星至の祭

マスター:後醍醐

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
多め
相談期間
7日
締切
2014/11/19 22:00
完成日
2014/11/24 16:36

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ●
 人類と歪虚の最前線、辺境。
 秋が過ぎ、冬を迎えようとしている。
 
 秋の収穫を祝う祭りを行う部族もある。
 それは、粗食になりがちな冬に向け、今一時の精一杯の贅沢を楽しむといった現実から、実りを祖霊に感謝すると言う意味合いまで。
 
 ● ブルゲド族居留地
 冬に向けた準備は、ハンター達の活躍により必要な物資が集まった。
 特に塩は獣などからも取れるものの、その物の岩塩が手に入ったことが心強かった。
 一部、煮て再精製する必要のあるものあったが、手に入れた材木の余りで問題なく行えた。
 また、適切な材木のお陰で燻製も問題なく規定数行われた。
 ひとえに冬を越す体制を盤石にしたのはハンター達のお陰だ。
 一部の余所者のとあまり係る気のなく、快く思ってない部族の人間ですらハンター達には感謝をしていた。
 逆にハンター達に対して好意的な一部の部族の人間も存在する。
 族長の嫁のエリナの周りの女衆や一部の男衆等、少なからずともハンター達と共にしたことのある者達だ。
 
 族長のゲル
 エリナの仕事は次に行う祭りの準備だ――祭りの名は「星至の祭」
 収穫の感謝を祖霊に祈り、冬を迎えるための祭り。
 星に至る、高き天を舞う鷹の祖霊に届ける祭だ。
 冬越しの為の備蓄とは別に祭りのための備蓄も行われていた。
 故に、冬越しの備蓄が若干ギリギリだったのだが、ハンター達のお陰で助かったのだ。
 冬越しも大事だが、祖霊に感謝を捧げるのはもっと大事だった。
「エリナ様、彼等も呼ぶべきです」
 いつもの様に部族の仕事をしていたエリナに補佐をしていた女性が声を掛けた。
 女性が言う彼等――ハンター達の事だ。
「そう、ね。一度相談してみないと……」
 流石に、部族全体に関わる事だけに族長や他の人間とも調整が必要だ。
 ゲルの奥――族長の元へ行くエリナ――。
 
 しばしの間、エリナは奥から出てくる。
「許可が出たわ」
「……良かったです」
 ホッとした表情の女性。
 族長の許可さえ出れば、他の人との調整もたやすいだろう。
 許可された理由としては、最近のハンター達の働きに依るところが大きかった。
「そうね……」
 エリナは考える――ただ祭りに呼ぶだけではどうだろうかと。
 事実、祭りに参加するだけが祭りではない――準備から儀式なのだ。
 部族とハンター達との距離を詰める――取り込むというわけではないが……。
 それは互いに良いはずだ。
 因みに、準備の為の狩りは鷹狩で行われる。
 普段から鷹狩を行っているが、今回の場合は儀式と言った趣が近い。
「――準備も共にしましょう。真に祭りに参加してもらいましょう」
 そうなれば、ハンター達の世話役は何時ものリーナでいいだろう。
 肝心の鷹狩も無難にこなせて、幾度と無くハンター達と共にしているのだから問題は無いだろう。
 依頼の概要を羊皮紙に書き留めていく。
 一つ、注記を入れておく。
 『未成年の飲酒は不可、成人のみ』
 地域によって成人の定義が違うので何とも言えないが追記することにした。
 ゲルの外へ出ると、祭りの準備か猪が一頭まるごと焼けそうな焼き台の設置や、酒樽を運び出す者、祭りの話を聞いてやってきたのだろう商人から生野菜を受け取っている様子が見える。
 普段はあまり使われてないだろう香辛料を使っての肉を煮込んでいる様子も見える。
 野趣的ではあるが普段のようにただ焼いたりしたのと違って手の込んだ調理の様子が伺える。
 そんな中、ピコピコと動く特徴的なツインテールが見えた。
「リーナ、これお願い」
 狩りから帰ってきたのだろうリーナを捕まえて依頼の提出をお願いするエリナ。
「え!? やった! お祭りに一緒に参加するんだ」
 ハンター達が祭りに参加することに喜びを隠せないリーナだった。
 狩りの疲れを忘れてハンターズソサエティへ依頼書を運ぶのであった。
 
