【初心】スライム四番勝負

マスター:cr

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/11/28 12:00
完成日
2017/12/07 00:57

みんなの思い出

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オープニング


 多くの人々が忙しく動き回っている。高々と組まれた足場をひょいひょいと身軽に登っていく者も居れば、大量に荷物を両腕に担いで運んでいる者も居る。
 ここは極彩色の街、ヴァリオスの工事現場。
 ここにはかつてヴァリオスが誇るベルカント大劇場があった……というか今もあるのだが、先日歪虚の襲撃を受け被害を被っていた。しかしヴァリオスはクリムゾンウェスト最大の商業都市と言っても過言ではない場所。動くお金も大変多く、街のシンボルである劇場の修復が急ピッチで行われていた。


「なんだこりゃ?」
 作業員達が火に当てられ使えなくなった柱を取り除いていくと、大きな穴が出てきた。中からは水の流れる音が聞こえる。一瞬戸惑ったものの、これはベルカント大劇場で使われていた水道であることを把握していた。大劇場は余りに大きいため、その全貌を把握しているものは居ない。水路があるのは考えてみれば当たり前の話なのだが、それでも突然現れたことに驚かざるを得なかった。
 そこで作業員達は中の状況を探るためにカンテラを持って水路に潜る。ここは被害も受けていないため、問題なくこのまま使えるはずだが念のためということである。
 鼻をつく腐臭はいやでも年季を感じさせる。いやな空気に早く出たいと思いながら。潜って少し行った所、外の光がまるで差し込まない暗闇にカンテラの光だけが走る。
 そこで光に照らされたのはぶるぶると震えるゲル状の物体が四つ。作業員の悲鳴とカンテラが割れる音が聞こえたのはその直後だった。


「はあ、水路掃除の依頼ですか」
 ハンターオフィス受付嬢のモアは工事現場から来た依頼を書類に書き留めていく。
「スライムが現れたと……どんなスライムかわかりますか? スライムと一口に言っても色々おりますので……なるほど、青、赤、黄色に緑と色とりどりですね。わかりました。どういうスライムなのかはその情報があればすぐにわかります」
 モアは手早く過去の報告書を紐解きスライムの情報を書き加えていった。そして依頼書が貼り出されたのはすぐ後のことであった。

リプレイ本文


「初めてのお仕事なのです!」
 暗い闇に包まれた水路の中からじめっとした湿気と鼻を突く臭気が立ち上ってくる。その入り口で春告鳥 骸殻(ka6914)は少し緊張していた。無理も無い。ハンターとして始めての仕事だったのだから。さらに言えば、ドラグーンである彼は中性的な年の頃なら十六、七のその容姿と違い実際の人生経験は十年にも満たなかった。この状況で緊張しないで居るには余りに足りなかった。
 だが、彼には元々住んでいた場所で長老に教わった方法があった。それを思い出す。手のひらに『龍』と画数の多い字を三度書き、それを飲み込むようにする。
 そんなことをしている間に他のハンター達も集まってくる。
「楽な仕事ばかりじゃねぇってのは知ってたがこういう場所の仕事か。だからって気を抜くわけにはいかねぇか」
 と少々派出目な服を着たシェイス(ka5065)がそう言った。
「地下水路と言えばスライム、スライムと言えば地下水路……というくらい定番なのでしょうかね」
 とこちらは道化師の様な仮面を被りながらフーリィ・フラック(ka7040)がそう言った。二人の格好を見ればこれから入る場所にその服が汚れるのを気にしているかにも思えたが、そうではなかった。
「少しばかりやりづらそうだが、やりようはある」
「気を引き締めていきましょう」
 そんな会話を交わして二人が水路へ入っていく中、
「あー、なんでここはデクストリアでチャージもトランプルも出来ないんだー! 行っていいならデクストリアでチャージしたいぞコンチクショ―」
 とセイ(ka6982)が大騒ぎをしていた。


