ゲスト
(ka0000)
【界冥】【陶曲】歪虚機体の出現
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/09/25 09:00
- 完成日
- 2017/10/02 23:33
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
自由都市同盟。
冒険都市リゼリオに続く街道。
「人魚の島から回収した海涙石が、ウチュウとか言う場所でも使えるなんて、すごいね。その場所って、空気がないんでしょ?」
ラキ(kz0002)は、魔導トラックの後部座席に座り、隣にいるマクシミリアン・ヴァイス(kz0003)に話しかけた。
「詳しい原理は、俺には分からんが、人魚の結界術は、空気がない場所でも効果を発揮するらしいな」
魔術師協会広報室は、以前から同盟海域にある人魚の島から『海涙石』を回収して輸送していたが、ハンターズソサエティに頼まれて、リゼリオまで運ぶことになった。
今回は魔導トラックの荷台に『海涙石』を積み込み、護衛として参加しているハンターたちも、それぞれ自分で決めた場所で警戒していた。
ラキとマクシミリアンは、後方からの襲撃に備えて、最後尾を走っている4台目の魔導トラックに乗っていた。運転をしているのは、魔術師のスコットだ。彼は、魔術師協会広報室から派遣されたハンターだった。
前方を走っていた魔導トラックから通信が入り、4台の魔導トラックが急停車した。
「どうした?」
スコットが、トランシーバーで呼びかける。一番前の魔導トラックにいた魔術師から連絡が入った。
「オート・パラディンと歪虚CAMらしきヴォイドが出現した。気を付けろ。『海涙石』を奪われたら、大変なことになる。噂では、カッツォ・ヴォイは宝石を集めるのが趣味らしいからな」
「やっぱり、そうだったんだ。宝石を集めるのが趣味と言ってもさ、カッツォ・ヴォイの場合は手下にするために奪ってるらしいよね」
ラキはトラックから降りると、まずは後方の警戒をすることにした。
「カッツォは、特に精霊が宿っている宝石を狙っているようだな。海涙石まで奪われたら、それこそ、カッツォの思う壺だ」
マクシミリアンもトラックから降りて、ロングソードを構えた。
前方の魔導トラックを見遣れば、その先に歪虚機体が4体、並んでいた。
護衛として参加していたハンターたちも、持ち場に付き始めた。
「どっちが先手を打つかで、戦況の流れが変わる……なんとしてでも、海涙石を守るんだ」
果たして、ハンターたちは、この危機から脱することができるのだろうか?
冒険都市リゼリオに続く街道。
「人魚の島から回収した海涙石が、ウチュウとか言う場所でも使えるなんて、すごいね。その場所って、空気がないんでしょ?」
ラキ(kz0002)は、魔導トラックの後部座席に座り、隣にいるマクシミリアン・ヴァイス(kz0003)に話しかけた。
「詳しい原理は、俺には分からんが、人魚の結界術は、空気がない場所でも効果を発揮するらしいな」
魔術師協会広報室は、以前から同盟海域にある人魚の島から『海涙石』を回収して輸送していたが、ハンターズソサエティに頼まれて、リゼリオまで運ぶことになった。
今回は魔導トラックの荷台に『海涙石』を積み込み、護衛として参加しているハンターたちも、それぞれ自分で決めた場所で警戒していた。
ラキとマクシミリアンは、後方からの襲撃に備えて、最後尾を走っている4台目の魔導トラックに乗っていた。運転をしているのは、魔術師のスコットだ。彼は、魔術師協会広報室から派遣されたハンターだった。
前方を走っていた魔導トラックから通信が入り、4台の魔導トラックが急停車した。
「どうした?」
スコットが、トランシーバーで呼びかける。一番前の魔導トラックにいた魔術師から連絡が入った。
「オート・パラディンと歪虚CAMらしきヴォイドが出現した。気を付けろ。『海涙石』を奪われたら、大変なことになる。噂では、カッツォ・ヴォイは宝石を集めるのが趣味らしいからな」
「やっぱり、そうだったんだ。宝石を集めるのが趣味と言ってもさ、カッツォ・ヴォイの場合は手下にするために奪ってるらしいよね」
ラキはトラックから降りると、まずは後方の警戒をすることにした。
「カッツォは、特に精霊が宿っている宝石を狙っているようだな。海涙石まで奪われたら、それこそ、カッツォの思う壺だ」
マクシミリアンもトラックから降りて、ロングソードを構えた。
前方の魔導トラックを見遣れば、その先に歪虚機体が4体、並んでいた。
護衛として参加していたハンターたちも、持ち場に付き始めた。
「どっちが先手を打つかで、戦況の流れが変わる……なんとしてでも、海涙石を守るんだ」
果たして、ハンターたちは、この危機から脱することができるのだろうか?
