ゲスト
(ka0000)
【初夢】なんということでしょう
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/01/07 15:00
- 完成日
- 2018/01/16 23:19
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「あるじさま!」
そんな声がして、ハンターのトワ・トモエは目を開ける。
聞き覚えのない声。というか、トモエはひとり暮らしなので、そんな声が聞こえてしまう方が不自然きわまりない。
(……夢かな)
そんなことを思いながらベッドでぐだぐだしていると、
「起きてください、あるじさまー!」
思いっきりそう言われ、布団をはがされた。
布団を掴んでいたのは、見覚えの無い、小柄な少年だった。
線の細い身体に、学ランめいた上着と膝小僧くらいまでのズボン。
短く刈られた銀の髪に、同系色の瞳が、何処か不思議な色をたたえている。
見覚えもなにも無い、少年だった。
「……誰?」
トモエは目をぱちくりさせて問いかける。少年は、にっこり笑って、こう名乗った。
「僕は、あるじさまの、ショートソードです!」
――え?
●
「以前にも似たようなことはあった気はするけど」
ハンターオフィスには既に黒山の人だかり。
みな一様に、「自分の愛用する品が人間になった」と言って騒いでいる。
トモエはショートソードと名乗った少年に、どうしようか? と首をかしげると、パンケーキが食べたい、と言いだした。
それならと、もう開き直ってパンケーキを食べにいくことにした。ここでこうやっていても埒があかないなら、少しでものんびり過ごしたいものだ。
「それにしても漫画みたいなこともあるんだなぁ」
そもそも異世界転移とか、そう言うのも漫画みたいなノリだけど、とトモエは独りごちながら苦笑する。
折角のよく晴れた新年の一日なのだ。
穏やかに過ごしたいと思うのは、自然ではないだろうか?
●
――これはあくまで一つの例。
ハンターの愛用する品がヒトに変化したら、さあ。
貴方なら、どうする?
「あるじさま!」
そんな声がして、ハンターのトワ・トモエは目を開ける。
聞き覚えのない声。というか、トモエはひとり暮らしなので、そんな声が聞こえてしまう方が不自然きわまりない。
(……夢かな)
そんなことを思いながらベッドでぐだぐだしていると、
「起きてください、あるじさまー!」
思いっきりそう言われ、布団をはがされた。
布団を掴んでいたのは、見覚えの無い、小柄な少年だった。
線の細い身体に、学ランめいた上着と膝小僧くらいまでのズボン。
短く刈られた銀の髪に、同系色の瞳が、何処か不思議な色をたたえている。
見覚えもなにも無い、少年だった。
「……誰?」
トモエは目をぱちくりさせて問いかける。少年は、にっこり笑って、こう名乗った。
「僕は、あるじさまの、ショートソードです!」
――え?
●
「以前にも似たようなことはあった気はするけど」
ハンターオフィスには既に黒山の人だかり。
みな一様に、「自分の愛用する品が人間になった」と言って騒いでいる。
トモエはショートソードと名乗った少年に、どうしようか? と首をかしげると、パンケーキが食べたい、と言いだした。
それならと、もう開き直ってパンケーキを食べにいくことにした。ここでこうやっていても埒があかないなら、少しでものんびり過ごしたいものだ。
「それにしても漫画みたいなこともあるんだなぁ」
そもそも異世界転移とか、そう言うのも漫画みたいなノリだけど、とトモエは独りごちながら苦笑する。
折角のよく晴れた新年の一日なのだ。
穏やかに過ごしたいと思うのは、自然ではないだろうか?
●
――これはあくまで一つの例。
ハンターの愛用する品がヒトに変化したら、さあ。
貴方なら、どうする?
