• 界冥

月面都市防衛戦 群体狂気、迫る

マスター:貴島春介

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/09/30 09:00
完成日
2017/10/13 00:15

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 統一地球連合宇宙軍、火星を攻撃するも撤退。
 火星ゲートから出現したVOIDは追撃を開始。クリムゾンウエスト、リアルブルー、そして月。いずれの世界でも、人々は火星より飛来する無数のVOIDへの対応を余儀なくされていた。
 火星から来襲するVOIDは相当数を数え、多数のハンターがその撃退に投入されていた。

 月面都市・崑崙の管制室。
 オペレーターたちが、VOIDの出現と動向に目を光らせる。
「VOID反応を察知。VOID接近しています。数50」
 モニタに表示されるいくつもの光点。その光は、迷いなく月面都市へと移動を開始する。
「次から次へと……しかも出現場所も定まらないと来ている」
 神出鬼没とはこのことか。
 火星からのVOIDは突然に出現する。VOIDの思惑など、人間に推し量れるものではない。
「個体識別、小型狂気ではありません。推定サイズ4~8m。小型狂気が寄り集まった群体と推測されます」
「対応にはCAMが要る大きさか。ユニットが扱えるハンターを優先して回してくれ」
 即座に慌ただしくなる管制室内。
 VOIDを崑崙に侵入させるわけにはいかない。
 崑崙への被害を食い止めるため、ハンターたちの出撃の時が迫る。

リプレイ本文

 月面都市・崑崙。基地の一室、ハンターたちはまず簡素なブリーフィングルームに集まることになった。
 日下 菜摘(ka0881)の発案で、戦闘開始までに仲間とそれぞれの役割分担について打ち合わせておくことになった。
 管制室から受けとった群体歪虚の数と行動パターン、各人のCAMの特性、搭載兵器を加味し、数で押してくる歪虚の迎撃計画を確認する。
「最近、VOIDの猛侵攻が続きますね……また、変わった……と言いますか、ある意味悪趣味な外観のモノが……沢山来ましたね」
 天央 観智(ka0896)観智は率直な印象を表明する。歪虚の出現はリアルブルー、クリムゾンウエスト双方の各地で相次いでいる。崑崙も、例外というわけにはいかなかったようだ。
「仲間達とは連携はするじゃん」
 ゾファル・G・初火(ka4407)ゾファルはあっけらかんと言い放つ。一人、群体歪虚の群れに突撃すると宣言したのだ。
 今回のユニット編成は中遠距離に傾いている。ゾファルの近接型CAMが突出するなら、歪虚を引き付ける格好の陽動役となる。
「適当に利用できるんなら好きに利用してほしいじゃん」
 捨て鉢になったような物言いだが、本心だ。難しいことを考えるよりも、ぶん殴った方が話は早い。
「歪虚の撃滅は当然で、あたし個人としては色々新装備・新技のテスト!」
 出撃前の緊張感を和らげるように、元気に宣言したのがウーナ(ka1439)だ。
 武装を変更したエクシア・TTTでの出撃。どれほどの結果が出せるかと心躍る。
「本格的に進行して来たみたいですが……迎撃戦はセーフティに進めたいですね。これは、さすがに数が多いですから、頑張って退治します」
 クオン・サガラ(ka0018)クオンが予想される敵の数に眉をひそめる。
「低重力化でこれだけの大軍を相手にするのは……厳しいのですけど、最後まで集中して挑むことにします」
 半端に体力を残すと分裂して増々厄介になる。できる限り、近い順に集中して倒す事になるだろう。
 クオン個人としては、この戦闘で経験を積んで今後に備えたいところだ。
「VOIDの思惑等、判りませんが……飽和攻撃的な侵攻を、して来ないのは……正直助かりますね。此方は、連携と集中攻撃・各個撃破で対応しましょう」
 観智は歪虚の行動パターンを冷静に分析し、適切な対処をはじき出す。
 撃退する数が多い為、また彼方此方からバラバラに寄せて来るのを転戦する為、弾薬・燃料等をふんだんに用意した。
「近距離隊が撹乱、遠距離担当が砲撃。隙あらば広範囲攻撃の連携で分裂した破片諸共……でいいんだな?」
 守原 有希遥(ka4729)有希遥が各人の分担をまとめる。
「崑崙へ敵を近付けるわけにはいきませんもの。何とか水際で阻止したいものですね。わたしも微力ながら全力で当たらせて頂きます」
 菜摘は改めて表情を引き締めた。

