仲間達との宴 ~ミヤサ~

マスター:天田洋介

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/08/12 22:00
完成日
2017/08/23 12:40

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

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オープニング

 ミヤサ・カミーとハンター達は伯爵地【ニュー・ウォルター】で多大な貢献をした。テュリア鉱床は今後、大きな産業の源泉になることだろう。
 数日前に仮の住処へ届けられた招待状はアーリア伯爵が送ったものだ。ミヤサはマール城で催される宴へ招かれたのである。
「どうしようかな。こっちもよさそうだし」
 畏まった場が苦手なミヤサだが、このときばかりは張り切って身支度を調える。リゼリオで急遽赤いドレスを仕立ててもらった。
 当然のことながらミヤサと共に鉱床発掘に尽力したハンター達の元にも招待状は届けられていた。城塞都市マール内にあるハンターズソサエティ支部の一部関係者も招かれているようである。
 宴の当日、事前に城塞都市マール内の宿に泊まった者のところへと城からの馬車が停まる。支部にある転移門の施設前にも迎えの使者が現れた。
「さあ、参りましょうか」
 ミヤサも馬車に乗ってマール城へ。夕暮れ時、水路に架かるいくつもの橋を渡り、何両もの馬車がマール城へと到着する。
 城では様々な準備が整えられていた。アーリアとミリアと共に過ごす会食の場に、楽団が奏でるダンスの大広間も。ミヤサやハンター達に身近な人物だけを招いたのは、ミリアの配慮である。

 ゆっくりとした語らいの時が、もうすぐ始まろうとしていた。

リプレイ本文


 マール城で催される宴への招待状を受け取ったハンター達は、ミヤサと同じように準備を整える。

(いつものドレス「カプリチョーザ」は戦闘用に改造してあって、宴には合わないでしょうから)
 エルバッハ・リオン(ka2434)はリゼリオの自室にて、ドレス「アビエルト」へと着替えていた。透明感のある滑らかな生地でできており、暗めの色合いがセクシーさと開放感を演出している。彼女の妖美を引き立てていた。
「今更ですが、露出の多いドレスですね。まあ、私の好みではありますが」
 揃いの靴にも履き替えて、ダイヤモンドリングやシルバーバングルといった宝飾品を身に纏う。車で転移門へと向かい、潜り抜けた先の城塞都市マールで待機していた迎えの馬車へと乗り換える。

 マールに前乗りしていたロニ・カルディス(ka0551)は、宿部屋に設置されていた鏡へと着替えたばかりの全身を映す。ネクタイを直しながら眺めたのは、ドレスコードに合わせたスーツ姿だ。胸元にはポケットチーフを差し、ネクタイピンはお気に入りの品である。
「これならどのような場でも見劣りはしないだろう。一張羅を持ってきた甲斐があったものだ」
 ノックが聞こえて返事をすると、扉の向こう側から遣いの者が現れた。宿の玄関口前に停められた馬車へと乗り込んだロニである。

「こんな感じでいいですかね」
 宿部屋のミオレスカ(ka3496)はレースやフリルがふんだんにあしらわれた真っ白なワンピースドレス姿へと着替える。
 それまで家具の天板に座って眺めていたパルムたちが、部屋中を飛びまわって大はしゃぎ。余程気に入った様子である。そうこうするうちに城からの迎えが現れた。
「あれ?」
「私もこの宿に泊まっていたんです。ついさっき知ったばかりで――」
 城からの馬車の座席には着飾ったミヤサが座っていた。城へ到着するまでの間に、二人でお喋りを楽しんだ。