リプレイ本文
●
夢の話とは言え、それは何処か懐かしい人に会ったような、或いはそんな心地になる物語で――
(……妙なこともあるものだ。まあこんな世界だし、何が起きてもおかしくないと言えばそうなのだろうが。折角だし、この状況を楽しませて貰おうか)
そんなことを思いながら顎を撫でるのは、榊 兵庫(ka0010)。歴戦のつわものでもある彼の目の前にいるのは、彼の愛用している武器である十文字槍「人間無骨」だと名乗る青年。見た目は兵庫とそれほど変わらぬ年だが、長身で何処か硬質な感じのする美丈夫だ。服装は羽織袴の和装で、いかにもその由来を物語っているかのよう。喋り方も古めかしい堅苦しさを伴い、「人間無骨」という武器の特徴を如実に示している。
「主殿……? いかがなされたのでしょうか?」
不思議そうな顔つきで、「人間無骨」は兵庫に問いかける。
「……んー、取り敢えず、だ。名前がないのはなにかと不便だな。お前さえよければ、名をつけよう。そうだな、「長可」はどうだ? お前を扱っていた戦国武将に肖った名前だが」
兵庫がそう提案してにやっと笑えば、「人間無骨」――いや「長可」はぱっと顔を輝かせる。
「喜んでお受け致しまする」
街を歩けば長可も興味深そうにあちこちを見回す。普段と異なる姿ゆえ、様々なものが目新しい。
鍛冶屋の親父の腕前を語り合い、酒場で酒を酌み交わす。
「……俺にとって最良の相棒はお前だが、戦場次第でお前を上手く扱えんこともある。そこは判ってくれ」
「無論。自分では、ごく至近や、或いは長距離射程の相手には敵いますまいて」
「ああ。それにしてもお前ほど酒の友に相応しい者もないだろうな。否とは言うまい?」
酒を呑みつつ、二人はそんな語りを続ける。と、兵庫が不意に問いかけた。
「なあ、長可。俺はお前の使い手として、きちんとやれているか? まだ修行中の身とはいえ、得物であるお前に頼りきりでは無いと思っているんだが、な」
長可はその言葉に優しく頷き返す。
「主殿の努力を一番知っているのは自分です。主殿はとても良き使い手です、自分が保証致します故」
「そうか……ありがとうな、長可」
そう言って、兵庫も小さく微笑んだ。
●
起きたら異性が目の前にいる。しかもそれは愛用している武器だという。
レイア・アローネ(ka4082)は、もちろんながら戸惑った。
金髪に朱い瞳をしたミドルティーンの少年は、どこか悪戯っぽい顔立ちで彼が自称する「魔剣シーガルスホルム」のように、たしかにどこか蛇のような雰囲気を漂わせている。軽薄でしかし同時に残酷な眼差しは、まさに蛇のそれだ。
「ま、まさか剣がヒトになるとは……! 一体どういう」
と、言おうとすると、
「レイア! なんだかおかしなことが……」
友人のブリジット(ka4843)が、困り果てた声で部屋を訪れてきた。彼女の傍にいるのは、赤毛に聖職者風のローブを纏った、何処かブリジットに雰囲気の似た女性。
「……ブリジット、彼女は?」
レイアがおそるおそる尋ねると、赤毛の女性がにこりと微笑んだ。
「あたしは、ブリジットのバイオリン。名前は……そうね、ティアと名乗っておくわ」
「……えっ」
四人は場所を変え、のんびり話せる公園に足を向けていた。
「はい……そうなんです……実は、お母様に、似ていて……そうとしか、思えないんです」
ブリジットも、困惑した表情を浮かべている。
すると「シーガルスホルム」も、
「うんうん、だから僕みたいなのもいておかしくないだろ?」
そう言って笑う。
「ああ、僕のことはシーガルでいいよ」
そう付け加えて。
「そ、そうか……ちなみに、なあ、お前から見て、私の剣はどうだろうか?」
レイアがおそるおそる尋ねると、シーガルはにやりと笑う。
「カタいカタい、重い重い。そんなんだから友達も出来ないんだよ」
「ッ……余計なお世話だ! それに、ブリジットのように、気兼ねなく訪ねてくる者もいるぞ?!」
そんなシーガルとレイアの噛みつきかねない喧嘩を見て、のほほんと楽しそうに笑うブリジットとティア。
「そうね、そういう間柄なのかも」
そう頷くと、くすりと笑いながらティアがすっと刀をとりだし、ブリジットに斬りつける。
「!?」
それに受け返すブリジット。
「突然……!」「なに言っているの、あたし達に言葉なんて不要でしょ?」
避けられるのは判っている、と言った風の緩やかな剣舞。――まるでブリジットの動きと対をなすかのような。
(その舞は……)
ブリジットの舞の動きは、尊敬する母の義妹から教わったもの。
けれど、その根底に流れる旋律は、彼女の――母のもの。
(ずっと見てくれていた……と言うことですか……)
ブリジットは、胸の奥でそう思い、そして思いきり身体を動かす。感謝の舞を。今のブリジットの、持てる全てを。
「……ブリジットはいいな」
レイアが寂しげに呟く。
「なに言ってんだよ。無駄にでかい乳ぶら下げてんだし少しは男の一人でも作ったら?」
「ちょ、この話に胸は関係ないだろうが!」
「そうかなあ? でも少し羨ましいんだろう? ブリジット達が、さ」
……確かにそうかも知れない。それでも、レイアにはレイアの道があり、ブリジットにも彼女の道がある。
レイアは仲睦まじそうに剣の稽古をする二人を見つめる。
「私も負けていられないな」
