流れる涙は星々の煌めきが如く

マスター:水貴透子

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2014/11/10 19:00
完成日
2014/11/17 06:24

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


涙には、いくつも種類がある。
嬉しい時、楽しい時、そんな時に流れる涙は好きだけど、
……悲しい時に流れる涙は、嫌いだ。

雑魔がはびこる世界、
こんな世界の中で、誰かが涙を流す時――……
誰かが傷ついたり、犠牲になったりする事がほとんどなんだから。

※※※

「……どうして、あなた達はハンターなんて危険な事をするの?」

ハンター達が仕事を探しに来た時、1人の少女に声をかけられた。

「どうして、自分から危険な場所に行こうとするの?」
「……逃げればいいじゃない、逃げた方が怪我しないし、誰かが傷つく所を見ないですむんだから」

ハンター達に言葉を投げかけているはずなのに、
その少女は、別の誰かに向けて言葉を発している――……そんな雰囲気があった。

「あなた達、仕事に行かない方がいいよ」
「……嫌な予感がするから」

少女は言いたい事だけいうと、ハンター達の前から姿を消す。

「なんだ、あの子……」

1人のハンターが首を傾げていると「お兄さんを待っているんでしょうね」と案内人が声をかけてきた。

「兄?」

「……とは言っても、あの子の兄はもう亡くなっているのですけど」

案内人の言葉に、ハンターは少し驚いた表情を見せる。

「あの子の兄が仕事に向かう時、あの子は嫌な予感がしたと言っていました」
「……だから、今回の仕事だけは行かないで、お兄ちゃんは強くないんだからって」

案内人はそれ以降の言葉を言わなかった。
だけど、ハンター達はその続きを聞かずとも何となくわかった気がした。

だって最初に『あの子の兄は亡くなっている』と案内人自身が言っていたのだから。

(さっき、あの子は『嫌な予感がする』と言ってた……)
(あの言葉をうのみにするわけじゃないけど、次に受ける依頼は……簡単にはいかないって事か?)

子供の直観を信じる信じないはそれぞれだと思う。
だが、ハンター達にはあの少女が冗談や悪戯でそんな事を言っているようには思えなかった。

「……嫌な予感がすると言われていましたよね」
「もし、その依頼を受けるつもりならば、必ず生きて帰ってきてください」
「そうすれば、あの子も何かしら変われるかもしれませんから」

案内人の言葉を聞き、ハンターは依頼を受ける旨を伝えたのだった――……。

リプレイ本文

●雑魔退治に向かう者達

(ほんと情報が少ないわね、どうしたものかしら?)
 エリシャ・カンナヴィ(ka0140)はため息を吐きながら、心の中で呟く。
 彼女がため息を吐きたくなるのも仕方がない。本当に情報が少ないのだから。
 それに加えて、奇妙な少女からの奇妙な忠告、嫌でも警戒を強くしなくてはならない。
