おいでませ、ヤンデレくん!

マスター:水貴透子

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2014/11/24 19:00
完成日
2014/12/02 06:26

みんなの思い出

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オープニング


愛という感情は、中々に理解しがたいものだと思う。
愛しているからこそ、僕を見て欲しい。
愛しているからこそ、他の奴を見て欲しくない。
愛しているからこそ、他の奴と喋って欲しくない。
愛しているからこそ、僕の側を離れないで欲しい。
けれど、それがどれも適わなかったら……?
……僕を見てもらうために、コロしちゃうしかないでしょ?
僕がこんなに愛しているのに、相手が僕を愛さないなんてありえない。
コロしたいほど愛す、これこそ究極の愛だと思わない?

※※※

「僕、どうしてこんなに雑魔が憎いのか考えたんだよね」

目の下には隈、明らかに陰湿な雰囲気を持つ少年がニッコリと不気味に微笑みながら呟いた。

「愛情と憎悪、これって表裏一体だと思うんだ」
「つまり、僕が雑魔を憎めば憎むほど、それに比例して愛してるってコトだよね?」
「愛してるからこそ、僕の思い通りにならない雑魔が憎いんだ、だからコロしちゃうんだよ」

物凄い自分中心な考えを披露する少年を見て、一緒に行動するハンター達はやや引き気味である。

「今回は人型の雑魔なんだって。あぁ、どんな姿なんだろう?」
「どうやって僕は愛してあげればいいのかな? まずどこにも行けないように足を千切って……」

少年は1人妄想の世界で悦に入っており、同行者達も(ある意味雑魔より危険かも)なんて思っているとか……。

「さぁ、行こうよ! 雑魔が僕達の愛を待ってるよ……!」

不安をまといながら、ハンター達は雑魔退治へと出発したのだった――……。

リプレイ本文

●奴の名はヤン・デルヨ(仮)

「うふ、うふふふ……どんな雑魔が待ってるのかなぁ? 僕の愛を受け止めてくれるかなぁ?」
 ヤン・デルヨが不気味に微笑みながら奇妙な生物のぬいぐるみを抱きしめて呟いている。
「愛から転じた憎しみと、ただの憎しみは別の種類だよ。だから憎しみと愛が両立しちゃう事もあるんじゃん……」
 ヤンの発言を聞きながら、超級まりお(ka0824)は呆れたようにため息混じりに呟いた。
「その人の事しか考えられないという点では愛も憎悪も同じよね、ベクトルの方向が違うだけで本質的に同質の物というのは同意だわ」
 アリス・シンドローム(ka0982)もヤンに負けない不気味な笑みを浮かべながら答える。
「自分も一人の『男』としてその手の理解はありますが……デルヨ君のような事例を目の当たりにすると尚実感しましたな」
 米本 剛(ka0320)が苦笑気味に呟いている。理解はあっても、ヤンのように実行しないのは米本が良識ある大人だからなのだろう。
 ただの雑魔退治と米本は考えているが、ヤンの今後のために多少でも矯正出来れば、と思っているけれど、ヤンの様子を見てそれも難しいと遠い目をしている。
「俺は如何こう言うほどの興味はないな。強いて言うなら、単純に憐れ、だろうか。愛情と憎悪が表裏一体という事には方向性は異なれど、確かに酷似した情だと思う。しかし、それは『酷似』であり別個である事を弁えねばならないと思うのだがな」
 弥勒 明影(ka0189)がため息混じりに呟く。
「おまえ、家族を、友を、恋人を愛するように憎めるか? それが出来るならその信念実に見事なりと称賛くらいはしてやるが」
 弥勒の言葉を聞き「……カゾク、トモ、コイビト? なんだい、それ」とヤンはかくりと首を傾げながら言葉を返してくる。
「いやいや、デルヨ君にも家族や友達はいるでしょう」
「……僕の記憶違いじゃなければ、そういう類に入る人はいないケド。ちなみに僕の愛は雑魔だけじゃなくて人にも向けられるよ? むしろ反応のない雑魔よりも人を愛した方が反応も返ってくるし、僕も楽しいんだよね」
 本人は満面の笑み、しかし他人から見れば恐怖の笑み以外の何者でもない。
「ふむふむ、つまり、このヤン・デルヨって本気で病んでる人ってことだね。まぁ、ボクには一切関係ない話だし、興味もないね。ボクはお仕事をさっさと終わらせて帰る、それだけだし」
 超級は言葉通り本当に興味がないらしく、ヤンから視線を逸らす。
「興味ないって点には同意かな。後ろでハァハァ言ってるけど無視無視。早く終わらせて晩御飯の山菜とか取りに行かなきゃいけないんだから」
 ミノア・エデン(ka1540)はヤンを無視しながら呟く。
「……雑魔を愛するってマジかよ……わ、悪いけどボクはついていけそうにないぜ……」
 ルリ・エンフィールド(ka1680)はドン引きしながら、ヤンから距離を取った。
(ヤンデレって聞くと姉貴を思い出すんだけど、今は頭から振り払っておこう……突発的に何かやらかしちゃったりするんだろうか、仲間が見てるみたいだけど……大丈夫かな?)
 ジオラ・L・スパーダ(ka2635)はヤンを見ながら小さなため息を吐く。
 恐らく出会って早々にここまでため息を吐かれる人間もいないと思う。
 それだけ、ヤンから溢れ出る怪しげな雰囲気が同行するハンターの気を滅入らせているのだろう。
(何の縁か奇矯に満ちた人物と出会う機会に恵まれているね、だがヤンデレとは如何なる人物か、未だ私の知らぬ事は多いらしい、せっかくの機会だ、今日はじっくり観察させてもらうとしよう)
 ヴィジェア=ダンディルディエン(ka3316)はヤンを見ながら、心の中で呟き、ヤンという不安定要素を抱えながらの雑魔退治に出発したのだった――……。

