ゲスト
(ka0000)
【初心】【界冥】C.D.F.
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- LV1~LV20
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/10/13 07:30
- 完成日
- 2017/10/21 03:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ハンターオフィスには日々多くの依頼が持ち込まれ、職員達は忙しい時を過ごしている。だが今日のリゼリオ・ハンターオフィスは、正しくはここ最近のハンターオフィスは異常な忙しさに見舞われていた。
理由は一つ、狂気の歪虚の襲撃が発生したからだ。もちろん強力な歪虚も含まれているが、決して個々の戦力がとりわけ大きいわけではない。だが、ともかく数が多かった。襲撃の数は一向に収まる気配もなく、ハンター達は、そして職員たちはその処理に日々追われていた。
「こちらはすぐに掲出してください。こちらは対処していただくハンター達が揃いましたので下げてください」
そんな中、受付嬢のモア・プリマクラッセは職員たちに素早く指示を飛ばしていた。彼女は極彩色の街、ヴァリオスで優秀な商人としても働いている。その事務能力がこの忙しさの中、存分に力を発揮していた。
●
「え? 街中に現れた? ……わかりました。場所を教えてください」
普段はまず感情表現を見せることのない絵に描いたような鉄面皮のモアだが、さすがに声に焦りと驚きの色が見える。
「……わかりました。場所はリゼリオの端の方で……」
モアは情報を聞きながら手配書に素早くペンを走らせていく。必要な情報をあっという間に書き終えると、それを自らの手で張り出した。
「急いでください。恐らく敵戦力的に数は多くとも駆け出しのハンターの皆さんでも十分対処できる範囲ですが、事態は一刻を争います」
ハンターオフィスには日々多くの依頼が持ち込まれ、職員達は忙しい時を過ごしている。だが今日のリゼリオ・ハンターオフィスは、正しくはここ最近のハンターオフィスは異常な忙しさに見舞われていた。
理由は一つ、狂気の歪虚の襲撃が発生したからだ。もちろん強力な歪虚も含まれているが、決して個々の戦力がとりわけ大きいわけではない。だが、ともかく数が多かった。襲撃の数は一向に収まる気配もなく、ハンター達は、そして職員たちはその処理に日々追われていた。
「こちらはすぐに掲出してください。こちらは対処していただくハンター達が揃いましたので下げてください」
そんな中、受付嬢のモア・プリマクラッセは職員たちに素早く指示を飛ばしていた。彼女は極彩色の街、ヴァリオスで優秀な商人としても働いている。その事務能力がこの忙しさの中、存分に力を発揮していた。
●
「え? 街中に現れた? ……わかりました。場所を教えてください」
普段はまず感情表現を見せることのない絵に描いたような鉄面皮のモアだが、さすがに声に焦りと驚きの色が見える。
「……わかりました。場所はリゼリオの端の方で……」
モアは情報を聞きながら手配書に素早くペンを走らせていく。必要な情報をあっという間に書き終えると、それを自らの手で張り出した。
「急いでください。恐らく敵戦力的に数は多くとも駆け出しのハンターの皆さんでも十分対処できる範囲ですが、事態は一刻を争います」
リプレイ本文
●
「無駄にうじゃうじゃいるわね……気持ち悪い」
愛馬の鞍上で舞鶴・鈴香(ka6703)は瞳に映る景色にそう漏らした。生理的嫌悪感をもたらす奇怪な形状の歪虚達がうごめいている。見た瞬間に何匹居るのか数えるのを諦めたくなるような量だ。
「絡みつかれる前にさっさと片づけたいわ」
鈴香は存分に近づいたところで馬から飛び降りる。着地と同時に愛馬は避難していく。彼女はその様子に眼をやるわけでもなく、歪虚に向かい合い刀を抜いた。
