ゲスト
(ka0000)
Drヤッフェの挑戦状
マスター:真太郎

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/08/10 09:00
- 完成日
- 2017/08/17 13:47
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その日、ハンターオフィスに奇妙な依頼状が届いた。
まず、届けられ方が異常だった。
小型の鳥型ゴーレムが窓から運んできたのだ。
しかもその鳥型ゴーレムは依頼状を運び終えた途端、その場で爆散するように消滅した。
オフィス内は一時騒然となり、ハンターが慎重に依頼状に近づき検分。
危険がないと判明してから、ようやく依頼状が読まれた。
『拝啓、人間諸君。
酷暑厳しい夏を如何お過ごしだろうか。
吾輩の名はDrヤッフェ。
錬金術師にして稀代のゴーレムマイスターである。
なぜゴレームマイスターなのかと言えば、吾輩のゴーレム理論は他の追随を許さぬ画期的なものであるからだ。
これが完成した暁には従来のゴーレムなど玩具となり下がるだろう。
だというのに王国の研究者共は我輩を認めようとはしなかった。
奴らは何も分かっていない。
そもそも(以下、王国研究者への恨みや罵倒や自身の研究の偉大さなどが書き連ねられた、ほぼ意味のない内容が続く)。
そのため吾輩は最強のゴーレムを作り上げる事を目指し、長年探求と研究を重ねてきた。
それこそ月日の流れを忘れるほど没頭して取り組んだ。
そうして吾輩は遂にオリジナルゴーレムを作り上げたのだ。
吾輩はこのオリジナルゴーレムこそが世界最強であると確信している。
だが何十年……いや何百年?
ともかく久方ぶりに世間に出てみると何という事や。吾輩の知らぬゴーレムが闊歩しておるではないか。
調べた所、CAMとかいう異世界製のゴーレムらしい。
この世のゴーレムの事なら全て知っている自負がある。
だが異世界製となると話は違う。
非常に興味深い。
いったいどういう機構で動いているのか?
素材は?
運動性能は?
パワーは?
操縦系統は?
見たい。
見たい見たい見たい。
是非ともこの目で見てみたい。
そして知りたい。
そのCAMとやらの性能を。
そこでお願いする。
吾輩の指定する場所と時間にCAMを持ってきてくれないだろうか。
そこで吾輩のオリジナルゴーレムと戦って欲しい。
CAMとは戦闘用なのだろう。
吾輩のオリジナルゴレームは強いぞ。
決して退屈はさせぬ。
我こそはという乗り手をお持ちしている』
依頼状はそう締めくくられていた。
オフィスの職員は頭を悩ませた。
依頼状の内容もさる事ながら、依頼主の素性も怪しかったからだ。
依頼主は人間ではない可能性が高い。
依頼料が払われる可能性も薄い。
職員は悩んだ。
悩んで悩んで悩んだ結果。
判断は全てハンターに任せる事にして、正式な依頼として公開したのだった。
まず、届けられ方が異常だった。
小型の鳥型ゴーレムが窓から運んできたのだ。
しかもその鳥型ゴーレムは依頼状を運び終えた途端、その場で爆散するように消滅した。
オフィス内は一時騒然となり、ハンターが慎重に依頼状に近づき検分。
危険がないと判明してから、ようやく依頼状が読まれた。
『拝啓、人間諸君。
酷暑厳しい夏を如何お過ごしだろうか。
吾輩の名はDrヤッフェ。
錬金術師にして稀代のゴーレムマイスターである。
なぜゴレームマイスターなのかと言えば、吾輩のゴーレム理論は他の追随を許さぬ画期的なものであるからだ。
これが完成した暁には従来のゴーレムなど玩具となり下がるだろう。
だというのに王国の研究者共は我輩を認めようとはしなかった。
奴らは何も分かっていない。
そもそも(以下、王国研究者への恨みや罵倒や自身の研究の偉大さなどが書き連ねられた、ほぼ意味のない内容が続く)。
そのため吾輩は最強のゴーレムを作り上げる事を目指し、長年探求と研究を重ねてきた。
それこそ月日の流れを忘れるほど没頭して取り組んだ。
そうして吾輩は遂にオリジナルゴーレムを作り上げたのだ。
吾輩はこのオリジナルゴーレムこそが世界最強であると確信している。
だが何十年……いや何百年?
ともかく久方ぶりに世間に出てみると何という事や。吾輩の知らぬゴーレムが闊歩しておるではないか。
調べた所、CAMとかいう異世界製のゴーレムらしい。
この世のゴーレムの事なら全て知っている自負がある。
だが異世界製となると話は違う。
非常に興味深い。
いったいどういう機構で動いているのか?
素材は?
運動性能は?
パワーは?
操縦系統は?