(雑魔の正体が気になってる子もいるみたいだけど、死んだらただの物よ。今回の依頼だと何か分かった所で何の益もないわ)
 心の中で毒づくが、面倒とかそういう類で言っているのではなく、調べる事が増えればそれだけ危険も増す、つまり依頼の難易度が上がってしまう事を意味するのだから。
(……危険な事をする理由、か……そんなの決まってるわ、ハンターとして名を成すため、逃げればいいなんて冗談じゃないわ、あの子の言葉程度でビビるような私じゃないわ)
 レム・K・モメンタム(ka0149)は手を強く握り締めながら心の中で呟く。少女の言葉を聞き、レムは意地でも生きて帰ってやろう、という決意を心にした。それこそ、這ってでも、血反吐を吐いてズタボロの状態であっても絶対に生きて帰ってくると強い意志を。
「心配、してくれているのだろう……用心するに越した事はないのだ」
 黒の夢(ka0187)はもうここにいない少女の事を考えながら、小さく呟く。言い方や態度には問題があるけど、彼女なりに自分を心配しているのだ、と考える事にしていた。
(何のために戦うか……すべてが愛おしい命であるがゆえに、誰かを助けるのに理由なんていらないのだ)
 黒の夢は、決してブレない自分の気持ちを心の中で呟いた。
「これから仕事に行く私達に不吉な言葉残してくれるよね~? 私はいつだって、行く先には楽しい事が待ち受けてるって予感しかないけどね♪ 例えどんな事があったって、楽しくやっていけるんだもの」
 夢路 まよい(ka1328)はニコニコと微笑みながら呟く。その表情は心からの物に見えて、無理をしている笑顔には見えないから、きっとそれが本心なのだろう。
(今回の雑魔……元々は人型、腐ったりなどで原型を留めていない……という事は、雑魔の正体が少女の兄、という可能性も……?)
 ルナ・クリストファー(ka2140)はそんな可能性も無くはない、と考えたけど、すぐに考えるのをやめた。例え、万が一少女の兄であっても倒さねばならない相手に変わりはないのだから。考えれば考えるだけ心に迷いが生じてしまうからだ。
 余計な事を考えて、仲間達に危険が及んでしまえば、それこそ少女の言う『嫌な予感』が当たってしまうことにもなりえる。
(どうして、あなた達ハンターなんて危険な事をするの――……ですか)
 エリー・ローウェル(ka2576)は悲しげな表情を見せながら、少女から告げられた言葉を心の中で繰り返す。
 今回の任務を終わらせて、エリーは彼女に伝えたいと思っていた。彼女の兄が、どうして強くないながらもハンターをしていたのか、危険でも誰かを守りたい、誰かのために力を使いたい、きっと彼女のお兄さんは自分と同じ気持ちだったのだと信じたいから。
「嫌な予感、ね……彼女の言う嫌な予感が外れる事を祈って、仕事をするとしよう」
 ユリン・ジ・フェブレ(ka3350)は穏やかな笑みを浮かべながら呟く。
(……彼女の事も放ってはおけねえ話だが……俺に『銀の弾』は撃てるめえな)
 J・D(ka3351)は小さなため息を吐きながら、心の中で呟く。
 今回の雑魔が彼女の兄のなれの果てではない事を祈りながら、ハンター達は出発した。

