ゲスト
(ka0000)
猫カフェ開店に向けて……
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/29 22:00
- 完成日
- 2017/07/01 20:23
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
港町「ガンナ・エントラータ」
人々の活気で溢れ、物が行き交う街。
この地は陸上からだけでなく、自由貿易同盟から船による輸送などもあり、大量の物資が集まるが、その多くは王都イルダーナに運ばれることとなる。
この街に先日、大量の猫が街路を埋め尽くすという珍事件があった。
その際は、ハンター達の働きもあって、全ての猫達を街路から裏通りの倉庫へとうまく移動させることができた。
街路は再び通行可能となり、街の人々も、商人達も元通りの日常を送ることが出来るようになったのである。
めでたし、めでたし。
……では、終わらない状況になった商人が、裏通りで溜息をついていた。
「さて……」
先日、裏通りにある倉庫の所有者である商人エンリコ。目の前でくつろいでいる猫達を使ってうまく商売ができるとハンターに言われ、動き出そうと考えていた。
話によれば、猫カフェなるものは集客が見込め、なかなかいい商売になるのだとか。
確かに猫が運ばれてからというもの、猫好きの街の住民が時折姿を現し、餌やりなどをしてくれているが……。猫カフェの開店へとこぎつける為には、課題が山積みである。
まず、オーナー、エンリコ自身には、猫に関する知識が全くない。妻子もこの話を聞いて、大層嬉しがっていたものの。生憎、猫とは無縁の人生だった彼。商売一筋で生きていたため、猫の世話など全く出来ないのである。
スタッフがいないタイミングは彼も猫の面倒を見ることになろうが、何をしたら良いのか何も分からぬ状態。猫が毛玉を吐こうものなら、慌てふためくこと間違いなしである。
問題はそれだけではない。例えば、店舗となる予定の倉庫の状況だ。
現状、未使用だった隣り合わせの倉庫2つに、80匹ほどの猫達がねぐらとしている。それらを全てを収容していることもあって、大きさは十分。多少改装すれば、客の受け入れはできそうだ。
街路からの移動の際、ハンター達が内部の掃除をしてくれて埃などはある程度払ってくれたものの。猫カフェである以上、客に振舞う飲み物が必要だ。ジュースやコーヒー飲み物を作る為の器具、材料。それを振舞うための食器、カウンターやテーブル。等々、用意する物は多く、猫カフェの開店にこぎつけるには程遠い状況だ。
スタッフを集めるにしても、猫好き有志が名乗り出てくれてはいるが、彼らに接客経験などほぼ皆無だ。片手間でなく、きっちりとスタッフとして働いてもらうのであれば、雇用して教育することが必須となる。
最後に、この猫カフェの肝となる猫達だが、元々はほぼ野良猫である。この場に連れてきたハンター達が多少しつけたとはいえ、マイペースな猫達も多く、時折街を出歩く猫もいるらしい。また、気性の荒い猫もおり、そのしつけには頭を捻らせる必要があるようだ。
何から手を付けたらよいか。エンリコがたくさんの猫を眺めつつ、頭を悩ませていると……。
「私達も手伝います」
そこにやってきたのは、聖堂戦士団小隊長のファリーナ・リッジウェイ(kz0182)だ。
「猫カフェ開店と聞いて、何か手伝うことがあれば……もふもふ」
彼女は早速、手近な猫に抱きついてもふもふとし始める。
果たして、こんな様子で大丈夫かと、エンリコは頭を抱えてしまうのだった。
港町「ガンナ・エントラータ」
人々の活気で溢れ、物が行き交う街。
この地は陸上からだけでなく、自由貿易同盟から船による輸送などもあり、大量の物資が集まるが、その多くは王都イルダーナに運ばれることとなる。
この街に先日、大量の猫が街路を埋め尽くすという珍事件があった。
その際は、ハンター達の働きもあって、全ての猫達を街路から裏通りの倉庫へとうまく移動させることができた。
街路は再び通行可能となり、街の人々も、商人達も元通りの日常を送ることが出来るようになったのである。
