ゲスト
(ka0000)
蠱毒の果てに
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/02 09:00
- 完成日
- 2014/12/10 19:40
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
それは、1人のハンターが失敗報告を行った事から始まった。
下水道に複数の雑魔が現れたという事で、数名のハンターが殲滅に向かった。
しかし、死者こそいなかったけれど、報告に来た男性ハンターは傷だらけだった。
「……現れた雑魔はムカデだった」
「俺たちが行った時、ムカデの他にも虫のような雑魔が複数いて、そいつらが同士討ちを始めていた」
「……数が減ってくれれば俺たちの手間も省けるからと様子を見ていたが……残った1匹に対応できなかった」
男性ハンターの話を聞く限り、残ったムカデ雑魔は毒の液を吐いてきて、
ハンター達の身体の自由を奪い、そこを狙って攻撃してきたのだとか。
「噛みつかれても身体が動かなくなることがあったし……」
「俺の他にいた奴らもパニックになっちまって引き返してきたんだ」
男性ハンターの言葉を聞き、案内人は「わかりました」と頷く。
「あぁ、話を聞いていたのですね」
「どうですか? 大丈夫だと思うなら、この依頼を受けてみませんか?」
リプレイ本文
●ムカデ型雑魔を退治に向かう者達
「実家でやる歌舞伎で俵藤太が大百足を退治するってのがあるけど、実際にやる事になるとは思わなかったよ、大百足を倒したらあたしも後々反乱を平定する英雄になったりするのかな♪」
天竜寺 舞(ka0377)は苦笑気味に呟く。歌舞伎は演目で大百足で退治をするのだが、天竜寺達が向かう先に待ち構えているのは本物、虫系が苦手なハンターならキツい戦いになるだろう。
「……よろしく、虫はあまり好きじゃないんだけどね」
日高・明(ka0476)は小さなため息と共に、今回の任務を共にするハンター達に自己紹介をする。
「ま、害虫だな。さっさと駆除して戻ってくればいいか」
影護 絶(ka1077)は案内人から渡された下水道内部の地図を見ながら、ため息を吐く。
「害虫駆除か……家訓に『汝、毒を吐くなんか巨大な百足は排除すべし』というのがあってだな」
バレル・ブラウリィ(ka1228)は表情を変える事なく、うんうん、と頷きながら呟いている。
「ふぇ~、毒ムカデさんですかぁ~……触りたくないですねぇ……」
スノゥ(ka1519)は肩を竦めながら、資料に書かれてある事、そして先遣隊が持ち帰った情報を頭の中に叩きこむ。
「触りたくないですけど受けたお仕事はちゃんとするです、害虫駆除、頑張りますよぉ~……」
スノゥはグッと拳を強く握り締め、大百足退治に対して意気込みを見せていた。
「……みんなが普通に暮らせるように、ミノア頑張るよ」
ミノア・エデン(ka1540)は呟いた後、唇をキュッと結ぶ。
「今回の雑魔、共食いをして強くなっているんですよね。放っておいたら、そのうち手に負えなくなりそうですねぇ……」
ラシュディア・シュタインバーグ(ka1779)はため息を吐きながら呟く。
「それに、下水道だなんて各所に行きやすい場所に雑魔を置いておくわけにはいきません。雑魔は速やかに殲滅しましょう」
穏やかな表情とは裏腹に、その言葉、瞳には強い意志が見えている。
「……3mのムカデ……うーん、虫が特別苦手というわけではないですけど、流石にちょっと……怖い、かな……でも、これ以上の被害を出すわけにもいきませんし、うん、頑張る……」
柏木 千春(ka3061)は自分に言い聞かせるように呟く。
顔合わせをしたハンター達は、先遣隊の情報を纏め、大百足が現れそうな場所の目星をつけて、数匹の雑魔を食い殺して残った大百足の潜む下水道へと向かい始めたのだった――……。
●下水道に潜むは、毒を持つ大百足
今回のハンター達は班を2つに分けて大百足を挟み撃ちにする作戦を考えていた。
A班・天竜寺、日高、影護、スノゥの4名。
B班・バレル、ラシュディア、ミノア、柏木の4名。