リプレイ本文
「先手を取るには、これね」
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)が『先手必勝』を宣言すると、『ソウルトーチ』による炎のオーラを全身に纏った。『蒼刃共鳴』が発動し、蒼姫刀「魂奏竜胆」が蒼白い雷光を纏い、輝いていた。
「一気に詰めます」
エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は帝国軍用魔導トライクに騎乗して、走り出した。
サイドカーには、ユーリが乗っていることもあり、最初に反応したのは、歪虚CAM二体だった。
「海涙石まで奪われて、カッツォ・ヴォイに利用されるようなことがあれば、精霊の命まで奪われる危険がある……それだけは、絶対に阻止してみせる」
ユーリは、精霊の命を弄ぶ行為を見過ごすつもりはなかった。暗躍するカッツォの企み……彼は表舞台にはあまり出ず、宝石と自動兵器を融合させて、オート・パラディンSを生み出していた。
エラは躊躇うこともなく、歪虚CAM二体を目掛けて、魔導トライクを走らせ、武者兜「随身」から『ガウスジェイル』の結界が空間に拡張していく。
「これで、歪虚CAMを自分に引き付けることができれば」
「ユーリたちのおかげで、パラディンを優先できそうね」
アリア・セリウス(ka6424)は、キヅカ・リク(ka0038)が運転する帝国軍用魔導トライクのサイドカーに乗り、移動はリクに任せて、『ソウルトーチ』を発動させ、オート・パラディンSを二体、引き付けることができた。
アリアは次の攻撃に備えて『織花・祈奏』を活性化させた。
「こちらキヅカ、魔導トラック隊は、一旦、後方へ離脱してください」
トランシーバーで、リクの連絡を受けた魔術師たちは、海涙石を積んだ魔導トラックを運転して、一台ずつ、バックしていく。ユーリたちが敵を引き付けている間に、魔導トラック四台は、敵から離れることができた。
歪虚CAM二体は最初の位置から動くことはなかったが、エラに狙いを定めてレーザーを放ってきた。エラは魔導トライクを運転しながら、法術盾「不壊なる揺光」で受け流す。一回目に発動したガウスジェイルの結界によって、歪虚CAMは強制的にエラに対して攻撃をしかけていた。
サイドカーに乗っていたユーリは、パリィグローブ「ディスターブ」で防御態勢を取り、戦況を把握していた。
「歪虚CAMの狙いが、エラに集中してる……なら、私は」
魔導トライクの移動が終わるまで、ユーリは武器を構えて身構える。
リクの運転する魔導トライクが『ライディングファイト』の発動で疾走していく。オート・パラディンSが高速移動した魔導トライクに巻き込まれ、さらにアリアの『マーキス・ソング』が響き渡り、龍翼鎌「クータスタ」による『天蓋花・旋舞』の技で、パラディンの身体が切り裂かれていく。『織花・祈奏』によって、燐光のようなマテリアルが舞い散り、踊る。
「脚を狙うには、接近し過ぎたかしら」
魔導トライクのサイドカーから降りたアリアは、オート・パラディンSの額に埋め込まれているエメラルドの宝石を見つめていた。
できれば、エメラルドの宝石を助けたい。
宝石には、精霊が宿っている可能性があるからだ。
ユーリはサイドカーから降り、蒼姫刀「魂奏竜胆」を構えたまま、オート・パラディンSに接近すると『薙ぎ払い』を繰り出した。
「今度はきっちりと救ってみせる。斬るべきは、その忌まわしき機械の器のみ。この刃の一撃を以て、苦しみを終わらせる…っ」
『蒼刃共鳴』によって蒼白い雷光が一筋の刃と化して、オート・パラディンSの脚部を切り裂き、機械の部品が飛び散る。
ユーリの攻撃により凄まじい衝撃が迸るが、オート・パラディンSの額に埋め込まれた宝石は、傷一つなかった。