「うわーもうなんなのよー!? リゼリオはハンターズソサエティの本拠地がある街! いわばハンターの本拠地! 色々すっ飛ばして本拠地に攻め込んでこないでよー! いや別にハンターの本拠地に攻め込むつもりがあったわけじゃないんだろうけどさああああ!!」
一方対象的にテンション高く叫んでいたのはトゥーナ・リアーヌ(ka6426)だった。といってもテンション高く居たい訳でも無かったが、嫌になる光景にこんなテンションでなければやってられない。
「転移門を抜けるまでもなく現場でした。こういうこともあるんですね」
そんな彼女の側でシグ(ka6949)は落ち着いた感じでそう言った。
「えらい大変なことになってはりますなあ。うちも手伝わせて貰いましょか」
シグの言葉に花瑠璃(ka6989)も穏やかな京ことばでそう返す。それに対し、シグも特にテンションを上げるわけではなく、しかししっかりと決意を固めていた。
「おさないかけないしゃべらない。避難誘導頑張りましょう」
そんな二人の様子を見て、トゥーナは諦めた。いや、元より分かっていた。覚醒者の力があるのなら戦わなければならない。さもなければ待っているのは住み慣れた街の崩壊だ。
「……まあ、私はまだ戦う力があるだけマシなんだよね。よし、頑張る……頑張りたくないけど頑張る……」
そして彼女はそう決意した。
●
「安心せよッ! 我らが来た!!」
馬を降りた鈴香が駆け込んで来たところにグレンデル・フォトンヘッド(ka6894)が居た。彼は少ないながらもまだ逃げ遅れていた人々に彼はこう叫んだ。頭部に電球の様な被り物をした彼の表情はわからない。わからないが、その薄ら光る頭部が周囲をほんのりと照らし、得も言われる安心感を与えていた。ともすればパニックを起こしそうになっていた人々を安堵させる聖なる輝き。その輝きの傍らに鈴香が寄る。
鈴香が刀を握り直す。グレンデルが盾を構える。
「ふふ……狂気だなんて、奇遇ね」
そんな狂気との戦いに向かう二人を見やりながらンガイ・C・クロリングケイオス(ka7024)はそうつぶやいていた。
「救助に来た! すぐに退路を作る。退路が出来る迄先走らず待っていてくれ」
そしてその横で拡声器を通してウェグロディ(ka5723)が叫ぶ。鈴香とグレンデルが歪虚との戦いに専念する中、ンガイと彼は避難経路の確保を急ぐ。そういう算段だった。時は一刻を争う。叫びながら彼らは歪虚へと向かう。だが開戦の合図は別の場所から聞こえてきた。
●
「ナーガ、参上にございましてよッ!」
開戦の合図は澄んだベルの音と共に聞こえてきた。それは反対側からママチャリを走らせ突っ込んでくるナーガ(ka6952)だった。うようよとうごめく歪虚の群れにそのままスピードを落とさず突っ込む彼女。だが、突っ込む直前に彼女の手から符が一枚離れ、それはひらひらと舞うと輝く蝶の姿に変わりそのままぶつかっていた。
「ハンターが駆け付けたからには、もう安心ですわ! ヴォイドの好き勝手にはいたしませんことよ!?」
蝶が歪虚を貫く。音も無く歪虚は墜落し、崩れていく。
それを皮切りに他のハンター達も動き始めた。トゥーナは近未来的な印象を与える杖の先端を開き、マテリアルをシグに流しこむ。それを受けた彼はすかさず周りの建物を駆け上る。体を垂直に倒し、まるで壁に張り付くかのように走って屋根に上ると広場を見渡した。
ここからならハンター達の動きも、歪虚の動きも、そして助けを求める人々の姿も良く分かる。分かったことを通信機を通して仲間達に伝える。
「退路は北側と南側の2方向。繰り返す、北側と南側の2方向だ!」
その言葉を聞いたウェグロディが拡声器でこの広場全体にそれを広げる。一抹の光明に人々は安心したようだ。パニックを起こす寸前となって膨れ上がった不安な空気は、ほんの少しだが落ち着いた精神状態を表すかのような風で吹き払われる。ハンター達はそれに答えなければならない。ンガイがアサルトライフルのトリガーを引く。放たれた弾丸で気を引く。しかしそんな彼女の考えはすぐに改められることになった。正確無比に放たれた弾丸が歪虚の眼を打ち抜けば、一瞬で動きを止め、そのまま塵の様に崩れ去っていった。彼女の力ならば撃ち落した方が早い。それは慢心でも何でも無かった。