何かあれば『魔導短伝話』で情報の共有をする事を決めており、ハンター達は動き始めた。
※A班
「朽ち果ててはいるけど、全く使えないってわけじゃなさそうだよね」
天竜寺は下水道の中を見渡しながら呟く。色々と修復する場所はあるが、少し離れた場所に集落もあるし、この下水道が機能し始めれば、集落にとっても良い事だと考えていた。
「確かにそうだが、僕としてはこの臭いと暗さの方が気になる……こんな所に長くいたら鼻がもげそうだ、さっさと終わらせよう」
日高は崩れて瓦礫になっている場所を避けながら、ため息混じりに呟く。
多少暗さはあるが、日高とスノゥの持っている『ハンディLEDライト』が足場を照らし、A班のハンター達は瓦礫などに足を取られる事なく進む事が出来た。
「おい、これ……」
しばらく歩き続けた時、影護が同じ班のハンター達を呼びとめた。
そして、彼が指差している方向にあるのは――……。
「うっ、これって食い散らかされた雑魔……ですよね?」
生々しく残る死体にスノゥは思わず目を背けた。彼女だけではない、天竜寺も日高も、そして影護も眉根を寄せて表情を険しくしていた。
すべてが食い散らかされているのではなく、中途半端に食い散らかされており、恐らく日高の言っていた『臭い』もここから放たれているものと考えて間違いないだろう。
「とりあえず、B班に知らせておくね。向こうに血が続いているし、あたし達から雑魔までの距離はそんなに離れていないのかもしれない」
天竜寺は『魔導短伝話』でB班に連絡を取る。
すると意外な情報がB班から天竜寺に伝えられた。
「……向こう側にも食い散らかされた雑魔の死体があったって、それに唸り声も聞こえるって」
百足という生き物が唸り声をあげるのか、という疑問はあるが、ここにいるのは百足型というだけであり、実際の百足とは異なっている。
「B班がムカデと対峙する前に、僕達も挟み撃ちに出来るように急ごう」
日高が呟くと「そうだな」と影護が言葉を返す。
「大きさもそうだが、毒でこちらの自由を奪うという攻撃もあるし、片方の班で対峙するより挟み撃ちにした方がいい」
影護も頷きながら呟き、スノゥは『ワンド ブルーアイ』を強く握り締め、いつでも『機導砲』が撃てるように、周りを強く警戒していた。
※B班
「まさか、向こう側でも雑魔の食い散らかし死体が見つかるなんて思わなかったね」
ミノアは簡易地図を見ながら、ため息混じりに他のハンター達に言葉を投げかける。
「しかも、大百足はこちら側にいる可能性が高いですからね、この唸り声を聞いていると」
ラシュディアは苦笑気味に呟く。まだ雑魔との距離は近くない事、迷路のように入り組んだ作りになっている事からB班は大百足の姿を視認していない。
だが、歩くたびに唸り声は近づいているので、B班側に大百足がいるのは間違いないだろう。
「それに、この中途半端に貯まった水……これも厄介ですね、水そのものが腐ってドロドロで、この水路には足を入れない方が良いかもしれません、滑って戦い所ではなくなってしまいます」
ラシュディアが呟いた後「もうすぐ、目星をつけた地点ですね」と柏木が言葉を漏らした。
「一応A班とブッキングしない道を歩いていますが、変わったものと言えば、さっきの雑魔の死体でしょうか……ムカデって、あんな風に食い散らかす生き物でしたか……?」
ぞわっ、と鳥肌が立つ腕を擦りながら柏木が呟くと「本来の生態系とは違って来てるんじゃないかな?」とミノアが言葉を返した。
その時、ずしん、と何かが響く音が聞こえる。
「……まさか、大百足が移動を始めた?」
B班のハンター達はそれぞれ瓦礫に身を隠して、様子を見る事にした。
「ど、どうします? このまま、B班だけで戦闘に入りますか……?」
柏木がバレル、ラシュディア、ミノアに言葉を投げかける。
毒という厄介な性質を持っていなければ、B班だけで押し通す事も出来たかもしれない。
だが、人数を半分に裂いて捜索を行っている以上、4名のうち2人が毒にやられると、かなり危険な状況になってしまう。
(どうするべきか、A班がすぐに来ると信じて俺達だけで戦闘を開始するか……?)