●夜の平原にて

 今回、ハンター達は雑魔捜索時の班分けは行わず、全員固まって動く作戦を取っていた。
「へぇ、見晴らしはいいんだな? これなら狙いづらさとかなさそうで安心したよ」
 J・Dは周りを見渡しながら軽い口調で呟く。
「けど、ランタンを持って歩いている以上、雑魔から発見される可能性は高いでしょうね」
 ユリンは自分の持っているランタンを見ながら、苦笑気味に呟く。
「そりゃ仕方ねぇさ、灯りを持ってないとこっちが奇襲を受ける側になっちまうからな。灯りがあれば、多少周りも警戒出来るだろうし」
 ユリンの言葉に、J・Dは笑いながら言葉を返す。
「こういう場所だったら思いきり動き回れるわね、戦闘中に灯りをどうするかだけど……括りつけておくのも揺れて面倒だし、適当な場所に置いておくのがいいかもしれないわね」
 エリシャは口元に手を当てながら、戦闘時のシミュレートをしている。
「うなうな、このあたりと聞いてるのなー。灯りを消しましょ、ランタンの~♪」
 資料に書いてあった場所に近づくと、黒の夢はランタンの火を消した。
 その時、ザッ、ザッ、とハンター達以外の足音が聞こえてくる。
「……自分の貌まで、忘れてしまったのな」
 こちらに近づいてくる雑魔を見ながら、黒の夢が切なそうに呟いた。
 けれど、その表情も一瞬で消え『マギスタッフ』を構えた。
「……」
 原型を留めていないという資料は正しかったらしく、雑魔は思わず目を背けたくなるような外見だった。
 ルナは眉根を寄せながら「あなたは、誰なんですか……」とか細い声で呟いた。
 もちろん、返事が来るなんて考えていなかったけど、それでもルナは問わずにいられなかった。
「……いえ、それはもう問うても仕方ない事ですよね」
 唇をキュッと噛みしめながら、ルナも『マギスタッフ』を手にした。
「……任務、遂行させて頂きます」
 エリーは足元にランタンを置いた後『グレートソード』を構える。
「エリシャ様に『ウィンドガスト』を使ったよ、さっ、エリシャ様いってらっしゃい!」
 夢路はニコニコと笑みながら呟く。
「はいはい、ありがとうよまよい。精々掻きまわしてくるとするわ」
 だん、と地面を蹴った後、エリシャが行動に出る。
「あのような姿で生き続けるなんて、きっとあの人は望まなかっただろうに」
 ユリンは眉根を寄せながら呟き『集中』と『マジックアロー』を使用して雑魔に攻撃を行う。
「よう、化け物。手前は人だったのかよ、手前に……家族は、いたのかよ」
 J・Dは『リボルバー・ヴァールハイト』を雑魔に向けて構えながら問いかける。
 彼自身も返答があるとは思っていない。目の前にいるのは『元』人であり、今は倒すべき敵でしかないのだから。
「……そうかい」
 何も答えない雑魔に短く告げると、逃げられないようにJ・Dは足を撃つ。
(あなたがあの子の兄なのか、そうでないのか分からないですけど……私達に与えられた任務は倒す事のみ、それに徹させて頂きます……!)
 エリーは『グレートソード』を振り上げて『踏込』と『強打』を使用する。
「そっちばかり気にしていていいのかしらね、あんたを倒しに来たのは向こうのハンターばかりじゃないのよ」
 エリーに反撃を行おうとした雑魔に向けて、エリシャが言葉を投げかける。
 それと同時に振り上げた『太刀』で雑魔の肩に斬りかかった。
「……なんか、もうドロドロで後からの手入れが大変そうね」
 ぶしゅ、と嫌な音をさせる雑魔にエリシャは嫌悪感を露にした表情を見せた。
「その腐れた身体、キッチリ冥土に送ってやるわよ!」
 レムは『攻めの構え』と『踏込』を使用したうえでの『渾身撃』を繰り出す。
「避けないでよね――――この技、3回しか使えないんだから無駄に出来ないのよ!」
 レムが『クレイモア』を振り下ろしながら言うけど、雑魔には避けるだけの速度はない。彼女が全身の力を込めた一撃は雑魔の腕を斬り落とし、多大なダメージを与えた。
「そっちにはいかせないのなー」
 ハンターから距離を取ろうとした雑魔に向けて、黒の夢が『集中』を使用した上の『マジックアロー』を繰り出し、雑魔の体勢を崩させる。
「あははっ、そんなカッコになってまで、無理して動かなくたっていいよ? ゆっくりお休み出来るよう、バラバラに壊してあげるね♪」
 夢路は満面の笑みで怖い事を呟きながら『集中』と『ウィンドスラッシュ』を繰り出す。
「早く、倒れて下さい……!」
 ルナは『ファイアアロー』を繰り出しながら、悲壮な表情を見せる。
 やはり、元は同じ人間という事が彼女の心を苛ませているのだろうか。
「やれやれ、そんな姿になっても生き続けるなんて、私だったらごめんだわ」
 腕が千切れ、普通の人間ならば既に事切れている怪我を負っているというのに、まだハンター達に手を伸ばそうとしている雑魔にエリシャは呆れたように呟く。
 エリシャが雑魔を撹乱して、レムとエリーが攻撃を行う。
 そして、黒の夢と夢路がほぼ同時に攻撃を行い、少し間を置いてルナとユリンが再び攻撃、そしてJ・Dが雑魔の頭を撃ち抜き――……どさ、と雑魔が倒れ、そのまま動かなくなった。
「……これで、終わったか」
 J・Dが呟いて、他のハンター達を見ると、自分を含めて相応の負傷をしている。人数が多いから、これだけで済んでいるが、もしあの雑魔が腐らずにある程度の原型を留めていたなら、この程度では済まなかったかもしれない、と思うと、少しだけゾッとした。

