ゲスト
(ka0000)
【HW】クロウのくず鉄戦争:ToJ編
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/03 22:00
- 完成日
- 2017/11/12 02:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「ん? すまん、もう一回言ってくれないか?」
ハロウィンという祭りがある。子細は分からないが仮装をした子供が「トリックオアトリート!」と言ってくる。お菓子かイタズラかというやつだ。で、お菓子をやると子供は喜び去っていく。
そういうわけで、我らがクロウもお菓子を用意していた。ちなみに、このお菓子は突然変異でできたものだ。元の素材は子供たちの精神安定上の問題から秘密である。
さて、工房にやってきた仮装する子供のためにこうして菓子を持って出てきたクロウだったが、言われた言葉が思っていたものと違った。
「トリック、オア、ジャンク!」
「……あぁ、聞き間違いじゃないのか」
お菓子かイタズラか……ではなく、ジャンク。つまり、くず鉄かイタズラかということだ。
(ん~、俺の下調べが甘かったのか? 最近はお菓子よりくず鉄の方が喜ばれるなんて……)
「ねぇねぇ! トリックオアジャンク! どっちにするの?」
「いや、さすがにくず鉄の取り置きなんてここには……え?」
困った表情でそう告げたクロウ。その瞬間、場の空気が変わった。
「じゃ、イタズラだね」
「え、ちょ、何を……ちょっと待て! や、やめろー!」
●
あなたはクロウの悲鳴を聞いた。なぜここにいたのかは分からない。強化の依頼をしたのか、それともたまたま通りかかったのか……まぁ理由はどうでもいい。
重要なのは、かぼちゃの被り物をかぶった子供たちが、練成工房を破壊しているということだ。
それだけではない。工房にある備品やらなにやらが、叩かれ曲げられ……くず鉄にされているようだ。
同時に、あなたは見ただろう。数人の子供に縛り上げられ、練成工房の奥に連れていかれる哀れなクロウを。
猿轡をかまされ助けを求めるように身をよじるクロウ。辺りではみるみるうちにくず鉄が生成されている。これも自業自得という奴だろうか。
その様子を見て、あなたはどうするだろう。クロウを助けるか、見殺しにするか、見殺しにするか……
あるいは、預けられている強化依頼された品を守るために動くのか……それとも、あなた自身がクロウを連れていく子供の一人なのか。
ともあれ、この事態をどうにか収拾するべきかもしれない。
クロウはともかくとして、近所迷惑に変わりはないのだから。
「ん? すまん、もう一回言ってくれないか?」
ハロウィンという祭りがある。子細は分からないが仮装をした子供が「トリックオアトリート!」と言ってくる。お菓子かイタズラかというやつだ。で、お菓子をやると子供は喜び去っていく。
そういうわけで、我らがクロウもお菓子を用意していた。ちなみに、このお菓子は突然変異でできたものだ。元の素材は子供たちの精神安定上の問題から秘密である。
さて、工房にやってきた仮装する子供のためにこうして菓子を持って出てきたクロウだったが、言われた言葉が思っていたものと違った。
「トリック、オア、ジャンク!」
「……あぁ、聞き間違いじゃないのか」
お菓子かイタズラか……ではなく、ジャンク。つまり、くず鉄かイタズラかということだ。
(ん~、俺の下調べが甘かったのか? 最近はお菓子よりくず鉄の方が喜ばれるなんて……)
「ねぇねぇ! トリックオアジャンク! どっちにするの?」
「いや、さすがにくず鉄の取り置きなんてここには……え?」
困った表情でそう告げたクロウ。その瞬間、場の空気が変わった。
「じゃ、イタズラだね」
「え、ちょ、何を……ちょっと待て! や、やめろー!」
●