そう言いながら、普段は腰に佩いているシーガルを見つめた。好戦的な眼差しに、シーガルもにやりと返す。
「ま、少しずつやっていこうか」
のらりくらりといいながら、しかしその眼差しは、たしかに嬉しそうな光を持っていた。
●
ブリジットのバイオリンのように、武器でないものだってヒトの姿となり得る。
防具や愛用の品々……その中でとくに顕著な例は天央 観智(ka0896)の「IDカード」だろう。
見た目はまるで完治と二卵性の双子と言われても違和感のないくらい、何処か似たところのある落ち着いた女性。観智とは、対の存在のように、二人並べば何処か微笑ましい。
「何方でしょうか?」
思わず観智がそう問うても、「貴方の半身みたいなものよ」と親しげに返す、そんな女性。
「……そうか、いつも身につけているから……だからこそこうやって、雰囲気も似るんでしょうね」
観智もひとり納得顔、相手もうんうんと頷いてみせる。自室でのんびり、お茶を飲み交わしながら語る話題はリアルブルーにいた頃を懐かしんで話したり、クリムゾンウェストに来てから触れた異世界の文化――魔法や精霊といったことにも話し合う。
「今までに様々な経験を積んでは来ましたけれど、こういうのは初めてで……けれど、議論ができるというのはやはりよいですね」
「そうね、こうやって貴方とゆったり話が出来るなんて、私も思ってもいなかったわ」
IDカードだった女性はそう微笑んで頷く。味覚も似通っていて、飲んでいるのも同じもの。ホットの紅茶。
「こういう現象が起きるのは、異世界だから……でしょうか」
「そうとは限らないわ。ひとはこういうことを夢のように捉える。夢ならば、どこにいても見ることが出来るじゃない」
「ああ……成程。それは、たしかに」
口調も控えめに、穏やかに。ゆったりと時間は過ぎゆく。
研究者故の好奇心はもちろんあるものの、討論には決してならないのは……お互い似たような思考の持ち主だからなのだろう。
●
変わったものが人間になる、と言う意味ではこちらも負けてはいない。ドラグーンのちびっ子・杢(ka6890)の目の前に現れたのは髪の毛がふわふわとした小さな双子の少年少女。杢よりも更に幼いその容姿は、しかしどこか彼の愛用する「もふっぱ」に似ていた。
もふっぱ……リアルブルーの人気コミックに登場する精霊をイメージした、もふもふしたスリッパ。かわいい。
「杢! きたもふよー!」
「いっしょにあそぶもふっぱー!」
幼い双子は舌足らず気味な口調でそんなことを言ってはしゃぐ。普段は杢も幼い方なのだが、それよりも幼い相手と言うことで、今日は杢もお兄ちゃん風を吹かせている。
「……ハンターさなっどこげなこともあるもんだんずね……おら知らなかったんず」
杢はそんなことを思わず呟くが、いやこれは普通じゃ無い状態なので、これを普段の生活と思われても困るわけだが、まあいい。
「んだ、おめだち、おらと遊びたいだんず?」
杢が問うと二人は嬉しそうに頷く。
「えとえと、こうえんいきたいもふー!」
「杢とあそびたいもふっぱー!」
あどけない声の子どもたち。公園で遊ぶのは、確かにいいだろう。
「ん、ほんだらいくだんず。おら、いもーどとおどーど、いっがら、慣れてるだんず。いっしょに遊ぶだんずー」
かくして、白い髪の幼子が三人、公園で無邪気に遊ぶ姿が目撃されたと言うことである。
ところでその一方、アーク・フォーサイス(ka6568)も戸惑っていた。いつもの愛用している「斬魔刀「祢々切丸」」が、黒目黒髪の男性になっていたからである。
「……本当に、君が祢々切丸?」
「はい、俺が貴方の祢々切丸です。無論主とともに戦った日々はきちんと覚えています」
丁寧だけれど、何処かゆるふわな印象をもつ祢々切丸。にこりと優しく微笑めば、なるほど、刀だとはなかなか思えない優しげな瞳を持っている。
「まさか、話せるなんて。そうだ、折角というわけじゃないけれど、今日は買いものに行かなくちゃならなくて……一緒に行く?」
アークが尋ねれば、祢々切丸も嬉しそうに頷いた。
「ええ是非! 主と一緒なら、何処へでも行きますよ」
買いもの、と言っても雑貨類だ。それこそ刀の手入れに必要な油や打粉も買い足さねばならないらしい。
店に向かう途中で白い子どもたちがもふもふと戯れているのを眺めつつ、アークと祢々切丸は歩いていく。
「祢々切丸は、背が高いね……見上げないとちゃんと顔が見えないな。少し羨ましいよ」
必要なものを調達しての帰り道、ふと思ったことを、アークは呟く。
「そうでしょうか……背が高いというのも、確かに考えものですね。先ほどのように、扉に頭をぶつけたりしますから」
――それに、主に見上げて貰いたくもありませんし。
こういう所、何処か謙虚さの見える祢々切丸だった。
●
それにしても、姿というのは道具それぞれの『個』を出す場合と、主の『個』に似せる場合と、両方があるらしい。
主によく似た――のは、グレンデル・フォトンヘッド(ka6894)の「法術盾「不壊なる揺光」」が良い例であろう。
元来オートマトンである彼は、頭部に電球のような被り物をした人物であるが、目覚めてすぐにグレンデルが見たのは『オレンジの電球』を被った鎧姿の男――見た瞬間、グレンデルは思った。
――これ、所謂私の2Pキャラであるな?