めでたし、めでたし。
……では、終わらない状況になった商人が、裏通りで溜息をついていた。
「さて……」
先日、裏通りにある倉庫の所有者である商人エンリコ。目の前でくつろいでいる猫達を使ってうまく商売ができるとハンターに言われ、動き出そうと考えていた。
話によれば、猫カフェなるものは集客が見込め、なかなかいい商売になるのだとか。
確かに猫が運ばれてからというもの、猫好きの街の住民が時折姿を現し、餌やりなどをしてくれているが……。猫カフェの開店へとこぎつける為には、課題が山積みである。
まず、オーナー、エンリコ自身には、猫に関する知識が全くない。妻子もこの話を聞いて、大層嬉しがっていたものの。生憎、猫とは無縁の人生だった彼。商売一筋で生きていたため、猫の世話など全く出来ないのである。
スタッフがいないタイミングは彼も猫の面倒を見ることになろうが、何をしたら良いのか何も分からぬ状態。猫が毛玉を吐こうものなら、慌てふためくこと間違いなしである。
問題はそれだけではない。例えば、店舗となる予定の倉庫の状況だ。
現状、未使用だった隣り合わせの倉庫2つに、80匹ほどの猫達がねぐらとしている。それらを全てを収容していることもあって、大きさは十分。多少改装すれば、客の受け入れはできそうだ。
街路からの移動の際、ハンター達が内部の掃除をしてくれて埃などはある程度払ってくれたものの。猫カフェである以上、客に振舞う飲み物が必要だ。ジュースやコーヒー飲み物を作る為の器具、材料。それを振舞うための食器、カウンターやテーブル。等々、用意する物は多く、猫カフェの開店にこぎつけるには程遠い状況だ。
スタッフを集めるにしても、猫好き有志が名乗り出てくれてはいるが、彼らに接客経験などほぼ皆無だ。片手間でなく、きっちりとスタッフとして働いてもらうのであれば、雇用して教育することが必須となる。
最後に、この猫カフェの肝となる猫達だが、元々はほぼ野良猫である。この場に連れてきたハンター達が多少しつけたとはいえ、マイペースな猫達も多く、時折街を出歩く猫もいるらしい。また、気性の荒い猫もおり、そのしつけには頭を捻らせる必要があるようだ。
何から手を付けたらよいか。エンリコがたくさんの猫を眺めつつ、頭を悩ませていると……。
「私達も手伝います」
そこにやってきたのは、聖堂戦士団小隊長のファリーナ・リッジウェイ(kz0182)だ。
「猫カフェ開店と聞いて、何か手伝うことがあれば……もふもふ」
彼女は早速、手近な猫に抱きついてもふもふとし始める。
果たして、こんな様子で大丈夫かと、エンリコは頭を抱えてしまうのだった。
リプレイ本文
●
港町「ガンナ・エントラータ」。
朝、その裏通りにある倉庫へ、ハンター達は入っていく。
「にゃー」
「なーお」
「うみゃう」
並んだ2つの倉庫内は、たくさんの猫がくつろいでいた。倉庫内はある程度日当たりがよくなるよう整えられていたもあり、猫達は心地よいのかマイペースにあくびをし、居眠りしている。
「よ、ようこそ……」
すでに、猫にまみれた中年男が、困った顔をして一行を出迎えた。
「エルバッハ・リオンです。よろしければ、エルと呼んでください。よろしくお願いします」
まずは、エルバッハ・リオン(ka2434)は凛とした立ち振る舞いで礼儀正しく、オーナーであるエンリコへと挨拶を交わす。
「エンリコさん、このたびはありがとうございます」
次に、小柄なエルフのミオレスカ(ka3496)が礼を述べていた。
このまま上手くいけば、猫カフェの創始者として名前を残すかもしれないと、彼女はエンリコを持ち上げるのだが……。
「見るに見かねて、手を差し伸べはしたが……」
生憎と、猫の世話の仕方が分からず、エンリコは全身傷だらけである。
根が悪い人間ではないが、エンリコに生きる術として金策をしていかねばならないという考えは強く、悪い言い方をすれば、猫を利用しようとしている男ではある。
「だが、同情だけでは、猫も俺も生きてはいけんのでな……」
エンリコはリアリストな部分もあるのだろう。最悪、事態の改善がなければ、倉庫を解体してしまおうかとも考えていたそうだ。