エラは二回目に発動させた『ガウスジェイル』の結界を駆使して、歪虚CAMを自分に引き寄せ、自ら囮になっていた。
「こちらは私に任せてください」
「ジェイさん、ありがとう」
リクはアリアと隣接し、オート・パラディンSを狙い、【豪炎】を撒き散らした。敵の胴部に命中し、かなりのダメージを与えていた。
「人も精霊も、明日がある。闇に堕ち、光を喪い消える者を見たくない、救いたいの……っ!」
アリアの『マーキス・ソング』が明日への希望を祈り、さらに詠唱が続く。そして、唄い、舞いながら、『織花・祈奏』を纏った龍翼鎌「クータスタ」を構え、『天蓋花・旋舞』が風のごとく閃く。
オート・パラディンS、二体の身体が消滅し、額にあったエメラルドが地面に転がっていく。
「よし、宝石だけは残った」
リクはエメラルドを救うことができればと、『機導浄化術・浄癒』を発動させた。
ユーリも、その様子を少し緊張気味に窺っていた。
だが、宝石は闇に包まれたような色合いに輝き、気が付けば消滅していた。
「浄癒の効果がない? ……まさか、完全に歪虚化してしまったのか?」
目の前で宝石が消滅してしまい、リクは悔しそうな表情をしていた。
浄癒は『味方』に対して効果を発揮する術であった。効果が無かったということは、エメラルドの宝石は『敵』の支配下にあり、浄化は難しいとも考えられた。
と、その時。
リクが携帯していたトランシーバーから声が聞こえてきた。
エラからの連絡だ。
「歪虚CAM二体が、魔導トラック隊に接近中。攻撃態勢を整えてください」
「こちらキヅカ、歪虚CAM二体の足止めに向かうよ」
リクは気持ちを切り替えて帝国軍用魔導トライクに騎乗して、駆け抜けていく。
「アリア、まだ宝石が残っている可能性もあるよ。歪虚CAMは僕たちに任せて」
そう言いつつも、リクは内心、アリアを敵の攻撃に巻き込むようなことだけはしたくなかったのだ。
「キヅカの言う通りだよ。少しでも可能性があるなら、私もできるだけのことはするからね」
ユーリはそう言いながら、リクの後を追って、駆け抜けていく。
「ありがとう、キヅカ、ユーリ」
アリアは、宝石の欠片があるのではと考えて、その場に残り、ロボットクリーナーを使いながら、周囲を巡回することにした。
●
帝国軍用魔導トライクを走らせていたエラは、歪虚CAM二体に追いつき、敵の前に廻り込んだ。
リクからトランシーバーで連絡を受けた魔術師たちが、『アースウォール』の壁を出現させ、魔導トラックの前方に土壁を作り、敵の行く手を塞いでいた。
歪虚CAM二体が、エラを捕まえようと触手を伸ばしていく。
キィィィィィン……。
エラの『攻性防壁』が発動……雷撃を纏った光の障壁が、歪虚CAM二体を弾き飛ばし、その衝撃で身動きが取れなくなっていた。
「麻痺したようですね」
「さすが、ジェイさん」
リクは帝国軍用魔導トライクで駆け抜け、【豪炎】の渦を放った。歪虚CAM二体は炎に巻き込まれ、そのうちの一体は爆発して消え去っていった。
「これで最後ね」
ユーリは肉迫すると、蒼姫刀「魂奏竜胆」を振り回し『薙ぎ払い』で、歪虚CAMの胴部を切り裂いた。
光が走るように、歪虚CAMの胴部が砕け散ると、爆発し、跡形もなく消え去っていた。
「歪虚機体は、全て倒せたようだけど……」
後ろを振り返るユーリ。
「エメラルドは見つからなかったわ」
アリアは、そう告げた後、想いを巡らしていた。それから、皆に言った。
「同盟内での採掘場所は限られているはず……エメラルドが採れる鉱山を調査すれば、汚染や宝石の流通がどうなっているのかも、分かるかもしれないわ」
「あ、そうか。よく考えたら、宝石って、鉱山で採れたものを加工したものだよね。鉱山に行ってみる価値はあるよ」
リクが励ますように、アリアの背を優しく叩いた。
●
「ここが、例の鉱山ね」
アリアは、魔術師協会広報室の魔術師たちに事情を説明して、とある鉱山に来ていた。