 こうして、依頼が発行された。
 

リプレイ本文

●設営準備~祭りのはじまり
 ブルゲド族に伝わる――星に至る、高き天を舞う鷹の祖霊に感謝を届ける祭。
『星至の祭』

その祭りをハンター達ともに行うことになった。

 あちこちを祭りの準備をして回る中に呼ばれたハンター達もいる。
「これ、祭りに使ってくれ」
 ロクス・カーディナー(ka0162)は持参したエール4リットルを酒樽を運んでいた部族の人間に渡す。
「いいのかい?」
「酒の席は呑兵衛どもに築かれた、境界の無ェ一国だ。堅苦しいモンがあるなら、一度取っ払った方が互いを知れるぜ」
「ちげぇねぇ! ありがとうな!」
 遠慮していた相手もロクスの言葉を聞くと快く受け取った。
「働かざる者何とやら、だ」
 そう言うとロクスは、祭りの設営準備をしている所へと向かった。

「星至の祭、か。こういった辺境部族の祭事の詳細は外部に伝わらないからな」
 (詳細を調べてレポートに纏めれば買い取る輩は幾らでも居る。祭りの手伝いの報酬と合わせて一石二鳥だ)
 トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)は興味深そうに辺りを見渡す。
 辺境独自、ブルゲド族独自と言ってもいい独特な衣装に身を包む部族の人間、鷲の模様の入ったゲル等等。
 トライフは軽くスケッチをとると設営の手伝いへ向かった・
 
「星至の祭……素敵な名前の祭りですね」
 ユキヤ・S・ディールス(ka0382)はそう、感想を漏らす。
 ブルゲド族の彼等の祖霊は鷹だ――雄々しく星まで空を舞うと伝えがある。
 その様子をイメージしながらユキヤは設営の仕事を手伝いに行く。

 祭壇の設営場所にはルシオ・セレステ(ka0673)が飾り付けを行っていた。
 (星至の祭り……人々の祈りが星に届くように……)
 祈るように、心を込めて飾り付けをしていくルシオ。
 部族も人間から指示を受けつつ、雑談したりと和やかな雰囲気だ。
 時には植物や鷹の羽を使ったリースを創って飾った。
 
「では、観察を始めましょうか。もちろんお仕事も頑張りますよ」
 観察をしていた音桐 奏(ka2951)は設営の手伝いへと向かう。
 鷹狩の見学の予定もあったのでいくつか手伝うとそちらへと向かった。
 
「俺、これでも聖騎士志望だから……鍛錬にもなるし」
 重量物を運ぶ志願したのはアリオーシュ・アルセイデス(ka3164)だ。
 ヒールも用意していたが、幸いけが人は出なかった。
 (知らない文化を学ぶのも好きだよ。自分の中の世界が広がる感じ)
 手伝いながらも、ブルゲド族の言葉や習慣なんかについてリーナに質問したりして教わっていた。
 そうしながら、アルセイデスは積極的に設営に関わっていく。
 
 楽器などが置かれている場所に一人のハンターの少女が現れる。
「お手伝いしますね」
「すまんね。ちょっと頼む」
 ルナ・レンフィールド(ka1565)は祭りに使う楽器の運び出しや設置を手伝ようだ。
 打楽器のようなものから馬頭琴や二胡に似た弦楽器など様々な楽器があった。
 初めて見る楽器にルナはワクワクしながら手伝っていた。

「ふむ、夜は酒を飲むので忙しいにしろ、昼間はやることもなく暇であろうな」
 設営の様子を見ているのはザザ・センザール・グリモア(ka2248)だ。
 力仕事が得意な人間は力仕事を、其々の向きにあった仕事を行っていた。
「仕方ない、我輩も準備の手伝いでもするとしよう」
 (とはいえ、大抵のことはすでに他の者が手を付けているだろうしな……)
 ならば、ザザが出来そうなことを――。
 そう思ったザザは設営準備をしている人々が休息を取れるように飲み物を渡したりなどして手伝っていた。
 
 祭りの設営はハンター達と部族の人間たちによって着々と進んでいる。
 
●狩り~初めての鷹狩
 一方。狩りに向かった者達。
 
 ブルゲド族の基本は鷹狩だ。
 今回は儀式の趣もあるということでそこまでの量の獲物は取らない。
 そんな、鷹狩に随行するハンター達もいた。
 
「なるほど、鷹狩とは興味深いですね。銃で獲物を狩るのとは一味違いますね」
 鷹が獲物を捉える瞬間や、鷹師の指示で飛ぶ様など普段あまり見らなれない光景が広がる。
 奏はそれらの鷹狩の様子を興味深く見ている。
 