「思惑はあろうが、動いてくれなくてはどうしようもない事態だ」
ともあれ、こうやって動き出そうとしてくれたエンリコに、赤髪の青年、ヴァイス(ka0364)は本心より感謝の意を示す。
ともあれ、動き出さねば始まらない。ハンター達は猫カフェと形とすべく、動き出すのだった。
●
程なく、入れ替わり立ち替わり、近辺に住む住人が暇を見つけてやってくる。
「わぁ……、可愛いですね……」
話を聞きつけ、非番でやってきたファリーナ・リッジウェイ (kz0182)の姿もそこにはあった。
「せっかくお店を開くなら、カワイイお店にしたいな!」
皆、猫の世話を行う中、夢路 まよい(ka1328)は膝の上で眠る、自身の髪と同じ灰色の毛並みの猫を見下ろしながら、小さく唸りこむ。
「お店を開くのは、猫さん達が落ち着いてだろうし……」
猫達はこの場を寝床として認識し始めてはいるが、何せ80匹も猫がいる。まだこの場に慣れてない猫もいるし、相変わらずやんちゃな猫が暴れ周り、エンリコの顔をこれでもかと爪で引っかく始末。
「お店の備品についてはとりあえず、アイディアだけどんどん出していこうかな」
実現可能かどうかは二の次として。まよいはむつかしく考えず、猫達が店内でくつろぐことのできるスペースが欲しいと考える。
「猫さんがおねんねできるクッションなんかも、カワイイのを揃えたいよね。食パン型のクッションに挟まって眠ってる猫さんとか、見てみたいな~」
ちょっとだけトリップ仕掛ける迷いの言葉を、エルバッハはふむふむとメモを取る。まずは、猫の管理体制から整えようと彼女は考えていた。
「掃除はできているようですが、所々の穴が気になりますね」
ある程度入り用な物をチェックしたエルバッハは、街へ木材の買出しに向かう。
「エル、領収書を頼む」
出資を同意したエンリコも、エルバッハへと一言告げた。
「あっ、私も付き添います」
荷物持ちとしてファリーナも同行を申し出て、エルバッハと一緒に出かけていくのだった。
倉庫に残るメンバー達。
猫のことを何も知らないエンリコへ、ヴァイスはその接し方のサポートを行う。
「そうだな、まずは猫の行動から行こうか」
一般的な猫であれば、ヴァイスも多少は接した経験がある。
まずは、接する猫は倉庫にいる猫の中でも人懐っこく、躾の行き届いた猫を2,3匹選び、エンリコと触れ合わせていく。
「む、むう……」
オーナー、エンリコは戸惑いながらも、猫と接する。
普段、行商を行うこともあって、エンリコは力仕事も多く、それなりの力がある。それだけに、下手に触ると痛くないだろうかと、彼は妙な具合に猫を気にしている。
何だかんだで、エンリコも猫が気になってはいるようだ。ただ、商売はそれなりの腕を持つも、猫相手ではその腕はまるで役に立たないと彼は自覚していたようだ。
ヴァイスは自身の経験を元にして、エンリコに猫の行動、危険信号など、基礎的な事を一つずつ教えつつ、彼に実践させる。
「ここにいる猫達だけでも、随分と性格が違うのが分かるだろ。ヒトと同じで猫も十人十色、それだけは忘れないでくれ」
言葉では実にカッコいいことを言っているヴァイスだが、その手に抱いた別の猫を盛大にもふっていたりする。
そんな指導員の姿を、苦笑いするエンリコ。彼がゆっくりとした気持ちで猫に接することができるよう、ヴァイスは一度に詰め込んで教えないよう配慮する。エンリコがこれで猫を嫌いになってしまっては、元も子もないのだ。
そして、ミオレスカはこの場に訪れる猫好きの住人達と1人ずつ顔を合わせていた。
近所の主婦や、気のいいおじいさん。心から猫好きな10代後半の少女に、厳つい見た目の男性。
様々な見た目の彼らはミルクを持参し、世話を行う。その様子をミオレスカは確認しながら、こう語る。
「ここで、猫カフェをオープンさせようと考えています」
飲食しながら、猫とくつろぐ事のできる空間が提供できる素敵な店。それを聞いた猫好き達は、顔を見合わせる。
「そりゃ、猫の為だ、仕方ないねぇ」
「おう、こいつらの為に人肌脱ぐしかないだろう」
だが、果たして、そんな店が営業してやっていけるのか。
猫好き達は皆、それぞれが自分の生活、仕事を持っている。現状は精々、やれたとしても片手間でなんとかといったところだろうか。