「私は貴様、そして貴様は私……そう言うことだ」
そんなことまで言うわけだから、そう思っても仕方がない。
「我ら光の?」「代行者」
「民が為に?」「道を征く者」
「我らが輝きは?」「星が如く照らすため……はっ、なんてことだ……」
試しに符丁を併せるとぴったりとあうものだから、グレンデルが戸惑うのも無理はない。取り敢えず被り物が戸惑うようにぴかぴかと光る。
「……取り敢えず使命が為に、」「町に向かおうか」
こんなところまでシンクロする始末である。
しかしいろいろとでかい声で話し、うろつくその姿は完全に不審者――と言うことで、おまわりさーん、こっちです、なんてことになってしまうが、そんなときも、
「落ち着いてくれ! 私はあくまで人助けをしようとして!」
「そうだ、どこをどう見ても普通の聖導士ではないか! 怪しいところなんて何もないだろう貴様!」
……いや、十分に怪しいから。うん。
他方、明らかに異なるのはエルバッハ・リオン(ka2434)のミーミルフェイス。なにしろ身長145センチのエルバッハに対し、2メートルはあるかという筋骨隆々の男性だからだ。しかも、装備などで自分の身体を隠すことを好まない、と来ている。
今日も簡単な護衛依頼に入っているエルバッハだったが、流石にその姿で同行するミーミルに
「その格好で行くつもりですか?」
と問いかければ、暑苦しそうな笑顔を向けて
「無論。私の肉体こそ最高の防具、やはり誇るべきは己の肉体と言うことですな」
からりと言われてしまう。「エル様とて、それが判っているからこそその御姿を度々お見せになっているのでしょう?」
(……まさかここで日頃の行いが返ってくるとは。しかし、彼の見た目では完全にアウトでしょう、もしも捕まった場合、私にも監督責任が……)
エルバッハも、今回ばかりは冷や汗気味。ハンターに成り立ての頃よりは、羞恥心の類が確実に増してはいるからだ。とはいえ、確かにそんなことがあるのも事実なので、大きなことは言えない。
「ミーミル、リアルブルーには能ある鷹は爪を隠す、と言う諺もあります。なので、今回は貴方の肉体は隠すことにしてきちんと装備をつけていきましょう」
そう、鬼気迫る様相で言って、渋々了承したようだ。
――しかし、こういう時だからこそ、悪いことは起きるもので。
盗賊団の襲撃を受けて応戦中、雄叫びとともにミーミルが筋肉を膨張させ……全ての装備がはじけ飛んでしまうなんて言うのは、仕方ないのだろうか。無論この件に関して、エルバッハは丁寧に頭を下げ、内密にして貰うようお願いしていた。
●
「……貴方が、「愛しきミゼリア」?」
思わずそんな声を上げたのはアルスレーテ・フュラー(ka6148)。
声をかけた相手は、腰辺りまである長い黒髪の先を、緑のリボンで縛ったアルスレーテと同世代ほどの女性。いや、少しばかり年上かも知れない。
「ええ、そうよ」
そう微笑みかけるその姿は、何処かアルスレーテにも似ていた。
(まあ武器に変容する歪虚もいるし、武器がヒトになったからと今更驚くほどのことでも無いわね)
自分の中でそう納得づけ、頷いてみせる。
「はあ……判ったわ。えーと……じゃあ、ミゼリア。ダイエットがてら散歩に行くわ。あなたが本当に「愛しきミゼリア」ならほって置くわけにもいかないし、ついてらっしゃい」
「ええ、もちろん。ふふ、なんだか楽しいわねこういうのも」
ミゼリアも、何処かお姉さんめいた笑顔になる。その姿を見て(……でかいなぁ)と思ったのはアルスレーテだが、どこを見てそう思ったのかは、あえて記録しないでおこう。
「あ……美味しそうな匂い。折角だし、おやつに食べない?」
「何を言ってるの? ダイエットのための散歩で買い食いするなんて、まったく、貴方のお母様とは随分違うわ」
散歩の途中で買い食いを提案すれば即座に却下され、ぐちぐちと、しかし理にかなった小言を聞きながら、ため息交じりに家に戻りつく。しかしそこでも
「もう少し部屋もきれいにしなさいな。お母様もいつも言ってたでしょう?」
(ああ……うるさいなぁ)
そうは思う。けれど、彼女を見て思うのは母のこと。ババアなんて呼んだりはするけれど、その辺に捨てられるはずもない。元々このミゼリアは、彼女の母のもので、父と母の大切な思い出だ。……それを勝手に駄目にしていいわけがない。
「仕方ないなあ。もう、やります、やりますってば」
そう言いながら、アルスレーテは不思議と口元に笑みが浮かんでいた。
●
「マスター、マスター」
聞き慣れぬ声にそう呼ばれ、冷泉 緋百合(ka6936)はぼんやり目を覚ますと、そこにいたのは朱い瞳に黒髪の、背の高い男性。
「……誰っ?」
すわ侵入者かと慌てて戦闘態勢を整えようとするが、彼はそれを押しとどめる。
「私だ。マスター、フラルゴだ」