 空を舞うのは――ブルゲド族の鷹ではなくエルティア・ホープナー(ka0727)のペットの梟「フォグ」だ。
 獲物をエルティアの近くへと追い込む――ペットとの意思疎通ができるからこそだ。
 エルティアがロングボウの「エウリュトス」を使い、一撃で撃ち落とす。
 
「初めまして、私はナナート・アドラー。今日は一日宜しくね?」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 リーナに挨拶をしたのはナナート=アドラー(ka1668)。
「鷹を使って狩りをするのよね? 私達は何をお手伝いすれば良いかしら?」
 アドラーはリーナに指示を仰ぎながら鷹狩の手伝いを行ようだ。
 指示に従うアドラーにより鷹狩は上手くいっている。
「とってもお利巧な鷹ちゃんなのね。ここまで育てるのって難しいんでしょうねぇ……」
 リーナと鷹との意思の疎通を見せる動きに感心するアドラーは鷹に興味津々のようだ。

「大好きなエイルといっしょにたかがりのおてつだいー♪」
 カウベルをカランコロンと鳴らしてご機嫌なのはベル(ka1896)。
「ベルちゃん、気をつけてね」
 一緒にいたエイル・メヌエット(ka2807)が心配そうに見る。
「はっ! ベル、鳴らない方がいい? 服につっこんどくー」
 そう言って服の中へカウベルをなおすベルであった。
「ぽっぽっぽー♪」
 鷹を見るのが初めてのベルは大はしゃぎだ。
「ねーねー、たかさん、きょうの晩ごはんももってきてくれるの!?」
 飛びだって行く鷹に期待の眼差しを向けるベル。
「ベルちゃん、鷹は獲物を取ってくるのよ」
 エイルがベルへ話しかける。
「だいじょーぶ! くんれんしたら、お料理もとれるようになるよ!」
 完成した料理を取ってくると勘違いしていたベルはちょっとしょんぼりするも空を舞う鷹を応援するかのように声をあげた。
 
「……見つけた。……キミも見えるね? ……さあ、行ってきなっ!」
 そう言って鷹を放ったのはレベッカ・アマデーオ(ka1963)。
 青空に吸い込まれるように空高く、鷹が舞う。
 鷹狩の少し前から、餌をあげてレベッカに慣れるようにしていたのが上手くいったようだ。
 空高く舞い上がった鷹は獲物を探し、捕らえることが出来た。
 
 鷹狩は順調に進み――終わりとなった。
「頂きました尊い命に、感謝を……」
 鷹狩が終わると、空と森と生き物に感謝を捧げるエルティアだった。
 
 祭りの設営準備と鷹狩が済む頃には黄昏時になろうとしていた。
 高かった陽も地平線に下りようとしている。
 
●調理~賑やかに、楽しく
 ハンター達と部族の人間が混じって祭りのための調理を行っている。
 其々が腕によりをかけた料理を調理しようとしていた。

「包丁を使って剥くのが苦手なのじゃよ……しかしなれたものじゃろう?」
 愛用の皮むき器を使って下拵えする野菜の皮を一心不乱に剥いているのはヴィルマ・ネーベル(ka2549)。
 こういった下拵えの仕事も地味ではあるが重要だ。
 その様子は、何処か楽しそうに野菜の皮を剥いていた。
 
「親父の船のコックに教えてもらったんだ。いけるでしょ?」
 数は少ないが魚を手に入れることが出来たので、レベッカは小麦粉をつけた魚を油で揚げ、フリッターを作る。
 油で揚げる音といい匂いがあたりをつつむ。
 レベッカはありあわせの材料でスパイスを利かせたマヨネーズソースを作って添えた。
 美味しそうな料理が一品出来上がった。
 
