ゲスト
(ka0000)
激闘! ビーチフラッグ!
マスター:スタジオI

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/06/18 12:00
- 完成日
- 2014/06/26 09:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
同盟内、港湾都市「ポルトワール」のとある海岸。
この日は、初心者ハンターたちを対象にした自由参加の基礎体力訓練が行われていた。
「そこ、遅れるなー、海岸もう一往復追加するぞー」
訓練内容は、砂浜をひたすらに走るだけ。
今日は早すぎる猛暑日で、華やかな水着姿の海水浴客も出てきているのに、ハンターたちはひたすらに熱い砂を踏みしめ、汗を流して走るだけだった。
しかも、朝からずっとである。
昼近くになり、体力以前に、もううんざりしていた。
一人のハンターが、走りながら金髪わがままボディのシャロンコーチに意見した。
「シャロンコーチ! 提案であります!」
「なんだ、リアルブルーの少年」
「僕の故郷では、走るよりもっと効率の良い鍛錬方法があるのであります」
「ほう、言ってみろ!」
「ビーチフラッグという競技であります! 足腰に加え、瞬発力の鍛錬にもなるという優れものであります!」
「話を聞こう」
シャロンコーチが立ち止まった。
実は、誰より長距離走にうんざりしていたのは、このシャロンだったりするのである。
●
リアルブルーの少年は、ビーチフラッグについて皆に説明した。
要は、砂浜に這いつくばった状態から笛の音に合わせ立ち上がり、数メートル先に刺さった旗をゲット出来れば勝ち、出来なければ負けという競技である。
試しに一、二度やってみたところ、確かに瞬発力の強化にもなるし、何より良い気分転換になる。
何より、海に入れなくとも水着になれるので解放感もある。
「面白い。面白いが、あとひと味もふた味も付け加えられるな」
シャロンはニヤニヤしていた。
実は彼女、体は大人、心は子供の典型的人物だったりする。
すでに完成されたものに、余計な要素を付け加えて、人を唖然とさせるのが大好きなのだ。
「三種類ほど、新しいビーチフラッグを考えた、それで上位に入れたものに限り、今日の訓練は終わりにしても良い。海で遊ぼうが、帰って寝ようが自由だ」
ハンターたちの間で、歓声が沸き起こった。
続きは昼休み終了後に行うというが、午後からでも海で遊べるならそんな贅沢な話はない。
「では発表するぞ。まずは第一種目だ」
シャロンが考えた新型ビーチフラッグのルールは、ハンターたちを唖然とさせるものだった。
●第一種目 ショートコース落とし穴
スタートから旗までの距離 10
ただし2Pから5Pまでの旗の前のどこかに落とし穴が隠れている。
落とし穴に落ちたら、そのプレイヤーは今種目では旗を得られない。
二番目以降に、その旗に辿り着いた者は問題なく旗を得られる。
この種目において、アイテム、スキルの使用は禁止する。
砂や貝殻など、落ちている自然物の利用は可。
●第二種目 ロングコースホイッスルストップ
スタートから旗までの距離 30
スタートから旗までの距離が長く、一気に辿り着くのは困難。
シャロンが笛を鳴らしたら、その場で伏せなければならない。
もう一度、笛が鳴ったら再スタート。
旗に辿り着くまで、これを繰り返す。
この種目において、アイテム、スキルの使用は禁止する。
砂や貝殻など、落ちている自然物の利用は可。
●第三種目 ランダムコースエスケープフラッグ
スタートから旗までの距離 20(開始時)
旗を動物が持っている。
笛の合図とともに動物の入った檻が開き、旗を付けたまま勝手に逃亡するので、
旗との正確な距離は不明。
得点の高い旗ほど、捕獲困難になっている。
1P ウミガメ 移動力1
2P ネズミ 移動力2
3P 大型犬 移動力3
4P 馬 移動力4
5P 鳩 移動力5
この種目に限り、アイテム、スキルの使用を許可。
ただし、動物や他の参加者、無関係な人間を傷つけてはいけない。
●
説明を終えたシャロンはドヤ顔だった。
「どうだ、楽しそうだろ」
「どっから、そういう嫌がらせ発想が浮かんでくるんですか」
「鳩って、空飛んでるじゃないですか」
「馬だって、普通は追いつけませんよ!」
「っていうか、第三種目は果たしてビーチフラッグと言えるんですか!?」
ハンターたちからは非難が轟轟飛んでくるが、シャロンは受け付けない。
ドヤ顔のままである。
「そこは工夫で補え、身体能力さえ優れていれば勝ち残れるほど、この世界は甘くないぞ」
この日は、初心者ハンターたちを対象にした自由参加の基礎体力訓練が行われていた。
「そこ、遅れるなー、海岸もう一往復追加するぞー」
訓練内容は、砂浜をひたすらに走るだけ。
今日は早すぎる猛暑日で、華やかな水着姿の海水浴客も出てきているのに、ハンターたちはひたすらに熱い砂を踏みしめ、汗を流して走るだけだった。
