ゲスト
(ka0000)
役者、募集中です。
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/01 09:00
- 完成日
- 2014/12/09 06:28
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
「突然ですが、役者を募集しています!」
「むしろ現在全然人がいないので、ハンターさんにお願いするしかないんです!」
必死な形相で案内人に話しかけているのは、劇団員(団員数1人/自分含)の女性だった。
どうやら子供たちを集めて劇をしようと決めたらしいが、団員がいないせいで劇が出来ないと嘆いている。
「最近物騒な事件が多いですよね? だから少しでも子供たちに楽しんでもらいたいと思ってるんですが…」
「ちなみにどんな劇をするのは白紙状態なので、皆さんで決めて頂いて結構です!」
「要望としては、子供が好きそうな話、ですかね、どうですか? 参加してくれそうな方はいます?」
ずずいっと、顔を近づけながら案内人に話しかける劇団員・エリィに案内人もやや引き気味である。
「と、とりあえず募集はかけてみますが…あ、集まりますかね…」
「そこを集めて下さいよ! 子供のため、子供のためでございますよ!」
「未来を明るくするためにも、子供は笑っていた方がいいんです!」
エリィは拳を強く握りしめて『役者、募集します』に依頼書がギルドに張り出されたのだった。
「突然ですが、役者を募集しています!」
「むしろ現在全然人がいないので、ハンターさんにお願いするしかないんです!」
必死な形相で案内人に話しかけているのは、劇団員(団員数1人/自分含)の女性だった。
どうやら子供たちを集めて劇をしようと決めたらしいが、団員がいないせいで劇が出来ないと嘆いている。
「最近物騒な事件が多いですよね? だから少しでも子供たちに楽しんでもらいたいと思ってるんですが…」
「ちなみにどんな劇をするのは白紙状態なので、皆さんで決めて頂いて結構です!」
「要望としては、子供が好きそうな話、ですかね、どうですか? 参加してくれそうな方はいます?」
ずずいっと、顔を近づけながら案内人に話しかける劇団員・エリィに案内人もやや引き気味である。
「と、とりあえず募集はかけてみますが…あ、集まりますかね…」
「そこを集めて下さいよ! 子供のため、子供のためでございますよ!」
「未来を明るくするためにも、子供は笑っていた方がいいんです!」
エリィは拳を強く握りしめて『役者、募集します』に依頼書がギルドに張り出されたのだった。
リプレイ本文
●役者募集に集まったハンター達
「ま、こういう舞台も踏んでおかんとな。表現力の訓練って奴だ」
リズリエル・ュリウス(ka0233)が呟く。
彼女は気ままな道化師を自称しており、今回の役者募集に関しても自分の芸のアピールの場と考えて参加する事に決めたらしい。今回は劇がメインだが、大道芸人の彼女ならば子供を喜ばせる事は得意なのかもしれない。
「演劇、ねぇ……」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)は苦笑気味に呟く。
彼女は以前にも演劇の依頼を受けた事があるらしいが、あまり思い出したくないらしい。
(ま、まぁ、今回はヒロインじゃねぇし、多少は気が楽だな!)