その頃、海涙石を積んだ魔導トラック隊は、無事にリゼリオに到着していた。
「この鉱山で作業していた人々が、ここ最近、体調不良で倒れたらしいのよ」
アリアの話を聞いて、リクとエラ、ユーリも同行していた。
エメラルドの原石を採掘していた作業員たちは、目眩や怠さを感じる日々が続いていたため、魔術師協会広報室に相談して、鉱山を調査してもらうことになっていた。
その間は、鉱山で働いていた人々は、自宅療養中だった。
「そっか。時期的に体調を崩す人も多いけど、念の為、僕たちも鉱山の調査をしておこうか」
リクが言うと、アリアが小さく頷く。
「無理を言ってしまって、ごめんなさいね。どうしても、マテリアル汚染のことが気になってしまって」
「私も宝石に宿っている精霊を助けたい気持ちは同じだよ。今後こそ、助けたいから」
ユーリの決意は固かった。
「もしかしたら、鉱山の中にヴォイドがいるかもしれませんから、私も行きます」
エラは帝国軍用魔導トライクの夜間走行用のライトを付けて、徐行しながら鉱山の中へと入った。
バイクのライトを頼りに、鉱山の奥へと進む一行。
30分ほど進むと、壁に突き当たった。周囲にはエメラルドの原石が輝いていた。
「……こんなところに、オートマトン?」
アリアが見つけたのは、気絶して倒れているオートマトンだった。
「キヅカ、気絶しているだけだったら助かるかもしれないわ」
「分かった。やってみるよ」
リクはオートマトンに対して『機導浄化術・浄癒』を施した。
しばらく様子を窺うと、オートマトンが目を開いた。よく見れば、少年のような顔立ちだった。
「大丈夫?」
アリアが優しく声をかけた。
オートマトンの少年は、綺麗な女性を初めて見たのか、ぼんやりと眺めていた。
「ボクは……どうしたんだろうか?」
「何か、覚えてる?」
ユーリの問いに、オートマトンはゆっくりと話し始めた。
「そうだ……白い仮面の男が現れて、ボクの仲間が連れ去られてしまった」
「どこへ行ったか、分かります?」
エラが真剣に言った。
「他は……何も覚えてない……分からない……ごめんなさい」
哀しそうな顔をしたオートマトンに、アリアは、そっと手を添えた。
「いいの。気にしないで。あなたが無事で良かったわ」
オートマトンの少年は、自分でも分からなかったが、とても安らかな気持ちになった。
目の前にいる覚醒者たちは、味方だ。
不思議と、雰囲気で、そう感じていたのだ。
鉱山から出ると、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)とラキ(kz0002)の姿があった。
「二人とも、来てくれたんだね」
リクが明るい笑みを浮かべると、ラキが微笑み返した。
「海涙石は全て、リゼリオに運ぶことができたよ。ちゃんと報告したくて、来ちゃった」
「報告、ありがとうございます」
エラは外に出ると、帝国軍用魔導トライクのライトを消した。
「ん? オートマトンか?」
マクシミリアンが怪訝な表情をしていた。
「マクシミリアン、安心して。彼は、鉱山の奥で気絶していただけ。キヅカが浄癒を施してくれたから、助かったのよ」
アリアがそう告げると、リクが少し照れていた。
「あ、えと、……アリアの提案で、鉱山に行ってみたんだ。そしたら、オートマトンがいてさ。彼を見つけ出すことができたのも、アリアがいてくれたから」
その言葉に、アリアは穏やかに微笑んだ。
「私一人では、オートマトンの少年を見つけることはできなかったわ。皆がいてくれたから……協力してくれたから、彼を救うことができたの」
ユーリも、うれしそうだった。
「オートマトンの額には、宝石はなかった。と言うことは、カッツォの手から逃れてきたとも考えられるよ」
ユーリが、オートマトンの手を引いて、ラキたちと引き合わせた。
「わー、あたしと同じくらいの年齢かな。……ん?」
