ゲスト
(ka0000)
昏迷のかわりに
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/11/07 12:00
- 完成日
- 2017/11/14 20:26
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ハンターが帰った後、初名は現在世話になっている刀匠白賀時光に話を聞こうとしていた。
その内容は初名の師匠である亀田藤五郎へ贈るはずだった刀が初名が訪れる数日前に盗難された話。
弟子も同席しており、話を聞こうとしている。
「師匠……そもそも、そんな刀、見たことがねぇだが……」
弟子の一人である三吉が首を捻りながら訪ねた。
他の弟子たちも同様に時光の刀の話は聞いたことがなかったようであった。
「盗賊達が荒らした蔵の奥にガラクタなんかを置いている場所があっただろう、そこの奥に刀一本隠せる隙間があってな、その中に隠していたんだ」
「確かに随分と荒らしてなぁっと思ってたんだが……そんなところまで……」
呆れる弟子達に対し、初名はじっと時光の様子を見ている。
「何故、そんなところに隠していらっしゃったのですか……?」
初名の問いに時光は肩を落とす。
「一度盗まれた後、そこに隠していたのです」
そういえばと、初名は思い出す。ハンターがいた席でそう言っていた。
「最初の時はもう、何十年と前の話……藤五郎が医師の道を目指し、刀が出来上がって間もないころでした」
白賀の邸宅は時光の師匠の持ち家であり、時光は子供のいない師匠の養子に入っていた。
旅流れの盗賊に奪われ、当時の時光は盗賊を追い、同時に旅の覚醒者の力を借りることが出来、盗賊を追ったという。
追いついた時、その盗賊は人とは思えない様子であり、刀を振り回して時光と覚醒者を襲った。
覚醒者の機転もあり、近くに歪虚がいた事に気づく。盗賊は歪虚を庇ったことから、歪虚の力の影響と判断し、歪虚を退治したという。
「その歪虚はどのような……」
初名が言葉を挟むと、二股の頭をした蛇の歪虚だと時光が返した。
覚醒者が二股の蛇の片方の頭を斬り落とすと、動かなくなり、盗賊は気を失った。気が付いた頃には、盗賊が恐慌状態となっており、落ち着いた頃には自白をしてお縄になったという。
「二度も奪われたとなれば、私の手から離れたのはもう、天命か何かと思っていたんだが……」
ハンターの誠実な働きを見て、諦めきれない思いがこみ上げたようだった。
「お話は分かりました。とりあえず、依頼を出してきます」
そう言って、初名は街道を越えた街へと向かう。
街道で大きな顔をしていた盗賊達が大人しくしていても、心配だという事で三吉が付き添ってくれた。
その際に三吉が以前、西方の国に行っていた際の話をしてくれて、初名を楽しませてくれる。
飛脚屋にて手紙を書いていたところ、恰幅の良い壮年の女性が声をかけてきた。
「あんた、この間、ハンターを呼んだ人だよねぇ」
「ええ」
あの時の啖呵でも聞かれていたのだろうかと思い出せば、初名は恥ずかしそうに頬を染める。
「ちょっと、来てくれないかい……」
そう言ってきた女性に初名と三吉は顔を見合わせた。
壮年の女性に連れられると、小料理屋に入った。そこには老人が一人おり、疲れた様子を見せている。
見たところ、着物は質素であるが、身なりもきちんとしており、どこかの店の主のようであった。
「お前さんに教えてほしいことがあるのだ」
そう言った老人の知りたいことはハンターの依頼の仕方。
「どうかされたのですか?」
「嫁に行った娘の店が、盗賊のような連中に張り込みをされているようでな……」
どうやら、盗賊たちは街道以外で盗みを働くようになったようで、老人の娘の嫁入り先の店の周囲を見ている影があるという。
「娘の心配だけじゃない、のちに他の店も狙われることになるだろう。元は、仕事がない者達とはいえ、もう目を瞑ることはできん……」
唸るように呟く老人の言葉に初名はわかりましたと頷いた。
「初名さん、いいんですかい?」
三吉は店を出てから初名に小声で問いかける。
「まぁ、街の人たちも動きたがっているようですし」
「お人が良すぎるだ。依頼したいなら、自分達でやればええだ」
どうやら、三吉が怒っている理由は街の人達が初名が動くのを待っているような素振りを感じていたからだろう。
「人情で目を瞑りなんとかしてきて、これ以上何とか出来ないこともあります。それが誰かにすがるだけでも違います」
初名が言えば三吉は口をつぐんでしまう。
「三吉さんは優しいですね。私のしている事は、彼らにいずれありえるだろうツケをつけているのに」
「おらァ、面倒でも、怖くても、ちゃんとやるべきだと思うだ」
そう言った三吉に初名はそうですねと微笑む。
その内容は初名の師匠である亀田藤五郎へ贈るはずだった刀が初名が訪れる数日前に盗難された話。
