ゲスト
(ka0000)
【虚動】おしえて先生、CAMって何?
マスター:STANZA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/11/28 07:30
- 完成日
- 2014/12/08 16:19
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
蒸気工場都市フマーレの工場街。
その一角に、小さな機械修理工場「ナーノ・ビスケット(小人の修理台)」がある。
扱う品目は一般家庭で使われる小さな機械製品が多く、帝国で作られている様な大がかりな機械装置や兵器類とは殆ど縁がない。
しかし。
「縁がないのと興味がないのは違うぞ」
工場長——と言っても従業員は他にいない零細工場だが——ミケーレ・カルヴィーニは、持ち込まれた小さなストーブを修理しながら言った。
持ち込んだのは、フロル(kz0042)。
ミケーレを「ミケ兄さん」と呼んで慕う、猫雑貨と花を扱う小さな店の主人だ。
「それにな、ほれ、あのでっかい船があるだろ、リアルブルーの」
「ああ、あの……さるばとろす……なんとか、でしたかー?」
「そう、その何とか——って」
フロルの返事にミケーレは頭を抱える。
「お前も一応ハンターだろ? あれが、こう、こっちの世界にどーんと落っこちて来た時も、戦いに駆り出されたんだろ?」
「ええ、まあ……」
「だったら気合い入れて名前くらいちゃんと覚えろよ!」
「そう言うミケ兄さんこそ、興味があるなら名前くらいは自分で調べて欲しいですねー?」
サルヴァトーレ・ロッソですよ。
フロルは少し意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「知ってんじゃねぇか!」
だったら最初から言えと、ミケーレはフロルの薄紫色の頭をぺしっ。
「だったらよ、アレも見たか? なんかすっげぇカラクリ人形みたいなのが暴れ回ってたって言うじゃねぇか」
「ああ……CAMですかー?」
「そう、それ!」
フロルの返事に、ミケーレは自分の膝を思いきり叩く。
「なんかスゲェらしいよな! こう、技術屋の魂を揺さぶるっつーか、なんつーか……なあ! お前、あれも見たんだろ? なあ!」
しかし、一人で勝手に盛り上がるミケーレに対し、フロルの答えは冷たかった。
「見てませんよ、ずっと後方で救護活動に専念してましたし……」
それに、機械には興味ないし。
だからCAMについても、その呼び名と、何かすごい兵器らしいという事くらいしか知らなかった。
「ああ、そうだよな……お前、興味ない事にはトコトン無関心だよな」
ミケーレは大きな溜息をついた。
フロルにとって重要なのは、猫と花を始めとする動植物に関する事のみ。
それ以外の事は全て「その他」で纏められ、必要がない限りは積極的に関わる事も、興味を示す事もないのだ。
お前に訊いた俺が馬鹿だったと、ミケーレは仕事に戻る。
やがて壊れたストーブは再び息を吹き返した。
新品同様とまではいかないまでも、ピカピカに磨かれて、フロルの手に渡される。
「ありがとうございますぅ〜」
これで黒猫の執事さんも白猫のメイドさんも、機嫌を直してくれるだろう。
急に寒くなったここ数日、彼等はちっとも暖かくならないストーブを前に、恨めしそうな視線をフロルに投げていたのだ。
「ところでさ、CAMって何の略だろうな?」
代金を支払って帰ろうとしたフロルに、ミケーレが声をかけた。
「またそれですかー?」
「だってよ、気になるじゃねぇか……つか、そもそもCAMって何だ?」
C、A、M。
それは何かの頭文字らしい。
「CAM……キャット・アミューズメント・ミュージアム、でしょうかー?」
「ねえよ、つかなんで猫なんだよ」
「キャット・アクション・ミュージカル?」
「だから歌ってどうすんだ、ってか猫から離れろって」
「あ、わかりましたー、キャット・アンド・マウスですよー?」
「お前は仲良く喧嘩でもしてろ!」
マジボケなのか、からかっているのか。
フロルのぽや〜んとした表情から読み取る事は難しい。
この男は、どうしてこう残念なのだろう。
何か頭の良さそうな事を言いつつ気合いを入れて表情筋を引き締めれば、男でも見惚れる程の美形なのに。
まあ、それはともかく。
それは特殊な燃料で動くカラクリの一種であるらしい。
ミケーレが知っているのは、それだけ。
「だったら、ハンターの皆さんに訊いてみましょうかー?」
フロルが言った。
ハンターの中にはあの船に乗っていた者もいるだろうし、こちら側の出身でも間近に見た者は多いだろう。
「おお、そうか! そうだな! 本職のハンターに話を聞けば良いんだな!」
「私も一応、本職ですけどねー?」
そうと決まれば善は急げ。
「フロル、誰でも良いからハンター呼んで来い、今すぐにだ!」
「えー、いやですよぉー」
これから帰って、猫達と一緒にストーブで暖まるんだから。
「それに、そんなに急に言われても皆さん困ると思いますよー?」
「むぅ、それもそうか」
というわけで。
後日、日を改めてハンター達を招待し、話を聞く……という事に落ち着いた。
CAMについて詳しく知る者、知らない者、話の上手い者、そうでもない者。
とにかく、興味のある者は参加を検討してみてくれないだろうか。
「場所はフロルの屋敷な!」
「え、ちょ……」
「良いだろ、お前んとこ無駄に広いんだし」
ついでにお茶とお菓子も出ます、出します、フロルが。
「ミケ兄さん、何を勝手に……」
フロルが煎れたお茶は美味いと、わりと評判らしい、よ!