「はい、私達で一緒に勉強しながら、頑張りましょう」
続けられるなら、是非、猫カフェの正規従業員に。そういった方向で上手く猫カフェを営業できるようになれば……。
ミオレスカも猫好き達も夢を膨らませ、その夢を形とするよう意気込むのだった。
●
買出しから帰ってきた、エルバッハにファリーナ。
資材と共に餌を購入してきたことで、早速、魚や肉といった餌を皆が猫達へと与えていく。
それらをミオレスカもまた手にしつつ、猫好き達へ語る。
「稼ぎは少ないかもしれませんが、入店料などは控えめで、がんばりましょう」
入店した人にも、猫へと餌やりと体験してもらうように。ミオレスカはそんな構想を口にした。
「あと、他の場所では、あまり餌をやらないようにしたほうがいいですね」
未だにこの場所へと慣れぬ猫や、マイペースにぶらりとどこかへ行く猫がこの倉庫をおうちだと思ってもらえるように。
「そうか、猫さんにあげるおやつとかも買えるようにして、猫さんにおやつをあげて触れ合えるようにしたいな」
あと、猫さんがじゃれてくれるような玩具があれば、来てくれた猫好き達は満足するだろうか。まよいはさらに、サービス案を出して見せた。
「それで定着してくれれば、ゆくゆくは……」
上手くいけば、安定経営になるのではと、ミオレスカは笑みを零す。
ミオレスカは最初から訪れる客に少量の入店料をと考えているが……、果たしてそれで人は訪れるのかどうか。
「さすがに、猫さんの世話だけで入店料をお願いするのは、難しいかな」
「うむ、嬢ちゃんの言うとおりじゃ」
まよいは小さく首を振ると、猫好き達な爺さんがまよいに同意した。
この場に来ている猫好きだって、手間を割いてやってきてくれている。いくら猫の世話にお金がかかるからとはいえ、わざわざ足を運んでくれた人が快くお金を払ってくれるかというと……。
「多くの種類の猫がいるのは魅力ですが、やはりそれだけでは……」
猫好きの少女の懸念に、まよいが胸を張る。
「そこは猫カフェらしく。飲み物や料理も提供しなきゃ。……そうだ。ドリンクや料理を入れる器とか、猫モチーフのものを揃えたいよね」
流れで、まよいは更なるアイディアを出す。
猫さんがあちらこちらへと移動する店内で使う食器なら、落としても割れにくい素材で。割れるともったいないし、新しく買うお金も必要となると彼女は考えたのだ。
「あと、コップを置くコースターなんかも、猫さんのお顔だとか、肉球だとかのイラストのやつがあるとカワイイかな~」
「ふむ……」
まよいの提案を、今度はエンリコがメモを取っていく。
とはいえ、そういった食器が売っているかと言われれば、難しいと言わざるを得ない。ほとんどがオーダーメイドとなるだろう。
そのエンリコはエルバッハが買って来た木材を使い、猫好き達と共に倉庫の補修を行う。その間、ヴァイスが気性の荒い猫達へと辛抱強く、粘り強く躾をしつつ交流していたようだ。
エルバッハはというと、小型の檻を作成していた。
猫にとってすらもかなり手狭な大きさのその檻は躾の際、態度の悪い猫を入れる為のもの。勝手に出歩いたり、反抗的な態度をとったりした猫に、躾の一環として檻に一日入れようというのだ。
「そうですね……」
ミオレスカもそれに同意する。多くの猫達を纏める為には、仕方のないことかもしれない。
「あとは……」
さらに、エルバッハはかなりの数の首輪を用意していた。
それぞれの首輪には猫の管理の為に、連番で番号を刻んでいる。定期的に猫が揃っているかチェックする為の物だ。いなくなった猫がいれば、自分やスタッフらで捜索を行う。
また、エルバッハは記録簿をつけることで、個々の猫の躾の進行状況、勝手に出歩いた日時をチェックする。
「少し可愛そうですが、この子達の為ですから」
これは、猫カフェが上手く軌道に乗った際、因縁をつけられた場合に備えたもの。きちんと外目から見ても猫達を管理していることを示し、抗弁できるようにとエルバッハは先を見通していたのだ。
こうして、エルバッハはがっちりと猫達に堅苦しい環境を強いるようにも見えるが、鞭だけではなく、従順な猫には食事の際に一品おまけするなど、飴となる行為も忘れない。