弟子も同席しており、話を聞こうとしている。
「師匠……そもそも、そんな刀、見たことがねぇだが……」
弟子の一人である三吉が首を捻りながら訪ねた。
他の弟子たちも同様に時光の刀の話は聞いたことがなかったようであった。
「盗賊達が荒らした蔵の奥にガラクタなんかを置いている場所があっただろう、そこの奥に刀一本隠せる隙間があってな、その中に隠していたんだ」
「確かに随分と荒らしてなぁっと思ってたんだが……そんなところまで……」
呆れる弟子達に対し、初名はじっと時光の様子を見ている。
「何故、そんなところに隠していらっしゃったのですか……?」
初名の問いに時光は肩を落とす。
「一度盗まれた後、そこに隠していたのです」
そういえばと、初名は思い出す。ハンターがいた席でそう言っていた。
「最初の時はもう、何十年と前の話……藤五郎が医師の道を目指し、刀が出来上がって間もないころでした」
白賀の邸宅は時光の師匠の持ち家であり、時光は子供のいない師匠の養子に入っていた。
旅流れの盗賊に奪われ、当時の時光は盗賊を追い、同時に旅の覚醒者の力を借りることが出来、盗賊を追ったという。
追いついた時、その盗賊は人とは思えない様子であり、刀を振り回して時光と覚醒者を襲った。
覚醒者の機転もあり、近くに歪虚がいた事に気づく。盗賊は歪虚を庇ったことから、歪虚の力の影響と判断し、歪虚を退治したという。
「その歪虚はどのような……」
初名が言葉を挟むと、二股の頭をした蛇の歪虚だと時光が返した。
覚醒者が二股の蛇の片方の頭を斬り落とすと、動かなくなり、盗賊は気を失った。気が付いた頃には、盗賊が恐慌状態となっており、落ち着いた頃には自白をしてお縄になったという。
「二度も奪われたとなれば、私の手から離れたのはもう、天命か何かと思っていたんだが……」
ハンターの誠実な働きを見て、諦めきれない思いがこみ上げたようだった。
「お話は分かりました。とりあえず、依頼を出してきます」
そう言って、初名は街道を越えた街へと向かう。
街道で大きな顔をしていた盗賊達が大人しくしていても、心配だという事で三吉が付き添ってくれた。
その際に三吉が以前、西方の国に行っていた際の話をしてくれて、初名を楽しませてくれる。
飛脚屋にて手紙を書いていたところ、恰幅の良い壮年の女性が声をかけてきた。
「あんた、この間、ハンターを呼んだ人だよねぇ」
「ええ」
あの時の啖呵でも聞かれていたのだろうかと思い出せば、初名は恥ずかしそうに頬を染める。
「ちょっと、来てくれないかい……」
そう言ってきた女性に初名と三吉は顔を見合わせた。
壮年の女性に連れられると、小料理屋に入った。そこには老人が一人おり、疲れた様子を見せている。
見たところ、着物は質素であるが、身なりもきちんとしており、どこかの店の主のようであった。
「お前さんに教えてほしいことがあるのだ」
そう言った老人の知りたいことはハンターの依頼の仕方。
「どうかされたのですか?」
「嫁に行った娘の店が、盗賊のような連中に張り込みをされているようでな……」
どうやら、盗賊たちは街道以外で盗みを働くようになったようで、老人の娘の嫁入り先の店の周囲を見ている影があるという。
「娘の心配だけじゃない、のちに他の店も狙われることになるだろう。元は、仕事がない者達とはいえ、もう目を瞑ることはできん……」
唸るように呟く老人の言葉に初名はわかりましたと頷いた。
「初名さん、いいんですかい?」
三吉は店を出てから初名に小声で問いかける。
「まぁ、街の人たちも動きたがっているようですし」
「お人が良すぎるだ。依頼したいなら、自分達でやればええだ」
どうやら、三吉が怒っている理由は街の人達が初名が動くのを待っているような素振りを感じていたからだろう。
「人情で目を瞑りなんとかしてきて、これ以上何とか出来ないこともあります。それが誰かにすがるだけでも違います」
初名が言えば三吉は口をつぐんでしまう。
「三吉さんは優しいですね。私のしている事は、彼らにいずれありえるだろうツケをつけているのに」
「おらァ、面倒でも、怖くても、ちゃんとやるべきだと思うだ」
そう言った三吉に初名はそうですねと微笑む。
リプレイ本文
依頼人である初名がいるのは街の宿。
ハンターの到着を知った初名と三吉は一礼と共に迎える。
「手を変え、品を変え……」
呆れた和音・空(ka6228)は頭を俯かせると、絹の髪がさらさら前に垂れていく。
「……羨ま……いえ、許せないわ」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)が色々と本音を漏らしているが、どの方向でも許せない様子だ。
「確かに此方は人が好く眩し過ぎ、彼方はさもしく唾棄すべきだ」
目を眇めてそう呟くのはルイトガルト・レーデル(ka6356)。
「捕縛だな。了解した」