あなたはクロウの悲鳴を聞いた。なぜここにいたのかは分からない。強化の依頼をしたのか、それともたまたま通りかかったのか……まぁ理由はどうでもいい。
重要なのは、かぼちゃの被り物をかぶった子供たちが、練成工房を破壊しているということだ。
それだけではない。工房にある備品やらなにやらが、叩かれ曲げられ……くず鉄にされているようだ。
同時に、あなたは見ただろう。数人の子供に縛り上げられ、練成工房の奥に連れていかれる哀れなクロウを。
猿轡をかまされ助けを求めるように身をよじるクロウ。辺りではみるみるうちにくず鉄が生成されている。これも自業自得という奴だろうか。
その様子を見て、あなたはどうするだろう。クロウを助けるか、見殺しにするか、見殺しにするか……
あるいは、預けられている強化依頼された品を守るために動くのか……それとも、あなた自身がクロウを連れていく子供の一人なのか。
ともあれ、この事態をどうにか収拾するべきかもしれない。
クロウはともかくとして、近所迷惑に変わりはないのだから。
リプレイ本文
●
「日頃の行いって……ありますよね。ああやって、いつもいつもくず鉄を作って……余計な恨みを買っているからこうなる……わけですよ」
それは天央 観智(ka0896)の心の声だったのか。実際に発していたとしても、距離を考えると、クロウに届くかは微妙だ。だが、その時は確かに、観智の言葉はクロウまで届いていた。
「まぁ、クロウさんも工房やら備品やらがくず鉄にされて、ちょっと……他人の気持ちも理解すれば……良いんじゃ、ないですかね?」
あぁ、優しい科学者気質とやらはどこに行ってしまったのだろう。その目はさながら、これから食肉加工される羊を見るかのようだ。
この目つきによって、クロウは自分が見捨てられたことを知った。
「……そういえば、ハロウィンでしたか」
クロウを連れていく子供……一見子供のようだが、どうも人ではなさそうだ。
「精霊さん……でしょうか」
さて、それを見て自分はどう動くか……どうせ暇だったので様子を見に来ていただけの事。預けていたアイテムもないし、放っておいても大過ないが……
「まぁ誰かのアイテムがくず鉄になるのは可哀想か……」
結局、観智も首を突っ込むことに。どちらにせよクロウの方は見捨てる方向だが。
当のクロウは悲嘆にくれたものの、すぐに気を持ち直す。それは……すぐ横に知り合いの……ディーナ・フェルミ(ka5843)の姿があったからだ。
(ディーナなら……ディーナならなんとかしてくれる!)
猿轡のせいでしゃべれないクロウはもごもごと口を動かしてディーナに合図を送る。それを見たディーナは、両手をぎゅっと握りしめて頷いた。
「大丈夫、分かっているの」
決意を秘めたその表情からは歴戦のつわものの風格を漂わせていた。
(それにしても、今まさにドナドナされてますって目だったの。クロウさん芸達者なの)
だが残念! クロウの願いは一ミリも伝わっていなかった。
ディーナは今日がハロウィンであることから、これは一つの劇場、お芝居であると考えたのだ。主役はクロウと子供たちだ。
不意に、服を引っ張られるディーナ。足元には子供。
「トリックオアジャンク!」
例の言葉を言われたディーナは、しかし取り乱すことなく、そばに落ちたくず鉄を拾い子供に渡す。子供は満足して消えていった。
「今日はくず鉄の子供たちにとっての聖夜なの……」
(……? 何を言っているんだこいつは?)
クロウはそう呟いたディーナを見て目を見開いた。
「クロウさんが貯め込んだくず鉄魂を子供たちがみんなきれいに浄化してくれているの、尊いことなの……こんな幸せに巡り合えるなんて今日は何ていい日なの」
胸元に手を当て、目を潤ませるディーナ。もはやその思考は別の次元に旅立ってしまったようだ。
(戻って来い! 今日はハロウィンだ! 聖夜は12月だ! まだちょっと早いだろ! 早いはずだ!!)