首を傾げるラキ。
「はじめまして。ボクは……んー、名前は忘れました」
オートマトンの少年が、無邪気な笑みを見せた。
「あたしは、ラキ。まずは、君を本部まで招待するね」
「本部?」
今度は、オートマトンの少年が首を傾げていた。
その後、魔術師協会広報室から派遣された魔術師たちの調査により、エメラルドの鉱山には、『何者か』がマテリアルの流れを変えた痕跡があることが判明した。
鉱山の奥には、エメラルドの原石が残っていたこともあり、精霊の本体は無事であることも確認できた。
そのことを聞いたユーリとアリアは安堵していた。
「良かったね、アリア、ユーリちゃん」
リクは久し振りに同盟領に来て、仲間を助けることができて、一安心していた。
「依頼は無事に終わりましたし、オートマトンを発見することができました。今回のことを知ったら、カッツォ・ヴォイは、私たちのことをどう思うでしょうね」
エラは、晴れた空を見上げていた。
こうして、今回の調査内容は、本部へも報告されることになった。
オートマトンの少年は、しばらく本部の仕事を手伝うことになったようだ。
●
深淵の底。
闇に包まれた空間に、白い仮面を付けた男がいた。
その男の名は、カッツォ・ヴォイ。
「……まあ、いい。まだ打つ手はある。いよいよ面白くなって参りましたな……我が君、嫉妬王よ」
男は、そう呟き、一礼すると、闇の中へと消えていった。
バイオリンの音が響く。
それは、次の『曲』が始まる合図でもあった。
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)が『先手必勝』を宣言すると、『ソウルトーチ』による炎のオーラを全身に纏った。『蒼刃共鳴』が発動し、蒼姫刀「魂奏竜胆」が蒼白い雷光を纏い、輝いていた。
「一気に詰めます」
エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)は帝国軍用魔導トライクに騎乗して、走り出した。
サイドカーには、ユーリが乗っていることもあり、最初に反応したのは、歪虚CAM二体だった。
「海涙石まで奪われて、カッツォ・ヴォイに利用されるようなことがあれば、精霊の命まで奪われる危険がある……それだけは、絶対に阻止してみせる」
ユーリは、精霊の命を弄ぶ行為を見過ごすつもりはなかった。暗躍するカッツォの企み……彼は表舞台にはあまり出ず、宝石と自動兵器を融合させて、オート・パラディンSを生み出していた。
エラは躊躇うこともなく、歪虚CAM二体を目掛けて、魔導トライクを走らせ、武者兜「随身」から『ガウスジェイル』の結界が空間に拡張していく。
「これで、歪虚CAMを自分に引き付けることができれば」
「ユーリたちのおかげで、パラディンを優先できそうね」
アリア・セリウス(ka6424)は、キヅカ・リク(ka0038)が運転する帝国軍用魔導トライクのサイドカーに乗り、移動はリクに任せて、『ソウルトーチ』を発動させ、オート・パラディンSを二体、引き付けることができた。
アリアは次の攻撃に備えて『織花・祈奏』を活性化させた。
「こちらキヅカ、魔導トラック隊は、一旦、後方へ離脱してください」
トランシーバーで、リクの連絡を受けた魔術師たちは、海涙石を積んだ魔導トラックを運転して、一台ずつ、バックしていく。ユーリたちが敵を引き付けている間に、魔導トラック四台は、敵から離れることができた。
歪虚CAM二体は最初の位置から動くことはなかったが、エラに狙いを定めてレーザーを放ってきた。エラは魔導トライクを運転しながら、法術盾「不壊なる揺光」で受け流す。一回目に発動したガウスジェイルの結界によって、歪虚CAMは強制的にエラに対して攻撃をしかけていた。
サイドカーに乗っていたユーリは、パリィグローブ「ディスターブ」で防御態勢を取り、戦況を把握していた。
