ゲスト
(ka0000)
【命魔】輪るメタルブレイド
マスター:剣崎宗二

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 7日
- 締切
- 2014/11/14 22:00
- 完成日
- 2014/11/19 00:00
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●予兆
「……っはっ!?」
マフォジョ族長、ガルヴァン・マフォジョが、ベッドから飛び起きる。
筋骨隆々のその体には、無数の汗の雫がついており、その表情は、普段の穏やかな物から一変。不安に満ちている。
「……マフォジョ様が直接、夢に出るという事態は……この20年間ございませんでした。……何か悪い予兆でなければ良いのですが」
思い浮かべるは、夢の中で浮かんだ、鮮烈な一シーン。
それは彼が幼き頃より伝え聞いた、『初代マフォジョ』の滅びの情景。
――三十回目の大マフォジョ祭が、先日執り行われた。それはつまり、マフォジョ族を襲ったあの悪夢……そして、初代マフォジョが滅してから。三十年が経った、という事であった。
●潜入者
「キキッ!?」
――鎧片が散乱する遺跡の前。
激戦が繰り広げられ、ハンターたちの力と知恵の前に、液体金属スライムが砕かれたこの場に、新たな『客』が訪れていた。
周囲を慎重に警戒しながら、後方に居る仲間に命を下す。
そんなリーダーらしき行動を取ったのは、一体のゴブリン。歪虚である故にサイズで力を図るのはナンセンスとは言え、小柄の彼が、腕が鞭のようになっている大型の仲間に命令する様子は、滑稽ですらある。
だが、それよりももっと目を引くのは、その仲間が運んでいる物。
巨大な柱に、無数の刃がついた、拷問、処刑器具のような物体。
「キキキッ!」
ゴブリンが場所を指差すと、そこへ彼の仲間は歩いて行き、柱のような物をドスン、と音を立てて下ろす。
直後、ゴン、と言う何かが地面に打ち込まれる音と共に、彼らは一斉にその場を離れる。
バン。
一体の大柄な人型歪虚が、その腕で思いっきり柱を引っぱたく。
すると、不吉かつ耳障りな金属音を上げ、柱についたブレードが、それぞれ違う方向への回転を始める。
即座に人型歪虚はその鞭腕を引き、ブレードによって切断される事を回避する。
それを確認したゴブリンは、再度扉に向かい、作業を行う。
この扉は、あの後主によって再度封印がされたようだが…眷属である自分にはその解き方は熟知している。しばしの時間は掛かるだろうが、解けないと言う事はあるまい。
だが、ゴブリン――『スキレット』には知る由はなかった。
前回の一戦後、ハンターオフィスがこの遺跡の守護者を打ち倒して再調査するために、改めてチームを編成していたと言う事を。
――人型歪虚がたちが一斉に警戒態勢に入る。彼らは夜行動物を基しているため、夜はその活動を妨げない。
『スキレット』はそれを横目で見ると、再度扉の解除作業に取り掛かる。
彼らの元へは、ハンターたちが迫っていた。
「――あーあ。なんだなんだ。騒がしいな。ゆっくり眠らせてもくれない……ってか? ……ってか、もうどんくらい時間が経ったのかねぇ?」
「……っはっ!?」
マフォジョ族長、ガルヴァン・マフォジョが、ベッドから飛び起きる。
筋骨隆々のその体には、無数の汗の雫がついており、その表情は、普段の穏やかな物から一変。不安に満ちている。
「……マフォジョ様が直接、夢に出るという事態は……この20年間ございませんでした。……何か悪い予兆でなければ良いのですが」
思い浮かべるは、夢の中で浮かんだ、鮮烈な一シーン。
それは彼が幼き頃より伝え聞いた、『初代マフォジョ』の滅びの情景。
――三十回目の大マフォジョ祭が、先日執り行われた。それはつまり、マフォジョ族を襲ったあの悪夢……そして、初代マフォジョが滅してから。三十年が経った、という事であった。
●潜入者
「キキッ!?」
――鎧片が散乱する遺跡の前。
激戦が繰り広げられ、ハンターたちの力と知恵の前に、液体金属スライムが砕かれたこの場に、新たな『客』が訪れていた。
周囲を慎重に警戒しながら、後方に居る仲間に命を下す。
そんなリーダーらしき行動を取ったのは、一体のゴブリン。歪虚である故にサイズで力を図るのはナンセンスとは言え、小柄の彼が、腕が鞭のようになっている大型の仲間に命令する様子は、滑稽ですらある。