●
グレンデルが祈りを込めれば、彼の体が光り輝く。傍らを見れば鈴香の体も輝き始めていた。それはどこか温もりを感じる柔らかな光だった。
だが程なくして眼もくらむような強い光が一帯を覆う。その光源はグレンデル、もっと言えば彼の持つ盾だった。その大きさは相当な長身の彼だからこそ釣り合うもので、鈴香ならその盾の後ろにすっぽりと全身が覆われてしまいそうなものだった。
その命の輝きを歪虚は無視できない。歪虚達の群れは眼を次々とグレンデルの方向へ向けると光線を放った。
何発も放たれた光線は重なり、やがて大きな光の渦となってグレンデルの体を飲み込んでいく。
しかし光が晴れた時、そこには傷一つ無いグレンデルの姿があった。彼はその盾でもって全ての光線を弾き返していた。
そして彼が歪虚を引き付ければ次は鈴香の出番だ。敵の下へと擦り寄りながら、彼女はやおらその刀を一度鞘に納める。そのまま近づき終える。何もしない。いや、何もしなかったように見えた。
聞こえたのは鍔鳴りの音だけ。見えたのは刃がグレンデルの輝きに照らされ煌いたそのわずかな一瞬だけ。それが終わっていた時、歪虚は真っ二つに別れ転がっていた。
その一瞬の出来事にようやく歪虚が気付いたか、気付くほどの知性は無かったのか、歪虚は彼女の元へと集まっていく。しかしその時すでに彼女の姿はそこには無かった。まるで流れる水のごとく彼女は歩みを進める。それを歪虚が捕らえる事など敵わなかった。
「僕達は持てる力で狂気と戦う。だから君達も君達自身の不安と戦って欲しい! 混乱も不安も危険を招く! 互いに声掛けを行って、自分より弱い者を護りあって避難してくれ!」
ウェグロディは叫んでいた。グレンデルが引き付け鈴香が斬り払ったことで出来た穴に人々を誘導していく。歪虚から光線が浴びせかけられるが、彼はそれを両腕を十字に構えて受け止めると返す刀で拳をねじ込んだ。歪虚が潰れたのを確認するまもなく、彼は人々の誘導に戻っていた。
●
ナーガはもう一度蝶を放っていた。軌道に光を残し歪虚の群れの中へ吸い込まれていく。それが群れの密度を薄くしたとき、シグの声が聞こえてきた。
「全員注目ー!!!」
喉が張り裂けんばかりのその声に人々の視線が集まる。
「ここはリゼリオ、ハンターが一番多い街。ちゃんと守る、拾える命を捨てないように」
そこからは落ち着いて語りかけるシグ。
「おさない、かけない、しゃべらない。おかしの法則で慌てず騒がず落ち着いて」
「慌てている場合ではありませんことよッ!? ピーポーは助け合って避難して下さいまし!」
そこに、群れを突き破って人々の下へと飛び込んでいたナーガが続く。穴は開いた。人々は彼女に続く形で動き始めていた。
●
グレンデルは再び光線の嵐の中に飲み込まれていた。だがそこで起こったこともまた、先程の繰り返しだった。光線が晴れたとき、そこには傷一つ無いグレンデルの姿。不破の盾たる彼にとって、この程度の光線などいくら文字通り束になって向かってきたところで敵ではなかった。だが歪虚にはそのことを理解する知性も無い。哀れなほどに同じことを繰り返していく。
そしてグレンデルが引き付けた歪虚に鈴香が足を滑らせ近づく。刃の届く間合いに入れば鞘から引き抜き一振り。しかし狂気の歪虚の取る行動は人の予想の及ぶ範囲では無かった。突如急旋回する歪虚。必殺の一刀はかわされ空を切る。
「!! ……くっ……」
そして鈴香が刀を鞘に納めた瞬間、光線が襲ってきていた。鞘の中で練られたマテリアルは一振りで歪虚を斬り捨てる。ぎりぎりの瞬間まで姿を見せない切っ先は敵にかわされることを妨げる。だが、それは同時に彼女の守りを薄め、生身を敵前にさらすと言うことでもあった。
光線が掠めた腕に血が滲む。だが次こそは外さない。今己に傷をつけた歪虚の下へ擦り寄ると再び一振り。今度の一撃は確かに歪虚を捉えていた。斬り裂かれた歪虚は間もなく崩れていき、風に吹かれて消えていった。
