ゲスト
(ka0000)
全てを切り裂く鎌
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/04 07:30
- 完成日
- 2017/07/11 01:20
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
グラズヘイム王国南西部の平原。
暑くなり始めたこの時期。虫達が徐々に成長を遂げる時期ではあるのだろうが……。それにしても、人型と同じくらいにまで成長したカマキリというのは、あまりにも大きすぎはしないか。
おかげで、この周辺を寝床にしていた動物達は、生命の危険を察して逃げていく。少し大型の動物は北へ。猫の集団は南へ。他の動物達もあちらこちらへと散っていった。
そいつは……カマキリは、西に逃げた動物を追うことにしたらしい。
かさかさ、かさかさ。
しばし、移動していたカマキリは街道へと足を踏み入れることとなる。
どうやら、動物達はうまく逃げおおせたようだったが、カマキリは別の獲物を見定めていた。
それは、街道を行く馬車だ。馬車は王都イルダーナへと向かった商人が行商を行った帰り。それもあって、荷台はほとんど殻に近い状況だ。
その商人に目を光らせたカマキリは両手の鎌を光らせ、素早く馬車へと駆け寄っていく……。
王都イルダーナのハンターズソサエティ。
「いらっしゃいませー」
カウンターでは、金髪のウェーブヘアで糸目の女性、シェリーがにこやかな顔でハンターを出迎える。
依頼を探すハンターへ、シェリーはこんな依頼を持ちかける。
「平原で発生した雑魔が街道にまで、足を運んできているようですー」
場所は、港町「ガンナ・エストラータ」の付近。王都に向けて伸びる街道上にカマキリ雑魔が現れ、人々を襲っているという。
幸い、最初に襲われた商人は全力で馬車を走らせて事なきを得たが……、現状、港街からの街道利用者は、その場所を迂回しているのだとか。
「現状、被害はありませんが、雑魔が南下して街に被害を及ぼす可能性も否定できませんー」
現在、王都にいる者は、ハンターソサエティより雑魔出現の情報が公開されている為にこの事実を知っているが、王都から移動中の商人などはこの状況を知らない。できるだけ早く対処する必要があるだろう。
王都から距離がある為、転移門で港街へと移動してから依頼に当たることとなる。ハンター達はしっかりと依頼内容を確認してから、転移門へと向かう。
「お気をつけてー、無事のお帰りをお待ちしておりますー」
出発するハンター達へと、シェリーはにこやかな顔で大きく手を振るのだった。
グラズヘイム王国南西部の平原。
暑くなり始めたこの時期。虫達が徐々に成長を遂げる時期ではあるのだろうが……。それにしても、人型と同じくらいにまで成長したカマキリというのは、あまりにも大きすぎはしないか。
おかげで、この周辺を寝床にしていた動物達は、生命の危険を察して逃げていく。少し大型の動物は北へ。猫の集団は南へ。他の動物達もあちらこちらへと散っていった。
そいつは……カマキリは、西に逃げた動物を追うことにしたらしい。
かさかさ、かさかさ。
しばし、移動していたカマキリは街道へと足を踏み入れることとなる。
どうやら、動物達はうまく逃げおおせたようだったが、カマキリは別の獲物を見定めていた。
それは、街道を行く馬車だ。馬車は王都イルダーナへと向かった商人が行商を行った帰り。それもあって、荷台はほとんど殻に近い状況だ。
その商人に目を光らせたカマキリは両手の鎌を光らせ、素早く馬車へと駆け寄っていく……。
王都イルダーナのハンターズソサエティ。
「いらっしゃいませー」
カウンターでは、金髪のウェーブヘアで糸目の女性、シェリーがにこやかな顔でハンターを出迎える。
依頼を探すハンターへ、シェリーはこんな依頼を持ちかける。
「平原で発生した雑魔が街道にまで、足を運んできているようですー」
場所は、港町「ガンナ・エストラータ」の付近。王都に向けて伸びる街道上にカマキリ雑魔が現れ、人々を襲っているという。
幸い、最初に襲われた商人は全力で馬車を走らせて事なきを得たが……、現状、港街からの街道利用者は、その場所を迂回しているのだとか。