だが、それよりももっと目を引くのは、その仲間が運んでいる物。
巨大な柱に、無数の刃がついた、拷問、処刑器具のような物体。
「キキキッ!」
ゴブリンが場所を指差すと、そこへ彼の仲間は歩いて行き、柱のような物をドスン、と音を立てて下ろす。
直後、ゴン、と言う何かが地面に打ち込まれる音と共に、彼らは一斉にその場を離れる。
バン。
一体の大柄な人型歪虚が、その腕で思いっきり柱を引っぱたく。
すると、不吉かつ耳障りな金属音を上げ、柱についたブレードが、それぞれ違う方向への回転を始める。
即座に人型歪虚はその鞭腕を引き、ブレードによって切断される事を回避する。
それを確認したゴブリンは、再度扉に向かい、作業を行う。
この扉は、あの後主によって再度封印がされたようだが…眷属である自分にはその解き方は熟知している。しばしの時間は掛かるだろうが、解けないと言う事はあるまい。
だが、ゴブリン――『スキレット』には知る由はなかった。
前回の一戦後、ハンターオフィスがこの遺跡の守護者を打ち倒して再調査するために、改めてチームを編成していたと言う事を。
――人型歪虚がたちが一斉に警戒態勢に入る。彼らは夜行動物を基しているため、夜はその活動を妨げない。
『スキレット』はそれを横目で見ると、再度扉の解除作業に取り掛かる。
彼らの元へは、ハンターたちが迫っていた。
「――あーあ。なんだなんだ。騒がしいな。ゆっくり眠らせてもくれない……ってか? ……ってか、もうどんくらい時間が経ったのかねぇ?」
リプレイ本文
●Encounter
「……奇遇だな」
闇の中に、とある一体の小人型の歪虚の姿を認めた瞬間。ウィンス・デイランダール(ka0039)は、己の幸運に感謝する。
――あの時は逃がしてしまったが、まさかこのような所で出会えるとは。
自然と口角に笑みが浮かぶのを感じながら、ウィンスは両手に武器を抜き、敵へと向かう。
「仲良くしようぜ――スキレット!」
「さて、どうにも嫌な予感がする」
「ええ、何やら歪虚がよからぬ事を……ですか」
ロニ・カルディス(ka0551)の言葉に、 マッシュ・アクラシス(ka0771)が頷く。
「何かガルヴァン氏から情報が得られれば良かったのですが――」
如何せん、この者たちを如何に排除するかの話し合いに時間を取られた。そこの詳細を得る時間が欠如していた。
「こういう時はさっさと仕留めるに限るな」
ウィンスの後に続くように、飛び出すロニ。マッシュは逆に、様子見の為にその場に待機する。
――スキレットの行動から、それに目的を達成させると悪い事になる、と言う予想を立てていたハンターたちは、前線に居る敵の殲滅ならず、スキレットの撃破をも狙っていた。だが、そんな彼らの行動プランは、二つに分かれていたのだ
――先に半数の者が前進し、ウィップアームと呼ばれる敵の攻撃を誘ってその後に残りの者が突破すると言う物。
――全員で突進し、突破できた者からスキレットの攻撃に移ると言う物。
結果として、マッシュとキール・スケルツォ(ka1798)の二名が様子を見て後ろに残り、残りの六人が一斉に突出。前線に出る事となる。
●Speed of an Action
「ぬぬっ!またここか! ……あのキモチワルイ敵はいないだろうな! 出てきたら怒るぞ!」
前回、同じ戦場で相対した鎧の歪虚の事を思い出し、嫌悪感を露にするラグナ。
だが、その様な事を考える時間を、歪虚たちが与えてくれる事はない。
「キッ!」
指揮官と思われるスキレットの声で、驚くべき精度で彼らは統制された行動を取る。
「来るか……!?」
ブレードを構えるラグナ・グラウシード(ka1029)。
「ふっふっふ、これで私を捉えられまい!」
刃を外に向けた状態で構え、笑う。確かにこれならば、ウィップが巻きつこうとすれば切れる。故に引っ張られないだろう。
が、然し。鞭は彼には向けられなかった。それもその筈。6人が前に出たのだ。単純計算でも彼が狙われない確率は一定量ある。ましてや、敵はスキレットの指揮を得ている。狙うと面倒なハンターを狙わないのは自明の理である。
そして、その鞭がどこに向けられたかと言えば――ウィンスと、三日月 壱(ka0244)の二名であった。
「っち、予想通りだっての……!」
引っ張られるウィンスが吐き捨てながら、己に巻きついた鞭を全力で掴む。ここまでは予想通り。四人までが引き寄せられ、そして残りの者がその機に前進する――。