避難する人々の下に上空から歪虚が近づいていく。その眼を人々の元へ向ける。だが、歪虚が次に見たのはウェグロディの裂帛の気合が形となって現れ己の体を弾き飛ばす姿だった。
その一撃で人々から歪虚を遠ざけた次の瞬間、銃声が鳴った。ンガイにとっては、弾丸をよく狙って一発放つだけで良かった。残響が消えた頃には歪虚は姿を消していた。
●
杖の先端が開き、輝く。青白い光が仄かに上がり、そして光の三角形がその前に現れる。三つの頂点から光線が放たれるとそれぞれが歪虚達へと向かっていく。
端的に言ってトゥーナは苦戦していた。一度に三発の光線を放ち手数で勝負する彼女だったが、大きくは無い体、人の予想の範疇を超える動き、それに光線を直撃させるのは至難の技だった。彼女が放った光線は何度も何度も空しく逸れていった。歪虚から浴びせられる光線も何とかかわし、受け止めてはいたが、戦況は膠着していた。
トゥーナはもう一度放つ。だがそれがやはり歪虚を捕らえられなかったとき、突如として腕が焼けるように熱い感覚。光線の一発が彼女の腕を貫いていた。
痛みに顔をしかめながら、彼女はあきらめずもう一度光線を放つ。今度こそその一発は歪虚を捉え、地面へと墜落させていた。
「鬼さんこちら、手のなる方へ……」
エンジンが回る爆音が轟く。花瑠璃はスロットルを思い切り捻り、バイクを響かせながら走っていた。狂気に支配された歪虚に聴覚があるかどうかはわからない。ただ、派手に動き回る彼女を歪虚の一部は対象として認識したようだ。それにふわふわと浮かびながら追いかけていく。
そうやって引き寄せ、薄くなったところにシグが飛び込んできた。仲間達の協力で歪虚は少しずつ数を減らしてきた。今もナーガが作った穴を避難経路に人々を誘導している。彼はその穴を保つのが仕事だ。刀を振り下ろせば歪虚はすっぱりと斬り払われていた。
だが、そんな彼の胸元に衝撃。予想外の方向から飛んできた光線が突き刺さっていた。コアパーツ近くを抉る一撃。痛撃を受けたことを自覚するシグ。
そこに容赦なく光線は浴びせかけられる。シグは何とか受け止めようと構えを取る。
「手は出させませんわっ!」
その時だった。突如光り輝く鳥が飛んできて光線を受け止め、そのまま掻き消える。
それを放ったのはナーガだった。後には燃え尽きた符が残っている。彼女のもう一枚の切り札により、シグはそれ以上の傷を受けることなく戦い続けることが出来たのだった。
●
「ンガイ殿、負傷者の護送を行う。少し場を離れるけれど、無茶はしないで……」
ウェグロディは避難者の内怪我無く体力も有りそうな者達に協力を仰ぎ、共に退路を進む。殿は彼自身が務める。その言葉を聞いたンガイが一つ頷いたところで動き始める。
「当然! 我が輝きは不滅であるッ!!」
その頃、グレンデルはまたしても光線をその体に浴び続けていた。そしてまたしても、傷一つ無く全てを跳ね除けていた。大声で高笑いを上げ、輝く盾を掲げる。歪虚は再度殺到する。その時彼が少しずつ移動していたことを歪虚は知る由も無かった。結果、彼に釣られ動くことで知らず知らずのうちに人々から歪虚は遠ざけられていた。
その隙を付く形でウェグロディは護送を行っていた。だがそこにふらふらと飛んでくる歪虚が一体。そして放たれる光線。
ウェグロディは迷わず飛び出す。光線の前に身を晒す。彼の体は貫かれ血が飛び散る。
銃声が鳴った。彼に光線を浴びせていた歪虚はンガイの弾丸の前に散っていた。
ウェグロディも痛みを堪える。軸足に力を込め利き足を振り上げる。宙を舞い一回転して着地したときには、歪虚が蹴り飛ばされ四散していた。
そして鈴香はグレンデルと適切な距離を保ちつつ、歪虚達を次々と斬り捨てていった。一度刃が煌けば、そこには斬り捨てられた歪虚が出来ていた。
●
花瑠璃は巧みに片手でバイクをコントロールしつつもう片方の手に符を持っていた。投げつければそれは火球と化し歪虚を焼き尽くしていく。
「後ろから来るよ!」