見たい。
見たい見たい見たい。
是非ともこの目で見てみたい。
そして知りたい。
そのCAMとやらの性能を。
そこでお願いする。
吾輩の指定する場所と時間にCAMを持ってきてくれないだろうか。
そこで吾輩のオリジナルゴーレムと戦って欲しい。
CAMとは戦闘用なのだろう。
吾輩のオリジナルゴレームは強いぞ。
決して退屈はさせぬ。
我こそはという乗り手をお持ちしている』
依頼状はそう締めくくられていた。
オフィスの職員は頭を悩ませた。
依頼状の内容もさる事ながら、依頼主の素性も怪しかったからだ。
依頼主は人間ではない可能性が高い。
依頼料が払われる可能性も薄い。
職員は悩んだ。
悩んで悩んで悩んだ結果。
判断は全てハンターに任せる事にして、正式な依頼として公開したのだった。
リプレイ本文
自身の愛機に乗ったハンター6人が指定された場所に来ると、Drヤッフェが6体のゴーレムを連れて待っていた。
「よく来てくれた諸君、感謝する。おぉ、それが異世界リアルブルーで作られたCAMとかいう代物か。なるほど見事な造形だ、素晴らしい!!」
ヤッフェは喜びを露わにして歓待してくれた。
魔導アーマーはリアルブルーの技術が使われているだけでクリムゾンウェスト製なのだが、ヤッフェはそこまでは知らないらしい。
「色々な種類とサイズがあるのだな。翼を持つ機体もあるが飛べるのか? いや、あのサイズでは滑空すらできまい。では放熱板か、それとも……」
そして興味津々な様子で観察を始める。
狭霧 雷(ka5296)も魔導型デュミナス『ファフニール』のモニターを通して相手のゴーレムを観察する。
一見、やや細身なだけの普通のゴーレムである。
「『ぼくのかんがえた、さいきょうのごーれむ』でしょうか?」
「依頼状の文面からは自分のゴーレム技術によほどの自信があるようじゃったがの」
魔導型ドミニオン『ハリケーン・バウ・C』に乗るミグ・ロマイヤー(ka0665)は自身もCAMについては一家言あるほどの技術屋で、依頼状の文面に興味を抱いたためこの場に来ていた。
「腕試しのつもりなんですかね」
R7エクスシア『リインフォース』に乗る夕凪 沙良(ka5139)が自分の愛機に注目しているヤッフェをモニター越しに見る。
ヤッフェは新しいオモチャを目にした子供のように目を輝かせ、興奮した様子で見入っており、敵意や害意などは伺えない。
「単なる腕試しならプラヴァーの試運転に丁度良いですね」
仕事の幅を広げるために調達した魔導アーマープラヴァー『特別仕様「三毛丸といっしょ」』を試すために参加した保・はじめ(ka5800)が機体を立ち上げる。
「よいぞ! 吾輩のオリジナルゴーレムと戦うに相応しい。さぁ、その性能を存分に見せてくれたまえ!」
ヤッフェの声に応じて6体のゴーレムが戦闘態勢をとった。
「つまりアッチ側が実戦データとウチラの機体のデータ取りたいから戦えってこと? これってボクらのメリットないじゃん」
『ヘイムダル GーCustom』に乗る美亜・エルミナール(ka4055)がその事に気づく。
「どうにも胡散臭さしか感じない依頼だが、放置した事で余分な厄介事が降り懸かる可能性も捨てきれない。ここは素直に戦うのが妥当だろう」
魔導型デュミナス『Falke』に乗るアバルト・ジンツァー(ka0895)が美亜を宥める。
「まあこっちは依頼である以上はやるけど……」
「自分も尽力させて貰おう」
美亜とアバルトはそれぞれ愛機に戦闘態勢をとらせた。
横一列に並んだ6体のゴーレムが弩を構えつつ前進を始める。
「どれから狙うかなー……よしゃ、ど真ん中を叩いて擬似的に分断させていこう」
対して美亜は地面に直置きした30mmガトリングガンを敵陣中央に向けて乱射。
狭霧も中央にいるゴーレム(G3)をスナイパーライフル「クルーアル」で狙い撃つ。
思惑通りゴーレムは火線を避けて左右に分かれてくれた。
「逃げる奴はゴーレムだ! 逃げない奴はよく訓練されたゴーレムだ!!」
美亜はそのまま1体のゴーレム(G4)に銃火を集中させ、銃身が焼けるのも構わず撃ちまくる。
アバルトは猛烈な銃撃に追われて走るG4に200mm4連カノン砲を向け、トリガーを引いた。
コクピットに不気味な発射音と反動のショックを残して4発の砲弾が放たれる。
しかしG4は盾で受け止め、更に後方に跳躍する事で着弾の衝撃を逃げす機動まで行ってみせた。
「ほぅ、予想以上の動きだ」
アバルトが素直に感心する。
「ハハハッ! どうだ吾輩のオリジナルゴーレムは? 従来のゴーレムでは到底なしえない機動性であろう。それは水銀を全身に血液のように流動させて飛躍的に機動性を高めた『水銀流動機構』の成せる技だ! 更に吾輩が独自のアレンジを行った刻令術によって従来の刻令術より遥かに複雑な動作も行う事ができるのだっ!!」
ヤッフェが聞いてもいないのに得意満面な顔で解説してくれた。
「だが動きは止まった!!」
美亜が更にガトリングガンで銃弾の雨を浴びせかけ、アバルトも砲撃を加えた。
G4が盾に隠れるように身を縮める。
銃弾はそれでほとんど防げた。
だが砲弾までは防げず、衝撃で吹っ飛ばされて地面を転がる。
しかしすぐに受け身を取って膝立ちになる。
「トドメだ!」
完全に起き上がる前に美亜が照準を合わせた。
だが不意にコクピット内に接近警報が鳴る。
見るとG6がすぐ近くまで迫っていた。
ガトリングガンの銃口をそちらに向け直そうとしたが間に合いそうにない。
「ちぃ!」
美亜は振り向く勢いに乗せてガトリングガンをG6に投げつけた。
G6は盾で受けて弾き飛ばす。
だがその間に美亜は斬魔刀「祢々切丸」を抜いて構える。
「さて、高価なデバイス2個も積んでるんだし、接近戦の本領を見せたらあ」
G6が槍を突き出してくる。
斬魔刀の刀身で受けて逸らす。
だが反らしきれず槍先が肩に当たり、肩部装甲が弾け飛んだ。
構わず前に出て懐に飛び込むと、膝を狙って斬魔刀を薙ぎ払う。
しかしG6は足を引いて避けると同時に体を半回転させ、美亜のヘイムダルの側面に回り込む。
そして剣を抜き、大上段から振り下ろしてくる。
美亜はテールスタビライザーを大きく振り、その反動で前に飛び出すようにして避けた。
そのまま前回り受け身ですぐに体勢を立て直す。
しかしG6はすでに追って来ており、剣が振り下ろされてくる。
