ゲスト
(ka0000)
【魔装】果たすべき『約束』の刻
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~6人
- サポート
- 0~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/07 19:00
- 完成日
- 2017/07/18 01:35
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●レタニケの街――惨事発生前の事
オキナからの緊急の連絡が希の所に届いた。
それは、あるハンターオフィスに密告された内容であり、オキナ独自の情報網を経由して希へと渡ってきたのだ。
(……フレッサ領主が傲慢の歪虚ネル・ベルと取引する場を突き止めた……)
場所はレタニケ領からさほど遠くない、今は使われていない廃館。
そこに希は見覚えがある。ネル・ベルと行動を共にしていた時の拠点の一つだったからだ。途中、深い森や霧の岩場などを抜けるので、道を知らない人は簡単には辿り着けない。それゆえ、一般人は近寄らないはずであり、拠点の一つをして使っていた。
(密告? でも、誰が……)
考えられるのはフレッサ領の誰か……だろうか。
あるいは、対立している王家派のスパイか何かが見つけ出したのだろうか。
(でも、罠の可能性もあるし……)
誘き出しておいて、時間を稼ぐつもりなのかもしれないし、別の罠に嵌めようとしているのかもしれない。
希は暫く立ち止まって考えた後、装備品を身に付ける。
「……私が直接、確かめた方がいいかも」
エクラの聖印が刻まれたタリスマンを首に下げる。彼女自身はエクラ教の敬虔な信者ではない。
このお守りには災いを退けるという力が宿っているというのだ。
もし、ネル・ベルが居たら……間違いなく、自分には【強制】を使ってくるだろうと予測しての事だ。
(…………)
手には、まだタリスマンがある。
効果を発揮する装飾品の数は限られているからだ。無制限に持ち込んで意味があるものではない。
希は折り鶴を模した緑色の耳飾りを机の上に大事そうに置くと、もう一つ、タリスマンを首に掛ける。
「これで大丈夫……後は、牡丹様の方」
大事な事を思い出し、希はハンターオフィスへの依頼書を書き始める。
自分が居ない間に万が一があっても、牡丹が自由に行動できるように、護衛のハンターを雇っておくのだ。
「……行って来ます。私達の『約束』を果たす為に」
机の上に置いた耳飾りに向かってそう言うと、希は部屋の戸を開けた。
●『約束』の刻
廃館までの道のりを把握している希は、ハンターオフィスからの依頼を受けたハンター達よりも一足早く廃館へと到着した。
立ち去った時から変わりのない屋敷。歪虚であるネル・ベルから発せられる負のマテリアルは人だけではなく、構造物にも影響を及ぼすので、長期間滞在できない。
用が済めば、ここからも立ち去るだろう。
「人の気配……」
豪華な鐙が付けられたゴースロン種が1頭、繋がれていた。
フレッサ領主のものかもしれない。とすると、密告は正しいという事か。
「一体、何を為されているのです、ネル・ベル様」
立ち去るべきかどうか悩む。ハンターオフィスからの依頼を受けたハンター達の到着を待つか、それとも、立ち去るか、あるいは……。
息を静かに吐き出すと、希は屋敷の中へと踏み入った。
確かめるように一歩一歩、慎重に進むと、話し声が聞こえてくる一室に向かう。
「……分かったか」
「は、はい。仰せの通りに」
僅かな隙間から見えたのは、歪虚ネル・ベルと小太りなフレッサ領主だった。
何かの作戦の話をしていたのだろうか。
なんにせよ、密告通り、会談が行われているのであれば、フレッサ領主を失脚させるには十分な証拠だ。
あとはパルムに観察させれば……意識がその事に集中していた希は、背後に迫っている存在に気がつかなかった。
「曲者」
「堕落者!?」
振り下ろされる一撃を辛うじて避ける。
だが、その為には会談している部屋に入らなければならなかった。
「ひぃ! も、もうダメだ~」
他者に姿を見られた事の意味を理解したのだろう。
フレッサ領主は別の扉から外へと出て行ってしまう。
一方、ネル・ベルは若干、驚いた様相で希に視線を向けていた。
「久しぶりだな、私の従者よ」
追撃を掛けようとした堕落者の動きを手で制すると、希に声を掛ける。
希はスカートの埃を払いながら油断なく立ち上がった。
「ネル・ベル様……」
「まだ、その顔は絶望には至っていないようだな」
「私は……もう、二度と絶望しません」
力強い希の台詞にネル・ベルはフッと笑った。
「人は何度でも希望を持つ。しかし、何度でも絶望するものだ」
「そんな事はありません。人は、“想い”を繋いでいけるのです」
多くの人と巡り会えた。
大切な人との別れもあった。
それでも、“想い”は、今、確かに繋がっている。
「果たして、そうかな。例えば、オキナ……のように、な」
「オキナは私達の先導者です。あの人もまた、絶望していません」
「人間は歳を重ねる程、“想い”というもので背負うものが多くなる。オキナが試練と言っているのは、潰されないように藻掻いているだけだ。爺になっても引退する事が出来ないというのは、そういう事だ」
引退していてもおかしくは無い年齢であるのは確かだ。
それでも、オキナを駆り立てる“想い”があるのだろう。
「……私は絶望しません。命ある限り、絶対にです」
「この世に絶対というものは存在しない。ノゾミが天寿を全うするその瞬間まで、分からんというものだ。その証拠にオキナはノゾミの呼び掛けに応じたのだろう」
希は背に担いでいた魔導剣弓を身体を捻りながら抜刀すると両手で構える。
ある騎士の手に渡るはずだったこの武器は、“あの戦い”の時に預かった剣と引き換えに、遺族から貰った、いわば、遺品でもある。
戦いが避けられないのであれば、この歪虚を倒す事であれば、これ以上、相応しい武器は無いだろう。
「ネル・ベル様、貴方を倒します。この剣にかけて」
「負のマテリアルが続く限り、歪虚は存在し続ける。ノゾミの人生全てを見届けてもな。それをせずに私を倒すなど、私の言葉を肯定するようなものだ」
不敵な笑みを浮かべ、ネル・ベルは左右の手に剣を出現させた。
直後、彼の足元に六芒星の魔法陣が浮かび上がると、輝きを発せながら歪虚の体を包み込む。
光が晴れた時、ネル・ベルの背には白い翼が生え、白銀鱗が両腕を覆っていた。
「人が、何度でも絶望するという事を、私が証明させよう」
『約束』の時が刻み始めた――。
―――――解説―――――
●目的
希の生存+α
●内容
歪虚と希が居る廃館までたどり着き、希に加勢し、目的を達成する
●状況
PC達はハンターオフィスからの依頼を請け、最寄りのハンターオフィスから廃館へと向かう所
難所(深い森、霧の岩場、流れのある湿地)を突破しなければ廃館へとたどり着けない
廃館では歪虚と希が戦闘中。難所突破の判定結果により、到着ラウンドが決定する
(二人以上で足並みを揃える場合、遅い判定が出たPCに合わせる事になる)
●サポート枠
探索に協力しているという事でサポート枠を設けてあります(サポート対象の人へ加算修正されます)
戦闘には参加しませんが、事後で描写される可能性があります(描写保証はされません)
オキナからの緊急の連絡が希の所に届いた。
それは、あるハンターオフィスに密告された内容であり、オキナ独自の情報網を経由して希へと渡ってきたのだ。
(……フレッサ領主が傲慢の歪虚ネル・ベルと取引する場を突き止めた……)
場所はレタニケ領からさほど遠くない、今は使われていない廃館。
そこに希は見覚えがある。ネル・ベルと行動を共にしていた時の拠点の一つだったからだ。途中、深い森や霧の岩場などを抜けるので、道を知らない人は簡単には辿り着けない。それゆえ、一般人は近寄らないはずであり、拠点の一つをして使っていた。
(密告? でも、誰が……)
考えられるのはフレッサ領の誰か……だろうか。
あるいは、対立している王家派のスパイか何かが見つけ出したのだろうか。
(でも、罠の可能性もあるし……)
誘き出しておいて、時間を稼ぐつもりなのかもしれないし、別の罠に嵌めようとしているのかもしれない。
希は暫く立ち止まって考えた後、装備品を身に付ける。
「……私が直接、確かめた方がいいかも」
エクラの聖印が刻まれたタリスマンを首に下げる。彼女自身はエクラ教の敬虔な信者ではない。
このお守りには災いを退けるという力が宿っているというのだ。
もし、ネル・ベルが居たら……間違いなく、自分には【強制】を使ってくるだろうと予測しての事だ。
(…………)
手には、まだタリスマンがある。
効果を発揮する装飾品の数は限られているからだ。無制限に持ち込んで意味があるものではない。
希は折り鶴を模した緑色の耳飾りを机の上に大事そうに置くと、もう一つ、タリスマンを首に掛ける。
「これで大丈夫……後は、牡丹様の方」
大事な事を思い出し、希はハンターオフィスへの依頼書を書き始める。
自分が居ない間に万が一があっても、牡丹が自由に行動できるように、護衛のハンターを雇っておくのだ。