「ふふ、おりこうさんですね」
行儀よい猫へ、ファリーナも優しく頭を撫でてから餌を与える。ただ、猫の数は多い。とりわけ、人になつかぬ猫が問題だ。
「ちゃんと猫さん達全員に行き渡るよう、注意しないといけませんね」
餌やりが終われば、ミオレスカはスタッフと一緒にお掃除を始める。
トイレの躾もあり、その場所以外は普通に清掃することで、猫達にトイレの場所を覚えさせようとする。
「普段と違う異常な行動があれば、病気かもしれませんので、注意してみてあげましょう」
「なるほど」
ミオレスカの言葉に、ファリーナも猫好きも頷く。ちゃんと見てやれば、皆、元気でいられるはずだ。
環境作りや猫の躾は大変だが、これも猫カフェのオープンの為。この場のハンターもスタッフもオーナーも、皆一丸となってやれることから進める。
「夢が広がるね」
そんな状況に、まよいはさらなる案を出しつつ笑みをこぼすのだった。
港町「ガンナ・エントラータ」。
朝、その裏通りにある倉庫へ、ハンター達は入っていく。
「にゃー」
「なーお」
「うみゃう」
並んだ2つの倉庫内は、たくさんの猫がくつろいでいた。倉庫内はある程度日当たりがよくなるよう整えられていたもあり、猫達は心地よいのかマイペースにあくびをし、居眠りしている。
「よ、ようこそ……」
すでに、猫にまみれた中年男が、困った顔をして一行を出迎えた。
「エルバッハ・リオンです。よろしければ、エルと呼んでください。よろしくお願いします」
まずは、エルバッハ・リオン(ka2434)は凛とした立ち振る舞いで礼儀正しく、オーナーであるエンリコへと挨拶を交わす。
「エンリコさん、このたびはありがとうございます」
次に、小柄なエルフのミオレスカ(ka3496)が礼を述べていた。
このまま上手くいけば、猫カフェの創始者として名前を残すかもしれないと、彼女はエンリコを持ち上げるのだが……。
「見るに見かねて、手を差し伸べはしたが……」
生憎と、猫の世話の仕方が分からず、エンリコは全身傷だらけである。
根が悪い人間ではないが、エンリコに生きる術として金策をしていかねばならないという考えは強く、悪い言い方をすれば、猫を利用しようとしている男ではある。
「だが、同情だけでは、猫も俺も生きてはいけんのでな……」
エンリコはリアリストな部分もあるのだろう。最悪、事態の改善がなければ、倉庫を解体してしまおうかとも考えていたそうだ。
「思惑はあろうが、動いてくれなくてはどうしようもない事態だ」
ともあれ、こうやって動き出そうとしてくれたエンリコに、赤髪の青年、ヴァイス(ka0364)は本心より感謝の意を示す。
ともあれ、動き出さねば始まらない。ハンター達は猫カフェと形とすべく、動き出すのだった。
●
程なく、入れ替わり立ち替わり、近辺に住む住人が暇を見つけてやってくる。
「わぁ……、可愛いですね……」
話を聞きつけ、非番でやってきたファリーナ・リッジウェイ (kz0182)の姿もそこにはあった。
「せっかくお店を開くなら、カワイイお店にしたいな!」
皆、猫の世話を行う中、夢路 まよい(ka1328)は膝の上で眠る、自身の髪と同じ灰色の毛並みの猫を見下ろしながら、小さく唸りこむ。
「お店を開くのは、猫さん達が落ち着いてだろうし……」
猫達はこの場を寝床として認識し始めてはいるが、何せ80匹も猫がいる。まだこの場に慣れてない猫もいるし、相変わらずやんちゃな猫が暴れ周り、エンリコの顔をこれでもかと爪で引っかく始末。
「お店の備品についてはとりあえず、アイディアだけどんどん出していこうかな」
実現可能かどうかは二の次として。まよいはむつかしく考えず、猫達が店内でくつろぐことのできるスペースが欲しいと考える。
「猫さんがおねんねできるクッションなんかも、カワイイのを揃えたいよね。食パン型のクッションに挟まって眠ってる猫さんとか、見てみたいな~」
ちょっとだけトリップ仕掛ける迷いの言葉を、エルバッハはふむふむとメモを取る。まずは、猫の管理体制から整えようと彼女は考えていた。
「掃除はできているようですが、所々の穴が気になりますね」