という願いを込めてうめく。猿轡さえなければこの思いもきっと伝わったはずだった。
「分かっているの、クロウさん……罵倒したいのを無理やり抑えるという迫真の演技をするためにあえて……」
結局、3分の1も伝わらないままうっとりとしたディーナを置いてクロウは連れていかれてしまった。
●
かぼちゃの被りものをかぶった子供たちの先頭に立つ夢路 まよい(ka1328)。
「トリック!」
立ちふさがる扉があれば杖を一振りでくず鉄に。
「オア!」
転がる謎の物質があれば、やっぱり杖を一振りでくず鉄に。
「ジャンクゥッ!!」
誰かが強化を頼んだであろうアイテムを見ると、思った通り杖を一振り(物理)でくず鉄へと変えていく。
「わはははは、俺が! 俺たちがくず鉄だ~~~!!」
ルベーノ・バルバライン(ka6752)もそれに続くようにくず鉄を作り出していく。
「世界をくず鉄で満たしてやろう! ジークくず鉄! ハイルくず鉄!」
そう言いながら、主に強化に使いそうな品を優先的に狙っていくあたり見た目に意外と策士な面もありそうだ。
「大失敗するならくず鉄化! 直せる大失敗なぞいらぬ! 大成功・成功・失敗・くず鉄化! もっと世界をくず鉄で満たすのだ!」
「ちょっとちょっと、危ないわよ?」
あまりにやる気過ぎてまよいにまで工具をぶつけそうになってしまい、報復のアイスボルトを食らうルベーノ。
「……きゅう」
魔法一つでダウンされてしまったルベーノ。
だが、数秒後にはガバっと立ち上がる。
「ハッハァ!! こんなところで我が波動を潰えさせてなるものか~~!」
見た目はあんまり子供っぽくないが、この元気が有り余っている感じはある意味それっぽいかもしれない。
そんな折……クロウが連行されてきた。
「あ、来たわね本命が……」
被り物で表情は見えないものの、分かってしまう。まよいが新しいおもちゃでも見つけたかのような笑みを浮かべていることが。
そして、その横ではルベーノがゴキゴキと指を鳴らしていた。
●
「トリックオアトリートー……といったものの、何やらお菓子を頂ける状況じゃないご様子でー」
観智やディーナに遅れてこの場にやってきたのは小宮・千秋(ka6272)だ。
くず鉄をリサイクルして別の武具を作り出す研究をしているそうだが、どうもこの場のくず鉄の匂いを嗅ぎつけてここまで来てしまったらしい。
「なんだこれは……」
続いてやってきたのはクロウに預けていた魔導バイクを取りに来たグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)だった。
「これは、なんだ? ひょっとして、歪虚の仕業なのか?」
「……いやー、あれの仕業みたいですよー」
そういって指さす千秋。見ると、壁を子供が殴る姿が。そして、その壁の一部がくず鉄になる場面がはっきりと見えた。
「……工具で殴ったものがくず鉄に変わった?」
「そうみたいですねー。いやー、まるで夢みたいですねー」
そう呟きながら、くず鉄を回収していく千秋。元々クロウの工房にある武器や防具等が変えられてしまったものなので、先に挙げたようにリサイクルできるか試すのだろうか。ただ、何にせよクロウと出会うのが先という考えではありそうだ。
「この状況だとクロウさんもどうにかなってしまっていそうなのでー」
「そうだ! この状況じゃ俺のバイクがどうなってるか分かんねぇ! 待ってろバイク!!」
「……先にクロウさんをー」
「大丈夫大丈夫。クロウさんなら多分くず鉄からでもよみがえってこれるさ!」
サムズアップしつつ駆けていくグリムバルド。
その様子を見ながらため息をつき、千秋も動き出した。
●
「クロウさん、今日もアイテム強化……あら?」
ミオレスカ(ka3496)がやってきたときには、周囲にはくず鉄とそれを作る子供たちの姿ばかりだった。