「……行って来ます。私達の『約束』を果たす為に」
机の上に置いた耳飾りに向かってそう言うと、希は部屋の戸を開けた。
●『約束』の刻
廃館までの道のりを把握している希は、ハンターオフィスからの依頼を受けたハンター達よりも一足早く廃館へと到着した。
立ち去った時から変わりのない屋敷。歪虚であるネル・ベルから発せられる負のマテリアルは人だけではなく、構造物にも影響を及ぼすので、長期間滞在できない。
用が済めば、ここからも立ち去るだろう。
「人の気配……」
豪華な鐙が付けられたゴースロン種が1頭、繋がれていた。
フレッサ領主のものかもしれない。とすると、密告は正しいという事か。
「一体、何を為されているのです、ネル・ベル様」
立ち去るべきかどうか悩む。ハンターオフィスからの依頼を受けたハンター達の到着を待つか、それとも、立ち去るか、あるいは……。
息を静かに吐き出すと、希は屋敷の中へと踏み入った。
確かめるように一歩一歩、慎重に進むと、話し声が聞こえてくる一室に向かう。
「……分かったか」
「は、はい。仰せの通りに」
僅かな隙間から見えたのは、歪虚ネル・ベルと小太りなフレッサ領主だった。
何かの作戦の話をしていたのだろうか。
なんにせよ、密告通り、会談が行われているのであれば、フレッサ領主を失脚させるには十分な証拠だ。
あとはパルムに観察させれば……意識がその事に集中していた希は、背後に迫っている存在に気がつかなかった。
「曲者」
「堕落者!?」
振り下ろされる一撃を辛うじて避ける。
だが、その為には会談している部屋に入らなければならなかった。
「ひぃ! も、もうダメだ~」
他者に姿を見られた事の意味を理解したのだろう。
フレッサ領主は別の扉から外へと出て行ってしまう。
一方、ネル・ベルは若干、驚いた様相で希に視線を向けていた。
「久しぶりだな、私の従者よ」
追撃を掛けようとした堕落者の動きを手で制すると、希に声を掛ける。
希はスカートの埃を払いながら油断なく立ち上がった。
「ネル・ベル様……」
「まだ、その顔は絶望には至っていないようだな」
「私は……もう、二度と絶望しません」
力強い希の台詞にネル・ベルはフッと笑った。
「人は何度でも希望を持つ。しかし、何度でも絶望するものだ」
「そんな事はありません。人は、“想い”を繋いでいけるのです」
多くの人と巡り会えた。
大切な人との別れもあった。
それでも、“想い”は、今、確かに繋がっている。
「果たして、そうかな。例えば、オキナ……のように、な」
「オキナは私達の先導者です。あの人もまた、絶望していません」
「人間は歳を重ねる程、“想い”というもので背負うものが多くなる。オキナが試練と言っているのは、潰されないように藻掻いているだけだ。爺になっても引退する事が出来ないというのは、そういう事だ」
引退していてもおかしくは無い年齢であるのは確かだ。
それでも、オキナを駆り立てる“想い”があるのだろう。
「……私は絶望しません。命ある限り、絶対にです」
「この世に絶対というものは存在しない。ノゾミが天寿を全うするその瞬間まで、分からんというものだ。その証拠にオキナはノゾミの呼び掛けに応じたのだろう」
希は背に担いでいた魔導剣弓を身体を捻りながら抜刀すると両手で構える。
ある騎士の手に渡るはずだったこの武器は、“あの戦い”の時に預かった剣と引き換えに、遺族から貰った、いわば、遺品でもある。
戦いが避けられないのであれば、この歪虚を倒す事であれば、これ以上、相応しい武器は無いだろう。
「ネル・ベル様、貴方を倒します。この剣にかけて」
「負のマテリアルが続く限り、歪虚は存在し続ける。ノゾミの人生全てを見届けてもな。それをせずに私を倒すなど、私の言葉を肯定するようなものだ」
不敵な笑みを浮かべ、ネル・ベルは左右の手に剣を出現させた。
直後、彼の足元に六芒星の魔法陣が浮かび上がると、輝きを発せながら歪虚の体を包み込む。
光が晴れた時、ネル・ベルの背には白い翼が生え、白銀鱗が両腕を覆っていた。
「人が、何度でも絶望するという事を、私が証明させよう」
『約束』の時が刻み始めた――。
―――――解説―――――
●目的
希の生存+α
●内容
歪虚と希が居る廃館までたどり着き、希に加勢し、目的を達成する
●状況
PC達はハンターオフィスからの依頼を請け、最寄りのハンターオフィスから廃館へと向かう所
難所(深い森、霧の岩場、流れのある湿地)を突破しなければ廃館へとたどり着けない
廃館では歪虚と希が戦闘中。難所突破の判定結果により、到着ラウンドが決定する
(二人以上で足並みを揃える場合、遅い判定が出たPCに合わせる事になる)
●サポート枠
探索に協力しているという事でサポート枠を設けてあります(サポート対象の人へ加算修正されます)
戦闘には参加しませんが、事後で描写される可能性があります(描写保証はされません)
リプレイ本文
●難所突破
眩しい日差しがあるはずなのに、深い森は重苦しい雰囲気を放っている。
これが、手入れの行き届いた木々であれば雰囲気は違っただろう。優しい落ち葉に包まれた、ふんわりとした感触は、ここにはなく、溶岩で出来た大地がゴツゴツとしていた。
「性懲りもなく、あの野郎……」
ギリギリと歯軋りも同時に聞こえてきそうな呟き。
傲慢の歪虚ネル・ベル(kz0082)の事を思い出すだけで腹立たしい様相なのは、ソフィア =リリィホルム(ka2383)だった。
彼女は先に進んだハンターが残した目印や足元が安定している場所を見極めながら進んでいる。
その傍を行くリュー・グランフェスト(ka2419)も同様だった。
巨大な刀を背負い、高低差を乗り越えていく。
「これは、かなり骨が折れるようだな」
愛馬は森の中に入る前に置いてきている。とても馬が入れるような所ではなかったからだ。
それほどまでに溶岩の大地と森の組み合わせは酷い地形だった。立っている木々も決して幹が太い訳でもない。
大地を這っている根っこは、下草に紛れて見分けが付きにくい上に、溶岩が冷えて固まった地面は突如として穴や凹凸がある。
おまけに周囲は似たような風景が続くので、迷子にもなりやすい。
「これは、一般人が立ち入らないわよね」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)が鉄扇で邪魔な樹を薙ぎ払っていた。
この先、まだ難所は続く予定である。そして、難所を抜けた先に、歪虚が待っているのだ。
「ダイエット器具としては役に立つ、かもしれないけど、思い通りに動作しないポンコツ器具なら、もはや不要ね」
ネル・ベルは【変容】の能力で武器に姿を変えられる。アルスレーテはその力を借りた事があった。
あれは……良いダイエット器具。しかし、こんな問題を起こすなら、もはや、ポンコツでしかない。
そんな一行の中、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)も豊かすぎる胸を盛大に揺らしながら地形の凹凸を越えていた。
傍目から見ると大きすぎる胸が邪魔しているのではないかと思う位だ。
彼女は一息つくと、少し大きめの岩へと登って符を掲げると宣言した。
「ルンルン忍法とカードの力を駆使して、難所を超えて、ネル・ベル達をやっつけ、希さんと無事に生還しちゃいます!」
紡伎 希(kz0174)とは【西参】で東方から西方へ抜けた仲間だ。
それに、所属している冒険ギルドの面々の中には気にかけている者もいる。
「希さんを死なせないし、ましてや、お持ち帰りなんてさせないんだからっ!」
決意の言葉が深い森の中に響いていった。
先行していた二人のハンターが残した目印や痕跡を辿りながら、ハンター達は森を抜けた。
大小さまざまな岩が転がっているが、徐々に霧が出てきて、やがて、一寸先も見えない程の白い闇に包まれる。
「はぐれないようにね」
ソフィアがロープを掴みながら仲間へ呼び掛けてる。
「助かるぜ」
しっかりと縄を手繰りよせるリュー。
こうも霧が深いと、手掛かりが分からない。時折、大きな岩や溝もあるので、危険だ。
「全く、もう~」
鉄扇をもの凄い勢いでパタパタさせているのは、アルスレーテだった。
その足元を魔法が掛けられた水晶球が、ぐるぐると回っている……だけで、あまり、役に立っていない。
「こんなんで、視界が良くならないけど何もやらないよりかはマシよね」
どうしても慎重なってしまうのは致し方ない事なのだろうか。
先行している二人に置いていかれ過ぎるのも、どうかと思ったのか、アルスレーテが意を決して走り出した。
「もう面倒だわ。多少の怪我は覚悟で走るわよ」
武器を振り回しながら強引に駆け出すアルスレーテ。まさに力技。
いくつかの岩を文字通り粉砕しながら進んでいた時だった。背後からルンルンの声が響いた。
「今、ニンジャの神を呼びます!」
出現したのは、巨大な式神。何枚もの符を使って呼び出す式神の術だ。
これで、先行させれば岩や溝があっても、ハンター達が傷つく事はない。
おまけに溝に落ちても、足場にもなると優れものだし、効果時間が過ぎれば術は溶けるので、エコだ。