 暗闇で覆い隠された水路にハンター達の持ち込んだLEDライトの光が通る。それでぷるぷると震える色鮮やかな固体が映し出された。
「アイヤー! このスライムたち……とても大きいネ! これが水路に詰まったら大変ネ?」
 アルカ・リー(ka0636)が声を上げる。
「ところで、スライムってゼリーみたいで美味しそうじゃないっスか?」
「ぷるぷるしてて美味しそうだけど食べられないんだよね、残念」
 が、そんな彼女に対し根国・H・夜見(ka7051)とイリエスカ(ka6885)がそんな会話を交わしていた。これがオートマトンの思考回路なのだろうか。
「詰まらなくても、これじゃあ普通のひとは作業しにもこれないアル! それは困ることになるヨ! わたしたちで何とかするネ!」
「スライム退治頑張らないとね!」
 勿論何をやるかは分かっている。アルカの決意の声にイリエスカが答え、そして
「ターゲット4、早急に殲滅する」
 同じくオートマトンのマリナ アルフェウス(ka6934)はそう言って後方に去っていった。それに伴い各々が準備を整えポジションに着く。春告鳥が目薬を挿し暗闇に目を鳴らす頃
「スライムさん達にご退場願いましょー! ご一緒の皆さんよろしくお願いしますれす!」
 ハーティ(ka6928)は舌足らずな言葉と共にベルトにLEDライトを差し込んだ。合わせるようにアルカがライトを自分の体に括り付ける。
「目標視認。事前情報に相違なし。作戦行動を開始する」
 マリカが自分のポジションに到着したことを意味する言葉が聞こえてきた頃、スライム達もこちらに気付いたのかずるずると動き始めた。それに応じてハンター達も進もうとするが、それをイリエスカが止めフーリィに視線を送る。それに答え彼が小さく呪句を唱えると絡み付いていた水の流れからシェイスの足がするりと抜けた。いや、彼は水の上を浮かぶように立っていた。水中に足を入れていれば自然と足を取られるのが道理。それを避けるためフーリィのかけた魔法がこれだった。
 フーリィは引き続き他の者達にも魔法をかけていく。その間にシェイスが動く。
「んじゃここは任せるぜ、俺は奥の奴から狙っていくさ」
 ほんの少し足に力を加える。水面に波紋が広がった瞬間マテリアルを足に込めた彼は爆発するように加速し、その勢いのまま壁を駆け上がると蹴った次の瞬間には青スライムの向こう側に着地していた。
「すれ違いざまの黒い一撃、ってな」
 懐に短刀が見える。一瞬の事だった。
 だが不幸にもスライムのその不定形の体は予想も付かない動きを見せる。当たる直前その体を歪ませたことで短刀は空を切っていた。それでも彼はできるべきことをする。そのまま奥に着地し一網打尽にされることを避ける。
「情報通りであれば最大の脅威は青。よって青を優先撃破対象とする」
 彼が水面に再び立ったとき、銃声が鳴った。それはマリナだった。一分の狂いも無く照準を合わせ引き金を引けば長大な砲身からマテリアルの込められた弾丸が飛ぶ。それが青スライムを貫けば、その不定形の体が内部から凍り動きが鈍った。
 しかしその時だった。動きが固まり始めていたスライムは、突如収縮すると次の刹那青白く輝く光線を放った。それは一直線に空間を貫きこちらへと迫る。
 その先に居たのは夜見だった。だがとっさに身を伏せたことで、光線は彼女の体をわずかに掠める程度で収まる。
 そしてもう一人、光線の軌道上にイリエスカが居た。だが彼女は前に走りながら光線をかわしスライムに肉薄し、そこからマシンガンを乱射する。
 ほぼ触れようかという程近づけば外すわけが無い。ありったけの弾丸を叩き込む彼女。だがスライムのその柔らかい肉体は弾丸を浴びながらも、衝撃を逃してしまう。
 そこで春告鳥が動く。彼の手には杖、そして板。この板はエバーグリーンで作られたもので魔導書なのだと言う。その証拠にその板に光る文字が流れる。そして彼の前に光が収束したかと思うと、それが一条の光と化して迸った。
「遠すぎても、近すぎてもダメとなると……ここでしょう」
 その時フーリィは後方で動いていた。彼が別の呪句を唱えれば、突如水路の中に土壁が現れた。
 その壁の後ろから夜見が顔を出す。いつの間にか右手に桜桃の描かれた錠前が一つ。左手に藍苺の描かれた錠前が一つ。右手を開けばそれが銀色の拳銃へと変わる。その銃口を己のこめかみに付け、彼女は左手を開く。さすれば彼女の後方に幾つものマスケット銃が現れる。
 そして彼女が拳銃の引き金を引けば、一発の銃声と共にマスケット銃から弾丸が放たれた。その弾丸は一発一発が冷気を纏い、そして吹きすさぶ嵐と化して青スライムを多い尽くす。
 春告鳥の光に冷気が重なり、その二つが晴れたときそこには凍りついた青スライムの姿があった。そして次の瞬間、それは粉々に砕け散った。