フラルゴ――機械手甲「フラルゴ」。彼女の愛用する格闘武器だ。フラルゴは今まで緋百合と歩んだ道をいろいろと懐かしむように話す。その話の真実味があまりに強く、確かに彼はフラルゴであると信じられた。
「不思議な話ですが……こんなこともあるのかもしれません。信じましょう。どちらにしろ、今日はお仕事はお休みを戴いて、少し散策でもしませんか」
「はい。マスター」
フラルゴはそっと微笑んだ。
「そういえば、最近悩んでいることはないか、マスター」
昼食を近くのカフェで食べながら、フラルゴは緋百合に尋ねてくる。姿が似ているわけでもないのにぱっと見た感じはまるで仲のいい兄と妹のような二人、フラルゴはどうやらずっと彼女を気にかけていたらしい。
「実は……笑わないでくださいね、私は昔からなりたいと言っていた正義のヒーローになっていいのか、そしてその為にはどうしたらいいのか……悩んでいて」
すると、フラルゴは真っ直ぐに緋百合を見据えて言った。
「それはすぐに答えを出すべきかどうか……マスターの周りには頼れる家族、友人、沢山いるはずだ。今急いで答えを出す必要は無い、共にゆっくり考えていこう。……ただ、どんな答えであれ、私はずっとマスターとともにある」
――彼女の記憶は、そこで途切れる。
●
翌朝。
いつもと変わらぬ日々がまたはじまる。
しかし、緋百合は丁寧に相棒たる武器を磨いていた。
それが夢なのか、そもそも夢の内容すらもあやふやだが、励まして貰えた気がするから。
誰もが自分の大切なモノとともにある。
それをより愛おしく思える――そんな夢だったのかも知れない。
夢の話とは言え、それは何処か懐かしい人に会ったような、或いはそんな心地になる物語で――
(……妙なこともあるものだ。まあこんな世界だし、何が起きてもおかしくないと言えばそうなのだろうが。折角だし、この状況を楽しませて貰おうか)
そんなことを思いながら顎を撫でるのは、榊 兵庫(ka0010)。歴戦のつわものでもある彼の目の前にいるのは、彼の愛用している武器である十文字槍「人間無骨」だと名乗る青年。見た目は兵庫とそれほど変わらぬ年だが、長身で何処か硬質な感じのする美丈夫だ。服装は羽織袴の和装で、いかにもその由来を物語っているかのよう。喋り方も古めかしい堅苦しさを伴い、「人間無骨」という武器の特徴を如実に示している。
「主殿……? いかがなされたのでしょうか?」
不思議そうな顔つきで、「人間無骨」は兵庫に問いかける。
「……んー、取り敢えず、だ。名前がないのはなにかと不便だな。お前さえよければ、名をつけよう。そうだな、「長可」はどうだ? お前を扱っていた戦国武将に肖った名前だが」
兵庫がそう提案してにやっと笑えば、「人間無骨」――いや「長可」はぱっと顔を輝かせる。
「喜んでお受け致しまする」
街を歩けば長可も興味深そうにあちこちを見回す。普段と異なる姿ゆえ、様々なものが目新しい。
鍛冶屋の親父の腕前を語り合い、酒場で酒を酌み交わす。
「……俺にとって最良の相棒はお前だが、戦場次第でお前を上手く扱えんこともある。そこは判ってくれ」
「無論。自分では、ごく至近や、或いは長距離射程の相手には敵いますまいて」
「ああ。それにしてもお前ほど酒の友に相応しい者もないだろうな。否とは言うまい?」
酒を呑みつつ、二人はそんな語りを続ける。と、兵庫が不意に問いかけた。
「なあ、長可。俺はお前の使い手として、きちんとやれているか? まだ修行中の身とはいえ、得物であるお前に頼りきりでは無いと思っているんだが、な」
長可はその言葉に優しく頷き返す。
「主殿の努力を一番知っているのは自分です。主殿はとても良き使い手です、自分が保証致します故」
「そうか……ありがとうな、長可」
そう言って、兵庫も小さく微笑んだ。
●
起きたら異性が目の前にいる。しかもそれは愛用している武器だという。
レイア・アローネ(ka4082)は、もちろんながら戸惑った。
金髪に朱い瞳をしたミドルティーンの少年は、どこか悪戯っぽい顔立ちで彼が自称する「魔剣シーガルスホルム」のように、たしかにどこか蛇のような雰囲気を漂わせている。軽薄でしかし同時に残酷な眼差しは、まさに蛇のそれだ。
「ま、まさか剣がヒトになるとは……! 一体どういう」
と、言おうとすると、
「レイア! なんだかおかしなことが……」
友人のブリジット(ka4843)が、困り果てた声で部屋を訪れてきた。彼女の傍にいるのは、赤毛に聖職者風のローブを纏った、何処かブリジットに雰囲気の似た女性。
「……ブリジット、彼女は?」
レイアがおそるおそる尋ねると、赤毛の女性がにこりと微笑んだ。
「あたしは、ブリジットのバイオリン。名前は……そうね、ティアと名乗っておくわ」
「……えっ」
四人は場所を変え、のんびり話せる公園に足を向けていた。