その時トランシーバー越しにトゥーナが声をかけた。その瞬間彼女を居る所を光線が駆け抜ける。一発が腹部を貫き血が滲む。
花瑠璃が振り向いた時、そこには数体の歪虚が居た。光線が束になって彼女に襲いかかる。
迫る光線。だがそれが彼女を貫く直前輝く鳥が飛んできた。
ナーガの切り札が彼女の身を守る。その隙を彼女は逃さない。
急旋回し体勢を立て直すと彼女の手には符が三枚握られていた。それを歪虚の群れへと目掛けて投げ込む。
空中を舞い三角形の頂点に飛んでいった符。次の刹那、轟く雷鳴とともに稲妻が一帯を覆い尽くした。それが晴れた時、そこに居た歪虚達はみな消え去っていた。
シグは高所に上がり一帯を見回していた。目を凝らす。しかし歪虚は見当たらない。彼は仲間達に何人倒したかを確認し計算していった。その答えは全ての歪虚を倒したことを意味していた。脅威は終わったのだった。
●
「輝く私の到着である。安心なされよ」
戦い終えたハンター達は、負傷者を探し周囲を探索する。グレンデルの輝く盾は屋内を照らし、怯えて隠れていた人々を見つけ出し安心させていった。
ウェグロディは負傷者達を救助し、手当てを施していった。被害は最小限に抑えられていた。今は先程までの光景が嘘のように静かになっている。それを見て彼は自分達の成し遂げたことを改めて確認し、噛み締めていた。
「無駄にうじゃうじゃいるわね……気持ち悪い」
愛馬の鞍上で舞鶴・鈴香(ka6703)は瞳に映る景色にそう漏らした。生理的嫌悪感をもたらす奇怪な形状の歪虚達がうごめいている。見た瞬間に何匹居るのか数えるのを諦めたくなるような量だ。
「絡みつかれる前にさっさと片づけたいわ」
鈴香は存分に近づいたところで馬から飛び降りる。着地と同時に愛馬は避難していく。彼女はその様子に眼をやるわけでもなく、歪虚に向かい合い刀を抜いた。
「うわーもうなんなのよー!? リゼリオはハンターズソサエティの本拠地がある街! いわばハンターの本拠地! 色々すっ飛ばして本拠地に攻め込んでこないでよー! いや別にハンターの本拠地に攻め込むつもりがあったわけじゃないんだろうけどさああああ!!」
一方対象的にテンション高く叫んでいたのはトゥーナ・リアーヌ(ka6426)だった。といってもテンション高く居たい訳でも無かったが、嫌になる光景にこんなテンションでなければやってられない。
「転移門を抜けるまでもなく現場でした。こういうこともあるんですね」
そんな彼女の側でシグ(ka6949)は落ち着いた感じでそう言った。
「えらい大変なことになってはりますなあ。うちも手伝わせて貰いましょか」
シグの言葉に花瑠璃(ka6989)も穏やかな京ことばでそう返す。それに対し、シグも特にテンションを上げるわけではなく、しかししっかりと決意を固めていた。
「おさないかけないしゃべらない。避難誘導頑張りましょう」
そんな二人の様子を見て、トゥーナは諦めた。いや、元より分かっていた。覚醒者の力があるのなら戦わなければならない。さもなければ待っているのは住み慣れた街の崩壊だ。
「……まあ、私はまだ戦う力があるだけマシなんだよね。よし、頑張る……頑張りたくないけど頑張る……」
そして彼女はそう決意した。
●
「安心せよッ! 我らが来た!!」
馬を降りた鈴香が駆け込んで来たところにグレンデル・フォトンヘッド(ka6894)が居た。彼は少ないながらもまだ逃げ遅れていた人々に彼はこう叫んだ。頭部に電球の様な被り物をした彼の表情はわからない。わからないが、その薄ら光る頭部が周囲をほんのりと照らし、得も言われる安心感を与えていた。ともすればパニックを起こしそうになっていた人々を安堵させる聖なる輝き。その輝きの傍らに鈴香が寄る。
鈴香が刀を握り直す。グレンデルが盾を構える。
「ふふ……狂気だなんて、奇遇ね」
そんな狂気との戦いに向かう二人を見やりながらンガイ・C・クロリングケイオス(ka7024)はそうつぶやいていた。
「救助に来た! すぐに退路を作る。退路が出来る迄先走らず待っていてくれ」
