ゲスト
(ka0000)
【CF】ささやかなお祝いを
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/12/20 19:00
- 完成日
- 2017/12/29 19:15
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「いやあ、今年も聖輝節! ケーキやお菓子に囲まれるシーズンでありますなあ!」
今日も今日と手チューダはそう言い、にこにこと笑う。
鉄の胃袋……というか、ブラックホール級の胃袋をしているチューダにとって、ご馳走が振る舞われる聖輝節は何よりも楽しい季節。……もっともチューダは正月やバレンタイン、花見やハロウィンなども思い切り満喫するお祭り騒ぎ大好き幻獣王なのだけれども。
「と言っても、昨年は美味しそうなお菓子のおうちでかなり満足してしまったのであります……今年は、何か肉けを満喫したいところでもありますなあ」
相変わらずの食いしん坊ぶりでのそのそと大霊堂を歩いている。最近はハンターたちの要請を受けてあちこちに出かけることも多くなったチューダ、これも幻獣王の役目といって引き受けているが、それにしても今年は今年でまた疲れた。
「そういえば、リムネラから手紙が来ていたでありますな……って、おお?!」
どこからともなく取り出した封筒を開けてみれば、そこには可愛らしいブローチが。ふくふくとした触り心地のそれは、チューダの顔にどことなく似ていた。
同封されていた手紙によれば、なんでも、近所の手芸店で羊毛フェルトなるものを教えてもらい、その習作品なのだという。
「ほほう、見事に我輩でありますな! しかも面白い……これはハンターの面々にも経験して貰いたいところであります!」
チューダはすぐさまリゼリオへと足を向けた。
●
――と言うわけで。
「自分の好きなフェルトブローチを作って、その後にお茶会などすれば、楽しいかと!」
チューダは後半のほうをとくに楽しみにしているような顔をしているが、まあ確かにいわんとすることはわかる。
手作りのフェルトブローチともなれば、プレゼントにも持ってこいであろうし、季節感も楽しめる。チューダの提案は、時に正鵠を射るのだ。
「素敵デスね! そう言う手作りのアクセサリーにハ、キット想いが込められてマスから……」
提案されたリムネラも、嬉しそうにはしゃぐ。彼女はみんなが楽しめる平穏な聖輝節を望んでいたのだから、ある意味当然かも知れないが。
「折角なら、ユニオンのスペースを使えバ、ささやかなパーティもそのまま楽しめマスし……募集、かけてみマス!」
リムネラは、嬉しそうにポスターを作り出した。
ささやかな幸せを、ガーディナで祝いませんか――?
「いやあ、今年も聖輝節! ケーキやお菓子に囲まれるシーズンでありますなあ!」
今日も今日と手チューダはそう言い、にこにこと笑う。
鉄の胃袋……というか、ブラックホール級の胃袋をしているチューダにとって、ご馳走が振る舞われる聖輝節は何よりも楽しい季節。……もっともチューダは正月やバレンタイン、花見やハロウィンなども思い切り満喫するお祭り騒ぎ大好き幻獣王なのだけれども。
「と言っても、昨年は美味しそうなお菓子のおうちでかなり満足してしまったのであります……今年は、何か肉けを満喫したいところでもありますなあ」
相変わらずの食いしん坊ぶりでのそのそと大霊堂を歩いている。最近はハンターたちの要請を受けてあちこちに出かけることも多くなったチューダ、これも幻獣王の役目といって引き受けているが、それにしても今年は今年でまた疲れた。
「そういえば、リムネラから手紙が来ていたでありますな……って、おお?!」
どこからともなく取り出した封筒を開けてみれば、そこには可愛らしいブローチが。ふくふくとした触り心地のそれは、チューダの顔にどことなく似ていた。
同封されていた手紙によれば、なんでも、近所の手芸店で羊毛フェルトなるものを教えてもらい、その習作品なのだという。
「ほほう、見事に我輩でありますな! しかも面白い……これはハンターの面々にも経験して貰いたいところであります!」
チューダはすぐさまリゼリオへと足を向けた。
●
――と言うわけで。
「自分の好きなフェルトブローチを作って、その後にお茶会などすれば、楽しいかと!」
チューダは後半のほうをとくに楽しみにしているような顔をしているが、まあ確かにいわんとすることはわかる。
手作りのフェルトブローチともなれば、プレゼントにも持ってこいであろうし、季節感も楽しめる。チューダの提案は、時に正鵠を射るのだ。
「素敵デスね! そう言う手作りのアクセサリーにハ、キット想いが込められてマスから……」
提案されたリムネラも、嬉しそうにはしゃぐ。彼女はみんなが楽しめる平穏な聖輝節を望んでいたのだから、ある意味当然かも知れないが。
「折角なら、ユニオンのスペースを使えバ、ささやかなパーティもそのまま楽しめマスし……募集、かけてみマス!」
リムネラは、嬉しそうにポスターを作り出した。
ささやかな幸せを、ガーディナで祝いませんか――?
リプレイ本文
●
聖輝節と一言でいっても、恋人と祝う、家族と祝う、友人達と祝う……その過ごし方はそれぞれだ。祝う日だって、当日に拘る人もいるし、気持ちが第一という人も多い。
そんな中、聖輝節当日を控えた辺境ユニオン「ガーディナ」では――。
「結構人が集まったのでありますな!」
今回の言い出しっぺたる幻獣王(自称)・チューダがじまんげに身体の毛をそよがせる。
フェルトアクセサリ作成会と、それが終わってからのティパーティ。本当にささやかな幸せを噛みしめることの出来る機会を――と思っていたが、反響が良かったらしい。流石(自称)幻獣王と言うべきなのだろうか。
横でリムネラも嬉しそうに笑顔を浮かべる。人で賑わうユニオンの光景は、やはり見ていて嬉しいものなのだ。
アクセサリの作成会はやはり女性の参加者が多めのようだった。
というか、今回はパーティになっても男性の参加は少ないらしい。やはり手芸というのは男性には一つネックなのだろうか?