ルイトガルトの気遣いに初名はふふと微笑む。
「咎を越えた向こう側は彼岸かもしれませんね」
「悪い冗談をどこで覚えた」
叱るような言い方をしたが、軽口も言えるほど初名は元気になった事にルイトガルトは内心で安堵した。
「……二度も盗まれるほどの刀とは……」
真剣な表情で呟くのは木綿花(ka6927)だ。
前の盗難時は歪虚も関わっていたという話の為、愛らしい顔が厳しい表情へと変えてしまうのは無理もない。
「師匠はすっごい人ですからね」
えっへんと無邪気に自慢する三吉に龍宮 アキノ(ka6831)がくつりと笑う。
「しかし、木綿問屋を狙われる理由はなんだろうな……」
腕を組んで思案するアキノは部屋の天井を見つめる。
「あれらが押し込み強盗しようとした時に取り押さえて本拠地を吐かせるということでよろしいですか?」
ハンス・ラインフェルト(ka6750)が確認するように仲間達に告げる。
「詳しい情報は必要よね」
息を大きく吐いた空は気持ちを切り替えるように声を出す。
まずは、初名に声をかけてきた老人に木綿問屋へ潜入できるように一筆添えてもらう事にし、それから周辺警戒につくハンターから動き出す。
自警団の寄合所に行くと、木綿花の顔に数名が反応する。街道沿いで横行していた賊をハンターが捕縛した時に木綿花の顔を見かけた者がいたようだった。
「盗賊団の事について教えてほしいことがあります」
木綿花が口火を切ると、自警団は協力の様子を見せている。
「まずは見張り場所と時間もわかれば」
「それならすぐわかる所だよ」
何とかの一つ覚え宜しく盗賊達は必ず同じ場所につくという。細い裏路地に隠れており、お世辞にも上手くはないと揃える。
特別な訓練を受けたわけではない自警団達が言うのだからそうなのだろうとアルスレーテとハンスも思う。
「あいつらも、元は同じ町で住んでいた奴らで……」
ぽつりと呟く青年は賊の数人は自警団に入っていたという。自警団と名はあるが、皆はどこかに働いていたりしている住民だった。
番屋の手伝いという事で有志で形成していたとのこと。
歪虚が襲撃してきて、身持ちを崩してもいつかはと、思っていたそうだ。
「事情は了解よ。連絡手段にこれを使って」
そう言ったアルスレーテが渡したのはトランシーバー。
初めて見る機械に戸惑う自警団の面々にアルスレーテがレクチャーを始めだす。
「時間勿体ないから、先行っててもいいわよ」
アルスレーテが木綿花とハンスに言えば、二人は頷く。
自警団へのレクチャーの間に二人は現場へと向かう。
「……なんともまぁ……」
現場に着いた木綿花とハンスはどちらともなく呟いた。
問屋のはす向かいの横道に顔を出して店を見つめている盗賊の姿がすぐに見つける。
見張りは二手に分かれており、木綿花は片方はハンスに任せることにした。
大きく後ろへ回り込んだ木綿花はジェットブーツで盗賊達が隠れている建物の屋根に飛び移り、背後を取る。
ずっと見ていては疲れるのか、見張りの賊はそっと路地の中に身を隠す。
木綿花はそれを逃さずにジェットブーツの噴射を使って降りる。
「な……」
気配に気づいた賊が木綿花に叫ぼうとするが、その声は空しく閉ざされた。
一方、問屋より堂々と入った空達は老人に書いてもらった紹介状を見て、即座に店へと上げてもらうことに成功した。
店主とその奥さんがすぐに出てきてくれて、ハンターを労ってくれる。
街道沿いで賊が暴れていた時にハンターが対応してくれた事を知っており、来てくれたことを喜んでくれていた。
「とりあえず、今は仲間が見張り番を捕まえに行っているわ。それまで警備させてほしいの」
「宜しくお願いします」
空の提案に店主夫婦は喜んで頭を下げた。
「通信が入っているようだね」
トランシーバーのノイズに気づいたアキノが言えば、空が応対する。
通信の相手は木綿花であり、見張り番を一人捕まえてきたと言ってきた。
捕まえた賊は自警団の寄合場に引き込むとのこと。
少し時間を置き、賊の見張り交代役が塒がある山より降りてきた。
決まった場所へ行けば仲間がいるはずなのに、その場には仲間ではない奴が待ち構えている。
金の髪に着流しを着た大男は長い剣の柄に手をかけて構えている。
いつでも自分達を斬るかのように。
瞬間動き出した着流しの男……ハンスは一気に間合いを詰めて賊の懐に走りこむと、小さく呻いてその場に崩れ落ちた。
ハンスは賊を連れて行こうとすると、後ろに控えていた自警団が手伝ってくれた。
見張りの賊が捕まった旨はすぐに問屋で警護をする潜入班へ伝えられる。
現時点でまだ賊の本体には気づかれていなく、自警団の面々が今も賊達が様子を見に来るかもしれない賊を見張っているという。
塒の詳しい場所はまだ教えて貰っていないそうだ。
「ちょっと、行ってくるよ」
アキノが立ち上がり、自警団の寄り合い所へと向かう。