その一角に、小さな機械修理工場「ナーノ・ビスケット(小人の修理台)」がある。
扱う品目は一般家庭で使われる小さな機械製品が多く、帝国で作られている様な大がかりな機械装置や兵器類とは殆ど縁がない。
しかし。
「縁がないのと興味がないのは違うぞ」
工場長——と言っても従業員は他にいない零細工場だが——ミケーレ・カルヴィーニは、持ち込まれた小さなストーブを修理しながら言った。
持ち込んだのは、フロル(kz0042)。
ミケーレを「ミケ兄さん」と呼んで慕う、猫雑貨と花を扱う小さな店の主人だ。
「それにな、ほれ、あのでっかい船があるだろ、リアルブルーの」
「ああ、あの……さるばとろす……なんとか、でしたかー?」
「そう、その何とか——って」
フロルの返事にミケーレは頭を抱える。
「お前も一応ハンターだろ? あれが、こう、こっちの世界にどーんと落っこちて来た時も、戦いに駆り出されたんだろ?」
「ええ、まあ……」
「だったら気合い入れて名前くらいちゃんと覚えろよ!」
「そう言うミケ兄さんこそ、興味があるなら名前くらいは自分で調べて欲しいですねー?」
サルヴァトーレ・ロッソですよ。
フロルは少し意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「知ってんじゃねぇか!」
だったら最初から言えと、ミケーレはフロルの薄紫色の頭をぺしっ。
「だったらよ、アレも見たか? なんかすっげぇカラクリ人形みたいなのが暴れ回ってたって言うじゃねぇか」
「ああ……CAMですかー?」
「そう、それ!」
フロルの返事に、ミケーレは自分の膝を思いきり叩く。
「なんかスゲェらしいよな! こう、技術屋の魂を揺さぶるっつーか、なんつーか……なあ! お前、あれも見たんだろ? なあ!」
しかし、一人で勝手に盛り上がるミケーレに対し、フロルの答えは冷たかった。
「見てませんよ、ずっと後方で救護活動に専念してましたし……」
それに、機械には興味ないし。
だからCAMについても、その呼び名と、何かすごい兵器らしいという事くらいしか知らなかった。
「ああ、そうだよな……お前、興味ない事にはトコトン無関心だよな」
ミケーレは大きな溜息をついた。
フロルにとって重要なのは、猫と花を始めとする動植物に関する事のみ。
それ以外の事は全て「その他」で纏められ、必要がない限りは積極的に関わる事も、興味を示す事もないのだ。
お前に訊いた俺が馬鹿だったと、ミケーレは仕事に戻る。
やがて壊れたストーブは再び息を吹き返した。
新品同様とまではいかないまでも、ピカピカに磨かれて、フロルの手に渡される。
「ありがとうございますぅ〜」
これで黒猫の執事さんも白猫のメイドさんも、機嫌を直してくれるだろう。
急に寒くなったここ数日、彼等はちっとも暖かくならないストーブを前に、恨めしそうな視線をフロルに投げていたのだ。
「ところでさ、CAMって何の略だろうな?」
代金を支払って帰ろうとしたフロルに、ミケーレが声をかけた。
「またそれですかー?」
「だってよ、気になるじゃねぇか……つか、そもそもCAMって何だ?」
C、A、M。
それは何かの頭文字らしい。
「CAM……キャット・アミューズメント・ミュージアム、でしょうかー?」
「ねえよ、つかなんで猫なんだよ」
「キャット・アクション・ミュージカル?」
「だから歌ってどうすんだ、ってか猫から離れろって」
「あ、わかりましたー、キャット・アンド・マウスですよー?」
「お前は仲良く喧嘩でもしてろ!」
マジボケなのか、からかっているのか。
フロルのぽや〜んとした表情から読み取る事は難しい。
この男は、どうしてこう残念なのだろう。
何か頭の良さそうな事を言いつつ気合いを入れて表情筋を引き締めれば、男でも見惚れる程の美形なのに。
まあ、それはともかく。
それは特殊な燃料で動くカラクリの一種であるらしい。
ミケーレが知っているのは、それだけ。
「だったら、ハンターの皆さんに訊いてみましょうかー?」
フロルが言った。
ハンターの中にはあの船に乗っていた者もいるだろうし、こちら側の出身でも間近に見た者は多いだろう。
「おお、そうか! そうだな! 本職のハンターに話を聞けば良いんだな!」
「私も一応、本職ですけどねー?」
そうと決まれば善は急げ。
「フロル、誰でも良いからハンター呼んで来い、今すぐにだ!」
「えー、いやですよぉー」
これから帰って、猫達と一緒にストーブで暖まるんだから。
「それに、そんなに急に言われても皆さん困ると思いますよー?」
「むぅ、それもそうか」
というわけで。
後日、日を改めてハンター達を招待し、話を聞く……という事に落ち着いた。
CAMについて詳しく知る者、知らない者、話の上手い者、そうでもない者。
とにかく、興味のある者は参加を検討してみてくれないだろうか。
「場所はフロルの屋敷な!」
「え、ちょ……」
「良いだろ、お前んとこ無駄に広いんだし」
ついでにお茶とお菓子も出ます、出します、フロルが。
「ミケ兄さん、何を勝手に……」
フロルが煎れたお茶は美味いと、わりと評判らしい、よ!
リプレイ本文
ハンターオフィスの一角。
とりあえず本番前の顔合わせという事で、依頼を受けたハンター達が依頼人のフロルとミケーレを囲んでいた。
「おお、それは……っ!」
白黒猫を肩に乗せたフロルの姿を見るなり、屋外(ka3530)は興奮した様子でその両手をがっしりと握った。
「それはまさしく使い魔!」
「……はい?」
屋外の脳裏に、故郷のロボットアニメやゲームの映像が甦る。
フロルの姿はまさしく、とあるスーパーなロボットの操者の様だ、いやもう、その彼にしか見えない!