バレルは心の中で呟く。恐らくバレルだけではなく、ラシュディア、ミノア、柏木も同じ事を考えているのだろうが、実行に踏み切れないのはやはりリスク面を考えるからだろう。
「……行けるかもしれませんよ、A班がこの位置にいるそうです」
ラシュディアは『魔導短伝話』でA班とやり取りをしていたらしく、ミノアの見ていた簡易地図を借りてA班の位置を指で示す。
「この位置だったら、あたし達よりA班の方に先に気づくんじゃないかな?」
ミノアが呟くと「なるほどな」とバレルが納得したように呟く。
「A班が惹きつけている間に、俺達も攻撃を仕掛ける――……本来の作戦通りというわけか」
「準備を始めましょう、大百足の背後をA班が攻撃するのは、もうすぐだと思いますから」
バレルの言葉を聞き、ラシュディアが呟く。
柏木も『不動明王剣』を強く握り締めながら、その時を待ったのだった。
●戦闘開始
「先手必勝!」
最初に攻撃を仕掛けたのは天竜寺だった。完全に背後からの攻撃で、大百足は避ける事も出来ず、天竜寺の攻撃をまともに受ける。
「後ろには通さない! 守りは任せろ、攻撃は任せた!」
日高は『シールド カエトラ』を構えながら、同じ班のハンター達に告げた。
「これだけデカイと、流石に気持ち悪いな」
影護は苦笑して、大百足の頭の動きに警戒を強め、防御を優先的にしていた。
「あまり見つめたいモンでも無いんだがな」
毒の液を吐くタイミングなどを計るため、影護は大百足の頭をジッと見つめている。
「『攻性強化』を使用しました、これより『機導砲』による射撃に専念しますね!」
スノゥは前衛3名に『攻性強化』を使用した後、日高のシールドに守られる形を取りながら、大百足に対して『機導砲』を放つ。
その時、B班も合流して大百足を挟む陣形での戦闘が始まった。
ラシュディアが『ウォーターシュート』を使用して、大百足がぐらりとよろめく。
その僅かな隙を突いて、バレルと柏木がそれぞれ愛用の武器を構えて大百足に攻撃を行う。
「うぇっ、なんかぐちゅって音がしましたぁ~……」
下水道内に響く生々しい音に、柏木が少しやや引いた表情で呟く。
「確かに戦闘後に行う武器の手入れが大変そうだ」
バレルは『強打』を大百足に使用しながら、眉根を寄せて呟く。毒がある以上、簡単な手入れは出来ず、二重に迷惑な大百足に対して僅かな怒りが込み上げてくる。
「気を付けて! 毒が来るよ!」
ミノアが叫び、日高は構えていた『シールド カエトラ』が毒を受ける形になり、実質的な被害はない。
「くっ、ただでさえ大きさでも面倒なんだからさっさとやられてくれないかな」
毒を吐いた後、大百足は少し動けなくなるらしく、日高はその隙を狙って『ユナイテッド・ドライブ・ソード』で攻撃を仕掛けた。
「行くよ!」
天竜寺は『飛燕』と『スラッシュエッジ』のコンボで装甲の薄い身体の節を狙って斬りつける。
「また毒か? 芸がないな」
影護は『シェルバックラー』で毒攻撃を防ぎ『日本刀 黒松』を大きく振りかぶり『部位狙い』を使用して大百足の足を狙う。
「あんまり動き回らせないでよ、お腹空いちゃうでしょ!」
ミノアは不機嫌そうに呟き『クレイモア』で大百足の関節部分を狙い、足を斬り落とす。
「離れて下さい!」
ラシュディアが大きな声で告げ、前衛のハンター達が一気に大百足から距離を取る。
それを狙い、ラシュディアは『ウォーターシュート』を、スノゥは『機導砲』で大百足に攻撃を仕掛けた。
「聖なる光で懺悔しなさい……!」
柏木は呟いた後『不動明王剣』を構えて『ホーリーライト』で、大百足に衝撃を与えた。
「お前の毒攻撃は何も分かっていないハンターには有効だが、予め毒があると分かっている者なら対策も立てられる、そして、お前をここから逃がすつもりもない」
バレルは『日本刀 黒松』を振り上げ、ひゅん、と風切り音を響かせる。
その攻撃に天竜寺、柏木、ミノアも連携するように動きを合わせて、ハンター達は無事に3mの大百足を退治する事が出来たのだった――……。
●戦闘終了後