 できる限り崑崙から離れた場所で群体狂気を迎撃する為、ハンターたちは出撃に取りかかる。武装を搭載し、出撃準備を完了したCAMと魔導アーマーがカタパルトに居並ぶユニット射出口は壮観だ。
「どこにいても現れるんですね、狂気は」
 発進準備を完了したコックピットの中で、ぼそりと、しかし強烈な敵意を込めて雨月彩萌(ka3925)彩萌はつぶやく。
「ならばわたしの前に現れる全ての狂気を悉く撃ち抜き殲滅しましょう。わたしの正常を証明する為に、異常を排除する為に」
 嫌悪する狂気の眷属相手なので攻撃的な言動が普段の二割増しになっている。物騒なことこの上ない。
「行きますよ、アイリスMk-2。わたしたちの力を証明してみせましょう」
 信頼を寄せる自機に呼びかけ、彩萌は自信に満ちた微笑みを浮かべる。
 最終確認に走り回る整備班たち、ライトでパイロットに信号を送る信号主。出撃でにわかに慌ただしくなるユニット射出口の光景は、いつも物々しい。
 魔導アーマーに搭乗した有希遥は愛機の両足をカタパルトに密着させる。
「御大層なことで……ヴァードケストレル、守原有希遥、往くぜ!」
 急加速、全身に襲いかかる強烈なG、その突然の解放。
 ヴァードケストレルを始め、ハンターたちの搭乗したユニットが、めいめいカタパルトで宇宙空間へと射出される。
 月面から離れれば、そこは完全なる無重力の世界。
「さて、宇宙というのは二度目ですが、どうにもこのフワフワする感覚は慣れませんね。もっとも、落ち着かない程度の話ですが」
 ヴァルナ=エリゴス(ka2651)ヴァルナはコックピットの中でひとりごちた。巧みに慣性制御をこなし、姿勢を安定させていても、慣れないものは慣れない。
と、各機の搭載レーダーが崑崙に接近する狂気の群れを補足する。
「わー、きたきた!」
 トランシーバー越しに、どこか楽しそうなウーナの声。

