ゲスト
(ka0000)
【繭国】ノセヤの悩み事
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/21 12:00
- 完成日
- 2017/07/25 04:05
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●港街ガンナ・エントラータ
刻令術式外輪船フライング・システィーナ号がドックに入渠した。
水中からの奇襲攻撃による損害で船首右に巨大な損傷を受けたが、ハンター達の尽力により大事には至らなかった。
昼夜問わず、修理のついでに、機器の交換や装備を新調したりと忙しい感じである。
「人間って大変ですね」
そんな様子を見て呟いたのはグラズヘイム王国のある女性騎士の姿を模した水の精霊――ソルラ――だった。
海水をドックへ緊急注入する際の水路――に板を浮かべてその上で横たわっている。
王国西部の海に関わる水の精霊なだけに、陸地に上がる事は苦痛を伴うという。その為の処置ではあるのが、事情を知らない人から見れば可笑しくも見えた。
「……もう少し、姿勢を気をつけてくれませんか」
「へ?」
「下着が……ですね、見えるのは良くないって言ってるじゃないですか」
やんわりと忠告するノセヤ。
どうも、この精霊は人間の感覚とズレがあるみたいだ。
一生懸命、スカートの裾を伸ばす水の精霊に苦笑を浮かべ、ノセヤは船の図面に視線を向ける。
現在、急ピッチで修理が進められているのには訳がある――いや、正確な理由はノセヤには聞かされていない。しかし、騎士団からの急な援助から、なんとなく、その理由をノセヤは感じていた。
「……対歪虚特化部隊“黒の隊”」
王国騎士団に新組織結成される一報はノセヤも耳にしている。
そして、ノセヤはこの件について、近々、騎士団本部へと出向くつもりなのだ。
「アルテミス小隊と艦隊は解体……その行先は、もう決めている」
騎士団の小隊に登録ハンターを組み込んでの仕組みは、振り返ってみると成功したといえる。
新組織結成、そして、その内容を見れば、そこにはアルテミス小隊の運用ノウハウも一部は関わっているはずだ。
今後も引き続き、ハンター達と共に戦うのであれば、この船を最大限に活かしたい。
それが、受け継いだ“想い”のはずなのだから。
「――それに、小隊に登録しているハンターの中から、黒の隊への推薦をしたい」
ノセヤの正直な気持ちだった。
もちろん、その為にはノセヤも“黒の隊”に関わらなければならない。
ゲオルギウス団長は快く返事をするだろう……“黒の隊”の情報を伝えるという条件付きで。
「その為には、フライング・システィーナ号を如何に有意義に使うか……そのアイデアが欲しい」
そこで、ノセヤは決めた。
こういう時こそ、柔軟な発想ができるハンターに頼るべきではないのかと。
●水の精霊
船を眺めるのも飽きてきたソルラは、ある商会が用意した港の一角へと移動した。
元々は商会の建物へ直接荷揚げが出来るように改造された所であるので、一般人の立ち入りはできない、いわば、プライベートな場所でもある。
「……」
今度は板ではなく、大きいタライの中に入ってソルラはノセヤが見ていたのと同じ図面を熱心に見ていた。
刻令術式外輪船フライング・システィーナ号の事が記されている機密情報ではあるが、ノセヤが快く渡してくれたのだ。
大きさでいうと大型帆船数隻分の長さがあるし、その幅も刻令ゴーレムが何台か並べられるだろう。
最大の特徴は、最上甲板が全通式である事だ。もし、リアルブルー出身の者が居たら、それは航空母艦に似ていると思うだろうか。
噂によると、ノセヤが譲れなかった部分らしい。一説によると、帝国のグリフォン部隊の着艦も視野に入っているとかなんとか。
「転移門?」
ソルラは首を傾げる。
知識としては知っている。精霊ネットワークを利用した瞬間移動する為の装置のようなもの……と
これも、フライング・システィーナ号特有の装備だ。“聖火の氷”と呼ばれるマテリアルの秘宝が得られなかったら実現しなかったものである。
転移門の維持や稼働には大量のマテリアルが必要となる。おいそれとは作れない代物だ。
それを船の中に作ってしまおうというのだから、人間とは不思議な存在だと、改めてソルラは思った。
「武装は……無いんだ」
現在、ドッグ入りしているが、武装の予定は無いという。
ここにもノセヤの強い意向があった。即ち、王女様に武器は似合わない――という事らしい。
ソルラにとっては理解出来ないのだが、あの軍師騎士がそう言うのであれば、そうなのだろう。
「……少し、楽しみですね」
ソルラは微笑を浮かべた。
フライング・システィーナ号を有効に使うアイデアを、ハンター達がどう出してくるものかと――。
刻令術式外輪船フライング・システィーナ号がドックに入渠した。