今度はミケーレの手を取る。
「これはもう、CAMを精霊憑依機に改造して頂くしか!」
そして再びフロルへ。
「フロル殿、猫殿らと共に操縦したり、彼等の力を借りて必殺技を繰り出す事にご興味ありませんか?」
「え、あの、ええと……」
あ、さっぱりわかりませんよね。
「でも大丈夫です、後でじっくりたっぷり、蒼界でのエンタメ事情とも併せて解説させて頂きますから」
そ、それは、どうも……ありがとうございます?
「CAMとは何かか。改めて聞かれると結構難しい質問だよな」
さて、どう説明したものか。
蒼界の元CAMパイロット、ゲン・プロモントリー(ka1520)は腕組みをして考え込む。
実機が動いているところを見せるのが手っ取り早いのだが、それが出来ないとなると――
「え、そんなの全然難しくないよ?」
眉を寄せた元CAM乗りの様子に首を傾げ、同じく蒼界出身ではあるが、民間人だった筈のウーナ(ka1439)が言った。
「説明ならまーかせて! あたしはCAMのために生まれてきたんだもん!」
彼女には転移以前の記憶がない。
CAMに乗っていたという記憶も記録もないのだが、何故か知識は豊富だった。
「正式名はCombative Armour Machine……戦闘装甲機の頭字読みだよ。基本でしょ?」
でしょ、と言われて二人は困った様に顔を見合わせる。
「全長7m、陸戦と空間戦闘をシームレスにこなせる歩兵支援用の汎用機動兵器。装備は30mm口径の銃火器、1.3m級コンバットナイフで……」
「あー、待て待て」
いきなりそんな専門用語ばかり並べてもわからないだろうと、リック=ヴァレリー(ka0614)が待ったをかけた。
「デュナミスは初期に開発されたドミニオンより一回り大きく全高は8m。だけど火力も機動性もドミニオンより向上させることに成功してるすげぇ機体なんだぜ。操作もスティック操作でものすごく単純だし、モーショントレースなんかも使えば人間みたいに卵を潰さず掴むとか細やかな動作だって……」
そこまで一気にまくし立て、はたと気付いた。
二人の頭上に「ぽかーん」という文字が浮いている事に。
「……って。今のは聞いてねぇことにしてくれ……」
苦笑いで誤魔化す。
彼等にもわかる言葉で説明するには、やはりそれなりの下準備が必要な様だ。
「待ってて、皆で色々と準備してくるから!」
ウーナが言い、仲間達が散って行った。
「ぼくロボットとか機械は興味なかったので、正直あまり知識無いんですよねえ……」
シグリッド=リンドベリ(ka0248)は、定位置つまり頭の上に収まった猫のシェーラさんをもふもふと撫でる。
「なんかちらっと聞いた事はある気はするんですが……戦闘……そ、装甲機? だかなんだか……つまりCAMとはなんだか強そうな人型兵器です……!」
なんて、それじゃダメだよね。
って言うか自分もわかってない事を、人に教えようとしちゃアカン。
そう言えば、ロッソの中に図書館があったっけ。
「でもせっかくの剣と魔法の世界でなぜロボット兵器なんか使わなきゃいけないんですか、ロマンが足りないんじゃないでしょうか」
そりゃ、蒼界のゲームなんかにも剣と魔法に機械が出て来る物はあったけど。
でもそれは、自分が求めるファンタジーとは……なんか違う。
「ね、シェーラさんもそう思いませんか?」
もふもふ。
しかし残念な事に、ここはそんな世界なのだ。
ならば慣れるしかない……が。
「うん、今回は他の皆さんの説明を聞いて勉強しましょう」
だって多分、知識の残念さにかけてはフロルと良い勝負だし。
「マニュアルを貸して欲しいんだけど……ダメかしらね?」
CAMの格納庫へ向かった満月美華(ka0515)は、整備士らしき人物を捕まえて訊いてみる。
え、ダメ?
機密扱いになっている為、外部への持出しは許可出来ない様だ。
「じゃあ……こちらで要点だけをまとめたコピーの作成じゃ、ダメかしら?」
美華は用途を説明し、必要な部分を示して見せた。
主に操作系統、燃料、動力、構造など、機密には当たらない部分を抜き出して――
「これなら問題ないでしょ?」
確認を許可を得て、コピーを取る。
でも、これだけでは少し味気ないか……と思って周囲を見渡せば。
いた。
他にも色々と調べて回っている仲間が。
「前回の大規模作戦で見たけどあれだけじゃ記憶が曖昧だったからな」
格納庫で眠るCAMの前に立ち、ザレム・アズール(ka0878)はその姿を絵に描き始めた。
写真でも良いが、絵ならそれが実際に動いている所まで見せられる。
目の前の実物と自分の記憶を頼りに、バトルシーンを再現する事も出来るだろう。
後は暇そうな整備士にでも話を聞いて――
「知らないことには説明できないからな」
と、そこに。
「なかなか上手いじゃない」
美華が声をかけて来た。
「あ、ほんとだ。表紙や挿絵とかに使えば、立派な冊子が出来そうだね」
そう言ったのは、美華の作業を手伝っていたリックだ。
「なら三人で共同制作という事にするか」
ザレムが頷き、意気投合。
美華の資料にザレムがイラストを付け、ついでに整備士達から聞いた話もコメントとして付け加えていく。
「エネルギー源として着目されている魔道アーマーだが、それが成功する可能性は――」
「実際に乗り込んだ感じは――」
パイロットから聞いた話として、リックが付け加える。
本当は元CAMパイロット候補生だった自身の経験だが、学校を中退した後ろめたさもあって、周囲には話していなかった。
でも、だからといって諦めた訳ではない。
いつか、この世界で夢の続きを見られる日が来るかもしれない。
そんな想いに、リックは静かに胸を躍らせていた。
それが終われば、次は模型の制作だ。
「ふふふ、ついに俺のCAMパイロット経験が活かされる時が来たか……!」
藤堂研司(ka0569)が得意なのは、お料理だけじゃないんだぜ!