咄嗟に左腕を上げてガード。刀身が腕に喰い込んだ。
だが刀身はすぐには抜けず、G6の動きが止まる。
その隙を逃さず、装甲に覆われていない下っ腹目掛けて突きを叩き込む。
「腕を切らせて腹を断つ!」
刃が腹を貫き、銀色の体液が吹き出す。
おそらくヤッフェが弁説していた流動機構の水銀だろう。
G6がヘイムダルを盾で殴打。
ガツンと硬い衝撃音が鳴り、ヘイムダルがよろけて腹から斬魔刀が抜ける。
美亜は殴打された衝撃を利用して後方に跳躍して距離を取った。
「仕切り直しだ」
G6は盾を前面に翳しながら距離を詰めてくる。
美亜は斬魔刀を大上段に構えた。
「ジゲンリュウとかタイシャリュウのプログラムがありゃもっと様になるんだろうなあ。でもこの子じゃ覚えられないだろうなあ……」
それでも大上段のままG6との距離を詰め、間合いに入った瞬間、斬魔刀を振り下ろした。
斬撃は盾で防がれた。
だが構わず全力で振り抜き、強引に盾を押し下げる。
盾が下がってG6の胴体が空く。
G6は剣で突いてきた。
剣先がヘイムダルの胴体に突き刺さる。
だが美亜もカウンターで左拳を放つ。
美亜のヘイムダルはゴリラ型の四足歩行タイプに改造したため、通常よりも腕が長い。
そのため拳はG6の頭部まで楽々届き、兜状の装甲をひしゃげさせ、体が斜めに傾ぐ。
美亜はすかさず斬魔刀を再び大上段に構えた。
「チェストーっ!!」
掛け声と共に振り下ろす。
G6は盾を掲げようとしたが間に合わない。
斬魔刀の刃がG6の肩口に喰い込み、そのまま一気に股まで斬り裂いた。
この一撃が致命傷となったのか、G6は徐々に塵と化して消滅した。
「コイツ、歪虚だったのかっ!!」
一方、G4は膝立ちのまま弩を発射。砲撃直前だったアバルトのデュミナスの胸部装甲に矢が突き立つ。
アバルトは構わずトリガーを引く。
しかしG4は膝立ちの状態から横に飛び退って回避した。
「む……矢の衝撃で照準が僅かにズレたか」
すかさず再照準する。
G4は遠距離では分が悪いと判断したのか距離を詰めてきた。
その速度と進路を読んで偏差射撃で再砲撃。
G4は再びで盾で受けたが、今までの攻撃の負荷のためか盾は砕け、左腕もズタズタになる。
しかしG4は速度を落とさず迫ってくる。
「カノンではもう近いか……」
距離的にカノンより有効な30mmアサルトライフルを抜いて構え、素早く狙いをつけてトリガーを引く。
砲撃よりは軽い3点バーストの衝撃がコクピットを微かに振動させ、マズルフラッシュを残して銃弾が飛ぶ。
胸部に命中。
体表を覆っていた装甲が弾け、胸部も破砕し、風穴が空く。
胸の傷から銀色の体液が吹き出し、G4の体がグラリと揺れて前のめりに倒れた。
それでもまだギクシャクとした動きで立ち上がろうとするが、目に見えて動きが鈍い。
もう戦闘力などないに等しいだろうが、それでもなお戦おうとしている。
そうプログラムされているからだ。
「意志などないのだろうが、そのままでは哀れだからな」
アバルトが憐憫を込めて頭を撃ち抜く。
それでG4の動きは完全に止まり、そのまま塵となって消えた。
「これは……」
その光景を見たアバルトの表情が曇る。
狭霧は最初に狙ったG3を撃ち続けていた。
「さて、いかほどの性能でしょうか?」
データ採取をメインとするため、あえてパッシブスキルを使わずに撃つ。
G3は盾で防ぎつつ距離を詰めようとしてくるが、狭霧は常に一定の距離を開けて攻撃する。
やがてG3は接近を諦め、弩での攻撃に切り替えた。
放たれてきた矢は脚部に向かってくる。
(足止めのつもりかな)
シールド「ストルクトゥーラ」を足元まで下げて防ぎ、スナイパーライフルで反撃。
だがG3も盾で弾き、狭霧のデュミナスの側面に回り込もうとする。
させじと向きを変えてG3を正面に捉えながら、3発撃ったスナイパーライフルの弾倉をリロードする。
狭霧とG3の戦いは常に動き合って相手の隙を伺いつつ射撃する様相を呈した。
「機動性はCAMに匹敵しますね。射撃の狙いは常に正確。なるほど、最強と豪語するだけはありますね。しかし」
頭部に飛来してきた矢をシールドで容易く弾く。
「狙いが正確すぎて読みやすい。それに攻撃パターンも単調です」
ここまでの戦闘で狭霧はG3の性能をある程度見抜いていた。
そして3発撃ったスナイパーライフルをリロードしようとした時、G3が猛然と接近してきた。
「やはりそうきましたか」
だが狭霧は冷静だ。
なぜならスナイパーライフル「クルーアル」の装弾数は6発で、3発でリロードしていたのは相手に誤認させるためだ。
狭霧はリロードを中断するとデュミナスの制御機構に『高速演算』を走らせつつG3の左肩関節を狙い撃った。
音速で飛来したライフル弾は左肩を覆う装甲を避けるように着弾し、貫通。
更に右脚部も狙い撃つ。
G3は盾で防ごうとしたが、左腕から最も遠い右脚へのガードが間にあわず、ライフル弾は右脚も貫通した。
「左腕の動きが鈍くなりましたね。内部構造も人間と似通っているのでしょうか」
左肩と右脚をやられたG3はその場に屈み込んで体を小さく縮め、盾で体全体を守る体勢を取りつつ弩を放ってきた。
「固定砲台化しましたか、それなら」
狭霧は矢が放たれた瞬間に弩を狙撃。弩を破砕した。
「これならどうします?」
G3は亀のように身を縮めたまま出来る限り速さで接近を試みてきた。
「それしか手はありませんよね。では折角ですからアレを試しましょうか」
狭霧は武器をランスカノン「メテオール」に持ち替えるとG3を迎え討った。
G3はデュミナスを間合いに捕らえた途端、槍で突いてきた。
狭霧はランスカノンで受け流しつつカウンターを突き入れた。
槍とランスの間で擦過音が鳴りつつ火花が散り、ランスの槍先がG3の胸部に突き刺さる。
狭霧はトリガーも引き、ほぼ0距離からカノン砲を発射。
大音響が響き、ヘッドマウントディスプレイが一瞬、爆発の閃光に包まれる。
すぐに回復したディスプレイに映ったのは胸部を破砕されて頭部や腕がバラバラになったG3の姿だった。
「折角ですし回収して帰りましょうか。今後の対策になるでしょうからね。この手の輩は諦めが悪いですから」
しかし拾ったG3の頭部はすぐに塵となって消えた。
ミグはまず相手火力を知るため敢えて放たれてきた弩の矢を胸部装甲で受けた。
カキンと音を立てて矢は弾かれ、ポトリと地面に落ちる。