水中からの奇襲攻撃による損害で船首右に巨大な損傷を受けたが、ハンター達の尽力により大事には至らなかった。
昼夜問わず、修理のついでに、機器の交換や装備を新調したりと忙しい感じである。
「人間って大変ですね」
そんな様子を見て呟いたのはグラズヘイム王国のある女性騎士の姿を模した水の精霊――ソルラ――だった。
海水をドックへ緊急注入する際の水路――に板を浮かべてその上で横たわっている。
王国西部の海に関わる水の精霊なだけに、陸地に上がる事は苦痛を伴うという。その為の処置ではあるのが、事情を知らない人から見れば可笑しくも見えた。
「……もう少し、姿勢を気をつけてくれませんか」
「へ?」
「下着が……ですね、見えるのは良くないって言ってるじゃないですか」
やんわりと忠告するノセヤ。
どうも、この精霊は人間の感覚とズレがあるみたいだ。
一生懸命、スカートの裾を伸ばす水の精霊に苦笑を浮かべ、ノセヤは船の図面に視線を向ける。
現在、急ピッチで修理が進められているのには訳がある――いや、正確な理由はノセヤには聞かされていない。しかし、騎士団からの急な援助から、なんとなく、その理由をノセヤは感じていた。
「……対歪虚特化部隊“黒の隊”」
王国騎士団に新組織結成される一報はノセヤも耳にしている。
そして、ノセヤはこの件について、近々、騎士団本部へと出向くつもりなのだ。
「アルテミス小隊と艦隊は解体……その行先は、もう決めている」
騎士団の小隊に登録ハンターを組み込んでの仕組みは、振り返ってみると成功したといえる。
新組織結成、そして、その内容を見れば、そこにはアルテミス小隊の運用ノウハウも一部は関わっているはずだ。
今後も引き続き、ハンター達と共に戦うのであれば、この船を最大限に活かしたい。
それが、受け継いだ“想い”のはずなのだから。
「――それに、小隊に登録しているハンターの中から、黒の隊への推薦をしたい」
ノセヤの正直な気持ちだった。
もちろん、その為にはノセヤも“黒の隊”に関わらなければならない。
ゲオルギウス団長は快く返事をするだろう……“黒の隊”の情報を伝えるという条件付きで。
「その為には、フライング・システィーナ号を如何に有意義に使うか……そのアイデアが欲しい」
そこで、ノセヤは決めた。
こういう時こそ、柔軟な発想ができるハンターに頼るべきではないのかと。
●水の精霊
船を眺めるのも飽きてきたソルラは、ある商会が用意した港の一角へと移動した。
元々は商会の建物へ直接荷揚げが出来るように改造された所であるので、一般人の立ち入りはできない、いわば、プライベートな場所でもある。
「……」
今度は板ではなく、大きいタライの中に入ってソルラはノセヤが見ていたのと同じ図面を熱心に見ていた。
刻令術式外輪船フライング・システィーナ号の事が記されている機密情報ではあるが、ノセヤが快く渡してくれたのだ。
大きさでいうと大型帆船数隻分の長さがあるし、その幅も刻令ゴーレムが何台か並べられるだろう。
最大の特徴は、最上甲板が全通式である事だ。もし、リアルブルー出身の者が居たら、それは航空母艦に似ていると思うだろうか。
噂によると、ノセヤが譲れなかった部分らしい。一説によると、帝国のグリフォン部隊の着艦も視野に入っているとかなんとか。
「転移門?」
ソルラは首を傾げる。
知識としては知っている。精霊ネットワークを利用した瞬間移動する為の装置のようなもの……と
これも、フライング・システィーナ号特有の装備だ。“聖火の氷”と呼ばれるマテリアルの秘宝が得られなかったら実現しなかったものである。
転移門の維持や稼働には大量のマテリアルが必要となる。おいそれとは作れない代物だ。
それを船の中に作ってしまおうというのだから、人間とは不思議な存在だと、改めてソルラは思った。
「武装は……無いんだ」
現在、ドッグ入りしているが、武装の予定は無いという。
ここにもノセヤの強い意向があった。即ち、王女様に武器は似合わない――という事らしい。
ソルラにとっては理解出来ないのだが、あの軍師騎士がそう言うのであれば、そうなのだろう。
「……少し、楽しみですね」
ソルラは微笑を浮かべた。
フライング・システィーナ号を有効に使うアイデアを、ハンター達がどう出してくるものかと――。
リプレイ本文
●ソルラとハンターと
港を一望できる展望デッキで水の精霊――ソルラ――が、キヅカ・リク(ka0038)の声に振り返った。
「そういえば、ソルラとこうして確りと話すのって初めて、だね」
「それも……そうですね」
「僕にはあんま期待はしないでよ? 見て通り、ただの子供なんだからさ」
その言葉に、思いっきり、ソルラは首を傾げた。
とてもではないが、ただの子供には見えない。