「来たよ来たよ、歪虚の群れが。こいつぁー死ねるかなじゃーん」
 などと自殺志願者みたいなことを言っているが、もちろんゾファルには死ぬ気なんてさらさらない。
 ゾファルはコックピットで目を輝かせながらアクティブスラスターを噴かし、一目散に敵の群れにつっこむ。
 死ぬような戦場じゃないと濡れないって言うか燃えないからってのが正直な所らしい。過去の大規模戦でも死地と呼ばれる戦場につどつど現れたのが目撃されているとか。生粋のバトルジャンキーなのだ。
 今回も、近接オンリーな拳闘機仕様のドミニオン・伐折羅大将で戦場に乗り込んでいる。
「本命ガリ(ガルガリンの事)ちゃんのためにも使い潰していくつもりでやったるじゃーん」
 とにかくぬるい戦場はノーサンキュー。あと、数がたんまり出てくるのがお好みなのかもしれない。当たるを幸い、ずばっ、ばしゅー、どかーんとやるのが好きな割とおおざっぱな性格ゆえに。だとすれば、今回はゾファルにとって、うってつけの戦場という他ないだろう。
 故にレバーとかペダルで操作する現行仕様のCAMはあんまり得意じゃない。特に考えて操作するのはあかんくてフィーリングのままに無我夢中で操作するのが大好き。
 死地が好きなのも案外、考え始めるとなにしていいかわかんなくなって動けなくなるからかも……いや、そんなことない。この戦闘バカが。そのうち、ヘイムダルのマスタースレーブを移植しようと計画しているとかいないとか。
 ともあれ、加速の勢いを十分に乗せた拳を目の前の狂気にクリーンヒット。んでもって当たるを幸い、パンチでプッチして、蹴りで金的して(群体狂気に金的があるかどうかは怪しいが)、連続して攻撃をたたき込んでいく。
 集中攻撃を受ける仲間を救えとばかり、別の狂気が収束レーザーを浴びせかけながら伐折羅大将に殺到するが、マントシールドでランラカランラカランラカランラン、オ・レ♪ とマタドール的な動きで寄り集まる歪虚共をいなし続ける。
 もちろん不用意に寄ってきた狂気は、ふん捕まえて鉄拳をお見舞いするのも忘れない。
 CAMの格闘動作プログラムを限界一杯までフル活用して縦横無尽に暴れまくるゾファルに、群体狂気の群れは確実に足を取られつつあった。

 中衛担当の中でやや先行したヴァルナは、R7エクスシアの背部マジックエンハンサーを起動した。R7エクスシアのマテリアルが爆発的に高まり、黄金色の燐光が吹き上がる。
 赤い銃身を持つイースクラを構え、群体狂気が群れ固まっている区画に向けて発射。イースクラに光の線が浮かび上がり、非実体の弾丸がまばゆい火花を散らして走る。
 イースクラの弾丸は斜線に沿って十数体の群体狂気を巻き込み、黄金色の炎を巻き上げた。
 一直線にダメージを与えた爆炎を突き破り、群体狂気が姿を再び現した。体表の目玉を多数潰されながらも、群れは崑崙への前進をやめることはない。
「戦闘にあたって単独行動は厳に慎み、仲間との連携を常に意識しつつ相互補完を図るように努めて!」
 オープンチャンネルになったトランシーバーに、菜摘は叫ぶ。
 味方全体の連携に気を配りつつ、ロングレンジマテリアルライフルの射程に入った群体狂気に狙撃を開始する。
 敵の漸減を図る為になるべく仲間と同一の個体を狙い、確実に頭数を減らしていく。
 ヴァルナの射撃で傷ついた狂気は、菜摘の愛機・飛燕の適確な狙撃の前に撃墜され、また、その移動範囲を少しずつ狭められていく
「それじゃー……新技を試させてもらおっかなっ」
 その群れに真っ向から対峙し、ウーナはエクシア・TTTを加速させる。両手には銃剣付の長銃身ハンドガン『トリニティ』。右を拳銃、左を銃剣モードにセット。照準用の頭部バイザーがメインカメラに被さり稼働する。
 狂気のギラつく目玉が急速に近づくエクシア・TTTを補足するように動き、三々五々取り囲むように動き出す。接近距離とまではいかない、絶妙の間合い。これこそがウーナの距離。
「まさかCAMで青竜紅刃流が再現できるなんてねー♪ 舞うよっ、TTT!」
 その言葉通り、エクシア・TTTが優美に動いた。鋼鉄の体が、柔らかな曲線の軌跡を描く。銃弾は、さながら刻まれるビート。銃剣は、さながら振るわれるタクト。
 『青竜紅刃流・射の型』! タスカービレで生まれた新興の複合武術流派であり、遠近両用の護身戦闘術が、ウーナの卓越した操縦技術により、CAMで忠実に再現される。
 エクシア・TTTの動きに翻弄された群体狂気たちに、おもしろいように銃弾が、銃剣の斬撃が、ヒットしていく。
 作戦は『取りつかれる前に倒す』『まとめて倒す』。ハンドガンの射程を維持しつつ、弾幕を張り、敵の動きをコントロールすることも忘れない。これもやはり、舞い踊るような華麗な動き。
「わたしたちの事を守ってくださいね。ストラフ射出!」
 フロートガンポッドが彩萌の意のままに動き、四方から迫る狂気にあやまたず銃弾を浴びせる。
 相手が怯んだ隙にアイリスMk-2の背部のマジックエンハンサーが花開くように展開。マテリアルを急速に高めながら、迫り来る狂気の群れを照準する。射線上に複数の敵を捉えた。
「直線状に並べば、撃ちいてくれと言っている様なものですよ」
 狂気相手には伝わることのない独語。迂闊な動きを見逃すことなく捉え、最小の動きにして最大効果を生み出す砲撃のトリガーを引く。
 宇宙空間を走った紫の光条が、複数の群体狂気を巻き込みながら一掃した。