「これはいいね」
「よし、一気に距離を稼ぐか」
ソフィアとリューがそんな感想を口にする。
とにかく、先を急ぎたい。廃館ではネル・ベルと戦いになる可能性が高いが、ここはスキルを使っても急ぐ所なのだ。
霧が徐々に晴れてきたかと思ったら、今度は湿地帯となった。
探索に協力する仲間達からの援護受けて、ハンター達は休憩もそこそこに湿地帯へと踏み入った。
運が良い事に天候は晴れていたが、前日の雨で流れが出来ており、油断はできない。
「これなら、ジェットブーツで超えられる」
踵からマテリアルの光を発しながら、ソフィアが機導術で水面を飛び越えた。
湿地ではあるが、適度に足場はある。水の流れに影響されない方法は、やはり、飛ぶしかない。
少し頑丈そうな木の幹にロープを繋ぐと大きく手を振った。
「大丈夫だよ!」
「ありがとうございます!」
ルンルンが返事と共にロープを身体に巻く。水に濡れた服が、より一層、豊満な胸を強調させ、諸々際どいシュチュエーションだ。
水の流れに逆らって何とか、木の幹にしがみつく。季節が真冬で無かったのは幸いだ。
濡れた符を掲げて占いを始める。符術の力を使って、少しでも有利になるようなルートを選ぶ為だ。
「通り易いルートが見つかれば、儲けものです」
「さすがに湿地だと、痕跡という痕跡が残ってないからな」
リューが強引に水の中を突き進んで、ルンルンの言葉に応えた。
僅かな痕跡といえば、先行した仲間が残していったものという程度だ。
それも、疾影士としての能力を最大限に活かしたものなので、他職では真似が出来ない。
「すっかり水に濡れたわね……」
素肌で水浴びしていた時とは違う状況にアルスレーテはそんな言葉を呟く。
衣服や装備を脱ぎ捨てる訳にもいかない。水の流れに足を取られないように慎重に進む必要があった。
いざ、ネル・ベルとの決戦時に、全身びしょ濡れでは――さすがに、絵にはならないだろう。
「早くここを抜けたいわ」
ハンター達は湿地を抜ける為に引き続き、足を前へと運ぶのであった。
肩が休む間もなく、上下に揺れている。
心臓に送る空気を得る為に忙しないなとシェラリンデ(ka3332)は呼吸を続けた。
髪を伝って流れる汗が、湿地帯の先を見つめている目に入ってきて滲みる。
(ライルさんの様な事件を起こさない為にも、これ以上、好き勝手させる訳にはいかない)
廃館でネル・ベルが待っている。
これまで討伐の機会が無かった訳ではない。だが、これほどまでのチャンス。次があるかどうか分からない。
ここで討ち取らなければ、ライルのように利用される人が増える可能性もあるのだ。決意も硬くなるというものだ。
「それにしても、さすが……だね」
疾影士としての能力を活かしての行軍。
並みのハンターでは、ここまでの速さを出すのは困難だろうという程の速さでシェラリンデは難所を駆け抜けてきた。
「慌てないでいいよ。怪我しても意味ないしね」
湿地帯の先から声を掛けたのは、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)だった。
難所を突破する為、使用したワイヤーウィップの具合を確かめる。
(人が通れる道があると思ったけど……)
周囲を見渡してもそんな跡は残っていなかった。
ネル・ベルの配下には人間もいる。生きている人間がいるのであれば、最低限、必要な食料や消耗品が存在するはずだと踏んでいた。
だから、廃館に通じる何らかの跡があるのではないか探していたのだ。
「……抜け道があるんだ」
ハンターオフィスからは受付嬢の希も廃館に向かっていると伝えられている。
森林や岩場、湿地をハンター達は通ってきた。だが、希と合流しなかったという事は、先に到着している可能性が高い。
何らかの手段で希は“抜け道”を知っていたのだろう。
(無茶しちゃダメだよ)
遠くに見える館を見つめながら、アルトは心の中で呟いた。
●強者
マテリアルの鎧と障壁が強烈な一撃を防ぐ。
反撃とばかりに希はアルテミスソードを振り上げた。機導術の力を纏わせ、巨大化した刀身を歪虚に叩きつける。
「少しは強くなったようだな」
ネル・ベルは希の攻撃を剣で受け流した。
希からの追撃は無かった。位置取りを気をつけているのだ。
堕落者が放ったナイフの形をした負のマテリアルを避ける希。
「そう……簡単には、思い通りにはさせません」
「積極的に向かってこないという事は、増援が来るか」
「……ここで、決着をつけたいだけです」
冷静を装って返した希の言葉にネル・ベルは不敵な笑みを浮かべる。
幾度か剣を交えた時だった。
「希くん!」
「アルト様! シェラリンデ様!」
現れたハンターの姿を見て、希が声を挙げた。
タイミングとしては凄く良い所だった。希の守勢を支えていたスキルのマテリアルが尽きそうだったからだ。
「君は、ボクが相手をするよ」
「良い度胸だな」
シェラリンデが比較的近くにいた堕落者に狙いを定めると、愛刀を構えながら向かう。
ネル・ベルの存在は予想通りだったが、堕落者も居るとなれば、こちらの相手をする必要もあると思ったからだ。
「無理はしないで、希さん」
声も掛けて守勢を促す。
後続のハンターが集合すれば、反撃の手段が増える。まずは、安全の確保だ。
堕落者はシェラリンデの鋭い突きを払うと、目にも止まらない速さで剣を繰り出してきた。
「これは……フェイントアタック!?」
「この剣、避けられるのであれば、避けてみろ」
疾影士を思わすような力に押されるが、シェラリンデは辛うじて斬撃を避けた。
油断は出来ない。いや、能力的には堕落者に軍配が挙がるだろう。
(【懲罰】の可能性も考慮しないと)
傲慢歪虚特有の能力【懲罰】は強力なカウンタースキルだ。
特にそれはライル戦を経験していたシェラリンデはよく分かっている。
強力な一撃を畳み込めば、それが自分に跳ね返ってくるのだ。安易に大胆には戦えない。
「少し考察させてもらうよ」
「その余裕、いつまで、保つかな」
刀と剣が激しくぶつかりあった。
一方、アルトは扉付近からネル・ベルまでの距離を一気に詰めていた。
「……ネオーラか、久しいな。ちょうど良い、約束を果たそう」
鋭い踏み込みからの連撃を歪虚は左右の手に持った剣で受け流して応える。
「アルトか。貴様は最も油断ならぬハンターの一人だと、この私は認識しているからな。手加減はしない」
「それは、光栄、だね!」
まるで竜巻のように斬撃を繰り出すアルト。
雑魔あたりでは瞬殺も有り得そうな強力な攻撃を、ネル・ベルは避けたり、あるいは受けで捌く。
実力は拮抗している、いや……攻撃力という一面だけを見れば、アルトが大いに優っているだろう。
「さすがは、私が見込んだ強者なだけはあるな」
アルトの刀を押し返すと、間合いを取るネル・ベル。
そこで剣先をダラリと下ろした。
「もう一度言おう。私と共に来い。貴様なら、歪虚軍将……いや、それ以上にもなれるかもしれん」
「残念だけど、歪虚になるつもりもないし、ボクより弱い人の所に“嫁ぐ”つもりもないからね」
アッサリと断ったアルトが再び切り掛ろうとした時だった。
ネル・ベルが両角の先端それぞれに炎渦を作り出すと、それをアルトと希に向かって薙ぎ払った。
「愚かな事だ。ならば、ここで死ね!」
「希くん!」
咄嗟にアルトは愛刀を構えて希を庇う。
その希もマテリアルの障壁を作り出すが、いとも簡単に割れて、二本の炎渦が、アルトと希を包み抜けた。
「アルト様!?」
「大丈夫だよ」
爽やかに返事をしながら、アルトは愛刀を構え直す。
ネル・ベルの攻撃はアルトに届きそうにない。だからこそのネル・ベルの戦術なのだろう。
「ボクはこんな程度では倒せないよ。舐めているのか?」
「それはこちらの台詞だ。偉大なる傲慢が命ずる。ただ、立ち止まれ」
アルトの挑発にしれっと応えながら、ネル・ベルは【強制】を行使した。
負のマテリアルが一帯を包み込むが――【強制】を受ける者は居なかった。
「ふむ……やはり、効かんか」
その隙にアルトが一瞬で間合いを詰めると、刀を振るった。
当たれば強力ではあるが、なかなか届かない。だが、適切な援護があれば、十二分に達することができるはずだとアルトは感じた。
つまり、難所を突破する仲間達が居れば、勝機はある――と。
●廃館での戦い
ネル・ベルとの戦いが優勢なアルトとは反対に、シェラリンデは劣勢だった。
基礎能力の違いを埋めるべく、戦闘特化のスキル構成なら互角だったかもしれない。
しかし、シェラリンデは慌てていなかった。例え、劣勢でも後続のハンター達の到着を待てばいいからだ。
「簡単には倒れないよ」
これまで幾度か切りつけたが、堕落者は【懲罰】を使う素振りを見せていない。
使えないのか、あるいは、使わないだけなのか……。
「さぁ、待たせたわね」
そこへ、アルスレーテが飛び込んできた。
後続組の到着だ。早速、虚纏拳甲「ネオール」を取り出して、ネル・ベルに投げつけようとしたが、堕落者が居る事や希の状態を見て冷静に仕舞い直すと、真っ先に希の元へと走る。
それなりの傷を受けている希を回復させる為だ。虚纏拳甲を投げつけるのは後回しだ。それどころではない。