装備の名前にもなるようなハンターなのだから、きっと、凄い人だと思った……口には出さないが。
「それでも……やれる事は当然やるさ……何れ来るだろう、決戦に向けてね」
「歪虚との戦い……ですか?」
そのソルラの返しにリクは頷いた。
王国西部の海に浮かぶイスルダ島は傲慢の歪虚によって奪われたままだ。
奪還するには、海上兵力の充実は欠かせない。フライング・システィーナ号も、その要の一つと言えるはずだし、多くの“想い”が成したあの船は、そう胸を張って応えていいはずだ。
「ノセヤさんも、やる気になってくれてるみたいだし」
リクは視線をドックの方角へと向ける。
ここからは直接、確認できないものの、今も突貫工事の音が風に乗って微かに聞こえる。
「……ノセヤさんも船も無事で良かったです」
「いやー、死ぬ思いをした甲斐があったってもんだよ」
苦笑を浮かべる。
何かズレていたら沈没していても可笑しくなかった戦いを切り抜けたのだ。
リクは水の精霊が出現してから、何かとフライング・システィーナ号に関わってきた。“想い”は繋いでいく――リクも、ハンター達もその決意は変わらない。
「それにしても、武器を装備しないなら……やっぱり、尖らせるべきは索敵。だと、思うけど……ソルラの……水の精霊の加護は頼れるの?」
水の精霊の加護があれば、長時間、水中には居られる。
そうすれば、水中からの奇襲への備えにもなるはずだ。
「……そうですね、難しいかもしれません」
「だったら、仕方ないかな」
ノセヤには幾つか提案をしてきた。早期警戒や法術刻印を応用した支援、防御機能等。
真剣にメモに残していた彼の姿が思い浮かぶ。今度のイスルダ島での戦いでは間に合わない可能性もあるが、きっと、リクが出したアイデアを無駄にはしないだろう。
「ただ、私の方で何か力になれる事がありそうな気もします」
「期待してますね」
「それでは、お互いに期待するという事で」
微笑を浮かべた水の精霊だった。
●精霊とマテリアルと
展望デッキから通路を通り、船内に戻ろうとしたソルラは、自分に向かって手を振る十色 エニア(ka0370)に気がついた。
「名前、決めたんだね、おめでとう。そして、改めて、よろしくね。ソルラさん」
「エニアさん、ありがとうございます。皆さんの“想い”の先、確りと見届けさせて貰います」
水の精霊が、死んだ騎士の姿を模した時、名前は決まらなかった。
紆余曲折の末、騎士の“想い”を繋いだ。それが、これから先、どう繋がれていくのか、この精霊は見届けるつもりなのだ。
その為に、“想い”の主の名を名乗る事を、水の精霊自身が選んだのだ。
「ノセヤさんの所に?」
エニアは縦に首を振った。
欄干に寄りかかるとソルラもそれに倣う。潮風が二人の髪を靡かせた。
ノセヤにはフライング・システィーナ号の運用について、アドバイスしてきた所だ。
上陸については彼も頭を悩ませている所であるらしく、何かの参考にはなった……そんな手応えだった。
「そうだ、ソルラさん。ちょっと、やってみたいのだけど、いいかな?」
「構いませんが?」
首を傾げたるソルラ。
失礼するねと言ってからエニアはソルラの手を取った。すべすべしているが体温は感じられず、ちょっとひんやりしているのは水の精霊だからだろうか。
精霊力を感じるその手を強く握ると体内のマテリアルを操作する。
「エニアさん?」
「……ダメね。部位が悪いのかな」
今度は額と額を合わせてみた。
これほど密着しているのなら、と。お互いの髪が風で絡み合う。
「何かのおまじないですか?」
水の精霊が模した騎士だったら、赤面していただろうが、ソルラは不思議な顔をしているだけだった。
これが性格の差というものなのだろうか。
「わたしのマテリアルを、ソルラさんに分ける事ができたら、応急手当て出来そうかなって」
「難しいと思いますよ」
「そうみたいね。先に言えば良かったかな」
親和性を高めても、そもそもマテリアルを融通するのは困難だろう。
「心配下さってありがとうございます」
「……ソルラさんの名前……きっと、わたし達が思ってる以上に重い時があると思う。そんな時は、どうぞ頼ってください」
「はい。エニアさん達も、私に遠慮なく頼って下さいね」
差し出された手をエニアは頷いてから、しっかりと握ったのだった。
●水の精霊と巫女と
流石に貸切にだけあって、他の人の姿が無く、静かなクルーズである。エントランスのふかふかのソファーに座っているソルラをUisca Amhran(ka0754)は見かけた。
ちょうど、ノセヤとの対局が終わった所で、疲れた事もあり、Uiscaはソルラの横に座る。対局は途中まで互角だったが、最終的には押し切られてしまった。もう……少しで勝てそうなのだが……。
「先の戦い、無事で良かったです……」
「Uiscaさんもお疲れ様でした」