「大百足、討ち取ったり! なーんて、親父や兄貴達がやるのを見て1度やりたかったんだよね」
戦闘終了後、大百足の上に乗りながら天竜寺が照れ臭そうに呟いている。
「す、凄いね……僕、虫は得意じゃないから、流石に乗れないよ」
大百足に乗る天竜寺を見ながら、日高が苦笑して呟く。
「毒攻撃はあったけど、事前に分かっていた事と予防策をたてられた事で食らわなかったよな。これも先遣隊の情報のおかげなのかもしれないけど」
影護はもう動かない大百足を見ながらため息を吐く。
「……うー、だが、大百足の頭ばかり見てたせいか暫く夢に出てきそうだな」
げんなりとした表情で呟く影護に「あぁ、その気持ちは分かるよ」と日高も頷く。
「まぁ、虫の形をしていただけマシじゃないのか? 中にはもっと目を逸らしたくなる外見の雑魔だっているはずだろうし……あまり、お目見えになりたくないがな」
バレルが苦笑する。
「早く帰りましょうよぉ~……私、それに近づきたくないですぅ」
スノゥは少し離れた所からハンター達に言葉を投げかけている。
彼女も大百足が苦手らしく、後衛だった事もあるが戦闘中も戦闘後も一切近づこうとしない。
「お腹空いたー……流石に、コレは食べられないよね」
ミノアは足元の大百足を見ながら呟く。
「さすがにそれは無理でしょうね――……というより、大百足ですよ?」
ラシュディアが苦笑しながら言葉を返すと「だよね、毒があるもんね」と『そっち!?』とツッコミを入れたくなるような事を言っていた。
「まだ帰るまで時間がありますし、どうしてこんな物が発生したのかを簡単に調べようかと。いつまでも足元にこんなのがいる可能性があるというのは、近隣住人の方々が安心出来ないでしょうから」
ラシュディアの言葉に、ハンター達も賛同するように頷く。
「あたしはこの下水道をどうにか機能させられないかって意見を出してみる。今は朽ちてるけど、こういうのって便利だと思うんだよね」
ラシュディアの言葉を聞き、天竜寺が軽く手を挙げながら答える。
「そうですね、私もお付き合いします――……が、流石にもうああいうのは出ないですよね?」
怖かったぁ、と鳥肌の立った腕を擦りながら柏木が言葉を付け足している。
その後、ハンター達は下水道内の調査を軽く行い、雑魔退治の報告書と共にそれをギルドに提出したのだった――……。
END
「実家でやる歌舞伎で俵藤太が大百足を退治するってのがあるけど、実際にやる事になるとは思わなかったよ、大百足を倒したらあたしも後々反乱を平定する英雄になったりするのかな♪」
天竜寺 舞(ka0377)は苦笑気味に呟く。歌舞伎は演目で大百足で退治をするのだが、天竜寺達が向かう先に待ち構えているのは本物、虫系が苦手なハンターならキツい戦いになるだろう。
「……よろしく、虫はあまり好きじゃないんだけどね」
日高・明(ka0476)は小さなため息と共に、今回の任務を共にするハンター達に自己紹介をする。
「ま、害虫だな。さっさと駆除して戻ってくればいいか」
影護 絶(ka1077)は案内人から渡された下水道内部の地図を見ながら、ため息を吐く。
「害虫駆除か……家訓に『汝、毒を吐くなんか巨大な百足は排除すべし』というのがあってだな」
バレル・ブラウリィ(ka1228)は表情を変える事なく、うんうん、と頷きながら呟いている。
「ふぇ~、毒ムカデさんですかぁ~……触りたくないですねぇ……」
スノゥ(ka1519)は肩を竦めながら、資料に書かれてある事、そして先遣隊が持ち帰った情報を頭の中に叩きこむ。
「触りたくないですけど受けたお仕事はちゃんとするです、害虫駆除、頑張りますよぉ~……」
スノゥはグッと拳を強く握り締め、大百足退治に対して意気込みを見せていた。
「……みんなが普通に暮らせるように、ミノア頑張るよ」
ミノア・エデン(ka1540)は呟いた後、唇をキュッと結ぶ。
「今回の雑魔、共食いをして強くなっているんですよね。放っておいたら、そのうち手に負えなくなりそうですねぇ……」
ラシュディア・シュタインバーグ(ka1779)はため息を吐きながら呟く。
