広いところを見せた横から、今度はコーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)が顔を覗かせた。
で、コーネリア、見る。猫、当然そっぽを向いている。
瞬間、拳銃を引き抜き銃口を猫の額にぐりりと押し付けた!
「ほう。視線を逸らすとは……心にやましいところがあると見える」
「ええっ! ちょっと待ってよぅ」
「……冗談だ」
慌てて止める初華に、いたずらそうににやり。
「この猫にもそういう茶目っ気が感じられるんじゃないかな、かな?」
狐中・小鳥(ka5484)はそんなコーネリアの様子を見てぽそり。胸に抱いた壁掛け猫に「ねー?」と同意を求めていたり。
その横では、「ふんふふんふふーん♪」と鼻歌交じりに星野 ハナ(ka5852)が何かやっている。
カラフルで可愛い紐を取り出しブサカワ猫の首にくるっと回して……。
「ふんふん♪ ……ふんっ!」
思いっきり首を絞めた!
「……それはどうなのかな?」
「あれみたいなものですぅ」
最後のひと絞めの力強さに突っ込んだ小鳥。ハナはにこやかにメルクーアのほうを指差している。
「ふんふんふん~♪」
メルクーアもやっぱり鼻歌交じり。
工具を手にして猫耳カチューシャをぐりぐりねじねじしている。
でもって、壁掛け猫にもぐりぐり細工してドッキング。
「できた! 初華さん、可愛いでしょ?」
くるっと振り向いたメルクーアの頭には、ブサカワの壁掛け猫が両前肢をちょこんと添えて乗っていた。猫耳カチューシャに固定して、そのカチューシャを被った形だ。猫の視線は、横。
「きゃー、可愛い可愛い!」
盛り上がるメルクーアと初華。
「それに比べてこちらは、だよ」
ハナに視線を戻す小鳥。
「ロープワークで丈夫で武骨なピンバッジに括り付けて……リアルブルーのJK(女子高生)のバック必須アイテム、ブサカワ首つり人形の完成ですぅ!」
えらくごっつごつしているがまあ、間違いなく首つり人形である。そのほかの点はハナの満面の笑顔が異論を認めない。
「……初華さんも本当にいろんな依頼をやってるよね? 何でも屋さん状態?」
小鳥、店舗責任者の初華の方に突っ込んだ。
「し、しょうがないじゃない。舞い込んでくるんだもん」
「ただまあ、あの爆発男のこともあるしな」
ここでレイオスが冷静な指摘。
「火付けのYの方も忘れてないわよー」
「確かにそっちの縁もあるといえばあるよねー」
メルクーアも爆弾男こと「火付けのY」には縁がある。小鳥もそうなので仕方がないかなと思い直す。
そこに、真田 天斗(ka0014)。
「白茶が入りました」
恭しく人数分淹れる。
「え。今回白茶販売しないよ?」
「サービスですね。今後の白茶販売につながれば尚良いです」
初華、小鳥から「本当に何でも屋さん状態?」と繰り返され慌てて天斗に確認。天斗の方は涼しく言うのみ。
「そろそろ暑くなってきましたからね。白茶には宿酔い、夏ばてに効くといった効能や解熱作用が有りますからこれからの時期にちょうど良いでしょう」
その絶好の機会を逃す手はありませんから、と。
「でも、壁掛け猫の方は?」
「十の言葉より初華さんや皆さんの愛らしさ一つで十分でしょう」
食い下がる初華にエレガントに返す天斗。初華、「普段そんなこと言ってくれないくせに」とかうにゃもにゃ。
その背後から肩ぽむされ、はっと振り向く。
「よ。何か久しぶりに初華に会った気がするぜ……元気だったか」
トリプルJ(ka6653)である。
「うん、元気。疲れてたけどJさんの元気な顔見て元気になったよ♪」
「そりゃよかった。何の感傷だろうなぁ……初華に忘れられたくないなんて思っちまうとはよ」
J、視線をそらして髪をガシガシ掻きむしる。そんなわけないでしょ~、と初華。
「はいは~い、たったいま販売方針が決まったよん」
ここでメルクーアが注目~♪とか。
「この猫、視線逸らしてるから『逆招き猫』の設定で行くわよ~。正面から見ずこの視線に耐えられない、心にやましいものがある人は退散、って感じ」
「えぇ~、JK大人気はぁ~?」
可愛くぶーたれるハナ。
「大丈夫! 最近はこのぶさ可愛い外見が人気で、若い女性の間でインテリアとして人気ってことで」
「それなら満足ですぅ」
これで販売の準備はばっちり。
「警備は任せておけ。歪虚の手先の野望であれば跡形もなく粉砕するのみ」
コーネリア、立つ。
警備の方も本格的に始動である。
●
「さて、初華にはああ言ったが」
Jが屋台広場の裏を巡回している。
出発前、「怪しいロウソク、どこにあるんだろうね?」と初華が首をひねっていた。
「そこにあってもおかしくないと思える場所に、堂々潜んでると思うぜ? この辺りも明かりとりが置いてあっても不審じゃなく、近くに燃えやすいものがあるから怪しいな」
身を縮めて左右を気にしていた初華の様子を思い出し気合を入れる。
もちろん、簡単には見つからない。
防火用水から離れた位置の屋台、避難経路を火の海にして退路を塞ぐなんてのも……などと怪しい場所を確認する。
「なんだ、いねぇじゃ……」
肩透かしだなと思ったところで、不審なロウソク発見。
ロウソク、ぎくりとして人形に変身しいきなり襲って来た!