女性参加者のほうも、恋人への贈り物という人ももちろんいるだろうが、友人と連れだって参加している方が多そうで、むしろこれはこれで楽しいのだろう。
初心者でも大丈夫なよう、近くの手芸店から講師を招いてもいる。得てして女の子はこういうアクセサリ作りが好きなものが多いものだ。
材料などは持ち込みが可能、パーティの席での持ち込みも羽目を外さない程度に可能、と言うことで、作成会の時にも軽くつまめるお菓子も持ち込んで、このイベント自体も女子会っぽく楽しもうという面々もいる。
たとえば、ベル(ka1896)とその友人の泉(ka3737)はエルフとドワーフという、一見凸凹コンビだが、仲の良さはばつぐんだ。
ベルは純粋で人懐こく、泉も元気で感情のはっきりしたタイプ。なんとなく似たもの同士の二人だからこそ仲良くなれているのかも知れない。
「このおかしはチューダにはやらんのんじゃもん。いっぱいあそぶんじゃもん♪」
泉はそう言いながらぴょんと跳びはね、ベルはその泉の言った羊毛も食べれるのでは、と言うようなことを真に受けて口に含んでみる。色々情報が多くなると頭の中で混乱してしまいやすいのだそうだ。
「わたあめも、ジンギスカンも、よーも―じゃもん? だからこれ、たべられるじゃもん?」
「うんうん、これすっごくおいしーねー!」
不思議な論理を展開する泉と、それを真に受けてフェルトを口に含んでしまうベル。
いや、そんなことは無いはずなのだが。
二人がつくるのは、お互いに交換する為のアクセサリだ。
ベルは自分がつけているカウベル風の形のバッチ、泉は白とピンクの二色で彩った花をモチーフにしたバッチ。
(みどりのはっぱをつけたら……ベルみたいじゃもん。はるのえがおのおはな、だいすきなベルにプレゼントじゃもん♪)
泉は頑張ってちくちくちく。
ベルも、普段から自分のつけているカウベルを模したものをあげる、というのはお揃いをあげると言うことに繋がるらしく、こちらも一杯一杯になりつつではあるが頑張ってちくちくちく。
こんな光景もまた、二人が仲良しという証である。
この二人もだが、今回がフェルト細工初挑戦というものは少なくない。桜憐りるか(ka3748)に誘われてやってきた黒の夢(ka0187)もそんな一人で、早速楽しそうに手を動かしている。
手芸はもともと得意な黒の夢、カンをつかむ為にとまずは手慣らし感覚でグラデーションを丁寧に施した桃のパーツを作った。ブローチにして、これはチューダにプレゼント。チューダも満足げに、それを受け取ってマントに早速つけている。
「んぅ……なるほど、こうなっているの……ですね」
その横でりるかはそんな黒の夢のはじめてとは思えない手つき、そして黒の夢本人の横顔を何度も横目で眺めつつ、黒猫のモチーフでなにやら作っている。金のアクセントは、どうやら黒の夢をイメージしてのことらしい。
(黒の夢さんの、無事と、やりたいことが上手くいきますように)
そんな願いを込めた、可愛らしいカウベル風チャーム型だ。
黒の夢の方も、桃ができあがると、次はりるかをイメージしたであろう白ベースの三毛猫マスコットを作っている。黒と、もう一色使っているのは桃色だ。猫の後頭部には桜の紋様。顔はごくシンプルに、しかし可愛らしく。りるかが普段から使えるよう、簪の飾りにと言うことらしい。簪には赤い糸で、小さな鈴を添える。幸せを祈っての二重叶結び、小さな輪の部分に鈴が来るように整えて。
そもそも、フェルト細工はなかなか難しいものもあるが、基本はふわふわのフェルトに針でぷすぷすちくちくと刺して形を固定させ、形作っていくものだ。良くあるデザインと言えば、動物や花と言ったものだろうか。創意工夫次第で色々なデザインの作りようがあるので、凝ったものもそれなりに作れるのが強みと言えるかも知れない。無論、大きくなればなるほど、使うフェルトの量も増えるのだが。
また、リアルブルーでは、ペットの毛を混ぜ込むといったものもある。動物アレルギーの場合は困るかも知れないが、そうでなければ愛犬や愛猫の毛でつくるアクセサリーにもなるので、それもそれで人気のある創作物になるのだと言うことだった。
説明を受けながら、ふむふむと頷いているのは志鷹 都(ka1140)。聖夜に生まれた愛娘を思い、彼女への贈り物として自分をいつも助けてくれるユグディラのルーシーを模したマスコット作りに一生懸命になっている。使う色は、白、黒、灰色、茶色、桃色、クリーム色。子どもを思うがゆえ、その指は丁寧に、優しく動いている。少し丸みを帯びたデザインなのは、子どもを思ってのことだろう。往々にして、子どもは丸っこいデザインを好むものなのだ。あえて固くしないで、ふわっとした感じを残すのはいかにも母親らしい配慮である。
口元からこぼれる笑みには、かつてお腹に宿った小さな命をおもっての懐かしい思い出がよみがえっているのだろう。
「可愛らしいデスね……!」
リムネラも都のそのマスコットを見て、口元をほころばせる。母親の手作りは、何よりも嬉しい贈り物だ。
その横では、
「日頃からの感謝を込めて……」
と、Uisca Amhran(ka0754)が白龍をもしたマスコット作りの大量生産に励んでいる。
「たくさんデスね?」
リムネラが近づいてみると、イスカはぱっと顔を明るくさせた。
「あ、リムネラさん! ええ、恋人や姉さま、それにチューダさまと言った、日頃お世話になっている人に差し上げたくて……喜んで貰いたいから」
もちろんリムネラにも、なのだが、本人の前ではさすがにそれは口にしない。にしてもモチーフに白龍を選ぶのは、やはり彼女が巫女であるということをいつも胸に刻んでいる証なのだろう。
北谷王子 朝騎(ka5818)も、黙々となにやらこしらえている。どうやらチューダのぬいぐるみのようだ。……ただ、被っているのは何故か王冠ではなくいちごパンツなのだが。
「ど、どういうことでありますかこれはー!?」
チューダが目をぱちくりさせて問いかけると、朝騎は厳かそうな声で言った。
「これはチューダではなく、神風を巻き起こし、パンチラを起こす……そう、この世のパンチラを司る幻の幻獣王・パンチューダ様なのでちゅ。きのう、ご神体を作りなさいと夢にでたんでちゅよ」
いつもと変わらぬ冷静(?)な口ぶりで、大まじめにそんなことを言う。普段からよく分からない妄想を口走り、パンツとちっちゃ可愛い女の子が好きな、まあハンターに稀に良くあるタイプの人間ではあるのだが、それにしてもパンツのインパクトは半端ない。
「我輩、こんなはれんちな姿はしないでありますよー!?」
「大丈夫でちゅ、これはあくまでパンチューダ様でちゅから」
チューダの言葉を余所に、朝騎はのんびりと応えている。完成の暁にはあとで頭に乗せるつもりらしいから、まあやっぱり良くも悪くも面白いハンターであるのは間違いなかろう。
(いつもだったら食い気に走ってるけど、形に残るものを作ってみたいニャスな)
そんなことを思いながら、ミア(ka7035)も手をせっせと動かしている。小ぶりなブローチをいくつか作ってみたいと思ったらしい。
「にゃ、真っ白と真っ黒……そういえばミアのお友達にも、真っ白な猫さん、真っ黒な猫さん、真っ黒な犬さんもいるニャスなぁ……」
フェルトの材料になる羊毛を手にして、思い浮かべたのは見知った顔を動物に喩えた姿。思い浮かべてしまうと、そのまま手がそれらしい、白猫に黒犬、それに下三角目な黒猫モチーフのブローチを作っていた。もちろん、自分用にも。髪の色をイメージして、桃色の猫だ。それにブローチパーツをくっつければ、可愛らしいブローチの完成と相成る。