 カレーのいい匂いが辺りからしてきた。
 どうやら、匂いの元は向こうの寸胴鍋からのようだ。
「そこにツナ缶の中身ぶち込んで少し煮込めばツナカレーの完成~」
 鵤(ka3319)が持ってきた「レトルトカレー」を煮込んで「ツナの缶詰」を入れたようだ。
 辺境では見かけない珍しいレトルトパウチとカレーという組み合わせ。
 サルバトーレ・ロッソからの流出品なのか、ハンターの支給品なのかは不明だが、カレーの匂いにつられて鵤の近くに来た部族の人間も数人居るようだ。
「後は適当な種類のパン置いとくから、好きにつけて食べればいいんでないのぉ? あ、カップ麺に入れてもイケるぜぇ?」
 どうやら「カップラーメン」も持ってきているようだ。
 こちらも普通にはお目にかからないものである。
 作り方の説明――と言っても湯を入れるだけだが鵤は説明をしていた。


「さて、保険でフライパンは買ったが……使う時か」
 石焼きクレープ&ガレットをつくろうとしていた藤堂研司(ka0569)。
 色んな部族の人間に聞いてみたが、クレープが作れそうなサイズの平たい石を見つけることができなかった。幸い、前に部族に来た同盟商人が持ち込んだフライパンを借り受ける事ができた。
「藤堂のおにいはん……よろしゅうお頼申します」
 藤堂隣にいた浅黄 小夜(ka3062)は手伝うようだ。
「クレープ……小夜はやっぱり……甘いのがええな……」
 小夜が用意出来たのは生クリームとリンゴ等の果実や蜂蜜等だ。
 どうやら、生クリームは貴重な部類らしくこういった祭りでないと出回わらない様で量はさほど多くない。
 小夜は用意出来た食材を下拵えしていく。
「野趣溢れる方が趣旨に合う、クレープ&ガレットと洒落込むか!」
 藤堂が狩猟で手に入れた肉と、野菜を下拵えして生地を仕込んでいる。
 後は生地を焼いて包むだけだ。
 
 藤堂たちとは別の調理場では。
「よーし、俺もお祭り手伝うよー!」
 テンシ・アガート(ka0589)はリアルブルーの飲み物を用意して来たようだ。
 「缶ビール」に「炭酸飲料」と「ティーバッグ」や「緑茶」といったハンターへの支給品でしか手に入らない貴重品ばかりだ。
 緑茶やティーバッグ等の茶系は似たようなのがあるが、缶に入ったビールなどは珍しい部類だ。
 無論、それだけの珍しい飲み物ばかりではない。
 アガードは部族から分けて貰った果実と山羊乳や牛乳を使ってミックスジュースの様なものも作る様だ。
 乳に果実等を混ぜることでいつにも増して贅沢な感じに出来上がった。
 また、自身は飲酒しないが、持ってきた炭酸飲料と酒でサワーと作るようだ。
 様々な料理、それに添えられる様々な飲み物も用意される事となった。
 
「何がいいかしら……そうねぇ、イチゴやブルーベリーのジャムを使ったパンケーキとかはどうかしら」
 料理を手伝いにきた天川 麗美(ka1355)はデザートを作る様だ。 お祭りとあってか、イチゴやブルーベリーのジャムを手に入れることは難しくなかった――ただ、数は限られたが。
 故に、他の蜂蜜等を使ったパンケーキを用意することした。
 麗美はベースとなるパンケーキを焼いていっていく。
 なにせ、人数が人数だ――パンケーキの数も尋常ではない。
 せっせと焼き続け――辺りにパンケーキの焼けるいい匂いが当たりを包む。
 同じようにスヴィトラーナ=ヴァジム(ka1376)もパンケーキを焼く手伝いをしていた。

「これはどちらに?」
 あちらこちらを人と人の間を縫うように移動しているのは小鳥遊 蘇芳 (ka2743)だ。
 蘇芳は調理よりも多くの飲み物や料理の配膳や調理に必要なものの準備等の裏方に回っていた。
 宴の経験もあるが、メイドとしての矜持か恙無く済んでいっている。
 地味な仕事かもしれないがこういった仕事も重要だ。

 何も問題もなく、調理が進む――後は、祭り本番だ。

●祭り本番~感謝を込めて
 日は暮れ、闇夜へと変わる。
 天には煌く星々、祭りの時間だ。
 
「お待たせいたしました」
「熱いのでお気をつけて」
 くるくるとコマのように回りながら忙しそうに配膳する蘇芳。

「やぁエイル。良い星夜だね。そちらの可愛いお嬢さんは? 初めましてどうぞ宜しく」
 配膳していたルシオがエイルとベルを見つけた。
「えっと、ベルちゃん。この人は素敵な友人のルシオさん」
「よろしくねー♪」
 ルシオを紹介するエイル。
「エイルと星が導いた良い縁だね」
 出会いに感謝するルシオ。
 ルシオの配膳が終われば、三人共に食事をする様だ。