「それに、下水道だなんて各所に行きやすい場所に雑魔を置いておくわけにはいきません。雑魔は速やかに殲滅しましょう」
穏やかな表情とは裏腹に、その言葉、瞳には強い意志が見えている。
「……3mのムカデ……うーん、虫が特別苦手というわけではないですけど、流石にちょっと……怖い、かな……でも、これ以上の被害を出すわけにもいきませんし、うん、頑張る……」
柏木 千春(ka3061)は自分に言い聞かせるように呟く。
顔合わせをしたハンター達は、先遣隊の情報を纏め、大百足が現れそうな場所の目星をつけて、数匹の雑魔を食い殺して残った大百足の潜む下水道へと向かい始めたのだった――……。
●下水道に潜むは、毒を持つ大百足
今回のハンター達は班を2つに分けて大百足を挟み撃ちにする作戦を考えていた。
A班・天竜寺、日高、影護、スノゥの4名。
B班・バレル、ラシュディア、ミノア、柏木の4名。
何かあれば『魔導短伝話』で情報の共有をする事を決めており、ハンター達は動き始めた。
※A班
「朽ち果ててはいるけど、全く使えないってわけじゃなさそうだよね」
天竜寺は下水道の中を見渡しながら呟く。色々と修復する場所はあるが、少し離れた場所に集落もあるし、この下水道が機能し始めれば、集落にとっても良い事だと考えていた。
「確かにそうだが、僕としてはこの臭いと暗さの方が気になる……こんな所に長くいたら鼻がもげそうだ、さっさと終わらせよう」
日高は崩れて瓦礫になっている場所を避けながら、ため息混じりに呟く。
多少暗さはあるが、日高とスノゥの持っている『ハンディLEDライト』が足場を照らし、A班のハンター達は瓦礫などに足を取られる事なく進む事が出来た。
「おい、これ……」
しばらく歩き続けた時、影護が同じ班のハンター達を呼びとめた。
そして、彼が指差している方向にあるのは――……。
「うっ、これって食い散らかされた雑魔……ですよね?」
生々しく残る死体にスノゥは思わず目を背けた。彼女だけではない、天竜寺も日高も、そして影護も眉根を寄せて表情を険しくしていた。
すべてが食い散らかされているのではなく、中途半端に食い散らかされており、恐らく日高の言っていた『臭い』もここから放たれているものと考えて間違いないだろう。
「とりあえず、B班に知らせておくね。向こうに血が続いているし、あたし達から雑魔までの距離はそんなに離れていないのかもしれない」
天竜寺は『魔導短伝話』でB班に連絡を取る。
すると意外な情報がB班から天竜寺に伝えられた。
「……向こう側にも食い散らかされた雑魔の死体があったって、それに唸り声も聞こえるって」
百足という生き物が唸り声をあげるのか、という疑問はあるが、ここにいるのは百足型というだけであり、実際の百足とは異なっている。
「B班がムカデと対峙する前に、僕達も挟み撃ちに出来るように急ごう」
日高が呟くと「そうだな」と影護が言葉を返す。
「大きさもそうだが、毒でこちらの自由を奪うという攻撃もあるし、片方の班で対峙するより挟み撃ちにした方がいい」
影護も頷きながら呟き、スノゥは『ワンド ブルーアイ』を強く握り締め、いつでも『機導砲』が撃てるように、周りを強く警戒していた。
※B班
「まさか、向こう側でも雑魔の食い散らかし死体が見つかるなんて思わなかったね」
ミノアは簡易地図を見ながら、ため息混じりに他のハンター達に言葉を投げかける。
「しかも、大百足はこちら側にいる可能性が高いですからね、この唸り声を聞いていると」
ラシュディアは苦笑気味に呟く。まだ雑魔との距離は近くない事、迷路のように入り組んだ作りになっている事からB班は大百足の姿を視認していない。
だが、歩くたびに唸り声は近づいているので、B班側に大百足がいるのは間違いないだろう。
「それに、この中途半端に貯まった水……これも厄介ですね、水そのものが腐ってドロドロで、この水路には足を入れない方が良いかもしれません、滑って戦い所ではなくなってしまいます」