そしてその横で拡声器を通してウェグロディ(ka5723)が叫ぶ。鈴香とグレンデルが歪虚との戦いに専念する中、ンガイと彼は避難経路の確保を急ぐ。そういう算段だった。時は一刻を争う。叫びながら彼らは歪虚へと向かう。だが開戦の合図は別の場所から聞こえてきた。
●
「ナーガ、参上にございましてよッ!」
開戦の合図は澄んだベルの音と共に聞こえてきた。それは反対側からママチャリを走らせ突っ込んでくるナーガ(ka6952)だった。うようよとうごめく歪虚の群れにそのままスピードを落とさず突っ込む彼女。だが、突っ込む直前に彼女の手から符が一枚離れ、それはひらひらと舞うと輝く蝶の姿に変わりそのままぶつかっていた。
「ハンターが駆け付けたからには、もう安心ですわ! ヴォイドの好き勝手にはいたしませんことよ!?」
蝶が歪虚を貫く。音も無く歪虚は墜落し、崩れていく。
それを皮切りに他のハンター達も動き始めた。トゥーナは近未来的な印象を与える杖の先端を開き、マテリアルをシグに流しこむ。それを受けた彼はすかさず周りの建物を駆け上る。体を垂直に倒し、まるで壁に張り付くかのように走って屋根に上ると広場を見渡した。
ここからならハンター達の動きも、歪虚の動きも、そして助けを求める人々の姿も良く分かる。分かったことを通信機を通して仲間達に伝える。
「退路は北側と南側の2方向。繰り返す、北側と南側の2方向だ!」
その言葉を聞いたウェグロディが拡声器でこの広場全体にそれを広げる。一抹の光明に人々は安心したようだ。パニックを起こす寸前となって膨れ上がった不安な空気は、ほんの少しだが落ち着いた精神状態を表すかのような風で吹き払われる。ハンター達はそれに答えなければならない。ンガイがアサルトライフルのトリガーを引く。放たれた弾丸で気を引く。しかしそんな彼女の考えはすぐに改められることになった。正確無比に放たれた弾丸が歪虚の眼を打ち抜けば、一瞬で動きを止め、そのまま塵の様に崩れ去っていった。彼女の力ならば撃ち落した方が早い。それは慢心でも何でも無かった。
●
グレンデルが祈りを込めれば、彼の体が光り輝く。傍らを見れば鈴香の体も輝き始めていた。それはどこか温もりを感じる柔らかな光だった。
だが程なくして眼もくらむような強い光が一帯を覆う。その光源はグレンデル、もっと言えば彼の持つ盾だった。その大きさは相当な長身の彼だからこそ釣り合うもので、鈴香ならその盾の後ろにすっぽりと全身が覆われてしまいそうなものだった。
その命の輝きを歪虚は無視できない。歪虚達の群れは眼を次々とグレンデルの方向へ向けると光線を放った。
何発も放たれた光線は重なり、やがて大きな光の渦となってグレンデルの体を飲み込んでいく。
しかし光が晴れた時、そこには傷一つ無いグレンデルの姿があった。彼はその盾でもって全ての光線を弾き返していた。
そして彼が歪虚を引き付ければ次は鈴香の出番だ。敵の下へと擦り寄りながら、彼女はやおらその刀を一度鞘に納める。そのまま近づき終える。何もしない。いや、何もしなかったように見えた。
聞こえたのは鍔鳴りの音だけ。見えたのは刃がグレンデルの輝きに照らされ煌いたそのわずかな一瞬だけ。それが終わっていた時、歪虚は真っ二つに別れ転がっていた。
その一瞬の出来事にようやく歪虚が気付いたか、気付くほどの知性は無かったのか、歪虚は彼女の元へと集まっていく。しかしその時すでに彼女の姿はそこには無かった。まるで流れる水のごとく彼女は歩みを進める。それを歪虚が捕らえる事など敵わなかった。
「僕達は持てる力で狂気と戦う。だから君達も君達自身の不安と戦って欲しい! 混乱も不安も危険を招く! 互いに声掛けを行って、自分より弱い者を護りあって避難してくれ!」
ウェグロディは叫んでいた。グレンデルが引き付け鈴香が斬り払ったことで出来た穴に人々を誘導していく。歪虚から光線が浴びせかけられるが、彼はそれを両腕を十字に構えて受け止めると返す刀で拳をねじ込んだ。歪虚が潰れたのを確認するまもなく、彼は人々の誘導に戻っていた。
●