「現状、被害はありませんが、雑魔が南下して街に被害を及ぼす可能性も否定できませんー」
現在、王都にいる者は、ハンターソサエティより雑魔出現の情報が公開されている為にこの事実を知っているが、王都から移動中の商人などはこの状況を知らない。できるだけ早く対処する必要があるだろう。
王都から距離がある為、転移門で港街へと移動してから依頼に当たることとなる。ハンター達はしっかりと依頼内容を確認してから、転移門へと向かう。
「お気をつけてー、無事のお帰りをお待ちしておりますー」
出発するハンター達へと、シェリーはにこやかな顔で大きく手を振るのだった。
リプレイ本文
●
雑魔討伐依頼を請け負ったハンター一行。
彼らは、港町「ガンナ・エストラータ」のやや北の街道にいた。
「さて……、これが龍園から出て初の依頼となるのだが……、どうあるべきか」
この依頼には、最近新たにハンター登録された2人のドラグーンの姿がある。一見、妙齢の女性に見えて、年齢不詳なウルミラ(ka6896)はその1人だ。
「歪虚目撃の報告から、情報が回るよりも先に出発した方々がいるかもしれません」
もう1人のドラグーン、肘から先、膝から先を蒼白の鱗に包むユウ(ka6891)も、ハンターとしては初依頼。しかしながら、人の為に働くことには変わりないと、ユウは平常心をもって依頼に当たっている。
「人間大のカマキリとは厄介そうだな」
そして、アバルト・ジンツァー(ka0895) が言うように、街道にいる雑魔は、人間大にまで巨大化したというカマキリだ。
「可愛くてモフモフしている猫をいじめた奴は、絶対にたたっ斬る!!」
声を荒げる南護 炎(ka6651)。どうやら、先日、港町に猫達が逃げ込んできた原因がこのカマキリ雑魔らしく、猫好きの炎は雑魔に怒りを覚えている。
「……ふむ、なるほど」
相手は凶悪な雑魔。下手をすれば命に関わると、クローディア(ka3392)は考える。それだけに、彼女は各メンバーと語らいつつ、互いの戦闘スタイルを推察し、邪魔にならぬ協力できるよう出来ればと考えていたようだ。
「万が一の事態もあり得ますし、急ぎ街道沿いに警告に行かなくていけませんね」
「街道の安全の為にも、早期の撃滅が必要となりそうだ。自分も尽力させて貰うこととしよう」
被害を未然に防ぐ為、ユウもアバルトも依頼の完遂に意欲を見せていたのだった。
ユウの懸念は、悪いほうに当たってしまう。
事前にアバルトが集めた目撃情報を元に街道を行く一行は、街道上を闊歩する体長2mほどのカマキリ雑魔を発見する。
それだけならばまだ良かったが、タイミング悪く北の王都方面からやってくる馬車があるではないか。
「よりによって、今この道を通るものがいるとは……急がなければ」
若干張り詰めた態度の皆守 恭也(ka5378)は、仲間と示し合わせつつも前方へと駆け出していく。まずは近づくことが先決と、恭也は敵味方の状況を瞬時に把握し、距離を詰める。
(私の剣は、守りの剣。龍戦士と共に振るった迎撃の剣)
その剣技に自信はあれど、見慣れぬ地で発揮できるかといえば、ウルミラとていささかの不安はある。
「だが、私は私のやれることを行うまでだ」
それでも人々を守る為、彼女は迷うことなく雑魔に立ち向かう。
その前方を、アバルトが戦馬を駆っていた。
アバルトは覚醒によって、顔の左半面を青銅のように変化させている。また、軍人時代から射撃手として活躍していた彼はロングボウ「レピスパオ」を引き、牽制の一矢を射掛ける。
矢は雑魔の右前足を射抜く。アバルトはうまく、雑魔の注意を自分に向けていたようだ。
「すぐに離れろ。ここは危険だ」
アバルトはそのまま、近づいてくる馬車の荷台に座る商人に分かるよう呼びかける。商人も慌てて手綱を引き、街道を避けるように曲がり始めていた。
「あの方を守りませんと……」
少し後方から、純白の龍角を生やすユウが脚にマテリアルを込めて移動していく。
それを追うのは、銀の獣耳と茶色の尻尾を生やす恭也。
アバルトが上手くやってくれたのだからと、自身もまた獣の瞳でカマキリを正面から睨む。