予想外の事があったとすれば、敵の目的と、『それを達成するための動きの早さ』か。
「うぐっ!?」
引き寄せられたと思った次の瞬間、別のウィップアームの蹴りを受けてしまい、壱はザ・ソーに叩き付けられる。若しも他者が先に狙われていたのであれば、或いはそのモーションを見て回避に繋げられたかもしれない。だが、不幸な事に……この場で最初に狙われたのは、観察しようとしていた彼なのだ。
「ぐおっ!?」
次の瞬間、ウィンスも同じように、回る刃の支柱に叩きつけられた。
――ウィップアームたちが取った行動は、二ペアによる連携。
事前の移動配置によりペア内のお互いの距離を縮め、一体が引き寄せた直後にもう一体が蹴りを放ち、ワンアクションで直接ハンターたちをザ・ソーへと送り込むと言う物である。
臆病なスキレットが、この指揮を行ったのには理由がある。
多くのハンターたちの手に銃が見受けられ、距離をとっても自身は安全にならない、とこの歪虚は判断した。故に1回でも自身への攻撃数が少なくなるよう、スキレットは最速でハンターたちの『数を減らす事』に集中したのだ。
割り込み行動を以ってして離れようとも、一手目からの直叩き付けを想定していなかった彼らは既に全速力で移動しており、勢いが衰えている。
再度の動きは――取れない。
「今の内だ……倒せっ!!」
叫ぶウィンス。今こそが最大のチャンスなのだ。六人動けていれば、猶予時間内に敵を撃破する事は難しくないだろう。
次の瞬間、彼の背を、ザ・ソーの刃が抉る。
鋭い刃。単純ながら極められたその機構の威力は熟練の戦士の一撃にも劣るまい。だが、ウィンスは耐えた。堅守の構えを以って盾で急所から刃を逸らし――即刻斬り倒される事を防いだのである。
「くっそ、ならてめぇも動けなくしてやらぁ!」
普段の彼とは違う、荒々しい口調で罵りながら、全力で己に絡みつく鞭をつかみ、引っ張る壱。
力が拮抗する。かと思うと、僅かに鞭の力が弱まる。だが、次の瞬間、一気に鞭は彼の掴んだ腕ごと、下方へと引っ張る。
――丁度、その首が、ザ・ソーの刃に当たるように。
「ぐっ!?」
咄嗟に頭を横にずらし、刃の直撃を避ける。だが、代わりに、肩から背中までを、ザ・ソーの刃が強烈に抉ることになった。
●Attack Turn
背中の痛みを忘れるように奥歯をかみ締め、飽くまでも頭を冷静に、壱は考える。
紅の目が見つめるは、前方に居る小さなゴブリン。
「っち、そう簡単に奥には入らせてはくれねぇってか」
武器を構えなおしたキール・スケルツォ(ka1798)が愚痴る。
先ほど彼はスキレットと扉の間に入り込み、その行動を阻害しようとしたが、流石に全力ダッシュした後では無理があったようで、スキレットを押しのける事すらままならない。
「なら助けてあげるぜー!」
答えるような、壱の声。
――その目の紅が、一層輝きを増し、凶光と化して、臆病なゴブリンの背後を捉える。
「臆病な奴には、やっぱコイツが効くんじゃねーの?」
睨み付けたその眼光が、ゴブリンに恐慌を齎し、混乱させる。
「っと、いいタイミングだっ!」
すかさずその間に滑り込むキール。左へ刃を煌かせたのは飽くまでもフェイント。即座に返した刃が、正面からスキレットの腹部を抉る。すぐさまに口に銜えたライトをスキレットに向け、仲間たちの追撃を呼ぶ。
「機を逃すわけにはいかないな」
応えたのはロニ。盾の裏に隠したサーベルを、盾を鞘として使いすれ違いざまに一閃。
ダメージが大きいわけではないが、体勢を崩したスキレットには更なる追撃が待っていた。
「前、がら空きだよ☆」
突き刺さる東雲 禁魄(ka0463)のダガー。それをマッシュが更に蹴りこみ、そのまま跳躍して上方からサーベルを振り下ろす。直撃には至らなかったが、掠めている。
「後もうちょっとだ……!」
魔導拳銃を構えるウィンス。吐き出された暴風の弾丸は確かにスキレットに命中していた。
キールの銜えたライトが、現在のスキレットの状況を映し出す。全身が傷つき、ほぼ瀕死の状態。
あと少しで倒せる。そうウィンスが確信する。
一方、ウィップアームたちも、フリーになった訳ではなかった。
「なんともやりづらい敵ですね、まるで簡易の砦……」
ミリア・コーネリウス(ka1287)の投げつけたランタンの火はザ・ソーの回転にかき消され、消えている。
元々身軽になるための行動であったためそこまで期待していたわけではないが……それでも初手に力が溜められないと言う事態を生じさせてしまった。