「騎士シャル。あんたの無念は、ここで……ここで、全てを晴らす!」
次に現れたのはリューだった。全身のマテリアルを炎のように吹き出しながら、剛刀を構えると、ネル・ベルへと向かう。
彼にも果たさなければならない使命があるのだ。
後続が到着した様子に堕落者の動きに戸惑いが生じた。
そこを見逃すシェラリンデではない。隙を見て一撃を入れる。
「ぐっ……」
「形勢逆転だね」
ねじ込むように刀を突き刺すシェラリンデの脇を抜けて、ルンルンが豪快にホールへと飛び込むと、胸を激しく揺らしながら符を掲げた。
符を中心に輝くような結界が出現する。
「ルンルン忍法ニンジャ結界陣……強い意思も、ニンジャにお任せ☆」
【強制】対策なのは言う間でもないだろう。
単体に対して強力な【強制】があるので、これで対抗できる……かもしれない。
「一気に片をつけるわ」
ホールの中の戦闘光景を見ながら、ソフィアがマテリアルを練る。
敵は二体だが、ネル・ベルとの戦いは優勢そうに見える以上、まずは堕落者を倒すべきと彼女は思った。
囮のように隙を作りながら光の三角形を作り出す。
(シェラリンデさんが攻撃して【懲罰】が来なかった。なら……)
機導術が完成し、光の筋が現れた。
うちの一本がホールに飾られている武器を直撃すると粉々に砕く。ネル・ベルの【変容】を警戒しての事だ。
そのネル・ベルも直撃するが、避けようともしてなかった。
多少のダメージはあるかもしれないが、それはネル・ベルの中では些細な程度――という認識だったのだろう。ネル・ベルは光属性を持つからだ。
そして、最後の一本は堕落者へと向かった。
打ち払う事も避ける事も出来たであろう、その機導術を堕落者は避けようともしなかった。
「警戒していたようだが、詰めが甘いな」
デルタレイの衝撃に苦痛の表情を浮かべつつ、堕落者はそう言った。
直後、彼の全身から放たれる負のマテリアル。それらがソフィアを包み込むように襲いかかる。
「【懲罰】!?」
咄嗟に避けようとも受けようともしたが、間に合わなかった。
全身を負のマテリアルが突き抜ける。
「な、なんで……」
途切れそうな意識を辛うじて繋ぎながらソフィアは呟く。
【懲罰】はハンター達で言う所のリアクションスキルと似たようなカウンタースキルだ。
攻撃に対して自動的に発動する訳ではないのだ。どの攻撃に対して使うか選択する事が出来る……という事だ。もちろん、個人差はあるだろうが。
「くそったれ……」
ガクリと崩れ落ちるソフィア。
彼女が一撃で沈んでしまう程の威力があったという事でもあるのだが。
ハンター達にとって不幸だったのは、ネル・ベルの行動が直後の事だったのがあるかもしれない。
先にネル・ベルが行動していれば、少なくとも【懲罰】でソフィアが倒れる事は無かったかもしれないからだ。
「増援が来たか」
「覚悟するんだね」
刀先を揺らすアルト。
ネル・ベルはこれまで本気では無かったかもしれない。いや、能力的には本気で戦っていただろう。この歪虚の強みは、ここからだ。
「主が命じる。我が目的の為、己の全て出し切り戦え」
【強制】が行使された。
希もハンター達も誰もが抵抗する為に意識を強める。しかし、ハンターの誰にも【強制】は振り掛からなかった。
「仰せのままにぃぃ!」
【強制】が掛けられたのは、堕落者だった。
傲慢に属する歪虚は、通常、本気で戦ったりしない。人間相手に本気を出す事は恥とされているからだ。幾度もハンターと戦ってきたネル・ベルは『目的を達成する為には全力で掛かる』と意識の改革があった。
だが、この堕落者はそうではなかったようだ。その為、ネル・ベルが本気を出させたのであろう。
主からの【強制】による超越能力――限界突破――。最近では黒大公べリアルがそのような状態にあったのではないかと噂されている。圧倒的なまでの破壊力は記憶に新しい。
「ちょっと、何盛ってるのって!」
希に回復を施していた アルスレーテがそんな言葉を口にした。
鉄扇を構えて堕落者へと向かった。シェラリンデは倒れたソフィアがトドメを刺されないように牽制するのが精一杯だ。
「さっきよりも、動きが速い!」
先程のようなフェイントは使ってこない。強化された身体能力でただ剣を振るっている。
シェラリンデとアルスレーテの二人でどこまで耐えられるのか。ルンルンが支援すべく、新たな符を手にした。
「ルンルン忍法土蜘蛛の術! ……トラップカード発動、皆さん、今です!」
暴れる堕落者の足下が泥状となり、移動力を奪おうとした。
その試みは上手くいった。ソフィアは僅かに堕落者の攻撃範囲外だ。
●絶望へと至る記憶
堕落者との戦いは予断を許さない。
だとすれば、ネル・ベルを一刻も早く打ち倒すかだろう。幸い、アルトの優勢は変わらないのだから。
「動きを封じ込める!」
リューが構えた剛刀からマテリアルが噴出した。
それは、不可視の刃となり、ネル・ベルの動きを阻害させる。そのチャンスを見逃すはずはない。突き出すような刀先にマテリアルが集い、紋様を形創った。
「紋章剣『天槍』!」
轟音と共にマテリアルの光輝く槍がネル・ベルを貫く。
騎士シャルの無念を晴らす為に力の限り打ち出した、今出せる最大の一撃。あの騎士がここまでリューを導いたものであれば、この攻撃にはシャルの一撃とも言えるだろう。
「人を守る騎士として、人の弱さに付け込む奴は、まごう事なく敵だ!」
「ちぃっ! だが、まだだ」
よろめきながらなんとか耐えたネル・ベル。
リューの宣言通り、隙だらけになった所を、アルトが必殺の刀を振るわない訳がない。
「誇れ。お前達が鍛え上げた。私という刃は、ここまでになった事を」
確かな手応え。
負のマテリアルを切り裂いたイメージそのままに、アルトはすぐさま愛刀を構え直す。
行ける。これなら、この歪虚を倒す事が出来る。そう、確信にも似た直感。
「……見事だ。その強さ……」
身体を傾けながら、傷口を抑えるネル・ベル。
そして、真っ直ぐと強い視線をアルトへと向けた。
「改めて認めようではないか。貴様らの強さを」
「傲慢の歪虚とは思えない謙虚さだな」
油断なく構えたままアルトが応えた。
「確かに、貴様らは強い。このまま戦えば、この私を……倒せるだろう。だが、戦いとは強者が常に勝つとは限らないものだ」
「どういう意味だ」
リューが用心深く警戒しながら問うた。
その言葉にネル・ベルは不敵な笑みを浮かべる。
「それは、貴様らが示したではないか。ハンター達は歪虚の王すらも打ち倒す。見事な“絆”の力だ」
歪虚王は絶大なる力を持っている。
とても太刀打ちできるものでもない。それでも、ハンター達は戦いに勝ってきた。
ネル・ベルはそれを“絆”が成せる力だと分析している。それこそが、ハンターの持つ恐るべき力だと知ったから。
「だが、その力は危うく、時として、絶望へ至るものだとも……私は知っている」
希に一瞬、視線を向けた直後の事だった。
アルトとリューの二人の間合いから、ネル・ベルが突如として姿を消した。
「瞬間移動!」
反応できたのはアルトだけだった。
ルンルンの背後に移動したネル・ベルは容赦なく、剣を突き出した。
「ふえぇ!?」
驚き振り返った瞬間、その豊かな胸に突き立てられる剣。
「まずは、一人目だ」
「ネオーラ!」
ヒュン! っと音を立てて飛んだ手裏剣と共に、アルトがマテリアルの流れに乗り、ネル・ベルへと接近した。
同時に刀を振るうが、援護がなければ直撃を入れる事は難しい。案の定、剣で受け流されてしまった。
そして、アルトに対し、ネル・ベルはニヤリと笑った。
直後、再び瞬間移動する歪虚。
次に現れたのは、シェラリンデとアルスレーテの後方だった。
「後ろに?」
「ちょっと、挟み撃ちとかどういう事よ」
突如として二人を襲う炎渦。
意識が後ろに向いた瞬間を堕落者が見逃すはずがない。全てを薙ぎ払うような一撃をシェラリンデは避けきれなかった。
横一文字に切られ、シェラリンデは膝を床につけた。腹から溢れ出る血が止まらない。
「まだ……倒れる訳には……」
ドサリと崩れたシェラリンデを庇うように、アルスレーテが立っていた。
背後から炎渦で焼かれ、前からは剣で薙ぎ払われ、彼女も大きなダメージを負っている。それにも関わらず、だ。
「意地があるのよぉ!」
ドンと床を踏みつけて立ち続けるアルスレーテ。
ポンコツダイエット器具の前で床に伏せるなど、そんな事は絶対に許されない。私のダイエットはまだ、終わらないのだから。
堕落者の猛攻は続くが、なおも、彼女は不死身を体現しているかのように耐えた。
格闘士としての能力のおかげだ。もし、アルスレーテが居なければ、あるいは、金剛不壊のスキルがセットされていなければ、誰かは堕落者によってトドメを刺されていただろう。
「加勢する」
絶体絶命の所をリューがフォローに入った所で、ネル・ベルは一方的に剣先を下げた。
今にも切りかかろうとしたアルトの動きも止まる。
「何のつもりだ。戦いは終わっていない」
「貴様なら、幾ら犠牲を出そうとも、終わらない……だろうな。そういう戦士の目をしている。だが、希はどうかな」
その言葉に全員の視線は希へと向けられた。
「……ダメです。死んだら、ダメ……なん……です……」