ある程度入り用な物をチェックしたエルバッハは、街へ木材の買出しに向かう。
「エル、領収書を頼む」
出資を同意したエンリコも、エルバッハへと一言告げた。
「あっ、私も付き添います」
荷物持ちとしてファリーナも同行を申し出て、エルバッハと一緒に出かけていくのだった。
倉庫に残るメンバー達。
猫のことを何も知らないエンリコへ、ヴァイスはその接し方のサポートを行う。
「そうだな、まずは猫の行動から行こうか」
一般的な猫であれば、ヴァイスも多少は接した経験がある。
まずは、接する猫は倉庫にいる猫の中でも人懐っこく、躾の行き届いた猫を2,3匹選び、エンリコと触れ合わせていく。
「む、むう……」
オーナー、エンリコは戸惑いながらも、猫と接する。
普段、行商を行うこともあって、エンリコは力仕事も多く、それなりの力がある。それだけに、下手に触ると痛くないだろうかと、彼は妙な具合に猫を気にしている。
何だかんだで、エンリコも猫が気になってはいるようだ。ただ、商売はそれなりの腕を持つも、猫相手ではその腕はまるで役に立たないと彼は自覚していたようだ。
ヴァイスは自身の経験を元にして、エンリコに猫の行動、危険信号など、基礎的な事を一つずつ教えつつ、彼に実践させる。
「ここにいる猫達だけでも、随分と性格が違うのが分かるだろ。ヒトと同じで猫も十人十色、それだけは忘れないでくれ」
言葉では実にカッコいいことを言っているヴァイスだが、その手に抱いた別の猫を盛大にもふっていたりする。
そんな指導員の姿を、苦笑いするエンリコ。彼がゆっくりとした気持ちで猫に接することができるよう、ヴァイスは一度に詰め込んで教えないよう配慮する。エンリコがこれで猫を嫌いになってしまっては、元も子もないのだ。
そして、ミオレスカはこの場に訪れる猫好きの住人達と1人ずつ顔を合わせていた。
近所の主婦や、気のいいおじいさん。心から猫好きな10代後半の少女に、厳つい見た目の男性。
様々な見た目の彼らはミルクを持参し、世話を行う。その様子をミオレスカは確認しながら、こう語る。
「ここで、猫カフェをオープンさせようと考えています」
飲食しながら、猫とくつろぐ事のできる空間が提供できる素敵な店。それを聞いた猫好き達は、顔を見合わせる。
「そりゃ、猫の為だ、仕方ないねぇ」
「おう、こいつらの為に人肌脱ぐしかないだろう」
だが、果たして、そんな店が営業してやっていけるのか。
猫好き達は皆、それぞれが自分の生活、仕事を持っている。現状は精々、やれたとしても片手間でなんとかといったところだろうか。
「はい、私達で一緒に勉強しながら、頑張りましょう」
続けられるなら、是非、猫カフェの正規従業員に。そういった方向で上手く猫カフェを営業できるようになれば……。
ミオレスカも猫好き達も夢を膨らませ、その夢を形とするよう意気込むのだった。
●
買出しから帰ってきた、エルバッハにファリーナ。
資材と共に餌を購入してきたことで、早速、魚や肉といった餌を皆が猫達へと与えていく。
それらをミオレスカもまた手にしつつ、猫好き達へ語る。
「稼ぎは少ないかもしれませんが、入店料などは控えめで、がんばりましょう」
入店した人にも、猫へと餌やりと体験してもらうように。ミオレスカはそんな構想を口にした。
「あと、他の場所では、あまり餌をやらないようにしたほうがいいですね」
未だにこの場所へと慣れぬ猫や、マイペースにぶらりとどこかへ行く猫がこの倉庫をおうちだと思ってもらえるように。
「そうか、猫さんにあげるおやつとかも買えるようにして、猫さんにおやつをあげて触れ合えるようにしたいな」
あと、猫さんがじゃれてくれるような玩具があれば、来てくれた猫好き達は満足するだろうか。まよいはさらに、サービス案を出して見せた。
「それで定着してくれれば、ゆくゆくは……」
上手くいけば、安定経営になるのではと、ミオレスカは笑みを零す。
ミオレスカは最初から訪れる客に少量の入店料をと考えているが……、果たしてそれで人は訪れるのかどうか。
「さすがに、猫さんの世話だけで入店料をお願いするのは、難しいかな」
「うむ、嬢ちゃんの言うとおりじゃ」