しかも、朝からずっとである。
昼近くになり、体力以前に、もううんざりしていた。
一人のハンターが、走りながら金髪わがままボディのシャロンコーチに意見した。
「シャロンコーチ! 提案であります!」
「なんだ、リアルブルーの少年」
「僕の故郷では、走るよりもっと効率の良い鍛錬方法があるのであります」
「ほう、言ってみろ!」
「ビーチフラッグという競技であります! 足腰に加え、瞬発力の鍛錬にもなるという優れものであります!」
「話を聞こう」
シャロンコーチが立ち止まった。
実は、誰より長距離走にうんざりしていたのは、このシャロンだったりするのである。
●
リアルブルーの少年は、ビーチフラッグについて皆に説明した。
要は、砂浜に這いつくばった状態から笛の音に合わせ立ち上がり、数メートル先に刺さった旗をゲット出来れば勝ち、出来なければ負けという競技である。
試しに一、二度やってみたところ、確かに瞬発力の強化にもなるし、何より良い気分転換になる。
何より、海に入れなくとも水着になれるので解放感もある。
「面白い。面白いが、あとひと味もふた味も付け加えられるな」
シャロンはニヤニヤしていた。
実は彼女、体は大人、心は子供の典型的人物だったりする。
すでに完成されたものに、余計な要素を付け加えて、人を唖然とさせるのが大好きなのだ。
「三種類ほど、新しいビーチフラッグを考えた、それで上位に入れたものに限り、今日の訓練は終わりにしても良い。海で遊ぼうが、帰って寝ようが自由だ」
ハンターたちの間で、歓声が沸き起こった。
続きは昼休み終了後に行うというが、午後からでも海で遊べるならそんな贅沢な話はない。
「では発表するぞ。まずは第一種目だ」
シャロンが考えた新型ビーチフラッグのルールは、ハンターたちを唖然とさせるものだった。
●第一種目 ショートコース落とし穴
スタートから旗までの距離 10
ただし2Pから5Pまでの旗の前のどこかに落とし穴が隠れている。
落とし穴に落ちたら、そのプレイヤーは今種目では旗を得られない。
二番目以降に、その旗に辿り着いた者は問題なく旗を得られる。
この種目において、アイテム、スキルの使用は禁止する。
砂や貝殻など、落ちている自然物の利用は可。
●第二種目 ロングコースホイッスルストップ
スタートから旗までの距離 30
スタートから旗までの距離が長く、一気に辿り着くのは困難。
シャロンが笛を鳴らしたら、その場で伏せなければならない。
もう一度、笛が鳴ったら再スタート。
旗に辿り着くまで、これを繰り返す。
この種目において、アイテム、スキルの使用は禁止する。
砂や貝殻など、落ちている自然物の利用は可。
●第三種目 ランダムコースエスケープフラッグ
スタートから旗までの距離 20(開始時)
旗を動物が持っている。
笛の合図とともに動物の入った檻が開き、旗を付けたまま勝手に逃亡するので、
旗との正確な距離は不明。
得点の高い旗ほど、捕獲困難になっている。
1P ウミガメ 移動力1
2P ネズミ 移動力2
3P 大型犬 移動力3
4P 馬 移動力4
5P 鳩 移動力5
この種目に限り、アイテム、スキルの使用を許可。
ただし、動物や他の参加者、無関係な人間を傷つけてはいけない。
●
説明を終えたシャロンはドヤ顔だった。
「どうだ、楽しそうだろ」
「どっから、そういう嫌がらせ発想が浮かんでくるんですか」
「鳩って、空飛んでるじゃないですか」
「馬だって、普通は追いつけませんよ!」
「っていうか、第三種目は果たしてビーチフラッグと言えるんですか!?」
ハンターたちからは非難が轟轟飛んでくるが、シャロンは受け付けない。
ドヤ顔のままである。
「そこは工夫で補え、身体能力さえ優れていれば勝ち残れるほど、この世界は甘くないぞ」
リプレイ本文
●
「断じて言うぞ! これはビーチフラッグじゃない!」
最後までシャロンコーチの案を否定し続けていたのは、リアルブルー出身の黒髪黒眼少年、日高・明(ka0476)だった。
「細かい奴だな、同じリアルブルーの男なのに、どうしてこうも違うんだ?」
コーチが比較対象にしているのは波打ち際で犬のようにはしゃぎまわっている長身の男、役犬原 昶(ka0268)だ。
「はっはー! 師匠! 海っすよ! 海! 俺に任せるっす!」
「うるさいですよ、役犬原」
こちらはこちらで、師弟関係にある豊満な大人の女性、コランダム(ka0240)に怒られたりしている。
「気に食わなければ帰ってもいいぞ、自由参加の訓練だからな」
「そうさせてもらうよ」
日高は孤独だった。
周りを見渡せば青い空、白い雲、眩しい太陽――全てが故郷と同じなのに、ここは故郷ではない。
紅の世界なのだ。
「ボクはリアルブルーに帰りたい、それだけなのになんでこんな目に」
帰り支度を終えた日高の目に、桃源郷が飛び込んできた。
女性陣が、水着を着ているのだ!