実機には半年以上前に乗ったっきりだが、まあ何となく記憶にはある!
「模型作り頑張って、張り切ってブンドドと行きますかー!」
「では、自分はこの『まるごとでゅみなす』でモデルを務めさせて頂きたいと思います」
そう申し出た屋外は、既に着ぐるみを装着済みだった。
「それじゃ、お言葉に甘えて!」
研司は自分の荷物からアサルトライフルを引っ張り出す。
「30mmアサルトライフル、愛用してたなー。これは人間用だけど、コレを持ってキめて欲しい! あと、1300mmコンバットナイフなんてのも……さあ、ナイフを!」
これも人間サイズだけど。
「ああ……紛うことなきCAM……よっしゃー! 模型におこすぞー!」
研司はザレムとリック、そしてウーナと共に、屋外に色々なポーズをとって貰いながら、その動きをじっくり観察。
「船大工が説明に使う帆船模型みたいなノリだね」
「ここと、ここが繋がって……」
「間接は稼動できるようにした方が良いな」
目指せクオリティアップ!
「ここはこの色で……何だかプラモのパーツ作ってるみてぇだな」
やっべ楽しい。
設計図が出来たら、リックが調達した木材を加工して、組み立て、塗装。
「よし! まず一つ!」
「上手くできたじゃないか」
土産物にして売れるかもしれない。いや冗談じゃなく。
「後はひたすら量産じゃー!」
でも完成品だけだと構造が理解しにくいかもしれない。
「いくつかパーツの状態で取っとこうかな」
自分で作って身体で理解、これぞプラモ道!
そして折角だから自分のだけでもリアルを追求してみようと、研司はコックピットを再現し始めた。
パイロット時代の記憶を基に、ちょっと細かくて泣きそうだけど!
「せめてスティックとペダルだけでも!」
全ては臨場感あるブンドドの為に!
微妙に目的が違ってる気もするけどね!
そして、いよいよお披露目。
「さて、では私は親近感を感じる責任者さんと技術者な皆さんと駄弁るとするです」
エリアス・トートセシャ(ka0748)は、ミケーレの隣に陣取ってモデルの登場を待つ。
探究心が募る余りに軍隊を飛び出すという経歴を持つ彼女には、ミケーレが他人とは思えなかった。
(なんだか私の未来を見ているような気がしてやまないのです)
自分が男だったら、ほぼ確実にこうなる自信がある、という位に。
「こんな感じのが欲しいんだよね」
ウーナの紹介で、まるごとでゅみなすを着込んだ屋外による実演が開始された。
「いけ、でゅみなす!」
研司のリモコン操作で着ぐるみを動かすと、でゅみなすが気合いと根性でカッコイイポーズを取るぞ!
「人型二足歩行の利点といえばなんといっても『手』です」
モデルを前に、エリアスが解説する。
「手があるからとっさの事態に対応しやすく、道具もいろいろ扱える。さまざまな状況に対応しやすいので汎用としては申し分がないのです」
とは言え、汎用であるが故に専門には劣りやすいという欠点もあった。
「基本的に人型は水中を泳ぐのには向きませんし、地上を走るのにも向きません。空を飛ぶのにもです。敵方は専門である場合が多いですからね」
そう考えると外部装備でどれだけ補えるか、もしくはデュナミスをベースにしてどれだけ専門化できるかが今後の発展の鍵になるだろうか。
「いや、ちょっと待て」
外部装備の話が出たところで、でゲンから待ったがかかる。
「アサルトライフルとナイフは良いが、他にカタナとシールドも持ってなかったか?」
自分が乗ったものは、確かそんな装備だった。
「それなら、俺のカエトラを貸そう」
ザレムが持たせる。
「カタナは俺のグロムソードで良いかな」
こちらはリック提供。
ずっしり思い装備を振りかざし、でゅみなすが喋った。
「自分は Catbuster Aggressive-Possession Mode 略してCAM」
「あ、ほら! やっぱり猫ですよ!」
フロルが嬉しそうな声を上げる、が。
「そこは正確に伝えた方が良いと思うぞ?」
ゲンからの、更なるダメ出し。
自分の知識に固執はしないが、明らかに間違った説明は訂正せざるを得ないだろう――後々の為にも。
「ところで、個人的にはCAMにはドリルが似合うと思うんだがな」
という事で、魔道ドリルを更にドン。
「敵の固い装甲に文字通り穴をあけられるのは有効な場面もでてくるんじゃねえか? あと見た目もカッコイイしな!」
言われて、でゅみなすは必死にポーズをとる。
大丈夫だ、持久力と、後は勇気で!
「人型のまま偏らせていくのか、大きく形を変えてしまうのかも気になるところです」
エリアスは持論を続けた。
「ちなみに個人的におすすめなのは犬型です」
でゅみなすが四つん這いになる。
「四足で安定してますし尻尾を使えば手の代用も難しくないのです」
尻尾を振って見せようとしたが――まるごとでゅみなすに尻尾はなかった。残念。
「当面の一番の問題は燃料なんですけどね」
石油で行けるなら、アルコールで代用できるだろうかと考えてもみたが、それが可能ならとっくに実用化されている気もする。
「一番の理想はマテリアルのみで動いてくれることですけど、ここは魔道甲冑でしたっけ?に期待しているのですー」
確か帝国で開発中、だった様な?