 馬車が揺れて、ステラ・レッドキャップ(ka5434)は表情をわずかに歪める。背もたれに肩の傷口が触ったからである。
(体中痛いから踊ることもできないし、おとなしくうまい物でも食ってるかな)
 かなりの怪我は負っていたものの、礼儀としてそれとわかる包帯等は外していた。どうしてもの部分は衣服に工夫を凝らしてうまく覆ってある。そのためか、竜の血で染めたといわれる真っ赤なドレス「ドラゴンブラッド」を纏っていたが、宝飾品は身につけていなかった。
 マール城へと到着。来賓用の玄関口にはミヤサの姿もあった。下車したときに蹌踉けてしまい、ミヤサが支えてくれる。
「大丈夫ですか。ステラさん。みなさんはすでに到着していますよ」
「……ひ、暇なだけだからな! 別に重体でも無理して来たわけじゃないんだからな! そこんところ、勘違いすんなよ!」
「もちろんです。こちらの廊下を進んだ方が近道ですよ」
「そ、そうか。なら案内は任せるさ」
 ゆっくりと歩いてホールへと到着。ステラはミヤサが引いた椅子へと腰かけた。同じ卓にはミオレスカ、ロニ、エルバッハがいて、互いに挨拶を交わす。久しぶりの相手には喜び合った。
 ロニは一旦席を立って挨拶回り。宴にはミヤサの関係者も招かれている。それらの中でも、実業家ウリッシュ・ビスナーとミヤサの兄サマトは特別な人物であった。
「ミヤサくんには香辛料のオールスパイスで世話になってね」
「俺も栽培園での大蛇退治には参加したことがあるのだ。あの場所は今、どうなっているのだろうか?」
 ロニがウリッシュに訊いたところによれば事業は成功して、オールスパイスの出荷は順調のようである。種と葉、両方とも。今回の宴に並ぶ料理にも調味料として使われているという。
「ミヤサのこと、いろいろと助けてくれたようだね。兄としてとても感謝している。ありがとう」
「いや、こちらこそ。彼女のバイタリティには俺も助けられた部分が――」
 サマトとの会話も弾んだ。
「この度はお招きにあずかり光栄です」
「こちらロニ様ですの」
 エルブン兄妹とも挨拶を済ます。アーリアは別件でロニのことを覚えていた。エルバッハも同じように挨拶を済ませて席へと戻った。談笑は後の楽しみに残して。
 楽団の演奏が一時中断されて、アーリアとミリアから祝いの言葉が発せられる。こうして宴の時間は始まった。


 ミオレスカが置かれたばかりの皿へと注目する。皿の表面をキャンバスに見立てて、まるで絵画が描かれているが如くムース料理が盛り付けられていた。
「…………驚きですね。これは」
「私もいろいろな席に招かれたことはありますけど、ここまでのは見たことがないですね」
 ミオレスカとミヤサがそれぞれの皿を見比べる。どちらも寸分違わずの美しさで、料理人の腕がうかがえた。
「うまい。これはすばらしいな」
 スプーンで頂いたばかりのロニがわずな間だけ目を閉じる。使われている鶏レバーのくさみはまったく感じられず、滑らかさと旨味のみが口一杯に広がった。
「さすが領主お抱えの料理人による珠玉の品々ですね」
 エルバッハも次々と運ばれてくる料理を頂く。
 メインディッシュの肉料理に、遙々遠方から取り寄せた『シモフリ』肉が使われているのを言い当てたのはミオレスカである。
「この味とまた出逢えるなんて。シモフリって青くてまん丸なんですよ」
 ミオレスカはとろけるその肉の美味さをよく知っていた。彼女の口からシモフリについての様々な体験談が語られる。
「ゴロゴロと転がって移動するの?」
 ミヤサは笑いのツボに入ったらしい。何度も吹きだしそうになるのを我慢していた。
(シモフリも久しぶりだな。やはり美味い。酒、はやめておいたほうがよさそうか)
 ステラが肉料理を噛みしめて堪能している最中、ロニがウリッシュの話題に合わせて香辛料であるオールスパイスに触れた。
「そういえば初めてミヤサと会った時はドーナツを作ったときだったか? オールスパイスを使ったんだったな。今はお菓子作りが趣味になったぜ?」
「お菓子、どんなのを作っているんです?」
「友達とゼリー作ったりして楽しんでるよ」
「今度、私も挑戦してみようかな」
 初めて称号を得たのもあのときだったとステラとミヤサとの会話は弾んだ。
 晩餐による持て成しの後も、テーブルには飲み物と軽食が並べられる。それぞれに一緒に過ごしたい相手の元へと近づく。宴の時はまだまだたっぷりと残っていた。