しかも、デザインがリアルブルーのそれである。
リアルブルー出身の金髪美少女、舞桜守 巴(ka0036)は布地の少ないオレンジ系ビキニ姿。
日高の視線に気づくと、巴は不機嫌そうに、腕で胸を隠した。
「男にはあんまり見せたくないですわ」
辺境の巫女だという運切 火乃霞(ka1765)は、藍色のセパレート水着。
サイズが合わないらしく、大きすぎる胸の位置を懸命に調整している。
「戦闘以外で……こういう軽装になるのは……初めてございます。ん、少し苦しいでございますね」
銀髪の女騎士、イーディス・ノースハイド(ka2106)に至っては、懐かしの旧スク水である。
「リアルブルーでは一般的な水着らしいけど……どこかおかしい?」
日高は興奮を帯びた声で尋ねた。
「その水着、どうしたんだ!?」
聞けば、このビーチフラッグを提案した少年が、専用ユニホームだと言って、なぜか大量に持っていたらしい。
なぜ男性の彼がこんなものを持っていたのかは解らないが、人を幸せにしたのは確かだった。
「すみません、ボクが間違ってました! これはビーチフラッグですね! さっそく頑張りたいと思います!」
●
六人のハンター全員が熱い浜辺にうつ伏せになった。
第一種目の開始である。
コースは短く、一見、普通のビーチフラッグに見えるが、旗のどれか一つの前に落とし穴があるというトンデモ競技だ。
それをどう見抜くのかが勝敗のポイントとなる。
ピッ!
コーチが笛を吹いた。
ここでいち早く立ち上がれた者が、アドバンテージを握れる。
瞬発力と反応の勝負である!
最初に立ちがあったのは、銀髪のスク水騎士・イーディスだった。
棒を前に突きだし、地面を叩くようにして走っている。
「落とし穴、どこでしょうか?」
だが、慎重すぎて速度が落ちている。
たちまちのうちに全員に抜かされた。
「イーディスさん、慎重すぎですわよ、貴女には常に私の前を走っていていただきたいですわ」
巴がスポ根漫画みたいな事を言っているが、実はスク水のお尻を後ろから眺めたいというだけである。
この娘、そういう趣味なのだ!
続いてはコランダム。
彼女は水着を着てはいない。
日高や巴がしきりに勧めたのだが、頑として受け付けなかった。
だが、Tシャツにジャージ姿でも、揺れすぎるほど揺れていた!
「3P狙いは、私だけだったみたいですね」
落とし穴を警戒し、3P狙いの者が他にいればその後ろにつく作戦だったようだが、思い通りにはいかなかったようだ。
コランダムと併走しているのが、彼女を師とあがめる役犬原。
「師匠! 自分に出来る事があったら言って下さい!」
だが無視された。
「ここは迷わずダッシュで取りに行く!」
日高は水着に囲まれ、やる気MAX。さきほどまでの不平など、なかったかのようだ。
「うまく立ち上がれませんでした、やはり重過ぎなのでございますかね?」
火乃霞はセパレート水着の中で苦しそうにしているそれに問いかけたが、返事は帰って来なかった。
先頭の巴が、スライディングすれば旗に手が届きそうな位置まで来た。
だが、すぐには向かわない。
右手に握りしめた貝殻を、5Pの旗の手前の砂浜目がけ、思い切り放り投げた。
落とし穴ならば、衝撃を与えた時の反応が違うのではないかというのが巴の考えだ。
イーディスと同じ思考だが巴の場合、落とし穴が旗の直前だとヤマを張っている。
「えい!」
貝殻が当たった砂が、不自然な跳ね方をした。布の上に砂を敷いてカムフラージュした証拠だ。
穴を迂回し5Pの旗を掴む巴。
「当然の結果ですわ!」
それと同時に4Pの旗めがけ、大ジャンプをしたのは役犬原。
「俺の野生の勘を舐めるな! 匂いでわかるんだよ!」
落とし穴は匂わないはずだが、ともあれ4Pの旗を手に入れた。
併走していたコランダムは、最初から狙っていた3Pの旗を手に入れる。
あとはそのまま着順で、2Pを日高が、火乃霞が1Pを手に入れた。堅実過ぎて遅れてしまったイーディスは無得点。
第一競技は終了した。
「チッ、誰も落ちなかったか」
コーチが忌々しそうな顔をしている。次の種目が不安だ。
●
第二種目開始前、第一種目で得た得点に準じ、ハンターたちは足に重りを付けさせられた。
ここで騒ぎだしたのが役犬原である。
「師匠にそんな重たいもの付けて、てめぇどうするつもりだ!」
コーチに怒鳴りつけている。
「師匠! 大丈夫っす! 俺が全て受けるっす! だから泥船に乗ったつもりで居てくださいっす!」
コランダムに笑顔を向ける役犬原だが。
「自身の重り位、私で受け持ちます」
冷たくあしらわれた。
「じゃあ、せめて俺が獲得した4Pを受け取って欲しいっす!」
尽くしたくて必死の役犬原。
そこにコーチがドスの効いた声で問いかけた。
「ほう、リアルブルーのスポーツは競争相手に得点を譲れるのか? 人間関係だけで勝利をもぎ取れるとは、エキサイディングなルールだな」
「役犬原! 他の参加者のご迷惑ですよ!」
コランダムにも怒られ凹んでいるが、フォローされる事もなく第二種目が開始された。
第二競技、ロングコース。
シャロンが笛を鳴らしたら、その場で伏せなければならない。