装甲には傷一つない。
「なんじゃこの程度か。ならば次はこちらの番じゃな」
ドミニオンの肩口に搭載されたミサイルランチャー「レプリカント」を射出口を開放。
ズラリと並んだ10発のミサイルを一斉発射した。
噴炎の尾を引きつつ飛翔したミサイルはG5に殺到し爆発。G5が爆煙に包まれた。
しかし、もうもうと煙る爆煙の中から盾を翳したG5が無傷で飛び出してくる。
「耐えた? いや、避けおったのか。小癪な奴め。次はコイツじゃ!」
続いてミサイルランチャー「ガダブタフリール」を射出口を開放して発射。
今度は8発のミサイルがG5に殺到し、再び爆煙に包まれる。
ヘッドマウントディスプレイに映る爆煙を注視していると、中から走り出してくるものが見えた。G5だ。
しかし今度は体のアチコチを損傷している。
どうやら盾で防いだらしいが、耐えきれなかったようである。
「次弾装填」
ミグは新たなミサイルを再装填したが、その間にG5に間合いを詰められ、槍で突かれた。
カキンと槍先が装甲で弾かれる。
「無駄じゃ! このハリケーン・バウ・Cは鉄壁。その程度の攻撃では傷一つ付かぬ! そして接近された時の対策もちゃんとしておるわ!」
ミグはアーマーペンチ「オリゾン」を構えるとG5の脚を狙って突き出した。
しかしG5は跳躍して避けるとアーマーペンチを足場にして更に跳躍。
剣を大上段に構え、落下の勢いを上乗せした一撃をドミニオンに叩き込んだ。
カキンと刃が装甲で止まる。やはり傷一つ付いていない。
「無駄じゃと言うたじゃろうが」
ミグはアーマーペンチを薙ぎ払ってG5を殴打した。
G5は盾で受けたが衝撃で地面に叩きつけられる。
その隙きを逃さず倒れたG5の脚をアーマーペンチで捉える。
アーマーペンチの圧力によって脚がひしゃげ、やがて寸断された。
「これでもう素早い動きはできまい」
続いて首を狙ってアーマーペンチを突き出したが、G5は地面を転がって避けた。
そして盾を捨てると四つん這いになって這うように移動を始める。
「なんと、まるで猿じゃな」
四つん這いでも意外なスピードを見せたG5はドミニオンに取り付き、頭部をナックルガードのトゲで殴打した。
ヘッドマウントディスプレイに一瞬ノイズが走る。
だがそれだけだった。
ミグはG5の腕を掴んで地面に叩きつけると、首をアーマーペンチで捉えた。
「これで終わりじゃ」
首が切断され、G5の動きが止まる。
そして首を失ったG5の体は徐々に塵と化して消滅していった。
「歪虚だったとはのう。という事は作り主も歪虚じゃな。やれやれ……」
ミグは相手が歪虚と知って露骨に落胆した。
保は美亜が分断した敵陣の片側に陽動として突貫した。
G3は狭霧の狙撃に釣られて離れたため、残りのG1とG2に魔導銃「魔弾」を放つ。
移動しながら撃ったためかG1にしか当たらなかったがG2の気も引けたらしく、2機から弩の反撃が飛んでくる。
保は『スペルスラスター』を機動。脚部のローラーが猛回転して速度がグンと増す。
更にギリギリまで身を低くながらジグザグに走る。
1本目は保の頭上スレスレを通過。
だが2本目は直撃コースだ。
咄嗟に三尖刀の幅広い刀身が眼前に翳す。
矢は刀身に当たって軌道が僅かにずれ、腕部装甲が破損する。
損傷の具合を見ると、腕部装甲にペイントしたエンブレムも削れていた。
「半日かけてペイントした三毛丸エンブレムがぁーー!!」
そのエンブレムは、相手からは邪険に扱われているが自身は愛しているユグディラの三毛丸を象った自信作だった。
思わず涙が出そうになったが、今は2体のゴーレムの相手に集中しなければならず、堪えた。
自分に気を引き続けるために更に接近すると、ゴーレムは武器を槍に持ち替えて向かってきた。
2体同時に攻撃されないため、G1の後ろにG2が入るように『スペルスラスター』で側面に回り込む。
G2はG1迂回するように進み、G1は真っ直ぐ突っ込んできて槍で突いてくる。
槍先を三尖刀で受けた。
しかしG1の方がパワーが上なのか三尖刀が弾かれる。
咄嗟に身を捻ったが槍先はプラヴァー胴体脇に突き刺さった。
プラヴァーはマスタースレーブに近い機構のため胴体装甲も薄く、槍先はコクピットにまで達している。
幸い保には当たらなかったが、計器が幾つか損傷した。
更に、コクピット内に張り付けていた三毛丸の写真が幾つか破れ、何枚か剥がれて散っていった。
「ああっ、三毛丸ーーっ!!」
散ってゆく三毛丸の写真を目にした保は思わず絶叫し、ちょっと涙が溢れた。
「よくも三毛丸をっ!!」
三毛丸(の写真)を殺ったG1を敵意を持って睨みつける。
だがその間にG2が側面に回り込んできた。
G2が槍を振りかぶるが、プラヴァーはまだ槍が刺さっていて満足に動けない。
「その隙……逃しませんよ!」
トランシーバーから夕凪の声が響き、G2の背後で光弾が煌めく。
その直後、G2の背中にマテリアル弾が直撃した。
保がゴーレムの気を引いている隙に背後に回り込んだ夕凪がマテリアルライフル「セークールス」を放ったのだ。
夕凪は更にG1の右腕もマテリアルライフルで狙撃。右腕が半ばで断たれて保のプラヴァーが自由の身になる。
保は機体から槍を引き抜くと、G1に三尖刀で斬りかかった。
G1が盾を掲げる。
保は盾に当たる直前で剣を止めて『スペルスラスター』を機動。
機体を斜めにしながらローラーで滑るように進み、機体の小ささも利用して盾の下をギリギリすり抜け、G1を足払いを仕掛けた。
バランスを崩したG1が地面に這いつくばるような体勢になる。
保は『スペルスラスター』でG1の右側に回り込み、三尖刀を振り上げた。
「三毛丸の仇ーっ!!」
三毛丸は死んでないどころか自室で暢気にゴロ寝してるだろうが、保の怒りの一撃がG1の首を斬り落とした。
G2は振り返ると夕凪のR7に弩を放った。
夕凪は『アクティブスラスター』を吹かして容易く避ける。
「そんな単調な動きではこの子を捉えるなんて遠い話ですね」
そのまま『アクティブスラスター』の推力でG2の脇を一気に駆け抜け急反転。
こちらに振り向こうとしているG2をマテリアルライフルで狙撃。
マテリアル弾は盾に命中したが貫通。G2の脇腹も損傷させる。
夕凪が後ろに退がってG2から距離を取っていると、不意にトランシーバーでゴーレムが歪虚だと伝えられた。
(歪虚……ではDrヤッフェも?)