「はい……そうなんです……実は、お母様に、似ていて……そうとしか、思えないんです」
ブリジットも、困惑した表情を浮かべている。
すると「シーガルスホルム」も、
「うんうん、だから僕みたいなのもいておかしくないだろ?」
そう言って笑う。
「ああ、僕のことはシーガルでいいよ」
そう付け加えて。
「そ、そうか……ちなみに、なあ、お前から見て、私の剣はどうだろうか?」
レイアがおそるおそる尋ねると、シーガルはにやりと笑う。
「カタいカタい、重い重い。そんなんだから友達も出来ないんだよ」
「ッ……余計なお世話だ! それに、ブリジットのように、気兼ねなく訪ねてくる者もいるぞ?!」
そんなシーガルとレイアの噛みつきかねない喧嘩を見て、のほほんと楽しそうに笑うブリジットとティア。
「そうね、そういう間柄なのかも」
そう頷くと、くすりと笑いながらティアがすっと刀をとりだし、ブリジットに斬りつける。
「!?」
それに受け返すブリジット。
「突然……!」「なに言っているの、あたし達に言葉なんて不要でしょ?」
避けられるのは判っている、と言った風の緩やかな剣舞。――まるでブリジットの動きと対をなすかのような。
(その舞は……)
ブリジットの舞の動きは、尊敬する母の義妹から教わったもの。
けれど、その根底に流れる旋律は、彼女の――母のもの。
(ずっと見てくれていた……と言うことですか……)
ブリジットは、胸の奥でそう思い、そして思いきり身体を動かす。感謝の舞を。今のブリジットの、持てる全てを。
「……ブリジットはいいな」
レイアが寂しげに呟く。
「なに言ってんだよ。無駄にでかい乳ぶら下げてんだし少しは男の一人でも作ったら?」
「ちょ、この話に胸は関係ないだろうが!」
「そうかなあ? でも少し羨ましいんだろう? ブリジット達が、さ」
……確かにそうかも知れない。それでも、レイアにはレイアの道があり、ブリジットにも彼女の道がある。
レイアは仲睦まじそうに剣の稽古をする二人を見つめる。
「私も負けていられないな」
そう言いながら、普段は腰に佩いているシーガルを見つめた。好戦的な眼差しに、シーガルもにやりと返す。
「ま、少しずつやっていこうか」
のらりくらりといいながら、しかしその眼差しは、たしかに嬉しそうな光を持っていた。
●
ブリジットのバイオリンのように、武器でないものだってヒトの姿となり得る。
防具や愛用の品々……その中でとくに顕著な例は天央 観智(ka0896)の「IDカード」だろう。
見た目はまるで完治と二卵性の双子と言われても違和感のないくらい、何処か似たところのある落ち着いた女性。観智とは、対の存在のように、二人並べば何処か微笑ましい。
「何方でしょうか?」
思わず観智がそう問うても、「貴方の半身みたいなものよ」と親しげに返す、そんな女性。
「……そうか、いつも身につけているから……だからこそこうやって、雰囲気も似るんでしょうね」
観智もひとり納得顔、相手もうんうんと頷いてみせる。自室でのんびり、お茶を飲み交わしながら語る話題はリアルブルーにいた頃を懐かしんで話したり、クリムゾンウェストに来てから触れた異世界の文化――魔法や精霊といったことにも話し合う。
「今までに様々な経験を積んでは来ましたけれど、こういうのは初めてで……けれど、議論ができるというのはやはりよいですね」
「そうね、こうやって貴方とゆったり話が出来るなんて、私も思ってもいなかったわ」
IDカードだった女性はそう微笑んで頷く。味覚も似通っていて、飲んでいるのも同じもの。ホットの紅茶。
「こういう現象が起きるのは、異世界だから……でしょうか」
「そうとは限らないわ。ひとはこういうことを夢のように捉える。夢ならば、どこにいても見ることが出来るじゃない」
「ああ……成程。それは、たしかに」
口調も控えめに、穏やかに。ゆったりと時間は過ぎゆく。
研究者故の好奇心はもちろんあるものの、討論には決してならないのは……お互い似たような思考の持ち主だからなのだろう。
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変わったものが人間になる、と言う意味ではこちらも負けてはいない。ドラグーンのちびっ子・杢(ka6890)の目の前に現れたのは髪の毛がふわふわとした小さな双子の少年少女。杢よりも更に幼いその容姿は、しかしどこか彼の愛用する「もふっぱ」に似ていた。
もふっぱ……リアルブルーの人気コミックに登場する精霊をイメージした、もふもふしたスリッパ。かわいい。
「杢! きたもふよー!」
「いっしょにあそぶもふっぱー!」
幼い双子は舌足らず気味な口調でそんなことを言ってはしゃぐ。普段は杢も幼い方なのだが、それよりも幼い相手と言うことで、今日は杢もお兄ちゃん風を吹かせている。