 ミオレスカはアーリアの手を取り、楽団の調べに合わせて躍る。
「まさかシモフリのお料理が並ぶなんて。驚きました」
「この城の料理長は新しいもの好きでね。といっても私が頂いたのも二、三ヶ月前なんだ」
 伯爵地における様々な事情を知るミオレスカだが、それには敢えて触れない。今宵は煩わしいすべてを忘れて、楽しいひとときを過ごしてもらいたい。そう考えていた。
 次にロニと踊りながら依頼での出来事を一緒に思いだす。ミオレスカは席で待っていたミヤサとしばらく話し込んだ。
「いろんなことがありましたね。わたしもあのときのドーナッツ、好きでしたよ」
「宴の前に料理長へとレシピを渡しておいたのだけれど……あれはもしかして」
 二人が話題にしていると給仕がドーナッツを運んできてくれる。小さめだが、まさに同じ味が再現されていた。
「マテリアル鉱床の発見は大きな貢献になったはず。森で見つけたオールスパイスの樹木は、それと同じくらい価値があったと思っているんです」
「お料理が美味しくなれば、心温まりますからね」
 珈琲と一緒に頂くドーナッツは、この上なく美味しかった。

「そうか。あの金ぴか鎧が怪しいじじぃに繋がって、それで秘密になっていたマテリアル鉱山の発見に繋がったとはな。何が功を奏すか、わかったもんじゃないな」
「おかげでこうしてまたステラさんと再会できました」
 ステラはドーナッツを摘まみながらミヤサと談笑する。他にも様々なデザートが運ばれてきて、それらを少しずつ味わった。
「こいつはいけるぜ。家で再現してみたいなー」
「美味しいですね。私も気に入りましたよ」
 ステラとミヤサが驚きをもって食したのは、季節の梨を使ったシャーベットである。酒精は入っていたものの、香り付け程度なので気にする必要はない。それよりも滑らかな舌触りと自然な甘さのハーモニーが二人を虜にした。
 他のところへ行っていた仲間達が戻ってくる。ミヤサがクリムゾンウエストへ来たばかりの頃に体験した冒険譚を聞かせてもらう。
「まるで夢のような……おそらくは妖精の仕業だと思うのだけど。まだ覚醒したばかりで、調子に乗っていた頃――」
 ミヤサはおとぎ話にあるような、妖精の国へと迷い込んでしまったことがあるという。果たして真実であったかどうかですら、今となってはわからない。
 雲に届きそうなほどの巨人と仲良くなって海を渡り、小人の集落で暮らした覚えがあった。二つ頭の狼を倒したことで、戻って来られたとのことだ。
「へぇ、リゼリオの路地裏に迷い込んだら、そうなったのか。今度適当に歩いてみるかな」
 ステラは二杯目のシャーベットを味わう。ミヤサと目が合って互いに微笑むのだった。

 ロニはエルブン兄妹と語らい、鉱床発掘の話題に花を咲かせた。
「実はつい最近、あの鉱山でマテリアル以外に発掘されたものがあるんです」
「陥没の掘削作業中に見つかったそうだ。丁度よい機会だ。持って来させよう」
 エルブン兄妹が配下に持って来させたのは武具一式であった。それは純金製の鎧にそっくりな銀製。しかも足りない部位はなく、すべてが揃っている。剣と盾もあった。
「これは興味深いな」
 ロニはアーリアの許可を得て鞘から剣を抜いてみる。本身も銀製であり、刃としてはほぼ役立たずだ。但し、その輝きは磨いてあるせいか、まるで鏡のようだった。
「話しだけはミリア様から聞いていましたが、私も実物を見るのは初めてです」
 ミヤサも興味があったようでロニの側へと近づく。一緒に銀製の武具一式を鑑賞した。
「他には羊皮紙が一枚残っていたそうだ。謎めいた内容ではなく、古い言葉で感謝の言葉が綴られていたと聞き及んでいる。誰かに宛てたものらしいが、残念ながら肝心の部分が消えていた。偶然の破損ではなく、何者かが意図して削ったような跡だ」
「解釈の仕方によりますが、まるで恋文のような。そんな感じの内容でしたの」
 エルブン兄妹からの逸話を耳にしたロニはミヤサに聞き返す。「黄金の鎧、そして銀の武具一式。大昔にどのような経緯があったのだろうか」と。
「あれほどの鉱床を隠す理由が何であったのかは今となっては不明ですが、きっと人知れぬ葛藤や立場はあったのでしょう。そこにはきっと、優しさがあったはずです。元々は誰かへの贈り物だったのかも知れませんね。黄金の鎧も、銀製のも」
 ミヤサの言葉にロニは頷いてみせた。それからは大いに酒を愉しむ。エールやビールといった酒精の軽いものから、スコッチやウィスキー等の蒸留酒も。
「……初めて飲む銘柄だが、美味いな。リアルブルーからの舶来酒は多種多様だ。近年はこちらで醸造された酒にもよいものはあるが、こればかりは好みなのでな」
「よし、今宵はつき合おうか」
 ロニはアーリアからの酌でグラスを空にする。ミヤサも頂いて頬をほんのりと赤く染めた。
「危険な場所へ出向くとき、ロニさんのいてくれてとても心強かったですよ」
「そういってもらえるのは嬉しいな」
 ロニとミヤサは何度も乾杯したのだった。