 一方その頃緑スライムとはアルカが対峙していた。このスライムは突如として不定形の姿を変形させ斬撃をくり出してくる。所詮スライムなのでその肉体はけして硬くはないのだが、スライムの想像の範囲をはるかに超える素早さで動きアルカに襲いかかってきていた。
 アルカは素早く攻撃をかわしそのまま流れるように反撃の一撃送り出す。その反撃をさらに交わしたスライムはもう一度斬撃を打ち込んでくる。一進一退の攻防が繰り広げられる。しかしこのままではアルカの方がジリ貧になっていく。その時だった。突如として銃声がなる。そこにいたのはイリエスカだった。彼女は間合いを詰め威嚇射撃を撃ち出す。それを受けて緑スライムは動きを鈍らせる。さらに言えば夜見も間合いを詰め攻撃を叩き込む。
 アルカはその時スライムの反撃を腹部に喰らっていたが大した事ではなかった。後は止めの術を送り出すのみ。彼女が乾坤一擲の一発を叩き込めばそれで緑スライムは崩れ落ち原型をとどめなくなっていた。
 二体のスライムを倒したところでハーティが動く。多少の負傷をした夜見とアルカに癒しの力を与える。それで2人の負っていた傷はすっかりと消え去っていた。


 一方赤スライムにはセイが立ち向かっていた。赤色スライムは何をしているかさっぱりわからない相手だったが、その答えはすぐに知ることになった。近づきハンマーを振り下ろす。その瞬間その赤い個体からもわっとした強烈な熱気が襲いかかってきた。決してそのダメージは大きくは無い。だが単純な熱であるこの力には鎧やなどはまるで役に立たない。
 だからセイにできる事はただ1つだけだったひたすら攻撃を打ち込んで見続けていく。
 チャージもトランプルもできないシチュエーションには半分ヤケになっていたがやっていくしかない。
「こっち来いやぁ! だぁりゃー!」
 裂帛の気合とともに繰り出された刺激は確かに赤スライムを叩きのめしていた。ガツンガツンと攻撃を食らわしていく。
「しかし餅好きみたいだな」
 柔らかいスライムの答えにはダメージが取りにくい。高熱を浴びながらセイはひたすら攻撃を繰り返していた。
「目の前の人だけに集中してると、こうなりますよ?」
 その時フーリィが動いていた。
 彼が短く詠唱を完成させると魔力の矢が放たれる。それは寸分違わず正確無比にスライムの体を貫いた。
 そして他の仲間達も後に続く。
 マリナと夜見はそれぞれ冷気を込めた弾丸を放つ。
「待たせたな、ってか。ともあれ無事だな? 同時に行くぜ?」
「行くアルよ!」
 そしてシェイスとアルカがそれだけの会話でタイミングを合わせると同時に攻撃を仕掛けた。素早く動き一気に水路を横断するように走るアルカ。そして壁を強く蹴って高々と飛ぶと重力加速度を載せて攻撃を放つシェイス。
 二人が赤スライムの上で交錯するように動くと、着地した後に見えたものは原型をとどめておけなくなった赤スライムの姿だった。


