【HW】種の夢

マスター:葉槻

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2017/11/07 07:30
完成日
2017/11/22 00:49

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 キュ、キュ、キュ~!  ようこそLovely Dolphinの夢芝居屋へ!

 ボクが夢の案内人のイルカさんですぅ。

 あぁ、残念ながら一緒に泳いだりぃ、芸の1つも見せたり出来ませんけどぉ。

 ここではあなたのぉ、みたい夢を見せてあげますぅ。

 どんな夢がお望みですぅ?

 明るい夢? 楽しい夢? まだ見ぬ夢?

 何だっていいんですぅ、あなたのぉ、お望みの夢を叶えてあげますよぅ!

 ……

 …………

 ……………………

 あぁ、そうそう。一つだけ条件があるのを忘れてましたぁ。

 ■■■この夢では“種”がキーワードです■■■

 あなたが見るのはぁ、何かが芽吹く夢?

 それともぉ、畑に種を捲く夢?

 それとも……美味しくお腹い~っぱい食べた想い出……?

 キュ、キュ、キュ~、キュキュッ、キュ~!

 さぁ、ボクに見せてくださぁい!

 あなたが見るぅ、『種の夢』を。

 キュキュ~、キュ、キュ、キュ~!



 ……あっとぉ。ただし、夢を見て、現実に帰ったときにぃ

「嗚呼!! もっと夢の中にいたかった!! 夢の中に帰りたい!!」

 ……なんて、現実に絶望することになってもぉ、ボクはなぁんの責任も取れないですよぅ!

 キュキュキュッ、キュッキュッキュッキュ~。

 キュキュキュ~ッ。

 キュキュ~ッ、キュキュキュキュキュ~ッ。



 ――あぁ、これは夢だ。

 あなたはふとした瞬間にそれに気付づくだろう。

 それは最初から? それとも起きたときに初めて気付く?

 それは遠い記憶、不確かな思い出。

 それは繰り返し見る同じ夢。

 現実とは違う、無限ループの挟間の一部。

 それなのに起きると同時に、夢の内容を忘れるかもしれない。

 クラクラと定まらぬ空間で、あなたは手を伸ばす。

 ――あぁ、これは夢だ。


リプレイ本文

●種籾の夢

 ――ズシッ。

 いつのまにか、道元 ガンジ(ka6005)の掌には袋がのっていた。
 開けてみるとたくさんの種が入っている。

「まいて、そだてて、たべる?」

 単純にガンジはそう思った。
 荒廃した都市の一角。
 あたりを埋め尽くすビル群、その足元に軒を並べる貧しいスラム街。
 見上げれば小さな四角い青空。
 小さな家と、わずかな土の残る小さな庭。
 誰かが住んでいたような痕跡がある。
 自分がなぜここにいるのか、ガンジにはわからない。

 痩せた庭を記憶の片隅にあった方法で耕して、種をまく。
 ……しかし、待てど暮らせど芽が出ない。
 袋の中にはたくさんの、たくさんの種が入っているのに。
「なんで?」
 どんなにまいても、水をやっても、肥料をやっても。
 芽が出てこない。
 種を植えれば芽が出る。
 そう信じ込んでいたガンジは次から次へと種をまく。
 ・
 ・
 ・

 ――気付けば、これが最後の一粒。

『その種は特別な一粒。渡してもらおう』
 そこへ、何者かが雑魔の群れを率いて襲撃をかけてきた。
「渡すわけない!」
 ガンジにはなぜか強い信念があった。
 蹴散らして逃げる。
『持ち帰って、調べる。これから先のために渡せ』