少女は小さく震えていた。
血を流して床に倒れている仲間が、希の記憶を蘇らせる。ある戦いを思い出させ、それは、失う事への恐怖を呼んだ。
「…………ソルラ様……ヘ……ル様……れ……さ……ん」
アルテミスソードが音を立てて床に落ちた。
「懸命な判断だな、ノゾミ。このまま、次、私が動けば、ここで倒れている誰かは確実に死ねるからな」
一人ずつ、トドメを刺していかなかったのは、この為だったのだろう。戦闘不能者をバラけて出せば、その全員を守るのは難しい。
「人質を取るつもりか!」
リューの叫びにネル・ベルは涼しい顔をして応える。
「卑怯とでも言いたいのか? 生憎、私は騎士ではない。目的を達成する為に、いかに使える物を使うか。それだけだ」
「このっ!」
思い通りにはさせないと動こうとしたアルトの動きよりも早くネル・ベルが言う。
「下手に動かない方が良い。仲間が死ぬぞ……さぁ、ノゾミよ。私と来るのだ」
「……はい……」
「自分の絶望が何たるか、分かったようだな」
ゆっくりとした足取りでネル・ベルへと近づく希。
「ダメだ、希くん!」
アルトの叫びに希は首を僅かに横に振った。
希がネル・ベルへと手を伸ばし、繋いだ直後――唐突に二人の姿は消え去った。
「……私は、また……届かないと……いうのかっ!」
腹の底から絞り出すようなアルトの悲痛な言葉。
落ち込んでいる雰囲気に畳み掛けるようにアルスレーテの声が響く。
「ちょっと、こいつ、まだ動く!」
「倒すしかない」
堕落者は止まる事なく剣を振り落ろす。それを受け止めるリュー。
【強制】による限界突破の状態にあるのだ。【強制】が解除されるか、あるいは、消滅するまで止まらないのだろう。
「早く此奴を倒して、希くんを追う」
ハンター達の一斉攻撃が堕落者を切り裂く。
それでも、簡単に倒れない。一刻も早くと気持ちだけがハンター達の心に突き刺さった。
●別れ
廃館まで残り僅かな所で、探索のサポートについていたハンター達は、ネル・ベルと希に遭遇した。
一番最初に気がついたのは、Uisca Amhran(ka0754)だった。
「ノゾミちゃん!」
聞こえているはずなのに、希は俯いたままだった。
返事をしない希に代わりに勝ち誇った顔でネル・ベルが口を開く。
「貴様らも居たのか。だが、もう遅いぞ。ノゾミは私と共に行く」
「……わたし達も、持ち帰り対象じゃないの?」
時間を稼ぐ為に十色 エニア(ka0370)がそんな事を投げ掛けた。
Uiscaもエニアもお持ち帰り対象だったはずだからだ。
「ベリアル様亡き今、その必要もないからな。要らないという事だ」
「このままで、いいのか、希。せっかく拾った命。無駄にさせたくはないはずだ」
瀬崎・統夜(ka5046)の声にも希は反応は示さなかった。
もはや、その瞳には生気があるように見えない。
そう――あれは、絶望した人間がみせる目だ。希がこれまで、死へと誘ってきた人達がみせた目と同じだ。
「ノゾミちゃんに何をしたのです!」
怒るUiscaの台詞が矢のように飛んだ。もし、言葉にマテリアルの力が乗るのであれば、それだけで、ネル・ベルにダメージを与えただろうか。
だが、この歪虚は気にもしていない様子だった。大袈裟に両手を広げる。
「人が何度でも絶望するという事を私が教えたまでだ」
ネル・ベルの言った言葉に対して顔を見合わせるエニアと瀬崎
「……それじゃ、館に入ったハンター達は……」
「馬鹿な……」
フッと鼻で笑い、ネル・ベルは負のマテリアルを表出させる。
「さらばだ、ハンター共」
「ノゾミぃぃ!」
ヴァイス(ka0364)が大声で緑髪の少女の名を呼んだ。
魂の奥底から発しているのではないかと思う程の大声で叫ぶ。
「絶望は無くならない……だが、そこから這い上がり、立ち上がる“想い”を、ヒトは……ヒトは、示せるんだ!!」
その熱意が辺りを震わせると同時に、希の瞳に生気が戻った。鮮やかな青地のドレスの裾を揺らしながら、視線をハンター達へと向ける。
目に涙を浮かべていた少女は力強く返事を――。
刹那、瞬間移動でネル・ベルと希は姿を消した。
この日を境に、ハンターズソサエティの受付嬢兼ハンターの希は消息不明となる。
歪虚によって何処かに連れ去られたのだ。追跡調査は行われたものの、手掛かりは得られず、行方不明と登録簿に記されるのであった。
おしまい
●希望を抱いて
「ちくしょう……」
「忍法が……希さん……」
ソフィアとルンルンが床に転がりながら悔しそうに呟いた。
何とか、壁に寄りかかりながらシェラリンデが言う。
「帰るのも大変だけど、戻ろう」
その言葉に面々は重々しく頷いた。
ここから通ってきた難所を戻ると思うと、気が重くなるのも当たり前だ。
そこへ、一人の爺が姿をひょっこりと現した。キョロキョロと部屋の中を見渡し、小さくため息とつく。
「……オキナ?」
「なんじゃい。全員して死んだような顔をしてからに」
エニアの呼び掛けにオキナが苦笑を浮かべて、続ける。
「この状況を見れば大体、分かるわい。希が連れていかれたのだろう」
「あの娘、堕落者になっちゃったりするのかな?」
アルスレーテの言葉にハンター達はビクッと身体を震わせた。
そんな事はあってはならないはずだから。
オキナは考えるように口髭に手を伸ばした。
「まぁ、どうじゃろうな……騎士シャルを覚えておるか?」
「当たり前だ」
オキナの質問に憮然として答えるリュー。忘れる事なんてあるわけがない。
それにしても、なぜ、ここで、騎士シャルが出てくるのか……。
「全ての堕落者に該当しないと思うのじゃが、ネル・ベルは従者の契約にルールを定めておる」
「どういう事だ?」
「矛盾した想いを抱いたまま堕落者になると精神的に不安定になる場合があるからの。大事な所で、付け入る隙となってしまうのじゃ」
騎士シャルがその例だ。
堕落者になってしまったという意識が、騎士としての意識と相反して精神が保てなかったのだ。
「ノゾミちゃんが絶望して堕落者の契約をしない限り、無事」
「という可能性もあるという事か?」
Uiscaの言葉を続けて瀬崎が尋ねる。
「まぁ、あくまでも可能性の話じゃがな」
両肩を竦めるオキナにヴァイスが遠くを見つめながら力強く言った。
「希は……大丈夫だ。根拠は無いが、そんな気がする」
去り際に見せた、希の表情が脳裏に焼き付いていた。
自分の想いは、確実に届いた。そんな気がしてならないのだ。
「そうか……ヴァイスさんがそう言うのなら……ボクはその言葉を信じるよ」
アルトは顔を上げる。
ここで、落ち込んでいる場合ではない。自らのやるべき事を成すだけだ。
「機会は必ず来る。それまで待つのじゃな」
それが当然だと言わんばかりのオキナの台詞を、ハンター達は胸に留めるのであった。
眩しい日差しがあるはずなのに、深い森は重苦しい雰囲気を放っている。
これが、手入れの行き届いた木々であれば雰囲気は違っただろう。優しい落ち葉に包まれた、ふんわりとした感触は、ここにはなく、溶岩で出来た大地がゴツゴツとしていた。
「性懲りもなく、あの野郎……」
ギリギリと歯軋りも同時に聞こえてきそうな呟き。
傲慢の歪虚ネル・ベル(kz0082)の事を思い出すだけで腹立たしい様相なのは、ソフィア =リリィホルム(ka2383)だった。
彼女は先に進んだハンターが残した目印や足元が安定している場所を見極めながら進んでいる。
その傍を行くリュー・グランフェスト(ka2419)も同様だった。
巨大な刀を背負い、高低差を乗り越えていく。
「これは、かなり骨が折れるようだな」
愛馬は森の中に入る前に置いてきている。とても馬が入れるような所ではなかったからだ。
それほどまでに溶岩の大地と森の組み合わせは酷い地形だった。立っている木々も決して幹が太い訳でもない。
大地を這っている根っこは、下草に紛れて見分けが付きにくい上に、溶岩が冷えて固まった地面は突如として穴や凹凸がある。
おまけに周囲は似たような風景が続くので、迷子にもなりやすい。
「これは、一般人が立ち入らないわよね」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)が鉄扇で邪魔な樹を薙ぎ払っていた。
この先、まだ難所は続く予定である。そして、難所を抜けた先に、歪虚が待っているのだ。
「ダイエット器具としては役に立つ、かもしれないけど、思い通りに動作しないポンコツ器具なら、もはや不要ね」
ネル・ベルは【変容】の能力で武器に姿を変えられる。アルスレーテはその力を借りた事があった。
あれは……良いダイエット器具。しかし、こんな問題を起こすなら、もはや、ポンコツでしかない。
そんな一行の中、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)も豊かすぎる胸を盛大に揺らしながら地形の凹凸を越えていた。
傍目から見ると大きすぎる胸が邪魔しているのではないかと思う位だ。
彼女は一息つくと、少し大きめの岩へと登って符を掲げると宣言した。
「ルンルン忍法とカードの力を駆使して、難所を超えて、ネル・ベル達をやっつけ、希さんと無事に生還しちゃいます!」