「馬車に異常がないなら、そのまま駆け抜けて離脱を」
恭也も呼びかけると、商人は馬に鞭を入れ、街道脇の草原を走り始める。
「猫に対する敵対行動は、宣戦布告と判断する! 当方に迎撃の用意あり!!」
やや遅れて到着する炎が片目を赤くし、大剣の剣先を差し向けた。
「南護炎、行くぜ!!!」
炎に続き、覚醒したクローディアも日本の刀を抜いて躍り出る。
「すべてを切り裂く鎌を持つ――死神かと思えば蟲か」
何もかもを切り裂く鋭い鎌を持つ相手なれど、所詮は蟲でしかない。
ウルミラの体の周囲に3本の魔剣の幻影が回転し、それらは彼女の体へと消えていく。
「ならば。節ごと叩き斬ってやるまで」
周囲に炎の幻影を揺らめかしながら、彼女は刃を振るい始めたのだった。
●
敵は禍々しい気を纏うカマキリ雑魔1体。
そいつは凶器のごとく研ぎ澄ました両腕の鎌で、前方を大きく薙ぎ払う。
それを、駆けつけてきたハンター達が抑えることとなる。クローディア、炎が体を斬られ、鮮血を飛び散らせてしまう。
(馬車が巻き込まれるのは、避けねばなるまい)
鎌の範囲内にはそんな危険性を考えた恭也の姿もあったが、彼は刀を構えて上手く受け止めていた。
前線の仲間達が攻め行く後ろから、アバルトは矢に冷気を纏わせた上で、加速させて射撃を行う。
「……後方からの援護は任せておけ。おぬしらは前だけを見て、存分に得物を振るうが良い」
うまく、アバルトが敵の気を引いてくれていたのは大きい。
恭也はその隙を最大限に活かし、敵の後方に回り込んで雑魔に刃を見舞っていく。
正面からはクローディアが先に躍り込み、両手の試作振動刀で連撃を浴びせていた。
「オラオラ!! 行くぜ! 行くぜ!!」
さらに、大声で叫ぶ炎が、鮮やかな剣さばきで雑魔に攻め入った。
炎の手に握られているのは、風の精霊の力を受けると言われるグレートソード「エアリアル」。踏み込む彼はその刃を振り下ろす。
若干間合いが開いていたにも拘らず、渦巻く光がカマキリ雑魔の体を切り裂いていった。
ウルミラというと、やや慎重になって敵と対していて。
正面と背後に仲間が布陣していた為、ウルミラは側面から攻めることとなる。雑魔の隙を見計らい、彼女は魔剣「イェクルスナウト」に全身全霊を込めて振り下ろし、敵の胴へと刃を入れた。
それは、防衛戦や竜との闘いを経たことで、体力を温存しながら機を窺い、確実な一撃を当てる為に編み出した戦い方。一撃に威力を重んじる剣術だ。
一旦、敵から距離を取るウルミラは、ちらりと商人がいる方向を視認する。迂回して走る馬車には、ユウが1人近づいていて。
「怪我はありませんか?」
まさかの事態に面食らう商人。雑魔に襲われることも全くないわけではなかったが、港町が近づいて気を抜いていたのかもしれない。
「慌てず今の速度を保って、港へ向かってください。私達が必ず守ります」
ユウは商人に声をかけ、並走する。商人も少しばかり混乱してはいたようだったが、ハンター達の出現と、気にかけるメンバーの存在に安堵したようだ。
仲間が気を引くうち、商人の馬車は歩を進め、この場から離脱するように走り去っていった。
商人の馬車が戦場を通過したこともあり、ユウは仲間に交流してカマキリ雑魔討伐の援護に向かう。
早速、ユウは雑魔の側面をとり、霊氷剣「コキュートス」を大きく振るい、その体を切りつけてから離脱する。ヒット&アウェイは戦いにおける基本でもあるが、雑魔を翻弄しながらも痛烈なる一撃を浴びせ、敵の傷口から体液が噴き出す。
ユウの逆側に立つウルミラは、確実に一刀を浴びせていく。
ただ、攻撃後の大振りなモーションをつかれてしまい、彼女は敵の刃を浴びることもあった。
戦闘スキルがあれば、変わったかもしれないが……。思ったよりは上手くいかぬ立ち回りに、ウルミラは少しばかり歯痒さを覚えていたようだ。
しかし、戦況としては、ハンターが確実に雑魔を押していた。
素早く補填して番えた矢で、アバルトは敵の足元の地面を射る。
カマキリ雑魔が思ったように脚を動かせぬところで、構えを取るクローディアが相手を威圧しながら、敵の胸元を2本の刃で強く抉っていく。
これには雑魔もたまらず、視界が泳ぎ始めて退路を探していたようだ。