そう思う事にして、ボルディアは自分が演じる役の台本を読み始めたのだった。
「劇、ですか……? 演技は苦手なんですけど……」
苦笑気味に呟いたのは、神杜 静(ka1383)だった。彼は語り部役を演じる事になり、出番のない時は裏方の仕事を手伝ったりなど、彼にとって今日は色々と慌ただしい日になりそうだ。
「子供向けの演劇っていうのも、なかなかやる機会がないし悪くはないわね」
くすくす、と微笑みながら呟くのは揚羽・ノワール(ka3235)だった。
彼女は今回、姫に嫉妬して王子を誘拐する黒の国の女王役を演じる事になっている。揚羽は男性だが、女性よりも女性らしい部分があるので女王役にはピッタリなのかもしれない。
「子供達が楽しめる劇……となると、細部は荒くても如何に雰囲気を盛り上げるかって感じかな。子供は飽きるのが早いし、盛り上がる部分がないと見てもらえなくなりそうだから」
台本を見ながら呟くのは十司 志狼(ka3284)、今回の劇で王子を演じる事になっている。
王子役を演じる事から彼は『パラディンサーコート』に『ショートソード クラウンナイツ』を持参して、大人が見ても違和感がないように立ち居振る舞いには気をつけるように考えている。
「ガハハ! 役者募集とは! やはりここでゴシックドワーフとして名をあげるべきだろうか!」
マッチョナー=カンジー(ka3436)は豪快に笑いながら叫んでいる。
彼は黒の国の女王お気に入りの部下を演じる事になっており、やられ方も派手になるようにと考えている、確かに悪役がやられるのは子供が一番好きなシーンかもしれないので、その点では一番目立つのは悪役を演じる者達こそ、子供の心に残る役者なのかもしれない。
「……随分と、無茶ぶりな依頼だな……その行動力と心意気は素直に尊敬に値するけどな」
武神 守悟(ka3517)は苦笑しながら、依頼人のエリィに向けて言葉を投げかける。
「ふっふっふーん…ちびっこたちよ、あたしが主役! お姫様ですよ! 輝くあたしをとくと見よー! だよっ!」
テトラ・ティーニストラ(ka3565)はグッと拳を握りしめながら、呟き、ハンター達は子供達のため、それぞれ劇の準備に取り掛かった。
●攫われるは王子様、助けに行く勇ましき姫
「これは白と黒の国で起こった物語。勇ましき姫、紳士的な王子、そして魅惑の女王……彼らがどのような結末を迎えるのか、さぁ、お楽しみください……」
語り部役の神杜が劇の始まりを告げ、子供達が期待に満ちた眼差しでハンター達を見つめた。
「婚礼の日が待ち遠しい、早く貴女を僕の国に妃として招きたいよ」
十司は姫役のテトラと寄り添い、ハーモニカを奏でながら楽しいひと時を過ごしていた。
「吾輩はゴシックドワーフのマッチョナー! 王子を攫いに来た!」
「ん? 姫さん1人をやればいいって話じゃなかったか? あいつ、攫うのか?」
女王の部下役であるマッチョナーと武神は十司とテトラの前に姿を現す。
「誰だ。僕を隣国の王子と知っての狼藉か……!」
十司は剣を抜き、マッチョナーと武神に言葉を返す。
「っ、姫! ここは僕が食い止めます! 貴女だけでも逃げてください……!」
「逃げるわけないじゃーん!」
十司の言葉に、テトラは拳を突きだし、武神の鳩尾に強力な一撃をお見舞いする。
「ぐふっ、マジでいてぇ……」
テトラに吹っ飛ばされながら、武神が小さな声で呟く。
「王子様は渡さないよ! 守られるだけなんて嫌、あたしの手で王子様を守るんだから!」
ビシッとマッチョナーを指差しながら、テトラが大きな声で叫ぶ。
「女王達の部下、そして王子様さえも勘違いをしていたのです……王子が心を奪われた姫は、大人しくて清楚なお姫様ではありません、舞踏会よりも武道会を好む勇ましき姫だったのです」
神杜の語りに子供達が大きな声で笑い始める。
「ぬぅ! まさか彼が一撃で沈められるとは……! こうなったら王子だけでも連れて行くぞ!」
マッチョナーは十司を抱え、女王の元へと向かう。
「盗られたものは、この手で取り返す! 王子様、すぐに行くから待っていてね!」
「こうして、愛する王子を助けるべく勇ましき姫の冒険の日々が始まりを告げたのです」