踏み込みが足らないが、ミリアはそれを問題とせず。渾身の大剣の振り下ろしが、背後から目標とするウィップアームを捉える。
脳裏に浮かぶのは、参戦できなかった仲間の姿。
『参戦できなかった俺の分まで、でっかい一発入れてこい』
仲間の応援をその剣に乗せるかのように、ミリアの大剣が輝き。強烈な一閃が肩口から腰までウィップアームを引き裂く。急所に当たらなかったのが唯一の問題か。でなければ今の一撃で倒せていたかもしれない。
別のウィップアームには、ラグナが対応していた。
「敵が応じねば己から向かい挑戦すべし――『神聖騎士教則本』にもそう書いてあるからな!」
自身が捕縛されなかったのは少し予想外ではあったが、ならば自ら敵に向かっていけばいい。
盾で視界を遮り、そのまま身を翻すような強打。頭部を叩きつけられたウィップアームが、その場に膝を衝く。
「さぁ、これでも私を見ないか!」
●Lights out
指揮官が混乱している現状。忠実な『兵隊』たるウィップアームたちは、如何なる行動を取るか。
――答えは『指揮官が最後に行った命令を繰り返す』事。
ウィンス、壱はどちらもこの一手で攻撃を行った。それは即ち、彼らが蹴られた際に即時ザ・ソーより離れると言う選択肢を放棄した事を意味する。
故に、彼らに腕を掴まれたウィップアームは、遠慮なく彼らに向かって再度の蹴撃を放つ。
「ぐっ……」
「うっ……」
二人は共に、再度ザ・ソーに叩き付けられる。
そして、残りの二体――それぞれミリアとラグナに一撃を受けた者――が、連携攻撃を開始する。
伸ばされた鞭が狙うはキール。スキレットと扉の間に割り込む事でウィップアームからの攻撃の射線を遮る事を試みていたのだが、怯えたスキレットが逃げ惑ったせいで、射線が再度露出したのであった。
「っ……!」
完全に意識をスキレットに向けていた彼だったが、迫る風斬り音に反応し、咄嗟に鞘で受ける事を試みる。
だが、僅かに遅い。
うねる鞭は鞘ではなく、低めの軌道で彼の足元に迫っていた。
「とと、そこは危ないよ☆」
隣に居た禁魄がダガーを振るい、両手の鞭のうち一本に当てて逸らす事に成功するが――。
「おっと☆」
鎧片を踏みつけてしまい、滑ったが故にもう一本を逸らすには至らない。それどころか衝撃で持っていたたいまつを取り落とし、それは地を転がり、火が消えてしまう。元々両手にそれぞれ武器を持ち、その上からたいまつを持つと言う不安定な体勢だったのだ。
キールのライトは全力でスキレットに向けられており――劣悪な足場と、足元より迫る鞭腕を照らし出す余裕は無かったのである。
引き寄せられたキールに、そのまま蹴撃が迫る。鞭の根元を掴もうとするが、絡め取られたのが腕ではなく脚だった上、両手にそれぞれ刀と受けるための鞘を所持していたため体勢が悪い。どちらかを放棄する覚悟があったのならば、また違っただろうが――その手は空を切り、そのままキールもまた、ザ・ソーに叩き付けられる。
――回る刃は、無慈悲にウィンスと壱の意識を刈り取り、斬り倒し、キールに手傷を負わせる。
「このっ……!」
ミリアの大剣が上段から渾身の力を込めて振り下ろされ、既に瀕死であったウィップアームを叩き潰す。
「まだ倒れないか!」
ラグナの剣も、また無防備なウィップアームを背後から抉るが、こちらは命を奪い取るには至らない。
「む……」
ロニのサーベルは空を切り、地にある鎧片とぶつかって火花を散らす。
「暗いな」
ハンターたちの内、ロニ、マッシュは有効な光源を持たず、禁魄のたいまつは先の一合にて消えている。
――ウィップアームたちは、作戦通りに「光源を持ち」「スキレットを狙う」敵を優先とした。故にこの三名は、彼らの引き寄せのターゲットから外れていたのだった。
暗闇、かつ足場の悪い状態で、体が小さいスキレットを狙うのは非常に困難となる。
「ちょこまかと動くものだね☆」
禁魄の刀が掠めた手応えはする。が、直撃に至ってはいない。それどころかこの暗闇の中、むやみに振り回せば同士討ちにすらなりかねない。それに成っていないのは、キールがまだ何とかライトをこちらに向けているお陰だろう。
「流石にこれは戦いにくいね」
攻撃直後にサーベルを引き戻し、反撃に備えながら、マッシュが愚痴る。
「ちょっと待ってろ、今戻る――」
口にライトを銜えなおし、キールが前進しようとする。
――ガクンと、その脚が引っ張られる。
「っ!?」
見れば、そこには小さな地割れ。それが彼の足を挟みこんでいたのであった。