(本当はもっと作りたかったニャスな)
ほんのり歪んでいたりもするけれど、まるまるふくふくとした、手作りらしい暖かみのある可愛らしい見た目だ。初めてであることを考えれば、十分な出来だろう。
「そういえば、あの生き物は……ニャんニャス?」
まだ新米ハンターの彼女は、名前こそ知っていても実物を見たことがなかったのだろう。チューダを不思議そうに見つめている。
周囲から幻獣王であることを教えてもらうと、ぱっと目を輝かせて、チューダになにやらさしだした。……おにぎりだ。
「おにぎり、食べるニャス?」
「おおー、有難く頂戴するのであります!」
チューダも嬉しそうに近寄ってにんまりしながら受け取る。
そんな光景は、誰の目からも微笑ましく感じられるものなのだった。
●
やがてフェルト体験会も終わりを迎え、ティパーティの時間になる。
それまで広げていた手芸道具一式をさっと片付け、机の上には温かい紅茶やコーヒー、ホットレモネードにサングリア風のグレープジュースなどが並べられる。
また、食べ物のほうも、前日に仕込んでいたらしいリムネラ特製のジンジャーマンクッキーや、ユニオンの仲間たちと作ったケーキがとんとんと置かれている。
持ち込みありと言うことで、色々持ち込んできたものも多い。そのなかでも鳳凰院ひりょ(ka3744)の持ち込んだものは、紅茶だった。
「焼き菓子なら丁度いい。合わせやすいだろう」
初対面のリムネラにもきちんと挨拶。
「初顔あわせになるか……鳳凰院ひりょという。焼き菓子の準備、感謝だ。これだけの数を準備するのは大変だったろう。お礼と行っては何だが、紅茶はこちらで振る舞わせてもらおうと思う」
そう言うと、小さく微笑む。紅茶といっても一言でまとめてしまうのは困難な代物で、茶葉や発酵、そんなもので色や口当たりも変わってくる。ちょうどリムネラが用意していたものとも違う口当たりの良い紅茶は、だれもが笑顔を作ることができるだろう。
年末の忙しい時期だからこそ、それを少しでも忘れられるような気持ちになれるパーティを、と言うことなのだから、ある意味年納めのパーティといって過言ではないだろう。
そのパーティを、興味深くきょろきょろしていたのは根国・H・夜見(ka7051)、オートマトンの少女だ。
「いやー贅沢っスね、あんな大きな鼠もたべていいんスかー♪」
チューダを見てよだれじゅるり。……慌てて周囲が止めると、驚いたように瞬きする。
「え……あれ、幻獣なんスか? そんなバナナ……って、ええ!? 幻獣って、もっとキリッとかっこいいものじゃないんスか……!?」
かなり衝撃を受けたらしい。まあ、幻獣にも個体差は存在するというやつなので、そこは仕方がないのである。
夜見も先ほどまでの体験会に参加していて、可愛らしい林檎のブローチをこしらえたばかり。それを胸にちょんとつけ、焼き菓子を見て顔をほころばせる。どれも美味しそうで、どれから食べるか迷ってしまいそうだ。
「あ、そうだ……チューダさん! さっきはすまなかったス! これマカロンだけど、食べるっスか?」
そう差し出すと、チューダはにんまりと笑ってそれを早速ぱくり。甘いものが好きな幻獣王、これでさくっと懐柔出来る程度にはちょろいのだ。
「むしゃむしゃ……おお、おいしいであります! 新米ハンターなら我輩を知らないのも当然、これから頑張るのでありますよ!」
激励の言葉をかけたりなんかして。
「先ほどのフェルト体験会は面白そうでしたね。もっとも、材料の量的に、防寒用ととしてではなく、あくまで装飾目的ではありそうですけれど」
この時期ならカーペットやカーテンに用いるのも軽くてあたたかくていいですよね、としっかり考え込んでいるのは智の求道者とも言える天央 観智(ka0896)。
「……そういえば、ああいうものの染料って、どんなものを使っているんでしょうね?羊毛のイメージは基本的に白に近いものでしたけれど、結構カラフルですよね、アクセサリなどを見ていると」
まあ確かにそうなのだが、返ってくる答えがあるのかははなはだ謎だ。そこまでは追求しないもののほうが、基本的に多いからである。まあ、こういう少し珍しいものの流通はたいてい同盟がらみの商人が多いだろうな、と言うことは思うだろうが。
そんなことを、甘いココアを口に運びながら思うわけだから、なかなか近寄りがたくはあるかも知れない。たまたま近くにいたひりょから紅茶も勧められ、そちらも飲んでその味を解説し始めたり。本人達はそんな交流も楽しめるのが、こういったパーティの醍醐味だとも思うから、楽しんでいるのは無論間違いないが。
「ハンターになってからしばらくたつが、こんな穏やかなクリスマスもいいものだな」
「そうですね。きな臭い動きは各地にありますが、無事に年を越せるのはなによりです」
近くを通りかかった補佐役のジークも捕まえて、男三人そんな穏やかな会話をしている。
その一方で、ベルと泉、黒の夢とりるかなどは先ほどこしらえたアクセサリを交換。うん、傍目にはある意味リア充爆発しろなんて言葉が浮かぶかも知れない。それでも友情の証なのだから、それは大切なモノに違いないのだが。
「イズミとおそろい、うれしいなー♪」
そう言いながら飛び跳ね、カラコロと首もとのカウベルを鳴らすベル、
「おそろい、おそろいじゃもんっ♪」
同じように飛び跳ねる泉。
「こうやって何かを一緒に出来るのは、嬉しい、ですね」
リルかも微笑みながら先ほどのマスコットを手渡すと、黒の夢も簪を手渡し、そして
「えへへ! そうなのな、にゃーにゃーなのなー」
貰ったマスコットを大事そうに抱える。
そしてリムネラのところにも――
「はい、リムネラさん! 折角同郷の巫女なのに普段はなかなか話せていないけれど、お互い白龍様の教えを胸に来年も頑張ろうね!」
イスカがそう言いながらにっこりと白龍マスコットを渡してくる。リムネラもちょっとしたサプライズに口を綻ばせ、
「ありがとうございマス……来年もがんばりまショウ」
そう微笑み返すのであった。
もちろん、パーティと言うことで元気な仲間たちも多い。
アリア(ka2394)等もその典型だろう。先ほどまでの体験会にもこっそり参加してチューダ風のマスコットをこしらえたり、聖輝節を満喫している。
「ね、チューダ、チューダ。これ、美味しいよ!」
そう言いながらチューダにもふもふしつつ菓子を勧めたり、見知った顔、知らない顔……様々な人に話し掛けて楽しんでいる。
「うわ、これ自作なの?」
尋ねられて頷くのは手作りの料理をその場で(!)こしらえたというアイビス・グラス(ka2477)だ。あ、もちろん厨房を借りて、なのだけれど。
白身を軽くメレンゲ状にし、黄身とホットケーキミックスにほんのりマヨネーズやレモン汁を加えて焼いたそれは、どちらかというと甘いばかりでなく、少しの酸味が適度に効いていて、どこかふわふわさっぱりとした口当たり。
アイビスお手製のお菓子はさっとはけていく。聖輝節と言えば、という当たり前も好まれるが、それだけではないといういい例だ。
一方でそんな聖輝節ならではのものを持ち込む者もいる。
マリィア・バルデス(ka5848)はもともとリアルブルーでも甘いお菓子も酒もたくさん消費する国の出身と言うことで、ジンジャークッキーとルッセカット――レーズンを飾ったサフラン入りのロールパン――を持ち込んでいるし、
「聖輝節のケーキ……やっぱり定番でしょうかぁ?」