 クオンのCAM、フォボスの深紅の機体が漆黒の宇宙空間に鮮やかに浮かぶ。
 見てくれから重装備なのがわかるツインカノンを、十分な距離を取り発射する。狂気のいびつな球体に重砲弾が突き刺さり、宇宙空間を滑るように移動していた動きがグラつき、一瞬遅滞する。
 そこに、たたみ掛けるように一条の銃弾が群体狂気を貫いた。観智のデュミナス射撃戦仕様、スナイパーライフルによる精密な一撃。群体狂気を、分散もさせずに葬り去る。
 月面都市に迫る『群体狂気』群各個に対して、集中攻撃を行い……これを各個撃破する。着実に数を減らすことを優先し、ダメージを分散させないこと。
 そして、1体を屠ったと見るや2つの機影は素早く移動し間合いを取る。
 フォボスは月面すれすれを移動しつつ距離を調整し、デュミナスはVOID群と月面都市との間に身を置く。常に迎え撃つ側に。追い駆ける側に回ってしまう様なポカはしない。

 群体狂気は全身の目から全方位に向けて発射する拡散レーザーでハンターたちを牽制するものの、ハンターたちの防御力と回避力は高く、目立ったダメージを与えられない。
 ハンターたちが脅威であると認識し、目玉をせわしなくギョロギョロと動かすと、群体狂気の体長と変わらぬほどの大口径となったレーザーを発射する。
 タイミングが合っているもの、バラバラなもの取り混ぜ、不規則に掃射される大口径収束レーザーがハンターたちに襲いかかる。
 観智のデュミナスが構えて、いつでも使える様にしておいた盾に、重圧を感じるほどのレーザーが突き刺さる。
 飛燕の追加装甲板が、レーザーにさらされ、焼け落ちる。
 ヴァードケストレルは、魔導アーマーの小柄な機体を活かし、レーザーの回避に成功する。
「CC-01の最大の長所、それはこの威力と射程で一切機体動作を阻害しない設計だ!」
 ウーナはエクシア・TTTのスラスターを噴かし、急制動で回避する。
「そんなの当たってられないよ、TTT華奢いしね」
 そして回避運動から即座に転身し、マテリアルエンジンからエネルギーをマント状に展開。マテリアルカーテンで後ろの皆を庇う。
 クオンはレーザー発射のタイミングがうまくつかめず、フォボスの盾をかざす。裏側に刻まれた術式が淡く発光し、盾の防御力を向上させる。盾を持つ手にギシリと嫌な軋みを感じたが、何とか耐えきった。
 そしてクオンは敵の姿に目をこらす。収束レーザー発射の予兆は、狂気の全身にある目玉の動きだ。
「狂気の目玉の動きを見てください。予兆を掴めば、避けられます」
 全員にトランシーバーで通達し、戦況を有利に導こうと試みる。
 ヴァルナは交差するレーザーにR7エクスシアの盾をかざし、さらにマテリアルカーテンを重ねて展開。広範囲に注がれるレーザーから味方を守り、かつ万が一を想定し崑崙にも攻撃を届かせるわけにはいかない。
 まだ敵の数が多く、突出して切り込みすぎては不利になる。確実に反撃できる、絶好の機会を待つのだ。
 ヴァルナとは対照的に、ひとり突出したゾファルはビーム攻撃の雨の中でも奔放に動き回る。
 兆しが見えたら、即回避。総出もなければ歪虚を掴んで楯にするとか、足爪でつかんで振り回したり、踏み台にしたりとやりたい放題だ。