「トリックオアジャンク!」
「はい? ……なるほど、くず鉄を求められているのですね」
すかさずミオレスカはそのあたりに転がっていたくず鉄を差し出す。すると喜んだ子供はそのまま消えていった。
「精霊さん……なのでしょうかね」
これらお子様の正体は、正直どうでもよかった。重要なのは、クロウがピンチに陥っていると思われるこの状況だ。
「……あとで強化、お願いしないといけませんね」
これがチャンスとミオレスカも工房に突入する。
(お代はエア・スティーラーのレベル上限開放、無限強化あたりで手を打つとしましょう)
ミオレスカは割と世界観に順応していたようだが、マリィア・バルデス(ka5848)はそうはいかなかった。
「……」
そこら中に散らばるくず鉄と、子供。そしてくず鉄をもらうと消えるというこの状況。
「そうか、クロウが錬成工房の掃除をきちんとしていなかったから、彼の子供たちがお手伝いに来た……そういうことね」
そして、マリィアはいとも簡単に思考を放棄した。
「あらあれ、こんな簡単にくず鉄かできるなんて、みんあの錬成の腕はきっとクロウより上なのね」
そんなことを呟きながら、子供が散らかしたおもちゃを片付ける母親のような雰囲気を醸しつつくず鉄を拾い集めていく。
「さぁ、あなたたちこちらにおいで?」
まさか向こうから話しかけられると思っていなかった子供たちは若干びっくりしつつも、律儀にマリィアの方に寄ってきた。
「偉いわね、工房のお掃除を手伝うなんて……ほら、くず鉄と……それにこの飴玉も持っていきなさい」
渡された子供たちは、なんか釈然としないといった態度をしつつ、そのまま消えていく。
「きっとみんな、クロウの隠し子なのね……」
なぜ、そうなった。
「きっとみんな、ふがいないパパの落とし前をつけようと一生懸命だったのね……健気な……」
その後もマリィアは、くず鉄を拾っては近くの子供にお菓子とともにそれを与え天に返すことを繰り返していた。
●
「やっと見つけましたー。ていうか、工房ってこんなに大きかったんでしたっけ。まぁいいんですけど」
千秋がついにクロウの下にたどり着いた。クロウはみぐるみはがされた状態で床に転がされていた。哀れ周囲には元々彼が着ていた今はくず鉄となった品たちが。これ以上クロウからくず鉄は取れないと捨て置かれたのだろう、近くに子供はいない。ちなみに下着は取られていなかった。さすがにこれまでくず鉄にするのは良心がとがめたのであろう。
そこに、一応やりすぎてはまずいと思っていた観智や元からクロウを探していたミオレスカもやってきた。
「あぁ、見つかったみたいですね」
「……よぉ、あんた見ねぇ顔だな。錬金術に興味があるのか?」
少なくとも顔見知り以上ではあるはずなのにあまりのショックからこんなことを言い出す始末……これは重傷だ。とりあえず観智が全力で往復ビンタを食らわせ気付けをした。
さて、クロウは救出できたものの、周囲ではガンガンと鉄をたたく音が響く。未だ多数の子供がくず鉄を生産しているのだろう。
「さて、私に考えがあります」
そういってミオレスカが進み出る。
「ここは奏唱士らしく、歌で、この場を収めましょう……さ、皆さん一緒に歌いましょう」
そういって、ミオレスカが声を張り上げる。
「もしもしくずよ、くず鉄よ、アイテム壊れてさぁ大変♪」
するとその歌につられたのか……
「くず鉄作ってこんにちは♪」(まよい)
「クロウさん一緒にあそびましょ♪」(ルベーノ)
増えた。
「ジーザス……」
思わず頭を抱えるクロウ。そして、集まってきた子供たちはさらに暴れだす。
「さすがに度が過ぎていますね」
「こうなったら制圧射撃で……」
観智とミオレスカが動く。が……
「もういいよ……こうなったらこれしか手はねぇ……」
そういってクロウが一つのスイッチを取り出す。