そう言いながら星野 ハナ(ka5852)が持ち込んできたのはブッシュ・ド・ノエル、それなりのボリュームで三本。彼女の頭の中で躍る文字は「甘いものは別腹」だ。マリィアも、
「この時期のクリスマスってどの地域でもとりわけ甘いお菓子を食べるでしょう? とくに連合宙軍に入ってからはみんなが地元のお菓子を作って持ち込んだりしていたから、この時期は楽しかったわ。アルコールもあれば文句なしだったのだけど……本当にそれだけは残念ね」
そんなことを言いながら、ホットグレープジュースを口にする。
「来年もまた、こういうパーティができるといいわね」
そんなことをしみじみと思いながら。
「他の国のクリスマス定番……これも興味があるのですぅ」
マリィアの言葉に、興味津々そうな顔をするハナ。
ちなみにハナは別のことにも感激していた。別のこと、それはリムネラの特製クッキーである。
「おお、リムネラさんの手焼きクッキーですぅ?! それは別の意味でプレミアものなのですぅ……」
そう言われると、リムネラも嫌な気持ちはしない。嬉しそうに微笑んで、
「遠慮せずに食べてくだサイね?」
そう言いながら、ハナのブッシュドノエルをお礼とばかりにぱくり。チョコクリームの樹皮が、口の中で甘く蕩けた。
ミオレスカ(ka3496)も、ボリュームたっぷりのケーキをブッシュ・ド・ノエルにして持ち込んでいた。
「肉料理を期待されていた方がいたらすみません。今年は、甘いもので。来年には、ローストシモフリなども作ってみたいのですが」
ミオレスカは控えめにそう言って、リムネラのクッキーを一口。
「……そういえば、モフ様はこちらにはおられないんでしょうか」
モフ様、というのは最近見つかった幻獣の一種だ。ユニオンでなら情報も得られると思ったのだろうが、なかなか難しいらしい。東方の一地方で、隠れるように(?)くらしていた幻獣、通称モフ様は、既にソサエティに存在を認められている。ただ、彼らがこれからどう扱われることになるかは、ソサエティ側の裁量次第、という感じなのだろう。
また、ハンス・ラインフェルト(ka6750)と穂積 智里(ka6819)のふたりの持ってきたのはシュトレンとレープクーヘン。シュトレンもレープクーヘンもドイツを中心に好まれるクリスマスならではのお菓子で、とくにシュトレンは薄めに切って食べることが出来る為こういう場にはもってこいだ。
「本当はグリューワインもちょっと飲んでみたかったですけど……いつかハンスさんと、ヴァイナハツ・マルクトは見に行ってみたいですね。出来れば、おじいちゃんおばあちゃんも、一緒に」
ドイツ系のコロニー移民だったハンスと、ドイツ系クォーターの智里。いわゆるリア充というやつのようで、ハンスは智里をしっかりとエスコートしている。荷物を持ってあげたり、そっと手を繋いでいたり。
「でもレープクーヘンは、どうしましょう。せっかくだし、飾ってから食べて欲しいですけれど……足りなくなったりしたら」
智里が不安そうに尋ねると、ハンスは造作もないといった様子で微笑みかえした。
「レシピを一緒に配ればいいでしょう。気になった方は、自分で作ればいいのです。折角の聖輝節、悩みすぎてもつまらないでしょう?」
優しいハンスの言葉に、智里も顔をぽっと赤らめて。
「そうですね……ハンスさん。あの、来年も……その、」
――こうやっていていいですか?
そう言いたげに、智里はそっとハンスの手を握り返した。
もちろん、色気より食い気のメンバーも数多い。
ディーナ・フェルミ(ka5843)も間違いなくそんな一人で、
(にゅふふ、食べて食べて食べまくるの、楽しみなのー!)
心の中でそう叫んで目を輝かせている。
ついでに言えば、今回はチューダの存在に惹かれて遊びに来た、と言うところも大きい。他にもそう言うハンターが何人もいて、夜桜 奏音(ka5754)は持ってきたお菓子を早速チューダに食べて貰っている。ディーナも持ってきていた栗やナッツをチューダに与え……というか口に突っ込んでいる。既にチューダの頬袋はぱんぱんだ。それでも食に貪欲なチューダはもっしゃもっしゃと食らいつくしている。流石、と言うべきか。
ちなみにディーナ、チューダに一通り食べさせ追えると自分が猛スピードで食べ始める。
「ごはんが有る限り別腹、おやつが有る限り別腹、飲み物が有る限り別腹なの~!」
その声はいかにも幸せ、といった感じだ。そんな一方で、
「チューダ様、こちらにもありますからどんどん食べてくださいね」
奏音もにこにこ笑顔でそう微笑む。
「でも……今年ももう少しでおわりですね。来年は、今年よりも落ち着いてすごせるといいのですが……」
そう、感慨深げに呟きながら。
そんな感じで、チューダに餌付け……もとい色々食べてもらいたいと思っているのは無論彼女たちだけではない。
「チューダ様! さぁ、じゃんじゃん食べましょう!」
アシェ-ル(ka2983)はそう言ってじゃんじゃんと色々な食べ物を持ってくるし、ベル=ベルファ(ka2670)も、チューダのことが随分と気になる様子。
「いや、ちらっと見掛けた時から気になってたんだよね、このもふもふした可愛い生き物……!」
ベルファはそのやわらかい毛並みをもふもふもふ。
「しかも、ユニオンに来てるなんて知らなかった……! 普段は遠出していることも多かったからかな、悔しい……」
だからこの機会にたっぷりもふりたいのだそうで。ふくふくと丸い体型にその毛並み、その上今日はたっぷり食を満喫しているわけだから、そのふくよかさは当社比数割増し。
「お菓子をいただけるとうれしいでありますなあ」
と言えば、だれかからすっとマカロンやケーキといったものが飛んでくるし、チューダにしてみれば極楽な環境なのは間違いない。
しかもハンターのなかには遠慮無く食べ物を突っ込んでくる面子もいたりする(そのぶん運動もさせられるが)ので、チューダとしても大変ではあるが楽しんでいるのも間違いなかった。
「もうおしまいなのですか? まだこんなに残っていますよ!」
なんていうアシェールなどの言葉を聞けば、頑張って食べようと言う気にもなる。運動させられることは判っていても。
そんな中、鶏もも肉のパイ包み焼き、なんていうメニューを持っていているのはエルバッハ・リオン(ka2434)。
「チューダ様、私の作った料理です、もしよかったら」
そう言って差し出すと、チューダはもちろん嬉しそうにそれを口にする。と、エルバッハは静かにこう付け加えた。
「よく味わって食べてくださいね。……それが最後の食事になるかもしれませんし」
その言葉に、一瞬ふるえるチューダ。
「まさか、この料理に毒でも……!?」
「いえ、そんなことはありませんが」
エルバッハの言葉は更に続く。
「でも、明日からのダイエット計画を立てておきました。死なない程度に絞っていきますので、覚悟をしておいてくださいね」
そう言って小さく笑う。自堕落なチューダをなんとかしたいという心からの言葉だが、チューダには随分ショックだったようだ。
「うう……我輩、うまいものを食べられるのはこれが最後なのかも知れないのでありますな……」
そんな力ない声を呟きながら、チューダはため息をついたのだった。……まあ、すぐに元気も復活するのが、この幻獣王のタフなところではあるのだが。
ネーナ・ドラッケン(ka4376)は、焼き菓子を食べてひと心地ついてから、手元の竪琴を引き寄せる。
「なかなか素敵な催しだね。僕も折角だし、お礼に一曲披露させてもらおうかな」