恐怖に陥ったスキレットは、恐らく一番最初に追撃してきた彼を一番恐れていたのだろう。
暗闇を最大の利とし、ウィップアームの鞭は禁魄、マッシュを引き寄せ、禁魄をザ・ソーに叩き付ける。
暗黒の中ならばハンターたちの脅威は去ったと判断したのか、落ち着きを取り戻したスキレットは再度、封印の解除に取り掛かる。
回る刃は無慈悲にキールの脇腹に食い込み、血飛沫を噴出させる。
「単純、かつ暴力的な機械だねぇ……」
その勢いでの一撃を受けた禁魄の傷も、また浅くはない。
●Inside the Darkness
「厳しい、か……」
マッシュのサーベルは、壁に突き刺さる。その後ろで、ロニがキールにヒールを仕掛ける。
直後、飛来する鞭がマッシュを捕縛し、封印の解除を終えたスキレットの拳が叩き込まれる直後に彼を引き離す。
遺跡内に向かうスキレットをわき目に見、ロニは決断する。
「仕方ない、先ずはこの戦闘を終わらせよう」
その後の戦闘は一方的であった。
ザ・ソーからの脱出よりも攻撃を優先したマッシュ、禁魄が斬り倒される物の、その前に彼らの刃はウィップアームの一体を撃滅し。
「全く以ってしつこかったぞ!最後まで無視してくれて……!」
もう一体は、ラグナの刃に倒れた。
そして、最後の一体は、ロニとミリアの連続攻撃の前に、程なく滅した。
「……大丈夫か?」
「……ああ」
ヒールをかけられ、何とか歩く力を取り戻したウィンスは、目の前の扉を見る。
――そもそも、前回来た時、扉は開いていたはずだ。
では、それを封印したのは、誰なのだろうか?
だが、現状、探索を続けるには、余りにも戦力が厳しい。
――ハンターたちは、後続に調査を任せる事とし、一度、帰途についた。
●幕間~Wake up Call~
「……だーれが騒いでるのかと思ったら、お前か。ってことは、もう時間か?」
無言でスキレットが頷く。
「……ま、そろそろこの静養生活にも飽きてきたとこだ。俺が言うべき台詞じゃないかもだけどな。予備に来なくてもいずれ俺は出ただろうよ」
「キキッ」
己の頭を指差すスキレット。
「あ? ああ、そういうことか。何か伝えたい事があるんだな?」
手が、スキレットの頭に当てられる。
一刻の静寂の後、スキレットは床に倒れこむ。――まるで、己の役割は果たされた、と言わんばかりに。
「なるほど……俺がいねぇ間、そんな色々と起こっていたのか」
ぽりぽりと、その場に取り残された白衣の男は頭を掻く。
「ま、とりあえず、めんどくせぇのは出てから考えようか」
「……奇遇だな」
闇の中に、とある一体の小人型の歪虚の姿を認めた瞬間。ウィンス・デイランダール(ka0039)は、己の幸運に感謝する。
――あの時は逃がしてしまったが、まさかこのような所で出会えるとは。
自然と口角に笑みが浮かぶのを感じながら、ウィンスは両手に武器を抜き、敵へと向かう。
「仲良くしようぜ――スキレット!」
「さて、どうにも嫌な予感がする」
「ええ、何やら歪虚がよからぬ事を……ですか」
ロニ・カルディス(ka0551)の言葉に、 マッシュ・アクラシス(ka0771)が頷く。
「何かガルヴァン氏から情報が得られれば良かったのですが――」
如何せん、この者たちを如何に排除するかの話し合いに時間を取られた。そこの詳細を得る時間が欠如していた。
「こういう時はさっさと仕留めるに限るな」
ウィンスの後に続くように、飛び出すロニ。マッシュは逆に、様子見の為にその場に待機する。
――スキレットの行動から、それに目的を達成させると悪い事になる、と言う予想を立てていたハンターたちは、前線に居る敵の殲滅ならず、スキレットの撃破をも狙っていた。だが、そんな彼らの行動プランは、二つに分かれていたのだ
――先に半数の者が前進し、ウィップアームと呼ばれる敵の攻撃を誘ってその後に残りの者が突破すると言う物。
――全員で突進し、突破できた者からスキレットの攻撃に移ると言う物。
結果として、マッシュとキール・スケルツォ(ka1798)の二名が様子を見て後ろに残り、残りの六人が一斉に突出。前線に出る事となる。
●Speed of an Action
「ぬぬっ!またここか! ……あのキモチワルイ敵はいないだろうな! 出てきたら怒るぞ!」
前回、同じ戦場で相対した鎧の歪虚の事を思い出し、嫌悪感を露にするラグナ。
だが、その様な事を考える時間を、歪虚たちが与えてくれる事はない。
「キッ!」