●雑魔退治に向けて

 今回は目的地が開けた場所である事から、特に班分けをせずに固まって動く作戦を取っていた。
「雑魔はまだかな? あぁ、今回の雑魔はどんな姿なんだろう? ちなみに僕の知り合いにツン・デレダって奴もいるんだけど、あいつも行きたがってたんだよね、けど雑魔と愛を語らうのは僕の役目だし、アイツは閉じ込めて来たんだけど。THE★KANKINってやつだね!」
 何気に怖いことを言いながら、ヤンはハァハァと息遣いを荒くしている。
「キミ達は何度も雑魔を見てきたんだろう? やっぱり特別な感情を抱くのかな?」
「特にないな」
 ヤンの質問に答えたのは、弥勒だった。
「排除する必要があるなら淡々と、そして粛々に。人であろうと魔であろうと別もない――……それに、人など現世で飽きるほど殺している、軍人として、そして警察としてな」
 弥勒の言葉に「……つまり、キミも僕と同類って事なんだね!」と明後日の方向に意味を捉え間違えて、弥勒は思わず握り拳を作った。
「ま、まぁまぁ……デルヨ君は愛ゆえに飛びついたり、飛び出さないようにして下さいよ? 警告を聞かないようなら……自分とて容赦は出来ませんから」
 米本は思いきり黒い笑顔でヤンに言葉を投げかけるが、ヤンの中身も真っ黒なので米本の真っ黒笑顔が本人に届いているかどうかは定かではない。
「敵は1体なのかな、それとも複数? 人型って資料だけは来てるけど数は書いてないなー」
 超級は出発時に渡された資料を読みながらため息混じりに呟く。
「まぁ、どっちも想定しておくに越したことはないよねー」
 超級が呟いた時、剣を持った雑魔がふらふらとハンター達の前に現れた。
「ふふ、現れたわね……! 出し惜しみは無しよ、さぁ、愉しい愉しい殺し愛と逝きましょう?」
 アリスは楽しそうに呟き、愛用の『ウィップ カラミティバイパー』を取り出し、他のハンター達もそれぞれ戦闘準備を行った。