そう言うと、ゆっくりと竪琴を爪弾き出す。
しっとりと華やかなメロディが、パーティに花を添える。
明るくのんびりとしたメロディは何処か耳慣れぬ響きもあって、オリエンタルと言うべきなのかも知れない。
それをマイペースに弾きこなす姿は、何処か――リムネラの姿を彷彿とさせる。
それを聴いて、心が疼いたのだろう。アリアが楽しそうに、手にベルを持ってリズムを取りながら、よく響く声で即興の歌を歌い出す。
「チューダ、チューダ、とってももふもふー♪」
メロディを壊さぬ、心地よいハーモニー。
やがて曲が終わり、歌も終わると、皆が嬉しそうに拍手を送る。
アリアはにこにこと笑ってぺこりと礼をし、ネーナもにっこり笑う。
「そういえば、この曲にタイトルはあるの?」
アリアが問いかけると、ネーナはいいや、という感じに首を横に振った。
「折角この機会を設けてくれたリムネラさんをイメージしてね。曲も反響良かったし、もしよければこの曲に【リムネラ】と名付けてもいいかな?」
ネーナがそう言うと、リムネラは嬉しそうに顔を綻ばせ、そしてこくっと頷いた。
ところで。先ほどからぱんぱんになるレベルで食べ物を詰め込まれていたチューダであるが、ちらっちらっとそれを眺めているのは彼のことを師と仰いでいる奇特な……青年、雪都(ka6604)である。普段ならもう少し積極的にチューダに近づくのだが、今日に限って言えば不思議と二の足を踏むような姿を取っている。
(先生ほどの方であれば、きっと女性の扱いにも慣れているはず……相談したいけれども……)
むしろ男女を問わず適度に弄られているのがチューダの常なのだが、まあそれは眼に入っていないらしい。たしかに女性人気は高いことは否めないが、それは往々にして愛玩動物的な感情である。
しかし、そんなチューダの様子を先ほどからちらちら見ては大まじめにメモに取っている。
多彩なコミュニケーションを取るチューダの姿には、いつも色んな意味で驚かされているが、今日ももちろんそんな様子だ。
雪都としては憧れる構図ではある。しかしその理由というのは、最近とある女の子に想いを寄せている、というのが大きな理由なのである。流石にこれをすんなりと相談するのは難しく、人生の師たるチューダの行動を参考にしたいと思ったのである。
(でも……先生のまま真似はできない、いやむしろしたら駄目だ……)
うん、とどまっている方がきっと正解だろう。
頑張ってメモを取ってはいるが、それが参考になる日は恐らく来ないであろうから。
●
そんな感じで、時間はあっという間に過ぎていく。
「今日は楽しい時間をありがとうございマス」
リムネラは笑顔を浮かべてお礼を言った。
「マタ、年が明けたら色々あるかも知れないデスけど……がんばりまショウ、ね」
そう、言葉を締めくくった。
聖輝節が終わればあっという間に新しい年。もう、あと幾つ寝ると新年なのか。
そんな新しい年を間近にして、ハンターたちはそれぞれ、穏やかでささやかな、幸せな時間を過ごせたことを幸福と思うのだった。
なお、余談だが。
チューダは今回もまるまると肥えた様子である。
聖輝節と一言でいっても、恋人と祝う、家族と祝う、友人達と祝う……その過ごし方はそれぞれだ。祝う日だって、当日に拘る人もいるし、気持ちが第一という人も多い。
そんな中、聖輝節当日を控えた辺境ユニオン「ガーディナ」では――。
「結構人が集まったのでありますな!」
今回の言い出しっぺたる幻獣王(自称)・チューダがじまんげに身体の毛をそよがせる。
フェルトアクセサリ作成会と、それが終わってからのティパーティ。本当にささやかな幸せを噛みしめることの出来る機会を――と思っていたが、反響が良かったらしい。流石(自称)幻獣王と言うべきなのだろうか。
横でリムネラも嬉しそうに笑顔を浮かべる。人で賑わうユニオンの光景は、やはり見ていて嬉しいものなのだ。
アクセサリの作成会はやはり女性の参加者が多めのようだった。
というか、今回はパーティになっても男性の参加は少ないらしい。やはり手芸というのは男性には一つネックなのだろうか?
女性参加者のほうも、恋人への贈り物という人ももちろんいるだろうが、友人と連れだって参加している方が多そうで、むしろこれはこれで楽しいのだろう。
初心者でも大丈夫なよう、近くの手芸店から講師を招いてもいる。得てして女の子はこういうアクセサリ作りが好きなものが多いものだ。
材料などは持ち込みが可能、パーティの席での持ち込みも羽目を外さない程度に可能、と言うことで、作成会の時にも軽くつまめるお菓子も持ち込んで、このイベント自体も女子会っぽく楽しもうという面々もいる。
たとえば、ベル(ka1896)とその友人の泉(ka3737)はエルフとドワーフという、一見凸凹コンビだが、仲の良さはばつぐんだ。
ベルは純粋で人懐こく、泉も元気で感情のはっきりしたタイプ。なんとなく似たもの同士の二人だからこそ仲良くなれているのかも知れない。
「このおかしはチューダにはやらんのんじゃもん。いっぱいあそぶんじゃもん♪」
泉はそう言いながらぴょんと跳びはね、ベルはその泉の言った羊毛も食べれるのでは、と言うようなことを真に受けて口に含んでみる。色々情報が多くなると頭の中で混乱してしまいやすいのだそうだ。
「わたあめも、ジンギスカンも、よーも―じゃもん? だからこれ、たべられるじゃもん?」
「うんうん、これすっごくおいしーねー!」
不思議な論理を展開する泉と、それを真に受けてフェルトを口に含んでしまうベル。
いや、そんなことは無いはずなのだが。
二人がつくるのは、お互いに交換する為のアクセサリだ。
ベルは自分がつけているカウベル風の形のバッチ、泉は白とピンクの二色で彩った花をモチーフにしたバッチ。
(みどりのはっぱをつけたら……ベルみたいじゃもん。はるのえがおのおはな、だいすきなベルにプレゼントじゃもん♪)
泉は頑張ってちくちくちく。
ベルも、普段から自分のつけているカウベルを模したものをあげる、というのはお揃いをあげると言うことに繋がるらしく、こちらも一杯一杯になりつつではあるが頑張ってちくちくちく。
こんな光景もまた、二人が仲良しという証である。
この二人もだが、今回がフェルト細工初挑戦というものは少なくない。桜憐りるか(ka3748)に誘われてやってきた黒の夢(ka0187)もそんな一人で、早速楽しそうに手を動かしている。
手芸はもともと得意な黒の夢、カンをつかむ為にとまずは手慣らし感覚でグラデーションを丁寧に施した桃のパーツを作った。ブローチにして、これはチューダにプレゼント。チューダも満足げに、それを受け取ってマントに早速つけている。
「んぅ……なるほど、こうなっているの……ですね」
その横でりるかはそんな黒の夢のはじめてとは思えない手つき、そして黒の夢本人の横顔を何度も横目で眺めつつ、黒猫のモチーフでなにやら作っている。金のアクセントは、どうやら黒の夢をイメージしてのことらしい。
(黒の夢さんの、無事と、やりたいことが上手くいきますように)
そんな願いを込めた、可愛らしいカウベル風チャーム型だ。
黒の夢の方も、桃ができあがると、次はりるかをイメージしたであろう白ベースの三毛猫マスコットを作っている。黒と、もう一色使っているのは桃色だ。猫の後頭部には桜の紋様。顔はごくシンプルに、しかし可愛らしく。りるかが普段から使えるよう、簪の飾りにと言うことらしい。簪には赤い糸で、小さな鈴を添える。幸せを祈っての二重叶結び、小さな輪の部分に鈴が来るように整えて。