「最後の一粒だからって、何だ。こいつは調べられるために、割られるためにあるわけじゃねえ。土に埋まって芽え出してナンボだ!」

 叫んだ瞬間、首輪と腕輪、つなぐ鎖を引きちぎった時の感覚に似た衝撃があった。
 だが、うっすらとした靄のようなソレも、すぐにかき消え。

 目の前の相手と戦う。
 戦って、逃げて、逃げたその先には新たな大地が広がっていた。

 ボロボロになった身体で、フラフラになった頭で、爪の割れた指先でそれでも土を掘る。
『いたぞ!』
 敵の声。ガンジは土の中に種を落とした。

 ――と、急激にそれは成長し、ツルが敵をからめとり投げ打った。
 見るまに成長して大樹となり、実が。
 数多の実がなり、ガンジもそれに手を伸ばして……


「あれ?」
 ガンジは逆さまになった状態で目が覚めた。
 ……正しくはベッドから上半身だけがずり落ちていた。
 ぱたり、と伸ばしていた手が木の床の上に落ち、ずるりと落ちてきた身体に耐えきれず首と背中曲がって、後転に失敗した時のように自分の視野に両膝降ってきた。
「……変な夢」
 首をさすりつつ起き上がって大きく伸びをする。
「……腹減った。メシだメシ!!」
 ガンジは見た夢も忘れて台所へと走って行った。



 ●綿毛の夢
 春の草原にいるようだった。
 足元には黄色い花が揺れ、白い綿毛がそよそよと風に揺れている。
 青い空には雲1つなく、暑くもなく、寒くも無い。

 リラ(ka5679)はこの光景に暫し見とれていた。

 小さな花は人々の想いに見えた。
 誰かを想う気持ち。
 大切に想う気持ち。
 伝えたい気持ち。
 優しい暖かな想いが花となり咲き乱れている。
 そしてやわらかな風に吹かれた一輪の花が、光りを纏ったかと思うと、光りが弾けて白い綿毛になった。
 綿毛は再び風に揺れるとふわりと飛び立った。
 沢山の大好きを、祈るように、伝えるように。
 親へ、子へ、兄弟へ、友へ、そして恋人へ……

 ――あぁ、秘めていた想いが発せられたのだ。

 綿毛の花は想いの形に見えた。
 仕草の1つとして。
 表情として。
 きちんと言葉となって。
 優しい暖かな想いは種となり風に乗り旅をする。
 そしていろんな場所に運ばれていって、想う人に届き幸せを芽吹かせる。

 リラは自然に溢れ出すメロディを口ずさんでいた。
 一つでも多くの想いが、想う相手へと届く様に。
 きっと届くと信じて。
 それを少しでも手助けできる様に、歌う。

 ――一輪でも多く、幸せという花が咲きます様に。

 そして、咲いた花は再び想いの種を作り、また運ばれていく。
 想いを返すためか、別の人へか。
 それは再び、否、何度でも紡がれるもの。
 まったくの同じものなど1つもなく。
 だけれどそれは確かにダ・カーポの様に繰り返される。
 紡がれる度に人の数、想いの数だけ形を変えて、でも確かに繰り返される優しい旋律。

 沢山の大切な人が、仲間がいるこのかけがえの無い世界で。
 リラは祈る様に歌を紡いでいた。
 繰り返される優しいメロディに歌を乗せて。
 そしてリラ自身も想いの種を飛ばす。

 ――皆が大好きだから、その想いが届きます様に。

 昨日よりも今日が。
 今日よりも明日が。
 幸せなものになる様に、そう祈り信じながら。
 世界が優しい願いに満ちていくように、歌う。


「……夢……」
 リラは暖かな日差しを受けて目を覚ました。
 公園のベンチ。手元には新しい楽譜。

 ――そうだ、これを暗譜しようと思って……

 小春日和の穏やかな陽気に誘われてうっかりうたた寝してしまったらしい。
「やだ……恥ずかしい」
 楽譜で赤面した顔を隠そうと持ち上げたとき、ふわりと舞う綿毛が見えた。
「……良い夢で、良かった」
 リラは両目を細めてその小さな想いの形が風に運ばれていくのを見送った。



●祈りの夢
 イェルバート(ka1772)は気が付いたら、久しく帰っていない祖父の機械工房にいた。
「……あれ?」
 作業台が中途半端な状態で放置されている。
「……爺ちゃん?」
 外を見て回るも誰も見当たらず、台所を覗くと祖母が料理中の形跡があるにも関わらず、祖母の姿はなかった。
「……誰もいない」
 その時、家畜小屋の方からワイバーンの鳴き声が響いた。
「!! ピウス!?」
 聞き覚えのあるその鳴き声に慌てて外に出て家畜小屋へと走る。
 みれば、羊やニワトリに囲まれているピウスの姿があった。
「うわっ、ピウス! 羊もニワトリも食べちゃダメだよ! それたぶん隣のおじさんの所の子達!」
 慌ててそう声を掛けるが、言われたピウスはキョトンとした目でイェルバートを見た。
「……あれ? 怖がって……ない?」
 家畜達がドラゴンを怖がっていない。ピウスもこの状況にとてもとても馴染んでる。頭にヒヨコとか乗せているし、彼自身も襲う気は無さそうだ。
「ドウイウコトナノ……?」
 混乱したままのイェルバートはピウスを連れて村の中を見てまわった。