自警団の寄合所は木綿問屋の勝手口を出てすぐのところ。中に入ると、縄で捕らえられている賊と対峙していたアルスレーテがアキノに気づく。
「お疲れさま」
「口を割らないと聞いたから、加勢に来た」
「話すことなんかねぇよっ」
舌打ちする賊にアキノは「威勢がいい」と感想を告げた。
「木綿問屋を狙う理由は、この辺りで一番儲かっているからか? 多少奪っても大丈夫と思ったからか」
アキノが言えば、賊は目を見張ったり、挙動不審になっている。
「そろそろ、木綿の糸やら製品が街の外に出荷される時期。それを狙って売ろうとしているとか」
木綿問屋での会話をそのまま告げたアキノに賊達は言い当てられてパニックになっていた。
「なんでわかるんだ!」
「お、お前達の狙いは何だ!」
「あんた達の捕縛じゃない」
「なんて奴らだ!」
ズバリと返すアルスレーテに賊達が叫ぶ。
「そもそも、そちらが悪さをしたからでは? そういえば、街道や山に随分慣れておりましたね。山の上に拠点があるのでしょうか?」
「当たり前だろ!」
「俺達は崖上の小屋に住んでるんだ、あんな道目を瞑ってもあるけ……」
「言うなよ!」
言い返す木綿花に賊達が思った以上に喋ってくれるので自警団の人間にも場所を把握できた。
「案内できそう?」
アルスレーテが尋ねると、自警団の青年は大丈夫と返してくれた。
問屋潜入組にも声をかけて合流する。
現在も賊の見張り組を探しに来る気配はないようだった。
「気づかれない内にこちらから出向きましょう。幸い、街道に出ればほぼ一本道だし」
呑気なものだと空は嘆息しつつ、次の行動を提案する。他のメンバーも同意していたので、ルイトガルトは自警団に案内を頼む。
街中に散って賊の動きを確認してもらっている自警団の面々からも見張り交代役が来ただけで他の賊の姿はなかったようだ。
皆で山へと向かっていくと、そろそろ夕暮れ時に差し掛かるころだ。
「紅葉狩りを楽しむ時間はありませんね。元は仕事で来ましたが」
ハンスが木々を見上げる。
道案内を頼んだ自警団のメンバーは猟師の仕事をしているので山歩きは得意だという。ただ、最近は賊が山の中でうろついている為、迂闊には入れないそうだ。
そうしているうちに盗賊団の塒が見えてきた。
足音を抑えながら歩いていても音は響く。
大きめの小屋の中から物音が聞こえてくると、男が一人出てきた。
前を歩いていた自警団の青年に見覚えがあるのか「何しにきた!」と叫ぶ。仲間の動揺に即座に反応して賊達が小屋の前に出てくる。
「女ばっかじゃねぇか」
「なんだよ、相手でもしてくれるのか?」
道案内の青年とハンス以外は女性ばかりであり、見た目も可愛いから美人までと高く売れそうだと賊達が笑っている。
「そうね、同業者がいそうだったら手合わせ願いたいけどいいかしら?」
手加減できないけどと、アルスレーテが猫のようにしなやかな歩みで前に出る。ゆっくりと鉄扇を開き、笑む口元を隠す。
「泣きっ面を見せてもやめねぇぞ」
アルスレーテの装備に気づいた賊が彼女を見据えつつ横に歩き、邪魔が入らないように動き出す。
臨戦態勢が作られていく中、覚醒したルイトガルトの髪の変化、漆黒の化粧を施した様子を見て、刀を持った男が彼女の方へと向かう。
ルイトガルトもまた、紫の宝石が埋め込まれた柄に手をかける。
二人の睨み合いが始まりゆっくりと動き出す。
賊の覚醒者達が動き出し、周囲が少しずつ戦闘の場となっていくことを肌で感じ取った非覚醒者の賊がまず駆け出した方向は、自警団の青年だ。人質に取ろうとしているのだろう。
「人の物を奪うのなら、自身が奪われることも覚悟なさいな」
お見通しだといわんばかりに空が前に出る。
手にしていた呪画を広げて美しい水墨画が姿を現す。自然風景の絵だったはずが、賊の視界には季節外れの桜が舞い始める。
桜吹雪の幻影が賊の動きを封じ、賊は腕を振っては払い、桜から逃げようとしている。桜に意識を向けすぎた為、賊は背後の気配に気づくことが出来ずに腹部の衝撃に耐え切れずにそのまま倒れこむ。
錫杖の先を近くにいた賊へアキノが攻撃を入れて倒していく。
「自分の命も奪われることも含めて、ね」
小首を傾げた空は目を細め、賊へと視線を向ける。
奪うものは彼らだけではないことを知らしめるように。
次々倒れる仲間を見て、捕まりたくない一心で非覚醒者の賊が逃げようとする。
「逃しません。聞きたい事もありますので」
ジェットブーツで大きく跳躍し、逃げ出す賊の前に回り込んだのは木綿花だ。
「くそ!」
脇差を抜いた賊は破れかぶれに木綿花へと刃を向ける。
間合いに理があったのは木綿花だ。彼女はウィップ「ヤフタレク」を手にしており、素早くウィップで脇差を持つ賊の腕を叩いて刀を手放せた。
仲間がハンターとやりあっている間に逃げようとする賊達が仲間を見捨てて横へと走り出す。
その中へ飛び込んできたのはハンスだ。