実演で大体の感触を掴んだら、次は模型だ。
「この間はネコの置物をありがとう。その恩返しと言っちゃ何だが」
「いいえ、こちらこそ~。お陰で助かりましたよー」
フロルはリックに手渡された模型をしげしげと眺める。
「良く出来ていますねー」
でも惜しいな、猫耳付ければもっと可愛いのに。
店にも置けるかもしれないのに――って、あくまで猫ですか。
「執事さんとメイドさん、今日も素敵な毛並みです」
もふもふ。
シグリッドも、目当てはあくまで猫だった。
「これを読んでも、さっぱりわからなかったのです」
お土産のツナ缶を開けながら『犬でも解るリアルブルーの歴史』という本を取り出してみる。
「なんかCAMのことも書いてあったんですけど」
やはり『猫でも解る』でないと駄目なのだろうか。
もう一冊の『簡単! 実践! ロボット工学』はミケーレなら多分わかるんじゃないかな。
そのミケさんは、模型の組み立てに夢中になっていた。
手を動かしながら、皆の話も耳を傾ける。
「CAMは、リアルブルーで『ヴォイド』と呼ばれるものに有効打を与えられる兵器として、配備が進んでいる物です」
天央 観智(ka0896)が言った。
「ラッツィオ島の一件から見て、リアルブルー側でヴォイドと呼んでいるモノと、こちらで歪虚呼んでいるソレは、同様の物だと思われます。従ってCAMもまた、こちらの世界でも有効な兵器となるでしょう」
「ああ、確かにな」
ゲンが頷く。
「俺はLH044脱出の時にCAMに乗ってヴォイドと戦った」
「それで、どうだった? 実際に乗ってみた感じとか」
そう尋ねたのはザレムだ。
「そうだな、CAMと同じ程度の大きさのヴォイドとも対等に戦えた感触はあったな。戦力として、こっちでも気軽に使えたらかなり戦果も期待できるか?」
「特性としては、攻撃手段であると同時に、乗り物でも防具でもあるという点が挙げられますね」
観智が続ける。
「CAMの動力源は、マテリアル燃料と呼ばれている石油を精製した特殊燃料で、動力はマテリアルエンジンと呼ばれている物です。どちらもトマーゾ教授という人物が開発した物ですが……」
「その燃料がこっちでは手に入れられず、原理も本人しか理解してないらしいって言うのが使いづらいところだよな」
ゲンの言葉に、観智は「これは僕の仮説ですので、確実な事は言えませんが――」そう前置きをして、続けた。
「もし、この世界で言うマテリアルと、リアルブルーのマテリアル燃料が同様のモノなら、CAMは一応便宜上、機導装置という事になると思われます」
燃料の問題さえ解決出来れば、こちらの世界で作る事も可能かもしれない。
「CAMは覚醒者でなくても使える様ですので、操作に成熟・動力源・運用体制・量産が揃えば、ヴォイドへの対抗手段の一つには成ると思いますよ」
「量産、か。町工場でも作れる様になったりするんだろうか」
またもザレムが尋ねる。
その熱心さはミケーレをも上回りそうな勢いだ。
「もし出来るなら、動いてる実物が見たいな」
魔道アーマーとのハイブリッドが上手くいったらきっと動く。
「マテリアルエンジンの代替エネルギーへ一歩前進ってことだから、ゆくゆくはあの戦艦サルバトーレも動かせるかもしれない。そう思わないか?」
「あのデッカイのをか?」
模型を弄り回しながら、ミケーレが言った。
「そりゃ楽しそうだが、俺んトコみたいな小さい町工場じゃなぁ」
それを聞いて、猫達にカッテージチーズをお裾分けしながら、屋外が力説する。
「リアルブルーには、激しい戦闘が続く中で民間会社がメカを開発し続け、結果的にそれが勝利の鍵となった実例があります」
実例と言っても、それは彼がサイボーグに憧れる原因となった、とあるアニメの話ではあるが。
「ですから、勝利の鍵を見出すのはミケーレ殿に違いないのです!」
パイロットは勿論、白黒の猫精霊と共に戦うフロル殿で!
「手伝える時は自分も駆け着けます!」
「お、おう、そりゃどうも……」
とりあえず金属でミニチュアを作るあたりから始めてみようかな?
「なら、これをどうぞ?」
美華が皆で作った冊子を差し出す。
抜粋とは言え、かなり詳しく書かれているし――
「え、どれどれ、あたしも読みたい!」
ウーナが身を乗り出して来た。
「デュナミスとか新しいヤツはは全然知らないんだもん。解説するから、一緒に読んでいい? いやもう読ませろー!」
あ、取り上げられた。
後でちゃんとミケさんに渡してあげてねー?
「あと、これは古いものですが」
美華が居住区で集めた雑誌の束を置く。
蒼界の文化もわかって一石二鳥?
技術者同士、専門用語が飛び交う会話に混ざれないシグリッドとフロルは、差し入れのきのこのキッシュでのんびりお茶会。
モデルをこなしてお疲れの屋外も、パンとチーズで一緒に休憩。
「よーし、一通り説明は終わったな! じゃあ次はマイCAMモデルでブンドドだー!」
研司の声で、男の子達はすっかり童心に返る。
「CAMは歩き、走り、ジャンプしたり、宇宙を飛んで戦うんだ!」
ほら、こんな風に!
「CAMを動かしてる感覚で、思いっきり遊ぼう!」
あ、ただ遊んでる訳じゃないよ!
「遊びを通して学ぶって事だよな」
自分も模型を手に、リックが苦笑い。
昔もこんなオモチャで遊んだ事があったっけ。
「じゃ、いくぞー!」
ぶぅーんどどどー!
結論。
CAMとは何か、何となくわかった。
今は多分、それで問題ない。
とりあえず本番前の顔合わせという事で、依頼を受けたハンター達が依頼人のフロルとミケーレを囲んでいた。
「おお、それは……っ!」
白黒猫を肩に乗せたフロルの姿を見るなり、屋外(ka3530)は興奮した様子でその両手をがっしりと握った。
「それはまさしく使い魔!」
「……はい?」
屋外の脳裏に、故郷のロボットアニメやゲームの映像が甦る。
フロルの姿はまさしく、とあるスーパーなロボットの操者の様だ、いやもう、その彼にしか見えない!