神杜が語りを入れた時「面白れぇ」と武神が呟く。
「……まともに楽しめる相手なんざ、久しぶりだぜ。女王に潰されんのも勿体ねぇ、よし! 俺がいっちょ手を貸してやるかね、褒美はすべてが終わった後に俺と遊んでくれりゃいい」
こうして、テトラは敵であった武神を仲間に引き入れ、十司を助けに向かい始めるのだった。
※※※
「テトラ姫と武神が旅に出て、2日ほどが経った頃、とある大道芸人が前に立ちふさがりました」
「よォ、王子を抱えた奴がここを通らなかったか? こういう感じの、こーんな男だ」
武神は身振り手振りでマッチョナーの外見をリズリエルに告げる。
大玉乗りをしながら、リュートを奏でるという器用な事をするリズリエルは、ちらっと武神に視線を向けた後、すぐにぷいっと逸らしてしまう。
「私はうさぎのどうけし、クラウンラビッツ! さいきょーのうさぎになるどうけしだ! ……間違った、さいきょーのどうけしになるうさぎだ!」
「意味が対して変わらんように聞こえるのは、俺の気のせいかね」
リズリエルの自己紹介に、武神は苦笑しながら呟く。
「黒の国の奴らがここを通っただろう? どっちに向かったか教えてくれ」
「あぁん? 黒の国? そいつらを探してんのー? だが、知らんなっ!」
ふふん、と威張りながらリズリエルは呟き、武神とテトラはガクッと肩を落とす。
「だが、さっき私の芸を邪魔した変なのは来たがなっ、この大玉でぺったんこしてやったぞ!」
リズリエルの言葉に、二人が地面を見ると二人分の人型が地面についている。
「……これ、マッチョナーだけじゃなくて王子もぺったんこされただろ」
「悪いんだけど♪ そこを退いてくれる? 今から黒の国に行かなきゃいけないんだっ」
「何ぃ? 私にこの場所を退けとな。さてはこの丁度良い場所でお前達も芸をする気だな!」
明後日の方向に勘違いをしたリズリエルは、テトラ達にジャグリング勝負を持ちかける。
「私に勝ったら、この場所を譲ってやろう!」
テトラと武神はその勝負を受け、結果は――……。
「ふははははっ! やはり私が1番という事だなぁーっ!」
見事に惨敗。ジャグリングの経験のない二人に勝てるはずもない。
「……えいっ」
テトラはジャグリングを続けるリズリエルの乗る大玉をベシッと叩く。
するとそれはコロコロと動き始め、尊大な笑い声と共にリズリエルは何処かへと去って行った。
「最初からジャグリングしないで、ああすれば良かったんじゃ……」
武神の呟きに、劇を見ている子供達も「うんうん」と頷いているのが見えた。
「はははははっ! そう簡単に行くと思うなよ!」
リズリエルが去った後、女王の城に向かおうとする二人の前に現れたのはボルディアだった。
「さっきのはただの通行人! 女王の部下である俺が貴様らをここで足止めしてやるぜ!」
倒すのではなく、足止めという辺りがボルディアの優しさを感じる。
「うおおおお、燃える燃える燃えるぜええええっ! さぁ、最高のケンカを始めようぜええっ!」
ボルディアは覚醒を行い、派手に炎を吹きあげる。
それを見た子供達は目を輝かせる者、少し怖がる者、反応は様々だった。
「女王の部下、ボルディアは大剣を構え、テトラ姫と武神に斬りかかります――……しかし、勇ましき姫はボルディアに引けを取らないほどの強さを持っていたのです」
神杜の語りの後、武神もボルディアに斬りかかる。
さすがに2人がかりではボルディアも押され気味になり、ついにはボルディアの持つ剣を弾き飛ばす事に成功した。
「ザケんじゃねええええっ! 俺がこんくらいでやられるわけねえだろうがああああっ!」
ボルディアは大きな声で叫び、両手に炎を集め、炎の鉄拳を二人に向けて繰り出した。
「あたしは王子様を奪い返すまで絶対に負けないよーっ! 邪魔する奴は殴っちゃうんだから!」
ボルディアと同じく拳を武器にして、テトラが叫び、ボルディアをすぽーんと攻撃する。
「くっ……いいケンカだったぜぇ……んじゃ、俺ぁ寝るからよ……ぐー」
ばたん、と勢いよく倒れながらボルディアはそのまま戦線離脱をしたのだった――……。
※※※
「長い旅路を終え、ついにテトラ姫と武神は黒の国の女王、揚羽の元へ辿り着いたのです」