「皆逃げてくれ。俺はこいつらを巻き込んで自爆するよ」
「そんな、クロウさん!」
なお、これは何でくず鉄にされなかったのかとかそういう突っ込みはしないように大人の事情だ、察せ。
「グワァッ!!」
その時だった。ハイテンションで周囲をくず鉄化(物理)していたルベーノが吹っ飛ばされ大の字になって倒された。
「俺も付き合うぜクロウさん……」
その声に振り向くと、一人の男が歩み寄ってきていた。グリムバルドだ。
その手に持つのは多数のトンカチ。きっとトリックオアジャンクといって向かってくる子供たちから取り上げたのだろう。子供たちを叩きのめすのは忍びなかったと見える。だが、それ以上に目につくのはちょっと大きなくず鉄。それを見て皆は察した。あぁ……彼のバイクはこの世を去ったようだ、と。
「俺は修羅となって戦った……だが……もう疲れちまった。こいつはもう帰ってこないしな……」
そういって、クロウの隣に座り込んだ。
「世界を火で包もう……くず鉄は消毒しないとなぁ……」
「あぁ、共に逝くとしよう……我が錬成工房よ! 永遠なれぇーーーーっ!!」
一瞬の光とともに工房の中心部から大きな爆発。
「ちょ!」
「あー、こういうオチですかー」
「強化はお預けね……」
観智、千秋、ミオレスカは逃げる間もなく爆炎に包まれる。
「あぁ、私もあの子たちとくず鉄魂を空に返しに行かないといけないのね」
工房のいずこかでは、運命を受け入れたかのごとく目をつむったディーナも光に呑まれ……
「さぁクロウの子供たち……おうちに帰る時間みたいよ?」
マリィアも子供たちを抱き寄せ諸共に吹き飛ばされた。
「爆発オチ? そんなのサイテー!!!」
まよいを始めくず鉄の精霊のそんな叫び声もまた、爆発と一体になり掻き消えていった。
●
「はっ! 夢か……」
工房の戸を叩く音で思わず飛び起きたクロウ。そういえば今日はハロウィンだった。
何か嫌な夢を見た気がするが、とりあえず今来た客人……きっと「トリックオアトリート」といってお菓子をもらいに来た子供たちだろう。
慌ててクロウはお菓子を用意する。ちなみに、このお菓子は突然変異でできたものだ。元の素材は子供たちの精神安定上の問題から秘密である。
「すまん、待たせたな!」
戸を開くと、目の前には仮装した子供たち。その光景に既視感を覚える。
そして、子供たちは言った。
「トリック、オア――――――」
「日頃の行いって……ありますよね。ああやって、いつもいつもくず鉄を作って……余計な恨みを買っているからこうなる……わけですよ」
それは天央 観智(ka0896)の心の声だったのか。実際に発していたとしても、距離を考えると、クロウに届くかは微妙だ。だが、その時は確かに、観智の言葉はクロウまで届いていた。
「まぁ、クロウさんも工房やら備品やらがくず鉄にされて、ちょっと……他人の気持ちも理解すれば……良いんじゃ、ないですかね?」
あぁ、優しい科学者気質とやらはどこに行ってしまったのだろう。その目はさながら、これから食肉加工される羊を見るかのようだ。
この目つきによって、クロウは自分が見捨てられたことを知った。
「……そういえば、ハロウィンでしたか」
クロウを連れていく子供……一見子供のようだが、どうも人ではなさそうだ。
「精霊さん……でしょうか」
さて、それを見て自分はどう動くか……どうせ暇だったので様子を見に来ていただけの事。預けていたアイテムもないし、放っておいても大過ないが……
「まぁ誰かのアイテムがくず鉄になるのは可哀想か……」
結局、観智も首を突っ込むことに。どちらにせよクロウの方は見捨てる方向だが。
当のクロウは悲嘆にくれたものの、すぐに気を持ち直す。それは……すぐ横に知り合いの……ディーナ・フェルミ(ka5843)の姿があったからだ。
(ディーナなら……ディーナならなんとかしてくれる!)