ラシュディアが呟いた後「もうすぐ、目星をつけた地点ですね」と柏木が言葉を漏らした。
「一応A班とブッキングしない道を歩いていますが、変わったものと言えば、さっきの雑魔の死体でしょうか……ムカデって、あんな風に食い散らかす生き物でしたか……?」
ぞわっ、と鳥肌が立つ腕を擦りながら柏木が呟くと「本来の生態系とは違って来てるんじゃないかな?」とミノアが言葉を返した。
その時、ずしん、と何かが響く音が聞こえる。
「……まさか、大百足が移動を始めた?」
B班のハンター達はそれぞれ瓦礫に身を隠して、様子を見る事にした。
「ど、どうします? このまま、B班だけで戦闘に入りますか……?」
柏木がバレル、ラシュディア、ミノアに言葉を投げかける。
毒という厄介な性質を持っていなければ、B班だけで押し通す事も出来たかもしれない。
だが、人数を半分に裂いて捜索を行っている以上、4名のうち2人が毒にやられると、かなり危険な状況になってしまう。
(どうするべきか、A班がすぐに来ると信じて俺達だけで戦闘を開始するか……?)
バレルは心の中で呟く。恐らくバレルだけではなく、ラシュディア、ミノア、柏木も同じ事を考えているのだろうが、実行に踏み切れないのはやはりリスク面を考えるからだろう。
「……行けるかもしれませんよ、A班がこの位置にいるそうです」
ラシュディアは『魔導短伝話』でA班とやり取りをしていたらしく、ミノアの見ていた簡易地図を借りてA班の位置を指で示す。
「この位置だったら、あたし達よりA班の方に先に気づくんじゃないかな?」
ミノアが呟くと「なるほどな」とバレルが納得したように呟く。
「A班が惹きつけている間に、俺達も攻撃を仕掛ける――……本来の作戦通りというわけか」
「準備を始めましょう、大百足の背後をA班が攻撃するのは、もうすぐだと思いますから」
バレルの言葉を聞き、ラシュディアが呟く。
柏木も『不動明王剣』を強く握り締めながら、その時を待ったのだった。
●戦闘開始
「先手必勝!」
最初に攻撃を仕掛けたのは天竜寺だった。完全に背後からの攻撃で、大百足は避ける事も出来ず、天竜寺の攻撃をまともに受ける。
「後ろには通さない! 守りは任せろ、攻撃は任せた!」
日高は『シールド カエトラ』を構えながら、同じ班のハンター達に告げた。
「これだけデカイと、流石に気持ち悪いな」
影護は苦笑して、大百足の頭の動きに警戒を強め、防御を優先的にしていた。
「あまり見つめたいモンでも無いんだがな」
毒の液を吐くタイミングなどを計るため、影護は大百足の頭をジッと見つめている。
「『攻性強化』を使用しました、これより『機導砲』による射撃に専念しますね!」
スノゥは前衛3名に『攻性強化』を使用した後、日高のシールドに守られる形を取りながら、大百足に対して『機導砲』を放つ。
その時、B班も合流して大百足を挟む陣形での戦闘が始まった。
ラシュディアが『ウォーターシュート』を使用して、大百足がぐらりとよろめく。
その僅かな隙を突いて、バレルと柏木がそれぞれ愛用の武器を構えて大百足に攻撃を行う。
「うぇっ、なんかぐちゅって音がしましたぁ~……」
下水道内に響く生々しい音に、柏木が少しやや引いた表情で呟く。
「確かに戦闘後に行う武器の手入れが大変そうだ」
バレルは『強打』を大百足に使用しながら、眉根を寄せて呟く。毒がある以上、簡単な手入れは出来ず、二重に迷惑な大百足に対して僅かな怒りが込み上げてくる。
「気を付けて! 毒が来るよ!」
ミノアが叫び、日高は構えていた『シールド カエトラ』が毒を受ける形になり、実質的な被害はない。
「くっ、ただでさえ大きさでも面倒なんだからさっさとやられてくれないかな」
毒を吐いた後、大百足は少し動けなくなるらしく、日高はその隙を狙って『ユナイテッド・ドライブ・ソード』で攻撃を仕掛けた。
「行くよ!」
天竜寺は『飛燕』と『スラッシュエッジ』のコンボで装甲の薄い身体の節を狙って斬りつける。
「また毒か? 芸がないな」
影護は『シェルバックラー』で毒攻撃を防ぎ『日本刀 黒松』を大きく振りかぶり『部位狙い』を使用して大百足の足を狙う。