(歪虚や盗賊に襲われたわけでもないのに、爺ちゃんも婆ちゃんも……村のみんなも、いないなんて)
「……これは夢、なのかな」
 ある程度村を見て回って出した結論はそれだった。
 しょげているように見えたのだろうか。
 ピウスがイェルバートに顔を寄せ甘え始めた。
「わ、わ。うん、有り難う大丈夫……あはは、くすぐったい、あはは」
 ピウスのお陰で少し元気が出たイェルバートはお礼を言いながら、両頬を叩いた。
「うん、痛くない。きっと夢なんだ、うん」
 それならそれで、ピウスにゆっくり村の案内が出来る。
「ねぇ、ピウス、僕の育った村を見てくれるかい?」
 イェルバートが問えば『当然さ』と言わんばかりに、ピウスがひと鳴きした。

「そういえば、今時期はちょうど秋の収穫が終わって、畑がまっさらな状態なんだよね」
 じゃがいもが植わっていた畑は、全て掘り起こされ、茶色い土が見えるのみになっている。
「うちは機械工房だけど、収穫期は人手不足で手伝うのが当たり前だったよ。みんなで集まって、作物の選別とか、保存食作りとか」
 目を閉じなくとも、ゴザの上に座って種一つ一つを見ている自分が、ドライフルーツにするために取ってきた果実に紐を通し吊している自分が見えるようだった。
「種を集めて乾かすのも大事な仕事だったね。家同士で、違う品種の種を交換したりもしたな」
 同じ畑で同じ作物ばかりを作っていると、あっという間に育ちが悪くなる。
「そうでなくても、もともと痩せた土地だから、強い作物ができますように―――また来年、実りがありますようにって祈るんだ」
 目を細め、懐かしい物を見る目で周囲を見て案内していくイェルバートをピウスは静かに聞きながらその後に付いて村を見ていく。

「……僕、この暮らしを守りたくてハンターになったんだよね」
 村を一望できる場所でイェルバートは大事な事を思い出した。
「この村で生まれたわけじゃないけど、この村で育った……育ててもらったんだ。僕にとって大切な場所、だからさ」


 イェルバートは暖かな布団にくるまれて目を覚ました。
「……あぁ、やっぱり夢だったのか……」
 良かった、と思う。やはり誰もいない村というのは寂しくて少し怖い。
 窓を開けて秋の空気を吸い込む。
(……爺ちゃん達に、たまに手紙は送っているけど、ほとんど帰ってないや)
 ピウスを連れて、今度はちゃんと人がいる故郷に帰ろう、そうイェルバートは心に決めると大きく伸びをして朝食の準備へと取りかかったのだった。



●ヒトと龍の夢
 藤堂研司(ka0569)が気がついた時にはワイバーンの竜葵と共に極寒の土地を彷徨っていた。
「……竜葵? ……ここは、龍園……? いや、どこ……むしろ、何だ?」
 龍園に雰囲気は似ている気がするが、何というかこう“空気が違う”と感じていた。
『私に尋ねられても答えかねます』
「そりゃそうだよな、悪かった……って、えぇ!?」
 言葉を返してきた竜葵を慌てて見返す。
『何をそんなに驚いているのです? 今日の研司はおかしいですよ』
「え、なんで竜葵、しゃべれ……!?」
『何がなんでなのか分かりかねます。……で、どうするんですか? 正直ここはあまり良い場所じゃありません。立ち去りますか? それとももっと奥まで行きますか?』
 冷静に周囲を見回す竜葵に倣って研司も周囲を見回す。
「……しゃあねぇ、探ってみようぜ。背中、貸してくれ」
 言うが早いか竜葵の背に飛び乗ると、竜葵は“やれやれ”と言わんばかりのため息と共に翼を広げた。