夕凪はヤッフェの反応を見ようと考え、『アクティブスラスター』でヤッフェとG2が一直線に並ぶ位置へ移動。
G2を狙った流れ弾に見せかけてヤッフェにマテリアルライフルを放った。
直撃した。
しかしまだ生きているようだ。
(耐えましたか)
リアクションは特にない。
どうやら流れ弾だと思ってくれたらしい。
それを見届けた夕凪は意識をG2に戻す。
「そろそろ決めますか」
『アクティブスラスター』を発動。大推力で一気にG2に迫る。
G2は弩を構えたが撃ってこない。
これまで横をすり抜けてからの反転射撃を繰り返してきた。
恐らくG2は今回もそうだと判断し、すり抜け後に自身もすぐ反転して撃つつもりなのだろう。
「その読みが命取りです」
夕凪はスラスターを軽く吹かして真っ直ぐ突っ込む軌道に修正。
G2も軌道が変わった事に気づいたが、もう遅い。
接敵直前に抜いた斬機刀「建御雷」の刃が煌めき、一閃。
盾の防御すら間に合わず、G2は胴体を両断された。
上下に分かたれたG2の体は歪虚の定めに従って塵と化し、風に吹かれて消えた。
少し時は巻戻り、夕凪がヤッフェを撃った時。
「凄い! 凄いぞリアルブルーの技術力!!」
ヤッフェは興奮した様子で歓声を上げていた。
なぜなら最強と信じたゴーレムにまだ強くなる余地があると分かったからだ。
この戦闘から様々なインスピレーションを受け、脳内ではゴーレムの更なる強化案が幾つも浮かんでいた。
それらの強化を施したゴーレムとも人間達はまた戦ってくれる事だろう。
なぜなら様々にカスタマイズされた機体を見ていれば、人間達も自分の愛機に夢中だと分かるからだ。
そんな愛機に乗って戦いたくない訳がない。
強化したゴーレムがまた負けたとしても、また更なる強化を施して挑めばいい。
そうして挑み続けたゴーレムが勝利した時こそ、自分が夢見た最強のゴーレムが完成するに違いない。
そう確信したヤッフェは言い知れぬ高揚感に包まれていた。
そこに夕凪の放ったマテリアル弾が飛来してくる。
「っ!?」
傍らにいた甲冑のマグネマンがバラバラに分解し、ヤッフェの体を覆った。
だがマグネマンはマテリアルの高エネルギーに耐えきれず消滅し、余波がヤッフェを襲う。
「ぐはっ! な……流れ弾か? マグネマンがなければ即死だったな……」
全身がボロボロになっていたが安堵したヤッフェを尻目に何度はミサイルが飛来してきた。
流れ弾ではない。
ミグが殺意を持って撃ったものだ。
「な、何故だ……」
ヤッフェは何故自分が殺されようとしているのか分からなかった。
人間の流儀に従って正式な手続きを踏んだ依頼者の自分が問答無用で殺されるとは思ってもいなかったのだ。
ミサイルが着弾。
爆発と衝撃がヤッフェの体を粉砕する。
生前も、不老を得るため歪虚となった後も、ただひたすらゴーレムを研究し続けてきたヤッフェの夢は、道半ばで潰えたのだった。
「殺したのか。歪虚とはいえ依頼人だったんだがな……」
アバルトが複雑そうな顔でヤッフェのいた場所を見る。
(あの甲冑、マグネマンのようでした。ヤッフェはクススと何か繋がりがったのかも……)
保は気になる事があったが、それを聞く事はもうできなくなった。
「ま、ある意味情報漏えいだったし、これでよかったんじゃねーか」
美亜がそう締めくくる。
こうして依頼は、ゴーレムと戦うという目的は果たしたものの、依頼人は死亡するという形で幕を下ろしたのだった。
「よく来てくれた諸君、感謝する。おぉ、それが異世界リアルブルーで作られたCAMとかいう代物か。なるほど見事な造形だ、素晴らしい!!」
ヤッフェは喜びを露わにして歓待してくれた。
魔導アーマーはリアルブルーの技術が使われているだけでクリムゾンウェスト製なのだが、ヤッフェはそこまでは知らないらしい。
「色々な種類とサイズがあるのだな。翼を持つ機体もあるが飛べるのか? いや、あのサイズでは滑空すらできまい。では放熱板か、それとも……」
そして興味津々な様子で観察を始める。
狭霧 雷(ka5296)も魔導型デュミナス『ファフニール』のモニターを通して相手のゴーレムを観察する。
一見、やや細身なだけの普通のゴーレムである。
「『ぼくのかんがえた、さいきょうのごーれむ』でしょうか?」
「依頼状の文面からは自分のゴーレム技術によほどの自信があるようじゃったがの」
魔導型ドミニオン『ハリケーン・バウ・C』に乗るミグ・ロマイヤー(ka0665)は自身もCAMについては一家言あるほどの技術屋で、依頼状の文面に興味を抱いたためこの場に来ていた。
「腕試しのつもりなんですかね」
R7エクスシア『リインフォース』に乗る夕凪 沙良(ka5139)が自分の愛機に注目しているヤッフェをモニター越しに見る。
ヤッフェは新しいオモチャを目にした子供のように目を輝かせ、興奮した様子で見入っており、敵意や害意などは伺えない。
「単なる腕試しならプラヴァーの試運転に丁度良いですね」
仕事の幅を広げるために調達した魔導アーマープラヴァー『特別仕様「三毛丸といっしょ」』を試すために参加した保・はじめ(ka5800)が機体を立ち上げる。
「よいぞ! 吾輩のオリジナルゴーレムと戦うに相応しい。さぁ、その性能を存分に見せてくれたまえ!」
ヤッフェの声に応じて6体のゴーレムが戦闘態勢をとった。
「つまりアッチ側が実戦データとウチラの機体のデータ取りたいから戦えってこと? これってボクらのメリットないじゃん」
『ヘイムダル GーCustom』に乗る美亜・エルミナール(ka4055)がその事に気づく。
「どうにも胡散臭さしか感じない依頼だが、放置した事で余分な厄介事が降り懸かる可能性も捨てきれない。ここは素直に戦うのが妥当だろう」
魔導型デュミナス『Falke』に乗るアバルト・ジンツァー(ka0895)が美亜を宥める。
「まあこっちは依頼である以上はやるけど……」
「自分も尽力させて貰おう」
美亜とアバルトはそれぞれ愛機に戦闘態勢をとらせた。
横一列に並んだ6体のゴーレムが弩を構えつつ前進を始める。
「どれから狙うかなー……よしゃ、ど真ん中を叩いて擬似的に分断させていこう」
対して美亜は地面に直置きした30mmガトリングガンを敵陣中央に向けて乱射。
狭霧も中央にいるゴーレム(G3)をスナイパーライフル「クルーアル」で狙い撃つ。
思惑通りゴーレムは火線を避けて左右に分かれてくれた。