「あんまり動き回らせないでよ、お腹空いちゃうでしょ!」
ミノアは不機嫌そうに呟き『クレイモア』で大百足の関節部分を狙い、足を斬り落とす。
「離れて下さい!」
ラシュディアが大きな声で告げ、前衛のハンター達が一気に大百足から距離を取る。
それを狙い、ラシュディアは『ウォーターシュート』を、スノゥは『機導砲』で大百足に攻撃を仕掛けた。
「聖なる光で懺悔しなさい……!」
柏木は呟いた後『不動明王剣』を構えて『ホーリーライト』で、大百足に衝撃を与えた。
「お前の毒攻撃は何も分かっていないハンターには有効だが、予め毒があると分かっている者なら対策も立てられる、そして、お前をここから逃がすつもりもない」
バレルは『日本刀 黒松』を振り上げ、ひゅん、と風切り音を響かせる。
その攻撃に天竜寺、柏木、ミノアも連携するように動きを合わせて、ハンター達は無事に3mの大百足を退治する事が出来たのだった――……。
●戦闘終了後
「大百足、討ち取ったり! なーんて、親父や兄貴達がやるのを見て1度やりたかったんだよね」
戦闘終了後、大百足の上に乗りながら天竜寺が照れ臭そうに呟いている。
「す、凄いね……僕、虫は得意じゃないから、流石に乗れないよ」
大百足に乗る天竜寺を見ながら、日高が苦笑して呟く。
「毒攻撃はあったけど、事前に分かっていた事と予防策をたてられた事で食らわなかったよな。これも先遣隊の情報のおかげなのかもしれないけど」
影護はもう動かない大百足を見ながらため息を吐く。
「……うー、だが、大百足の頭ばかり見てたせいか暫く夢に出てきそうだな」
げんなりとした表情で呟く影護に「あぁ、その気持ちは分かるよ」と日高も頷く。
「まぁ、虫の形をしていただけマシじゃないのか? 中にはもっと目を逸らしたくなる外見の雑魔だっているはずだろうし……あまり、お目見えになりたくないがな」
バレルが苦笑する。
「早く帰りましょうよぉ~……私、それに近づきたくないですぅ」
スノゥは少し離れた所からハンター達に言葉を投げかけている。
彼女も大百足が苦手らしく、後衛だった事もあるが戦闘中も戦闘後も一切近づこうとしない。
「お腹空いたー……流石に、コレは食べられないよね」
ミノアは足元の大百足を見ながら呟く。
「さすがにそれは無理でしょうね――……というより、大百足ですよ?」
ラシュディアが苦笑しながら言葉を返すと「だよね、毒があるもんね」と『そっち!?』とツッコミを入れたくなるような事を言っていた。
「まだ帰るまで時間がありますし、どうしてこんな物が発生したのかを簡単に調べようかと。いつまでも足元にこんなのがいる可能性があるというのは、近隣住人の方々が安心出来ないでしょうから」
ラシュディアの言葉に、ハンター達も賛同するように頷く。
「あたしはこの下水道をどうにか機能させられないかって意見を出してみる。今は朽ちてるけど、こういうのって便利だと思うんだよね」
ラシュディアの言葉を聞き、天竜寺が軽く手を挙げながら答える。
「そうですね、私もお付き合いします――……が、流石にもうああいうのは出ないですよね?」
怖かったぁ、と鳥肌の立った腕を擦りながら柏木が言葉を付け足している。
その後、ハンター達は下水道内の調査を軽く行い、雑魔退治の報告書と共にそれをギルドに提出したのだった――……。
END
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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![]() |
作戦相談卓 バレル・ブラウリィ(ka1228) 人間(リアルブルー)|21才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/12/02 06:00:12 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/30 00:33:06 |