まよいは小さく首を振ると、猫好き達な爺さんがまよいに同意した。
この場に来ている猫好きだって、手間を割いてやってきてくれている。いくら猫の世話にお金がかかるからとはいえ、わざわざ足を運んでくれた人が快くお金を払ってくれるかというと……。
「多くの種類の猫がいるのは魅力ですが、やはりそれだけでは……」
猫好きの少女の懸念に、まよいが胸を張る。
「そこは猫カフェらしく。飲み物や料理も提供しなきゃ。……そうだ。ドリンクや料理を入れる器とか、猫モチーフのものを揃えたいよね」
流れで、まよいは更なるアイディアを出す。
猫さんがあちらこちらへと移動する店内で使う食器なら、落としても割れにくい素材で。割れるともったいないし、新しく買うお金も必要となると彼女は考えたのだ。
「あと、コップを置くコースターなんかも、猫さんのお顔だとか、肉球だとかのイラストのやつがあるとカワイイかな~」
「ふむ……」
まよいの提案を、今度はエンリコがメモを取っていく。
とはいえ、そういった食器が売っているかと言われれば、難しいと言わざるを得ない。ほとんどがオーダーメイドとなるだろう。
そのエンリコはエルバッハが買って来た木材を使い、猫好き達と共に倉庫の補修を行う。その間、ヴァイスが気性の荒い猫達へと辛抱強く、粘り強く躾をしつつ交流していたようだ。
エルバッハはというと、小型の檻を作成していた。
猫にとってすらもかなり手狭な大きさのその檻は躾の際、態度の悪い猫を入れる為のもの。勝手に出歩いたり、反抗的な態度をとったりした猫に、躾の一環として檻に一日入れようというのだ。
「そうですね……」
ミオレスカもそれに同意する。多くの猫達を纏める為には、仕方のないことかもしれない。
「あとは……」
さらに、エルバッハはかなりの数の首輪を用意していた。
それぞれの首輪には猫の管理の為に、連番で番号を刻んでいる。定期的に猫が揃っているかチェックする為の物だ。いなくなった猫がいれば、自分やスタッフらで捜索を行う。
また、エルバッハは記録簿をつけることで、個々の猫の躾の進行状況、勝手に出歩いた日時をチェックする。
「少し可愛そうですが、この子達の為ですから」
これは、猫カフェが上手く軌道に乗った際、因縁をつけられた場合に備えたもの。きちんと外目から見ても猫達を管理していることを示し、抗弁できるようにとエルバッハは先を見通していたのだ。
こうして、エルバッハはがっちりと猫達に堅苦しい環境を強いるようにも見えるが、鞭だけではなく、従順な猫には食事の際に一品おまけするなど、飴となる行為も忘れない。
「ふふ、おりこうさんですね」
行儀よい猫へ、ファリーナも優しく頭を撫でてから餌を与える。ただ、猫の数は多い。とりわけ、人になつかぬ猫が問題だ。
「ちゃんと猫さん達全員に行き渡るよう、注意しないといけませんね」
餌やりが終われば、ミオレスカはスタッフと一緒にお掃除を始める。
トイレの躾もあり、その場所以外は普通に清掃することで、猫達にトイレの場所を覚えさせようとする。
「普段と違う異常な行動があれば、病気かもしれませんので、注意してみてあげましょう」
「なるほど」
ミオレスカの言葉に、ファリーナも猫好きも頷く。ちゃんと見てやれば、皆、元気でいられるはずだ。
環境作りや猫の躾は大変だが、これも猫カフェのオープンの為。この場のハンターもスタッフもオーナーも、皆一丸となってやれることから進める。
「夢が広がるね」
そんな状況に、まよいはさらなる案を出しつつ笑みをこぼすのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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MVP一覧
- ルル大学魔術師学部教授
エルバッハ・リオン(ka2434)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/06/28 18:52:52 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/29 11:37:06 |