「逃げる奴はゴーレムだ! 逃げない奴はよく訓練されたゴーレムだ!!」
美亜はそのまま1体のゴーレム(G4)に銃火を集中させ、銃身が焼けるのも構わず撃ちまくる。
アバルトは猛烈な銃撃に追われて走るG4に200mm4連カノン砲を向け、トリガーを引いた。
コクピットに不気味な発射音と反動のショックを残して4発の砲弾が放たれる。
しかしG4は盾で受け止め、更に後方に跳躍する事で着弾の衝撃を逃げす機動まで行ってみせた。
「ほぅ、予想以上の動きだ」
アバルトが素直に感心する。
「ハハハッ! どうだ吾輩のオリジナルゴーレムは? 従来のゴーレムでは到底なしえない機動性であろう。それは水銀を全身に血液のように流動させて飛躍的に機動性を高めた『水銀流動機構』の成せる技だ! 更に吾輩が独自のアレンジを行った刻令術によって従来の刻令術より遥かに複雑な動作も行う事ができるのだっ!!」
ヤッフェが聞いてもいないのに得意満面な顔で解説してくれた。
「だが動きは止まった!!」
美亜が更にガトリングガンで銃弾の雨を浴びせかけ、アバルトも砲撃を加えた。
G4が盾に隠れるように身を縮める。
銃弾はそれでほとんど防げた。
だが砲弾までは防げず、衝撃で吹っ飛ばされて地面を転がる。
しかしすぐに受け身を取って膝立ちになる。
「トドメだ!」
完全に起き上がる前に美亜が照準を合わせた。
だが不意にコクピット内に接近警報が鳴る。
見るとG6がすぐ近くまで迫っていた。
ガトリングガンの銃口をそちらに向け直そうとしたが間に合いそうにない。
「ちぃ!」
美亜は振り向く勢いに乗せてガトリングガンをG6に投げつけた。
G6は盾で受けて弾き飛ばす。
だがその間に美亜は斬魔刀「祢々切丸」を抜いて構える。
「さて、高価なデバイス2個も積んでるんだし、接近戦の本領を見せたらあ」
G6が槍を突き出してくる。
斬魔刀の刀身で受けて逸らす。
だが反らしきれず槍先が肩に当たり、肩部装甲が弾け飛んだ。
構わず前に出て懐に飛び込むと、膝を狙って斬魔刀を薙ぎ払う。
しかしG6は足を引いて避けると同時に体を半回転させ、美亜のヘイムダルの側面に回り込む。
そして剣を抜き、大上段から振り下ろしてくる。
美亜はテールスタビライザーを大きく振り、その反動で前に飛び出すようにして避けた。
そのまま前回り受け身ですぐに体勢を立て直す。
しかしG6はすでに追って来ており、剣が振り下ろされてくる。
咄嗟に左腕を上げてガード。刀身が腕に喰い込んだ。
だが刀身はすぐには抜けず、G6の動きが止まる。
その隙を逃さず、装甲に覆われていない下っ腹目掛けて突きを叩き込む。
「腕を切らせて腹を断つ!」
刃が腹を貫き、銀色の体液が吹き出す。
おそらくヤッフェが弁説していた流動機構の水銀だろう。
G6がヘイムダルを盾で殴打。
ガツンと硬い衝撃音が鳴り、ヘイムダルがよろけて腹から斬魔刀が抜ける。
美亜は殴打された衝撃を利用して後方に跳躍して距離を取った。
「仕切り直しだ」
G6は盾を前面に翳しながら距離を詰めてくる。
美亜は斬魔刀を大上段に構えた。
「ジゲンリュウとかタイシャリュウのプログラムがありゃもっと様になるんだろうなあ。でもこの子じゃ覚えられないだろうなあ……」
それでも大上段のままG6との距離を詰め、間合いに入った瞬間、斬魔刀を振り下ろした。
斬撃は盾で防がれた。
だが構わず全力で振り抜き、強引に盾を押し下げる。
盾が下がってG6の胴体が空く。
G6は剣で突いてきた。
剣先がヘイムダルの胴体に突き刺さる。
だが美亜もカウンターで左拳を放つ。
美亜のヘイムダルはゴリラ型の四足歩行タイプに改造したため、通常よりも腕が長い。
そのため拳はG6の頭部まで楽々届き、兜状の装甲をひしゃげさせ、体が斜めに傾ぐ。
美亜はすかさず斬魔刀を再び大上段に構えた。
「チェストーっ!!」
掛け声と共に振り下ろす。
G6は盾を掲げようとしたが間に合わない。
斬魔刀の刃がG6の肩口に喰い込み、そのまま一気に股まで斬り裂いた。
この一撃が致命傷となったのか、G6は徐々に塵と化して消滅した。
「コイツ、歪虚だったのかっ!!」
一方、G4は膝立ちのまま弩を発射。砲撃直前だったアバルトのデュミナスの胸部装甲に矢が突き立つ。
アバルトは構わずトリガーを引く。
しかしG4は膝立ちの状態から横に飛び退って回避した。
「む……矢の衝撃で照準が僅かにズレたか」
すかさず再照準する。
G4は遠距離では分が悪いと判断したのか距離を詰めてきた。
その速度と進路を読んで偏差射撃で再砲撃。
G4は再びで盾で受けたが、今までの攻撃の負荷のためか盾は砕け、左腕もズタズタになる。
しかしG4は速度を落とさず迫ってくる。
「カノンではもう近いか……」
距離的にカノンより有効な30mmアサルトライフルを抜いて構え、素早く狙いをつけてトリガーを引く。
砲撃よりは軽い3点バーストの衝撃がコクピットを微かに振動させ、マズルフラッシュを残して銃弾が飛ぶ。
胸部に命中。
体表を覆っていた装甲が弾け、胸部も破砕し、風穴が空く。
胸の傷から銀色の体液が吹き出し、G4の体がグラリと揺れて前のめりに倒れた。
それでもまだギクシャクとした動きで立ち上がろうとするが、目に見えて動きが鈍い。
もう戦闘力などないに等しいだろうが、それでもなお戦おうとしている。
そうプログラムされているからだ。
「意志などないのだろうが、そのままでは哀れだからな」
アバルトが憐憫を込めて頭を撃ち抜く。
それでG4の動きは完全に止まり、そのまま塵となって消えた。
「これは……」
その光景を見たアバルトの表情が曇る。
狭霧は最初に狙ったG3を撃ち続けていた。
「さて、いかほどの性能でしょうか?」
データ採取をメインとするため、あえてパッシブスキルを使わずに撃つ。
G3は盾で防ぎつつ距離を詰めようとしてくるが、狭霧は常に一定の距離を開けて攻撃する。
やがてG3は接近を諦め、弩での攻撃に切り替えた。
放たれてきた矢は脚部に向かってくる。
(足止めのつもりかな)
シールド「ストルクトゥーラ」を足元まで下げて防ぎ、スナイパーライフルで反撃。
だがG3も盾で弾き、狭霧のデュミナスの側面に回り込もうとする。
させじと向きを変えてG3を正面に捉えながら、3発撃ったスナイパーライフルの弾倉をリロードする。
狭霧とG3の戦いは常に動き合って相手の隙を伺いつつ射撃する様相を呈した。