もう一度、笛が鳴ったら再スタート。旗に辿り着くまで、これを繰り返すというルールである。
これが難物だった。
ビーチフラッグではなく、腕立て伏せをさせているのかというこまめさで、「ピッ!ピッ!ピッ!」と笛を鳴らし続けたのだ。
「あの、いくらなんでもお酷くございませんか?」
「落とし穴を見抜かれたのが、そんなに悔しかったんでしょうか?」
大人しい火乃霞やコランダムまでもが、眉を潜めている。
「いい加減にするっす! 師匠をいじめるなっす!」
役犬原が苦情を申し立てると、コーチが駆け寄ってきた。
「何だ、不服か?」
「当たり前っす!」
「俺たちはただでさえ、重り付けてんだよ! 自分は身軽だからって――」
言いかけた日高の言葉が止まる。
彼の前にやってきたコーチ、シャロンは究極の身軽さ。
リアルブルーで言う所の白マイクロビキニを着ていたのだ。
しかも火乃霞やコランダムに負けないくらいの、わがままボディである。
歩かなくても海風だけでプルルンだ。
「コーチ! その素敵なお召し物は!?」
目を輝かせる巴。
「暑いんでな、例の少年のコレクションで一番涼しそうなのを借りたんだ」
「うおおおお! 俺の中のなにかが燃え上がるうう!」
笛をこまめに吹きながら走ってゆくコーチのお尻を、必死に追いかける日高。
「あれでやる気が出るのは、特定の方だけのように妾は思えるのですが」
重りなしのイーディスが5P、リビドー全開の日高は4P、重りの軽さとマイペースが功を奏した火乃霞が3P、犬っぽく伏せが得意な役犬原が2P、地道に頑張ったコランダムが1P。
最重量の重りに苦しめられた巴は、リビドーを以てしても得点できなかった。
役犬原、日高が6Pで同点首位、イーディスと巴が5P、コランダム、火乃霞が並んで4P。
差はわずかで勝負は、最終第三種目終了まで読めない展開となった。
●
「こればかりは、ビーチフラッグじゃないよねえ?」
鳩、馬、大型犬、ネズミ、海亀の入ったゲージを前に日高が呟く。
「この短時間で、よく調達してこられましたね、シャロンコーチは」
首を傾げるイーディス。
「馬、犬、ネズミは飼っている方も多いでしょうし、ここは海ですから海亀もいるでしょうけど、鳩ってそんなに簡単に捕まるものなのですか?」
巴の疑問に動物好きな火乃霞が答える。
「鳩の警戒心の薄さは有名でございますが、あるいは話に聞く伝書鳩をお借りしたのかもしれませんね、卵から育てますので極めて人に慣れていると聞きます」
その時、コーチが笛を持って現れた。
「では第三種目を開始する、全員、用意した物を持って所定の位置に伏せろ!」
用意した物とは、ハンターたちが各自で昼休みに市場等で用意した品々である。
「僭越ながら、飲み物を買って参りましたので、皆さんおあがりになりませんか? 脱水症状になったら大変でございます」
火乃霞の気配りで、シャロンコーチを含め、皆でフルーツドリンクを飲む。
最年少の十三歳が、大人なのは競泳水着の中の胸だけではなかった。
「では、始めるぞ!」
ピッ!
コーチが笛を鳴らした。
今回この笛は、ハンターたちのスタンドアップを促すと同時に、動物のゲージが開く合図でもあった。
動物たちが、一斉に飛び出す。閉じ込められて変な場所へ連れて来られ、ストレスが溜まっていたのだろう。
ゲージの扉は、ハンターたちのいる側にあるため、まずはこちらへと向かってきた。
最初に立ちあがったイーディスが、力強く砂浜を踏み込み、走り始めた。
「騎士たるもの、やはり馬を手なずけねば!」
4Pの馬狙いである。
物凄い勢いで自分に向かってきた女騎士に面喰ったのか、馬は立ち止まり踵を返そうとした。
逃げられたとしても、今のイーディスは馬を上回る速度を技により実現している。
「こっちっすー! 美味しい人参があるっすよー!」
役犬原が、横槍を入れるかのように体に巻きつけた人参を見せた。
腹を空かせていたのか、馬は方向を変え役犬原の方へ向かってくる。
だが、それは同時に同じ馬狙いのイーディスとの距離をさらに詰める事でもあった。
視線を躱し合う役犬原とイーディス。
「速さなら私が上です!」
「甘いっす! 俺だって今は馬より速いっす!」
役犬原は動物霊の力を纏う技を行使し、文字通り獣の俊敏さを身に付けた。
イーディスと役犬原は、同時に馬に向かって駆け出した。
「あ、あれ? 俺、走るの全然早くなってないっす!?」
イーディスだけが、圧倒的に速い。
「役犬原、その技はボールを投げられた時に躱しやすくなる技なのです。投げられたボールを追いかけるための技ではありません」
コランダムに指摘され、白目を剥く役犬原。
「やってもうたっすー!」
一方、馬の間近まで来たイーディスはそれに跨ろうとした。
「ほら、落ち着いて。 大丈夫、キミを害するようなものは周りには何もないわ。 ね、怖くないって分かるでしょ」
だが、完全にフラれた。
「はあ、人参しかみえていませんね」
もしこの馬に人の男の魂があれば、スク水美少女騎士を喜んで騎乗させたのだろうが、しょせんは畜生である。
初対面の二本足如きに手なずけられるものかよとばかりに走り去った。
役犬原が胴に巻いた人参めがけ一直線!