紡伎 希(kz0174)とは【西参】で東方から西方へ抜けた仲間だ。
それに、所属している冒険ギルドの面々の中には気にかけている者もいる。
「希さんを死なせないし、ましてや、お持ち帰りなんてさせないんだからっ!」
決意の言葉が深い森の中に響いていった。
先行していた二人のハンターが残した目印や痕跡を辿りながら、ハンター達は森を抜けた。
大小さまざまな岩が転がっているが、徐々に霧が出てきて、やがて、一寸先も見えない程の白い闇に包まれる。
「はぐれないようにね」
ソフィアがロープを掴みながら仲間へ呼び掛けてる。
「助かるぜ」
しっかりと縄を手繰りよせるリュー。
こうも霧が深いと、手掛かりが分からない。時折、大きな岩や溝もあるので、危険だ。
「全く、もう~」
鉄扇をもの凄い勢いでパタパタさせているのは、アルスレーテだった。
その足元を魔法が掛けられた水晶球が、ぐるぐると回っている……だけで、あまり、役に立っていない。
「こんなんで、視界が良くならないけど何もやらないよりかはマシよね」
どうしても慎重なってしまうのは致し方ない事なのだろうか。
先行している二人に置いていかれ過ぎるのも、どうかと思ったのか、アルスレーテが意を決して走り出した。
「もう面倒だわ。多少の怪我は覚悟で走るわよ」
武器を振り回しながら強引に駆け出すアルスレーテ。まさに力技。
いくつかの岩を文字通り粉砕しながら進んでいた時だった。背後からルンルンの声が響いた。
「今、ニンジャの神を呼びます!」
出現したのは、巨大な式神。何枚もの符を使って呼び出す式神の術だ。
これで、先行させれば岩や溝があっても、ハンター達が傷つく事はない。
おまけに溝に落ちても、足場にもなると優れものだし、効果時間が過ぎれば術は溶けるので、エコだ。
「これはいいね」
「よし、一気に距離を稼ぐか」
ソフィアとリューがそんな感想を口にする。
とにかく、先を急ぎたい。廃館ではネル・ベルと戦いになる可能性が高いが、ここはスキルを使っても急ぐ所なのだ。
霧が徐々に晴れてきたかと思ったら、今度は湿地帯となった。
探索に協力する仲間達からの援護受けて、ハンター達は休憩もそこそこに湿地帯へと踏み入った。
運が良い事に天候は晴れていたが、前日の雨で流れが出来ており、油断はできない。
「これなら、ジェットブーツで超えられる」
踵からマテリアルの光を発しながら、ソフィアが機導術で水面を飛び越えた。
湿地ではあるが、適度に足場はある。水の流れに影響されない方法は、やはり、飛ぶしかない。
少し頑丈そうな木の幹にロープを繋ぐと大きく手を振った。
「大丈夫だよ!」
「ありがとうございます!」
ルンルンが返事と共にロープを身体に巻く。水に濡れた服が、より一層、豊満な胸を強調させ、諸々際どいシュチュエーションだ。
水の流れに逆らって何とか、木の幹にしがみつく。季節が真冬で無かったのは幸いだ。
濡れた符を掲げて占いを始める。符術の力を使って、少しでも有利になるようなルートを選ぶ為だ。
「通り易いルートが見つかれば、儲けものです」
「さすがに湿地だと、痕跡という痕跡が残ってないからな」
リューが強引に水の中を突き進んで、ルンルンの言葉に応えた。
僅かな痕跡といえば、先行した仲間が残していったものという程度だ。
それも、疾影士としての能力を最大限に活かしたものなので、他職では真似が出来ない。
「すっかり水に濡れたわね……」
素肌で水浴びしていた時とは違う状況にアルスレーテはそんな言葉を呟く。
衣服や装備を脱ぎ捨てる訳にもいかない。水の流れに足を取られないように慎重に進む必要があった。
いざ、ネル・ベルとの決戦時に、全身びしょ濡れでは――さすがに、絵にはならないだろう。
「早くここを抜けたいわ」
ハンター達は湿地を抜ける為に引き続き、足を前へと運ぶのであった。
肩が休む間もなく、上下に揺れている。
心臓に送る空気を得る為に忙しないなとシェラリンデ(ka3332)は呼吸を続けた。
髪を伝って流れる汗が、湿地帯の先を見つめている目に入ってきて滲みる。
(ライルさんの様な事件を起こさない為にも、これ以上、好き勝手させる訳にはいかない)
廃館でネル・ベルが待っている。
これまで討伐の機会が無かった訳ではない。だが、これほどまでのチャンス。次があるかどうか分からない。
ここで討ち取らなければ、ライルのように利用される人が増える可能性もあるのだ。決意も硬くなるというものだ。
「それにしても、さすが……だね」
疾影士としての能力を活かしての行軍。
並みのハンターでは、ここまでの速さを出すのは困難だろうという程の速さでシェラリンデは難所を駆け抜けてきた。
「慌てないでいいよ。怪我しても意味ないしね」
湿地帯の先から声を掛けたのは、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)だった。
難所を突破する為、使用したワイヤーウィップの具合を確かめる。
(人が通れる道があると思ったけど……)
周囲を見渡してもそんな跡は残っていなかった。
ネル・ベルの配下には人間もいる。生きている人間がいるのであれば、最低限、必要な食料や消耗品が存在するはずだと踏んでいた。
だから、廃館に通じる何らかの跡があるのではないか探していたのだ。
「……抜け道があるんだ」
ハンターオフィスからは受付嬢の希も廃館に向かっていると伝えられている。
森林や岩場、湿地をハンター達は通ってきた。だが、希と合流しなかったという事は、先に到着している可能性が高い。
何らかの手段で希は“抜け道”を知っていたのだろう。
(無茶しちゃダメだよ)
遠くに見える館を見つめながら、アルトは心の中で呟いた。
●強者
マテリアルの鎧と障壁が強烈な一撃を防ぐ。
反撃とばかりに希はアルテミスソードを振り上げた。機導術の力を纏わせ、巨大化した刀身を歪虚に叩きつける。
「少しは強くなったようだな」
ネル・ベルは希の攻撃を剣で受け流した。
希からの追撃は無かった。位置取りを気をつけているのだ。
堕落者が放ったナイフの形をした負のマテリアルを避ける希。
「そう……簡単には、思い通りにはさせません」
「積極的に向かってこないという事は、増援が来るか」
「……ここで、決着をつけたいだけです」
冷静を装って返した希の言葉にネル・ベルは不敵な笑みを浮かべる。
幾度か剣を交えた時だった。
「希くん!」
「アルト様! シェラリンデ様!」
現れたハンターの姿を見て、希が声を挙げた。
タイミングとしては凄く良い所だった。希の守勢を支えていたスキルのマテリアルが尽きそうだったからだ。
「君は、ボクが相手をするよ」
「良い度胸だな」
シェラリンデが比較的近くにいた堕落者に狙いを定めると、愛刀を構えながら向かう。
ネル・ベルの存在は予想通りだったが、堕落者も居るとなれば、こちらの相手をする必要もあると思ったからだ。
「無理はしないで、希さん」
声も掛けて守勢を促す。
後続のハンターが集合すれば、反撃の手段が増える。まずは、安全の確保だ。
堕落者はシェラリンデの鋭い突きを払うと、目にも止まらない速さで剣を繰り出してきた。
「これは……フェイントアタック!?」
「この剣、避けられるのであれば、避けてみろ」
疾影士を思わすような力に押されるが、シェラリンデは辛うじて斬撃を避けた。
油断は出来ない。いや、能力的には堕落者に軍配が挙がるだろう。
(【懲罰】の可能性も考慮しないと)
傲慢歪虚特有の能力【懲罰】は強力なカウンタースキルだ。
特にそれはライル戦を経験していたシェラリンデはよく分かっている。
強力な一撃を畳み込めば、それが自分に跳ね返ってくるのだ。安易に大胆には戦えない。
「少し考察させてもらうよ」
「その余裕、いつまで、保つかな」
刀と剣が激しくぶつかりあった。
一方、アルトは扉付近からネル・ベルまでの距離を一気に詰めていた。
「……ネオーラか、久しいな。ちょうど良い、約束を果たそう」
鋭い踏み込みからの連撃を歪虚は左右の手に持った剣で受け流して応える。
「アルトか。貴様は最も油断ならぬハンターの一人だと、この私は認識しているからな。手加減はしない」
「それは、光栄、だね!」
まるで竜巻のように斬撃を繰り出すアルト。
雑魔あたりでは瞬殺も有り得そうな強力な攻撃を、ネル・ベルは避けたり、あるいは受けで捌く。
実力は拮抗している、いや……攻撃力という一面だけを見れば、アルトが大いに優っているだろう。
「さすがは、私が見込んだ強者なだけはあるな」
アルトの刀を押し返すと、間合いを取るネル・ベル。
そこで剣先をダラリと下ろした。
「もう一度言おう。私と共に来い。貴様なら、歪虚軍将……いや、それ以上にもなれるかもしれん」
「残念だけど、歪虚になるつもりもないし、ボクより弱い人の所に“嫁ぐ”つもりもないからね」
アッサリと断ったアルトが再び切り掛ろうとした時だった。
ネル・ベルが両角の先端それぞれに炎渦を作り出すと、それをアルトと希に向かって薙ぎ払った。
「愚かな事だ。ならば、ここで死ね!」
「希くん!」
咄嗟にアルトは愛刀を構えて希を庇う。
その希もマテリアルの障壁を作り出すが、いとも簡単に割れて、二本の炎渦が、アルトと希を包み抜けた。