●帰還、そして――……。

 雑魔を倒した後、数名のハンターが少女の兄である可能性がないかどうかを調べたが、あの雑魔は元女性だという事が分かり、少女の兄である可能性はゼロである事を導き出した。
「……帰って来たんだ、大変な仕事だって聞いてたけど」
 雑魔退治を終えた後、少女が少し驚いたようにハンター達を見つめていた。
「どうしてハンターなんかしてるの、そんなに傷だらけになって、逃げればいいのに怖くないの?」
「私の仕事がハンターだから、ハンターをしてるのよ」
 少女の問いかけに言葉を返したのはエリシャだった。
「私がハンターだから危険な場所に行くのよ、逃げたらお金になりゃしないわ。それに逃げたら怪我しない? 誰かが傷つく所を見ないですむ? そんなもん生きてるだけでいくらでもするし、いくらでも見るわ、そんな何処にでもありふれたものからわざわざ逃げてたら生きていけないわ、それこそ死んだ方がマシかもしれないわね」
 エリシャはため息を吐きながら、彼女なりに少女の質問に答えた。
「そうね、それは私も同意見だわ。私達は帰って来たわよ、ここにいる事が、私のハンターとしての意地でもあり証明よ、死んだ後に生きた証が何も残らないのが嫌だから、命を懸けてでも名を挙げるの、だから、あんな雑魔如きに負けてられないのよ!」
 レムは傷だらけになりながらも、少女に言葉を返す。
「私達はどうせ未来なんて知らないの。けどね、強く想えば、想ってた通りの未来を引き寄せちゃうんだよ、だからね、せめて私達がこれから行く道……イバラだらけだったとしても、そこにはバラの花が咲き乱れてるって、信じなくちゃ」
 夢路は少女の頭を撫でながら呟く。
(逃げればいい……私にその選択はなかった)
 ルナは悲しそうに少女を見つめる。彼女自身、なりたくてハンターになったわけではない。他に選択肢がなかったから、ハンターになるという道を選んだ……選ばざるをえなかっただけ。
「逃げられない時は必ず1度はあります、自分ではどうにもできない時、というのは、ね」
「お兄さんは、あなたも守りたかったから、きっとハンターという苦難の道を選んだんです。雑魔を倒していくこと、怖くても、あなたを守りたいから、きっと怖さも我慢出来たはず……あなたが、お兄さんを否定してしまったら、お兄さんが可哀想です……だから、否定しないで下さい」
 エリーは屈んで少女と同じ目線になりながら答える。
「見ずに済む、知らずに済むなら、その方が幸せかもしれないと僕は思うよ。しかし君のお兄さんは見ないふり、知らないふりよりも自ら戦うことを選んだ」
 ユリンは少女の頭を撫でながら、言葉を続ける。
「例え己が未熟でも、君達が暮らす環境、世界を守りたかったんじゃないかな。これは僕が勝手に想ってるだけだから、君のお兄さんの真意とは違うかもしれない。今の世界で剣を握らずに暮らせる場所なんてありはしない、歪虚がいなくても、人間同士の争いもあるからね。そんな中、君のお兄さんは、君を守りたいから戦うことを選んだんだと思うよ」
 ハンター達の言葉を聞き、少女の瞳から涙が零れ始める。
「お兄さんの行動が正しかったのかなんて、僕には分からない。でも1つだけ言えるのは、己の未熟を承知で戦いに赴いた君のお兄さんは、きっと優しい心の持ち主だったんだろう」
「……それでも、私は、お兄ちゃんに生きていてほしかったのに……っ」
 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、少女が初めて本音を言った気がした。
「お嬢ちゃんの言う通り、本当は逃げた方がいいのさ。やべえと判れば誰だって一目散だ。安全な所まで逃げて、一息ついて、また向き合うなり、忘れちまえばいい」
 J・Dは軽い口調で言葉を続ける。
「だがな、逃げる時ゃあ、多かれ少なかれ何かをその場に捨てていかなきゃいけねぇ、身軽にならなきゃ逃げられねぇもんなのさ。俺は捨てるのなんざ御免だ、だが捨てさせるのは余計に御免だ、だからこそハンターをやめられないもんなのさ」
 軽い口調で言われているけど、どこか有無を言わさない力強さがある。
「……お兄ちゃんは、それを捨てなかったから死んじゃったんだね」
 少女は悲しそうに呟くけど、さっきまでの虚ろな表情はもうなかった。
 今はまだ理解出来ないだろうけど、ハンター達の言葉を聞き、帰って来たのを見て、少女の中でも何かが変わり始めているのだろう。
 少女の様子を見ながら、ハンター達はそんな思いがしていた――……。

END

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 優しさと厳しさの狭間
    エリシャ・カンナヴィ(ka0140
    エルフ|13才|女性|疾影士
  • 運命の反逆者
    レム・K・モメンタム(ka0149
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 黒竜との冥契
    黒の夢(ka0187
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • 炎の弓
    ルナ・クリストファー(ka2140
    エルフ|13才|女性|魔術師
  • 『未来』を背負う者
    エリー・ローウェル(ka2576
    人間(紅)|19才|女性|闘狩人
  • Painter
    ユリン・ジ・フェブレ(ka3350
    人間(紅)|30才|男性|魔術師
  • 交渉人
    J・D(ka3351
    エルフ|26才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/05 00:14:20
アイコン 相談卓
エリシャ・カンナヴィ(ka0140
エルフ|13才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/11/09 23:28:15