「黒の国の女王! 王子様を返せーっ!」
女王の城に乗り込んだテトラ姫は大きな声で叫ぶ。
「子供のくせにどうしてあんなにも可愛らしいのかしら、それはもう嫌がらせをしたくなるほどですわ……それに、なぜか私の部下もいるようですし?」
くすくす、と笑みを零しながら揚羽がテトラと武神を見つめながら呟く。
「ようこそ、お姫様。ここまで来るほどに王子様の事が愛おしいのね……でも、残念ながら王子様はお姫様の元には返せませんの、素直にお帰り頂けると私も手間がかからないのですけど」
「女王! こんな事をしても貴方は幸せになれない、どうしてそれが分からないんです……!」
縄で縛られた十司が揚羽に向かって言葉を投げかけるが、十司の言葉は揚羽の心には届かない。
「……彼女は貴方に殺させやしない、絶対に! そのためなら、奇跡でも何でも起こしてみせる!」
「うふふ、それなら奇跡は信じるだけ無駄だという事を、そこでそのまま見ていなさい」
揚羽はすらりと剣を抜き、それをテトラに向ける。
テトラもナックルを装着して、揚羽との戦いに備える。
その間に、十司は一度裏側に回り、ハーモニカで序盤に演奏した曲を奏でる。
「女王は強く、テトラ姫はくじけそうになります――……しかし、姫の心を奮い立たせるように、王子が奏でた曲が流れてきたのです――……」
「あたしと、王子様の絆は誰にも壊す事は出来ないよっ!」
テトラの渾身の一撃が入り、揚羽は「私が、負ける……?」と信じられないような表情を見せながら、その場に倒れこんでしまう。
「テトラ姫! 無事で良かった、囚われの身でありながら、僕はずっと貴女を案じていました」
「ありがとう、王子様……! 王子様のハーモニカが聞こえたから、あたしは頑張れたんだよ!」
「テトラ姫と王子様が幸せそうに微笑み合う姿を、女王は寂しげに見つめています」
十司は揚羽の前に立ち、手を差し伸べる。
「僕も彼女も、貴方が憎かったわけじゃない。もう一度、ここからやり直しませんか?」
十司の言葉に、揚羽は驚いた表情を見せて、ふ、と微笑む。
「そうね、それじゃお姫様と私はライバルって事でいいのかしら」
「いやいや! 僕と姫は婚約していて、もう結婚が決まっているんですよ!?」
「略奪愛なんて燃えるわぁ、あら、お子様にはちょっと早い言葉だったかしら」
ふふ、と楽しげに揚羽が呟き、敵対していた者同士が手を取り合う――……という形で劇は終了したのだった。
●劇、終わって……
「皆さん、お疲れ様でした」
劇が終了した後、神杜は劇に出演したハンター達全員に飲み物とお菓子を差し出す。
どうやら予めエリィが用意していたらしく、精神的にも肉体的にも疲れたハンター達は、まず飲み物をほぼ一気飲みした。
「お疲れ様! 子供達も喜んで見てくれていたよ! 私も途中ハラハラしちゃった!」
エリィはきゃあきゃあと騒ぎながらハンター達に言葉を投げかける。
ちなみに、今回セットを作ったのも、劇をしたのもすべてハンターであり、エリィは何もしていない。
その事に誰もが気づいているが、ある意味突っ込んだら負けのような気がして、誰も何も言えない状況だった。
「また、今度劇の企画をしようと思うから、都合がついたら手伝って欲しいなっ」
また任されるのか、とハンター達は疲れながらも表側で喜ぶ子供達の声を聞いて、それも悪くはないかもしれない、なんて思っていたのだとか……。
END
「ま、こういう舞台も踏んでおかんとな。表現力の訓練って奴だ」
リズリエル・ュリウス(ka0233)が呟く。
彼女は気ままな道化師を自称しており、今回の役者募集に関しても自分の芸のアピールの場と考えて参加する事に決めたらしい。今回は劇がメインだが、大道芸人の彼女ならば子供を喜ばせる事は得意なのかもしれない。
「演劇、ねぇ……」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)は苦笑気味に呟く。
彼女は以前にも演劇の依頼を受けた事があるらしいが、あまり思い出したくないらしい。
(ま、まぁ、今回はヒロインじゃねぇし、多少は気が楽だな!)