微笑を浮かべて応えるソルラの姿に、Uiscaは胸を締め付けられる感じがした。
今でも、“あの戦い”に臨む時の、騎士の凛々しい姿が忘れられない。
「彼女は、多くの人に慕われ、皆に囲まれていましたけど……どこか、私達と距離を取っている感じがあったんですよ……」
その話が、誰を差しているのか、ソルラにはすぐに分かった。
自分が模している騎士の事だと。
「意識の片隅で、いつか突然死んでしまう事とか考えていて……私達を悲しませないように、と思っていたのかなって……」
概ね、その通りだったかもしれない。
騎士という立場もあるかもしれない。命を懸けて守るべき存在があったかもしれない。
戦場で散っていった多くの騎士と同様に、いつか、自分にもそんな日が来るのではないかと。
「だから、いつかその壁を壊せたら……と、思っていたんですけど……」
Uiscaはソルラの手を取り、言葉を続ける。
「だから、貴女は内で抱え込まない様にして下さいね」
「私は大丈夫ですよ……もし、力を使い切ったとしても、死ぬという訳ではありませんから」
その返事にUiscaは首を横に振った。
水の精霊は言った。精霊としての力を使い切った時、消滅するか大精霊の元へ帰ると。
それは、個としての存在が無くなる事を意味している。ただ、その結末は、人でいう所の死と変わらないのではないか。
「貴女は、消えてしまったら替えは効きません……その事、忘れないで下さいね」
万が一の時は、船内のマテリアルを使っても構わないとも思う。もっとも、マテリアルの属性の違いから『聖火の氷』を、水の精霊は使う事が出来ないのだが……。
懇願するようなUiscaの口調に、ソルラはもう一方の手を重ねる。
「ありがとうございます、Uiscaさん」
「私も巫女というお役目上、人と距離を取ってしまいがちなので似た者同士なのかも……しれません」
「Uiscaさんは、大丈夫そうに見えますけど」
眩しいものでも見るようにソルラの視線が向けられる。
その視線にUiscaは笑顔で応えた。
●スイーツとアドバイスと
メインダイニングでは、ノセヤとストゥール(ka3669)、そして、アルバ・ソル(ka4189)の三人が一つのテーブルに集まっていた。
内容は、フライング・システィーナ号の運用に関してではあるが、同時に小腹を満たす為のスイーツも並ぶ。
いずれもシェフの自信作ではあるのだが、今から始まるのは甘味会ではなく、真面目な話である。
「ノセヤ殿には、大分無沙汰をしている。覚えておられるかも定かではないが……」
夜空を思わすようなドレスに身を包み、いつもは纏めている長い髪を降ろしたストゥールがノセヤに言った。
彼女とノセヤの関わりは遡れば2年近くになる。茨小鬼との一連の戦い――北方動乱――での事だ。
「忘れる訳、ありませんよ。お久しぶりです。あの時と姿が違って驚いて、いますが……」
「こ……れも、戦場の一つのようなもの、だからな」
僅かに言葉を止めてストゥールは答えた。
そうでなければ、この姿でここには居られなかった……かもしれない。
「それもそうですね」
変わらず痩せた身体を揺らし、ノセヤは笑った。
そして、視線をアルバへと向ける。彼は机の上に並んだスイーツに手を伸ばす前に、目を閉じて黙していたようだった。
彼の幼馴染はアルテミス小隊の登録ハンターでもあり、また、彼自身も亡くなった騎士とは面識はあった。思い入れもあるというものだ。
「フライング・システィーナ号を活かせる手段を考えたい所だ」
ノセヤの視線の気配に気がつき、アルバは目を開くとノセヤに言った。
「その通りですね」
「軍船として運用していくにせよ、この船は固定武装がない上に外輪船。輸送手段としては優れているが戦闘では弱点となる」
アルバの説明通り、フライング・システィーナ号は巨大な水車を船尾に備えた外輪船である。
『聖火の氷』というマテリアル鉱石を刻令術の源として水車を回しているのだ。
「武装が無いという事は、積極的には前線には出まい」
甘さを控える代わりに柑橘類がアクセントとして添えられているスイーツにフォークの先を当てるストゥール。
同意するようにノセヤが言葉を続けた。
「基本的には、やはり、転移門を最大限に活かす方向ではあります」
「グリフォンの止まり木としてもそうだが物資、人員の輸送。移動司令部としての役割であろうか」
ハンターの中からも、対空能力の確保や帝国のグリフォン部隊やあるいは、ワイバーンなどの飛行能力を持つ幻獣の運用の話が挙がっている。
それらは、フライング・システィーナ号が計画される頃から、ノセヤの構想にあった所でもあるのだが……。
「洋上の港のようだな。武器を持たないが、積載に余裕があれば、戦闘で無い事にも役に立つというものだ」
「“洋上の港”……ですが、良い響きです」
戦闘に限らず、使い道があるというのは良い事である。