「よーしよし! 人参やるから旗よこすっす!」
ミスがミスにならずに4Pの旗を獲得した役犬原は、これで計10P。
これを上回る可能性があるのは、現在6Pの日高が、5Pの鳩を捕まえるケースのみとなった。
コランダムは、商店で買っておいた干し肉をひらひらと振って見せた。
「一緒にどうですか?」
やはり食べ物は有効で、犬は嬉しげに寄ってきた。
普段から犬っぽい人の相手をしていたのもアドバンテージだったかもしれない。
3Pの旗をコランダムは簡単に獲得した。
「大きな犬でも、これくらい可愛ければいいんですけどね」
「亀さん、愛らしゅうございますね」
のそのそ砂浜を歩いていた海亀の甲羅を、動物好きな火乃霞が撫でていた。
「私の故郷には、海の底にある楽園に連れて行ってくれるっていう伝説があるんですよ」
巴とは、話が弾んでいるようである。
彼女が掌に乗せているネズミは、ランアウトと呼ばれる移動力を増す技で強引に掴まえたものだ。
●
さて、問題の日高である。
彼は、市場で動物たちの好物を一通り買っており、その中には鳩の好物の豆もあった。
ダメ元で撒いておいたそれに、ゲージから出てきた鳩は飛び立たずにそれを啄み始めた。
ここまではいい。
問題は、それを日高が捕えられるか否かだ。
策はある。『踏込』と呼ばれるスキルで一気呵成に捕えてしまう事だ。
だが、踏込の間合いは狭い。よほど接近しなければ使えないのだ。
仮にこの鳩が罠などで捉えられた野生のものなら、近づく前に逃げられてしまうだろう。
だが、火乃霞が言った通り、人に慣れ切った伝書鳩なら――。
賭けだった。
日高は豆を啄んでいる鳩に、思い切って一歩近づいた。
●
「日高が優勝だな」
マイクロビキニ姿のコーチがそれを告げた。
鳩は逃げなかった。
足に紐で撒かれた旗を取られる時にも慣れた様子だった。
火乃霞の読み通り、伝書鳩だったのである。
「ああ、師匠と海で遊びたかったっす」
泣き続ける役犬原。
「いいじゃないか、みんなで一緒に海で遊ぼう」
シャロンが笑顔を浮かべる。
「え? いいんすか?」
「今のゲーム、それぞれ皆、素晴らしかったからな。落とし穴を見抜いた巴の知恵、馬の脚力さえ上回らんとするイーディスの意気、火乃霞の気配りと動物への愛情、コランダムと役犬原の師弟漫才、ごちゃごちゃ文句言いつつも優勝しちゃう日高の図太さ、全て素晴らしかった。勝敗は幸運の女神様の気まぐれさ。お前ら皆、いいハンターになれると思う」
「ありがとうございます」
巴、イーディス、火乃霞は素直にお礼を言ったが、他の三人は複雑そうだった。
「役犬原とセットにされたのは複雑です」
「師匠、それはないっす!」
「確かに文句言ったけど、なんか引っかかる言い方だよな」
その日、ハンターたちはイーディスを提案の遠泳をしたり、砂遊びをしたりして海を楽しんだ。
蒼い海に紅い太陽が溶け込みゆく景色も、一緒に見た。
ビーチフラッグ訓練にどれほどの効果があったか定かではないが、紅と蒼、二つの世界の距離がまた少し縮まったのは確かである。
「断じて言うぞ! これはビーチフラッグじゃない!」
最後までシャロンコーチの案を否定し続けていたのは、リアルブルー出身の黒髪黒眼少年、日高・明(ka0476)だった。
「細かい奴だな、同じリアルブルーの男なのに、どうしてこうも違うんだ?」
コーチが比較対象にしているのは波打ち際で犬のようにはしゃぎまわっている長身の男、役犬原 昶(ka0268)だ。
「はっはー! 師匠! 海っすよ! 海! 俺に任せるっす!」
「うるさいですよ、役犬原」
こちらはこちらで、師弟関係にある豊満な大人の女性、コランダム(ka0240)に怒られたりしている。
「気に食わなければ帰ってもいいぞ、自由参加の訓練だからな」
「そうさせてもらうよ」
日高は孤独だった。
周りを見渡せば青い空、白い雲、眩しい太陽――全てが故郷と同じなのに、ここは故郷ではない。
紅の世界なのだ。
「ボクはリアルブルーに帰りたい、それだけなのになんでこんな目に」
帰り支度を終えた日高の目に、桃源郷が飛び込んできた。
女性陣が、水着を着ているのだ!