指揮官と思われるスキレットの声で、驚くべき精度で彼らは統制された行動を取る。
「来るか……!?」
ブレードを構えるラグナ・グラウシード(ka1029)。
「ふっふっふ、これで私を捉えられまい!」
刃を外に向けた状態で構え、笑う。確かにこれならば、ウィップが巻きつこうとすれば切れる。故に引っ張られないだろう。
が、然し。鞭は彼には向けられなかった。それもその筈。6人が前に出たのだ。単純計算でも彼が狙われない確率は一定量ある。ましてや、敵はスキレットの指揮を得ている。狙うと面倒なハンターを狙わないのは自明の理である。
そして、その鞭がどこに向けられたかと言えば――ウィンスと、三日月 壱(ka0244)の二名であった。
「っち、予想通りだっての……!」
引っ張られるウィンスが吐き捨てながら、己に巻きついた鞭を全力で掴む。ここまでは予想通り。四人までが引き寄せられ、そして残りの者がその機に前進する――。
予想外の事があったとすれば、敵の目的と、『それを達成するための動きの早さ』か。
「うぐっ!?」
引き寄せられたと思った次の瞬間、別のウィップアームの蹴りを受けてしまい、壱はザ・ソーに叩き付けられる。若しも他者が先に狙われていたのであれば、或いはそのモーションを見て回避に繋げられたかもしれない。だが、不幸な事に……この場で最初に狙われたのは、観察しようとしていた彼なのだ。
「ぐおっ!?」
次の瞬間、ウィンスも同じように、回る刃の支柱に叩きつけられた。
――ウィップアームたちが取った行動は、二ペアによる連携。
事前の移動配置によりペア内のお互いの距離を縮め、一体が引き寄せた直後にもう一体が蹴りを放ち、ワンアクションで直接ハンターたちをザ・ソーへと送り込むと言う物である。
臆病なスキレットが、この指揮を行ったのには理由がある。
多くのハンターたちの手に銃が見受けられ、距離をとっても自身は安全にならない、とこの歪虚は判断した。故に1回でも自身への攻撃数が少なくなるよう、スキレットは最速でハンターたちの『数を減らす事』に集中したのだ。
割り込み行動を以ってして離れようとも、一手目からの直叩き付けを想定していなかった彼らは既に全速力で移動しており、勢いが衰えている。
再度の動きは――取れない。
「今の内だ……倒せっ!!」
叫ぶウィンス。今こそが最大のチャンスなのだ。六人動けていれば、猶予時間内に敵を撃破する事は難しくないだろう。
次の瞬間、彼の背を、ザ・ソーの刃が抉る。
鋭い刃。単純ながら極められたその機構の威力は熟練の戦士の一撃にも劣るまい。だが、ウィンスは耐えた。堅守の構えを以って盾で急所から刃を逸らし――即刻斬り倒される事を防いだのである。
「くっそ、ならてめぇも動けなくしてやらぁ!」
普段の彼とは違う、荒々しい口調で罵りながら、全力で己に絡みつく鞭をつかみ、引っ張る壱。
力が拮抗する。かと思うと、僅かに鞭の力が弱まる。だが、次の瞬間、一気に鞭は彼の掴んだ腕ごと、下方へと引っ張る。
――丁度、その首が、ザ・ソーの刃に当たるように。
「ぐっ!?」
咄嗟に頭を横にずらし、刃の直撃を避ける。だが、代わりに、肩から背中までを、ザ・ソーの刃が強烈に抉ることになった。
●Attack Turn
背中の痛みを忘れるように奥歯をかみ締め、飽くまでも頭を冷静に、壱は考える。
紅の目が見つめるは、前方に居る小さなゴブリン。
「っち、そう簡単に奥には入らせてはくれねぇってか」
武器を構えなおしたキール・スケルツォ(ka1798)が愚痴る。
先ほど彼はスキレットと扉の間に入り込み、その行動を阻害しようとしたが、流石に全力ダッシュした後では無理があったようで、スキレットを押しのける事すらままならない。
「なら助けてあげるぜー!」
答えるような、壱の声。
――その目の紅が、一層輝きを増し、凶光と化して、臆病なゴブリンの背後を捉える。
「臆病な奴には、やっぱコイツが効くんじゃねーの?」
睨み付けたその眼光が、ゴブリンに恐慌を齎し、混乱させる。
「っと、いいタイミングだっ!」
すかさずその間に滑り込むキール。左へ刃を煌かせたのは飽くまでもフェイント。即座に返した刃が、正面からスキレットの腹部を抉る。すぐさまに口に銜えたライトをスキレットに向け、仲間たちの追撃を呼ぶ。
「機を逃すわけにはいかないな」
応えたのはロニ。盾の裏に隠したサーベルを、盾を鞘として使いすれ違いざまに一閃。
ダメージが大きいわけではないが、体勢を崩したスキレットには更なる追撃が待っていた。