「妹からあなたの活躍は聞き及んでいる。伯爵地への貢献、これからもよろしく頼む」
「いえ、このような宴に招いて頂いただけでも――」
 エルバッハは伯爵であるアーリアとあらためて挨拶を交わした。その後はミヤサや仲間達と思い出話に浸る。
「あのときの地下は大変でしたが、無事に脱出できてよかったです」
「古城跡は罠だったですからね。顔にはだしませんでしたが、実は内心とても焦っていたんですよ」
 エルバッハとミヤサは一緒に経験した危機一髪を話題にした。幾度も命に関わる窮地に陥ったものの、その度に生き残れたのはお互いを信じたからだ。話すことで、その考えがより強くなっていく。それはエルバッハやミヤサだけではなく、全員の思いであった。
「当分はゆっくりなさるのでしょうか?」
「冒険は止めませんが、兄のところで少し世話になろうかと考えています。といっても同じ村に住むだけですけれど」
 エルバッハはミヤサが話題にしたサマトを横目で眺める。普段の彼女なら色仕掛けで面白がるところだが、やめておく。普通に仲間達とのひとときを過ごした。
「西方では琵琶は珍しいでしょうから、宴の余興として楽しんでもらえるでしょう」
 エルバッハは四弦黒琵琶を抱えて、楽団の隣へと陣取った。事前に許可はとっておいたので問題はない。楽団の演奏が切りのよいところで終わる。一呼吸空けて、琵琶の音が鳴り響く。
 ミヤサは聞き入った。エルブン兄妹に仲間達も、エルバッハの歌と演奏を楽しんだ。やがてロニが立ちあがって手を伸ばし、ミヤサを誘う。二人はゆっくりとした動きでダンスを踊る。その様子を一同は見守るのだった。


 夜遅くまで宴は続いた。その晩はそれぞれに、エルブン兄妹が用意した城の寝室へと泊まる。
「こちらを是非、皆さんに」
 翌日の別れ際。ミヤサが全員に手渡したペンダントには、青いマテリアル鉱石が填められていた。
「冒険の旅、一緒にできて楽しかったです」
「俺もだ。また何かあればよろしくな」
 ミヤサとロニは強く握手を交わす。
「エルバッハさんの冗談、好きでしたよ」
「今度があれば、また披露させてもらいましょうか」
 ミヤサとエルバッハがハグして感謝を表す。
「ナガケ集落の話、とても楽しかったです」
「いつか一緒に行けたらいいですね」
 ミヤサが握手したミオレスカの右手に、左手を添える。
「久しぶりにお会いできてよかったです。とても楽しかった」
「何このぐらい。また手を借りたいときは言ってくれよな。重体じゃなければ手を貸すぜ。あぁ、あと報酬が良ければだな?」
 ミヤサはステラと握手をしながら大いに笑った。ステラも吹きだしたが「痛たたたっ」と締めくくりは苦笑いとなる。

 一人ずつ転移門を潜り抜けて、リゼリオへと帰っていく。ミヤサは全員を見送ったのだった。

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参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • Rot Jaeger
    ステラ・レッドキャップ(ka5434
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士

サポート一覧

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/08/12 21:00:35