「歪虚CAMの狙いが、エラに集中してる……なら、私は」
魔導トライクの移動が終わるまで、ユーリは武器を構えて身構える。
リクの運転する魔導トライクが『ライディングファイト』の発動で疾走していく。オート・パラディンSが高速移動した魔導トライクに巻き込まれ、さらにアリアの『マーキス・ソング』が響き渡り、龍翼鎌「クータスタ」による『天蓋花・旋舞』の技で、パラディンの身体が切り裂かれていく。『織花・祈奏』によって、燐光のようなマテリアルが舞い散り、踊る。
「脚を狙うには、接近し過ぎたかしら」
魔導トライクのサイドカーから降りたアリアは、オート・パラディンSの額に埋め込まれているエメラルドの宝石を見つめていた。
できれば、エメラルドの宝石を助けたい。
宝石には、精霊が宿っている可能性があるからだ。
ユーリはサイドカーから降り、蒼姫刀「魂奏竜胆」を構えたまま、オート・パラディンSに接近すると『薙ぎ払い』を繰り出した。
「今度はきっちりと救ってみせる。斬るべきは、その忌まわしき機械の器のみ。この刃の一撃を以て、苦しみを終わらせる…っ」
『蒼刃共鳴』によって蒼白い雷光が一筋の刃と化して、オート・パラディンSの脚部を切り裂き、機械の部品が飛び散る。
ユーリの攻撃により凄まじい衝撃が迸るが、オート・パラディンSの額に埋め込まれた宝石は、傷一つなかった。
エラは二回目に発動させた『ガウスジェイル』の結界を駆使して、歪虚CAMを自分に引き寄せ、自ら囮になっていた。
「こちらは私に任せてください」
「ジェイさん、ありがとう」
リクはアリアと隣接し、オート・パラディンSを狙い、【豪炎】を撒き散らした。敵の胴部に命中し、かなりのダメージを与えていた。
「人も精霊も、明日がある。闇に堕ち、光を喪い消える者を見たくない、救いたいの……っ!」
アリアの『マーキス・ソング』が明日への希望を祈り、さらに詠唱が続く。そして、唄い、舞いながら、『織花・祈奏』を纏った龍翼鎌「クータスタ」を構え、『天蓋花・旋舞』が風のごとく閃く。
オート・パラディンS、二体の身体が消滅し、額にあったエメラルドが地面に転がっていく。
「よし、宝石だけは残った」
リクはエメラルドを救うことができればと、『機導浄化術・浄癒』を発動させた。
ユーリも、その様子を少し緊張気味に窺っていた。
だが、宝石は闇に包まれたような色合いに輝き、気が付けば消滅していた。
「浄癒の効果がない? ……まさか、完全に歪虚化してしまったのか?」
目の前で宝石が消滅してしまい、リクは悔しそうな表情をしていた。
浄癒は『味方』に対して効果を発揮する術であった。効果が無かったということは、エメラルドの宝石は『敵』の支配下にあり、浄化は難しいとも考えられた。
と、その時。
リクが携帯していたトランシーバーから声が聞こえてきた。
エラからの連絡だ。
「歪虚CAM二体が、魔導トラック隊に接近中。攻撃態勢を整えてください」
「こちらキヅカ、歪虚CAM二体の足止めに向かうよ」
リクは気持ちを切り替えて帝国軍用魔導トライクに騎乗して、駆け抜けていく。
「アリア、まだ宝石が残っている可能性もあるよ。歪虚CAMは僕たちに任せて」
そう言いつつも、リクは内心、アリアを敵の攻撃に巻き込むようなことだけはしたくなかったのだ。
「キヅカの言う通りだよ。少しでも可能性があるなら、私もできるだけのことはするからね」
ユーリはそう言いながら、リクの後を追って、駆け抜けていく。
「ありがとう、キヅカ、ユーリ」
アリアは、宝石の欠片があるのではと考えて、その場に残り、ロボットクリーナーを使いながら、周囲を巡回することにした。
●
帝国軍用魔導トライクを走らせていたエラは、歪虚CAM二体に追いつき、敵の前に廻り込んだ。