しかも、デザインがリアルブルーのそれである。
リアルブルー出身の金髪美少女、舞桜守 巴(ka0036)は布地の少ないオレンジ系ビキニ姿。
日高の視線に気づくと、巴は不機嫌そうに、腕で胸を隠した。
「男にはあんまり見せたくないですわ」
辺境の巫女だという運切 火乃霞(ka1765)は、藍色のセパレート水着。
サイズが合わないらしく、大きすぎる胸の位置を懸命に調整している。
「戦闘以外で……こういう軽装になるのは……初めてございます。ん、少し苦しいでございますね」
銀髪の女騎士、イーディス・ノースハイド(ka2106)に至っては、懐かしの旧スク水である。
「リアルブルーでは一般的な水着らしいけど……どこかおかしい?」
日高は興奮を帯びた声で尋ねた。
「その水着、どうしたんだ!?」
聞けば、このビーチフラッグを提案した少年が、専用ユニホームだと言って、なぜか大量に持っていたらしい。
なぜ男性の彼がこんなものを持っていたのかは解らないが、人を幸せにしたのは確かだった。
「すみません、ボクが間違ってました! これはビーチフラッグですね! さっそく頑張りたいと思います!」
●
六人のハンター全員が熱い浜辺にうつ伏せになった。
第一種目の開始である。
コースは短く、一見、普通のビーチフラッグに見えるが、旗のどれか一つの前に落とし穴があるというトンデモ競技だ。
それをどう見抜くのかが勝敗のポイントとなる。
ピッ!
コーチが笛を吹いた。
ここでいち早く立ち上がれた者が、アドバンテージを握れる。
瞬発力と反応の勝負である!
最初に立ちがあったのは、銀髪のスク水騎士・イーディスだった。
棒を前に突きだし、地面を叩くようにして走っている。
「落とし穴、どこでしょうか?」
だが、慎重すぎて速度が落ちている。
たちまちのうちに全員に抜かされた。
「イーディスさん、慎重すぎですわよ、貴女には常に私の前を走っていていただきたいですわ」
巴がスポ根漫画みたいな事を言っているが、実はスク水のお尻を後ろから眺めたいというだけである。
この娘、そういう趣味なのだ!
続いてはコランダム。
彼女は水着を着てはいない。
日高や巴がしきりに勧めたのだが、頑として受け付けなかった。
だが、Tシャツにジャージ姿でも、揺れすぎるほど揺れていた!
「3P狙いは、私だけだったみたいですね」
落とし穴を警戒し、3P狙いの者が他にいればその後ろにつく作戦だったようだが、思い通りにはいかなかったようだ。
コランダムと併走しているのが、彼女を師とあがめる役犬原。
「師匠! 自分に出来る事があったら言って下さい!」
だが無視された。
「ここは迷わずダッシュで取りに行く!」
日高は水着に囲まれ、やる気MAX。さきほどまでの不平など、なかったかのようだ。
「うまく立ち上がれませんでした、やはり重過ぎなのでございますかね?」
火乃霞はセパレート水着の中で苦しそうにしているそれに問いかけたが、返事は帰って来なかった。
先頭の巴が、スライディングすれば旗に手が届きそうな位置まで来た。
だが、すぐには向かわない。
右手に握りしめた貝殻を、5Pの旗の手前の砂浜目がけ、思い切り放り投げた。
落とし穴ならば、衝撃を与えた時の反応が違うのではないかというのが巴の考えだ。
イーディスと同じ思考だが巴の場合、落とし穴が旗の直前だとヤマを張っている。
「えい!」
貝殻が当たった砂が、不自然な跳ね方をした。布の上に砂を敷いてカムフラージュした証拠だ。
穴を迂回し5Pの旗を掴む巴。
「当然の結果ですわ!」
それと同時に4Pの旗めがけ、大ジャンプをしたのは役犬原。
「俺の野生の勘を舐めるな! 匂いでわかるんだよ!」
落とし穴は匂わないはずだが、ともあれ4Pの旗を手に入れた。
併走していたコランダムは、最初から狙っていた3Pの旗を手に入れる。
あとはそのまま着順で、2Pを日高が、火乃霞が1Pを手に入れた。堅実過ぎて遅れてしまったイーディスは無得点。
第一競技は終了した。
「チッ、誰も落ちなかったか」
コーチが忌々しそうな顔をしている。次の種目が不安だ。