「おいこら! 逃げんじゃねえよ」
それに炎がすぐ気づき、攻撃の為に刹那、呼吸を整える。敵の退路を断ちながらも、彼は素早く踏み出して敵の脚を切り払っていく。
「巨大カマキリに、慈悲は無い!」
その斬撃には、街に逃げてきた猫達の恨みも篭っているのだろう。
追撃をかけるは恭也だ。もう、馬車への被害を気にする必要もない。半身の姿勢で武器を構えた彼は、大太刀「獅子王」で敵の胸部を真後ろから思いっきり貫いた。
それに苦しみを覚えたカマキリは、大鎌と脚をジタバタと動かしてもがく。
それも長くは続かない。ついにそいつは力尽き、黒い霧のように爆ぜ飛んで消えていったのである。
●
討伐対象であるカマキリ雑魔を倒した、ハンター一行。
念の為にと、炎は他の敵の奇襲を警戒する。
ユウは他の雑魔がいるかもしれないと周囲を捜索し、アバルトはカマキリ雑魔が卵など残していないかとしっかり後詰めしていた。
「考え過ぎかもしれないが、用心するに越したことはないからな」
杞憂で済みはしたが、街道の安全はこうしたハンターの行動で守られていると言っても過言ではないかもしれない。
報告の為にと帰路に着くハンター達はそのまま、商人を港町まで護衛することになる。
「そういえば、商品は私たちも売り上げに貢献出来るものかな?」
クローディアがそんな疑問を口にすると商人はにやりと笑う。
どうやら、商人は塩漬けにした魚介類を王都に運搬してきた帰りだと言う。荷台がほぼ空なのを確認したクローディアは、うまく取引が進んだことを察する。
もっとも、最後の最後でトラブルに見舞われたことが唯一残念だったと商人は大笑いしつつも、助けてくれたハンターに感謝していたのだった。
雑魔退治を完了したハンター達は、港町へと戻っていく。
そのメインストリートを歩いていく中、初めて訪れる港町の賑わいに、ユウは圧倒されていたようだ。
「ここが、ガンナ・エストラータですか……」
ドラグーンのユウにとっては、目新しい世界。大人の色気すらかもし出す見た目にも似合わず、彼女はまるで子供のように目を輝かせて街のあちらこちらを眺めていた。
「綺麗な景色だ」
視界の向こうに見える一面の青い海。その景色を見ながらウルミラは大きく息を吸い込み、潮の香りを実感する。
「海は初めてだが、これが潮風というものか……気に入った」
一方で、炎は雑踏に紛れて歩く猫の姿を見つけて。
「悪い奴は俺が倒したからな~」
炎は満面の笑みを浮かべ、その猫を抱きかかえてもふもふとその心地を確かめる。
それに、微笑ましげな視線を向けるも、クローディアは一つ息をつく。
「久し振りの戦いで些か疲れた。この上は海の幸を堪能し、疲れを癒したい」
結局、ここまで助けた商人と共に行動していたこともあり、クローディアが良い店はないかと問うと、商人はメインストリート沿いの大きな料亭を示し、そのまま去っていった。
「……せっかくの機会だ。ここならではの美味を堪能することとしよう」
ハンターズソサエティに報告を済ませ、アバルトは紹介してもらった店へ、慰労もかねて仲間を誘って入っていく。彼は港町ならではの海の幸を酒と共に堪能するつもりだ。
パエリアやアジの塩焼き、シーフードパスタ。商人が紹介していたように、それらの料理の味は上々といったところ。食にこだわるクローディアも、こくこくと頷きながら食していたようだ。
ここでも、ドラグーンの2人はあれやこれやと驚き、喜ぶ。
「海の幸、というものか……?」
ウルミラが言うには、龍園にいた頃は野戦が多く、ロクに調理された食事を口に出来なかったとのこと。
残念なことに、調味料を切らした……その実、転んで地面にぶちまけた経験があると、海の幸を食べる仲間達の笑いを誘う。
料理もそうだが、食後のデザートもまたユウを楽しませる。そのほんのり甘い焼き菓子に彼女は顔を綻ばせる。
そして、ウルミラもまた、スプーンでそれを一口。
「……うん。好きな、味だ」
僅かにではあったが、ウルミラもまたその甘い味に表情を柔らかくしていたのだった。
雑魔討伐依頼を請け負ったハンター一行。
彼らは、港町「ガンナ・エストラータ」のやや北の街道にいた。