「アルト様!?」
「大丈夫だよ」
爽やかに返事をしながら、アルトは愛刀を構え直す。
ネル・ベルの攻撃はアルトに届きそうにない。だからこそのネル・ベルの戦術なのだろう。
「ボクはこんな程度では倒せないよ。舐めているのか?」
「それはこちらの台詞だ。偉大なる傲慢が命ずる。ただ、立ち止まれ」
アルトの挑発にしれっと応えながら、ネル・ベルは【強制】を行使した。
負のマテリアルが一帯を包み込むが――【強制】を受ける者は居なかった。
「ふむ……やはり、効かんか」
その隙にアルトが一瞬で間合いを詰めると、刀を振るった。
当たれば強力ではあるが、なかなか届かない。だが、適切な援護があれば、十二分に達することができるはずだとアルトは感じた。
つまり、難所を突破する仲間達が居れば、勝機はある――と。
●廃館での戦い
ネル・ベルとの戦いが優勢なアルトとは反対に、シェラリンデは劣勢だった。
基礎能力の違いを埋めるべく、戦闘特化のスキル構成なら互角だったかもしれない。
しかし、シェラリンデは慌てていなかった。例え、劣勢でも後続のハンター達の到着を待てばいいからだ。
「簡単には倒れないよ」
これまで幾度か切りつけたが、堕落者は【懲罰】を使う素振りを見せていない。
使えないのか、あるいは、使わないだけなのか……。
「さぁ、待たせたわね」
そこへ、アルスレーテが飛び込んできた。
後続組の到着だ。早速、虚纏拳甲「ネオール」を取り出して、ネル・ベルに投げつけようとしたが、堕落者が居る事や希の状態を見て冷静に仕舞い直すと、真っ先に希の元へと走る。
それなりの傷を受けている希を回復させる為だ。虚纏拳甲を投げつけるのは後回しだ。それどころではない。
「騎士シャル。あんたの無念は、ここで……ここで、全てを晴らす!」
次に現れたのはリューだった。全身のマテリアルを炎のように吹き出しながら、剛刀を構えると、ネル・ベルへと向かう。
彼にも果たさなければならない使命があるのだ。
後続が到着した様子に堕落者の動きに戸惑いが生じた。
そこを見逃すシェラリンデではない。隙を見て一撃を入れる。
「ぐっ……」
「形勢逆転だね」
ねじ込むように刀を突き刺すシェラリンデの脇を抜けて、ルンルンが豪快にホールへと飛び込むと、胸を激しく揺らしながら符を掲げた。
符を中心に輝くような結界が出現する。
「ルンルン忍法ニンジャ結界陣……強い意思も、ニンジャにお任せ☆」
【強制】対策なのは言う間でもないだろう。
単体に対して強力な【強制】があるので、これで対抗できる……かもしれない。
「一気に片をつけるわ」
ホールの中の戦闘光景を見ながら、ソフィアがマテリアルを練る。
敵は二体だが、ネル・ベルとの戦いは優勢そうに見える以上、まずは堕落者を倒すべきと彼女は思った。
囮のように隙を作りながら光の三角形を作り出す。
(シェラリンデさんが攻撃して【懲罰】が来なかった。なら……)
機導術が完成し、光の筋が現れた。
うちの一本がホールに飾られている武器を直撃すると粉々に砕く。ネル・ベルの【変容】を警戒しての事だ。
そのネル・ベルも直撃するが、避けようともしてなかった。
多少のダメージはあるかもしれないが、それはネル・ベルの中では些細な程度――という認識だったのだろう。ネル・ベルは光属性を持つからだ。
そして、最後の一本は堕落者へと向かった。
打ち払う事も避ける事も出来たであろう、その機導術を堕落者は避けようともしなかった。
「警戒していたようだが、詰めが甘いな」
デルタレイの衝撃に苦痛の表情を浮かべつつ、堕落者はそう言った。
直後、彼の全身から放たれる負のマテリアル。それらがソフィアを包み込むように襲いかかる。
「【懲罰】!?」
咄嗟に避けようとも受けようともしたが、間に合わなかった。
全身を負のマテリアルが突き抜ける。
「な、なんで……」
途切れそうな意識を辛うじて繋ぎながらソフィアは呟く。
【懲罰】はハンター達で言う所のリアクションスキルと似たようなカウンタースキルだ。
攻撃に対して自動的に発動する訳ではないのだ。どの攻撃に対して使うか選択する事が出来る……という事だ。もちろん、個人差はあるだろうが。
「くそったれ……」
ガクリと崩れ落ちるソフィア。
彼女が一撃で沈んでしまう程の威力があったという事でもあるのだが。
ハンター達にとって不幸だったのは、ネル・ベルの行動が直後の事だったのがあるかもしれない。
先にネル・ベルが行動していれば、少なくとも【懲罰】でソフィアが倒れる事は無かったかもしれないからだ。
「増援が来たか」
「覚悟するんだね」
刀先を揺らすアルト。
ネル・ベルはこれまで本気では無かったかもしれない。いや、能力的には本気で戦っていただろう。この歪虚の強みは、ここからだ。
「主が命じる。我が目的の為、己の全て出し切り戦え」
【強制】が行使された。
希もハンター達も誰もが抵抗する為に意識を強める。しかし、ハンターの誰にも【強制】は振り掛からなかった。
「仰せのままにぃぃ!」
【強制】が掛けられたのは、堕落者だった。
傲慢に属する歪虚は、通常、本気で戦ったりしない。人間相手に本気を出す事は恥とされているからだ。幾度もハンターと戦ってきたネル・ベルは『目的を達成する為には全力で掛かる』と意識の改革があった。
だが、この堕落者はそうではなかったようだ。その為、ネル・ベルが本気を出させたのであろう。
主からの【強制】による超越能力――限界突破――。最近では黒大公べリアルがそのような状態にあったのではないかと噂されている。圧倒的なまでの破壊力は記憶に新しい。
「ちょっと、何盛ってるのって!」
希に回復を施していた アルスレーテがそんな言葉を口にした。
鉄扇を構えて堕落者へと向かった。シェラリンデは倒れたソフィアがトドメを刺されないように牽制するのが精一杯だ。
「さっきよりも、動きが速い!」
先程のようなフェイントは使ってこない。強化された身体能力でただ剣を振るっている。
シェラリンデとアルスレーテの二人でどこまで耐えられるのか。ルンルンが支援すべく、新たな符を手にした。
「ルンルン忍法土蜘蛛の術! ……トラップカード発動、皆さん、今です!」
暴れる堕落者の足下が泥状となり、移動力を奪おうとした。
その試みは上手くいった。ソフィアは僅かに堕落者の攻撃範囲外だ。
●絶望へと至る記憶
堕落者との戦いは予断を許さない。
だとすれば、ネル・ベルを一刻も早く打ち倒すかだろう。幸い、アルトの優勢は変わらないのだから。
「動きを封じ込める!」
リューが構えた剛刀からマテリアルが噴出した。
それは、不可視の刃となり、ネル・ベルの動きを阻害させる。そのチャンスを見逃すはずはない。突き出すような刀先にマテリアルが集い、紋様を形創った。
「紋章剣『天槍』!」
轟音と共にマテリアルの光輝く槍がネル・ベルを貫く。
騎士シャルの無念を晴らす為に力の限り打ち出した、今出せる最大の一撃。あの騎士がここまでリューを導いたものであれば、この攻撃にはシャルの一撃とも言えるだろう。
「人を守る騎士として、人の弱さに付け込む奴は、まごう事なく敵だ!」
「ちぃっ! だが、まだだ」
よろめきながらなんとか耐えたネル・ベル。
リューの宣言通り、隙だらけになった所を、アルトが必殺の刀を振るわない訳がない。
「誇れ。お前達が鍛え上げた。私という刃は、ここまでになった事を」
確かな手応え。
負のマテリアルを切り裂いたイメージそのままに、アルトはすぐさま愛刀を構え直す。
行ける。これなら、この歪虚を倒す事が出来る。そう、確信にも似た直感。
「……見事だ。その強さ……」
身体を傾けながら、傷口を抑えるネル・ベル。
そして、真っ直ぐと強い視線をアルトへと向けた。
「改めて認めようではないか。貴様らの強さを」
「傲慢の歪虚とは思えない謙虚さだな」
油断なく構えたままアルトが応えた。
「確かに、貴様らは強い。このまま戦えば、この私を……倒せるだろう。だが、戦いとは強者が常に勝つとは限らないものだ」
「どういう意味だ」
リューが用心深く警戒しながら問うた。
その言葉にネル・ベルは不敵な笑みを浮かべる。
「それは、貴様らが示したではないか。ハンター達は歪虚の王すらも打ち倒す。見事な“絆”の力だ」
歪虚王は絶大なる力を持っている。
とても太刀打ちできるものでもない。それでも、ハンター達は戦いに勝ってきた。
ネル・ベルはそれを“絆”が成せる力だと分析している。それこそが、ハンターの持つ恐るべき力だと知ったから。
「だが、その力は危うく、時として、絶望へ至るものだとも……私は知っている」
希に一瞬、視線を向けた直後の事だった。
アルトとリューの二人の間合いから、ネル・ベルが突如として姿を消した。
「瞬間移動!」
反応できたのはアルトだけだった。
ルンルンの背後に移動したネル・ベルは容赦なく、剣を突き出した。
「ふえぇ!?」
驚き振り返った瞬間、その豊かな胸に突き立てられる剣。
「まずは、一人目だ」
「ネオーラ!」
ヒュン! っと音を立てて飛んだ手裏剣と共に、アルトがマテリアルの流れに乗り、ネル・ベルへと接近した。
同時に刀を振るうが、援護がなければ直撃を入れる事は難しい。案の定、剣で受け流されてしまった。