猿轡のせいでしゃべれないクロウはもごもごと口を動かしてディーナに合図を送る。それを見たディーナは、両手をぎゅっと握りしめて頷いた。
「大丈夫、分かっているの」
決意を秘めたその表情からは歴戦のつわものの風格を漂わせていた。
(それにしても、今まさにドナドナされてますって目だったの。クロウさん芸達者なの)
だが残念! クロウの願いは一ミリも伝わっていなかった。
ディーナは今日がハロウィンであることから、これは一つの劇場、お芝居であると考えたのだ。主役はクロウと子供たちだ。
不意に、服を引っ張られるディーナ。足元には子供。
「トリックオアジャンク!」
例の言葉を言われたディーナは、しかし取り乱すことなく、そばに落ちたくず鉄を拾い子供に渡す。子供は満足して消えていった。
「今日はくず鉄の子供たちにとっての聖夜なの……」
(……? 何を言っているんだこいつは?)
クロウはそう呟いたディーナを見て目を見開いた。
「クロウさんが貯め込んだくず鉄魂を子供たちがみんなきれいに浄化してくれているの、尊いことなの……こんな幸せに巡り合えるなんて今日は何ていい日なの」
胸元に手を当て、目を潤ませるディーナ。もはやその思考は別の次元に旅立ってしまったようだ。
(戻って来い! 今日はハロウィンだ! 聖夜は12月だ! まだちょっと早いだろ! 早いはずだ!!)
という願いを込めてうめく。猿轡さえなければこの思いもきっと伝わったはずだった。
「分かっているの、クロウさん……罵倒したいのを無理やり抑えるという迫真の演技をするためにあえて……」
結局、3分の1も伝わらないままうっとりとしたディーナを置いてクロウは連れていかれてしまった。
●
かぼちゃの被りものをかぶった子供たちの先頭に立つ夢路 まよい(ka1328)。
「トリック!」
立ちふさがる扉があれば杖を一振りでくず鉄に。
「オア!」
転がる謎の物質があれば、やっぱり杖を一振りでくず鉄に。
「ジャンクゥッ!!」
誰かが強化を頼んだであろうアイテムを見ると、思った通り杖を一振り(物理)でくず鉄へと変えていく。
「わはははは、俺が! 俺たちがくず鉄だ~~~!!」
ルベーノ・バルバライン(ka6752)もそれに続くようにくず鉄を作り出していく。
「世界をくず鉄で満たしてやろう! ジークくず鉄! ハイルくず鉄!」
そう言いながら、主に強化に使いそうな品を優先的に狙っていくあたり見た目に意外と策士な面もありそうだ。
「大失敗するならくず鉄化! 直せる大失敗なぞいらぬ! 大成功・成功・失敗・くず鉄化! もっと世界をくず鉄で満たすのだ!」
「ちょっとちょっと、危ないわよ?」
あまりにやる気過ぎてまよいにまで工具をぶつけそうになってしまい、報復のアイスボルトを食らうルベーノ。
「……きゅう」
魔法一つでダウンされてしまったルベーノ。
だが、数秒後にはガバっと立ち上がる。
「ハッハァ!! こんなところで我が波動を潰えさせてなるものか~~!」
見た目はあんまり子供っぽくないが、この元気が有り余っている感じはある意味それっぽいかもしれない。
そんな折……クロウが連行されてきた。
「あ、来たわね本命が……」
被り物で表情は見えないものの、分かってしまう。まよいが新しいおもちゃでも見つけたかのような笑みを浮かべていることが。
そして、その横ではルベーノがゴキゴキと指を鳴らしていた。
●
「トリックオアトリートー……といったものの、何やらお菓子を頂ける状況じゃないご様子でー」
観智やディーナに遅れてこの場にやってきたのは小宮・千秋(ka6272)だ。
くず鉄をリサイクルして別の武具を作り出す研究をしているそうだが、どうもこの場のくず鉄の匂いを嗅ぎつけてここまで来てしまったらしい。
「なんだこれは……」
続いてやってきたのはクロウに預けていた魔導バイクを取りに来たグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)だった。