「前、がら空きだよ☆」
突き刺さる東雲 禁魄(ka0463)のダガー。それをマッシュが更に蹴りこみ、そのまま跳躍して上方からサーベルを振り下ろす。直撃には至らなかったが、掠めている。
「後もうちょっとだ……!」
魔導拳銃を構えるウィンス。吐き出された暴風の弾丸は確かにスキレットに命中していた。
キールの銜えたライトが、現在のスキレットの状況を映し出す。全身が傷つき、ほぼ瀕死の状態。
あと少しで倒せる。そうウィンスが確信する。
一方、ウィップアームたちも、フリーになった訳ではなかった。
「なんともやりづらい敵ですね、まるで簡易の砦……」
ミリア・コーネリウス(ka1287)の投げつけたランタンの火はザ・ソーの回転にかき消され、消えている。
元々身軽になるための行動であったためそこまで期待していたわけではないが……それでも初手に力が溜められないと言う事態を生じさせてしまった。
踏み込みが足らないが、ミリアはそれを問題とせず。渾身の大剣の振り下ろしが、背後から目標とするウィップアームを捉える。
脳裏に浮かぶのは、参戦できなかった仲間の姿。
『参戦できなかった俺の分まで、でっかい一発入れてこい』
仲間の応援をその剣に乗せるかのように、ミリアの大剣が輝き。強烈な一閃が肩口から腰までウィップアームを引き裂く。急所に当たらなかったのが唯一の問題か。でなければ今の一撃で倒せていたかもしれない。
別のウィップアームには、ラグナが対応していた。
「敵が応じねば己から向かい挑戦すべし――『神聖騎士教則本』にもそう書いてあるからな!」
自身が捕縛されなかったのは少し予想外ではあったが、ならば自ら敵に向かっていけばいい。
盾で視界を遮り、そのまま身を翻すような強打。頭部を叩きつけられたウィップアームが、その場に膝を衝く。
「さぁ、これでも私を見ないか!」
●Lights out
指揮官が混乱している現状。忠実な『兵隊』たるウィップアームたちは、如何なる行動を取るか。
――答えは『指揮官が最後に行った命令を繰り返す』事。
ウィンス、壱はどちらもこの一手で攻撃を行った。それは即ち、彼らが蹴られた際に即時ザ・ソーより離れると言う選択肢を放棄した事を意味する。
故に、彼らに腕を掴まれたウィップアームは、遠慮なく彼らに向かって再度の蹴撃を放つ。
「ぐっ……」
「うっ……」
二人は共に、再度ザ・ソーに叩き付けられる。
そして、残りの二体――それぞれミリアとラグナに一撃を受けた者――が、連携攻撃を開始する。
伸ばされた鞭が狙うはキール。スキレットと扉の間に割り込む事でウィップアームからの攻撃の射線を遮る事を試みていたのだが、怯えたスキレットが逃げ惑ったせいで、射線が再度露出したのであった。
「っ……!」
完全に意識をスキレットに向けていた彼だったが、迫る風斬り音に反応し、咄嗟に鞘で受ける事を試みる。
だが、僅かに遅い。
うねる鞭は鞘ではなく、低めの軌道で彼の足元に迫っていた。
「とと、そこは危ないよ☆」
隣に居た禁魄がダガーを振るい、両手の鞭のうち一本に当てて逸らす事に成功するが――。
「おっと☆」
鎧片を踏みつけてしまい、滑ったが故にもう一本を逸らすには至らない。それどころか衝撃で持っていたたいまつを取り落とし、それは地を転がり、火が消えてしまう。元々両手にそれぞれ武器を持ち、その上からたいまつを持つと言う不安定な体勢だったのだ。
キールのライトは全力でスキレットに向けられており――劣悪な足場と、足元より迫る鞭腕を照らし出す余裕は無かったのである。
引き寄せられたキールに、そのまま蹴撃が迫る。鞭の根元を掴もうとするが、絡め取られたのが腕ではなく脚だった上、両手にそれぞれ刀と受けるための鞘を所持していたため体勢が悪い。どちらかを放棄する覚悟があったのならば、また違っただろうが――その手は空を切り、そのままキールもまた、ザ・ソーに叩き付けられる。
――回る刃は、無慈悲にウィンスと壱の意識を刈り取り、斬り倒し、キールに手傷を負わせる。
「このっ……!」
ミリアの大剣が上段から渾身の力を込めて振り下ろされ、既に瀕死であったウィップアームを叩き潰す。
「まだ倒れないか!」
ラグナの剣も、また無防備なウィップアームを背後から抉るが、こちらは命を奪い取るには至らない。
「む……」
ロニのサーベルは空を切り、地にある鎧片とぶつかって火花を散らす。
「暗いな」