「……これが、こっちでの祭り、か…」
 『儀式』が気になり参加したオウカ・レンヴォルト(ka0301)。
 静かに儀式を始まるのを待っている。

 儀式が始まりを告げる言葉により儀式が始まる。
 先ほどとうって変わって辺りが静になる。
 辺りが静寂に支配される。
 すると、一人の少女が祭壇に上がってくる。
 飾られてた祖霊のトーテムにお辞儀をした後、少女は舞い始める。
 ブルゲド族に伝わる祖霊に感謝する舞踊。
 少女は舞う、感謝と祈りを込めて。
 時には激しく、音楽に合わせて緩急をつけて。
 煌く天の星々へ届かんばかりに。

 ルシオは儀式をみながら静かに祈りを捧げている。
 (故郷の、ブルゲド族の人々が、凍えることなく心温かに冬を越せます様)

 踊りを見つつも、隣の部族の人間から説明を受けているトライフ。
 忘れぬようにとメモに書き留めている。

 (思う事は一つ……俺も踊りたい)
 儀式を見守り、舞踊を見てそう思うオウカであった。

 (此方のお祭りは祈りを捧げたりがやはり多いですね)
 辺りを見回したユキヤはそう感じていた。
「誰かに、何かに、感謝するのは、素敵な事ですね」
 そう小さく言葉を漏らすユキヤだった。

 少女の舞が終わり、音楽が止む。
 少女は祭壇から降りてくる。
 儀式は無事終わった。

 儀式が終わる――儀式が終われば祝うための宴だ。
「汗流した後のエールは美味ェ」
 そう言うとロクスはエールを飲み干す。
 その後はブランデーを片手に他の部族の人間と部族のことや互いのことなど語らっていた。

「さあさあ皆さん、美味しいお肉に新鮮なお野菜で作ったとっておきのクレープにガレットだ! 甘いのもあるぜ!」
 屋台形式のような形で次々と振る舞っていく藤堂と小夜。
 次々と生地を焼き、色々な具を挟んでは渡していく。
 甘い物と肉等のものと半々ぐらいのようだ。

「テンシの飲み物屋開店だね!」
 同じく、アガートもカウンターの様な台で色々な飲み物を用意している。
「紅と蒼の世界の飲み物の融合もあるよ! 気に入った味を探してね!」
 物珍しさもあって人々が集まっていく。
 炭酸飲料と酒との合わせたサワーは飲み慣れない炭酸におっかなびっくりではあったが好評であった。

 其々に人々が興味をもって集まっていく。

「料理、どれも美味しいなあ♪ レシピ教わって帰ろう~」
 涼しい顔で、何処に食べ物が吸い込まれているのかというくらいの大食ぶりを発揮しているアルセイデス。
 その大食ぶりは皆を驚かすほどであった。
 
 食事も盛り上がっているが、楽器を持ちだして演奏をする人間も少なくない。
 飛び込みでリュートを演奏するのはルピナス(ka0179)。
 踊りやすい、軽やかな明るい曲を数曲を弾く。
 即興で踊りだす、部族の人間やハンター達。
「――星と共に今宵一夜の夢を御照覧あれ……!」
 羽衣の様な薄いヴェールを纏い、ベリーダンス風の民族舞踏を妖艶に舞うアドラー。
 篝火が妖艶に踊るアドラーを照らしだし、踊る影が映し出される。

「陸の祭りに海賊の歌ってのなんだけどね」
 飛び入りで船乗りの歌を歌っているのはレベッカ。
 酒も入っており、ご機嫌な様子で歌を披露していた。
 普段、聞きなれない歌は皆に好評だった。

 ハンター達や部族の人間の賑やかに踊る様子を酒を飲みながら楽しんでいるトライフがいた。
 気になることはどうやらメモをとるのを忘れない様だ。

「あ、シヴァさんこんばんは。今日もお仕事だったのかな? 手が空いてるなら一杯どうだい?」
「酒か……。偶にはいいか。俺で良ければ付き合おう」
 ルピナスに声を掛けられたシヴァ(ka2784)。
 シヴァもまんざらではない様子だ。
 ルピナスはシヴァにお酒を注いで労って軽く乾杯した。