「……ハンターさなっどこげなこともあるもんだんずね……おら知らなかったんず」
杢はそんなことを思わず呟くが、いやこれは普通じゃ無い状態なので、これを普段の生活と思われても困るわけだが、まあいい。
「んだ、おめだち、おらと遊びたいだんず?」
杢が問うと二人は嬉しそうに頷く。
「えとえと、こうえんいきたいもふー!」
「杢とあそびたいもふっぱー!」
あどけない声の子どもたち。公園で遊ぶのは、確かにいいだろう。
「ん、ほんだらいくだんず。おら、いもーどとおどーど、いっがら、慣れてるだんず。いっしょに遊ぶだんずー」
かくして、白い髪の幼子が三人、公園で無邪気に遊ぶ姿が目撃されたと言うことである。
ところでその一方、アーク・フォーサイス(ka6568)も戸惑っていた。いつもの愛用している「斬魔刀「祢々切丸」」が、黒目黒髪の男性になっていたからである。
「……本当に、君が祢々切丸?」
「はい、俺が貴方の祢々切丸です。無論主とともに戦った日々はきちんと覚えています」
丁寧だけれど、何処かゆるふわな印象をもつ祢々切丸。にこりと優しく微笑めば、なるほど、刀だとはなかなか思えない優しげな瞳を持っている。
「まさか、話せるなんて。そうだ、折角というわけじゃないけれど、今日は買いものに行かなくちゃならなくて……一緒に行く?」
アークが尋ねれば、祢々切丸も嬉しそうに頷いた。
「ええ是非! 主と一緒なら、何処へでも行きますよ」
買いもの、と言っても雑貨類だ。それこそ刀の手入れに必要な油や打粉も買い足さねばならないらしい。
店に向かう途中で白い子どもたちがもふもふと戯れているのを眺めつつ、アークと祢々切丸は歩いていく。
「祢々切丸は、背が高いね……見上げないとちゃんと顔が見えないな。少し羨ましいよ」
必要なものを調達しての帰り道、ふと思ったことを、アークは呟く。
「そうでしょうか……背が高いというのも、確かに考えものですね。先ほどのように、扉に頭をぶつけたりしますから」
――それに、主に見上げて貰いたくもありませんし。
こういう所、何処か謙虚さの見える祢々切丸だった。
●
それにしても、姿というのは道具それぞれの『個』を出す場合と、主の『個』に似せる場合と、両方があるらしい。
主によく似た――のは、グレンデル・フォトンヘッド(ka6894)の「法術盾「不壊なる揺光」」が良い例であろう。
元来オートマトンである彼は、頭部に電球のような被り物をした人物であるが、目覚めてすぐにグレンデルが見たのは『オレンジの電球』を被った鎧姿の男――見た瞬間、グレンデルは思った。
――これ、所謂私の2Pキャラであるな?
「私は貴様、そして貴様は私……そう言うことだ」
そんなことまで言うわけだから、そう思っても仕方がない。
「我ら光の?」「代行者」
「民が為に?」「道を征く者」
「我らが輝きは?」「星が如く照らすため……はっ、なんてことだ……」
試しに符丁を併せるとぴったりとあうものだから、グレンデルが戸惑うのも無理はない。取り敢えず被り物が戸惑うようにぴかぴかと光る。
「……取り敢えず使命が為に、」「町に向かおうか」
こんなところまでシンクロする始末である。
しかしいろいろとでかい声で話し、うろつくその姿は完全に不審者――と言うことで、おまわりさーん、こっちです、なんてことになってしまうが、そんなときも、
「落ち着いてくれ! 私はあくまで人助けをしようとして!」
「そうだ、どこをどう見ても普通の聖導士ではないか! 怪しいところなんて何もないだろう貴様!」
……いや、十分に怪しいから。うん。
他方、明らかに異なるのはエルバッハ・リオン(ka2434)のミーミルフェイス。なにしろ身長145センチのエルバッハに対し、2メートルはあるかという筋骨隆々の男性だからだ。しかも、装備などで自分の身体を隠すことを好まない、と来ている。
今日も簡単な護衛依頼に入っているエルバッハだったが、流石にその姿で同行するミーミルに
「その格好で行くつもりですか?」
と問いかければ、暑苦しそうな笑顔を向けて
「無論。私の肉体こそ最高の防具、やはり誇るべきは己の肉体と言うことですな」
からりと言われてしまう。「エル様とて、それが判っているからこそその御姿を度々お見せになっているのでしょう?」
(……まさかここで日頃の行いが返ってくるとは。しかし、彼の見た目では完全にアウトでしょう、もしも捕まった場合、私にも監督責任が……)
エルバッハも、今回ばかりは冷や汗気味。ハンターに成り立ての頃よりは、羞恥心の類が確実に増してはいるからだ。とはいえ、確かにそんなことがあるのも事実なので、大きなことは言えない。
「ミーミル、リアルブルーには能ある鷹は爪を隠す、と言う諺もあります。なので、今回は貴方の肉体は隠すことにしてきちんと装備をつけていきましょう」