ハンターたちの内、ロニ、マッシュは有効な光源を持たず、禁魄のたいまつは先の一合にて消えている。
――ウィップアームたちは、作戦通りに「光源を持ち」「スキレットを狙う」敵を優先とした。故にこの三名は、彼らの引き寄せのターゲットから外れていたのだった。
暗闇、かつ足場の悪い状態で、体が小さいスキレットを狙うのは非常に困難となる。
「ちょこまかと動くものだね☆」
禁魄の刀が掠めた手応えはする。が、直撃に至ってはいない。それどころかこの暗闇の中、むやみに振り回せば同士討ちにすらなりかねない。それに成っていないのは、キールがまだ何とかライトをこちらに向けているお陰だろう。
「流石にこれは戦いにくいね」
攻撃直後にサーベルを引き戻し、反撃に備えながら、マッシュが愚痴る。
「ちょっと待ってろ、今戻る――」
口にライトを銜えなおし、キールが前進しようとする。
――ガクンと、その脚が引っ張られる。
「っ!?」
見れば、そこには小さな地割れ。それが彼の足を挟みこんでいたのであった。
恐怖に陥ったスキレットは、恐らく一番最初に追撃してきた彼を一番恐れていたのだろう。
暗闇を最大の利とし、ウィップアームの鞭は禁魄、マッシュを引き寄せ、禁魄をザ・ソーに叩き付ける。
暗黒の中ならばハンターたちの脅威は去ったと判断したのか、落ち着きを取り戻したスキレットは再度、封印の解除に取り掛かる。
回る刃は無慈悲にキールの脇腹に食い込み、血飛沫を噴出させる。
「単純、かつ暴力的な機械だねぇ……」
その勢いでの一撃を受けた禁魄の傷も、また浅くはない。
●Inside the Darkness
「厳しい、か……」
マッシュのサーベルは、壁に突き刺さる。その後ろで、ロニがキールにヒールを仕掛ける。
直後、飛来する鞭がマッシュを捕縛し、封印の解除を終えたスキレットの拳が叩き込まれる直後に彼を引き離す。
遺跡内に向かうスキレットをわき目に見、ロニは決断する。
「仕方ない、先ずはこの戦闘を終わらせよう」
その後の戦闘は一方的であった。
ザ・ソーからの脱出よりも攻撃を優先したマッシュ、禁魄が斬り倒される物の、その前に彼らの刃はウィップアームの一体を撃滅し。
「全く以ってしつこかったぞ!最後まで無視してくれて……!」
もう一体は、ラグナの刃に倒れた。
そして、最後の一体は、ロニとミリアの連続攻撃の前に、程なく滅した。
「……大丈夫か?」
「……ああ」
ヒールをかけられ、何とか歩く力を取り戻したウィンスは、目の前の扉を見る。
――そもそも、前回来た時、扉は開いていたはずだ。
では、それを封印したのは、誰なのだろうか?
だが、現状、探索を続けるには、余りにも戦力が厳しい。
――ハンターたちは、後続に調査を任せる事とし、一度、帰途についた。
●幕間~Wake up Call~
「……だーれが騒いでるのかと思ったら、お前か。ってことは、もう時間か?」
無言でスキレットが頷く。
「……ま、そろそろこの静養生活にも飽きてきたとこだ。俺が言うべき台詞じゃないかもだけどな。予備に来なくてもいずれ俺は出ただろうよ」
「キキッ」
己の頭を指差すスキレット。
「あ? ああ、そういうことか。何か伝えたい事があるんだな?」
手が、スキレットの頭に当てられる。
一刻の静寂の後、スキレットは床に倒れこむ。――まるで、己の役割は果たされた、と言わんばかりに。
「なるほど……俺がいねぇ間、そんな色々と起こっていたのか」
ぽりぽりと、その場に取り残された白衣の男は頭を掻く。
「ま、とりあえず、めんどくせぇのは出てから考えようか」
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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教えてガルヴァンさん ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/11/11 17:55:30 |
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作戦会議室 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/11/14 02:40:00 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/10 23:10:57 |