●戦闘開始、眼前に雑魔、背後に獅子身中の虫

「さぁ、刻みましょうわたしの傷を、刻まれましょうあなたの傷を……!」
 アリスは『闘心昂揚』を使用した後に『クラッシュブロウ』で雑魔を攻撃する。
「あはははは! 悪くない、悪くないわ……! でもね、そんなんじゃ全然足りない、足りないわ! だから、もっと深く殺し愛ましょう?」
 アリスの攻撃を受け、彼女の攻撃が終わるとミノアが『クレイモア』を大きく振り上げながら攻撃を仕掛けた。
 ちなみにミノアはヤンにぶつけたいイライラを雑魔に向けている。
 雑魔としては『何で俺!?』と言いたい気分だろうが、まぁ、そこは雑魔なので意思疎通は出来ないので八つ当たりOKである。
「ヤンは初めての依頼だったよな? 見てな、命の取り合いになったら愛してるだあ、憎いだあ、言ってる暇はないぜ! あるのは殺るか殺られるかだけなんだからな!」
 ルリは『ツヴァイハンダー』を構え、雑魔に対して横薙ぎの攻撃を仕掛ける。
「ヴィジェア! ヤンの事は任せたぜ! 魔術師が前に出て来たらたまったもんじゃねぇからな、悪いけど雑魔とイチャイチャするのは前衛の仕事だぜ!」
「そうね、戦いのダンスを踊るのは前衛が最適だもの」
 ジオラは『黒漆太刀』を雑魔に向けて振りおろしながら呟く。
「ああああああっ、僕の愛する人が……!」
 ハンターが雑魔に攻撃を仕掛けるたびに、ヴィジェアの元にいるヤンが奇声をあげている。
「ヤン・デルヨ君、あまり前に出ると危ないよ。後衛と言えど、剣を投げつけられたりの後衛攻撃も考えられるのだからね」
 ヴィジェアがヤンに言葉を投げかけると「だって、僕だって愛し合いたいのに!」とハンカチをギリギリしながら叫んでいる。
「僕はこの日を夢見ていたんだ、雑魔から足を奪い、僕から離れられなくなったところで、ボク以外を見ないようにトドメを刺す……あぁ、せっかくそれをこの手に感じられると思ったのに」
(ふむ、どうやらヤン・デルヨ君は自分の世界に浸る事の方が多いようだ。だが突発的に前に出ないとも言い切れないから、最後まで目は離せないが)
 ヤンの恍惚とする表情を見ながら、ヴィジェアは心の中で呟く。
「後衛から何ともみっともない声が聞こえるものか、あのような声を聞きながらの雑魔退治を行うことなど、中々ない経験だろうな」
 弥勒はため息を吐きながら『日本刀 景幸』を振り上げた。
 雑魔自体は大した強さもないらしく、ハンター達は雑魔を囲むようにして攻撃をしている。
「これでも『難攻不落』を目指していましてね……経験を積ませて頂きますよ!」
 米本は『ヴィクテムシールド』を構え、雑魔の攻撃を受け止めている。
 だが、相手が剣を持っているせいか、予測不能な場所からの攻撃が来たりなどしてすべてを受け止めることは出来なかった。
「くっ、それならば……!」
 米本は『シールドバッシュ』を使用して、雑魔の体勢を崩す。
「さっさと倒れてくれる? 僕、早く帰りたいんだよね」
 超級は『瞬脚』を使用した後『スローイング』も使用して『手裏剣 八握剣』で攻撃を仕掛ける。体勢を崩した所に攻撃を仕掛けたため、超級の攻撃はまともにヒットする。
「おじさま、まだまだダメね、それじゃダメだわ……その程度じゃわたしを満足なんてさせられない、こんなヤミじゃわたしを満たせない……もっと深い闇に包まれてから出直しなさいな」
 アリスは呟きながら何度も『ウィップ カラミティバイパー』で攻撃を仕掛けている。
 その姿はさしずめ女王様のようであり、妙な感情を湧き立たせる。
「あんたがいなければ、妙な奴を組むこともなかったんだよ……! 後ろでハァハァされる側の身にもなってよ、正直に言えば雑魔より後ろの方が怖いんだからね!」
 ミノアは『強打』を使用して雑魔に攻撃を繰り出しながら、心の中の鬱憤を吐きだす。
 ちなみに現時点でもヤンは自分の世界に入っており、ミノアの心からの叫びは彼に届いていない。
 あと、ヤンが妙な行動を取らなかった影の功労者はミノアである。
 彼女がヤンにとって邪魔な位置に立ち続けたおかげで、ヤンは攻撃を行う事も飛び出す事も出来なかったのだから。
「後ろから負のオーラをひしひしと感じるから、今日ほど戦いづらかった日はねえぜ……」
 ルリは引きつった笑みを浮かべながら呟く。
 ルリが言っているのはもちろんヤンの事なのだが、本人は気づいていない。むしろ自分がマイナス感情しか抱かれていない事すら気づいていないのだから。
「つまり、僕にとっての究極の愛は自らの手でコロすこと! そうすれば、相手は誰も見ないし、どこにもいかないからね!」
「……なるほど。最初に聞いた事をまた繰り返し説明してくれてありがとう。おかげでヤン・デルヨ君がどんな人間なのか凄く分かった、物凄く分かった、これ以上ないくらいにな」
 他のハンター達が戦闘を行っている間、ヴィジェアはずっとヤンの話を聞かされていた。
 同じ事を繰り返し説明する事に、多少のうんざりで、気を抜いてしまった所に雑魔からの遠距離攻撃を受けてしまうほどにヤンの話はヴィジェアを憔悴させていた。