少ない海上兵力であるので、色々と融通が効くのは利点だろう。
アルバはショートケーキを一片、口へと運び、その甘味を堪能してから、のみ込んだ。
同時に、フライング・システィーナ号の勇姿を思い浮かべる。
「あの船を、旗艦として推すのは、どうだろう」
「王国海軍の、ですか?」
「誤解を恐れず言うなら、私は、常々、騎士に必要なのは見栄であると思っている」
例え戦に勝ったとしてもボロボロの姿のままで民の前に現れれば……頑張ったと思うかもしれないが、不安も覚えるのではないだろうか。
騎士の仕事は戦に勝つ事が目的ではない。戦に勝って、民に安心できる暮らしを示す事だ――とアルバは力説した。
「とても、興味深い話ですよ、アルバさん」
「身体を張るのは義務だ。その上で見栄を張る事こそ、本義ではないだろうか。貴族が着飾るのには意味があるという事だ」
フライング・システィーナ号はこれまで、幾つもの戦いを切り抜いてきた。
その事を鑑みれば、この船は『希望』という名の象徴になり得るはず。
「外観に更に手を加え、アピールしていく等、その方向はどうだろうか」
「それはいい。それならば、戦が終わった後も、名を残すことにもなろう」
アルバの提案にストゥールが続けた。
嬉しそうにノセヤはメモを残していく。今すぐという訳にはいかないが、今後の方向性の一つとして有意義だと判断した。
「今日は、良い話ができました。お二人も含め、ハンターの皆さんに感謝を」
グラスを掲げたノセヤ。
応えるようにアルバもグラスを持つと、掲げた。ストゥールもグラスに手を伸ばす。
(そろそろ、私も篭ってばかりでは、埃も積もろうというもの……機会があればまみえられるよう、精進を励むか)
そんな秘めた想いと共に、グラスを誇り高く掲げたのだった。
フライング・システィーナ号に対して苦悩するノセヤにハンター達からのアドバイスは届いた。
それが今すぐに実行できるかどうかは別だが、運用について得る事があったのは確かな事であった。
おしまい。
●それは、微睡みの中で
鳳城 錬介(ka6053)は食事を終えて、展望デッキの長椅子に横たわっていた。
辺はすっかりと夜になり、港町の夜景が美しく水面に映る。
「『移動する転移門』はかなりの有効性……それを……もっと活かせれば……」
ノセヤにはその件について話し合った。
CAMやゴーレムを運用すれば、様々な状況の戦闘に対応できるし、上陸後の拠点作りもスムーズなはず。
グリフォンやワイバーンが配備された暁には、航空戦力の基地となれるので、空からの偵察や奇襲にも使えるはずだ。
「そして、マーグミュル島……」
眠くなってきたが、あの島の事を思い出す。
多くの犠牲を出して奪還した島は急ピッチで軍港を整備しているという。いずれは後方支援基地として大きな意味を持つはずだ。
「……マーグミュル島は縁がありませんでしたが、イスルダ島へは最後までついていきたい……ですね」
そんな事を口にしながら、錬介は眠気の中に意識を沈めた。
長椅子に横になってままこうして寝られるのは貸切ゆえの贅沢な事だろう。
それは夢なのか、あるいは記憶が呼んだものなのか……。
ハッキリとしない、もやが掛かったような光景が映し出される。
それは、港町沖でのフライング・システィーナ号に絡む依頼の事。
(あの時は、身体の中のものが口から出るかと思いましたね)
大型歪虚の攻撃を身体を張って受け止める自分。
何度も攻撃を受け止め、その都度、回復魔法で保つ。ギリギリの状態。
(無茶するからです)
声の主が誰かを錬介は分かった。
(……貴女に言われたくはありませんよ)
水の中に沈んでいく自分の腕を取るあの人の姿。
声が直接、頭の中に響いてくる。安堵したような優しい言葉で。
(それもそうですよね。とにかく、無事で良かったです――)
錬介は寝ぼけながら首を横に振った。
髪を撫でられて、ようやく、ぼんやりと違和感を感じる。
「ソルラさんと話がしたい気も……しないでも無いですが……眠いですね……」
「寝ぼけてます、錬介さん?」
その言葉でパッと意識を戻す錬介。
水の精霊の膝の上で寝ていたようだった。
「え……と、あれ……?」
「お気に召さなかったですか? こうすると気持ちが良いと聞いたのですが」
「それは……誰から教えて貰ったのですか、ソルラさん」
水の精霊は口元を指で抑えてこう返した。
「秘密です」
――と。
港を一望できる展望デッキで水の精霊――ソルラ――が、キヅカ・リク(ka0038)の声に振り返った。
「そういえば、ソルラとこうして確りと話すのって初めて、だね」
「それも……そうですね」
「僕にはあんま期待はしないでよ? 見て通り、ただの子供なんだからさ」
その言葉に、思いっきり、ソルラは首を傾げた。
とてもではないが、ただの子供には見えない。