今度はミケーレの手を取る。
「これはもう、CAMを精霊憑依機に改造して頂くしか!」
そして再びフロルへ。
「フロル殿、猫殿らと共に操縦したり、彼等の力を借りて必殺技を繰り出す事にご興味ありませんか?」
「え、あの、ええと……」
あ、さっぱりわかりませんよね。
「でも大丈夫です、後でじっくりたっぷり、蒼界でのエンタメ事情とも併せて解説させて頂きますから」
そ、それは、どうも……ありがとうございます?
「CAMとは何かか。改めて聞かれると結構難しい質問だよな」
さて、どう説明したものか。
蒼界の元CAMパイロット、ゲン・プロモントリー(ka1520)は腕組みをして考え込む。
実機が動いているところを見せるのが手っ取り早いのだが、それが出来ないとなると――
「え、そんなの全然難しくないよ?」
眉を寄せた元CAM乗りの様子に首を傾げ、同じく蒼界出身ではあるが、民間人だった筈のウーナ(ka1439)が言った。
「説明ならまーかせて! あたしはCAMのために生まれてきたんだもん!」
彼女には転移以前の記憶がない。
CAMに乗っていたという記憶も記録もないのだが、何故か知識は豊富だった。
「正式名はCombative Armour Machine……戦闘装甲機の頭字読みだよ。基本でしょ?」
でしょ、と言われて二人は困った様に顔を見合わせる。
「全長7m、陸戦と空間戦闘をシームレスにこなせる歩兵支援用の汎用機動兵器。装備は30mm口径の銃火器、1.3m級コンバットナイフで……」
「あー、待て待て」
いきなりそんな専門用語ばかり並べてもわからないだろうと、リック=ヴァレリー(ka0614)が待ったをかけた。
「デュナミスは初期に開発されたドミニオンより一回り大きく全高は8m。だけど火力も機動性もドミニオンより向上させることに成功してるすげぇ機体なんだぜ。操作もスティック操作でものすごく単純だし、モーショントレースなんかも使えば人間みたいに卵を潰さず掴むとか細やかな動作だって……」
そこまで一気にまくし立て、はたと気付いた。
二人の頭上に「ぽかーん」という文字が浮いている事に。
「……って。今のは聞いてねぇことにしてくれ……」
苦笑いで誤魔化す。
彼等にもわかる言葉で説明するには、やはりそれなりの下準備が必要な様だ。
「待ってて、皆で色々と準備してくるから!」
ウーナが言い、仲間達が散って行った。
「ぼくロボットとか機械は興味なかったので、正直あまり知識無いんですよねえ……」
シグリッド=リンドベリ(ka0248)は、定位置つまり頭の上に収まった猫のシェーラさんをもふもふと撫でる。
「なんかちらっと聞いた事はある気はするんですが……戦闘……そ、装甲機? だかなんだか……つまりCAMとはなんだか強そうな人型兵器です……!」
なんて、それじゃダメだよね。
って言うか自分もわかってない事を、人に教えようとしちゃアカン。
そう言えば、ロッソの中に図書館があったっけ。
「でもせっかくの剣と魔法の世界でなぜロボット兵器なんか使わなきゃいけないんですか、ロマンが足りないんじゃないでしょうか」
そりゃ、蒼界のゲームなんかにも剣と魔法に機械が出て来る物はあったけど。
でもそれは、自分が求めるファンタジーとは……なんか違う。
「ね、シェーラさんもそう思いませんか?」
もふもふ。
しかし残念な事に、ここはそんな世界なのだ。
ならば慣れるしかない……が。
「うん、今回は他の皆さんの説明を聞いて勉強しましょう」
だって多分、知識の残念さにかけてはフロルと良い勝負だし。
「マニュアルを貸して欲しいんだけど……ダメかしらね?」
CAMの格納庫へ向かった満月美華(ka0515)は、整備士らしき人物を捕まえて訊いてみる。
え、ダメ?
機密扱いになっている為、外部への持出しは許可出来ない様だ。
「じゃあ……こちらで要点だけをまとめたコピーの作成じゃ、ダメかしら?」
美華は用途を説明し、必要な部分を示して見せた。
主に操作系統、燃料、動力、構造など、機密には当たらない部分を抜き出して――
「これなら問題ないでしょ?」
確認を許可を得て、コピーを取る。
でも、これだけでは少し味気ないか……と思って周囲を見渡せば。
いた。
他にも色々と調べて回っている仲間が。
「前回の大規模作戦で見たけどあれだけじゃ記憶が曖昧だったからな」
格納庫で眠るCAMの前に立ち、ザレム・アズール(ka0878)はその姿を絵に描き始めた。
写真でも良いが、絵ならそれが実際に動いている所まで見せられる。
目の前の実物と自分の記憶を頼りに、バトルシーンを再現する事も出来るだろう。
後は暇そうな整備士にでも話を聞いて――
「知らないことには説明できないからな」
と、そこに。
「なかなか上手いじゃない」
美華が声をかけて来た。
「あ、ほんとだ。表紙や挿絵とかに使えば、立派な冊子が出来そうだね」
そう言ったのは、美華の作業を手伝っていたリックだ。
「なら三人で共同制作という事にするか」
ザレムが頷き、意気投合。
美華の資料にザレムがイラストを付け、ついでに整備士達から聞いた話もコメントとして付け加えていく。
「エネルギー源として着目されている魔道アーマーだが、それが成功する可能性は――」
「実際に乗り込んだ感じは――」
パイロットから聞いた話として、リックが付け加える。
本当は元CAMパイロット候補生だった自身の経験だが、学校を中退した後ろめたさもあって、周囲には話していなかった。
でも、だからといって諦めた訳ではない。
いつか、この世界で夢の続きを見られる日が来るかもしれない。
そんな想いに、リックは静かに胸を躍らせていた。
それが終われば、次は模型の制作だ。
「ふふふ、ついに俺のCAMパイロット経験が活かされる時が来たか……!」
藤堂研司(ka0569)が得意なのは、お料理だけじゃないんだぜ!