●
第二種目開始前、第一種目で得た得点に準じ、ハンターたちは足に重りを付けさせられた。
ここで騒ぎだしたのが役犬原である。
「師匠にそんな重たいもの付けて、てめぇどうするつもりだ!」
コーチに怒鳴りつけている。
「師匠! 大丈夫っす! 俺が全て受けるっす! だから泥船に乗ったつもりで居てくださいっす!」
コランダムに笑顔を向ける役犬原だが。
「自身の重り位、私で受け持ちます」
冷たくあしらわれた。
「じゃあ、せめて俺が獲得した4Pを受け取って欲しいっす!」
尽くしたくて必死の役犬原。
そこにコーチがドスの効いた声で問いかけた。
「ほう、リアルブルーのスポーツは競争相手に得点を譲れるのか? 人間関係だけで勝利をもぎ取れるとは、エキサイディングなルールだな」
「役犬原! 他の参加者のご迷惑ですよ!」
コランダムにも怒られ凹んでいるが、フォローされる事もなく第二種目が開始された。
第二競技、ロングコース。
シャロンが笛を鳴らしたら、その場で伏せなければならない。
もう一度、笛が鳴ったら再スタート。旗に辿り着くまで、これを繰り返すというルールである。
これが難物だった。
ビーチフラッグではなく、腕立て伏せをさせているのかというこまめさで、「ピッ!ピッ!ピッ!」と笛を鳴らし続けたのだ。
「あの、いくらなんでもお酷くございませんか?」
「落とし穴を見抜かれたのが、そんなに悔しかったんでしょうか?」
大人しい火乃霞やコランダムまでもが、眉を潜めている。
「いい加減にするっす! 師匠をいじめるなっす!」
役犬原が苦情を申し立てると、コーチが駆け寄ってきた。
「何だ、不服か?」
「当たり前っす!」
「俺たちはただでさえ、重り付けてんだよ! 自分は身軽だからって――」
言いかけた日高の言葉が止まる。
彼の前にやってきたコーチ、シャロンは究極の身軽さ。
リアルブルーで言う所の白マイクロビキニを着ていたのだ。
しかも火乃霞やコランダムに負けないくらいの、わがままボディである。
歩かなくても海風だけでプルルンだ。
「コーチ! その素敵なお召し物は!?」
目を輝かせる巴。
「暑いんでな、例の少年のコレクションで一番涼しそうなのを借りたんだ」
「うおおおお! 俺の中のなにかが燃え上がるうう!」
笛をこまめに吹きながら走ってゆくコーチのお尻を、必死に追いかける日高。
「あれでやる気が出るのは、特定の方だけのように妾は思えるのですが」
重りなしのイーディスが5P、リビドー全開の日高は4P、重りの軽さとマイペースが功を奏した火乃霞が3P、犬っぽく伏せが得意な役犬原が2P、地道に頑張ったコランダムが1P。
最重量の重りに苦しめられた巴は、リビドーを以てしても得点できなかった。
役犬原、日高が6Pで同点首位、イーディスと巴が5P、コランダム、火乃霞が並んで4P。
差はわずかで勝負は、最終第三種目終了まで読めない展開となった。
●
「こればかりは、ビーチフラッグじゃないよねえ?」
鳩、馬、大型犬、ネズミ、海亀の入ったゲージを前に日高が呟く。
「この短時間で、よく調達してこられましたね、シャロンコーチは」
首を傾げるイーディス。
「馬、犬、ネズミは飼っている方も多いでしょうし、ここは海ですから海亀もいるでしょうけど、鳩ってそんなに簡単に捕まるものなのですか?」
巴の疑問に動物好きな火乃霞が答える。
「鳩の警戒心の薄さは有名でございますが、あるいは話に聞く伝書鳩をお借りしたのかもしれませんね、卵から育てますので極めて人に慣れていると聞きます」
その時、コーチが笛を持って現れた。
「では第三種目を開始する、全員、用意した物を持って所定の位置に伏せろ!」
用意した物とは、ハンターたちが各自で昼休みに市場等で用意した品々である。
「僭越ながら、飲み物を買って参りましたので、皆さんおあがりになりませんか? 脱水症状になったら大変でございます」
火乃霞の気配りで、シャロンコーチを含め、皆でフルーツドリンクを飲む。
最年少の十三歳が、大人なのは競泳水着の中の胸だけではなかった。
「では、始めるぞ!」
ピッ!