「これは、なんだ? ひょっとして、歪虚の仕業なのか?」
「……いやー、あれの仕業みたいですよー」
そういって指さす千秋。見ると、壁を子供が殴る姿が。そして、その壁の一部がくず鉄になる場面がはっきりと見えた。
「……工具で殴ったものがくず鉄に変わった?」
「そうみたいですねー。いやー、まるで夢みたいですねー」
そう呟きながら、くず鉄を回収していく千秋。元々クロウの工房にある武器や防具等が変えられてしまったものなので、先に挙げたようにリサイクルできるか試すのだろうか。ただ、何にせよクロウと出会うのが先という考えではありそうだ。
「この状況だとクロウさんもどうにかなってしまっていそうなのでー」
「そうだ! この状況じゃ俺のバイクがどうなってるか分かんねぇ! 待ってろバイク!!」
「……先にクロウさんをー」
「大丈夫大丈夫。クロウさんなら多分くず鉄からでもよみがえってこれるさ!」
サムズアップしつつ駆けていくグリムバルド。
その様子を見ながらため息をつき、千秋も動き出した。
●
「クロウさん、今日もアイテム強化……あら?」
ミオレスカ(ka3496)がやってきたときには、周囲にはくず鉄とそれを作る子供たちの姿ばかりだった。
「トリックオアジャンク!」
「はい? ……なるほど、くず鉄を求められているのですね」
すかさずミオレスカはそのあたりに転がっていたくず鉄を差し出す。すると喜んだ子供はそのまま消えていった。
「精霊さん……なのでしょうかね」
これらお子様の正体は、正直どうでもよかった。重要なのは、クロウがピンチに陥っていると思われるこの状況だ。
「……あとで強化、お願いしないといけませんね」
これがチャンスとミオレスカも工房に突入する。
(お代はエア・スティーラーのレベル上限開放、無限強化あたりで手を打つとしましょう)
ミオレスカは割と世界観に順応していたようだが、マリィア・バルデス(ka5848)はそうはいかなかった。
「……」
そこら中に散らばるくず鉄と、子供。そしてくず鉄をもらうと消えるというこの状況。
「そうか、クロウが錬成工房の掃除をきちんとしていなかったから、彼の子供たちがお手伝いに来た……そういうことね」
そして、マリィアはいとも簡単に思考を放棄した。
「あらあれ、こんな簡単にくず鉄かできるなんて、みんあの錬成の腕はきっとクロウより上なのね」
そんなことを呟きながら、子供が散らかしたおもちゃを片付ける母親のような雰囲気を醸しつつくず鉄を拾い集めていく。
「さぁ、あなたたちこちらにおいで?」
まさか向こうから話しかけられると思っていなかった子供たちは若干びっくりしつつも、律儀にマリィアの方に寄ってきた。
「偉いわね、工房のお掃除を手伝うなんて……ほら、くず鉄と……それにこの飴玉も持っていきなさい」
渡された子供たちは、なんか釈然としないといった態度をしつつ、そのまま消えていく。
「きっとみんな、クロウの隠し子なのね……」
なぜ、そうなった。
「きっとみんな、ふがいないパパの落とし前をつけようと一生懸命だったのね……健気な……」
その後もマリィアは、くず鉄を拾っては近くの子供にお菓子とともにそれを与え天に返すことを繰り返していた。
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「やっと見つけましたー。ていうか、工房ってこんなに大きかったんでしたっけ。まぁいいんですけど」
千秋がついにクロウの下にたどり着いた。クロウはみぐるみはがされた状態で床に転がされていた。哀れ周囲には元々彼が着ていた今はくず鉄となった品たちが。これ以上クロウからくず鉄は取れないと捨て置かれたのだろう、近くに子供はいない。ちなみに下着は取られていなかった。さすがにこれまでくず鉄にするのは良心がとがめたのであろう。