実機には半年以上前に乗ったっきりだが、まあ何となく記憶にはある!
「模型作り頑張って、張り切ってブンドドと行きますかー!」
「では、自分はこの『まるごとでゅみなす』でモデルを務めさせて頂きたいと思います」
そう申し出た屋外は、既に着ぐるみを装着済みだった。
「それじゃ、お言葉に甘えて!」
研司は自分の荷物からアサルトライフルを引っ張り出す。
「30mmアサルトライフル、愛用してたなー。これは人間用だけど、コレを持ってキめて欲しい! あと、1300mmコンバットナイフなんてのも……さあ、ナイフを!」
これも人間サイズだけど。
「ああ……紛うことなきCAM……よっしゃー! 模型におこすぞー!」
研司はザレムとリック、そしてウーナと共に、屋外に色々なポーズをとって貰いながら、その動きをじっくり観察。
「船大工が説明に使う帆船模型みたいなノリだね」
「ここと、ここが繋がって……」
「間接は稼動できるようにした方が良いな」
目指せクオリティアップ!
「ここはこの色で……何だかプラモのパーツ作ってるみてぇだな」
やっべ楽しい。
設計図が出来たら、リックが調達した木材を加工して、組み立て、塗装。
「よし! まず一つ!」
「上手くできたじゃないか」
土産物にして売れるかもしれない。いや冗談じゃなく。
「後はひたすら量産じゃー!」
でも完成品だけだと構造が理解しにくいかもしれない。
「いくつかパーツの状態で取っとこうかな」
自分で作って身体で理解、これぞプラモ道!
そして折角だから自分のだけでもリアルを追求してみようと、研司はコックピットを再現し始めた。
パイロット時代の記憶を基に、ちょっと細かくて泣きそうだけど!
「せめてスティックとペダルだけでも!」
全ては臨場感あるブンドドの為に!
微妙に目的が違ってる気もするけどね!
そして、いよいよお披露目。
「さて、では私は親近感を感じる責任者さんと技術者な皆さんと駄弁るとするです」
エリアス・トートセシャ(ka0748)は、ミケーレの隣に陣取ってモデルの登場を待つ。
探究心が募る余りに軍隊を飛び出すという経歴を持つ彼女には、ミケーレが他人とは思えなかった。
(なんだか私の未来を見ているような気がしてやまないのです)
自分が男だったら、ほぼ確実にこうなる自信がある、という位に。
「こんな感じのが欲しいんだよね」
ウーナの紹介で、まるごとでゅみなすを着込んだ屋外による実演が開始された。
「いけ、でゅみなす!」
研司のリモコン操作で着ぐるみを動かすと、でゅみなすが気合いと根性でカッコイイポーズを取るぞ!
「人型二足歩行の利点といえばなんといっても『手』です」
モデルを前に、エリアスが解説する。
「手があるからとっさの事態に対応しやすく、道具もいろいろ扱える。さまざまな状況に対応しやすいので汎用としては申し分がないのです」
とは言え、汎用であるが故に専門には劣りやすいという欠点もあった。
「基本的に人型は水中を泳ぐのには向きませんし、地上を走るのにも向きません。空を飛ぶのにもです。敵方は専門である場合が多いですからね」
そう考えると外部装備でどれだけ補えるか、もしくはデュナミスをベースにしてどれだけ専門化できるかが今後の発展の鍵になるだろうか。
「いや、ちょっと待て」
外部装備の話が出たところで、でゲンから待ったがかかる。
「アサルトライフルとナイフは良いが、他にカタナとシールドも持ってなかったか?」
自分が乗ったものは、確かそんな装備だった。
「それなら、俺のカエトラを貸そう」
ザレムが持たせる。
「カタナは俺のグロムソードで良いかな」
こちらはリック提供。
ずっしり思い装備を振りかざし、でゅみなすが喋った。
「自分は Catbuster Aggressive-Possession Mode 略してCAM」
「あ、ほら! やっぱり猫ですよ!」
フロルが嬉しそうな声を上げる、が。
「そこは正確に伝えた方が良いと思うぞ?」
ゲンからの、更なるダメ出し。
自分の知識に固執はしないが、明らかに間違った説明は訂正せざるを得ないだろう――後々の為にも。
「ところで、個人的にはCAMにはドリルが似合うと思うんだがな」
という事で、魔道ドリルを更にドン。
「敵の固い装甲に文字通り穴をあけられるのは有効な場面もでてくるんじゃねえか? あと見た目もカッコイイしな!」
言われて、でゅみなすは必死にポーズをとる。
大丈夫だ、持久力と、後は勇気で!
「人型のまま偏らせていくのか、大きく形を変えてしまうのかも気になるところです」
エリアスは持論を続けた。
「ちなみに個人的におすすめなのは犬型です」
でゅみなすが四つん這いになる。
「四足で安定してますし尻尾を使えば手の代用も難しくないのです」
尻尾を振って見せようとしたが――まるごとでゅみなすに尻尾はなかった。残念。
「当面の一番の問題は燃料なんですけどね」
石油で行けるなら、アルコールで代用できるだろうかと考えてもみたが、それが可能ならとっくに実用化されている気もする。
「一番の理想はマテリアルのみで動いてくれることですけど、ここは魔道甲冑でしたっけ?に期待しているのですー」
確か帝国で開発中、だった様な?