 空から見た地形は見覚えがある。
 雪こそ止んでいるが、見渡す限り真っ白な大地。遠く見えるのは氷山。流氷同士がぶつかり軋む音。
 そして、降りたったのは龍園、リグ・サンガマ。
「龍園なんだけどなぁ、人っ子一人いやしねぇ。ここまで出払うってことあるか? 生活の痕跡は確かに残っているのに……」
『……厭な音がしますね』
 竜葵が頭をもたげ南の方を見る。
 その時、マテリアルによる火柱が上がるのが見えた。
「……うぉ、何だ!? ドンパチか!? 喋れる生き物が残ってるかもしれん、とにかく行ってみよう」
 竜葵が地を舐めるような低空飛行で火柱が上がった方向へと向かう。
 氷の森を抜けた、その向こう側。
 崖の上から下の様子を窺って、ようやく状況を理解した。
 攻撃するヒト、応戦する龍。
 そこで繰り広げられていたのはトチ狂ったヒトが龍を攻めた、過去の戦いそのものだった。

 これは以前、神霊樹の夢として見た光景に似ていた。
(だが、だとすれば竜葵としゃべれるっていうのは一体どういう事なんだ……)
 どうやらこの『夢』は神霊樹を通している訳では無さそうだということは分かったが、考えたところで詮無いことだと気付いて、研司は早々にこれについて考えるのを放棄した。
「竜葵。何故ヒトが“龍狩り”なんてもんに手を出したかわかるか?」
『生憎分かりたくもありません』
 つれない一言に思わず失笑する。
「狂気に駆り立てる欲望って言うと、限られる。ほれ、例えばあのヒト。龍に相対するには余りにも貧相な装備だろ。てか農具だろ?」
 研司が指し示したヒトは確かに戦士というには貧相で、手にしているのも鋤だ。
「人生ドン詰まり、家族を食わす万策尽きて、万が一にもおこぼれに預かれるかもしれない戦に参加する」
 身につけているのも最低限の防寒具のみ。必死に四足歩行の龍を追いかけ……その龍の尾に薙ぎ払われ吹き飛んだ。
「死んだなありゃ」
『研司もヒトでしょうに。随分と他人事のようにおっしゃる』
 竜葵の言葉に研司は暗い笑みを浮かべた。
「……いや。俺もヒトだよ。人間“自分以外のために”が絡むとどこまでも残酷になれる」
 “自分のための欲望”などたかが知れている。
 ……ということはこれも、種の存続のための本能なのだろうか。
(まあ、所詮理屈が立たん感情論よ)
 だが、だとしたら自分は“ヒト”として失格なのかも知れない。
 執拗に龍を追い、斬り付けるヒトに向かって研司は魔導砲を構えた。
 鳩尾の辺りがスッと冷たくなる感覚がする。
「“龍のために”が絡めばどこまでも残酷になれる。それがヒトである、俺だ」

 そして、迷わず引き金を――引いた。



●芽吹く夢
「家入る前に泥と埃を落としてけよ」
 父親であるアーヴィン(ka3383)の声に子ども達は「はーい」と声を揃えてパンパンとズボンをはたき、外の井戸で手を洗う。
 「つめたいね」「きもちいいね」と戯れる子ども達の賑やかな声に、室内で調理中だった黒の夢(ka0187)が火を止めて迎えに走る。
「ただいま」
「あなたー! みんなー! おかーえりー!!」
 扉を開けた途端飛びついてきた黒の夢に子ども達がきゃぁきゃぁと悲鳴のような笑い声を上げる。
「ほら、食事の準備」
「はぁい」
 アーヴィンに優しく促され、子ども達は黒の夢から身を引き剥がすと、軽やかな足音を立てながら室内へと駆けていく。
「おかえりー」
「ただいま」
 見つめ合って、優しく強く抱きしめ合う。
「ご飯できてるのな」
「あぁ、腹減った」
 「かかー、ととー、準備出来たよー」と奥の部屋から声が響く。
「今行くのなー!」
 2人は微笑み合って玄関の扉を閉めると食卓へと向かった。

 山深い家で2人は実子が1人、そして引き取った2人の孤児とで暮らしていた。
 元々黒の夢は博愛主義だし、アーヴィンも戦闘が多く孤児が発生しやすい地域出身なので、自分の子だから、他人の子だから、という垣根が無い。そんなところも2人は息が合った。
 アーヴィンが狩猟・釣り・採集などを手広くやり、子ども達にそれらを生きていく術として教え、黒の夢は料理や裁縫を教え、何よりも子ども達に分け隔てなく愛情を注ぎ育てている。
 贅沢が出来るような暮らしではない。
 だが家族5人、慎ましく生きるには不自由しない。
 黒の夢もアーヴィンも日ごと大きくなる子ども達を見守る幸せを噛み締めていた。