重心を低くして納刀状態から一気に刀を抜き、軸足で身体を回転させて剣筋を操る。円舞のようにくるりと回り、複数の賊を斬り伏せた。
足を中心に斬りつけており、きちんと手当をすれば問題はないとハンスは判断する。
一方、アルスレーテは格闘士と組んで戦っていた。
アルスレーテは鉄扇を使って賊の攻撃をいなしている。
彼女の銀の髪の先が中空に揺れると、賊はアルスレーテを見失った。
本能で危険を察知するがもう遅く、賊は足払いを受け、そのまま腕をがっしり掴まれ、倒される流れに逆らわないように投げられる。
投げられた先に筋を傷められるように腕を捩じられ、地に身を悶えた。
ルイトガルトが武器を収めた状態でマテリアルを練り闘狩人の賊と対峙していると、向こうよりざわめく声が聞こえる。
「やられやがったか」
女相手にと歯噛みする賊が吐き捨てた。
相手の集中が欠き始めたことに気づいたルイトガルトは居合を使って一気に剣を鞘より引き抜く。
黒い刀身のバスターソードが賊の腕を斬りつける。
うめき声を上げて一歩後退した賊は目の前に突きつけられた切っ先を睨みつけた。
「余罪の追及もある」
血のように赤い瞳に見据えられ、賊は戦意を喪失してしまう。
覚醒者の手下すら倒されていく姿をみていた頭だろう男は微動だにしていなかった。
「頭……!」
手下の一人が頭と叫んだ男に助けを求める。
「どけ!」
頭が手下を押しのけて木綿花の方へと向かっていく。
男は抜身の刀を手にしており、刀を振り上げても木綿花は微動だにしなかった。戦意を失ったと思った頭が刀を振り下ろすが、その一撃は木綿花の白い肌を傷つけることはなかった。
木綿花と刀の間に光の壁が彼女を守り、衝撃で壁が砕けキラキラと輝く。
更に追撃をする頭の刃を受けたのはアキノの機導剣だ。
「腰に下げているのは宝物かねぇ」
頭は武器として使用している刀の他に刀を下げていた。
「本来受け取る者が死を迎えても、あなたが持つものじゃないわ」
静かに告げたのは空だ。
先ほど刀を受け止めたアキノは一度離れて頭と間合いを置いた。頭はアキノへ標的を変えて進みだすが、地面がぬかるんで上手く進めない。
「返してもらいましょう」
ハンスが刀を持った腕を斬り付けると、頭はその場に膝をつくも奪った刀を離す気はなく、もう片方の手で握ろうとする。
「返してもらうわ。隊長が知ったら、悲しむもの」
静かに空が言えば、頭はハンターの手によって捕縛された。
盗まれた刀は売り飛ばされることなく無事に戻った。
刀匠である白賀時光もハンターに感謝を告げ、嬉しそうだ。
「その刀はどうするのですか?」
ハンスが尋ねると、時光は刀へ視線を落とす。
「できる事なら、藤五郎の骨が眠る場所へ行かせてやりたいです」
どうやら、時光は藤五郎の弟子である初名に任せたい模様。
「私に心当たりがあります。お預かりします」
初名が思い浮かんでいる人物に空とルイトガルトは心当たりがあり、二人は顔を見合わせる。
「拙い事件だったねぇ」
ため息まじりにほうじ茶を啜るのはアキノ。
「まぁ、改心するかは別問題だけど」
肩を竦めるアルスレーテは芋きんつばを頬張る。
賊を捕らえた後、余罪追及の確認をしていたが、結構そこそこあったが、町の人々に関するものは免除してやってほしいと言ってきたそうだ。
関係ない旅人への加害は免れないので、そう大変ではないようだった。
「改心するのを待っていたんですね……それにしても、赤い羽根の者は一体……」
むぅ……と考え込む木綿花であったが、「でも、今回の件に関わってなくてよかっだなぁ」と三吉が返す。
どうやら、東方の者ではないようで、二年前からこちらへ流れて来ていたらしい。
炎のような赤い鳥の羽根飾りも最近付けたものだという。
とはいえ、暫くはこの辺りも静かにはなるだろう。
ハンターが戻る頃、初名が深々と頭を下げた。
「皆さま、本当にありがとうございました」
「私も、仮だけど隊士だしね。また何かあったら呼んで」
顔を上げた初名に空が微笑む。
ハンターが帰った後、初名は今回の事を手紙にて即疾隊へと知らせた。
刀の事はあえて書かなかった。
きっと、藤五郎の『孫息子』は驚き、納得するだろうと思い、詩天へ帰っていく。
ハンターの到着を知った初名と三吉は一礼と共に迎える。
「手を変え、品を変え……」
呆れた和音・空(ka6228)は頭を俯かせると、絹の髪がさらさら前に垂れていく。
「……羨ま……いえ、許せないわ」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)が色々と本音を漏らしているが、どの方向でも許せない様子だ。
「確かに此方は人が好く眩し過ぎ、彼方はさもしく唾棄すべきだ」
目を眇めてそう呟くのはルイトガルト・レーデル(ka6356)。
「捕縛だな。了解した」
ルイトガルトの気遣いに初名はふふと微笑む。
「咎を越えた向こう側は彼岸かもしれませんね」