そう思う事にして、ボルディアは自分が演じる役の台本を読み始めたのだった。
「劇、ですか……? 演技は苦手なんですけど……」
苦笑気味に呟いたのは、神杜 静(ka1383)だった。彼は語り部役を演じる事になり、出番のない時は裏方の仕事を手伝ったりなど、彼にとって今日は色々と慌ただしい日になりそうだ。
「子供向けの演劇っていうのも、なかなかやる機会がないし悪くはないわね」
くすくす、と微笑みながら呟くのは揚羽・ノワール(ka3235)だった。
彼女は今回、姫に嫉妬して王子を誘拐する黒の国の女王役を演じる事になっている。揚羽は男性だが、女性よりも女性らしい部分があるので女王役にはピッタリなのかもしれない。
「子供達が楽しめる劇……となると、細部は荒くても如何に雰囲気を盛り上げるかって感じかな。子供は飽きるのが早いし、盛り上がる部分がないと見てもらえなくなりそうだから」
台本を見ながら呟くのは十司 志狼(ka3284)、今回の劇で王子を演じる事になっている。
王子役を演じる事から彼は『パラディンサーコート』に『ショートソード クラウンナイツ』を持参して、大人が見ても違和感がないように立ち居振る舞いには気をつけるように考えている。
「ガハハ! 役者募集とは! やはりここでゴシックドワーフとして名をあげるべきだろうか!」
マッチョナー=カンジー(ka3436)は豪快に笑いながら叫んでいる。
彼は黒の国の女王お気に入りの部下を演じる事になっており、やられ方も派手になるようにと考えている、確かに悪役がやられるのは子供が一番好きなシーンかもしれないので、その点では一番目立つのは悪役を演じる者達こそ、子供の心に残る役者なのかもしれない。
「……随分と、無茶ぶりな依頼だな……その行動力と心意気は素直に尊敬に値するけどな」
武神 守悟(ka3517)は苦笑しながら、依頼人のエリィに向けて言葉を投げかける。
「ふっふっふーん…ちびっこたちよ、あたしが主役! お姫様ですよ! 輝くあたしをとくと見よー! だよっ!」
テトラ・ティーニストラ(ka3565)はグッと拳を握りしめながら、呟き、ハンター達は子供達のため、それぞれ劇の準備に取り掛かった。
●攫われるは王子様、助けに行く勇ましき姫
「これは白と黒の国で起こった物語。勇ましき姫、紳士的な王子、そして魅惑の女王……彼らがどのような結末を迎えるのか、さぁ、お楽しみください……」
語り部役の神杜が劇の始まりを告げ、子供達が期待に満ちた眼差しでハンター達を見つめた。
「婚礼の日が待ち遠しい、早く貴女を僕の国に妃として招きたいよ」
十司は姫役のテトラと寄り添い、ハーモニカを奏でながら楽しいひと時を過ごしていた。
「吾輩はゴシックドワーフのマッチョナー! 王子を攫いに来た!」
「ん? 姫さん1人をやればいいって話じゃなかったか? あいつ、攫うのか?」
女王の部下役であるマッチョナーと武神は十司とテトラの前に姿を現す。
「誰だ。僕を隣国の王子と知っての狼藉か……!」
十司は剣を抜き、マッチョナーと武神に言葉を返す。
「っ、姫! ここは僕が食い止めます! 貴女だけでも逃げてください……!」
「逃げるわけないじゃーん!」
十司の言葉に、テトラは拳を突きだし、武神の鳩尾に強力な一撃をお見舞いする。
「ぐふっ、マジでいてぇ……」
テトラに吹っ飛ばされながら、武神が小さな声で呟く。
「王子様は渡さないよ! 守られるだけなんて嫌、あたしの手で王子様を守るんだから!」
ビシッとマッチョナーを指差しながら、テトラが大きな声で叫ぶ。
「女王達の部下、そして王子様さえも勘違いをしていたのです……王子が心を奪われた姫は、大人しくて清楚なお姫様ではありません、舞踏会よりも武道会を好む勇ましき姫だったのです」
神杜の語りに子供達が大きな声で笑い始める。
「ぬぅ! まさか彼が一撃で沈められるとは……! こうなったら王子だけでも連れて行くぞ!」
マッチョナーは十司を抱え、女王の元へと向かう。
「盗られたものは、この手で取り返す! 王子様、すぐに行くから待っていてね!」
「こうして、愛する王子を助けるべく勇ましき姫の冒険の日々が始まりを告げたのです」
神杜が語りを入れた時「面白れぇ」と武神が呟く。