そもそも、フェルト細工はなかなか難しいものもあるが、基本はふわふわのフェルトに針でぷすぷすちくちくと刺して形を固定させ、形作っていくものだ。良くあるデザインと言えば、動物や花と言ったものだろうか。創意工夫次第で色々なデザインの作りようがあるので、凝ったものもそれなりに作れるのが強みと言えるかも知れない。無論、大きくなればなるほど、使うフェルトの量も増えるのだが。
また、リアルブルーでは、ペットの毛を混ぜ込むといったものもある。動物アレルギーの場合は困るかも知れないが、そうでなければ愛犬や愛猫の毛でつくるアクセサリーにもなるので、それもそれで人気のある創作物になるのだと言うことだった。
説明を受けながら、ふむふむと頷いているのは志鷹 都(ka1140)。聖夜に生まれた愛娘を思い、彼女への贈り物として自分をいつも助けてくれるユグディラのルーシーを模したマスコット作りに一生懸命になっている。使う色は、白、黒、灰色、茶色、桃色、クリーム色。子どもを思うがゆえ、その指は丁寧に、優しく動いている。少し丸みを帯びたデザインなのは、子どもを思ってのことだろう。往々にして、子どもは丸っこいデザインを好むものなのだ。あえて固くしないで、ふわっとした感じを残すのはいかにも母親らしい配慮である。
口元からこぼれる笑みには、かつてお腹に宿った小さな命をおもっての懐かしい思い出がよみがえっているのだろう。
「可愛らしいデスね……!」
リムネラも都のそのマスコットを見て、口元をほころばせる。母親の手作りは、何よりも嬉しい贈り物だ。
その横では、
「日頃からの感謝を込めて……」
と、Uisca Amhran(ka0754)が白龍をもしたマスコット作りの大量生産に励んでいる。
「たくさんデスね?」
リムネラが近づいてみると、イスカはぱっと顔を明るくさせた。
「あ、リムネラさん! ええ、恋人や姉さま、それにチューダさまと言った、日頃お世話になっている人に差し上げたくて……喜んで貰いたいから」
もちろんリムネラにも、なのだが、本人の前ではさすがにそれは口にしない。にしてもモチーフに白龍を選ぶのは、やはり彼女が巫女であるということをいつも胸に刻んでいる証なのだろう。
北谷王子 朝騎(ka5818)も、黙々となにやらこしらえている。どうやらチューダのぬいぐるみのようだ。……ただ、被っているのは何故か王冠ではなくいちごパンツなのだが。
「ど、どういうことでありますかこれはー!?」
チューダが目をぱちくりさせて問いかけると、朝騎は厳かそうな声で言った。
「これはチューダではなく、神風を巻き起こし、パンチラを起こす……そう、この世のパンチラを司る幻の幻獣王・パンチューダ様なのでちゅ。きのう、ご神体を作りなさいと夢にでたんでちゅよ」
いつもと変わらぬ冷静(?)な口ぶりで、大まじめにそんなことを言う。普段からよく分からない妄想を口走り、パンツとちっちゃ可愛い女の子が好きな、まあハンターに稀に良くあるタイプの人間ではあるのだが、それにしてもパンツのインパクトは半端ない。
「我輩、こんなはれんちな姿はしないでありますよー!?」
「大丈夫でちゅ、これはあくまでパンチューダ様でちゅから」
チューダの言葉を余所に、朝騎はのんびりと応えている。完成の暁にはあとで頭に乗せるつもりらしいから、まあやっぱり良くも悪くも面白いハンターであるのは間違いなかろう。
(いつもだったら食い気に走ってるけど、形に残るものを作ってみたいニャスな)
そんなことを思いながら、ミア(ka7035)も手をせっせと動かしている。小ぶりなブローチをいくつか作ってみたいと思ったらしい。
「にゃ、真っ白と真っ黒……そういえばミアのお友達にも、真っ白な猫さん、真っ黒な猫さん、真っ黒な犬さんもいるニャスなぁ……」
フェルトの材料になる羊毛を手にして、思い浮かべたのは見知った顔を動物に喩えた姿。思い浮かべてしまうと、そのまま手がそれらしい、白猫に黒犬、それに下三角目な黒猫モチーフのブローチを作っていた。もちろん、自分用にも。髪の色をイメージして、桃色の猫だ。それにブローチパーツをくっつければ、可愛らしいブローチの完成と相成る。
(本当はもっと作りたかったニャスな)
ほんのり歪んでいたりもするけれど、まるまるふくふくとした、手作りらしい暖かみのある可愛らしい見た目だ。初めてであることを考えれば、十分な出来だろう。
「そういえば、あの生き物は……ニャんニャス?」
まだ新米ハンターの彼女は、名前こそ知っていても実物を見たことがなかったのだろう。チューダを不思議そうに見つめている。
周囲から幻獣王であることを教えてもらうと、ぱっと目を輝かせて、チューダになにやらさしだした。……おにぎりだ。
「おにぎり、食べるニャス?」
「おおー、有難く頂戴するのであります!」
チューダも嬉しそうに近寄ってにんまりしながら受け取る。
そんな光景は、誰の目からも微笑ましく感じられるものなのだった。
●
やがてフェルト体験会も終わりを迎え、ティパーティの時間になる。
それまで広げていた手芸道具一式をさっと片付け、机の上には温かい紅茶やコーヒー、ホットレモネードにサングリア風のグレープジュースなどが並べられる。
また、食べ物のほうも、前日に仕込んでいたらしいリムネラ特製のジンジャーマンクッキーや、ユニオンの仲間たちと作ったケーキがとんとんと置かれている。
持ち込みありと言うことで、色々持ち込んできたものも多い。そのなかでも鳳凰院ひりょ(ka3744)の持ち込んだものは、紅茶だった。
「焼き菓子なら丁度いい。合わせやすいだろう」
初対面のリムネラにもきちんと挨拶。
「初顔あわせになるか……鳳凰院ひりょという。焼き菓子の準備、感謝だ。これだけの数を準備するのは大変だったろう。お礼と行っては何だが、紅茶はこちらで振る舞わせてもらおうと思う」
そう言うと、小さく微笑む。紅茶といっても一言でまとめてしまうのは困難な代物で、茶葉や発酵、そんなもので色や口当たりも変わってくる。ちょうどリムネラが用意していたものとも違う口当たりの良い紅茶は、だれもが笑顔を作ることができるだろう。
年末の忙しい時期だからこそ、それを少しでも忘れられるような気持ちになれるパーティを、と言うことなのだから、ある意味年納めのパーティといって過言ではないだろう。
そのパーティを、興味深くきょろきょろしていたのは根国・H・夜見(ka7051)、オートマトンの少女だ。
「いやー贅沢っスね、あんな大きな鼠もたべていいんスかー♪」
チューダを見てよだれじゅるり。……慌てて周囲が止めると、驚いたように瞬きする。
「え……あれ、幻獣なんスか? そんなバナナ……って、ええ!? 幻獣って、もっとキリッとかっこいいものじゃないんスか……!?」
かなり衝撃を受けたらしい。まあ、幻獣にも個体差は存在するというやつなので、そこは仕方がないのである。
夜見も先ほどまでの体験会に参加していて、可愛らしい林檎のブローチをこしらえたばかり。それを胸にちょんとつけ、焼き菓子を見て顔をほころばせる。どれも美味しそうで、どれから食べるか迷ってしまいそうだ。
「あ、そうだ……チューダさん! さっきはすまなかったス! これマカロンだけど、食べるっスか?」
そう差し出すと、チューダはにんまりと笑ってそれを早速ぱくり。甘いものが好きな幻獣王、これでさくっと懐柔出来る程度にはちょろいのだ。