実演で大体の感触を掴んだら、次は模型だ。
「この間はネコの置物をありがとう。その恩返しと言っちゃ何だが」
「いいえ、こちらこそ~。お陰で助かりましたよー」
フロルはリックに手渡された模型をしげしげと眺める。
「良く出来ていますねー」
でも惜しいな、猫耳付ければもっと可愛いのに。
店にも置けるかもしれないのに――って、あくまで猫ですか。
「執事さんとメイドさん、今日も素敵な毛並みです」
もふもふ。
シグリッドも、目当てはあくまで猫だった。
「これを読んでも、さっぱりわからなかったのです」
お土産のツナ缶を開けながら『犬でも解るリアルブルーの歴史』という本を取り出してみる。
「なんかCAMのことも書いてあったんですけど」
やはり『猫でも解る』でないと駄目なのだろうか。
もう一冊の『簡単! 実践! ロボット工学』はミケーレなら多分わかるんじゃないかな。
そのミケさんは、模型の組み立てに夢中になっていた。
手を動かしながら、皆の話も耳を傾ける。
「CAMは、リアルブルーで『ヴォイド』と呼ばれるものに有効打を与えられる兵器として、配備が進んでいる物です」
天央 観智(ka0896)が言った。
「ラッツィオ島の一件から見て、リアルブルー側でヴォイドと呼んでいるモノと、こちらで歪虚呼んでいるソレは、同様の物だと思われます。従ってCAMもまた、こちらの世界でも有効な兵器となるでしょう」
「ああ、確かにな」
ゲンが頷く。
「俺はLH044脱出の時にCAMに乗ってヴォイドと戦った」
「それで、どうだった? 実際に乗ってみた感じとか」
そう尋ねたのはザレムだ。
「そうだな、CAMと同じ程度の大きさのヴォイドとも対等に戦えた感触はあったな。戦力として、こっちでも気軽に使えたらかなり戦果も期待できるか?」
「特性としては、攻撃手段であると同時に、乗り物でも防具でもあるという点が挙げられますね」
観智が続ける。
「CAMの動力源は、マテリアル燃料と呼ばれている石油を精製した特殊燃料で、動力はマテリアルエンジンと呼ばれている物です。どちらもトマーゾ教授という人物が開発した物ですが……」
「その燃料がこっちでは手に入れられず、原理も本人しか理解してないらしいって言うのが使いづらいところだよな」
ゲンの言葉に、観智は「これは僕の仮説ですので、確実な事は言えませんが――」そう前置きをして、続けた。
「もし、この世界で言うマテリアルと、リアルブルーのマテリアル燃料が同様のモノなら、CAMは一応便宜上、機導装置という事になると思われます」
燃料の問題さえ解決出来れば、こちらの世界で作る事も可能かもしれない。
「CAMは覚醒者でなくても使える様ですので、操作に成熟・動力源・運用体制・量産が揃えば、ヴォイドへの対抗手段の一つには成ると思いますよ」
「量産、か。町工場でも作れる様になったりするんだろうか」
またもザレムが尋ねる。
その熱心さはミケーレをも上回りそうな勢いだ。
「もし出来るなら、動いてる実物が見たいな」
魔道アーマーとのハイブリッドが上手くいったらきっと動く。
「マテリアルエンジンの代替エネルギーへ一歩前進ってことだから、ゆくゆくはあの戦艦サルバトーレも動かせるかもしれない。そう思わないか?」
「あのデッカイのをか?」
模型を弄り回しながら、ミケーレが言った。
「そりゃ楽しそうだが、俺んトコみたいな小さい町工場じゃなぁ」
それを聞いて、猫達にカッテージチーズをお裾分けしながら、屋外が力説する。
「リアルブルーには、激しい戦闘が続く中で民間会社がメカを開発し続け、結果的にそれが勝利の鍵となった実例があります」
実例と言っても、それは彼がサイボーグに憧れる原因となった、とあるアニメの話ではあるが。
「ですから、勝利の鍵を見出すのはミケーレ殿に違いないのです!」
パイロットは勿論、白黒の猫精霊と共に戦うフロル殿で!
「手伝える時は自分も駆け着けます!」
「お、おう、そりゃどうも……」
とりあえず金属でミニチュアを作るあたりから始めてみようかな?
「なら、これをどうぞ?」
美華が皆で作った冊子を差し出す。
抜粋とは言え、かなり詳しく書かれているし――
「え、どれどれ、あたしも読みたい!」
ウーナが身を乗り出して来た。
「デュナミスとか新しいヤツはは全然知らないんだもん。解説するから、一緒に読んでいい? いやもう読ませろー!」
あ、取り上げられた。
後でちゃんとミケさんに渡してあげてねー?
「あと、これは古いものですが」
美華が居住区で集めた雑誌の束を置く。
蒼界の文化もわかって一石二鳥?
技術者同士、専門用語が飛び交う会話に混ざれないシグリッドとフロルは、差し入れのきのこのキッシュでのんびりお茶会。
モデルをこなしてお疲れの屋外も、パンとチーズで一緒に休憩。
「よーし、一通り説明は終わったな! じゃあ次はマイCAMモデルでブンドドだー!」
研司の声で、男の子達はすっかり童心に返る。
「CAMは歩き、走り、ジャンプしたり、宇宙を飛んで戦うんだ!」
ほら、こんな風に!
「CAMを動かしてる感覚で、思いっきり遊ぼう!」
あ、ただ遊んでる訳じゃないよ!
「遊びを通して学ぶって事だよな」
自分も模型を手に、リックが苦笑い。
昔もこんなオモチャで遊んだ事があったっけ。
「じゃ、いくぞー!」
ぶぅーんどどどー!
結論。
CAMとは何か、何となくわかった。
今は多分、それで問題ない。
依頼結果
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面白かった! | 10人 |
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相談卓 ウーナ(ka1439) 人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2014/11/27 23:28:58 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/25 22:30:35 |
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質問卓 屋外(ka3530) 人間(リアルブルー)|25才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/11/27 03:12:58 |