「騒ぐんじゃねぇぜ?」
ぐわっ、と来たところをファントムハンドで引き寄せ壁に押さえつける。そのままワイルドラッシュで殴り倒す。
「やれやれ。……しかし、こんな場所に仕掛けてどういうつもりだ?」
何もなかったかのように表通りに出て来るJ。ただ、首をひねっている。
こちら、レイオス。
「それにしてもランタンの次はロウソクか。照明の歴史を逆行してるなら次は松明人形になってそうだな」
家具販売などする屋台を品定めするふりをして確認中。
よし、問題なしと身を起こしたところでこれまでのYの手口を思い出す。
「そういや風向きも計算していたな」
えーと、と見回したところ路地裏の暗がりを照らす二本のロウソクが目についた。
自然な感じで脇を通っても変化なし。戻って休憩するふりをして横に座る。変化なし。
「Yって堕落者を逃がしたのが痛いな。次に見たら叩き割ってやる」
呟く。変化なし。
「Jか? そうか、一人で何とかなるか」
通信機で連絡。変化なし。
「やれゆれ」
いや、立ち上がったところで一本が人形化し襲ってきた!
「……確かに何とかなるな」
レイオス、二刀流でカウンター。人形を真っ二つに。
「お前には悪いことをしたな」
もう一本は本当にロウソクだったので火を点け直してくっつけておいた。
「ただ、おかしいな?」
最後に首を傾げる。
「人混みに紛れてこっそり物騒なものを仕掛けるとは、まさにテロリストの所業だな」
コーネリアは左右に目を光らせながら屋台通りを歩いている。しかし、日中火をつけたロウソクなどはない。
「あるいは人の集まりが薄い場所にさりげなく、か」
人込みを後にした。
ここで気配に気付く。
「ここならいいだろう?」
「でも恥ずかしい」
人目を逃れたカップルが路地に潜んでいた。ロウソクの明かりもある。
「……」
どうしたものかなとコーネリア。物々しい雰囲気なのはいつもなので仕方ない。カップルはこの視線に気付き、びくっ。慌てて走って逃げた。ロウソクの火はその風でも揺らがない。
「擬態するならもっとマシな方法はないのか木偶の坊? それでは素人以下だな」
誰もいなくなり巻き込まないと判断し、つかつか詰め寄る。さすがにロウソクは人形化し襲ってきた!
「灯ごと凍るがいい」
拳銃を引き抜きドンとフローズンパニッシャー。動きを止めておいて左の一丁で近距離射撃。止めを刺した。
「貴様の主の首もいずれ叩き落とす。私の手から逃げられはせん」
裏路地に背を向け言い捨て、後にする。
「ブサカワ、コワカワ! 幸運の不審者避けアイテムはいかがですぅ?」
ハナは、前後に背負ったバックに隙間なくピンバッジでブサカワ人形を吊るして売り歩いている。揺れる壁掛け猫がゆらゆら揺れつつあっちに視線を飛ばしたりこっちに不機嫌そうな瞳を投げたり。周りからは胡乱な目。
「リアルブルーJKのマストアイテムでぇ、これをたくさん吊るして歩けば不審者遠ざけ良縁を呼び、素敵なお嫁さんになれると噂ですぅ」
陶器なので割れないよう人込みを避けたり、しっかり話を聞いてもらうためトイレの順番待ちをしている人に売り込んでみたり。ついでに不審なものについても聞きこんでいる。
その時だった。
「わ。なんだ、これ?」
路地裏から男性の不審な声。そしてどたばたという音。
「何かありま……不審者は滅殺ですぅ」
飛び込んだハナの声が響き、ぴかーっと五色光が乱舞した。
のち、男が出て来た。
「いやあ、助かったよ。これ、厄除け? 買うよ」
「ありがとうございますぅ。……不審者は消えましたよぉ」
実は男はトイレが我慢できず立ちショ……ごほごほ。とにかく狭い路地に入ったところロウソクが人形になって襲われたところ、ハナに助けてもらった。不審者と表現しているのはハナの商売のため。男も立ち以下略の弱みがあるのでむしろ協力的。
「一つください」
「買います~」
ご利益あり、と見られ売れ行き好調だ。
●
「わー、可愛い」
売り場では、猫を頭に載せたメルクーアと猫を抱いた小鳥と初華が目を引いている。
「これ、頭を激しく動かせないのよね~」
遠くでメルクーアをじっと見ている女の子がいるが、軽率に動くと猫の陶器が落ちてしまう。そうこうしているうち、女の子は歩いて行った。
「それじゃわたしが呼び込んでこようかな?」
小鳥、猫を抱いたまま軽快に出ていく。
「そこのお姉さん・お兄さん♪」
右にステップ。
揺れるエプロンのフリル。スリットの深いチャイナ服の裾。
「ちょっと時間があるなら寄っていかないかな?」
左にステップ。