「機動性はCAMに匹敵しますね。射撃の狙いは常に正確。なるほど、最強と豪語するだけはありますね。しかし」
頭部に飛来してきた矢をシールドで容易く弾く。
「狙いが正確すぎて読みやすい。それに攻撃パターンも単調です」
ここまでの戦闘で狭霧はG3の性能をある程度見抜いていた。
そして3発撃ったスナイパーライフルをリロードしようとした時、G3が猛然と接近してきた。
「やはりそうきましたか」
だが狭霧は冷静だ。
なぜならスナイパーライフル「クルーアル」の装弾数は6発で、3発でリロードしていたのは相手に誤認させるためだ。
狭霧はリロードを中断するとデュミナスの制御機構に『高速演算』を走らせつつG3の左肩関節を狙い撃った。
音速で飛来したライフル弾は左肩を覆う装甲を避けるように着弾し、貫通。
更に右脚部も狙い撃つ。
G3は盾で防ごうとしたが、左腕から最も遠い右脚へのガードが間にあわず、ライフル弾は右脚も貫通した。
「左腕の動きが鈍くなりましたね。内部構造も人間と似通っているのでしょうか」
左肩と右脚をやられたG3はその場に屈み込んで体を小さく縮め、盾で体全体を守る体勢を取りつつ弩を放ってきた。
「固定砲台化しましたか、それなら」
狭霧は矢が放たれた瞬間に弩を狙撃。弩を破砕した。
「これならどうします?」
G3は亀のように身を縮めたまま出来る限り速さで接近を試みてきた。
「それしか手はありませんよね。では折角ですからアレを試しましょうか」
狭霧は武器をランスカノン「メテオール」に持ち替えるとG3を迎え討った。
G3はデュミナスを間合いに捕らえた途端、槍で突いてきた。
狭霧はランスカノンで受け流しつつカウンターを突き入れた。
槍とランスの間で擦過音が鳴りつつ火花が散り、ランスの槍先がG3の胸部に突き刺さる。
狭霧はトリガーも引き、ほぼ0距離からカノン砲を発射。
大音響が響き、ヘッドマウントディスプレイが一瞬、爆発の閃光に包まれる。
すぐに回復したディスプレイに映ったのは胸部を破砕されて頭部や腕がバラバラになったG3の姿だった。
「折角ですし回収して帰りましょうか。今後の対策になるでしょうからね。この手の輩は諦めが悪いですから」
しかし拾ったG3の頭部はすぐに塵となって消えた。
ミグはまず相手火力を知るため敢えて放たれてきた弩の矢を胸部装甲で受けた。
カキンと音を立てて矢は弾かれ、ポトリと地面に落ちる。
装甲には傷一つない。
「なんじゃこの程度か。ならば次はこちらの番じゃな」
ドミニオンの肩口に搭載されたミサイルランチャー「レプリカント」を射出口を開放。
ズラリと並んだ10発のミサイルを一斉発射した。
噴炎の尾を引きつつ飛翔したミサイルはG5に殺到し爆発。G5が爆煙に包まれた。
しかし、もうもうと煙る爆煙の中から盾を翳したG5が無傷で飛び出してくる。
「耐えた? いや、避けおったのか。小癪な奴め。次はコイツじゃ!」
続いてミサイルランチャー「ガダブタフリール」を射出口を開放して発射。
今度は8発のミサイルがG5に殺到し、再び爆煙に包まれる。
ヘッドマウントディスプレイに映る爆煙を注視していると、中から走り出してくるものが見えた。G5だ。
しかし今度は体のアチコチを損傷している。
どうやら盾で防いだらしいが、耐えきれなかったようである。
「次弾装填」
ミグは新たなミサイルを再装填したが、その間にG5に間合いを詰められ、槍で突かれた。
カキンと槍先が装甲で弾かれる。
「無駄じゃ! このハリケーン・バウ・Cは鉄壁。その程度の攻撃では傷一つ付かぬ! そして接近された時の対策もちゃんとしておるわ!」
ミグはアーマーペンチ「オリゾン」を構えるとG5の脚を狙って突き出した。
しかしG5は跳躍して避けるとアーマーペンチを足場にして更に跳躍。
剣を大上段に構え、落下の勢いを上乗せした一撃をドミニオンに叩き込んだ。
カキンと刃が装甲で止まる。やはり傷一つ付いていない。
「無駄じゃと言うたじゃろうが」
ミグはアーマーペンチを薙ぎ払ってG5を殴打した。
G5は盾で受けたが衝撃で地面に叩きつけられる。
その隙きを逃さず倒れたG5の脚をアーマーペンチで捉える。
アーマーペンチの圧力によって脚がひしゃげ、やがて寸断された。
「これでもう素早い動きはできまい」
続いて首を狙ってアーマーペンチを突き出したが、G5は地面を転がって避けた。
そして盾を捨てると四つん這いになって這うように移動を始める。
「なんと、まるで猿じゃな」
四つん這いでも意外なスピードを見せたG5はドミニオンに取り付き、頭部をナックルガードのトゲで殴打した。
ヘッドマウントディスプレイに一瞬ノイズが走る。
だがそれだけだった。
ミグはG5の腕を掴んで地面に叩きつけると、首をアーマーペンチで捉えた。
「これで終わりじゃ」
首が切断され、G5の動きが止まる。
そして首を失ったG5の体は徐々に塵と化して消滅していった。
「歪虚だったとはのう。という事は作り主も歪虚じゃな。やれやれ……」
ミグは相手が歪虚と知って露骨に落胆した。
保は美亜が分断した敵陣の片側に陽動として突貫した。
G3は狭霧の狙撃に釣られて離れたため、残りのG1とG2に魔導銃「魔弾」を放つ。
移動しながら撃ったためかG1にしか当たらなかったがG2の気も引けたらしく、2機から弩の反撃が飛んでくる。
保は『スペルスラスター』を機動。脚部のローラーが猛回転して速度がグンと増す。
更にギリギリまで身を低くながらジグザグに走る。
1本目は保の頭上スレスレを通過。
だが2本目は直撃コースだ。
咄嗟に三尖刀の幅広い刀身が眼前に翳す。
矢は刀身に当たって軌道が僅かにずれ、腕部装甲が破損する。
損傷の具合を見ると、腕部装甲にペイントしたエンブレムも削れていた。
「半日かけてペイントした三毛丸エンブレムがぁーー!!」
そのエンブレムは、相手からは邪険に扱われているが自身は愛しているユグディラの三毛丸を象った自信作だった。
思わず涙が出そうになったが、今は2体のゴーレムの相手に集中しなければならず、堪えた。
自分に気を引き続けるために更に接近すると、ゴーレムは武器を槍に持ち替えて向かってきた。
2体同時に攻撃されないため、G1の後ろにG2が入るように『スペルスラスター』で側面に回り込む。
G2はG1迂回するように進み、G1は真っ直ぐ突っ込んできて槍で突いてくる。
槍先を三尖刀で受けた。
しかしG1の方がパワーが上なのか三尖刀が弾かれる。