「悪い冗談をどこで覚えた」
叱るような言い方をしたが、軽口も言えるほど初名は元気になった事にルイトガルトは内心で安堵した。
「……二度も盗まれるほどの刀とは……」
真剣な表情で呟くのは木綿花(ka6927)だ。
前の盗難時は歪虚も関わっていたという話の為、愛らしい顔が厳しい表情へと変えてしまうのは無理もない。
「師匠はすっごい人ですからね」
えっへんと無邪気に自慢する三吉に龍宮 アキノ(ka6831)がくつりと笑う。
「しかし、木綿問屋を狙われる理由はなんだろうな……」
腕を組んで思案するアキノは部屋の天井を見つめる。
「あれらが押し込み強盗しようとした時に取り押さえて本拠地を吐かせるということでよろしいですか?」
ハンス・ラインフェルト(ka6750)が確認するように仲間達に告げる。
「詳しい情報は必要よね」
息を大きく吐いた空は気持ちを切り替えるように声を出す。
まずは、初名に声をかけてきた老人に木綿問屋へ潜入できるように一筆添えてもらう事にし、それから周辺警戒につくハンターから動き出す。
自警団の寄合所に行くと、木綿花の顔に数名が反応する。街道沿いで横行していた賊をハンターが捕縛した時に木綿花の顔を見かけた者がいたようだった。
「盗賊団の事について教えてほしいことがあります」
木綿花が口火を切ると、自警団は協力の様子を見せている。
「まずは見張り場所と時間もわかれば」
「それならすぐわかる所だよ」
何とかの一つ覚え宜しく盗賊達は必ず同じ場所につくという。細い裏路地に隠れており、お世辞にも上手くはないと揃える。
特別な訓練を受けたわけではない自警団達が言うのだからそうなのだろうとアルスレーテとハンスも思う。
「あいつらも、元は同じ町で住んでいた奴らで……」
ぽつりと呟く青年は賊の数人は自警団に入っていたという。自警団と名はあるが、皆はどこかに働いていたりしている住民だった。
番屋の手伝いという事で有志で形成していたとのこと。
歪虚が襲撃してきて、身持ちを崩してもいつかはと、思っていたそうだ。
「事情は了解よ。連絡手段にこれを使って」
そう言ったアルスレーテが渡したのはトランシーバー。
初めて見る機械に戸惑う自警団の面々にアルスレーテがレクチャーを始めだす。
「時間勿体ないから、先行っててもいいわよ」
アルスレーテが木綿花とハンスに言えば、二人は頷く。
自警団へのレクチャーの間に二人は現場へと向かう。
「……なんともまぁ……」
現場に着いた木綿花とハンスはどちらともなく呟いた。
問屋のはす向かいの横道に顔を出して店を見つめている盗賊の姿がすぐに見つける。
見張りは二手に分かれており、木綿花は片方はハンスに任せることにした。
大きく後ろへ回り込んだ木綿花はジェットブーツで盗賊達が隠れている建物の屋根に飛び移り、背後を取る。
ずっと見ていては疲れるのか、見張りの賊はそっと路地の中に身を隠す。
木綿花はそれを逃さずにジェットブーツの噴射を使って降りる。
「な……」
気配に気づいた賊が木綿花に叫ぼうとするが、その声は空しく閉ざされた。
一方、問屋より堂々と入った空達は老人に書いてもらった紹介状を見て、即座に店へと上げてもらうことに成功した。
店主とその奥さんがすぐに出てきてくれて、ハンターを労ってくれる。
街道沿いで賊が暴れていた時にハンターが対応してくれた事を知っており、来てくれたことを喜んでくれていた。
「とりあえず、今は仲間が見張り番を捕まえに行っているわ。それまで警備させてほしいの」
「宜しくお願いします」
空の提案に店主夫婦は喜んで頭を下げた。
「通信が入っているようだね」
トランシーバーのノイズに気づいたアキノが言えば、空が応対する。
通信の相手は木綿花であり、見張り番を一人捕まえてきたと言ってきた。
捕まえた賊は自警団の寄合場に引き込むとのこと。
少し時間を置き、賊の見張り交代役が塒がある山より降りてきた。
決まった場所へ行けば仲間がいるはずなのに、その場には仲間ではない奴が待ち構えている。
金の髪に着流しを着た大男は長い剣の柄に手をかけて構えている。
いつでも自分達を斬るかのように。
瞬間動き出した着流しの男……ハンスは一気に間合いを詰めて賊の懐に走りこむと、小さく呻いてその場に崩れ落ちた。
ハンスは賊を連れて行こうとすると、後ろに控えていた自警団が手伝ってくれた。
見張りの賊が捕まった旨はすぐに問屋で警護をする潜入班へ伝えられる。
現時点でまだ賊の本体には気づかれていなく、自警団の面々が今も賊達が様子を見に来るかもしれない賊を見張っているという。
塒の詳しい場所はまだ教えて貰っていないそうだ。
「ちょっと、行ってくるよ」
アキノが立ち上がり、自警団の寄り合い所へと向かう。
自警団の寄合所は木綿問屋の勝手口を出てすぐのところ。中に入ると、縄で捕らえられている賊と対峙していたアルスレーテがアキノに気づく。