●ヤンデレ対象者変更

「キミ達さ、僕の愛を邪魔するなんて酷いじゃないか……! 僕は、こんなにも雑魔に愛を伝えたかったのに……あんなけちょんけちょんの木端微塵じゃ、もう愛なんて囁けないよ!」
 ハンター達に退治された雑魔を指差しながら、ヤンは駄々っ子のように地団太を踏んでいる。
「死んでいても愛は囁けるのではないか? おまえの愛とはその程度の物か?」
 弥勒が呆れたように煙草をふかしながら答えると「キミは分かってない」とヤンがさめざめとした態度で失意体前屈をする。
「僕がコロしたかったの! 僕じゃない相手にコロされても、浮気と一緒だよ!」
「……いや、それは違うと思うが」
 いまいち意味の分からない例えに弥勒も苦笑気味に答える。
(やれやれ……『君』と『さん』の違いは大きいですなぁ……これで『さん』だったら……)
 そう考えて(いや……)と米本は頭を振りながら考えかけたことを否定する。
 例えヤンが女性であろうと、ちょっと関わりたくないヤンデレだ。
 逆に女性であれば、異性と仕事の話をしただけで浮気だと責め立てられ、友人も遠のく――という妙にリアルな未来を想像してしまったのだから。
「分かります、えぇ、分かりますわ……! この手でトドメを刺してこそ、愛なのです。ですが、今回の御仁は少々愛を語るに物足りなかったので、もっと深い闇を抱えた方がいいわね」
 アリスはニコニコと微笑みながら答える。まさにヤンデレ少女である。
「早く帰ろうよー、日が暮れたら山菜とか取れないんだってば」
 ミノアは食料のためか、それともヤンから離れたいためか、ため息を吐きながら呟く。
「……もし、この世のすべての『愛』があいつの言うような物だったら、ボクには縁がないな。いや、むしろああいう縁はいらないけど」
 ルリは悦に入っているヤンを見ながら、すすす、と一歩二歩三歩ほど下がった。
(今回は結構大人しくしていた方かしら、途中で飛び込みとかなかったし。ヴィーが上手くヤンを諌めていてくれたようね)
 ジオラは心の中で呟きながら、彼女にしては珍しく疲れた様子の表情を見て、結構な苦労があったのだろうと悟り、ほろりとしていた。
「決めた、僕はキミ達を愛すことにするよ! 僕の邪魔をしたんだから、僕の愛を受け取る義務がある、僕をキズモノにした責任を取ってよね!」
 びしっ、と指差しながらヤンが叫び(遠慮します……)と誰もが思ったのは言うまでもなかった――……。

END

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参加者一覧

  • 輝きを求める者
    弥勒 明影(ka0189
    人間(蒼)|17才|男性|霊闘士
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    米本 剛(ka0320
    人間(蒼)|30才|男性|聖導士

  •  (ka0824
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • 幸運の力
    アリス・シンドローム(ka0982
    人間(紅)|12才|女性|霊闘士
  • サバイバー
    ミノア・エデン(ka1540
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 大食らいの巨剣
    ルリ・エンフィールド(ka1680
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人
  • ビューティー・ヴィラン
    ジオラ・L・スパーダ(ka2635
    エルフ|24才|女性|霊闘士
  • アネゴ!
    ヴィジェア=ダンディルディエン(ka3316
    エルフ|28才|女性|魔術師

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/20 20:59:57
アイコン 相談卓
米本 剛(ka0320
人間(リアルブルー)|30才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/11/24 00:11:40