 有希遥は、装弾数が非常に少ないので制動しつつ位置を変え、射程を活かし敵と一定の間合いをあけるよう努める。
 間合いをあける際は、後衛のポジションを活かし、敵味方を観察し、カバーしあえる距離は必ず維持している。
 無論いざというときの為に、近接戦用の刀は装備している。しかし今回それより目を引くのは、ヴァードケストレルが背負う巨大な対空砲だ。CAMよりも一回り小型の魔導アーマーが背負うそれは、シルエットのバランスを欠く程の異彩を放っている。
「確かにこいつは近接向きだが、得物がはそれを補って余りあるんでな」
 対空砲CC-01。錬金術師組合で開発された魔導アーマー用対空砲だ。ヴァードケストレル自身の全長よりも長大な砲の制圧力、推して知るべしというところ。
「リロードは多いし手間もかかるが、威力は折り紙付きだ!」
 有希遥は裂帛の気合いと共にCC-01を発射する。直撃を受けた群体狂気が弾ける。巨大さに違わぬ威力に、狂気の群れは有希遥のヴァードケストレルを危険な敵と認識する。
 同時に……対空砲を喰らった群体狂気はバラバラとほどけるように分体となって間近のユニットにへばりついた!
 接近戦距離にいたゾファル、中衛のウーナ、彩萌の機体を狂気の淵に落とさんと、小型の歪虚が大挙して迫る!

「敵の破片が流れ出した! 本体ついでにぶち抜くから次の位置からどいてくれ!」
 有希遥が叫び、再びCC-01で砲撃する。
 アイリスMk-2は狂気の精神汚染対策にイニシャライズフィールドを展開する。数匹取り付いた程度ではフィールドに弾かれる。
「わたしの正常を侵すことは容易くありませんよ。あなたのおかげですね、アイリスMk-2」
 ヴァルナは即座にR7エクスシアの剣を抜き、伐折羅大将に急接近。抱えるようにして位置を変えると、剣で取り付いた分体を引き剥がしにかかる。剣では細かい動きが叶わず、ついには手で剥がし始める。
 クオンのフォボスが弾丸をリロードし高速演算を開始。マルチロックオンで複数対象を捉える斜線と軌道計算を瞬時にはじき出す。
 分体の撃ち漏らしを確実に射程内に収め、撃墜する。
「大きくても厄介ですが分裂するとさらに厄介ですね。わらわらと群がるモノは振り払い叩き落しましょう」
 フォボスに続き、アイリスMk-2も分裂直後の状態を狙ってマテリアルライフルを発射。複数の群体狂気を撃墜する。
 さらに近づいてくる敵はフロートガンポッドの弾幕で対応する。アイリスMk-2には攻守共に隙はない。
「もう、うっとおしいっ!」
 ウーナはいらだちをあらわにし、必死で分体の接近を阻む。機銃と銃剣モードのハンドガンで振り払う。大方は振り切り、完全には振り切れなかったものも、イニシャライズフィールドで無効化された。
「戦場で戦を忘れるようなタマじゃねえだろうが!」
 有希遥が、語気荒く叫ぶ。トランシーバーと伝話は常時起動している。
 仲間が狂気で恐慌状態に陥らず万が一の時も回復しやすいよう、また互いに孤立しないよう声掛けを積極的に行う。
 収束レーザーにも、分体の狂気侵食にも即座に対応し、ハンターたちのは戦陣と士気は崩れない。
 伐折羅大将が接近戦でいくらかの手傷を負ったものの、陽動、援護、狙撃、役割分担を確実にこなしてゆく。