 ハーモニカで演奏に参加したのはアルセイデスだ。
 主旋律を盛り上げるように、リズムを合わせながらの演奏を心がけていた。
 (知らない人同士が音楽で一つになるって心地好いね)
 ハーモニカの音と他の楽器の音が混ざり合い、新しい音楽を作り出す。

 入れ替わり立ち代り飛び込みで演奏する中にルナもいた。
 ルナはリュートでの参加だ。
 奇しくもセッションする形になっての演奏になった。
「青と赤、二つの世界の音が交わる瞬間と言った所ですね。これはとても、観察し甲斐がありますね」
 ルナと部族の人間のとの演奏を見ていた奏がそう呟く。

 エルティアは同行出来なかった幼馴染の為に書き留めていた。
 小さく分厚い魔導書の様な羊皮紙に青いインクの万年筆で物語を綴る様に。
 祭事の内容や人々の行い、表情、心……可能な限りを挿絵と共に書き留めていた。
「あぁ、気にしないで頂戴、貴方達の素敵な物語を識りたいだけなの」
 その様子を気になってみていた人間に答えたエルティアだった。

「私ひたすら野菜の皮しか剥いてないよぉ……うぅ料理の2、3品作れればもっと役に立ったのに……土下座するしかない感じだよね……」
 酔って泣き上戸というよりも臆病で根暗になってしまったヴィルマ。
「お酒美味しいし楽しい……恐れ多いけど」
 普段とは思えない豹変ぶりだ。

「やっぱり、酔ってたかー……絶対に近寄らねえよ? 面倒くさいって聞いてるからねぇ……」
 鵤はヴィルマの様子を遠くから様子見をしていた……が。
「鵤さん?」
「ヴィルマちゃん?」
 鵤に寄ってくるヴィルマ。
 フラグを立ててしまったから仕方がない――と言うことでヴィルマに絡まれる鵤であった。

「リーナちゃんはお久しぶり。元気そうで何よりだよ。こういう機会は嬉しいね」
 リーナに声を掛けたのはルピナス、以前の依頼で共にしていたハンターだ。
「お久しぶりです。ルピナスさん。楽しんで下さいね」
 それに嬉しそうに答えるリーナ。
「リーナとも初めましてだな」
 ルピナスと共にしていたシヴァが声をかける。
「はじめまして。ルピナスさんとはお知り合いなんですか?」
「ああ、酒はどうだ?」
 手持ち無沙汰なリーナを見て酒を勧めるシヴァ。
「あ、いただきます」
 シヴァから酒を一杯貰って飲むリーナ。
「一曲一緒に踊らないかい?」
 冗談めかして誘ってみるルピナスだが。
「あ、はい。良ければ」
 こうして、ルピナスとリーナは一曲踊ることになった。


 賑やかな、宴。
 そんな賑やかな宴から離れた場所で飲んでいるのもいた。

「酒は星空でも肴に、静かに呷るに限る……」
 ザザは少し酒の席を付き合った後に少し離れた場所で飲んでいた。
 星空を眺め、杯を傾けて飲むザザを月が照らす。


 祭り会場から少し離れた位置で一人で星を見るヴァジム。
「……煉華と見た星みたい……」
 空を見上げ呟く。
「そうだな、昔よりも幾分か近くにあるように感じるが」
 そこに煉華(ka2548)が現れ、ヴァジムを片腕で抱きしめようとする。
「……ストーカー? ……ほんと、馬鹿ね」
「その、だな……声を掛けるべき時を見計らっていたのだが……」
 抱きしめようとする煉華から引き剥がすヴァジム。
「昔は、こうやって星を見たでしょう?」
 ヴァジムは煉華を傍に呼んで座らせ、その膝の間に座る。
「全く……女子が身体を冷やすのは感心せんぞ」
 上着を掛けてやろうとする煉華だが。
「私は風避けがあるから良いの。それに、暖かいしね」
 煉華の胸に背中を預けて、小さく笑うヴァジム。
「……手。手、よ」
 星々を見ていると眠気がやってきて手を繋ぎたいと強請る。
「そんな寝顔をされては甘やかすしかないか、俺のわがままはこれだけだ」
 ヴァジムの手を取る煉華。