コーチが笛を鳴らした。
今回この笛は、ハンターたちのスタンドアップを促すと同時に、動物のゲージが開く合図でもあった。
動物たちが、一斉に飛び出す。閉じ込められて変な場所へ連れて来られ、ストレスが溜まっていたのだろう。
ゲージの扉は、ハンターたちのいる側にあるため、まずはこちらへと向かってきた。
最初に立ちあがったイーディスが、力強く砂浜を踏み込み、走り始めた。
「騎士たるもの、やはり馬を手なずけねば!」
4Pの馬狙いである。
物凄い勢いで自分に向かってきた女騎士に面喰ったのか、馬は立ち止まり踵を返そうとした。
逃げられたとしても、今のイーディスは馬を上回る速度を技により実現している。
「こっちっすー! 美味しい人参があるっすよー!」
役犬原が、横槍を入れるかのように体に巻きつけた人参を見せた。
腹を空かせていたのか、馬は方向を変え役犬原の方へ向かってくる。
だが、それは同時に同じ馬狙いのイーディスとの距離をさらに詰める事でもあった。
視線を躱し合う役犬原とイーディス。
「速さなら私が上です!」
「甘いっす! 俺だって今は馬より速いっす!」
役犬原は動物霊の力を纏う技を行使し、文字通り獣の俊敏さを身に付けた。
イーディスと役犬原は、同時に馬に向かって駆け出した。
「あ、あれ? 俺、走るの全然早くなってないっす!?」
イーディスだけが、圧倒的に速い。
「役犬原、その技はボールを投げられた時に躱しやすくなる技なのです。投げられたボールを追いかけるための技ではありません」
コランダムに指摘され、白目を剥く役犬原。
「やってもうたっすー!」
一方、馬の間近まで来たイーディスはそれに跨ろうとした。
「ほら、落ち着いて。 大丈夫、キミを害するようなものは周りには何もないわ。 ね、怖くないって分かるでしょ」
だが、完全にフラれた。
「はあ、人参しかみえていませんね」
もしこの馬に人の男の魂があれば、スク水美少女騎士を喜んで騎乗させたのだろうが、しょせんは畜生である。
初対面の二本足如きに手なずけられるものかよとばかりに走り去った。
役犬原が胴に巻いた人参めがけ一直線!
「よーしよし! 人参やるから旗よこすっす!」
ミスがミスにならずに4Pの旗を獲得した役犬原は、これで計10P。
これを上回る可能性があるのは、現在6Pの日高が、5Pの鳩を捕まえるケースのみとなった。
コランダムは、商店で買っておいた干し肉をひらひらと振って見せた。
「一緒にどうですか?」
やはり食べ物は有効で、犬は嬉しげに寄ってきた。
普段から犬っぽい人の相手をしていたのもアドバンテージだったかもしれない。
3Pの旗をコランダムは簡単に獲得した。
「大きな犬でも、これくらい可愛ければいいんですけどね」
「亀さん、愛らしゅうございますね」
のそのそ砂浜を歩いていた海亀の甲羅を、動物好きな火乃霞が撫でていた。
「私の故郷には、海の底にある楽園に連れて行ってくれるっていう伝説があるんですよ」
巴とは、話が弾んでいるようである。
彼女が掌に乗せているネズミは、ランアウトと呼ばれる移動力を増す技で強引に掴まえたものだ。
●
さて、問題の日高である。
彼は、市場で動物たちの好物を一通り買っており、その中には鳩の好物の豆もあった。
ダメ元で撒いておいたそれに、ゲージから出てきた鳩は飛び立たずにそれを啄み始めた。
ここまではいい。
問題は、それを日高が捕えられるか否かだ。
策はある。『踏込』と呼ばれるスキルで一気呵成に捕えてしまう事だ。
だが、踏込の間合いは狭い。よほど接近しなければ使えないのだ。
仮にこの鳩が罠などで捉えられた野生のものなら、近づく前に逃げられてしまうだろう。
だが、火乃霞が言った通り、人に慣れ切った伝書鳩なら――。
賭けだった。
日高は豆を啄んでいる鳩に、思い切って一歩近づいた。
●
「日高が優勝だな」
マイクロビキニ姿のコーチがそれを告げた。
鳩は逃げなかった。
足に紐で撒かれた旗を取られる時にも慣れた様子だった。
火乃霞の読み通り、伝書鳩だったのである。
「ああ、師匠と海で遊びたかったっす」
泣き続ける役犬原。
「いいじゃないか、みんなで一緒に海で遊ぼう」
シャロンが笑顔を浮かべる。
「え? いいんすか?」
「今のゲーム、それぞれ皆、素晴らしかったからな。落とし穴を見抜いた巴の知恵、馬の脚力さえ上回らんとするイーディスの意気、火乃霞の気配りと動物への愛情、コランダムと役犬原の師弟漫才、ごちゃごちゃ文句言いつつも優勝しちゃう日高の図太さ、全て素晴らしかった。勝敗は幸運の女神様の気まぐれさ。お前ら皆、いいハンターになれると思う」
「ありがとうございます」
巴、イーディス、火乃霞は素直にお礼を言ったが、他の三人は複雑そうだった。
「役犬原とセットにされたのは複雑です」
「師匠、それはないっす!」
「確かに文句言ったけど、なんか引っかかる言い方だよな」
その日、ハンターたちはイーディスを提案の遠泳をしたり、砂遊びをしたりして海を楽しんだ。
蒼い海に紅い太陽が溶け込みゆく景色も、一緒に見た。
ビーチフラッグ訓練にどれほどの効果があったか定かではないが、紅と蒼、二つの世界の距離がまた少し縮まったのは確かである。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 運切 火乃霞(ka1765) 人間(クリムゾンウェスト)|13才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/06/16 15:23:21 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/17 21:55:27 |