ナーガはもう一度蝶を放っていた。軌道に光を残し歪虚の群れの中へ吸い込まれていく。それが群れの密度を薄くしたとき、シグの声が聞こえてきた。
「全員注目ー!!!」
喉が張り裂けんばかりのその声に人々の視線が集まる。
「ここはリゼリオ、ハンターが一番多い街。ちゃんと守る、拾える命を捨てないように」
そこからは落ち着いて語りかけるシグ。
「おさない、かけない、しゃべらない。おかしの法則で慌てず騒がず落ち着いて」
「慌てている場合ではありませんことよッ!? ピーポーは助け合って避難して下さいまし!」
そこに、群れを突き破って人々の下へと飛び込んでいたナーガが続く。穴は開いた。人々は彼女に続く形で動き始めていた。
●
グレンデルは再び光線の嵐の中に飲み込まれていた。だがそこで起こったこともまた、先程の繰り返しだった。光線が晴れたとき、そこには傷一つ無いグレンデルの姿。不破の盾たる彼にとって、この程度の光線などいくら文字通り束になって向かってきたところで敵ではなかった。だが歪虚にはそのことを理解する知性も無い。哀れなほどに同じことを繰り返していく。
そしてグレンデルが引き付けた歪虚に鈴香が足を滑らせ近づく。刃の届く間合いに入れば鞘から引き抜き一振り。しかし狂気の歪虚の取る行動は人の予想の及ぶ範囲では無かった。突如急旋回する歪虚。必殺の一刀はかわされ空を切る。
「!! ……くっ……」
そして鈴香が刀を鞘に納めた瞬間、光線が襲ってきていた。鞘の中で練られたマテリアルは一振りで歪虚を斬り捨てる。ぎりぎりの瞬間まで姿を見せない切っ先は敵にかわされることを妨げる。だが、それは同時に彼女の守りを薄め、生身を敵前にさらすと言うことでもあった。
光線が掠めた腕に血が滲む。だが次こそは外さない。今己に傷をつけた歪虚の下へ擦り寄ると再び一振り。今度の一撃は確かに歪虚を捉えていた。斬り裂かれた歪虚は間もなく崩れていき、風に吹かれて消えていった。
避難する人々の下に上空から歪虚が近づいていく。その眼を人々の元へ向ける。だが、歪虚が次に見たのはウェグロディの裂帛の気合が形となって現れ己の体を弾き飛ばす姿だった。
その一撃で人々から歪虚を遠ざけた次の瞬間、銃声が鳴った。ンガイにとっては、弾丸をよく狙って一発放つだけで良かった。残響が消えた頃には歪虚は姿を消していた。
●
杖の先端が開き、輝く。青白い光が仄かに上がり、そして光の三角形がその前に現れる。三つの頂点から光線が放たれるとそれぞれが歪虚達へと向かっていく。
端的に言ってトゥーナは苦戦していた。一度に三発の光線を放ち手数で勝負する彼女だったが、大きくは無い体、人の予想の範疇を超える動き、それに光線を直撃させるのは至難の技だった。彼女が放った光線は何度も何度も空しく逸れていった。歪虚から浴びせられる光線も何とかかわし、受け止めてはいたが、戦況は膠着していた。
トゥーナはもう一度放つ。だがそれがやはり歪虚を捕らえられなかったとき、突如として腕が焼けるように熱い感覚。光線の一発が彼女の腕を貫いていた。
痛みに顔をしかめながら、彼女はあきらめずもう一度光線を放つ。今度こそその一発は歪虚を捉え、地面へと墜落させていた。
「鬼さんこちら、手のなる方へ……」
エンジンが回る爆音が轟く。花瑠璃はスロットルを思い切り捻り、バイクを響かせながら走っていた。狂気に支配された歪虚に聴覚があるかどうかはわからない。ただ、派手に動き回る彼女を歪虚の一部は対象として認識したようだ。それにふわふわと浮かびながら追いかけていく。
そうやって引き寄せ、薄くなったところにシグが飛び込んできた。仲間達の協力で歪虚は少しずつ数を減らしてきた。今もナーガが作った穴を避難経路に人々を誘導している。彼はその穴を保つのが仕事だ。刀を振り下ろせば歪虚はすっぱりと斬り払われていた。
だが、そんな彼の胸元に衝撃。予想外の方向から飛んできた光線が突き刺さっていた。コアパーツ近くを抉る一撃。痛撃を受けたことを自覚するシグ。
そこに容赦なく光線は浴びせかけられる。シグは何とか受け止めようと構えを取る。
「手は出させませんわっ!」