咄嗟に身を捻ったが槍先はプラヴァー胴体脇に突き刺さった。
プラヴァーはマスタースレーブに近い機構のため胴体装甲も薄く、槍先はコクピットにまで達している。
幸い保には当たらなかったが、計器が幾つか損傷した。
更に、コクピット内に張り付けていた三毛丸の写真が幾つか破れ、何枚か剥がれて散っていった。
「ああっ、三毛丸ーーっ!!」
散ってゆく三毛丸の写真を目にした保は思わず絶叫し、ちょっと涙が溢れた。
「よくも三毛丸をっ!!」
三毛丸(の写真)を殺ったG1を敵意を持って睨みつける。
だがその間にG2が側面に回り込んできた。
G2が槍を振りかぶるが、プラヴァーはまだ槍が刺さっていて満足に動けない。
「その隙……逃しませんよ!」
トランシーバーから夕凪の声が響き、G2の背後で光弾が煌めく。
その直後、G2の背中にマテリアル弾が直撃した。
保がゴーレムの気を引いている隙に背後に回り込んだ夕凪がマテリアルライフル「セークールス」を放ったのだ。
夕凪は更にG1の右腕もマテリアルライフルで狙撃。右腕が半ばで断たれて保のプラヴァーが自由の身になる。
保は機体から槍を引き抜くと、G1に三尖刀で斬りかかった。
G1が盾を掲げる。
保は盾に当たる直前で剣を止めて『スペルスラスター』を機動。
機体を斜めにしながらローラーで滑るように進み、機体の小ささも利用して盾の下をギリギリすり抜け、G1を足払いを仕掛けた。
バランスを崩したG1が地面に這いつくばるような体勢になる。
保は『スペルスラスター』でG1の右側に回り込み、三尖刀を振り上げた。
「三毛丸の仇ーっ!!」
三毛丸は死んでないどころか自室で暢気にゴロ寝してるだろうが、保の怒りの一撃がG1の首を斬り落とした。
G2は振り返ると夕凪のR7に弩を放った。
夕凪は『アクティブスラスター』を吹かして容易く避ける。
「そんな単調な動きではこの子を捉えるなんて遠い話ですね」
そのまま『アクティブスラスター』の推力でG2の脇を一気に駆け抜け急反転。
こちらに振り向こうとしているG2をマテリアルライフルで狙撃。
マテリアル弾は盾に命中したが貫通。G2の脇腹も損傷させる。
夕凪が後ろに退がってG2から距離を取っていると、不意にトランシーバーでゴーレムが歪虚だと伝えられた。
(歪虚……ではDrヤッフェも?)
夕凪はヤッフェの反応を見ようと考え、『アクティブスラスター』でヤッフェとG2が一直線に並ぶ位置へ移動。
G2を狙った流れ弾に見せかけてヤッフェにマテリアルライフルを放った。
直撃した。
しかしまだ生きているようだ。
(耐えましたか)
リアクションは特にない。
どうやら流れ弾だと思ってくれたらしい。
それを見届けた夕凪は意識をG2に戻す。
「そろそろ決めますか」
『アクティブスラスター』を発動。大推力で一気にG2に迫る。
G2は弩を構えたが撃ってこない。
これまで横をすり抜けてからの反転射撃を繰り返してきた。
恐らくG2は今回もそうだと判断し、すり抜け後に自身もすぐ反転して撃つつもりなのだろう。
「その読みが命取りです」
夕凪はスラスターを軽く吹かして真っ直ぐ突っ込む軌道に修正。
G2も軌道が変わった事に気づいたが、もう遅い。
接敵直前に抜いた斬機刀「建御雷」の刃が煌めき、一閃。
盾の防御すら間に合わず、G2は胴体を両断された。
上下に分かたれたG2の体は歪虚の定めに従って塵と化し、風に吹かれて消えた。
少し時は巻戻り、夕凪がヤッフェを撃った時。
「凄い! 凄いぞリアルブルーの技術力!!」
ヤッフェは興奮した様子で歓声を上げていた。
なぜなら最強と信じたゴーレムにまだ強くなる余地があると分かったからだ。
この戦闘から様々なインスピレーションを受け、脳内ではゴーレムの更なる強化案が幾つも浮かんでいた。
それらの強化を施したゴーレムとも人間達はまた戦ってくれる事だろう。
なぜなら様々にカスタマイズされた機体を見ていれば、人間達も自分の愛機に夢中だと分かるからだ。
そんな愛機に乗って戦いたくない訳がない。
強化したゴーレムがまた負けたとしても、また更なる強化を施して挑めばいい。
そうして挑み続けたゴーレムが勝利した時こそ、自分が夢見た最強のゴーレムが完成するに違いない。
そう確信したヤッフェは言い知れぬ高揚感に包まれていた。
そこに夕凪の放ったマテリアル弾が飛来してくる。
「っ!?」
傍らにいた甲冑のマグネマンがバラバラに分解し、ヤッフェの体を覆った。
だがマグネマンはマテリアルの高エネルギーに耐えきれず消滅し、余波がヤッフェを襲う。
「ぐはっ! な……流れ弾か? マグネマンがなければ即死だったな……」
全身がボロボロになっていたが安堵したヤッフェを尻目に何度はミサイルが飛来してきた。
流れ弾ではない。
ミグが殺意を持って撃ったものだ。
「な、何故だ……」
ヤッフェは何故自分が殺されようとしているのか分からなかった。
人間の流儀に従って正式な手続きを踏んだ依頼者の自分が問答無用で殺されるとは思ってもいなかったのだ。
ミサイルが着弾。
爆発と衝撃がヤッフェの体を粉砕する。
生前も、不老を得るため歪虚となった後も、ただひたすらゴーレムを研究し続けてきたヤッフェの夢は、道半ばで潰えたのだった。
「殺したのか。歪虚とはいえ依頼人だったんだがな……」
アバルトが複雑そうな顔でヤッフェのいた場所を見る。
(あの甲冑、マグネマンのようでした。ヤッフェはクススと何か繋がりがったのかも……)
保は気になる事があったが、それを聞く事はもうできなくなった。
「ま、ある意味情報漏えいだったし、これでよかったんじゃねーか」
美亜がそう締めくくる。
こうして依頼は、ゴーレムと戦うという目的は果たしたものの、依頼人は死亡するという形で幕を下ろしたのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 14人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 アバルト・ジンツァー(ka0895) 人間(リアルブルー)|28才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/08/10 01:12:43 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/08/05 09:53:41 |