「さて……、これが龍園から出て初の依頼となるのだが……、どうあるべきか」
この依頼には、最近新たにハンター登録された2人のドラグーンの姿がある。一見、妙齢の女性に見えて、年齢不詳なウルミラ(ka6896)はその1人だ。
「歪虚目撃の報告から、情報が回るよりも先に出発した方々がいるかもしれません」
もう1人のドラグーン、肘から先、膝から先を蒼白の鱗に包むユウ(ka6891)も、ハンターとしては初依頼。しかしながら、人の為に働くことには変わりないと、ユウは平常心をもって依頼に当たっている。
「人間大のカマキリとは厄介そうだな」
そして、アバルト・ジンツァー(ka0895) が言うように、街道にいる雑魔は、人間大にまで巨大化したというカマキリだ。
「可愛くてモフモフしている猫をいじめた奴は、絶対にたたっ斬る!!」
声を荒げる南護 炎(ka6651)。どうやら、先日、港町に猫達が逃げ込んできた原因がこのカマキリ雑魔らしく、猫好きの炎は雑魔に怒りを覚えている。
「……ふむ、なるほど」
相手は凶悪な雑魔。下手をすれば命に関わると、クローディア(ka3392)は考える。それだけに、彼女は各メンバーと語らいつつ、互いの戦闘スタイルを推察し、邪魔にならぬ協力できるよう出来ればと考えていたようだ。
「万が一の事態もあり得ますし、急ぎ街道沿いに警告に行かなくていけませんね」
「街道の安全の為にも、早期の撃滅が必要となりそうだ。自分も尽力させて貰うこととしよう」
被害を未然に防ぐ為、ユウもアバルトも依頼の完遂に意欲を見せていたのだった。
ユウの懸念は、悪いほうに当たってしまう。
事前にアバルトが集めた目撃情報を元に街道を行く一行は、街道上を闊歩する体長2mほどのカマキリ雑魔を発見する。
それだけならばまだ良かったが、タイミング悪く北の王都方面からやってくる馬車があるではないか。
「よりによって、今この道を通るものがいるとは……急がなければ」
若干張り詰めた態度の皆守 恭也(ka5378)は、仲間と示し合わせつつも前方へと駆け出していく。まずは近づくことが先決と、恭也は敵味方の状況を瞬時に把握し、距離を詰める。
(私の剣は、守りの剣。龍戦士と共に振るった迎撃の剣)
その剣技に自信はあれど、見慣れぬ地で発揮できるかといえば、ウルミラとていささかの不安はある。
「だが、私は私のやれることを行うまでだ」
それでも人々を守る為、彼女は迷うことなく雑魔に立ち向かう。
その前方を、アバルトが戦馬を駆っていた。
アバルトは覚醒によって、顔の左半面を青銅のように変化させている。また、軍人時代から射撃手として活躍していた彼はロングボウ「レピスパオ」を引き、牽制の一矢を射掛ける。
矢は雑魔の右前足を射抜く。アバルトはうまく、雑魔の注意を自分に向けていたようだ。
「すぐに離れろ。ここは危険だ」
アバルトはそのまま、近づいてくる馬車の荷台に座る商人に分かるよう呼びかける。商人も慌てて手綱を引き、街道を避けるように曲がり始めていた。
「あの方を守りませんと……」
少し後方から、純白の龍角を生やすユウが脚にマテリアルを込めて移動していく。
それを追うのは、銀の獣耳と茶色の尻尾を生やす恭也。
アバルトが上手くやってくれたのだからと、自身もまた獣の瞳でカマキリを正面から睨む。
「馬車に異常がないなら、そのまま駆け抜けて離脱を」
恭也も呼びかけると、商人は馬に鞭を入れ、街道脇の草原を走り始める。
「猫に対する敵対行動は、宣戦布告と判断する! 当方に迎撃の用意あり!!」
やや遅れて到着する炎が片目を赤くし、大剣の剣先を差し向けた。
「南護炎、行くぜ!!!」
炎に続き、覚醒したクローディアも日本の刀を抜いて躍り出る。
「すべてを切り裂く鎌を持つ――死神かと思えば蟲か」
何もかもを切り裂く鋭い鎌を持つ相手なれど、所詮は蟲でしかない。
ウルミラの体の周囲に3本の魔剣の幻影が回転し、それらは彼女の体へと消えていく。
「ならば。節ごと叩き斬ってやるまで」
周囲に炎の幻影を揺らめかしながら、彼女は刃を振るい始めたのだった。
●
敵は禍々しい気を纏うカマキリ雑魔1体。
そいつは凶器のごとく研ぎ澄ました両腕の鎌で、前方を大きく薙ぎ払う。