「お疲れさま」
「口を割らないと聞いたから、加勢に来た」
「話すことなんかねぇよっ」
舌打ちする賊にアキノは「威勢がいい」と感想を告げた。
「木綿問屋を狙う理由は、この辺りで一番儲かっているからか? 多少奪っても大丈夫と思ったからか」
アキノが言えば、賊は目を見張ったり、挙動不審になっている。
「そろそろ、木綿の糸やら製品が街の外に出荷される時期。それを狙って売ろうとしているとか」
木綿問屋での会話をそのまま告げたアキノに賊達は言い当てられてパニックになっていた。
「なんでわかるんだ!」
「お、お前達の狙いは何だ!」
「あんた達の捕縛じゃない」
「なんて奴らだ!」
ズバリと返すアルスレーテに賊達が叫ぶ。
「そもそも、そちらが悪さをしたからでは? そういえば、街道や山に随分慣れておりましたね。山の上に拠点があるのでしょうか?」
「当たり前だろ!」
「俺達は崖上の小屋に住んでるんだ、あんな道目を瞑ってもあるけ……」
「言うなよ!」
言い返す木綿花に賊達が思った以上に喋ってくれるので自警団の人間にも場所を把握できた。
「案内できそう?」
アルスレーテが尋ねると、自警団の青年は大丈夫と返してくれた。
問屋潜入組にも声をかけて合流する。
現在も賊の見張り組を探しに来る気配はないようだった。
「気づかれない内にこちらから出向きましょう。幸い、街道に出ればほぼ一本道だし」
呑気なものだと空は嘆息しつつ、次の行動を提案する。他のメンバーも同意していたので、ルイトガルトは自警団に案内を頼む。
街中に散って賊の動きを確認してもらっている自警団の面々からも見張り交代役が来ただけで他の賊の姿はなかったようだ。
皆で山へと向かっていくと、そろそろ夕暮れ時に差し掛かるころだ。
「紅葉狩りを楽しむ時間はありませんね。元は仕事で来ましたが」
ハンスが木々を見上げる。
道案内を頼んだ自警団のメンバーは猟師の仕事をしているので山歩きは得意だという。ただ、最近は賊が山の中でうろついている為、迂闊には入れないそうだ。
そうしているうちに盗賊団の塒が見えてきた。
足音を抑えながら歩いていても音は響く。
大きめの小屋の中から物音が聞こえてくると、男が一人出てきた。
前を歩いていた自警団の青年に見覚えがあるのか「何しにきた!」と叫ぶ。仲間の動揺に即座に反応して賊達が小屋の前に出てくる。
「女ばっかじゃねぇか」
「なんだよ、相手でもしてくれるのか?」
道案内の青年とハンス以外は女性ばかりであり、見た目も可愛いから美人までと高く売れそうだと賊達が笑っている。
「そうね、同業者がいそうだったら手合わせ願いたいけどいいかしら?」
手加減できないけどと、アルスレーテが猫のようにしなやかな歩みで前に出る。ゆっくりと鉄扇を開き、笑む口元を隠す。
「泣きっ面を見せてもやめねぇぞ」
アルスレーテの装備に気づいた賊が彼女を見据えつつ横に歩き、邪魔が入らないように動き出す。
臨戦態勢が作られていく中、覚醒したルイトガルトの髪の変化、漆黒の化粧を施した様子を見て、刀を持った男が彼女の方へと向かう。
ルイトガルトもまた、紫の宝石が埋め込まれた柄に手をかける。
二人の睨み合いが始まりゆっくりと動き出す。
賊の覚醒者達が動き出し、周囲が少しずつ戦闘の場となっていくことを肌で感じ取った非覚醒者の賊がまず駆け出した方向は、自警団の青年だ。人質に取ろうとしているのだろう。
「人の物を奪うのなら、自身が奪われることも覚悟なさいな」
お見通しだといわんばかりに空が前に出る。
手にしていた呪画を広げて美しい水墨画が姿を現す。自然風景の絵だったはずが、賊の視界には季節外れの桜が舞い始める。
桜吹雪の幻影が賊の動きを封じ、賊は腕を振っては払い、桜から逃げようとしている。桜に意識を向けすぎた為、賊は背後の気配に気づくことが出来ずに腹部の衝撃に耐え切れずにそのまま倒れこむ。
錫杖の先を近くにいた賊へアキノが攻撃を入れて倒していく。
「自分の命も奪われることも含めて、ね」
小首を傾げた空は目を細め、賊へと視線を向ける。
奪うものは彼らだけではないことを知らしめるように。
次々倒れる仲間を見て、捕まりたくない一心で非覚醒者の賊が逃げようとする。
「逃しません。聞きたい事もありますので」
ジェットブーツで大きく跳躍し、逃げ出す賊の前に回り込んだのは木綿花だ。
「くそ!」
脇差を抜いた賊は破れかぶれに木綿花へと刃を向ける。
間合いに理があったのは木綿花だ。彼女はウィップ「ヤフタレク」を手にしており、素早くウィップで脇差を持つ賊の腕を叩いて刀を手放せた。
仲間がハンターとやりあっている間に逃げようとする賊達が仲間を見捨てて横へと走り出す。
その中へ飛び込んできたのはハンスだ。
重心を低くして納刀状態から一気に刀を抜き、軸足で身体を回転させて剣筋を操る。円舞のようにくるりと回り、複数の賊を斬り伏せた。