装備の名前にもなるようなハンターなのだから、きっと、凄い人だと思った……口には出さないが。
「それでも……やれる事は当然やるさ……何れ来るだろう、決戦に向けてね」
「歪虚との戦い……ですか?」
そのソルラの返しにリクは頷いた。
王国西部の海に浮かぶイスルダ島は傲慢の歪虚によって奪われたままだ。
奪還するには、海上兵力の充実は欠かせない。フライング・システィーナ号も、その要の一つと言えるはずだし、多くの“想い”が成したあの船は、そう胸を張って応えていいはずだ。
「ノセヤさんも、やる気になってくれてるみたいだし」
リクは視線をドックの方角へと向ける。
ここからは直接、確認できないものの、今も突貫工事の音が風に乗って微かに聞こえる。
「……ノセヤさんも船も無事で良かったです」
「いやー、死ぬ思いをした甲斐があったってもんだよ」
苦笑を浮かべる。
何かズレていたら沈没していても可笑しくなかった戦いを切り抜けたのだ。
リクは水の精霊が出現してから、何かとフライング・システィーナ号に関わってきた。“想い”は繋いでいく――リクも、ハンター達もその決意は変わらない。
「それにしても、武器を装備しないなら……やっぱり、尖らせるべきは索敵。だと、思うけど……ソルラの……水の精霊の加護は頼れるの?」
水の精霊の加護があれば、長時間、水中には居られる。
そうすれば、水中からの奇襲への備えにもなるはずだ。
「……そうですね、難しいかもしれません」
「だったら、仕方ないかな」
ノセヤには幾つか提案をしてきた。早期警戒や法術刻印を応用した支援、防御機能等。
真剣にメモに残していた彼の姿が思い浮かぶ。今度のイスルダ島での戦いでは間に合わない可能性もあるが、きっと、リクが出したアイデアを無駄にはしないだろう。
「ただ、私の方で何か力になれる事がありそうな気もします」
「期待してますね」
「それでは、お互いに期待するという事で」
微笑を浮かべた水の精霊だった。
●精霊とマテリアルと
展望デッキから通路を通り、船内に戻ろうとしたソルラは、自分に向かって手を振る十色 エニア(ka0370)に気がついた。
「名前、決めたんだね、おめでとう。そして、改めて、よろしくね。ソルラさん」
「エニアさん、ありがとうございます。皆さんの“想い”の先、確りと見届けさせて貰います」
水の精霊が、死んだ騎士の姿を模した時、名前は決まらなかった。
紆余曲折の末、騎士の“想い”を繋いだ。それが、これから先、どう繋がれていくのか、この精霊は見届けるつもりなのだ。
その為に、“想い”の主の名を名乗る事を、水の精霊自身が選んだのだ。
「ノセヤさんの所に?」
エニアは縦に首を振った。
欄干に寄りかかるとソルラもそれに倣う。潮風が二人の髪を靡かせた。
ノセヤにはフライング・システィーナ号の運用について、アドバイスしてきた所だ。
上陸については彼も頭を悩ませている所であるらしく、何かの参考にはなった……そんな手応えだった。
「そうだ、ソルラさん。ちょっと、やってみたいのだけど、いいかな?」
「構いませんが?」
首を傾げたるソルラ。
失礼するねと言ってからエニアはソルラの手を取った。すべすべしているが体温は感じられず、ちょっとひんやりしているのは水の精霊だからだろうか。
精霊力を感じるその手を強く握ると体内のマテリアルを操作する。
「エニアさん?」
「……ダメね。部位が悪いのかな」
今度は額と額を合わせてみた。
これほど密着しているのなら、と。お互いの髪が風で絡み合う。
「何かのおまじないですか?」
水の精霊が模した騎士だったら、赤面していただろうが、ソルラは不思議な顔をしているだけだった。
これが性格の差というものなのだろうか。
「わたしのマテリアルを、ソルラさんに分ける事ができたら、応急手当て出来そうかなって」
「難しいと思いますよ」
「そうみたいね。先に言えば良かったかな」
親和性を高めても、そもそもマテリアルを融通するのは困難だろう。
「心配下さってありがとうございます」
「……ソルラさんの名前……きっと、わたし達が思ってる以上に重い時があると思う。そんな時は、どうぞ頼ってください」
「はい。エニアさん達も、私に遠慮なく頼って下さいね」
差し出された手をエニアは頷いてから、しっかりと握ったのだった。
●水の精霊と巫女と
流石に貸切にだけあって、他の人の姿が無く、静かなクルーズである。エントランスのふかふかのソファーに座っているソルラをUisca Amhran(ka0754)は見かけた。
ちょうど、ノセヤとの対局が終わった所で、疲れた事もあり、Uiscaはソルラの横に座る。対局は途中まで互角だったが、最終的には押し切られてしまった。もう……少しで勝てそうなのだが……。
「先の戦い、無事で良かったです……」
「Uiscaさんもお疲れ様でした」