「こちらウーナ、敵は追い込んだよっ」
「有希遥だ。ここから見ても、敵さん、ちょうどいい位置に群れてる」
 中衛と後衛から「一斉攻撃可能」の報告が上がる。群体狂気は中衛ユニットの位置まで戦線を押し上げてきている。
「彼我の距離が40を切りました。敵がまとまっているうちに一気に叩きます。合わせられるユニットは範囲攻撃を!」
 菜摘が連携支持を出すが早いか、飛燕はマテリアルライフルへのエネルギー充填モードに移行。なるべく多くの敵を巻き込む形に斜線を調整する。
「タイミング! 合わせて!」
 エクスシア・TTTが『トリニティ』をロングバレルモードに。プラズマグレネードの発射準備を完了する。
 彩萌のアイリスMk-2とヴァルナのR7エクスシアが双方マテリアルライフルを構え、射程範囲における最大数の対象を照準する。
 有希遥のヴァードケストレルがスペルランチャーを起動する体勢に入る。
「両腕装甲展開、動力炉及び魔力回路全力稼働、スタビライザーBモード固定……スペルランチャー、フルブラスト!」
「撃てーっ!」
 菜摘の号令一下、5体のユニットによる広範囲・大火力の爆撃が狂気どもに炸裂する。交錯するマテリアルの光条、プラズマが巻き起こす猛烈な熱、紫と青白の色彩の奔流が群体狂気を、その分体を区別なく貫き、破壊し、燃やし尽くすエネルギーが吹き荒れる。
 CAMのモニターが一瞬ホワイトアウトするまばゆい光。色とりどりのマテリアルが起こす猛烈な爆炎が収まった後には、何も残らない。
 もはや、ハンターたちを打ち倒してまで崑崙に接近する歪虚の影は宙域にはなく、迎撃任務は無事完遂されたのだ。

「全く、うちがこっちおった頃より面倒になったんじゃないか?」
 有希遥はコックピットの中、ひとり嘆息する。火星クラスタから次々と狂気歪虚が湧き出てくるなら、ハンターたちは対処療法的に迎撃を行うしかなくなってしまうのではないか?
 ふと、それは弱気に傾いた考えだな、と気づいた。敵に相対することを厭うのは、武人らしからぬ態度ではないか。
「面倒」なんて思ううちは、うちもまだまだかねえ……!

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重体一覧

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    フォボス
    Phobos(ka0018unit001
    ユニット|CAM
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘(ka0881
    人間(蒼)|24才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ヒエン
    飛燕(ka0881unit003
    ユニット|CAM
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    マドウガタデュミナス
    魔導型デュミナス射撃戦仕様(ka0896unit003
    ユニット|CAM
  • 青竜紅刃流師範
    ウーナ(ka1439
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    エクスシア・トリニティ
    エクスシア・TTT(ka1439unit002
    ユニット|CAM
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    シュバリエ
    シュバリエ(ka2651unit003
    ユニット|CAM
  • エメラルドの祈り
    雨月彩萌(ka3925
    人間(蒼)|20才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    アイリスマークツー
    アイリスMk-2(ka3925unit002
    ユニット|CAM
  • ゾファル怠極拳
    ゾファル・G・初火(ka4407
    人間(蒼)|16才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    バサラタイショウ
    伐折羅大将(ka4407unit003
    ユニット|CAM
  • 紅蓮の鬼刃
    守原 有希遥(ka4729
    人間(蒼)|19才|男性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    ヴァードケストレル
    ヴァードケストレル(ka4729unit001
    ユニット|魔導アーマー

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談所
雨月彩萌(ka3925
人間(リアルブルー)|20才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/09/30 01:20:44
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/09/26 22:42:39