そこに、一応やりすぎてはまずいと思っていた観智や元からクロウを探していたミオレスカもやってきた。
「あぁ、見つかったみたいですね」
「……よぉ、あんた見ねぇ顔だな。錬金術に興味があるのか?」
少なくとも顔見知り以上ではあるはずなのにあまりのショックからこんなことを言い出す始末……これは重傷だ。とりあえず観智が全力で往復ビンタを食らわせ気付けをした。
さて、クロウは救出できたものの、周囲ではガンガンと鉄をたたく音が響く。未だ多数の子供がくず鉄を生産しているのだろう。
「さて、私に考えがあります」
そういってミオレスカが進み出る。
「ここは奏唱士らしく、歌で、この場を収めましょう……さ、皆さん一緒に歌いましょう」
そういって、ミオレスカが声を張り上げる。
「もしもしくずよ、くず鉄よ、アイテム壊れてさぁ大変♪」
するとその歌につられたのか……
「くず鉄作ってこんにちは♪」(まよい)
「クロウさん一緒にあそびましょ♪」(ルベーノ)
増えた。
「ジーザス……」
思わず頭を抱えるクロウ。そして、集まってきた子供たちはさらに暴れだす。
「さすがに度が過ぎていますね」
「こうなったら制圧射撃で……」
観智とミオレスカが動く。が……
「もういいよ……こうなったらこれしか手はねぇ……」
そういってクロウが一つのスイッチを取り出す。
「皆逃げてくれ。俺はこいつらを巻き込んで自爆するよ」
「そんな、クロウさん!」
なお、これは何でくず鉄にされなかったのかとかそういう突っ込みはしないように大人の事情だ、察せ。
「グワァッ!!」
その時だった。ハイテンションで周囲をくず鉄化(物理)していたルベーノが吹っ飛ばされ大の字になって倒された。
「俺も付き合うぜクロウさん……」
その声に振り向くと、一人の男が歩み寄ってきていた。グリムバルドだ。
その手に持つのは多数のトンカチ。きっとトリックオアジャンクといって向かってくる子供たちから取り上げたのだろう。子供たちを叩きのめすのは忍びなかったと見える。だが、それ以上に目につくのはちょっと大きなくず鉄。それを見て皆は察した。あぁ……彼のバイクはこの世を去ったようだ、と。
「俺は修羅となって戦った……だが……もう疲れちまった。こいつはもう帰ってこないしな……」
そういって、クロウの隣に座り込んだ。
「世界を火で包もう……くず鉄は消毒しないとなぁ……」
「あぁ、共に逝くとしよう……我が錬成工房よ! 永遠なれぇーーーーっ!!」
一瞬の光とともに工房の中心部から大きな爆発。
「ちょ!」
「あー、こういうオチですかー」
「強化はお預けね……」
観智、千秋、ミオレスカは逃げる間もなく爆炎に包まれる。
「あぁ、私もあの子たちとくず鉄魂を空に返しに行かないといけないのね」
工房のいずこかでは、運命を受け入れたかのごとく目をつむったディーナも光に呑まれ……
「さぁクロウの子供たち……おうちに帰る時間みたいよ?」
マリィアも子供たちを抱き寄せ諸共に吹き飛ばされた。
「爆発オチ? そんなのサイテー!!!」
まよいを始めくず鉄の精霊のそんな叫び声もまた、爆発と一体になり掻き消えていった。
●
「はっ! 夢か……」
工房の戸を叩く音で思わず飛び起きたクロウ。そういえば今日はハロウィンだった。
何か嫌な夢を見た気がするが、とりあえず今来た客人……きっと「トリックオアトリート」といってお菓子をもらいに来た子供たちだろう。
慌ててクロウはお菓子を用意する。ちなみに、このお菓子は突然変異でできたものだ。元の素材は子供たちの精神安定上の問題から秘密である。
「すまん、待たせたな!」
戸を開くと、目の前には仮装した子供たち。その光景に既視感を覚える。
そして、子供たちは言った。
「トリック、オア――――――」
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/03 21:34:03 |