「……まともに楽しめる相手なんざ、久しぶりだぜ。女王に潰されんのも勿体ねぇ、よし! 俺がいっちょ手を貸してやるかね、褒美はすべてが終わった後に俺と遊んでくれりゃいい」
こうして、テトラは敵であった武神を仲間に引き入れ、十司を助けに向かい始めるのだった。
※※※
「テトラ姫と武神が旅に出て、2日ほどが経った頃、とある大道芸人が前に立ちふさがりました」
「よォ、王子を抱えた奴がここを通らなかったか? こういう感じの、こーんな男だ」
武神は身振り手振りでマッチョナーの外見をリズリエルに告げる。
大玉乗りをしながら、リュートを奏でるという器用な事をするリズリエルは、ちらっと武神に視線を向けた後、すぐにぷいっと逸らしてしまう。
「私はうさぎのどうけし、クラウンラビッツ! さいきょーのうさぎになるどうけしだ! ……間違った、さいきょーのどうけしになるうさぎだ!」
「意味が対して変わらんように聞こえるのは、俺の気のせいかね」
リズリエルの自己紹介に、武神は苦笑しながら呟く。
「黒の国の奴らがここを通っただろう? どっちに向かったか教えてくれ」
「あぁん? 黒の国? そいつらを探してんのー? だが、知らんなっ!」
ふふん、と威張りながらリズリエルは呟き、武神とテトラはガクッと肩を落とす。
「だが、さっき私の芸を邪魔した変なのは来たがなっ、この大玉でぺったんこしてやったぞ!」
リズリエルの言葉に、二人が地面を見ると二人分の人型が地面についている。
「……これ、マッチョナーだけじゃなくて王子もぺったんこされただろ」
「悪いんだけど♪ そこを退いてくれる? 今から黒の国に行かなきゃいけないんだっ」
「何ぃ? 私にこの場所を退けとな。さてはこの丁度良い場所でお前達も芸をする気だな!」
明後日の方向に勘違いをしたリズリエルは、テトラ達にジャグリング勝負を持ちかける。
「私に勝ったら、この場所を譲ってやろう!」
テトラと武神はその勝負を受け、結果は――……。
「ふははははっ! やはり私が1番という事だなぁーっ!」
見事に惨敗。ジャグリングの経験のない二人に勝てるはずもない。
「……えいっ」
テトラはジャグリングを続けるリズリエルの乗る大玉をベシッと叩く。
するとそれはコロコロと動き始め、尊大な笑い声と共にリズリエルは何処かへと去って行った。
「最初からジャグリングしないで、ああすれば良かったんじゃ……」
武神の呟きに、劇を見ている子供達も「うんうん」と頷いているのが見えた。
「はははははっ! そう簡単に行くと思うなよ!」
リズリエルが去った後、女王の城に向かおうとする二人の前に現れたのはボルディアだった。
「さっきのはただの通行人! 女王の部下である俺が貴様らをここで足止めしてやるぜ!」
倒すのではなく、足止めという辺りがボルディアの優しさを感じる。
「うおおおお、燃える燃える燃えるぜええええっ! さぁ、最高のケンカを始めようぜええっ!」
ボルディアは覚醒を行い、派手に炎を吹きあげる。
それを見た子供達は目を輝かせる者、少し怖がる者、反応は様々だった。
「女王の部下、ボルディアは大剣を構え、テトラ姫と武神に斬りかかります――……しかし、勇ましき姫はボルディアに引けを取らないほどの強さを持っていたのです」
神杜の語りの後、武神もボルディアに斬りかかる。
さすがに2人がかりではボルディアも押され気味になり、ついにはボルディアの持つ剣を弾き飛ばす事に成功した。
「ザケんじゃねええええっ! 俺がこんくらいでやられるわけねえだろうがああああっ!」
ボルディアは大きな声で叫び、両手に炎を集め、炎の鉄拳を二人に向けて繰り出した。
「あたしは王子様を奪い返すまで絶対に負けないよーっ! 邪魔する奴は殴っちゃうんだから!」
ボルディアと同じく拳を武器にして、テトラが叫び、ボルディアをすぽーんと攻撃する。
「くっ……いいケンカだったぜぇ……んじゃ、俺ぁ寝るからよ……ぐー」
ばたん、と勢いよく倒れながらボルディアはそのまま戦線離脱をしたのだった――……。
※※※
「長い旅路を終え、ついにテトラ姫と武神は黒の国の女王、揚羽の元へ辿り着いたのです」
「黒の国の女王! 王子様を返せーっ!」
女王の城に乗り込んだテトラ姫は大きな声で叫ぶ。