それを、駆けつけてきたハンター達が抑えることとなる。クローディア、炎が体を斬られ、鮮血を飛び散らせてしまう。
(馬車が巻き込まれるのは、避けねばなるまい)
鎌の範囲内にはそんな危険性を考えた恭也の姿もあったが、彼は刀を構えて上手く受け止めていた。
前線の仲間達が攻め行く後ろから、アバルトは矢に冷気を纏わせた上で、加速させて射撃を行う。
「……後方からの援護は任せておけ。おぬしらは前だけを見て、存分に得物を振るうが良い」
うまく、アバルトが敵の気を引いてくれていたのは大きい。
恭也はその隙を最大限に活かし、敵の後方に回り込んで雑魔に刃を見舞っていく。
正面からはクローディアが先に躍り込み、両手の試作振動刀で連撃を浴びせていた。
「オラオラ!! 行くぜ! 行くぜ!!」
さらに、大声で叫ぶ炎が、鮮やかな剣さばきで雑魔に攻め入った。
炎の手に握られているのは、風の精霊の力を受けると言われるグレートソード「エアリアル」。踏み込む彼はその刃を振り下ろす。
若干間合いが開いていたにも拘らず、渦巻く光がカマキリ雑魔の体を切り裂いていった。
ウルミラというと、やや慎重になって敵と対していて。
正面と背後に仲間が布陣していた為、ウルミラは側面から攻めることとなる。雑魔の隙を見計らい、彼女は魔剣「イェクルスナウト」に全身全霊を込めて振り下ろし、敵の胴へと刃を入れた。
それは、防衛戦や竜との闘いを経たことで、体力を温存しながら機を窺い、確実な一撃を当てる為に編み出した戦い方。一撃に威力を重んじる剣術だ。
一旦、敵から距離を取るウルミラは、ちらりと商人がいる方向を視認する。迂回して走る馬車には、ユウが1人近づいていて。
「怪我はありませんか?」
まさかの事態に面食らう商人。雑魔に襲われることも全くないわけではなかったが、港町が近づいて気を抜いていたのかもしれない。
「慌てず今の速度を保って、港へ向かってください。私達が必ず守ります」
ユウは商人に声をかけ、並走する。商人も少しばかり混乱してはいたようだったが、ハンター達の出現と、気にかけるメンバーの存在に安堵したようだ。
仲間が気を引くうち、商人の馬車は歩を進め、この場から離脱するように走り去っていった。
商人の馬車が戦場を通過したこともあり、ユウは仲間に交流してカマキリ雑魔討伐の援護に向かう。
早速、ユウは雑魔の側面をとり、霊氷剣「コキュートス」を大きく振るい、その体を切りつけてから離脱する。ヒット&アウェイは戦いにおける基本でもあるが、雑魔を翻弄しながらも痛烈なる一撃を浴びせ、敵の傷口から体液が噴き出す。
ユウの逆側に立つウルミラは、確実に一刀を浴びせていく。
ただ、攻撃後の大振りなモーションをつかれてしまい、彼女は敵の刃を浴びることもあった。
戦闘スキルがあれば、変わったかもしれないが……。思ったよりは上手くいかぬ立ち回りに、ウルミラは少しばかり歯痒さを覚えていたようだ。
しかし、戦況としては、ハンターが確実に雑魔を押していた。
素早く補填して番えた矢で、アバルトは敵の足元の地面を射る。
カマキリ雑魔が思ったように脚を動かせぬところで、構えを取るクローディアが相手を威圧しながら、敵の胸元を2本の刃で強く抉っていく。
これには雑魔もたまらず、視界が泳ぎ始めて退路を探していたようだ。
「おいこら! 逃げんじゃねえよ」
それに炎がすぐ気づき、攻撃の為に刹那、呼吸を整える。敵の退路を断ちながらも、彼は素早く踏み出して敵の脚を切り払っていく。
「巨大カマキリに、慈悲は無い!」
その斬撃には、街に逃げてきた猫達の恨みも篭っているのだろう。
追撃をかけるは恭也だ。もう、馬車への被害を気にする必要もない。半身の姿勢で武器を構えた彼は、大太刀「獅子王」で敵の胸部を真後ろから思いっきり貫いた。
それに苦しみを覚えたカマキリは、大鎌と脚をジタバタと動かしてもがく。
それも長くは続かない。ついにそいつは力尽き、黒い霧のように爆ぜ飛んで消えていったのである。
●
討伐対象であるカマキリ雑魔を倒した、ハンター一行。
念の為にと、炎は他の敵の奇襲を警戒する。