リクからトランシーバーで連絡を受けた魔術師たちが、『アースウォール』の壁を出現させ、魔導トラックの前方に土壁を作り、敵の行く手を塞いでいた。
歪虚CAM二体が、エラを捕まえようと触手を伸ばしていく。
キィィィィィン……。
エラの『攻性防壁』が発動……雷撃を纏った光の障壁が、歪虚CAM二体を弾き飛ばし、その衝撃で身動きが取れなくなっていた。
「麻痺したようですね」
「さすが、ジェイさん」
リクは帝国軍用魔導トライクで駆け抜け、【豪炎】の渦を放った。歪虚CAM二体は炎に巻き込まれ、そのうちの一体は爆発して消え去っていった。
「これで最後ね」
ユーリは肉迫すると、蒼姫刀「魂奏竜胆」を振り回し『薙ぎ払い』で、歪虚CAMの胴部を切り裂いた。
光が走るように、歪虚CAMの胴部が砕け散ると、爆発し、跡形もなく消え去っていた。
「歪虚機体は、全て倒せたようだけど……」
後ろを振り返るユーリ。
「エメラルドは見つからなかったわ」
アリアは、そう告げた後、想いを巡らしていた。それから、皆に言った。
「同盟内での採掘場所は限られているはず……エメラルドが採れる鉱山を調査すれば、汚染や宝石の流通がどうなっているのかも、分かるかもしれないわ」
「あ、そうか。よく考えたら、宝石って、鉱山で採れたものを加工したものだよね。鉱山に行ってみる価値はあるよ」
リクが励ますように、アリアの背を優しく叩いた。
●
「ここが、例の鉱山ね」
アリアは、魔術師協会広報室の魔術師たちに事情を説明して、とある鉱山に来ていた。
その頃、海涙石を積んだ魔導トラック隊は、無事にリゼリオに到着していた。
「この鉱山で作業していた人々が、ここ最近、体調不良で倒れたらしいのよ」
アリアの話を聞いて、リクとエラ、ユーリも同行していた。
エメラルドの原石を採掘していた作業員たちは、目眩や怠さを感じる日々が続いていたため、魔術師協会広報室に相談して、鉱山を調査してもらうことになっていた。
その間は、鉱山で働いていた人々は、自宅療養中だった。
「そっか。時期的に体調を崩す人も多いけど、念の為、僕たちも鉱山の調査をしておこうか」
リクが言うと、アリアが小さく頷く。
「無理を言ってしまって、ごめんなさいね。どうしても、マテリアル汚染のことが気になってしまって」
「私も宝石に宿っている精霊を助けたい気持ちは同じだよ。今後こそ、助けたいから」
ユーリの決意は固かった。
「もしかしたら、鉱山の中にヴォイドがいるかもしれませんから、私も行きます」
エラは帝国軍用魔導トライクの夜間走行用のライトを付けて、徐行しながら鉱山の中へと入った。
バイクのライトを頼りに、鉱山の奥へと進む一行。
30分ほど進むと、壁に突き当たった。周囲にはエメラルドの原石が輝いていた。
「……こんなところに、オートマトン?」
アリアが見つけたのは、気絶して倒れているオートマトンだった。
「キヅカ、気絶しているだけだったら助かるかもしれないわ」
「分かった。やってみるよ」
リクはオートマトンに対して『機導浄化術・浄癒』を施した。
しばらく様子を窺うと、オートマトンが目を開いた。よく見れば、少年のような顔立ちだった。
「大丈夫?」
アリアが優しく声をかけた。
オートマトンの少年は、綺麗な女性を初めて見たのか、ぼんやりと眺めていた。
「ボクは……どうしたんだろうか?」
「何か、覚えてる?」
ユーリの問いに、オートマトンはゆっくりと話し始めた。
「そうだ……白い仮面の男が現れて、ボクの仲間が連れ去られてしまった」
「どこへ行ったか、分かります?」
エラが真剣に言った。
「他は……何も覚えてない……分からない……ごめんなさい」
哀しそうな顔をしたオートマトンに、アリアは、そっと手を添えた。
「いいの。気にしないで。あなたが無事で良かったわ」
オートマトンの少年は、自分でも分からなかったが、とても安らかな気持ちになった。
目の前にいる覚醒者たちは、味方だ。