「……ん、やはり舞は踊ってこそ、だな」
 会場から離れて人気内場所に移動したオウカ。
 儀式を見ていて触発されたのか、一族に伝わる舞を人知れず風の吹くままに舞っていた。

 宴の喧騒から離れる人々のなかにユキヤもいた。
「此方の星も、空も、とても綺麗……」
 (何より、見えはしないでしょうが、リアルブルーが、この星空の何処かにあると思うと、何だか不思議です)
「空は好きです。どんな空でも。何処までも、何処までも続いて行く空……」
 ユキヤの言葉は星空へと消えていく。


 宴は続く――夜遅くまで。

●深夜~

 輝き流れる星の物語に思い馳せるエルティア。
 闇夜の中で星々は輝き続ける。
 頬を伝う風は冷たい――冬が近いのだろう。

「ベルちゃん。一番綺麗なお星様、みつかるかな?」
「いちばんぴっかぴかのお星さまさがすんだー♪ エイル、みてみて!ぴっかぴかー!」
 夜空を見上げて無邪気にはしゃぐベルとそれを見ているエイル。 その光景はまるで姉妹のようだ。
「星々の清浄な光が、皆の未来を護りますよう」
 星に祈るエイル――その思いを星に届けるように。

 祭りを十分堪能した小夜は終わった後、空をみあげていた。
「小夜のいた世界と……こっちの世界……星空も、やっぱり……違うんかな……」
 空を見上げる小夜。
「はいっ。ここいいかな?」
 小夜を見つけたルナは温かい飲み物を小夜に渡して隣に座る。
 何を話すでもなく空を見上げる二人。
 ルナは不意にリュートを弾き出す――キラキラ星をRB調にして。
 小夜はルナの演奏に合わせて、きらきら星の歌をうたう。
 小夜の歌とルナの演奏は夜空へと消えていく。


 様々な想いと心が交差した『星至の祭』。
 例年に無く大規模に行われた祭りは人々を楽しませた。
 祭りが終われば冬が来る――長い、長い冬が。
 
 星至の祭 Fin

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 11
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 人の上下に人を造らず
    ロクス・カーディナー(ka0162
    人間(紅)|28才|男性|闘狩人
  • その心演ずLupus
    ルピナス(ka0179
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 遙けき蒼空に心乗せて
    ユキヤ・S・ディールス(ka0382
    人間(蒼)|16才|男性|聖導士
  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • 遥かなる未来
    テンシ・アガート(ka0589
    人間(蒼)|18才|男性|霊闘士
  • 大口叩きの《役立たず》
    トライフ・A・アルヴァイン(ka0657
    人間(紅)|23才|男性|機導師
  • 杏とユニスの先生
    ルシオ・セレステ(ka0673
    エルフ|21才|女性|聖導士
  • 物語の終章も、隣に
    エルティア・ホープナー(ka0727
    エルフ|21才|女性|闘狩人
  • 心の友(山猫団認定)
    天川 麗美(ka1355
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 猛獣を御す閃鞭
    スヴィトラーナ=ヴァジム(ka1376
    人間(紅)|28才|女性|霊闘士
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • ミワクノクチビル
    ナナート=アドラー(ka1668
    エルフ|23才|男性|霊闘士
  • えがおのまほうつかい
    ベル(ka1896
    エルフ|18才|女性|魔術師
  • 嵐影海光
    レベッカ・アマデーオ(ka1963
    人間(紅)|20才|女性|機導師

  • ザザ・センザール・グリモア(ka2248
    ドワーフ|15才|女性|魔術師
  • 隻腕の救い手
    煉華(ka2548
    人間(紅)|35才|男性|霊闘士
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師

  • 小鳥遊 蘇芳(ka2743
    人間(紅)|13才|女性|疾影士

  • シヴァ(ka2784
    人間(紅)|28才|男性|闘狩人
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • 志の黒
    音桐 奏(ka2951
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • きら星ノスタルジア
    浅黄 小夜(ka3062
    人間(蒼)|16才|女性|魔術師
  • 誓いの守護者
    アリオーシュ・アルセイデス(ka3164
    人間(紅)|20才|男性|聖導士
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【星至の祭 参加者集合場所】
ルナ・レンフィールド(ka1565
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2014/11/18 22:14:15
アイコン リーナさんに質問!!
ルナ・レンフィールド(ka1565
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2014/11/15 21:59:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/18 23:49:45