ユウは他の雑魔がいるかもしれないと周囲を捜索し、アバルトはカマキリ雑魔が卵など残していないかとしっかり後詰めしていた。
「考え過ぎかもしれないが、用心するに越したことはないからな」
杞憂で済みはしたが、街道の安全はこうしたハンターの行動で守られていると言っても過言ではないかもしれない。
報告の為にと帰路に着くハンター達はそのまま、商人を港町まで護衛することになる。
「そういえば、商品は私たちも売り上げに貢献出来るものかな?」
クローディアがそんな疑問を口にすると商人はにやりと笑う。
どうやら、商人は塩漬けにした魚介類を王都に運搬してきた帰りだと言う。荷台がほぼ空なのを確認したクローディアは、うまく取引が進んだことを察する。
もっとも、最後の最後でトラブルに見舞われたことが唯一残念だったと商人は大笑いしつつも、助けてくれたハンターに感謝していたのだった。
雑魔退治を完了したハンター達は、港町へと戻っていく。
そのメインストリートを歩いていく中、初めて訪れる港町の賑わいに、ユウは圧倒されていたようだ。
「ここが、ガンナ・エストラータですか……」
ドラグーンのユウにとっては、目新しい世界。大人の色気すらかもし出す見た目にも似合わず、彼女はまるで子供のように目を輝かせて街のあちらこちらを眺めていた。
「綺麗な景色だ」
視界の向こうに見える一面の青い海。その景色を見ながらウルミラは大きく息を吸い込み、潮の香りを実感する。
「海は初めてだが、これが潮風というものか……気に入った」
一方で、炎は雑踏に紛れて歩く猫の姿を見つけて。
「悪い奴は俺が倒したからな~」
炎は満面の笑みを浮かべ、その猫を抱きかかえてもふもふとその心地を確かめる。
それに、微笑ましげな視線を向けるも、クローディアは一つ息をつく。
「久し振りの戦いで些か疲れた。この上は海の幸を堪能し、疲れを癒したい」
結局、ここまで助けた商人と共に行動していたこともあり、クローディアが良い店はないかと問うと、商人はメインストリート沿いの大きな料亭を示し、そのまま去っていった。
「……せっかくの機会だ。ここならではの美味を堪能することとしよう」
ハンターズソサエティに報告を済ませ、アバルトは紹介してもらった店へ、慰労もかねて仲間を誘って入っていく。彼は港町ならではの海の幸を酒と共に堪能するつもりだ。
パエリアやアジの塩焼き、シーフードパスタ。商人が紹介していたように、それらの料理の味は上々といったところ。食にこだわるクローディアも、こくこくと頷きながら食していたようだ。
ここでも、ドラグーンの2人はあれやこれやと驚き、喜ぶ。
「海の幸、というものか……?」
ウルミラが言うには、龍園にいた頃は野戦が多く、ロクに調理された食事を口に出来なかったとのこと。
残念なことに、調味料を切らした……その実、転んで地面にぶちまけた経験があると、海の幸を食べる仲間達の笑いを誘う。
料理もそうだが、食後のデザートもまたユウを楽しませる。そのほんのり甘い焼き菓子に彼女は顔を綻ばせる。
そして、ウルミラもまた、スプーンでそれを一口。
「……うん。好きな、味だ」
僅かにではあったが、ウルミラもまたその甘い味に表情を柔らかくしていたのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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面白かった! | 5人 |
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MVP一覧
- 律する心
皆守 恭也(ka5378)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 アバルト・ジンツァー(ka0895) 人間(リアルブルー)|28才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/07/03 10:34:46 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/30 03:46:28 |