不思議と、雰囲気で、そう感じていたのだ。
鉱山から出ると、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)とラキ(kz0002)の姿があった。
「二人とも、来てくれたんだね」
リクが明るい笑みを浮かべると、ラキが微笑み返した。
「海涙石は全て、リゼリオに運ぶことができたよ。ちゃんと報告したくて、来ちゃった」
「報告、ありがとうございます」
エラは外に出ると、帝国軍用魔導トライクのライトを消した。
「ん? オートマトンか?」
マクシミリアンが怪訝な表情をしていた。
「マクシミリアン、安心して。彼は、鉱山の奥で気絶していただけ。キヅカが浄癒を施してくれたから、助かったのよ」
アリアがそう告げると、リクが少し照れていた。
「あ、えと、……アリアの提案で、鉱山に行ってみたんだ。そしたら、オートマトンがいてさ。彼を見つけ出すことができたのも、アリアがいてくれたから」
その言葉に、アリアは穏やかに微笑んだ。
「私一人では、オートマトンの少年を見つけることはできなかったわ。皆がいてくれたから……協力してくれたから、彼を救うことができたの」
ユーリも、うれしそうだった。
「オートマトンの額には、宝石はなかった。と言うことは、カッツォの手から逃れてきたとも考えられるよ」
ユーリが、オートマトンの手を引いて、ラキたちと引き合わせた。
「わー、あたしと同じくらいの年齢かな。……ん?」
首を傾げるラキ。
「はじめまして。ボクは……んー、名前は忘れました」
オートマトンの少年が、無邪気な笑みを見せた。
「あたしは、ラキ。まずは、君を本部まで招待するね」
「本部?」
今度は、オートマトンの少年が首を傾げていた。
その後、魔術師協会広報室から派遣された魔術師たちの調査により、エメラルドの鉱山には、『何者か』がマテリアルの流れを変えた痕跡があることが判明した。
鉱山の奥には、エメラルドの原石が残っていたこともあり、精霊の本体は無事であることも確認できた。
そのことを聞いたユーリとアリアは安堵していた。
「良かったね、アリア、ユーリちゃん」
リクは久し振りに同盟領に来て、仲間を助けることができて、一安心していた。
「依頼は無事に終わりましたし、オートマトンを発見することができました。今回のことを知ったら、カッツォ・ヴォイは、私たちのことをどう思うでしょうね」
エラは、晴れた空を見上げていた。
こうして、今回の調査内容は、本部へも報告されることになった。
オートマトンの少年は、しばらく本部の仕事を手伝うことになったようだ。
●
深淵の底。
闇に包まれた空間に、白い仮面を付けた男がいた。
その男の名は、カッツォ・ヴォイ。
「……まあ、いい。まだ打つ手はある。いよいよ面白くなって参りましたな……我が君、嫉妬王よ」
男は、そう呟き、一礼すると、闇の中へと消えていった。
バイオリンの音が響く。
それは、次の『曲』が始まる合図でもあった。
依頼結果
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面白かった! | 7人 |
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- 紅の月を慈しむ乙女
アリア・セリウス(ka6424)
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 鬼塚 陸(ka0038) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/09/24 22:08:32 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/09/20 09:38:28 |