微笑を浮かべて応えるソルラの姿に、Uiscaは胸を締め付けられる感じがした。
今でも、“あの戦い”に臨む時の、騎士の凛々しい姿が忘れられない。
「彼女は、多くの人に慕われ、皆に囲まれていましたけど……どこか、私達と距離を取っている感じがあったんですよ……」
その話が、誰を差しているのか、ソルラにはすぐに分かった。
自分が模している騎士の事だと。
「意識の片隅で、いつか突然死んでしまう事とか考えていて……私達を悲しませないように、と思っていたのかなって……」
概ね、その通りだったかもしれない。
騎士という立場もあるかもしれない。命を懸けて守るべき存在があったかもしれない。
戦場で散っていった多くの騎士と同様に、いつか、自分にもそんな日が来るのではないかと。
「だから、いつかその壁を壊せたら……と、思っていたんですけど……」
Uiscaはソルラの手を取り、言葉を続ける。
「だから、貴女は内で抱え込まない様にして下さいね」
「私は大丈夫ですよ……もし、力を使い切ったとしても、死ぬという訳ではありませんから」
その返事にUiscaは首を横に振った。
水の精霊は言った。精霊としての力を使い切った時、消滅するか大精霊の元へ帰ると。
それは、個としての存在が無くなる事を意味している。ただ、その結末は、人でいう所の死と変わらないのではないか。
「貴女は、消えてしまったら替えは効きません……その事、忘れないで下さいね」
万が一の時は、船内のマテリアルを使っても構わないとも思う。もっとも、マテリアルの属性の違いから『聖火の氷』を、水の精霊は使う事が出来ないのだが……。
懇願するようなUiscaの口調に、ソルラはもう一方の手を重ねる。
「ありがとうございます、Uiscaさん」
「私も巫女というお役目上、人と距離を取ってしまいがちなので似た者同士なのかも……しれません」
「Uiscaさんは、大丈夫そうに見えますけど」
眩しいものでも見るようにソルラの視線が向けられる。
その視線にUiscaは笑顔で応えた。
●スイーツとアドバイスと
メインダイニングでは、ノセヤとストゥール(ka3669)、そして、アルバ・ソル(ka4189)の三人が一つのテーブルに集まっていた。
内容は、フライング・システィーナ号の運用に関してではあるが、同時に小腹を満たす為のスイーツも並ぶ。
いずれもシェフの自信作ではあるのだが、今から始まるのは甘味会ではなく、真面目な話である。
「ノセヤ殿には、大分無沙汰をしている。覚えておられるかも定かではないが……」
夜空を思わすようなドレスに身を包み、いつもは纏めている長い髪を降ろしたストゥールがノセヤに言った。
彼女とノセヤの関わりは遡れば2年近くになる。茨小鬼との一連の戦い――北方動乱――での事だ。
「忘れる訳、ありませんよ。お久しぶりです。あの時と姿が違って驚いて、いますが……」
「こ……れも、戦場の一つのようなもの、だからな」
僅かに言葉を止めてストゥールは答えた。
そうでなければ、この姿でここには居られなかった……かもしれない。
「それもそうですね」
変わらず痩せた身体を揺らし、ノセヤは笑った。
そして、視線をアルバへと向ける。彼は机の上に並んだスイーツに手を伸ばす前に、目を閉じて黙していたようだった。
彼の幼馴染はアルテミス小隊の登録ハンターでもあり、また、彼自身も亡くなった騎士とは面識はあった。思い入れもあるというものだ。
「フライング・システィーナ号を活かせる手段を考えたい所だ」
ノセヤの視線の気配に気がつき、アルバは目を開くとノセヤに言った。
「その通りですね」
「軍船として運用していくにせよ、この船は固定武装がない上に外輪船。輸送手段としては優れているが戦闘では弱点となる」
アルバの説明通り、フライング・システィーナ号は巨大な水車を船尾に備えた外輪船である。
『聖火の氷』というマテリアル鉱石を刻令術の源として水車を回しているのだ。
「武装が無いという事は、積極的には前線には出まい」
甘さを控える代わりに柑橘類がアクセントとして添えられているスイーツにフォークの先を当てるストゥール。
同意するようにノセヤが言葉を続けた。
「基本的には、やはり、転移門を最大限に活かす方向ではあります」
「グリフォンの止まり木としてもそうだが物資、人員の輸送。移動司令部としての役割であろうか」
ハンターの中からも、対空能力の確保や帝国のグリフォン部隊やあるいは、ワイバーンなどの飛行能力を持つ幻獣の運用の話が挙がっている。
それらは、フライング・システィーナ号が計画される頃から、ノセヤの構想にあった所でもあるのだが……。
「洋上の港のようだな。武器を持たないが、積載に余裕があれば、戦闘で無い事にも役に立つというものだ」
「“洋上の港”……ですが、良い響きです」
戦闘に限らず、使い道があるというのは良い事である。