「そうだ。畑作を教えてくれるという人にようやく巡り会えたぞ」
 アーヴィンにとって一所に留まらなければ行えない農耕は遠い平和の象徴だった。
 だがここに家を設けた以上、いつかは本格的な畑作をと思っていたが、その夢がようやく叶おうとしていた。
「よかった! アーヴィンちゃん、ずっとやりたがってたから、我輩も嬉しいのな!」
 子ども達を寝かしつけた後、2人は同じ小さなベッドに入りひそひそと声をひそめながら歓びを分かち合う。
 アーヴィンは頭をくしゃくしゃと撫でなられた後、黒の夢の豊満な胸の谷間に顔を埋めるようにぎゅむぎゅむと抱きしめられる。
「あぁ、明日から早速来てくれるらしい。この時期だと葉野菜と大根ぐらいしか育てられないそうだが……それでも、少しずつ季節に合わせて植える物を増やせれば安定して野菜を得ることが出来る」
「我輩もお手伝い頑張るのな!」
 ようやく黒の夢のふかふかな谷間から顔を上げることに成功したアーヴィンは、黒の夢のキラキラした金の瞳とぶつかり思い出す。
 以前、簡易的な畑を作ろうとした時に、手伝うと言って一緒に山へ来たものの、気がつけば黒の夢は子ども達と一緒になって遊んでいて、散々遊んだ後には子守唄を歌いながら子ども達をお昼寝させ、それにうっかりアーヴィンも巻きこまれて家族5人健やかに日が傾くまで眠ってしまったことを。
「……あぁ、家のことをよろしくお願いするな?」
 「えー!」と非難の声を上げそうになった黒の夢の口元を人差し指1つで抑え、「シー」と静める。
「じゃあ我輩も合間を見て外に働きに出るのな! 何にせよ蓄えはあるといいもの。それに、カジノ……? とかの、うさちゃんの衣装は可愛いと聞くのな!」
「そうだな……もうチビもこっちの仕事に付いてこられるようになったしな……おまえも日中家に1人じゃ退屈だろう」
 愛情深く子ども好きな黒の夢は、その分さみしがり屋でもある。……だが。
「でもカジノはダメだろう。そもそも稼ぎ時はあれ夜だしな……」
「そうなのな? あぁ、月のうさちゃんは確かに夜にしか見えないね!」
 奇妙な納得の仕方をしているが、ヘタな説明をすると逆に興味を引かれそうなので黙っておく。
「夜は子ども達と一緒に寝たいだろう? せめて俺達が仕事に行って帰って来られる仕事にしてくれ」
 そう告げると、黒の夢がとてもとても優しい――それでいて扇情的な――瞳を向けて笑い出した。
「夜、独りだと、寂しい?」
「…………」
 それはおまえだろう? という言葉を唾液と共に飲み込んで、いつもされるように黒の夢の頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
「我輩、アーヴィンちゃんとの子もう1人欲しいのな」
 妖しい光に揺れる2つの満月のような瞳がアーヴィンを射抜く。
 その月の魔力に狂わされたのはもう随分前だ。
「……いいぞ」
 覆い被さるように姿勢を変え、噛みつくような口づけを贈る。
「……声、気を付けろよ」
「……ん……」
 衣擦れの音と狭いベッドが悲鳴を上げるように軋む。

 静かな室内に押し殺した嬌声と荒い息づかいが夜に溶けて消えた。

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参加者一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢(ka0187
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    リュウキ
    竜葵(ka0569unit003
    ユニット|幻獣
  • →Alchemist
    イェルバート(ka1772
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • ユニットアイコン
    ピウス
    ピウス(ka1772unit001
    ユニット|幻獣

  • アーヴィン(ka3383
    人間(紅)|21才|男性|猟撃士
  • 想いの奏で手
    リラ(ka5679
    人間(紅)|16才|女性|格闘士
  • 今日を笑顔で全力!
    道元 ガンジ(ka6005
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/11/03 23:08:01