「むしゃむしゃ……おお、おいしいであります! 新米ハンターなら我輩を知らないのも当然、これから頑張るのでありますよ!」
激励の言葉をかけたりなんかして。
「先ほどのフェルト体験会は面白そうでしたね。もっとも、材料の量的に、防寒用ととしてではなく、あくまで装飾目的ではありそうですけれど」
この時期ならカーペットやカーテンに用いるのも軽くてあたたかくていいですよね、としっかり考え込んでいるのは智の求道者とも言える天央 観智(ka0896)。
「……そういえば、ああいうものの染料って、どんなものを使っているんでしょうね?羊毛のイメージは基本的に白に近いものでしたけれど、結構カラフルですよね、アクセサリなどを見ていると」
まあ確かにそうなのだが、返ってくる答えがあるのかははなはだ謎だ。そこまでは追求しないもののほうが、基本的に多いからである。まあ、こういう少し珍しいものの流通はたいてい同盟がらみの商人が多いだろうな、と言うことは思うだろうが。
そんなことを、甘いココアを口に運びながら思うわけだから、なかなか近寄りがたくはあるかも知れない。たまたま近くにいたひりょから紅茶も勧められ、そちらも飲んでその味を解説し始めたり。本人達はそんな交流も楽しめるのが、こういったパーティの醍醐味だとも思うから、楽しんでいるのは無論間違いないが。
「ハンターになってからしばらくたつが、こんな穏やかなクリスマスもいいものだな」
「そうですね。きな臭い動きは各地にありますが、無事に年を越せるのはなによりです」
近くを通りかかった補佐役のジークも捕まえて、男三人そんな穏やかな会話をしている。
その一方で、ベルと泉、黒の夢とりるかなどは先ほどこしらえたアクセサリを交換。うん、傍目にはある意味リア充爆発しろなんて言葉が浮かぶかも知れない。それでも友情の証なのだから、それは大切なモノに違いないのだが。
「イズミとおそろい、うれしいなー♪」
そう言いながら飛び跳ね、カラコロと首もとのカウベルを鳴らすベル、
「おそろい、おそろいじゃもんっ♪」
同じように飛び跳ねる泉。
「こうやって何かを一緒に出来るのは、嬉しい、ですね」
リルかも微笑みながら先ほどのマスコットを手渡すと、黒の夢も簪を手渡し、そして
「えへへ! そうなのな、にゃーにゃーなのなー」
貰ったマスコットを大事そうに抱える。
そしてリムネラのところにも――
「はい、リムネラさん! 折角同郷の巫女なのに普段はなかなか話せていないけれど、お互い白龍様の教えを胸に来年も頑張ろうね!」
イスカがそう言いながらにっこりと白龍マスコットを渡してくる。リムネラもちょっとしたサプライズに口を綻ばせ、
「ありがとうございマス……来年もがんばりまショウ」
そう微笑み返すのであった。
もちろん、パーティと言うことで元気な仲間たちも多い。
アリア(ka2394)等もその典型だろう。先ほどまでの体験会にもこっそり参加してチューダ風のマスコットをこしらえたり、聖輝節を満喫している。
「ね、チューダ、チューダ。これ、美味しいよ!」
そう言いながらチューダにもふもふしつつ菓子を勧めたり、見知った顔、知らない顔……様々な人に話し掛けて楽しんでいる。
「うわ、これ自作なの?」
尋ねられて頷くのは手作りの料理をその場で(!)こしらえたというアイビス・グラス(ka2477)だ。あ、もちろん厨房を借りて、なのだけれど。
白身を軽くメレンゲ状にし、黄身とホットケーキミックスにほんのりマヨネーズやレモン汁を加えて焼いたそれは、どちらかというと甘いばかりでなく、少しの酸味が適度に効いていて、どこかふわふわさっぱりとした口当たり。
アイビスお手製のお菓子はさっとはけていく。聖輝節と言えば、という当たり前も好まれるが、それだけではないといういい例だ。
一方でそんな聖輝節ならではのものを持ち込む者もいる。
マリィア・バルデス(ka5848)はもともとリアルブルーでも甘いお菓子も酒もたくさん消費する国の出身と言うことで、ジンジャークッキーとルッセカット――レーズンを飾ったサフラン入りのロールパン――を持ち込んでいるし、
「聖輝節のケーキ……やっぱり定番でしょうかぁ?」
そう言いながら星野 ハナ(ka5852)が持ち込んできたのはブッシュ・ド・ノエル、それなりのボリュームで三本。彼女の頭の中で躍る文字は「甘いものは別腹」だ。マリィアも、
「この時期のクリスマスってどの地域でもとりわけ甘いお菓子を食べるでしょう? とくに連合宙軍に入ってからはみんなが地元のお菓子を作って持ち込んだりしていたから、この時期は楽しかったわ。アルコールもあれば文句なしだったのだけど……本当にそれだけは残念ね」
そんなことを言いながら、ホットグレープジュースを口にする。
「来年もまた、こういうパーティができるといいわね」
そんなことをしみじみと思いながら。
「他の国のクリスマス定番……これも興味があるのですぅ」
マリィアの言葉に、興味津々そうな顔をするハナ。
ちなみにハナは別のことにも感激していた。別のこと、それはリムネラの特製クッキーである。
「おお、リムネラさんの手焼きクッキーですぅ?! それは別の意味でプレミアものなのですぅ……」
そう言われると、リムネラも嫌な気持ちはしない。嬉しそうに微笑んで、
「遠慮せずに食べてくだサイね?」
そう言いながら、ハナのブッシュドノエルをお礼とばかりにぱくり。チョコクリームの樹皮が、口の中で甘く蕩けた。
ミオレスカ(ka3496)も、ボリュームたっぷりのケーキをブッシュ・ド・ノエルにして持ち込んでいた。
「肉料理を期待されていた方がいたらすみません。今年は、甘いもので。来年には、ローストシモフリなども作ってみたいのですが」
ミオレスカは控えめにそう言って、リムネラのクッキーを一口。
「……そういえば、モフ様はこちらにはおられないんでしょうか」
モフ様、というのは最近見つかった幻獣の一種だ。ユニオンでなら情報も得られると思ったのだろうが、なかなか難しいらしい。東方の一地方で、隠れるように(?)くらしていた幻獣、通称モフ様は、既にソサエティに存在を認められている。ただ、彼らがこれからどう扱われることになるかは、ソサエティ側の裁量次第、という感じなのだろう。
また、ハンス・ラインフェルト(ka6750)と穂積 智里(ka6819)のふたりの持ってきたのはシュトレンとレープクーヘン。シュトレンもレープクーヘンもドイツを中心に好まれるクリスマスならではのお菓子で、とくにシュトレンは薄めに切って食べることが出来る為こういう場にはもってこいだ。
「本当はグリューワインもちょっと飲んでみたかったですけど……いつかハンスさんと、ヴァイナハツ・マルクトは見に行ってみたいですね。出来れば、おじいちゃんおばあちゃんも、一緒に」
ドイツ系のコロニー移民だったハンスと、ドイツ系クォーターの智里。いわゆるリア充というやつのようで、ハンスは智里をしっかりとエスコートしている。荷物を持ってあげたり、そっと手を繋いでいたり。
「でもレープクーヘンは、どうしましょう。せっかくだし、飾ってから食べて欲しいですけれど……足りなくなったりしたら」
智里が不安そうに尋ねると、ハンスは造作もないといった様子で微笑みかえした。
「レシピを一緒に配ればいいでしょう。気になった方は、自分で作ればいいのです。折角の聖輝節、悩みすぎてもつまらないでしょう?」
優しいハンスの言葉に、智里も顔をぽっと赤らめて。
「そうですね……ハンスさん。あの、来年も……その、」
――こうやっていていいですか?