足を中心に斬りつけており、きちんと手当をすれば問題はないとハンスは判断する。
一方、アルスレーテは格闘士と組んで戦っていた。
アルスレーテは鉄扇を使って賊の攻撃をいなしている。
彼女の銀の髪の先が中空に揺れると、賊はアルスレーテを見失った。
本能で危険を察知するがもう遅く、賊は足払いを受け、そのまま腕をがっしり掴まれ、倒される流れに逆らわないように投げられる。
投げられた先に筋を傷められるように腕を捩じられ、地に身を悶えた。
ルイトガルトが武器を収めた状態でマテリアルを練り闘狩人の賊と対峙していると、向こうよりざわめく声が聞こえる。
「やられやがったか」
女相手にと歯噛みする賊が吐き捨てた。
相手の集中が欠き始めたことに気づいたルイトガルトは居合を使って一気に剣を鞘より引き抜く。
黒い刀身のバスターソードが賊の腕を斬りつける。
うめき声を上げて一歩後退した賊は目の前に突きつけられた切っ先を睨みつけた。
「余罪の追及もある」
血のように赤い瞳に見据えられ、賊は戦意を喪失してしまう。
覚醒者の手下すら倒されていく姿をみていた頭だろう男は微動だにしていなかった。
「頭……!」
手下の一人が頭と叫んだ男に助けを求める。
「どけ!」
頭が手下を押しのけて木綿花の方へと向かっていく。
男は抜身の刀を手にしており、刀を振り上げても木綿花は微動だにしなかった。戦意を失ったと思った頭が刀を振り下ろすが、その一撃は木綿花の白い肌を傷つけることはなかった。
木綿花と刀の間に光の壁が彼女を守り、衝撃で壁が砕けキラキラと輝く。
更に追撃をする頭の刃を受けたのはアキノの機導剣だ。
「腰に下げているのは宝物かねぇ」
頭は武器として使用している刀の他に刀を下げていた。
「本来受け取る者が死を迎えても、あなたが持つものじゃないわ」
静かに告げたのは空だ。
先ほど刀を受け止めたアキノは一度離れて頭と間合いを置いた。頭はアキノへ標的を変えて進みだすが、地面がぬかるんで上手く進めない。
「返してもらいましょう」
ハンスが刀を持った腕を斬り付けると、頭はその場に膝をつくも奪った刀を離す気はなく、もう片方の手で握ろうとする。
「返してもらうわ。隊長が知ったら、悲しむもの」
静かに空が言えば、頭はハンターの手によって捕縛された。
盗まれた刀は売り飛ばされることなく無事に戻った。
刀匠である白賀時光もハンターに感謝を告げ、嬉しそうだ。
「その刀はどうするのですか?」
ハンスが尋ねると、時光は刀へ視線を落とす。
「できる事なら、藤五郎の骨が眠る場所へ行かせてやりたいです」
どうやら、時光は藤五郎の弟子である初名に任せたい模様。
「私に心当たりがあります。お預かりします」
初名が思い浮かんでいる人物に空とルイトガルトは心当たりがあり、二人は顔を見合わせる。
「拙い事件だったねぇ」
ため息まじりにほうじ茶を啜るのはアキノ。
「まぁ、改心するかは別問題だけど」
肩を竦めるアルスレーテは芋きんつばを頬張る。
賊を捕らえた後、余罪追及の確認をしていたが、結構そこそこあったが、町の人々に関するものは免除してやってほしいと言ってきたそうだ。
関係ない旅人への加害は免れないので、そう大変ではないようだった。
「改心するのを待っていたんですね……それにしても、赤い羽根の者は一体……」
むぅ……と考え込む木綿花であったが、「でも、今回の件に関わってなくてよかっだなぁ」と三吉が返す。
どうやら、東方の者ではないようで、二年前からこちらへ流れて来ていたらしい。
炎のような赤い鳥の羽根飾りも最近付けたものだという。
とはいえ、暫くはこの辺りも静かにはなるだろう。
ハンターが戻る頃、初名が深々と頭を下げた。
「皆さま、本当にありがとうございました」
「私も、仮だけど隊士だしね。また何かあったら呼んで」
顔を上げた初名に空が微笑む。
ハンターが帰った後、初名は今回の事を手紙にて即疾隊へと知らせた。
刀の事はあえて書かなかった。
きっと、藤五郎の『孫息子』は驚き、納得するだろうと思い、詩天へ帰っていく。
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和音・空(ka6228)
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マテリアルリンク参加者一覧
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/11/04 12:42:19 |
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相談卓 アルスレーテ・フュラー(ka6148) エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2017/11/06 22:27:21 |