その時だった。突如光り輝く鳥が飛んできて光線を受け止め、そのまま掻き消える。
それを放ったのはナーガだった。後には燃え尽きた符が残っている。彼女のもう一枚の切り札により、シグはそれ以上の傷を受けることなく戦い続けることが出来たのだった。
●
「ンガイ殿、負傷者の護送を行う。少し場を離れるけれど、無茶はしないで……」
ウェグロディは避難者の内怪我無く体力も有りそうな者達に協力を仰ぎ、共に退路を進む。殿は彼自身が務める。その言葉を聞いたンガイが一つ頷いたところで動き始める。
「当然! 我が輝きは不滅であるッ!!」
その頃、グレンデルはまたしても光線をその体に浴び続けていた。そしてまたしても、傷一つ無く全てを跳ね除けていた。大声で高笑いを上げ、輝く盾を掲げる。歪虚は再度殺到する。その時彼が少しずつ移動していたことを歪虚は知る由も無かった。結果、彼に釣られ動くことで知らず知らずのうちに人々から歪虚は遠ざけられていた。
その隙を付く形でウェグロディは護送を行っていた。だがそこにふらふらと飛んでくる歪虚が一体。そして放たれる光線。
ウェグロディは迷わず飛び出す。光線の前に身を晒す。彼の体は貫かれ血が飛び散る。
銃声が鳴った。彼に光線を浴びせていた歪虚はンガイの弾丸の前に散っていた。
ウェグロディも痛みを堪える。軸足に力を込め利き足を振り上げる。宙を舞い一回転して着地したときには、歪虚が蹴り飛ばされ四散していた。
そして鈴香はグレンデルと適切な距離を保ちつつ、歪虚達を次々と斬り捨てていった。一度刃が煌けば、そこには斬り捨てられた歪虚が出来ていた。
●
花瑠璃は巧みに片手でバイクをコントロールしつつもう片方の手に符を持っていた。投げつければそれは火球と化し歪虚を焼き尽くしていく。
「後ろから来るよ!」
その時トランシーバー越しにトゥーナが声をかけた。その瞬間彼女を居る所を光線が駆け抜ける。一発が腹部を貫き血が滲む。
花瑠璃が振り向いた時、そこには数体の歪虚が居た。光線が束になって彼女に襲いかかる。
迫る光線。だがそれが彼女を貫く直前輝く鳥が飛んできた。
ナーガの切り札が彼女の身を守る。その隙を彼女は逃さない。
急旋回し体勢を立て直すと彼女の手には符が三枚握られていた。それを歪虚の群れへと目掛けて投げ込む。
空中を舞い三角形の頂点に飛んでいった符。次の刹那、轟く雷鳴とともに稲妻が一帯を覆い尽くした。それが晴れた時、そこに居た歪虚達はみな消え去っていた。
シグは高所に上がり一帯を見回していた。目を凝らす。しかし歪虚は見当たらない。彼は仲間達に何人倒したかを確認し計算していった。その答えは全ての歪虚を倒したことを意味していた。脅威は終わったのだった。
●
「輝く私の到着である。安心なされよ」
戦い終えたハンター達は、負傷者を探し周囲を探索する。グレンデルの輝く盾は屋内を照らし、怯えて隠れていた人々を見つけ出し安心させていった。
ウェグロディは負傷者達を救助し、手当てを施していった。被害は最小限に抑えられていた。今は先程までの光景が嘘のように静かになっている。それを見て彼は自分達の成し遂げたことを改めて確認し、噛み締めていた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 トゥーナ・リアーヌ(ka6426) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/10/13 01:23:09 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/10/09 19:03:13 |
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質問卓 ウェグロディ(ka5723) 鬼|18才|男性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2017/10/11 20:45:58 |