「子供のくせにどうしてあんなにも可愛らしいのかしら、それはもう嫌がらせをしたくなるほどですわ……それに、なぜか私の部下もいるようですし?」
くすくす、と笑みを零しながら揚羽がテトラと武神を見つめながら呟く。
「ようこそ、お姫様。ここまで来るほどに王子様の事が愛おしいのね……でも、残念ながら王子様はお姫様の元には返せませんの、素直にお帰り頂けると私も手間がかからないのですけど」
「女王! こんな事をしても貴方は幸せになれない、どうしてそれが分からないんです……!」
縄で縛られた十司が揚羽に向かって言葉を投げかけるが、十司の言葉は揚羽の心には届かない。
「……彼女は貴方に殺させやしない、絶対に! そのためなら、奇跡でも何でも起こしてみせる!」
「うふふ、それなら奇跡は信じるだけ無駄だという事を、そこでそのまま見ていなさい」
揚羽はすらりと剣を抜き、それをテトラに向ける。
テトラもナックルを装着して、揚羽との戦いに備える。
その間に、十司は一度裏側に回り、ハーモニカで序盤に演奏した曲を奏でる。
「女王は強く、テトラ姫はくじけそうになります――……しかし、姫の心を奮い立たせるように、王子が奏でた曲が流れてきたのです――……」
「あたしと、王子様の絆は誰にも壊す事は出来ないよっ!」
テトラの渾身の一撃が入り、揚羽は「私が、負ける……?」と信じられないような表情を見せながら、その場に倒れこんでしまう。
「テトラ姫! 無事で良かった、囚われの身でありながら、僕はずっと貴女を案じていました」
「ありがとう、王子様……! 王子様のハーモニカが聞こえたから、あたしは頑張れたんだよ!」
「テトラ姫と王子様が幸せそうに微笑み合う姿を、女王は寂しげに見つめています」
十司は揚羽の前に立ち、手を差し伸べる。
「僕も彼女も、貴方が憎かったわけじゃない。もう一度、ここからやり直しませんか?」
十司の言葉に、揚羽は驚いた表情を見せて、ふ、と微笑む。
「そうね、それじゃお姫様と私はライバルって事でいいのかしら」
「いやいや! 僕と姫は婚約していて、もう結婚が決まっているんですよ!?」
「略奪愛なんて燃えるわぁ、あら、お子様にはちょっと早い言葉だったかしら」
ふふ、と楽しげに揚羽が呟き、敵対していた者同士が手を取り合う――……という形で劇は終了したのだった。
●劇、終わって……
「皆さん、お疲れ様でした」
劇が終了した後、神杜は劇に出演したハンター達全員に飲み物とお菓子を差し出す。
どうやら予めエリィが用意していたらしく、精神的にも肉体的にも疲れたハンター達は、まず飲み物をほぼ一気飲みした。
「お疲れ様! 子供達も喜んで見てくれていたよ! 私も途中ハラハラしちゃった!」
エリィはきゃあきゃあと騒ぎながらハンター達に言葉を投げかける。
ちなみに、今回セットを作ったのも、劇をしたのもすべてハンターであり、エリィは何もしていない。
その事に誰もが気づいているが、ある意味突っ込んだら負けのような気がして、誰も何も言えない状況だった。
「また、今度劇の企画をしようと思うから、都合がついたら手伝って欲しいなっ」
また任されるのか、とハンター達は疲れながらも表側で喜ぶ子供達の声を聞いて、それも悪くはないかもしれない、なんて思っていたのだとか……。
END
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 4人 |
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あなたの拍手がマスターの活力につながります。
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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役者控え室 ボルディア・コンフラムス(ka0796) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/12/01 01:46:33 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/26 06:50:39 |