 残るは黄スライム一体。しかし油断は禁物だ。
「大丈夫れすか? すぐ回復しますねっ」
 ハーティはダメージが大きいセイに癒しの力を注ぐ。
「スライムが怖くて飯が食えるかふんぬぉらー!」
 しかし癒されるやいなや彼は一目散に前方へと走って行っていた。
 ハンマーを振り上げ叩き付ける。その瞬間バチンと言う電気が走る音。セイの身体は電撃に包まれそれが晴れたときには彼の体は完全にしびれていた。
 慌ててハーティが近づき彼をもう一度癒やす。単純な力押しではこのスライムには対処できないようだ。
 しかしだとすればどうしたものか。
 それまで接近戦を挑んでいたイリエスカはたっぷりと距離を取った場所からスライムを狙っていた。
「残る敵は1体。しかし油断大敵である」
 マリナも遠く離れた位置から狙っている。フーリィはそんなマリナ達にスライムの注意がいかないよう敢えて前方に出て動く。
 そして全員がここで一斉に動く。
 イリエスカは弾丸にマテリアルを込め、正確で有効射程を伸ばした銃弾を放った。
 マリナも照準をピッタリと合わせ、ピンポイントの位置に弾丸を放つ。
 そしてもう一人、春告鳥が動いていた。彼は魔導機械を操作する。すると電撃がどんどん集まっていき、それが十分に大きくなったところで更にマテリアルを流し込んでおまけを加え襲いかからせた。
 3つの攻撃が同時に着弾する。だが問題はここからだ。黄スライムはここで反撃を繰り出してくる筈だった。
 だが、果たしてそれらの攻撃をまともに受けても黄スライムは反撃をしてこなかった。正確には出来なかった。電撃を浴び体がしびれたことにより、反撃もまともにこなせない状況になっていたのだった。
 こうなればもう油断さえしなければ負ける道理などない、皆が皆次々と攻撃を浴びせていく。次の反撃が行われる前に黄スライムは沈黙していた。


「おつかれさま。作戦終了後の補給、つまり食べ歩きを提案する」
 戦いが終わり一時の平和が訪れたこの場所で、マリナはイリエスカと夜見にそう話しかけていた。こういう反応を見るとオートマトンというのも普通の人間に変わらないように思える。
「あ、デザートにゼリーが食べられるお店がいいなー」
 イリエスカは最初に気になったことを未だに引きずっていたが、
「今日は寒い。温かいものが良いと考える。……私としては和食が気になっている」
 食事を何にするかというある意味他愛もない話も彼女達には重要なようだった。
 だが、食事に行く前にやるべきことが合った。
「お疲れ様れした、皆さんカッコよかったれす!」
 ハーティは舌っ足らずな喋り方とは似つかわしくない正確な動作で傷ついたハンター達を癒やしていく。最も深いダメージを受けたセイですら癒やしてお釣りが来るぐらいの力があった。
 皆の傷が治れば後は今度こそ解散だ。バラバラに散っていくハンター達。だが、ハーティは一人何か書類の作成を行っていた。
 スライムが何故発生したのか理由はわからない。だがだとしてもやれることはある。
 彼はハンターオフィスにこの場所の浄化をお願いするよう、一つ連絡を入れていた。

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    アルカ・リーka0636
  • 根性れす!
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  • 最期の一矢を
    根国・H・夜見ka7051

重体一覧

参加者一覧

  • カンフーガール
    アルカ・リー(ka0636
    人間(紅)|18才|女性|疾影士

  • シェイス(ka5065
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 食事は別腹
    イリエスカ(ka6885
    オートマトン|16才|女性|猟撃士

  • 春告鳥 骸殻(ka6914
    ドラグーン|16才|男性|機導師
  • 根性れす!
    ハーティ(ka6928
    ドラグーン|17才|男性|聖導士
  • 青き翼
    マリナ アルフェウス(ka6934
    オートマトン|17才|女性|猟撃士
  • 死を砕く双魂
    セイ(ka6982
    ドラグーン|27才|男性|闘狩人
  • 交渉上手
    フーリィ・フラック(ka7040
    人間(紅)|22才|男性|魔術師
  • 最期の一矢を
    根国・H・夜見(ka7051
    オートマトン|15才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
マリナ アルフェウス(ka6934
オートマトン|17才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/11/26 15:11:24
アイコン 相談ですよ。
フーリィ・フラック(ka7040
人間(クリムゾンウェスト)|22才|男性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/11/28 02:39:44
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/11/26 23:29:41