そう、鬼気迫る様相で言って、渋々了承したようだ。
――しかし、こういう時だからこそ、悪いことは起きるもので。
盗賊団の襲撃を受けて応戦中、雄叫びとともにミーミルが筋肉を膨張させ……全ての装備がはじけ飛んでしまうなんて言うのは、仕方ないのだろうか。無論この件に関して、エルバッハは丁寧に頭を下げ、内密にして貰うようお願いしていた。
●
「……貴方が、「愛しきミゼリア」?」
思わずそんな声を上げたのはアルスレーテ・フュラー(ka6148)。
声をかけた相手は、腰辺りまである長い黒髪の先を、緑のリボンで縛ったアルスレーテと同世代ほどの女性。いや、少しばかり年上かも知れない。
「ええ、そうよ」
そう微笑みかけるその姿は、何処かアルスレーテにも似ていた。
(まあ武器に変容する歪虚もいるし、武器がヒトになったからと今更驚くほどのことでも無いわね)
自分の中でそう納得づけ、頷いてみせる。
「はあ……判ったわ。えーと……じゃあ、ミゼリア。ダイエットがてら散歩に行くわ。あなたが本当に「愛しきミゼリア」ならほって置くわけにもいかないし、ついてらっしゃい」
「ええ、もちろん。ふふ、なんだか楽しいわねこういうのも」
ミゼリアも、何処かお姉さんめいた笑顔になる。その姿を見て(……でかいなぁ)と思ったのはアルスレーテだが、どこを見てそう思ったのかは、あえて記録しないでおこう。
「あ……美味しそうな匂い。折角だし、おやつに食べない?」
「何を言ってるの? ダイエットのための散歩で買い食いするなんて、まったく、貴方のお母様とは随分違うわ」
散歩の途中で買い食いを提案すれば即座に却下され、ぐちぐちと、しかし理にかなった小言を聞きながら、ため息交じりに家に戻りつく。しかしそこでも
「もう少し部屋もきれいにしなさいな。お母様もいつも言ってたでしょう?」
(ああ……うるさいなぁ)
そうは思う。けれど、彼女を見て思うのは母のこと。ババアなんて呼んだりはするけれど、その辺に捨てられるはずもない。元々このミゼリアは、彼女の母のもので、父と母の大切な思い出だ。……それを勝手に駄目にしていいわけがない。
「仕方ないなあ。もう、やります、やりますってば」
そう言いながら、アルスレーテは不思議と口元に笑みが浮かんでいた。
●
「マスター、マスター」
聞き慣れぬ声にそう呼ばれ、冷泉 緋百合(ka6936)はぼんやり目を覚ますと、そこにいたのは朱い瞳に黒髪の、背の高い男性。
「……誰っ?」
すわ侵入者かと慌てて戦闘態勢を整えようとするが、彼はそれを押しとどめる。
「私だ。マスター、フラルゴだ」
フラルゴ――機械手甲「フラルゴ」。彼女の愛用する格闘武器だ。フラルゴは今まで緋百合と歩んだ道をいろいろと懐かしむように話す。その話の真実味があまりに強く、確かに彼はフラルゴであると信じられた。
「不思議な話ですが……こんなこともあるのかもしれません。信じましょう。どちらにしろ、今日はお仕事はお休みを戴いて、少し散策でもしませんか」
「はい。マスター」
フラルゴはそっと微笑んだ。
「そういえば、最近悩んでいることはないか、マスター」
昼食を近くのカフェで食べながら、フラルゴは緋百合に尋ねてくる。姿が似ているわけでもないのにぱっと見た感じはまるで仲のいい兄と妹のような二人、フラルゴはどうやらずっと彼女を気にかけていたらしい。
「実は……笑わないでくださいね、私は昔からなりたいと言っていた正義のヒーローになっていいのか、そしてその為にはどうしたらいいのか……悩んでいて」
すると、フラルゴは真っ直ぐに緋百合を見据えて言った。
「それはすぐに答えを出すべきかどうか……マスターの周りには頼れる家族、友人、沢山いるはずだ。今急いで答えを出す必要は無い、共にゆっくり考えていこう。……ただ、どんな答えであれ、私はずっとマスターとともにある」
――彼女の記憶は、そこで途切れる。
●
翌朝。
いつもと変わらぬ日々がまたはじまる。
しかし、緋百合は丁寧に相棒たる武器を磨いていた。
それが夢なのか、そもそも夢の内容すらもあやふやだが、励まして貰えた気がするから。
誰もが自分の大切なモノとともにある。
それをより愛おしく思える――そんな夢だったのかも知れない。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/01/04 21:05:57 |
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相談卓 グレンデル・フォトンヘッド(ka6894) オートマトン|30才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/01/04 13:19:52 |