スリットの隙間から覗く白い肌。抱いた猫をうまく動かし尻尾が揺れているように。
「この猫さん、ああ見えて防犯だけでなく不審者よけや、抱いて可愛い人形としてもいいと思うんだよ♪」
はい、と目の前に出してにこぱ。売り場の方では頭に乗られ胸に抱いた猫まみれのメルクーアが呼び込んでいる。
あるいはこの時、売り場で閑古鳥が鳴いていたら客は敬遠していただろう。
「どうぞ。ごゆっくり」
客がいたのは、天斗が白茶を無料で振る舞っていたから。サービスなので量は少ないが足を止めてみていく人は多い。
「女の子に人気でーす」
「彼女へのプレゼントにどう?」
初華が呼び掛け、寄って来た客にメルクーアがさらに魅力を伝える。
「こう、前肢を壁に引っ掛けるだけです。おそらく知らない人が見たらびっくりしますね」
理屈っぽい説明は、天斗。
「そうそう、防犯の御守りにもなりますよー。家族へのお土産にどうぞ」
メルクーア、ちっちゃな女の子に売ったあと別の客にそう伝えた。
「最近は火事も多いし不審者を近寄らせない安全対策にはピッタリじゃないかな? かな?」
出ていた小鳥も呼応。若い女性以外にも声を掛けていく。
「まあ、可愛い。じゃこれをいただくわ」
「わ、わたしは商品についてないんだよ……」
小鳥、危うくおばさん客にお持ち帰りされそうになるが。
メルクーアも似たような事態に。
「え? これが欲しいの?」
カチューシャ猫が欲しい客がいた。
「仕方ない、体験工作もしなくちゃかもね~」
ちょっと前の依頼でもやったかしら、とメルクーア。指導はあの時よりうまくなっていたりする。
この呼び込みでぐっと購買客層が増えた。
特に、商品は大きめの陶器。遠くからの客は持ち帰りにくい。主に近場の人に売れた。
ただ、家族へとなると包装が大変だ。初華がてんやわんやしている。
「手伝いますよぉ~」
「まあ、その程度なら」
そこに戻ってきたハナとコーネリアが交代。
天斗はお疲れの初華を連れ出した。
「何かあったら大変ですから」
「その……ごめんなさい」
天斗のクールな言葉に初華、少し落ち込んでいる。
「でも天斗さん、見回りだよね。私も頑張る」
「無理は禁物です。何せ、うちの店主は『巻き込まれクイーン』ですから」
「うー。それ、どういう意味~?」
「深く考えず普通に楽しくしてればよろしいかと」
とにかく、客側として楽しませてやる。
「あ。あれ、美味しそう……」
「仕方ありませんね……」
計算外の事態にも遭うことになるが。
で、売り場の方。
「これで最後の一つも売れたかな?」
店から少し離れた小鳥が振り返る。
「こっちも全部売れましたよぉ」
ハナ、店で手を振る。
「これでいいだろう。おしまいだ」
コーネリアの包装作業も完了。
「体験工作もこれで終わりねー」
メルクーアも落ちついたようだ。
そこに天斗と初華が帰って来た。
「ただいま~。お土産買ってきたよ♪」
カバブとか買い込んだ食べ物を天斗とともに配る。
警備のレイオスとJも戻ってきた。
「クレープは焼かないのか?」
「ごめんなさい、レイオスさん。今回ないの~」
また今度焼いたげるね、と初華。レイオス、仕方なくカバブにかぶりつく。
「せっかくの祭りなんだから俺たちも楽しもうぜ、と思ったがまさかすでに買い込んでるとはなぁ」
Jもがぶり。ま、これはこれで楽しむぜ、とか。
「それより敵がどういうつもりか分からん」
コーネリアもがぶりとやりながら警備の話をする。
「ああ、確かにな」
レイオスも同調する。
「どういうことです?」
天斗、白茶を配りつつ手短に。
「前回より仕掛ける場所が甘いんだよ」
J、本当に大火を起こす気とは思えん、とやれやれ。自分の見立てと激しく乖離した場所に仕掛けてあったことを話した。これで初華たちもおかしなことがよく分かった。
「目的が違うのかしらねー?」
メルクーア、首をひねる。
「覚えておいた方がいいかもしれませんね」
天斗、静かにそうまとめた。
とにかく販売を委託された壁掛け猫は完売。火付けのYが仕掛けたと思しきロウソク人形は騒ぎになる前に全滅。依頼は大成功だった。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 メルクーア(ka4005) ドワーフ|10才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/06/23 10:00:58 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/22 18:49:46 |