少ない海上兵力であるので、色々と融通が効くのは利点だろう。
アルバはショートケーキを一片、口へと運び、その甘味を堪能してから、のみ込んだ。
同時に、フライング・システィーナ号の勇姿を思い浮かべる。
「あの船を、旗艦として推すのは、どうだろう」
「王国海軍の、ですか?」
「誤解を恐れず言うなら、私は、常々、騎士に必要なのは見栄であると思っている」
例え戦に勝ったとしてもボロボロの姿のままで民の前に現れれば……頑張ったと思うかもしれないが、不安も覚えるのではないだろうか。
騎士の仕事は戦に勝つ事が目的ではない。戦に勝って、民に安心できる暮らしを示す事だ――とアルバは力説した。
「とても、興味深い話ですよ、アルバさん」
「身体を張るのは義務だ。その上で見栄を張る事こそ、本義ではないだろうか。貴族が着飾るのには意味があるという事だ」
フライング・システィーナ号はこれまで、幾つもの戦いを切り抜いてきた。
その事を鑑みれば、この船は『希望』という名の象徴になり得るはず。
「外観に更に手を加え、アピールしていく等、その方向はどうだろうか」
「それはいい。それならば、戦が終わった後も、名を残すことにもなろう」
アルバの提案にストゥールが続けた。
嬉しそうにノセヤはメモを残していく。今すぐという訳にはいかないが、今後の方向性の一つとして有意義だと判断した。
「今日は、良い話ができました。お二人も含め、ハンターの皆さんに感謝を」
グラスを掲げたノセヤ。
応えるようにアルバもグラスを持つと、掲げた。ストゥールもグラスに手を伸ばす。
(そろそろ、私も篭ってばかりでは、埃も積もろうというもの……機会があればまみえられるよう、精進を励むか)
そんな秘めた想いと共に、グラスを誇り高く掲げたのだった。
フライング・システィーナ号に対して苦悩するノセヤにハンター達からのアドバイスは届いた。
それが今すぐに実行できるかどうかは別だが、運用について得る事があったのは確かな事であった。
おしまい。
●それは、微睡みの中で
鳳城 錬介(ka6053)は食事を終えて、展望デッキの長椅子に横たわっていた。
辺はすっかりと夜になり、港町の夜景が美しく水面に映る。
「『移動する転移門』はかなりの有効性……それを……もっと活かせれば……」
ノセヤにはその件について話し合った。
CAMやゴーレムを運用すれば、様々な状況の戦闘に対応できるし、上陸後の拠点作りもスムーズなはず。
グリフォンやワイバーンが配備された暁には、航空戦力の基地となれるので、空からの偵察や奇襲にも使えるはずだ。
「そして、マーグミュル島……」
眠くなってきたが、あの島の事を思い出す。
多くの犠牲を出して奪還した島は急ピッチで軍港を整備しているという。いずれは後方支援基地として大きな意味を持つはずだ。
「……マーグミュル島は縁がありませんでしたが、イスルダ島へは最後までついていきたい……ですね」
そんな事を口にしながら、錬介は眠気の中に意識を沈めた。
長椅子に横になってままこうして寝られるのは貸切ゆえの贅沢な事だろう。
それは夢なのか、あるいは記憶が呼んだものなのか……。
ハッキリとしない、もやが掛かったような光景が映し出される。
それは、港町沖でのフライング・システィーナ号に絡む依頼の事。
(あの時は、身体の中のものが口から出るかと思いましたね)
大型歪虚の攻撃を身体を張って受け止める自分。
何度も攻撃を受け止め、その都度、回復魔法で保つ。ギリギリの状態。
(無茶するからです)
声の主が誰かを錬介は分かった。
(……貴女に言われたくはありませんよ)
水の中に沈んでいく自分の腕を取るあの人の姿。
声が直接、頭の中に響いてくる。安堵したような優しい言葉で。
(それもそうですよね。とにかく、無事で良かったです――)
錬介は寝ぼけながら首を横に振った。
髪を撫でられて、ようやく、ぼんやりと違和感を感じる。
「ソルラさんと話がしたい気も……しないでも無いですが……眠いですね……」
「寝ぼけてます、錬介さん?」
その言葉でパッと意識を戻す錬介。
水の精霊の膝の上で寝ていたようだった。
「え……と、あれ……?」
「お気に召さなかったですか? こうすると気持ちが良いと聞いたのですが」
「それは……誰から教えて貰ったのですか、ソルラさん」
水の精霊は口元を指で抑えてこう返した。
「秘密です」
――と。
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相談卓 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/07/17 20:16:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/17 16:04:28 |