そう言いたげに、智里はそっとハンスの手を握り返した。
もちろん、色気より食い気のメンバーも数多い。
ディーナ・フェルミ(ka5843)も間違いなくそんな一人で、
(にゅふふ、食べて食べて食べまくるの、楽しみなのー!)
心の中でそう叫んで目を輝かせている。
ついでに言えば、今回はチューダの存在に惹かれて遊びに来た、と言うところも大きい。他にもそう言うハンターが何人もいて、夜桜 奏音(ka5754)は持ってきたお菓子を早速チューダに食べて貰っている。ディーナも持ってきていた栗やナッツをチューダに与え……というか口に突っ込んでいる。既にチューダの頬袋はぱんぱんだ。それでも食に貪欲なチューダはもっしゃもっしゃと食らいつくしている。流石、と言うべきか。
ちなみにディーナ、チューダに一通り食べさせ追えると自分が猛スピードで食べ始める。
「ごはんが有る限り別腹、おやつが有る限り別腹、飲み物が有る限り別腹なの~!」
その声はいかにも幸せ、といった感じだ。そんな一方で、
「チューダ様、こちらにもありますからどんどん食べてくださいね」
奏音もにこにこ笑顔でそう微笑む。
「でも……今年ももう少しでおわりですね。来年は、今年よりも落ち着いてすごせるといいのですが……」
そう、感慨深げに呟きながら。
そんな感じで、チューダに餌付け……もとい色々食べてもらいたいと思っているのは無論彼女たちだけではない。
「チューダ様! さぁ、じゃんじゃん食べましょう!」
アシェ-ル(ka2983)はそう言ってじゃんじゃんと色々な食べ物を持ってくるし、ベル=ベルファ(ka2670)も、チューダのことが随分と気になる様子。
「いや、ちらっと見掛けた時から気になってたんだよね、このもふもふした可愛い生き物……!」
ベルファはそのやわらかい毛並みをもふもふもふ。
「しかも、ユニオンに来てるなんて知らなかった……! 普段は遠出していることも多かったからかな、悔しい……」
だからこの機会にたっぷりもふりたいのだそうで。ふくふくと丸い体型にその毛並み、その上今日はたっぷり食を満喫しているわけだから、そのふくよかさは当社比数割増し。
「お菓子をいただけるとうれしいでありますなあ」
と言えば、だれかからすっとマカロンやケーキといったものが飛んでくるし、チューダにしてみれば極楽な環境なのは間違いない。
しかもハンターのなかには遠慮無く食べ物を突っ込んでくる面子もいたりする(そのぶん運動もさせられるが)ので、チューダとしても大変ではあるが楽しんでいるのも間違いなかった。
「もうおしまいなのですか? まだこんなに残っていますよ!」
なんていうアシェールなどの言葉を聞けば、頑張って食べようと言う気にもなる。運動させられることは判っていても。
そんな中、鶏もも肉のパイ包み焼き、なんていうメニューを持っていているのはエルバッハ・リオン(ka2434)。
「チューダ様、私の作った料理です、もしよかったら」
そう言って差し出すと、チューダはもちろん嬉しそうにそれを口にする。と、エルバッハは静かにこう付け加えた。
「よく味わって食べてくださいね。……それが最後の食事になるかもしれませんし」
その言葉に、一瞬ふるえるチューダ。
「まさか、この料理に毒でも……!?」
「いえ、そんなことはありませんが」
エルバッハの言葉は更に続く。
「でも、明日からのダイエット計画を立てておきました。死なない程度に絞っていきますので、覚悟をしておいてくださいね」
そう言って小さく笑う。自堕落なチューダをなんとかしたいという心からの言葉だが、チューダには随分ショックだったようだ。
「うう……我輩、うまいものを食べられるのはこれが最後なのかも知れないのでありますな……」
そんな力ない声を呟きながら、チューダはため息をついたのだった。……まあ、すぐに元気も復活するのが、この幻獣王のタフなところではあるのだが。
ネーナ・ドラッケン(ka4376)は、焼き菓子を食べてひと心地ついてから、手元の竪琴を引き寄せる。
「なかなか素敵な催しだね。僕も折角だし、お礼に一曲披露させてもらおうかな」
そう言うと、ゆっくりと竪琴を爪弾き出す。
しっとりと華やかなメロディが、パーティに花を添える。
明るくのんびりとしたメロディは何処か耳慣れぬ響きもあって、オリエンタルと言うべきなのかも知れない。
それをマイペースに弾きこなす姿は、何処か――リムネラの姿を彷彿とさせる。
それを聴いて、心が疼いたのだろう。アリアが楽しそうに、手にベルを持ってリズムを取りながら、よく響く声で即興の歌を歌い出す。
「チューダ、チューダ、とってももふもふー♪」
メロディを壊さぬ、心地よいハーモニー。
やがて曲が終わり、歌も終わると、皆が嬉しそうに拍手を送る。
アリアはにこにこと笑ってぺこりと礼をし、ネーナもにっこり笑う。
「そういえば、この曲にタイトルはあるの?」
アリアが問いかけると、ネーナはいいや、という感じに首を横に振った。
「折角この機会を設けてくれたリムネラさんをイメージしてね。曲も反響良かったし、もしよければこの曲に【リムネラ】と名付けてもいいかな?」
ネーナがそう言うと、リムネラは嬉しそうに顔を綻ばせ、そしてこくっと頷いた。
ところで。先ほどからぱんぱんになるレベルで食べ物を詰め込まれていたチューダであるが、ちらっちらっとそれを眺めているのは彼のことを師と仰いでいる奇特な……青年、雪都(ka6604)である。普段ならもう少し積極的にチューダに近づくのだが、今日に限って言えば不思議と二の足を踏むような姿を取っている。
(先生ほどの方であれば、きっと女性の扱いにも慣れているはず……相談したいけれども……)
むしろ男女を問わず適度に弄られているのがチューダの常なのだが、まあそれは眼に入っていないらしい。たしかに女性人気は高いことは否めないが、それは往々にして愛玩動物的な感情である。
しかし、そんなチューダの様子を先ほどからちらちら見ては大まじめにメモに取っている。
多彩なコミュニケーションを取るチューダの姿には、いつも色んな意味で驚かされているが、今日ももちろんそんな様子だ。
雪都としては憧れる構図ではある。しかしその理由というのは、最近とある女の子に想いを寄せている、というのが大きな理由なのである。流石にこれをすんなりと相談するのは難しく、人生の師たるチューダの行動を参考にしたいと思ったのである。
(でも……先生のまま真似はできない、いやむしろしたら駄目だ……)
うん、とどまっている方がきっと正解だろう。
頑張ってメモを取ってはいるが、それが参考になる日は恐らく来ないであろうから。
●
そんな感じで、時間はあっという間に過ぎていく。
「今日は楽しい時間をありがとうございマス」
リムネラは笑顔を浮かべてお礼を言った。
「マタ、年が明けたら色々あるかも知れないデスけど……がんばりまショウ、ね」
そう、言葉を締めくくった。
聖輝節が終わればあっという間に新しい年。もう、あと幾つ寝ると新年なのか。
そんな新しい年を間近にして、ハンターたちはそれぞれ、穏やかでささやかな、幸せな時間を過ごせたことを幸福と思うのだった。
なお、余談だが。
チューダは今回もまるまると肥えた様子である。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/12/19 00:08:40 |
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【相談卓】ガーディナで聖輝節 Uisca=S=Amhran(ka0754) エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/12/19 05:30:35 |