そして、アルトに対し、ネル・ベルはニヤリと笑った。
直後、再び瞬間移動する歪虚。
次に現れたのは、シェラリンデとアルスレーテの後方だった。
「後ろに?」
「ちょっと、挟み撃ちとかどういう事よ」
突如として二人を襲う炎渦。
意識が後ろに向いた瞬間を堕落者が見逃すはずがない。全てを薙ぎ払うような一撃をシェラリンデは避けきれなかった。
横一文字に切られ、シェラリンデは膝を床につけた。腹から溢れ出る血が止まらない。
「まだ……倒れる訳には……」
ドサリと崩れたシェラリンデを庇うように、アルスレーテが立っていた。
背後から炎渦で焼かれ、前からは剣で薙ぎ払われ、彼女も大きなダメージを負っている。それにも関わらず、だ。
「意地があるのよぉ!」
ドンと床を踏みつけて立ち続けるアルスレーテ。
ポンコツダイエット器具の前で床に伏せるなど、そんな事は絶対に許されない。私のダイエットはまだ、終わらないのだから。
堕落者の猛攻は続くが、なおも、彼女は不死身を体現しているかのように耐えた。
格闘士としての能力のおかげだ。もし、アルスレーテが居なければ、あるいは、金剛不壊のスキルがセットされていなければ、誰かは堕落者によってトドメを刺されていただろう。
「加勢する」
絶体絶命の所をリューがフォローに入った所で、ネル・ベルは一方的に剣先を下げた。
今にも切りかかろうとしたアルトの動きも止まる。
「何のつもりだ。戦いは終わっていない」
「貴様なら、幾ら犠牲を出そうとも、終わらない……だろうな。そういう戦士の目をしている。だが、希はどうかな」
その言葉に全員の視線は希へと向けられた。
「……ダメです。死んだら、ダメ……なん……です……」
少女は小さく震えていた。
血を流して床に倒れている仲間が、希の記憶を蘇らせる。ある戦いを思い出させ、それは、失う事への恐怖を呼んだ。
「…………ソルラ様……ヘ……ル様……れ……さ……ん」
アルテミスソードが音を立てて床に落ちた。
「懸命な判断だな、ノゾミ。このまま、次、私が動けば、ここで倒れている誰かは確実に死ねるからな」
一人ずつ、トドメを刺していかなかったのは、この為だったのだろう。戦闘不能者をバラけて出せば、その全員を守るのは難しい。
「人質を取るつもりか!」
リューの叫びにネル・ベルは涼しい顔をして応える。
「卑怯とでも言いたいのか? 生憎、私は騎士ではない。目的を達成する為に、いかに使える物を使うか。それだけだ」
「このっ!」
思い通りにはさせないと動こうとしたアルトの動きよりも早くネル・ベルが言う。
「下手に動かない方が良い。仲間が死ぬぞ……さぁ、ノゾミよ。私と来るのだ」
「……はい……」
「自分の絶望が何たるか、分かったようだな」
ゆっくりとした足取りでネル・ベルへと近づく希。
「ダメだ、希くん!」
アルトの叫びに希は首を僅かに横に振った。
希がネル・ベルへと手を伸ばし、繋いだ直後――唐突に二人の姿は消え去った。
「……私は、また……届かないと……いうのかっ!」
腹の底から絞り出すようなアルトの悲痛な言葉。
落ち込んでいる雰囲気に畳み掛けるようにアルスレーテの声が響く。
「ちょっと、こいつ、まだ動く!」
「倒すしかない」
堕落者は止まる事なく剣を振り落ろす。それを受け止めるリュー。
【強制】による限界突破の状態にあるのだ。【強制】が解除されるか、あるいは、消滅するまで止まらないのだろう。
「早く此奴を倒して、希くんを追う」
ハンター達の一斉攻撃が堕落者を切り裂く。
それでも、簡単に倒れない。一刻も早くと気持ちだけがハンター達の心に突き刺さった。
●別れ
廃館まで残り僅かな所で、探索のサポートについていたハンター達は、ネル・ベルと希に遭遇した。
一番最初に気がついたのは、Uisca Amhran(ka0754)だった。
「ノゾミちゃん!」
聞こえているはずなのに、希は俯いたままだった。
返事をしない希に代わりに勝ち誇った顔でネル・ベルが口を開く。
「貴様らも居たのか。だが、もう遅いぞ。ノゾミは私と共に行く」
「……わたし達も、持ち帰り対象じゃないの?」
時間を稼ぐ為に十色 エニア(ka0370)がそんな事を投げ掛けた。
Uiscaもエニアもお持ち帰り対象だったはずだからだ。
「ベリアル様亡き今、その必要もないからな。要らないという事だ」
「このままで、いいのか、希。せっかく拾った命。無駄にさせたくはないはずだ」
瀬崎・統夜(ka5046)の声にも希は反応は示さなかった。
もはや、その瞳には生気があるように見えない。
そう――あれは、絶望した人間がみせる目だ。希がこれまで、死へと誘ってきた人達がみせた目と同じだ。
「ノゾミちゃんに何をしたのです!」
怒るUiscaの台詞が矢のように飛んだ。もし、言葉にマテリアルの力が乗るのであれば、それだけで、ネル・ベルにダメージを与えただろうか。
だが、この歪虚は気にもしていない様子だった。大袈裟に両手を広げる。
「人が何度でも絶望するという事を私が教えたまでだ」
ネル・ベルの言った言葉に対して顔を見合わせるエニアと瀬崎
「……それじゃ、館に入ったハンター達は……」
「馬鹿な……」
フッと鼻で笑い、ネル・ベルは負のマテリアルを表出させる。
「さらばだ、ハンター共」
「ノゾミぃぃ!」
ヴァイス(ka0364)が大声で緑髪の少女の名を呼んだ。
魂の奥底から発しているのではないかと思う程の大声で叫ぶ。
「絶望は無くならない……だが、そこから這い上がり、立ち上がる“想い”を、ヒトは……ヒトは、示せるんだ!!」
その熱意が辺りを震わせると同時に、希の瞳に生気が戻った。鮮やかな青地のドレスの裾を揺らしながら、視線をハンター達へと向ける。
目に涙を浮かべていた少女は力強く返事を――。
刹那、瞬間移動でネル・ベルと希は姿を消した。
この日を境に、ハンターズソサエティの受付嬢兼ハンターの希は消息不明となる。
歪虚によって何処かに連れ去られたのだ。追跡調査は行われたものの、手掛かりは得られず、行方不明と登録簿に記されるのであった。
おしまい
●希望を抱いて
「ちくしょう……」
「忍法が……希さん……」
ソフィアとルンルンが床に転がりながら悔しそうに呟いた。
何とか、壁に寄りかかりながらシェラリンデが言う。
「帰るのも大変だけど、戻ろう」
その言葉に面々は重々しく頷いた。
ここから通ってきた難所を戻ると思うと、気が重くなるのも当たり前だ。
そこへ、一人の爺が姿をひょっこりと現した。キョロキョロと部屋の中を見渡し、小さくため息とつく。
「……オキナ?」
「なんじゃい。全員して死んだような顔をしてからに」
エニアの呼び掛けにオキナが苦笑を浮かべて、続ける。
「この状況を見れば大体、分かるわい。希が連れていかれたのだろう」
「あの娘、堕落者になっちゃったりするのかな?」
アルスレーテの言葉にハンター達はビクッと身体を震わせた。
そんな事はあってはならないはずだから。
オキナは考えるように口髭に手を伸ばした。
「まぁ、どうじゃろうな……騎士シャルを覚えておるか?」
「当たり前だ」
オキナの質問に憮然として答えるリュー。忘れる事なんてあるわけがない。
それにしても、なぜ、ここで、騎士シャルが出てくるのか……。
「全ての堕落者に該当しないと思うのじゃが、ネル・ベルは従者の契約にルールを定めておる」
「どういう事だ?」
「矛盾した想いを抱いたまま堕落者になると精神的に不安定になる場合があるからの。大事な所で、付け入る隙となってしまうのじゃ」
騎士シャルがその例だ。
堕落者になってしまったという意識が、騎士としての意識と相反して精神が保てなかったのだ。
「ノゾミちゃんが絶望して堕落者の契約をしない限り、無事」
「という可能性もあるという事か?」
Uiscaの言葉を続けて瀬崎が尋ねる。
「まぁ、あくまでも可能性の話じゃがな」
両肩を竦めるオキナにヴァイスが遠くを見つめながら力強く言った。
「希は……大丈夫だ。根拠は無いが、そんな気がする」
去り際に見せた、希の表情が脳裏に焼き付いていた。
自分の想いは、確実に届いた。そんな気がしてならないのだ。
「そうか……ヴァイスさんがそう言うのなら……ボクはその言葉を信じるよ」
アルトは顔を上げる。
ここで、落ち込んでいる場合ではない。自らのやるべき事を成すだけだ。
「機会は必ず来る。それまで待つのじゃな」
それが当然だと言わんばかりのオキナの台詞を、ハンター達は胸に留めるのであった。
依頼結果
参加者一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/04 07:34:58 |
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約束のその先へと:相談卓 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109) 人間(クリムゾンウェスト)|21才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/07/07 18:56:59 |